JP5103145B2 - 光電変換装置用基板およびそれを用いた光電変換装置 - Google Patents
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Description
サブストレート型構造の薄膜太陽電池において、基板とは反対側から入射された光は、基板上の半導体層で一部吸収され、半導体層に吸収されなかった光は基板に到達し、基板上で反射され、再度光電変換層に入射される。ここで、光入射の関係から、光入射側を「表」、基板側を「裏」と定義する。半導体層の光吸収を向上させるために、太陽電池に反射層を設ける場合があるが、基板に設けられた反射層は、前記の定義から「裏面反射層」と呼ぶ。
一般に太陽電池は、光電変換層の光吸収に伴って生成するキャリアを電力として取り出すデバイスであり、エネルギー変換効率(光電変換効率)を高めるための様々な工夫がなされている。
ここで、平坦な基板上に凹凸形状を有する裏面反射層を設ける工夫もなされているが、この方法は裏面反射層となる金属材料の使用量が多くなるという欠点がある。特に裏面反射層として好適な銀(Ag)は高価であり、製造コストが増大する。
したがって、特許文献1によれば、太陽電池をはじめ各種電気・電子部品用に軽量で可撓性を備えた絶縁基板を提供でき、特に薄膜太陽電池基板として用いた場合、凹凸構造を有する反射層が得られるので光路長を稼ぐことができ、太陽電池の変換効率を向上させることができるとしている。
このようにメチル基は、ただでさえ十分ではない無機ポリマー膜−金属間の密着性をさらに低下させるので、例えば基板を曲げた場合や裏面反射層が剥離しやすい状況になった場合により大きな問題となって現れることになる。
本発明の光電変換装置用基板は、薄膜太陽電池用基板として好適に用いることができる。
図1は、本発明の光電変換装置用基板を示す概略断面図である。この光電変換装置用基板100は、支持体10上に金属酸化物膜20および金属膜30が順次に積層されている。
以下、図1を用いて、本発明の光電変換装置用基板について具体的に説明するが、これらは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の光電変換装置用基板は、光電変換装置の構造を保持できる程度の適度な強度や重量を有する支持体を有しているのが好ましい。その構成材料は特に限定されず、公知の各種材料を用いることができる。
また、透光性材料と非透光性材料のいずれでもよく、導電性材料、非導電性材料のいずれでもよく、必要に応じて支持体上に導電層を形成してもよい。
また、導電性材料としては、上記の金属などが挙げられ、非導電性材料として上記の樹脂、ガラス、セラミックなどが挙げられる。
また、支持体は可撓性を有していてもよい。このような支持体であれば、曲がった場所に設置可能な光電変換装置を形成することができる。可撓性を有する材料としては、上記の金属や樹脂などが挙げられる。
金属酸化物膜20は、支持体10上に積層される、金属元素の酸化物を含む膜であり、
カルボニル基を有する化合物で処理することにより、次いで積層される金属膜30との界面において、金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在するカルボニル基またはカルボニル基を有する原子団のカルボニル基を介して結合しているものと考えられる。
カルボニル基は、その分子軌道のうち炭素原子と酸素原子のπ結合の非結合性軌道を提供し、この軌道が金属原子のd軌道と良好な重なりを示すことから、金属原子はカルボニル基に電子を与えて良好に結合することになる。また、カルボニル基を構成する炭素原子と酸素原子とでは炭素原子の方が同じ軌道でもエネルギーレベルが高く、金属原子のd軌道に近いことから、金属原子は炭素原子側と良好に結合することになる。
さらに、カルボニル基を構成する炭素原子と酸素原子とでは酸素原子の方が高い電気陰性度を有し、C=O結合の電子が酸素原子上に偏っていることから、炭素原子はいくぶんか正電荷を帯びている。このことも、金属原子が炭素原子に電子を与え易い要因となっている。
M1−C=O
M1−O−C=O
M1−O−C(O)−C=O
M1−O−C(O)−R−C=O
M1−O−C(O)−Ph−C=O
M1−O−C(O)−NH−C=O
M1−O−C(O)−NR−C=O
M1−O−C(O)−R−NH−C=O
M1−O−C(O)−R−NR−C=O
M1−O−C(O)−NPh−C=O
M1−O−C(O)−Ph−NH−C=O
M1−O−C(O)−Ph−NPh−C=O
M1−O−C(O)−Ph−NR−C=O
M1−O−C(O)−R−NPh−C=O
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基であり、Phはフェニル基である)
このようなカルボニル基を構成する炭素原子は、金属膜30に含まれる金属M2と、O=C−M2のように、付着性に優れた共有結合性の結合を形成しているものと考えられる。
電気陰性度とは、分子内にある原子が、電子をそれ自身の方に引き寄せる強さのことである。例えば、電気陰性度α1の物質G1と電気陰性度α2の物質G2とが共有結合している場合、α1>α2であれば、その共有電子対はG2よりもG1側に存在することになる。この場合には、G1とG2とが理想的に電子を共有している結合状態と比較して、G1の方がやや負電荷を、G2の方がやや正電荷を帯びている。
炭素原子よりも電気陰性度の大きな元素の好ましい例としては、塩素原子、窒素原子、
酸素原子などが挙げられる。
また、金属酸化物膜中の炭素原子よりも電気陰性度の大きな元素の有無は、二次イオン質量分析法(SIMS)やオージェ電子分光法(AES)などの公知の方法により確認することができる。
このような場合には、電子吸引性基Aがカルボニル基の炭素原子から直接電子を引き寄せるために、カルボニル基の炭素原子がより正電荷を帯びるようになる。これにより金属膜の金属原子M2からカルボニル基への電子供与がより進行し易くなり、カルボニル基と金属膜の金属原子M2との結合がより強くなる。したがって、電子吸引性基Aの電子吸引能力は高ければ高いほど大きな効果が得られる。
A−C(O)−H、A−C(O)−Rで表されるアルデヒドやケトン;
A−C(O)−OHで表されるカルボン酸;
A−C(O)−ORで表されるエステル;
A−C(O)−R−CH2COOH、A−C(O)−R−CH(COOH)2、A−C(O)−R−C(COOH)3で表されるカルボン酸;
A−C(O)−R−CH2OH、A−C(O)−R−CH(OH)2、A−C(O)−R−C(OH)3で表されるアルコール;
A−C(O)−R−CH2OR、A−C(O)−R−CH(OR)2、A−C(O)−R−C(OR)3で表されるエステル;
A−C(O)−NH2、A−C(O)−R−CH2NH2、A−C(O)−R−CH(NH2)2、A−C(O)−R−C(NH2)3で表されるアミン;
A−C(O)−NHR、A−C(O)−R−CH2NHR、A−C(O)−R−CH(NHR)2、A−C(O)−R−C(NHR)3で表されるアミド;
A−C(O)−NR2、A−C(O)−R−CH2NR2、A−C(O)−R−CH(NR2)2、A−C(O)−R−C(NR2)3で表されるアミド;
A−C(O)−X、A−C(O)−CH2X、A−C(O)−CHX2、A−C(O)−CX3、A−C(O)−R−CH2X、A−C(O)−R−CHX2、A−C(O)−R−CX3で表されるケトン
(式中、Aは電子吸引性基であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基またはアルキレン基であり、Phはフェニル基であり、XはF、Cl、BrまたはIである)
などが挙げられる。
エステル結合は、鎖状または架橋的な構造を形成し、その構造中にカルボニル基を有する原子団が取り込まれるようになる。
R'−C(O)X + M−OH → R'−C(O)O−M + XH
(式中、R'=CnHm(nおよびmは自然数である)で表される飽和または不飽和炭化水素基である)
また、カルボニル基を有する原子団が2つ以上の−C(O)Cl基を有する場合には、金属酸化物膜と2つ以上のエステル結合を形成できるため、カルボニル基を有する原子団がより強固に金属酸化物膜と結合できるのでさらに好ましい。
カルボニル基を有する化合物が上記のカルボニル基を有する原子団を有していると、連結基Qと金属酸化物膜との間に形成される化学結合によって、カルボニル基を有する原子団が金属酸化物膜に強固に固定化されるので好ましい。すなわち、連結基QがC(O)−Oで表されるエステル結合の構造を有しているので、カルボニル基を有する原子団はエステル結合により金属酸化物膜に固定化される。
CH(CH2COO)C(O)−O;CR(CH2COO)C(O)−O;CPh(CH2COO)C(O)−O;C(OH)(CH2COO)C(O)−O;C(NH2)(CH2COO)C(O)−O;C(NHR)(CH2COO)C(O)−O;C(NR2)(CH2COO)C(O)−O;C(CH2COO)2C(O)O;CH2C(CH2COO)2C(O)O;CHRC(CH2COO)2C(O)O;CR2C(CH2COO)2C(O)O;CHPhC(CH2COO)2C(O)O;CPh2C(CH2COO)2C(O)O;CRPhC(CH2COO)2C(O)O;CH(OH)C(CH2COO)2C(O)O;CR(OH)C(CH2COO)2C(O)O;CPh(OH)C(CH2COO)2C(O)O;C(OH)2C(CH2COO)2C(O)O;CHNH2C(CH2COO)2C(O)O;C(NH2)2C(CH2COO)2C(O)O;CRNH2C(CH2COO)2C(O)O;CH(NHR)C(CH2COO)2C(O)O;CHNR2C(CH2COO)2C(O)O;CRNR2C(CH2COO)2C(O)O;C(OH)NH2C(CH2COO)2C(O)O;C(OH)NHRC(CH2COO)2C(O)O;C(OH)NR2C(CH2COO)2C(O)O
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Phはフェニル基である)
などが挙げられる。
このような金属としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、軽金属であるアルミニウム(Al)、半金属である珪素(Si)が挙げられる。これらの中でも、遷移金属、Al、Siは、それらの酸化物が高い融点と化学的安定性を有するなどの理由から特に好ましい。
このような遷移金属酸化物としては、例えばチタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
また、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)は、遷移金属酸化物と比較して電気的絶縁性が高く、絶縁性が求められる場合に好適に用いられる。
また、金属酸化物膜は、金属膜の下地層であり、金属膜に光散乱のための好適な凹凸形状をもたせるために凹凸形状を有しているのが好ましい。すなわち、好適な凹凸形状は、光電変換装置において光電変換層を透過し、金属膜で反射した光を拡散させて、光電変換層に再入射する光の光路長を伸ばし、光電変換層の変換効率を向上させることができる。
凹凸のない平坦な金属酸化物膜上に凹凸形状を有する金属膜を形成してもよいが、金属膜を形成する金属量が多くなるので、凹凸形状を有する金属酸化物膜上に、その凹凸形状を反映した金属膜を形成するのが好ましい。
他方、金属酸化物膜が凹凸形状を有することにより、その比表面積が大きくなり、カルボニル基を有する原子団を数多く結合させ易くなる。
金属酸化物膜の凹凸形状の大きさ(表面粗さ)は、Ra=0.1〜3μm、Rmax=3〜5μmが好ましい。
凹凸形状を有する金属酸化物膜の形成方法については、次項(金属酸化物膜20の形成方法)の中で説明する。
金属酸化物膜は、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法などの真空装置を用いた気相法、ゾルゲル法など液相法などの公知の方法により形成することができる。これらの中でも、ゾルゲル法は、高価な真空装置を用いないこと、比較的低温で成膜できることから特に好ましい。また、ゾルゲル法は、カルボニル基を有する原子団を含む化合物を塗液に混入し、この塗液を用いて1段階で成膜できることから特に好ましい。
まず、出発原料となる金属アルコキシド、水、アルコールを適量混合し、得られた溶液を加熱しながら攪拌して金属アルコキシドを加水分解させてゲルを得る。出発原料の混合比や加熱温度などの条件は適宜設定すればよい。また、加水分解の反応速度を高めるために、例えば溶液中に酸またはアルカリを加えて水素イオンや水酸化物イオンを存在させてもよい。
塗布方法としては、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法などの公知の方法が挙げられる。例えば、スクリーン印刷法は、孔版に設けられた孔を通して塗布材料を被印刷物に対して押し出す印刷法であり、他の塗布方法と比較して、曲面に対する印刷に優れている。
乾燥および焼成における温度、時間、雰囲気などの条件は、使用する支持体や最終形成物の形態によって適宜設定すればよい。例えば、大気または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度、10秒〜12時間程度が挙げられる。乾燥および焼成は単一の温度で1回であっても、温度を変化させて複数回繰り返してもよい。また、塗布、乾燥および焼成を複数回繰り返してもよい。
凹凸形状を有する金属酸化物膜を形成する方法としては、例えば、金属酸化物膜を形成した後に酸またはアルカリによってその表面をエッチングする方法などが挙げられる。
しかしながら、製造手順の簡略化による製造コスト低減の観点から、金属酸化物膜の形成と同時に凹凸形状が形成されることが望ましい。このような方法としては、例えば、凹凸形状を有する金属酸化物膜を結晶成長により形成する方法などが挙げられる。
しかしながら、結晶成長は物質固有のものであり、金属酸化物膜に用いる物質によって、形成できる凹凸形状がほぼ決定してしまう。このため、結晶成長によって形成された凹凸形状が必ずしも光散乱に有効ではない場合があり、凹凸形状の制御が可能であり、かつ金属酸化物膜の形成と同時に凹凸形状が形成ができる方法が望ましい。このような方法としては、例えば、金属酸化物膜の形成用塗液に、金属酸化物膜が所望の凹凸サイズを有するように粒子径を選択した微粒子を混入させ、これを塗布する方法が挙げられる。この方法は、1段階のプロセスで金属酸化物膜の形成と同時に凹凸形状を形成でき、粒子径が揃えることにより、金属酸化物膜の凹凸形状のばらつきを少なくすることができる。
また、用語「粒子径」は、日本工業標準調査会(JISC)の規格(規格番号JIS Z8819−1)によれば、同一物性の球の直径、すなわち、投影面積や体積などの幾何学的特性の測定法、終末沈降速度などの動力学的特性の測定法、レーザー光の散乱パターンなどの光学的特性の測定法などの測定方法において同一の物性値を与える球形粒子の直径と定義されており、本明細書中においてもこの定義を採用する。
また、金属膜の光散乱を目的とした凹凸形成のために微粒子を設定することから、粒子径は、レーザー光の散乱パターンなどの光学的特性の測定法から求められる粒子径を採用するのが好ましい。
微粒子の形状は、上記の粒子径を満足するものであれば特に限定されず、球形状や多面体形状などの種々の形状が挙げられる。
微粒子を分散させる方法としては、微粒子の液中懸濁液に対して超音波照射を行う方法、pHを制御することで微粒子の表面電位を制御する方法、分散剤(例えば、和光純薬株式会社製、商品名:Triton−X−100)によって微粒子の表面を改質する方法などやこれらの組み合わせが挙げられる。
これらの方法は、金属酸化物膜20に微粒子を含ませるのと同時に行ってもよく、予め分散処理が施された微粒子懸濁液(シーアイ化成株式会社製、商品名:NanoTek(登録商標)Slurry)を用いることも可能である。
浸漬する場合には、密閉容器内において溶液を循環させるのが好ましい。また、加熱した溶液に金属酸化物膜を浸漬させても、金属酸化物膜を浸漬した後に溶液を加熱してもよい。
これらの中でも、カルボニル基を有する化合物を含む溶液に金属酸化物を20〜180℃で5分〜100時間浸漬し、次いで20〜180℃で0.1〜24時間乾燥し、処理された金属酸化物膜の処理面上に金属膜を形成するのが好ましい。
このような溶剤としては、エタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;アセトンなどのケトン類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;アセトニトリルなどの含窒素化合物類;四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類;水などの公知の溶剤が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して用いることができる。
カルボニル基を有する化合物が溶剤との反応性に富み、加溶剤分解が起こる場合には、適宜溶剤を選択すればよく、例えば、カルボニル基を有する化合物が塩化アシル基を有する場合には、プロトン性溶剤との反応による塩化アシル基の失活を回避するために、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素など非プロトン性の溶剤を用いることが望ましい。
金属膜は、高い光反射率と高い導電性を有するものであれば、その構成材料は特に限定されず、公知の各種材料を用いることができる。
また、金属膜は、金属酸化物膜との付着性に優れるものが好ましい。
このような材料としては、カルボニル基が結合する方向に応じて、d軌道が分裂してできる安定な軌道を結合に使うことができる金属、例えば鉄(Fe)、Ru(ルテニウム)、銀(Ag)、オスミウム(Os)などの金属およびこれらを含む合金が挙げられる。これらの中でもオスミウムはd軌道の分裂の度合いが大きく特に好ましい。また、銀は光反射率が高く、後述する反射金属膜の機能も有するので特に好ましい。
金属膜は、十分な反射率が得られる程度の厚さを有しながらも、金属使用量の低減によるコストアップの抑制という観点からなるべく薄い方が好ましく、通常100〜500nm程度である。
金属膜の表面荒さは、原子間力顕微鏡(AFM)などによって測定することができる。
本発明の光電変換装置用基板100の金属膜30上には光電変換層が形成されるが、金属膜と光電変換層との間に、図2に示すような反射金属膜が積層されていてもよい。
反射金属膜を設けることにより、光電変換層に再入射する光の損失を低減することができる。
図2は、本発明の別の光電変換装置用基板を示す概略断面図である。この光電変換装置用基板100は、図1の光電変換装置用基板に反射金属膜31がさらに積層されている。
このような材料としては、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、チタニウム(Ti)などの金属およびこれらを含む合金が挙げられる。これらの中でも銀は光反射率が高く、特に好ましい。
反射金属膜と金属膜はどちらも金属元素からなり、一般的に強固な金属結合を形成することができるため、金属酸化物膜と金属膜と、反射金属膜31とは、一貫して付着にすぐれた積層膜を形成することができる。
反射金属膜は、十分な反射率が得られる程度の厚みを有しながらも、金属使用量の低減によるコストアップの抑制という観点からなるべく薄い方が好ましく、通常100〜500nm程度である。
反射金属膜は、下地層である金属膜の凹凸形状が反映される。その表面粗さと測定方法は金属膜と同様である。
金属酸化物膜とそれに積層された金属膜との付着力は、例えばJIS R3255(ガラスを基板とした薄膜の付着性試験方法)のスクラッチ法、JIS K5600−5−7(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第7節:付着性(プルオフ法))の方法などに準拠した引張方法により評価することができる。
本発明の光電変換装置は、本発明の光電変換装置用基板の金属膜上に、光電変換層および取り出し電極が順次積層されてなることを特徴とする。
図3は、本発明の光電変換装置を示す概略断面図である。この光電変換装置200は、図1の光電変換装置用基板100の金属膜30上に、n型半導体層41、i型半導体層42およびp型半導体層43が順次積層されてなる光電変換層40が形成され、さらに光電変換層40の所定の位置に取り出し電極50が形成されてなる。
図3に基づいて本発明の光電変換装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
光電変換層は、光吸収に伴ってキャリアを生成する層であり、当該技術分野において用いられる光電変換材料により構成される。
光電変換材料は、半導体であれば特に限定されず、主にシリコンを含むシリコン系半導体、および砒化ガリウム(GaAs)、テルル化カドミウム(CdTe)、銅インジウムガリウムセレン(CIGS)などの化合物半導体が挙げられる。
金属膜に形成される凹凸形状は、シリコンの光吸収のために適しているため、光電変換層40を構成する材料としてはシリコンが好ましく、アモルファスシリコン(a−Si)、微結晶シリコンが特に好ましい。
また、用語「微結晶」は、当該技術分野で一般的に使われるように、実質的に結晶相のみからなる状態だけでなく、結晶相とアモルファス相が混在した状態を含む。例えば、ラマン散乱スペクトルにおいて、結晶シリコン中のシリコン−シリコン結合に帰属する520cm-1付近の鋭いピークがわずかでも検出されれば「微結晶シリコン」とする。
なお、本明細書における用語「アモルファスシリコン」および「微結晶シリコン」は、それぞれ当該技術分野で一般的に使われる「水素化アモルファスシリコン」および「水素化微結晶シリコン」を含むものとする。
CVD法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法、熱CVD法、ホットワイヤーCVD法、MOCVD法などが挙げられ、微結晶シリコン層の形成には、低温での非平衡プロセスであるプラズマCVD法が好ましい。
以下ではプラズマCVD法について説明する。
シリコン含有ガスと共に使用する希釈ガスとしては、H2、Ar、Heなどが挙げられ、アモルファスシリコンおよび微結晶シリコンの形成時にはH2を用いる場合が多い。
また、p型およびn型半導体層の形成にシリコン含有ガスおよび希釈ガスと共に使用するドーピングガスは、目的とする導電型を決定する元素を含むガスであれば特に限定されない。
p型決定元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)などの不純物原子が挙げられ、例えばホウ素である場合には一般的にB2H6を用いる場合が多い。
n型決定元素としては、リン(P)、窒素(N)、酸素(O)などの不純物原子が挙げられ、例えばリンである場合には一般的にPH3を用いる場合が多い。
p−i−n構造の場合、各半導体層の膜厚は特に限定されるものではないが、n型半導体層は5〜100nm、好ましくは10〜30nmであり、i型半導体層は100〜5000nm、好ましくは200〜4000nmであり、p型半導体層は5〜50nm、好ましくは10〜30nmである。
光活性層であるi型半導体層に入射する光量を多くするために、p型半導体層はその機能を損なわない範囲で薄い方が好ましい。
n型半導体層中の結晶シリコン相は、導電性を高くし、光電変換層の直列抵抗を低減し形状因子を増加させることができるので、光電変換装置の変換効率が向上する。
また、n型半導体層中の結晶シリコン相は、i型半導体層の下地層として結晶成分の成長を促進して短絡電流密度を増加させることができるので、光電変換装置の変換効率が向上する。
p型半導体層中の結晶シリコン相は、n型半導体層中の結晶シリコン相と同様に、導電性を高くし、光電変換層の直列抵抗を低減し形状因子を増加させることができるので、光電変換装置の変換効率が向上する。
取り出し電極50は、高い光反射率と高い導電性を有するものであれば、その構成材料は特に限定されず、公知の各種材料を用いることができる。
このような材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)などの金属およびこれらを含む合金が挙げられる。
取り出し電極50の形状は、櫛形などの光電変換装置の表面を一様に覆わないグリッド形状が好ましい。
取り出し電極は、キャリアを損失なしに取り出すことができる厚さを有しながらも、金属使用量の低減によるコストアップの抑制という観点からなるべく薄い方が好ましく、通常50〜100nm程度である。
実施例では、図1に示される本発明の光電変換装置用基板を作製し、得られた基板を用いて図3に示される本発明の光電変換装置を作製し、それらを評価した。
図1は、本発明の光電変換装置用基板を示す概略断面図である。この光電変換装置用基板100は、支持体10上に金属酸化物膜20および金属膜30が順次積層されている。
また、図3は、本発明の光電変換装置を示す概略断面図である。この光電変換装置200は、図1の光電変換装置用基板100の金属膜30上に、n型半導体層41、i型半導体層42およびp型半導体層43が順次積層されてなる光電変換層40が形成され、さらに光電変換層40の所定の位置に取り出し電極50が形成されてなる。
なお、比較例では、カルボニル基を有する化合物で処理していない金属酸化物膜上に金属膜を備える光電変換装置用基板を作製すること以外は、実施例と同様にして光電変換装置を作製し、それを評価した。
ゾルゲル法により、ステンレス基板(縦115mm×横115mm×厚さ0.1mm)からなる支持体10上に金属酸化物膜20を形成した。
すなわち、攪拌へら、管入り口に温度計を具備するリービッヒ冷却管およびパイレックス(登録商標)ガラス製エンドキャップを備えたパイレックス(登録商標)ガラス製三つ口フラスコに、出発原料としてオルト珪酸テトラエチル(CAS No.78−10−4)2000ml、純水200ml、エタノール(CAS No.64−17−5)200ml、シリカ微粒子(大阪化成株式会社製、商品名:球状シリカSS15、平均粒径1.5μm)1gを充填し混合して均一な溶液を得た。
次に、これを、1×10-2mol/lの塩化アセチル(CAS No.75−36−5)を含むトリエチルアミン(CAS No.121−44−8)溶液中に30℃で1時間浸漬し、20℃で12時間乾燥して金属酸化物膜20を得た。
フーリエ変換赤外分光分析装置(PerkinElmer社製、Spectrum100)を用いて反射型赤外分光分析法により、金属酸化物膜20に存在する官能基を分析したところ、カルボニル基に帰属する1800cm-1の吸収ピークが測定された。
また、二次イオン質量分析法(SIMS)により、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCが検出された。
精密万能試験機(株式会社島津製作所製、島津オートグラフAG−IS)を用いて、JIS規格 K5600−5−7に記載の方法に準拠した引張方法によって、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、15MPaであった。
また、原子間力顕微鏡(AFM)により、金属膜30の凹凸形状を測定したところ、その表面粗さはRa=1μm、Rmax=2μmであった。
原料ガスとしてSiH4、H2およびPH3を用い、H2/SiH4ガス流量比を200倍に、PH3/SiH4ガス流量比を膜中リン濃度が0.01原子%となるように調節し、基板温度を170℃に設定した光電変換装置用基板100の金属膜30上に膜厚20nmのn型半導体層41を形成した。
次に、原料ガスとしてSiH4およびH2を用い、H2/SiH4ガス流量比を80倍に調節し、基板温度を180℃に設定したn型半導体層41上に膜厚2500nmのi型半導体層42を形成した。
次に、原料ガスとしてSiH4、H2およびB2H6を用い、H2/SiH4ガス流量比を150倍に、B2H6/SiH4ガス流量比を膜中ホウ素濃度が0.01原子%となるように調節し、基板温度を160℃に設定したi型半導体層42上に膜厚20nmのp型半導体層43を形成した。
上記と同様にして、合計16個の光電変換装置200を作製したところ、作製歩留り(良品の割合)は70%であった。
また、得られた光電変換装置200の良品について短絡電流密度Jscを測定したところ、その平均値は15.3mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1のゾルゲル法による金属酸化物膜20の形成において、出発原料のうち、オルト珪酸テトラエチル2000mlを1500mlとし、クロロトリエトキシシラン(CAS No.4667−99−6)500mlをさらに加えたこと以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Clが検出された。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、17MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは73%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、ニトロ酢酸(CAS No.625−75−2)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Nが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とNO2基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、30MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは90%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、4−アミノ−4−オキソブタン酸(スクシンアミド酸、CAS No.638−32−4)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とNH2基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、23MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは78%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、N−メチルスクシンアミド酸(CAS No.56269−39−7)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とNHCH3基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、21MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは76%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、N,N−ジメチルスクシンアミド酸(CAS No.2564−95−6)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とN(CH3)2基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、19MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは75%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、トリフルオロ酢酸(CAS No.76−05−1)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Fが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とCF3基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、27MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは86%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、トリクロロ酢酸(CAS No.76−03−9)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Clが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とCCl3基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、26MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは84%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、トリブロモ酢酸(CAS No.75−96−7)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Brが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とCBr3基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、25MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは82%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液の代わりに、トリヨード酢酸(CAS No.594−68−3)を含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させること以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Iが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とCI3基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、24MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは80%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例3のゾルゲル法による金属酸化物膜20の形成において、出発原料のうち、オルト珪酸テトラエチル2000mlを1500mlとし、クロロトリエトキシシラン500mlをさらに加えたこと以外は実施例3と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、ClおよびNが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とNO2基とが隣接した構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、32MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは92%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例11の金属酸化物膜20の形成において、ニトロ酢酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、ニトロ酢酸とクエン酸(CAS No.77−92−9)を含むトリエチルアミン溶液(ニトロ酢酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例11と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、Nが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、カルボニル基とNO2基とが隣接した構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、34MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは93%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例11の金属酸化物膜20の形成において、ニトロ酢酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸(CAS No.2345−56−4)とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液(3−アミノ−3−オキシプロピオン酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例11と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸の構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、40MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは98%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例13の金属酸化物膜20の形成において、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、3−アミノ−2−クロロ−3−オキソプロパン酸(CAS No.71501−30−9)とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液(3−アミノ−2−クロロ−3−オキソプロパン酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例13と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、N、HおよびClが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、3−アミノ−2−クロロ−3−オキソプロパン酸の構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、40MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは98%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例13の金属酸化物膜20の形成において、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、2−(アミノカルボニル)−2−酪酸(CAS No.4431−54−3)とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液(2−(アミノカルボニル)−2−酪酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例13と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、2−(アミノカルボニル)−2−酪酸の構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、36MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは95%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例13の金属酸化物膜20の形成において、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、α−(アミノカルボニル)−α−エチルベンゼン酢酸(CAS No.24130−91−4)とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液(α−(アミノカルボニル)−α−エチルベンゼン酢酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例13と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、α−(アミノカルボニル)−α−エチルベンゼン酢酸の構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、35MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは94%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例17の金属酸化物膜20の形成において、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液の代わりに、2−カルバモイル−2−イソプロピル−3−メチルブタン酸(CAS No.7499−15−2)とクエン酸を含むトリエチルアミン溶液(2−カルバモイル−2−イソプロピル−3−メチルブタン酸の濃度2×10-2mol/l、クエン酸の濃度2×10-3mol/l)に支持体10を浸漬させること以外は実施例17と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、Si、OおよびCに加えて、NおよびHが検出された。
さらに、13C−NMRにより、金属酸化物膜20に存在する炭素骨格の構造を分析したところ、2−カルバモイル−2−イソプロピル−3−メチルブタン酸の構造およびクエン酸の炭素骨格に相当するC−C(O)−OとC−O−C(O)−の構造であった。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、34MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは93%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例14の金属膜30の形成において、マグネトロンスパッタ法により膜厚100nmの銀を形成する代わりに、電子ビーム蒸着法により膜厚100nmのオスミウムを形成すること以外は実施例14と同様にして、光電変換装置用基板100を得た。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは99%、短絡電流密度Jscの平均値は11.1mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の金属酸化物膜20の形成において、塩化アセチルを含むトリエチルアミン溶液に支持体10を浸漬させないこと以外は実施例1と同様にして、支持体10上に金属酸化物膜20を得た。
実施例1と同様にして、金属酸化物膜20に存在する官能基を分析したところ、カルボニル基を含む特定の官能基に帰属する吸収ピークは測定されなかった。
また、実施例1と同様にして、金属酸化物膜20中に含まれる元素を分析したところ、SiおよびOのみが検出された。
実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100の金属酸化物膜20と金属膜30との間の付着力を測定したところ、10MPaであった。
次いで、実施例1と同様にして、光電変換装置用基板100上に光電変換層40および取り出し電極50を形成し、光電変換装置200を得た。
実施例1と同様にして求めた光電変換装置200の作製歩留りは55%、短絡電流密度Jscの平均値は15.4mA/cm2であった。
得られた結果を表1に示す。
実施例1の光電変換装置用基板は、比較例1のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例1の光電変換装置用基板における金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在するカルボニル基を介して良好に結合したことによるものと考えられる。
実施例2の光電変換装置用基板は、実施例1のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例2の光電変換装置用基板における金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在する、炭素よりも電気陰性度の大きな塩素原子とカルボニル基を有する原子団のカルボニル基を介して良好に結合したことによるものと考えられる。すなわち、塩素原子によりカルボニル基の炭素原子がより正電荷を帯びるようになり、金属膜の金属M2からカルボニル基への電子供与が進行し易くなったことによるものと考えられる。
実施例3〜10の光電変換装置用基板は、実施例2のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例3〜10の光電変換装置用基板における金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在する、電子吸引性基とカルボニル基を有する原子団のカルボニル基を介して良好に結合したことによるものと考えられる。すなわち、電子吸引性基が存在することにより、カルボニル基の炭素原子が直接電子を引っ張られ、さらに正電荷を帯びるようになり、金属膜の金属M2からカルボニル基への電子供与が進行し易くなったことによるものと考えられる。
また、電子吸引性基の中でも、実施例3のNO2が特に電子吸引能力に優れていると考えられる。
実施例11の光電変換装置用基板は、実施例2および3のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例11の光電変換装置用基板における金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在する、炭素原子よりも電気陰性度の大きな塩素原子と電子吸引性基NO2とカルボニル基を有する原子団のカルボニル基を介して良好に結合したことによるものと考えられる。すなわち、塩素原子と電子吸引性基NO2とが共にカルボニル基の炭素原子をより正電荷にすることに寄与したことによるものと考えられる。
実施例12の光電変換装置用基板は、実施例3のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例12の光電変換装置用基板における金属酸化物膜の金属M1と金属膜の金属M2とがそれらの界面に介在する、エステル結合とカルボニル基を有する原子団のカルボニル基を介して良好に結合したことによるものと考えられる。すなわち、エステル結合により鎖状または架橋的な構造中にカルボニル基が多く取り込まれ、カルボニル基の金属膜への付着力が向上したことによるものと考えられる。
実施例13〜17の光電変換装置用基板は、実施例12のものと比べて付着力が同等であるか大きく、光電変換装置の作製歩留りが同等であるか大きい。
これは、実施例13〜17の光電変換装置用基板の金属酸化物膜において、連結基Qと金属酸化物膜との間に形成されるエステル結合により、カルボニル基を有する原子団と金属酸化物膜とが強固に固定化されたことによるものと考えられる。
これは、実施例13および14の光電変換装置用基板の金属酸化物膜が有しているβケトエステル構造が他の構造と比べてカルボニル基を安定に存在させることによるものと考えられる。
また、実施例15〜17の光電変換装置用基板の中でも、実施例15のものは特に付着力に優れている。
これは、実施例15の光電変換装置用基板の金属酸化物膜が有している構造が最も低い嵩を有し、実施例16および17に比べてカルボニル基を有する原子団が数多く含まれたことによるものと考えられる。
実施例18の光電変換装置用基板は、実施例14のものと比べて付着力が大きく、光電変換装置の作製歩留りが大きい。
これは、実施例18の光電変換装置用基板における金属膜のオスミウムが、カルボニル基の結合方向に応じて、d軌道が分裂してできる安定な軌道を結合に使うことができたことによるものと考えられる。
20 金属酸化物膜
30 金属膜
31 反射金属膜
40 光電変換層
41 n型半導体層
42 i型半導体層
43 p型半導体層
50 取り出し電極
100 光電変換装置用基板
200 光電変換装置
Claims (8)
- カルボニル基(−C(O)−)を有する化合物で処理された金属酸化物膜の処理面上に金属膜を備えてなることを特徴とする光電変換装置用基板。
- 前記金属膜が、オスミウム(Os)または銀(Ag)からなる請求項1に記載の光電変換装置用基板。
- 前記金属酸化物膜が、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、シリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)から選択される酸化物からなる請求項1または2に記載の光電変換装置用基板。
- 前記カルボニル基を有する化合物が、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ニトロ基、アミノ基またはカルバモイル基で置換されていてもよい脂肪族飽和モノ、ジもしくはトリカルボン酸類、およびハロゲン化アシル類である請求項1〜3のいずれか1つに記載の光電変換装置用基板。
- 前記カルボニル基を有する化合物が、前記脂肪族飽和モノカルボン酸類としてのトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、ニトロ酢酸、α−(アミノカルボニル)−α−エチルベンゼン酢酸、3−アミノ−3−オキシプロピオン酸、3−アミノ−2−クロロ−3−オキソプロパン酸、2−(アミノカルボニル)−2−酪酸または2−カルバモイル−2−イソプロピル−3−メチルブタン酸;前記脂肪族飽和ジカルボン酸類としての4−アミノ−4−オキソブタン酸(スクシンアミド酸)、N−メチルスクシンアミド酸またはN,N−ジメチルスクシンアミド酸;前記脂肪族飽和トリカルボン酸類としてのクエン酸;前記ハロゲン化アシル類としての塩化アセチルである請求項4に記載の光電変換装置用基板。
- カルボニル基を有する化合物を含む溶液に金属酸化物膜を20〜180℃で5分〜100時間浸漬し、次いで20〜180℃で0.1〜24時間乾燥し、乾燥された金属酸化物膜の処理面上に金属膜を形成して、金属酸化物膜上に金属膜を備えた光電変換装置用基板を得ることを特徴とする光電変換装置用基板の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1つに記載の光電変換装置用基板の金属膜上に、光電変換層および取り出し電極が順次積層されてなることを特徴とする光電変換装置。
- 前記光電変換層が、アモルファスシリコンまたは微結晶シリコンからなる請求項7に記載の光電変換装置。
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