JP5101088B2 - 消臭性ポリウレタン発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば住宅や自動車の内装材料として用いられる消臭性ポリウレタン発泡体に関するものである。
近年、住宅や自動車の内装材料に関し、揮発性有機化合物〔VOC(Volatile Organic Compounds)〕についての環境基準が厳しくなり、特にシックハウス症候群の要因とされるホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについて厳しい規定が定められている。そのため、住宅や自動車の内装材料として使用されるポリウレタン発泡体に吸着剤として活性炭、ゼオライト等の多孔質無機物質を含ませ、VOCを吸着する技術が知られている。
また、本願出願人は、アルデヒド類を含有する原料と、アルデヒド類を吸着し得る吸着剤とを接触させ、原料中に含まれるアルデヒド類を吸着剤により除去し、その後アルデヒド類を吸着した吸着剤を分離、除去して得られた原料からポリウレタン発泡体を製造する技術を提案した(例えば、特許文献1を参照)。吸着剤としては、モノヒドラジド化合物又はジヒドラジド化合物が用いられる。
特開2006−77128号公報(第2頁及び第6頁)
しかしながら、ポリウレタン発泡体に吸着剤として多孔質無機物質を含ませる場合には、多孔質無機物質に吸着されたアルデヒド類が加熱、振動などの外的要因が加えられることで再度空気中に放出される。そのため、室内におけるアルデヒド類の濃度は、一旦減少するものの、再度上昇する傾向を示すという問題があった。
また、特許文献1に記載されているポリウレタン発泡体においては、ポリウレタン発泡体の原料を予め吸着剤で吸着処理し、アルデヒド類が吸着された吸着剤を除去した後、その原料を反応及び発泡させてポリウレタン発泡体が製造される。そのため、反応及び発泡過程で生成するVOC、さらにはポリウレタン発泡体の使用時における雰囲気中のVOCを減少させることができなかった。
そこで本発明の目的とするところは、原料に含まれているVOC並びに反応及び発泡で生成されるVOC、さらには使用時におけるVOCを酸化、分解して無害化することができると共に、その性能を長期に渡って発揮することができる消臭性ポリウレタン発泡体を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の消臭性ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び消臭性化合物を含むポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させて得られる消臭性ポリウレタン発泡体であって、前記消臭性化合物は、硫酸第一鉄(FeSO )又は酸化銀(Ag O)であり、揮発性有機化合物を酸化、分解すると共に自身も酸化され、前記酸化、分解後に自身が水分により還元されて元の硫酸第一鉄(FeSO )又は酸化銀(Ag O)戻り、該消臭性化合物の含有量がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の消臭性ポリウレタン発泡体は、請求項1に係る発明において、前記揮発性有機化合物は、アルデヒド類であることを特徴とするものである
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の消臭性ポリウレタン発泡体においては、ポリウレタン発泡体の原料に消臭性化合物として硫酸第一鉄(FeSO )又は酸化銀(Ag O)がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部配合されている。このため、例えば得られる消臭性ポリウレタン発泡体がアルデヒド類などのVOC雰囲気に晒されると、発泡体中に含まれる消臭性化合物がアルデヒド類を酸化してカルボン酸に変性させ、さらに酸化を促進させてカルボン酸を二酸化炭素と水に分解させる。このとき、消臭性化合物自身は酸化状態に変性されるが、空気中の水分により還元され、元の還元状態に戻り再び消臭性化合物としての機能を発現する。
従って、原料に含まれているVOC並びに反応及び発泡で生成されるVOC、さらには使用時におけるVOCを酸化、分解して無害化することができると共に、その性能を長期に渡って発揮することができる。
請求項2に記載の発明の消臭性ポリウレタン発泡体では、揮発性有機化合物がアルデヒド類であることから、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類を容易に酸化、分解して無害化することができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における消臭性ポリウレタン発泡体(以下、ポリウレタン発泡体又は単に発泡体ともいう)は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び消臭性化合物を含むポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させて得られるものである。その際、ポリウレタン発泡体の原料には、消臭性化合物としてVOCを酸化、分解すると共に自身も酸化され、前記酸化、分解後に自身が水分により還元されて元の消臭性化合物に戻る化合物が含まれ、その消臭性化合物の含有量がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部に設定される。この消臭性化合物を所定量配合することにより、ポリウレタン発泡体はその機械的物性を保持しつつ、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類に代表されるVOCを酸化、分解して除去し、消臭が図られる。
まず、ポリウレタン発泡体の原料について順に説明する。
(ポリオール類)
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール又はポリエステルポリオールが単独又は混合して用いられるが、ポリイソシアネート類との反応性が良く、加水分解し難いなどの点からポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキシドとエチレンオキシドとを付加重合させた重合体よりなるポリエーテルポリオール、その変性体等が用いられる。変性体としては、前記ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル又はスチレンを付加させたもの、或はアクリロニトリルとスチレンの双方を付加させたもの等が挙げられる。ここで、多価アルコールは1分子中に水酸基を複数個有する化合物であり、例えばグリセリン、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとして具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。
ポリエーテルエステルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールに、ポリカルボン酸無水物と環状エーテル基を有する化合物とを反応させて得られる化合物である。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。ポリカルボン酸無水物としては、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、トリメリット酸等の無水物が挙げられる。環状エーテル基を有する化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。これら3成分を反応させる順序については特に限定されない。例えば、3成分を同時に反応させる方法、ポリオキシアルキレンポリオールとポリカルボン酸無水物に環状エーテル基を有する化合物を吹き込んで反応させる方法、ポリオキシアルキレンポリオールとポリカルボン酸無水物の一部を反応させ、それに環状エーテル基を有する化合物とポリカルボン酸無水物の残部を反応させる方法等がある。
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが用いられる。
これらのポリオール類は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができる。
(ポリイソシアネート類)
次に、ポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数個有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、これらの変性物等が用いられる。
ポリイソシアネート類のイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100〜130の範囲に設定することが好ましい。イソシアネート指数が100未満の場合にはポリウレタン発泡体の硬さ、引張強さ等の物性が低下し、130を越える場合にはポリウレタン発泡体の架橋密度が高くなり過ぎて好ましくない。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール類の水酸基及び発泡剤としての水等の活性水素基に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を越えるということは、ポリイソシアネート類がポリオール類に対して過剰であることを意味する。
(発泡剤)
発泡剤はポリウレタン樹脂を発泡させてポリウレタン発泡体とするためのもので、例えば水のほかジクロロメタン(塩化メチレン)、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、炭酸ガス等が用いられる。これらの発泡剤のうち、ポリイソシアネート類と速やかに反応して十分な炭酸ガスを発生でき、取扱いが良好である点から水が好ましい。発泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部当たり1〜5質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が1質量部未満の場合には、発泡が不十分となり、低密度の発泡体が得られ難くなる。一方、5質量部を越える場合には、発泡が過剰となり、発泡体の硬さ、引張強さ等の物性が低下する。
(触媒)
触媒は主としてポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応やポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応を促進するためのものである。触媒として具体的には、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N´,N´−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン(アミン触媒)、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ラウリン酸ジブチルスズ(ジブチルスズジラウレート)等の有機金属化合物(金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が単独、或いは混合して用いられる。触媒としては、その効果を高めるためにアミン触媒と金属触媒とを組合せて用いることが好ましい。
触媒の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜1.5質量部であることが好ましい。触媒の含有量が0.5質量部未満の場合、ウレタン化反応や泡化反応などの進行が十分ではなく、発泡体の機械的物性等が低下する傾向を示す。一方、1.5質量部を越える場合、ウレタン化反応や泡化反応が過剰に促進されるとともに、両反応のバランスが悪くなり、発泡体の歪特性が低下する。
(消臭性化合物)
この消臭性化合物は、アルデヒド類などのVOCを酸化、分解して消臭機能を発現すると共に自身は酸化され、酸化された自身が水分で還元されて元の消臭性化合物に戻る性質をもつ化合物である。そのような消臭性化合物としては、硫酸第一鉄(FeSO)、酸化第一鉄(FeO)、塩化第一鉄(FeCl)等の鉄系化合物、酸化銀(AgO)、硝酸銀(AgNO)、塩化銀(AgCl)、硫酸銀(AgSO)等の銀系化合物などが用いられる。係る消臭性化合物を含む消臭剤には、金属イオンとキレート化合物を形成して安定化させるためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のキレート剤を含むことが好ましい。また、消臭剤には、ゼオライトなどの物理的な吸着作用を有する吸着剤を含むことができる。
そして、例えばアセトアルデヒド(CHCHO)は、下式に示すように、消臭性化合物によって酸化されて酢酸(CHCOOH)となり、その酢酸はさらに消臭性化合物によって酸化、分解されて二酸化炭素(CO)と水(HO)になる。
CHCHO → CHCOOH → CO+H
また、ホルムアルデヒド(HCHO)は、下式に示すように、消臭性化合物によって酸化されて蟻酸(HCOOH)となり、その蟻酸はさらに消臭性化合物によって酸化、分解されて二酸化炭素(CO)と水(HO)になる。
HCHO → HCOOH → CO+H
これらの酸化又は酸化、分解の過程で、消臭性化合物としての硫酸第一鉄は硫酸第二鉄〔(Fe)(SO〕となり、一価の酸化銀(AgO)は二価の酸化銀(AgO)となる。すなわち、消臭性化合物はアルデヒド類を酸化又は酸化、分解する過程で自身も酸化状態に変化する。しかし、酸化状態となった消臭性化合物は、空気中の水分(還元剤)により還元され、硫酸第二鉄は硫酸第一鉄に、二価の酸化銀(AgO)は一価の酸化銀(AgO)に戻る。従って、この消臭性化合物は再びアルデヒド類などのVOCを酸化、分解することができ、加えてそのような還元状態から酸化状態を経て再び還元状態へ戻るサイクルが例えば10回以上繰り返され、長期に渡って消臭機能を発現することができる。
係る消臭性化合物の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部である。この含有量が0.003質量部未満の場合には、消臭性化合物はその機能発現が不十分となり、アルデヒド類などのVOCの酸化、分解が不足する。その一方、0.110質量部を越える場合には、アルデヒド類などのVOCを酸化分解する機能は十分であるが、過剰な消臭性化合物によりポリウレタン発泡体の機械的物性が著しく低下する。
(整泡剤)
整泡剤は発泡を円滑に行うためにポリウレタン発泡体の原料に配合されることが好ましく、係る整泡剤としては、ポリウレタン発泡体の製造に際して一般に使用されるものを用いることができる。整泡剤として具体的には、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの中でも、線状或いは分枝状ポリエーテル−シロキサン共重合体が好ましく、特に連通性を高めるためには整泡力の低い線状ポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体がより好ましい。整泡剤の含有量は、ポリオール類100質量部当たり0.5〜2.5質量部であることが好ましい。この含有量が0.5質量部未満の場合には、ポリウレタン発泡体の原料の発泡時における整泡作用が十分に発現されず、良好な発泡体を得ることが難しくなる。一方、2.5質量部を越える場合には、整泡作用が強くなり、セルの連通性が低下する傾向を示す。
(その他の配合剤)
ポリウレタン発泡体の原料にはその他必要に応じて、架橋剤、酸化防止剤、充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤等を常法に従って配合することができる。
(ポリウレタン発泡体の製造)
次に、上記のポリウレタン発泡体の原料を用いて消臭性ポリウレタン発泡体を製造する場合には常法に従って行われる。すなわち、発泡体の製造に当っては、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させるワンショット法、或いはポリオール類とポリイソシアネート類とを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオール類を反応させるプレポリマー法のどちらも採用される。そして、ポリオール類とポリイソシアネート類との混合液、或いはプレポリマーとポリオール類との混合液に、発泡剤を混和し、さらに整泡剤、触媒、消臭性化合物などを添加して攪拌、混合し、それらの原料をウレタン化反応、架橋反応などによって反応させると共に、泡化反応によって発泡させる。
このようにしてポリウレタン発泡体、例えば軟質ポリウレタン発泡体が得られる。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、軽量で、一般にセル(気泡)が連通する連続気泡構造を有し、柔軟性があって、かつ復元性を有するものをいう。従って、軟質ポリウレタン発泡体は、クッション性、衝撃吸収性、高弾性、低反発弾性等の特性を発揮することができる。
発泡形態としては、金型を用いるモールド発泡のほか、自然発泡させるスラブ発泡が採用されるが、発泡の容易性及び生産性の点からスラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、攪拌、混合された原料をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に原料が常温、大気圧下で反応し、自然発泡することで行われる。その後、乾燥炉内で硬化(キュア)することにより、スラブ発泡体が得られる。ポリウレタン発泡体を製造する際の反応は複雑であるが、基本的には次のような反応が主体となっている。すなわち、ポリオール類とポリイソシアネート類とが付加重合するウレタン化反応、ポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応及びこれらの反応生成物とポリイソシアネート類との架橋反応である。
このようにして得られるポリウレタン発泡体は、前記消臭性化合物が含まれていることによってアルデヒド類などのVOCを酸化、分解させることができ、ほとんど無害化させることができる。また、ポリウレタン発泡体の見掛け密度は例えば25〜35kg/m、機械的物性として硬さが例えば100〜150N、引張強さが例えば5〜8kPa、伸びが例えば130〜180%に形成される。
(作用)
さて、本実施形態の作用について説明すると、消臭性ポリウレタン発泡体はポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び消臭性化合物を含むポリウレタン発泡体の原料を常法に従って反応及び発泡させることにより得られる。この場合、発泡体の原料には硫酸第一鉄、酸化銀等の消臭性化合物がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部含まれている。そのため、発泡体の原料に含まれるアルデヒド類のほか、反応及び発泡過程で生成する可能性のあるアルデヒド類が消臭性化合物により酸化、分解される。例えば、アセトアルデヒドが酸化されて酢酸に変化し、その酢酸がさらに酸化されて二酸化炭素と水に分解され、アセトアルデヒドが無臭化及び無害化される。そのような酸化、分解が行われると、消臭性化合物自身は酸化状態に変化するが、空気中の水分により還元されて元の還元状態の消臭性化合物に戻り、再びその機能を発現する。このような消臭性化合物の酸化と還元とが繰り返され、消臭性化合物が常にその機能を維持することができるため、消臭作用が持続される。
(効果のまとめ)
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の消臭性ポリウレタン発泡体においては、ポリウレタン発泡体の原料に消臭性化合物がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部配合されている。この消臭性化合物は、アルデヒド類などのVOCを酸化、分解させる機能を発揮するため、発泡体の原料に含まれているVOC並びに反応及び発泡で生成されるVOC、さらには使用時における雰囲気中のVOCを酸化、分解して無害化することができると共に、その性能を長期に渡って発揮することができる。
・ 前記消臭性化合物が鉄系化合物又は銀系化合物であることにより、VOCの酸化、分解作用及び自身の還元作用が効果的に発現される。
・ 揮発性有機化合物が特にアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類であることにより、そのようなアルデヒド類を容易に酸化、分解して無害化することができる。
・ 消臭性化合物としての酸化銀等の銀系化合物を用いることにより、得られるポリウレタン発泡体は抗菌効果を発揮することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜7及び比較例1〜7)
まず、各実施例及び比較例で用いたポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤、整泡剤、触媒及び消臭性化合物を含むポリウレタン発泡体の原料を以下に示す。
ポリオールGP3050:グリセリンにプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを付加重合させたポリエーテルポリオールで、分子量3000、水酸基の官能基数が3、水酸基価56(mgKOH/g)、三洋化成工業(株)製、ポリオールGP3050。
ポリイソシアネートT−80:日本ポリウレタン工業(株)製、トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%との混合物)。
整泡剤:シリコーン、東レダウコーニング(株)製、SZ−1136。
アミン触媒:トリエチレンジアミン、中京油脂(株)製、LV33。
金属触媒:ジブチルスズジラウレート、城北化学工業(株)製、MRH110。
消臭剤A:消臭性化合物としての硫酸第一鉄(FeSO)を0.5質量%含有し、キレート剤(EDTA)などを含む粉末、平均粒子径30μm。
消臭剤B:消臭性化合物としての酸化銀(AgO)を1.2質量%含有し、キレート剤(EDTA)、ゼオライトなどを含む粉末、平均粒子径30μm。
活性炭:武田薬品工業(株)製、粒状白鷺Gx4/6。
モレキュラーシーブ:ユニオン昭和(株)製、モレキュラーシーブ3A。
そして、これらの各原料を表1及び表2に示す含有量で配合して各実施例及び比較例におけるポリウレタン発泡体の原料を調製した。その後、これらポリウレタン発泡体の原料を縦、横及び深さが各500mmの発泡容器内に注入し、常温、大気圧下で発泡させた後、加熱炉を通過させて架橋(硬化)させることにより軟質スラブ発泡体を得た。その途中、発泡状態を目視によって観察した。
この場合、比較例1では、消臭剤を配合しない例を示す。比較例2では消臭剤Aの含有量が過少である例、比較例3では消臭剤Aの含有量が過多である例を示す。比較例4では消臭剤Bの含有量が過少である例、比較例5では消臭剤の含有量が過多である例を示す。比較例6では、吸着剤として活性炭を配合した例を示し、比較例7では吸着剤としてモレキュラーシーブを配合した例を示す。
得られたポリウレタン発泡体について、見掛け密度、硬さ、引張強さ、伸び、並びにアセトアルデヒド及び酢酸の濃度を以下の測定方法に従って測定した。それらの結果を表1及び表2に示す。
(測定方法)
見掛け密度(kg/m):JIS K7222(1999)に準拠して測定した。
硬さ(N):JIS K6400−2(2004、D法)に準拠して測定した。
引張強さ(kPa)及び伸び(%):JIS K6400−5(2004)に準拠して測定した。
アセトアルデヒド及び酢酸の濃度:5Lのフッ素樹脂製の袋に縦100mm、横100mm及び厚さ10mmのポリウレタン発泡体のサンプルを入れた後、アセトアルデヒド又は酢酸を清浄空気(湿度50%)中の濃度が50ppmとなるように調整した。そして、袋を25℃の恒温槽内に放置し、30分、60分、120分後に検知管にてアセトアルデヒド又は酢酸の濃度を測定した。その後、恒温槽内を70℃まで加熱して30分後に検知管でアセトアルデヒド又は酢酸の濃度を測定した。さらに、実施例7においては、上記の消臭操作を10回繰返し、最後の消臭操作の結果を表1及び表2に示した。表1及び表2における/の左側の数値は濃度(ppm)を示し、/の右側の数値は厚生労働省指針値(μg/m)の単位での値を示す。
Figure 0005101088
表1に示した結果から、実施例1〜7においては、ポリウレタン発泡体の原料に消臭性化合物をポリオール100質量部当たり0.003〜0.110質量部配合したことから、アセトアルデヒド及び酢酸の濃度を十分に抑えることができたと同時に、硬さ、引張強さ及び伸びを良好に保持することができた。この場合、30〜60分後にアセトアルデヒドが酸化されて酢酸が生成し、その酢酸がさらに酸化、分解されて120分後には消失していることがわかる。120分後におけるアセトアルデヒドの濃度は、実施例1〜7のいずれにおいても、厚生労働省の指針値である48μg/mを下回っていた。さらに、70℃に加熱した後もアセトアルデヒド又は酢酸が増加することはなかった。加えて、実施例7に示したように、消臭操作の繰返し回数を10回とした場合にも、アセトアルデヒド及び酢酸の濃度を十分に抑制することができ、酸化、分解性能が長期に渡って発揮されることが明らかになった。
Figure 0005101088
一方、表2に示した結果から、比較例1では消臭剤を配合しなかったため、アセトアルデヒドを全く低減させることができなかった。比較例2では消臭剤Aの含有量が過少であったため、アセトアルデヒドをほとんど低減させることができなかった。比較例3では消臭剤Aの含有量が過多であったため、アセトアルデヒドを低減させることはできたが、過剰な消臭剤Aによって発泡体の硬さ、引張強さ及び伸びが大きく低下した。比較例4では消臭剤Bの含有量が過少であったため、アセトアルデヒドをほとんど低減させることができなかった。比較例5では消臭剤Bの含有量が過多であったため、アセトアルデヒドを低減させることはできたが、過剰な消臭剤Bによって発泡体の硬さ、引張強さ及び伸びが大きく低下した。比較例6では吸着剤として活性炭を配合し、比較例7では吸着剤としてモレキュラーシーブを配合したため、アセトアルデヒドをある程度吸着させることはできたが、酢酸は増えておらず、アセトアルデヒドが酸化、分解されていないことが示された。
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記消臭性化合物として、複数の化合物を適宜組合せて用いることができる。
・ 前記消臭性化合物として、亜鉛系化合物等を使用することも可能である。
・ 前記VOCは、酢酸エチル等の脂肪族化合物、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族化合物などの有機化合物であってもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ポリウレタン発泡体の原料にはキレート剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消臭用ポリウレタン発泡体。このように構成した場合には、請求項1又は請求項2に係る発明の効果に加えて、消臭性化合物を安定化させることができる。
・ 前記アルデヒド類はアセトアルデヒドであることを特徴とする請求項に記載の消臭用ポリウレタン発泡体。このように構成した場合には、請求項に係る発明の効果に加えて、アセトアルデヒドを酸化分解して酢酸とし、その酢酸を酸化分解して二酸化炭素と水にし、無臭及び無害化させることができる。

Claims (2)

  1. ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤及び消臭性化合物を含むポリウレタン発泡体の原料を反応及び発泡させて得られる消臭性ポリウレタン発泡体であって、
    前記消臭性化合物は、硫酸第一鉄(FeSO )又は酸化銀(Ag O)であり、揮発性有機化合物を酸化、分解すると共に自身も酸化され、前記酸化、分解後に自身が水分により還元されて元の硫酸第一鉄(FeSO )又は酸化銀(Ag O)戻り、該消臭性化合物の含有量がポリオール類100質量部当たり0.003〜0.110質量部であることを特徴とする消臭性ポリウレタン発泡体。
  2. 前記揮発性有機化合物は、アルデヒド類であることを特徴とする請求項1に記載の消臭性ポリウレタン発泡体。
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