JP5104103B2 - 電磁波シールド材、その製造方法及びディスプレイ用フィルター - Google Patents
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Description
図1は、本発明の電磁波シールド材の一例を示す模式的な平面図であり、図2は、図1におけるA−A’断面の拡大図である。また、図3は、図2の一部をさらに拡大して示す模式的な断面図であり、(A)は導電層上に金属層を設けない例であり、(B)は導電層上に更に金属層を設けた例である。本発明の電磁波シールド材10は、透明基材1と、透明基材1上に形成されたプライマー層2と、プライマー層2上に所定のパターンで形成された導電層3とを有し、プライマー層2は近赤外吸収性材料を含んでいる。この電磁波シールド材10は、必要に応じて導電層3上に形成された金属層4を有し、必要に応じてさらに保護層9を有する。なお、図1中、符号7は、中央部に位置し、ディスプレイ装置の画像表示領域に対峙する電磁波遮蔽パターン部であり、符号8は、その電磁波遮蔽パターン部の周縁部の少なくとも一部に存在する接地部である。この接地部8において、接地能力上好ましくは、図1に示すように、電磁波遮蔽パターン部7の周縁部の全周を囲繞する形態が好ましい。また、その接地部8は、メッシュ等の開口部を有するパターン状に形成されていてもよいが、より好ましくは、図1に示すように、開口部非形成(ベタ状)の導電層(或いは導電層及び金屬層)からなる。また、「所定のパターン」とは、電磁波シールド材10の電磁波遮蔽パターンとして一般的な、メッシュ状又はストライプ状のパターンである。以下、本発明の構成を詳しく説明する。
透明基材1は、電磁波シールド材10の基材であり、所望の透明性、機械的強度、プライマー層2との接着性等の要求適正を勘案の上、各種材料の各種厚さのものを選択すればよい。透明基材1の材料としては、樹脂基材であってもよいし、硝子基材等の無機材であってもよい。また、厚さ形態としては、フィルム状でもシート状でも板状でもよい。通常は、樹脂製の透明フィルムが好ましく用いられる。そうした透明フィルムとしては、アクリル(乃至メタクリル)樹脂、ポリエステル樹脂等をベースとするフィルムが好ましいが、これに限定されない。フィルムに使用する樹脂材料として、具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等のセルロース系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリメチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲン樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル等が使用できる。中でも、二軸延伸PETフィルムが透明性、耐久性に優れ、しかもその後の工程で紫外線照射処理や加熱処理を経た場合でも熱変形等しない耐熱性を有する点で好適である。
プライマー層2は、近赤外吸収性材料を含有し、透明基材1上に密着性よく設けられる。そして、このプライマー層2上には導電層3が密着性よく設けられる。したがって、プライマー層2は、透明基材1と導電層3の両方に対して密着性がよいことが好ましく、また、当然のことながら可視光線に対して透明であることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を塗工してなる層であることが好ましい。また、密着性、耐久性改善、各種物性付与のために各種添加剤や変性樹脂を使用してもよい。
導電層3は、プライマー層2上に、例えばメッシュ状又はストライプ状の所定の電磁遮蔽パターンで設けられている。この導電層3を形成する導電性材料組成物は、導電性粉末とバインダー樹脂とで主に構成されている。電磁遮蔽パターンは、電磁波シールド材に通常採用されるメッシュ状であってもストライプ状であってもよく、その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5μm〜30μmとすることができ、線間ピッチは100μm〜500μmとすることができる。また、メッシュやストライプ形状の電磁遮蔽パターンとは別に、それと導通を保ちつつ隣接した全ベタ等の接地パターンが設けられる場合もある。
金属層4は、導電層3のみでは所望の導電率に不足する場合に、導電率を更に向上させるために、必要に応じて形成するものである。通常、導電層3上にめっきにより形成される。めっきの方法としては、電気めっき、無電解めっき等の方法があるが、電気めっきは無電解めっきに比べて通電量を増やすことでめっき速度を数倍に上げることができ、生産性を著しく向上させることができるため好ましい。
図4は、本発明の電磁波シールドの製造方法の一例を示す工程図である。また、図5は、本発明の製造方法を実施する装置の概略構成図であり、図6は、導電性材料組成物をプライマー層上に転写する転写工程を実施する装置の概略構成図である。
プライマー層塗布工程は、透明基材1の一方の面S1に、近赤外吸収性材料を含むとともに硬化するまで流動性を保持できるプライマー層2を塗布形成する工程である。プライマー層2はプライマー層用樹脂組成物を透明基材1上に塗布して形成するが、こうしたプライマー層用樹脂組成物は上述したとおりであるのでここではその説明を省略する。プライマー層2を有する透明基材1は、図5に示すような塗布法で形成したものであり、後述する圧着工程時に、プライマー層2が流動性を保持した状態であることが必要である。
樹脂充填工程は、図4(a)(b)に示すように、メッシュ状又はストライプ状の所定のパターンで凹部64が形成された板状又は円筒状の版面63に、硬化後に導電層3を形成できる導電性材料組成物15を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性材料組成物を掻き取って凹部内に導電性材料組成物15を充填する工程である。導電性材料組成物15は上述したとおりであるのでここではその説明を省略する。
圧着工程は、図4(c)及び図6に示すように、樹脂充填工程後の版面63の凹部64側と、プライマー層塗布工程後の透明基材1のプライマー層2側とを圧着して、凹部64内の導電性材料組成物15とプライマー層2とを空隙なく密着する工程である。圧着はニップロール66で行われ、凹版ロール62に対して所定の圧力で付勢されている。そのニップロール66は付勢圧力の調整手段を備えており、その付勢圧力は、プライマー層2の流動性に応じて任意に調整される。
硬化工程は、ニップロール66の付勢力による圧着工程後にプライマー層2を硬化する工程であり、圧着した後の状態で硬化処理することにより、プライマー層2と導電性材料組成物15とが密着した状態で硬化させることができる。具体的には、プライマー層用樹脂組成物が電離放射線硬化型樹脂組成物である場合には、照射ゾーン(図6の例ではUVゾーンと記載している。)で電離放射線が照射され、硬化処理される。この場合、プライマー層2は透明基材1と版面63に挟まれた態様になり、空気中の酸素による硬化阻害を受けないため、窒素パージ装置等は必ずしも必要ない。なお、硬化処理は、上記と同様、プライマー層用樹脂組成物と導電性材料組成物の種類に応じて選択され、例えば、電離放射線照射処理、冷却処理等の硬化処理が施される。
転写工程は、図4(d)に示すように、硬化工程後に透明基材1とプライマー層2を凹版ロール62の版面63から剥がして凹部64内の導電性材料組成物15をプライマー層2上に転写する工程である。プライマー層2は、この工程前のプライマー層硬化工程で硬化しているので、透明基材1とプライマー層2を凹版ロール62の版面63から剥がすことにより、プライマー層2に密着した導電性材料組成物15は凹部内から離れてプライマー層2上にきれいに転写し、導電性材料組成物層3’となる。引き剥がしは、図5と図6に示すように、出口側に設けられたニップロール67により行われる。
めっき工程は、図4(e)及び図5に示すように、転写工程後、プライマー層2上に所定のパターン(プライマー層2の形成パターンと同じ。)で形成された導電層3上に金属層4を電気めっきする工程である。めっきする金属としては、銅、銀、金等が挙げられ、特に価格が安く導電性も高い銅めっきが好ましい。銅めっき液は、市販のめっき液を利用できるが、中でも均一めっき性を向上させた銅めっき液が好ましく採用される。なお、めっき工程に供される際には、通常の前処理(例えば、洗浄処理等)が施されるが、上記のように転写工程からそのままインラインで供給されてもよいし、別個のめっきラインに供されてもよい。めっき工程後には、必要に応じてさらに他の工程(例えば、金属層4の黒化処理工程や防錆工程、図2に示すような保護層9の形成工程)を経た後にそのまま巻き取られてもよいし、所定の寸法に切断されて枚葉シートとしてもよい。
図8は、本発明のディスプレイ用フィルターを有するプラズマディスプレイ装置の一例を示す模式的な断面図である。本発明のディスプレイ用フィルター71は、図8に示すように、上述した本発明の電磁波シールド材10を少なくとも有し、プラズマディスプレイ装置70の前面側(視聴者側)に設けられる。すなわち、電磁波シールド材10は、ディスプレイ用フィルター71の一部又は全部として設けられ、それ単独でディスプレイ用フィルター71として用いてもよいし、図8に示すように、電磁波シールド材10と他の機能部材を複合させて用いてもよい。
図5及び図6に示す装置により電磁波シールド材を製造した。先ず、透明基材1として、片面に易接着処理がされた幅1000mmで厚さ100μmの長尺ロール巻ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績株式会社、A4100)を用いた。供給部にセットしたPETフィルムを繰り出し、易接着処理面にプライマー層用の光硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が5μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバース法を採用し、光硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレート35重量部、ウレタンアクリレート12重量部、単官能モノマー44重量部、3官能モノマー9重量部、さらに光開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3重量部、さらに近赤外吸収性材料としてセシウムタングステン複合酸化物微粒子分散液(住友金属鉱山株式会社、YMF−02)を5.28重量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1400cps(at25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層2は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
実施例1において、近赤外吸収性材料として、セシウムタングステン複合酸化物分散液の代わりに、フタロシアニン系近赤外線吸収色素イーエクスカラーIR−12(日本触媒株式会社)を0.63質量部、IR−14(日本触媒株式会社)を0.36質量部、IR−910(日本触媒株式会社)を0.88質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例2の電磁波シールド材を作製した。このときの粘度は約700cps(at25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層2は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。得られた電磁波シールド材において、導電層の厚さは約9μmであり、版の凹部64内の銀ペーストが高い転移率で転移していた。また、断線や形状不良も見られなかった。
実施例1において、PETフィルムの易接着処理面に、近赤外吸収性材料を含む硬化したプライマー層を予め塗布形成し、硬化したプライマー層2が形成されたPETフィルムを転写工程を行う凹版ロール62に供する他は、実施例1と同様にして導電性材料組成物を転写させた。しかしながら、その際、PETフィルム上への導電性材料組成物の転写は十分でなく、断線やパターン抜けが多発した。また、乾燥後のパターン厚さも1μm程度であり、転移率が著しく悪かった。その後の電気銅めっきも均一にめっきすることはできなかった。この理由は、ドクターブレード65にて凹部64以外の導電性材料組成物を除去する際に、凹部64内からも少なからず導電性材料組成物15が掻き出されて凹部64内の導電性材料組成物15には凹み6が生じるが、その凹み6の存在により、導電性材料組成物15がPETフィルム上に密着よく転写されないためと考えられる。
実施例1,2及び比較例1で作製した電磁波シールド材について、近赤外吸収性及び電磁波シールド性を評価した。近赤外吸収性は、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100PC)を用いて800nm〜1100nmの範囲の近赤外波長の透過率を測定し、得られた透過率の平均値を用いた。その結果、実施例1の電磁波シールド材の透過率は7%であり、実施例2の電磁波シールド材の透過率は5%であった。また、電磁波シールド性は、シールド材評価器((株)アドバンテスト製、TR17301A)を用いて測定した。その結果、実施例1,2の電磁波シールド材は、200〜600MHzの範囲で−30デシベル程度以下の良好なシールド特性を有していた。
2 プライマー層
3 導電層
3’ 導電性材料組成物層
4 金属層
5 サイドエッジ
6 凹み
7 電磁波遮蔽パターン部
8 接地部
9 保護層
10 電磁波シールド材
15 導電性材料組成物
51 グラビアロール
52 バックアップロール
53 樹脂組成物充填容器
54 ドクターブレード
61 ピックアップロール
62 凹版ロール
63 版面
64 凹部
65 ドクターブレード
66 ニップロール
67 ニップロール
68 充填容器
70 プラズマディスプレイ装置
71 ディスプレイ用フィルター
72 粘着剤層
73 透明基材
74 AR層
75 粘着剤層
76 プラズマディスプレイパネル
A 導電層が形成されている部分
TA Aの厚さ
B 導電層が形成されていない部分
TB Bの厚さ
Claims (8)
- 透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマー層と、該プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性材料組成物からなる導電層と、を有する電磁波シールド材であって、
前記プライマー層のうち前記導電層が形成されている部分の厚さが、前記導電層が形成されていない部分の厚さよりも大きくなっているとともに、
前記プライマー層は、該プライマー層を硬化する前に硬化前の前記導電層に圧着し、前記導電層を硬化する前に硬化して形成され、800nm〜1100nmの範囲の近赤外波長を吸収する近赤外吸収性材料を含む電離放射線硬化性樹脂からなる層であり、
前記導電性材料組成物が、導電性粉末及び樹脂を含み、該樹脂が熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする電磁波シールド材。 - 前記近赤外吸収性材料がセシウムタングステン複合酸化物又はフタロシアニン系化合物である、請求項1に記載の電磁波シールド材。
- 請求項1又は2に記載の電磁波シールド材を有し、ディスプレイの前面側に設けられることを特徴とするディスプレイ用フィルター。
- 透明基材の一方の面に所定のパターンで導電層が形成されているとともに、800nm〜1100nmの範囲の近赤外波長を吸収する近赤外吸収性を有する電磁波シールド材の製造方法であって、
透明基材の一方の面に、近赤外吸収性材料を含むとともに硬化するまで流動性を保持できるプライマー層を塗布形成するプライマー層塗布工程と、
所定のパターンで凹部が形成された板状又は円筒状の版面に、硬化後に導電層を形成できる導電性材料組成物を塗布した後、前記凹部内以外に付着した該導電性材料組成物を掻き取って該凹部内に該導電性材料組成物を充填する導電性材料組成物充填工程と、
前記プライマー層塗布工程後の透明基材のプライマー層側と前記導電性材料組成物充填工程後の版面の凹部側とを圧着して、前記プライマー層と前記凹部内の導電性材料組成物とを空隙なく密着する圧着工程と、
前記圧着工程後に前記プライマー層を硬化するプライマー層硬化工程と、
前記プライマー層硬化工程後に前記透明基材及び前記プライマー層を前記版面から剥がして前記凹部内の導電性材料組成物を前記プライマー層上に転写する転写工程と、
前記転写工程後、前記プライマー層上に所定のパターンで形成された導電性材料組成物を硬化させて導電層を形成する導電性材料組成物硬化工程と、を有することを特徴とする電磁波シールド材の製造方法。 - 前記導電性材料組成物充填工程において、前記導電性材料組成物は、硬化後に電気めっきできる導電層を形成できる組成物であり、
前記導電性材料組成物硬化工程後、前記プライマー層上に所定のパターンで形成された導電層上に金属層を電気めっきするめっき工程を有する、請求項4に記載の電磁波シールド材の製造方法。 - 前記プライマー層が電離放射線硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなる層であり、該プライマー層の流動性の保持を電離放射線の未照射又は加熱によって行う、請求項4又は5に記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記導電性材料組成物が、導電性粉末及び樹脂を含み、該樹脂が熱可塑性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂である、請求項4〜6のいずれかに記載の電磁波シールド材の製造方法。
- 前記転写工程後において、前記プライマー層のうち前記導電性材料組成物が転写された部分の厚さは、前記導電性材料組成物が転写されていない部分の厚さよりも大きい、請求項4〜7のいずれかに記載の電磁波シールド材の製造方法。
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