JP5102017B2 - 押出用ダイスおよび押出材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ケース内にリング状の押さえプレートを介してダイス本体が組み付けられる三重構造の押出用ダイス、およびこの押出用ダイスを用いた押出材の製造方法に関する。
押出用ダイスの構造としては、ダイス本体を直接ケース内に嵌合させる二重構造のもの(特許文献1)や、押さえプレートを介してケース内にダイス本体を嵌合させる三重構造のもの(特許文献2)がある。
これらの押出用ダイスは、ダイス本体または押さえプレートに対して圧力をかけて圧入してケース内に固定するか、高温に加熱して焼嵌めをし、ケース内にダイス本体を直接固定し、あるいは押さえプレートを介してケース内に固定するのが一般的である。
特開昭63−260624号公報 特開昭63−149011号公報
しかしながら、圧入により固定するためにはプレス装置が必要であり、焼嵌めにより固定するには加熱装置であって、いずれの方法にも特別な装置と作業が必要である。さらに、熱衝撃に弱い材料を焼嵌めするとクラックが生じることもある。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、ダイス本体をケース内に固定するに際し、特別な装置や工程を必要としない押出用ダイス、およびこの押出用ダイスを用いた押出材の製造方法の提供を目的とする。
即ち、本発明は下記[1]〜[6]に記載の構成を有する。
[1]ケース内にリング状の押さえプレートを介してダイス本体が組み付けられる押出用ダイスであって、
前記ダイス本体、押さえプレートおよびケースを仮組みし、押出圧力を受けて前記押さえプレートを圧入することにより前記ダイス本体に締め付け力が与えられ、該ダイス本体がケース内に固定されることを特徴とする押出用ダイス。
[2]前記ダイス本体と前記押さえプレートとの合わせ面、および前記押さえプレートと前記ケースとの合わせ面の少なくとも一方の合わせ面がテーパー状に形成されている前項1に記載の押出用ダイス。
[3]前記ダイス本体と前記押さえプレートとの合わせ面がテーパー状に形成されている前項2に記載の押出用ダイス。
[4]前記合わせ面のテーパー角度は1〜50°である前項2または3に記載の押出用ダイス。
[5]仮組状態において前記押さえプレートとケースとの間に隙間が形成され、この隙間の大きさによりダイス本体に対する締め付け力が調節される前項1〜4のいずれかに記載の押出用ダイス。
[6]前項1〜5のいずれかに記載の押出用ダイスを仮組みし、
仮組みした押出用ダイスを押出機に取り付け、前記押出用ダイスから押出材料を押出して押出材を製造する工程において、押出初期の押出圧力により前記押さえプレートを圧入して前記ダイス本体に締め付け力を与え、該ダイス本体をケース内に固定することを特徴とする押出材の製造方法。
上記[1]に記載の押出用ダイスは、押出圧力を利用して押さえプレートを圧入し、ダイス本体に締め付け力を与えてケース内に固定するものであるから、ダイス本体を固定するための特別な装置や作業を必要としない。
上記[2]に記載の押出用ダイスによれば、押さえプレートの圧入が円滑に行われ、かつくさび効果によって大きな締め付け力が得られる。
上記[3]に記載の発明によれば、ダイス本体に直接締め付け力を与えることができる。
上記[4]に記載の押出用ダイスによれば、ダイス本体に対して特に優れた締め付け力を与えることができる。
上記[5]に記載の押出用ダイスによれば、ダイス本体に対する締め付け力を調節することができる。
上記[6]に記載の押出材の製造方法によれば、押出初期にダイス本体がケース内に固定されるので、ダイス本体の固定と押出材の製造を一工程で行うことができる。
図1および図2は本発明の押出用ダイスの一実施形態であり、図1は押出用ダイスを分解した状態を示し、図2は押出用ダイスを仮組みした状態を示している。なお、以下の説明において、押出材の進行方向(図面上の右方向)を前方または前、逆方向を後方または後とする。
押出用ダイス(1)は、ダイス本体(10)、前記ダイス本体(10)を装填するケース(30)、および前記ケース(30)内にダイス本体(10)を固定するための押さえプレート(20)を備える三重構造である。
ダイス本体(10)は、直径56mmの断面円形の押出材(S)を成形するベアリング部(11)を有し、外周面(12)は前方に向かって径大となるテーパー面に形成されている。前記外周面(12)のテーパー角度(θ)は10°であり、押出の軸線と平行な直線に対して10°傾斜している。
押さえプレート(20)はリング状であり、前記ダイス本体(10)と合わさる内周面(21)は前方に向かって内径が拡大されたテーパー面に形成され、ケース(30)と合わさる外周面(22)は押出の軸線に平行である。即ち、前記押さえプレート(20)は後方に向かって径方向の厚みが大きくなり前方に向かって厚みが小さくなる、くさび形の断面を有している。前記内周面(21)のテーパー角度(θ)は前記ダイス本体(10)の外周面(12)と同じく10°である。また、前端面(23)には、仮止め用ボルト(35)を係合させるための有底のネジ穴(24)が設けられている。
ケース(30)は、前後方向に貫通する孔を有し、後端面に前記ダイス本体(10)を嵌め入れるための第1凹部(31)と前記押さえプレート(20)を嵌め入れるための第2凹部(32)とが一体に形成されている。また、前端面から前記第2凹部(32)の底部(33)に貫通するボルト穴(34)が穿設されている。
前記押出用ダイス(1)の仮組みは以下のようにして行う。
前記ダイス本体(10)をケース(30)の第1凹部(31)に装填するとともに、押さえプレート(20)を第2凹部(32)に装填する。次に、前記ケース(30)のボルト穴(34)に仮止め用ボルト(35)を挿入し、先端部を第2凹部(32)内に突出させて押さえプレート(20)のネジ穴(24)にネジ止めする。この仮組状態において、前記押さえプレート(20)とケース(30)は仮止めボルト(35)により連結され、ダイス本体(10)のテーパー状の外周面(12)と押さえプレート(20)のテーパー状の内周面(21)とは互いに接触しているが、ダイス本体(10)に対する締め付け力は発生していない。また、前記押さえプレート(20)の前端面(23)とケース(30)の第2凹部(32)の底部(33)との間には隙間(36)が存在し、押さえプレート(20)の後端面はケース(30)の後端面から突出している。この実施形態において、前記隙間(36)の押出方向における距離(D1)は1mmである。
図3に示すように、仮組みした押出用ダイス(1)は、予熱した後に押出機に取り付け、後方から押出圧力を付与してビレット(40)を押出す。押出の開始とともに、ビレット(40)に接している全ての部分に圧力がかかり、前記押出用ダイス(1)の後端面にも圧力がかかる。この押出圧力により、図4に示すように、押さえプレート(20)は押出方向に圧入され、より厚肉の部分がダイス本体(10)とケース(30)との間に入り込んでいくとともに、圧縮力を受けて変形し、ケース(30)の第2凹部(32)内は押さえプレート(20)で満たされる。この押さえプレート(20)の圧入により、ダイス本体(10)は外周面(12)から締め付け力を受けて、押さえプレート(20)を介してケース(30)内に固定される。前記ダイス本体(10)と押さえプレート(20)との合わせ面(12)(21)がテーパー形状であるため、押さえプレート(20)の前進による圧入は円滑に行われ、かつくさび効果によって大きな締め付け力が発生する。このとき、前記押さえプレート(20)を、その前端面(23)がケース(30)の底面(33)に突き当たるまで圧入することにより、ダイス本体(10)に対する締め付け力を一定に保持することができる。また、ベアリング部(11)を流れる押出材料がベアリング部(11)を外向きに押す力として作用するので、ダイス本体(10)に保持力を高めることになる。
なお、前記押出用ダイス(10)の予熱は仮組み後に行っても良いし、ケースのみを予熱してダイス本体(10)およびケース(30)を仮組しても良い。
図4に示すように、前記ダイス本体(10)が固定された状態において、押さえプレート(20)の前進により押さえプレート(20)の前端面(23)とケース(30)との間の隙間(36)が無くなり、かつ押出用ダイス(1)の後端面において、ダイス本体(10)、押さえプレート(20)、ケース(30)の各後端面の位置が揃っている。また、前記仮止めボルト(35)は押さえプレート(20)の圧入によって僅かに押し戻されて、仮止めボルト(35)の頭部とボルト穴(34)の段差部(34a)との間に新たな隙間が生じている。
前記ダイス本体(10)が固定された後は、前記仮止め用ボルト(35)を抜いてもその後の押出に支障を来すことはないが、前記仮止め用ボルト(35)を増し締めすることによってダイス本体(10)の固定力をさらに確実なものとすることができる。
なお、図3の仮組状態において、押さえプレート(20)の外周面(22)とケース(30)との間に隙間があっても良い。前記隙間は押さえプレート(20)の変形によって無くなるからである。また、前記隙間には押出初期に押出材料が入り込むが、押さえプレート(20)の前進に伴って排出されるので押出に悪影響を及ぼすこともない。また、前記隙間に押出材料が僅かに残存していても押出に悪影響を及ぼすこともない。
前記ダイス本体(10)がケース(30)に固定された後は通常の押出と同じく、ビレット(40)に付与される押出圧力により押出成形がなされ、押出材(S)が製造される。即ち、前記ダイス本体(10)の固定と押出材(S)の製造を、工程を中断することなく一工程で行うことができる。
上述したダイス本体(10)の固定は押出開始後瞬時に行われるので、従来の押出と同じく安定した押出成形がなされる。押さえプレートをプレス装置によって圧入固定する場合にかかる面圧が20〜60MPa程度であるのに対し、押出圧力が150〜300MPaであることからも、押さえプレート(20)の圧入およびダイス本体(10)の固定が押出初期に速やかに行われることがわかる。しかも、プレス装置で圧入する場合は、押さえプレート(20)に治具を押し当てて加圧するので治具による圧痕や打痕が生じるが、本発明は、塑性流動している押出材料で圧入するので圧痕等の発生はなく製作時の表面状態が保たれる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
3つの部材の合わせ面におけるテーパー形状は、ダイス本体(10)と押さえプレート(20)との合わせ面、押さえプレート(20)とケース(30)との合わせ面の少なくとも一方に採用されていれば、ダイス本体(10)に対して押さえプレート(20)の圧入による締め付け力を与えることができる。但し、ダイス本体(10)を直接的に締め付けるという観点から、ダイス本体(10)と押さえプレート(20)のとの合わせ面をテーパー形状に形成することが好ましい。勿論、両方の合わせ面をテーパー形状にすることもできる。
前記合わせ面におけるテーパー角度(θ)(θ)は1〜50°の範囲が好ましい。1°未満では押さえプレート(20)のテーパー面から受ける締め付け力が小さく、十分なくさび効果が得られない。また、50°を超えるとテーパー面の接触面に受ける面圧が大きくなり過ぎるために、圧入不良を生じたり、ダイス本体(10)への負担により破損を生じるおそれがある。特に好ましいテーパー角度(θ)(θ)5〜20°である。また、前記ダイス本体(10)におけるテーパー角度(θ)と押さえプレート(20)におけるテーパー角度(θ)は同一角度である必要はなく、θ>θのように異なる角度であっても良い。角度を違えることによって長いテーパー面を有した圧入や、ダイス本体(10)にかける締め付け力の範囲を変えることもできる。
さらに、どちらの合わせ面もテーパーに形成されていない場合も本発明に含まれる。合わせ面が傾斜していなくても、圧入によって押さえプレートが拡径されればダイス本体に締め付け力を与えることができるからである。
また、仮組状態において、前記押さえプレート(20)の前端面(23)とケース(30)の第2凹部(32)の底面(33)との間の隙間(36)は、押さえプレート(20)の圧入によって無くなる締め代であり、この締め代の大きさによってダイス本体(10)に対する締め付け力を調節することができる。前記隙間(36)は、押出方向における距離(D1)として0.3〜3mmが好ましく、特に0.5〜1.5mmの範囲が好ましい。
なお、仮組状態において前記隙間(36)が無い場合でも押さえプレート(20)を圧縮変形させることによってダイス本体(10)に締め付け力を付与することができるが、前記隙間(36)を有する方が押さえプレート(20)の前進によるくさび効果が大きい。
また、圧入後の押さえプレート(20)の後端面の位置は、必ずしもケース(30)の後端面の位置と一致している必要はなく、ケース(30)よりも前方まで圧入される構造であっても良い。押さえプレート(20)がケース(30)よりも後方に突出していなければ押出材料の流れを阻害することはない。
また、押さえプレートの前端面および後端面は図示例のようなフラット面であることも要さない。例えば、断面において、受圧面(後端面)の中央部を前方に凹ませるとともに前端面の中央部を突出させれば、バネ効果によってダイス本体に対する締め付け力を増大させることができる。
さらに、本発明は、図示例の1孔押出用ダイスに限定されず、2孔以上の複数孔押出用ダイスにも適用できる。
以上のように、本発明の押出用ダイスは押出圧力を利用してダイス本体をケース内に固定するものであるから、ダイス本体を固定するための特別な装置や作業を必要としない。このため、ダイス本体の固定と押出材の製造を一工程で行うことができる。また、本発明の押出用ダイスおよび押出材の製造方法は押出材料の組成に拘わらず適用できる。
本発明の押出用ダイスは、押出圧力を利用してダイス本体をケース内に固定するものであるから、あらゆる金属の押出材の製造に利用できる。
本発明の押出用ダイスの一実施形態の分解状態を示す断面図である。 図1の押出用ダイスの仮組状態を示す断面図である。 図1の押出用ダイスを用いた押出において、押出初期の状態を示す断面図である。 図1の押出用ダイスを用いた押出において、押出初期を過ぎた時期の状態を示す断面図である。
符号の説明
1…押出用ダイス
10…ダイス本体
12…外周面(合わせ面)
20…押さえプレート
22…内周面(合わせ面)
30…ケース
36…隙間
θ…テーパー角度

Claims (7)

  1. ケースの後面に設けられた凹部内にリング状の押さえプレートを介してダイス本体が組み付けられる押出用ダイスであって、
    前記ダイス本体、押さえプレートおよびケースを仮組みし、押出圧力を受けて前記押さえプレートを圧入することにより前記ダイス本体に締め付け力が与えられ、該ダイス本体がケースの凹部内に固定されることを特徴とする押出用ダイス。
  2. 前記ダイス本体と前記押さえプレートとの合わせ面、および前記押さえプレートと前記ケースとの合わせ面の少なくとも一方の合わせ面がテーパー状に形成されている請求項1に記載の押出用ダイス。
  3. 前記ダイス本体と前記押さえプレートとの合わせ面がテーパー状に形成されている請求項2に記載の押出用ダイス。
  4. 前記合わせ面のテーパー角度は1〜50°である請求項2または3に記載の押出用ダイス。
  5. 仮組状態において前記押さえプレートとケースとの間に隙間が形成され、この隙間の大きさによりダイス本体に対する締め付け力が調節される請求項1〜4のいずれかに記載の押出用ダイス。
  6. 前記ケースの前面に凹部に開口する穴が穿設され、この穴を通したボルトを前記押さえプレートにねじ止めしてケースと押さえプレートとを連結することによって、前記ダイス本体、押さえプレートおよびケースを仮組みする請求項1〜5のいずれかに記載の押出用ダイス。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の押出用ダイスを仮組みし、
    仮組みした押出用ダイスを押出機に取り付け、前記押出用ダイスから押出材料を押出して押出材を製造する工程において、押出初期の押出圧力により前記押さえプレートを圧入して前記ダイス本体に締め付け力を与え、該ダイス本体をケース内に固定することを特徴とする押出材の製造方法。
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