本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明のレーザー光照射装置およびレーザー光の照射方法の一例について図面を参照して説明する。
まず、本実施の形態で示すレーザー光照射装置の一構成例を図1に示す。図1に示すレーザー照射装置は、レーザー発振器101と、光路を補正する補正レンズ102と、ビームエキスパンダー光学系103とを少なくとも有している。レーザー発振器101から発振されたレーザー光105は、補正レンズ102を介してビームエキスパンダー光学系103へと伝播され、ビームエキスパンダー光学系103を通ってレーザー光105のスケールが大きくされた後に被照射物104に照射される(図1)。
本実施の形態で示すレーザー光照射装置におけるビームエキスパンダー光学系103としては、凹レンズと凸レンズとを組み合わせて設けることができる。図1においては、レーザー発振器101から発振されたレーザー光105の進行方向に向かって凹レンズ103aと凸レンズ103bとが順に配置されている。図1では、凹レンズ103aとして両凹レンズ、凸レンズ103bとして平凸レンズを用いた例を示しているが、これに限られず、凹レンズ103aとして平凹レンズや凹メニスカスレンズ等を用いてもよいし、凸レンズ103bとして両凸レンズや凸メニスカスレンズ等を用いても良い。
レーザー発振器101に用いることができるレーザーとしては、YVO4レーザーなどの連続発振型のレーザー(CWレーザー)または疑似CWレーザー等を使用することができる。例えば、気体レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、CO2レーザー等があり、固体レーザーとしては、YAGレーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、YAGレーザーやY2O3レーザーに代表されるセラミックスレーザー等があり、金属蒸気レーザーとしては、ヘリウムカドミウムレーザー等が挙げられる。また、Diskレーザーを用いてもよい。Diskレーザーの特徴としては、レーザー媒質の形状がディスクであるため冷却効率がよいこと、すなわちエネルギー効率とビーム品質がよいということが挙げられる。
また、上述したレーザー発振器において、射出されるレーザー光はTEM00で発振されると、被照射面において得られる線状のビームスポットのエネルギーの均一性をあげることができるため好ましい。
ビームエキスパンダー光学系103に入射するレーザー光は、その入射角度が変化した場合であっても、レーザー光がビームエキスパンダー光学系103の最適な位置に入射された場合には当該レーザー光を拡大し、一定の位置、角度から次の照射面(ここでは、被照射物104)へとレーザー光を伝播する。つまり、ビームエキスパンダー光学系103へのレーザー光の入射角度よりも入射位置が重要となる。
そこで、入射位置を一定に保つために補正レンズ102をレーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系103との間に配置する。このように、レーザー発振器101から発振されたレーザー光を補正レンズ102を介してビームエキスパンダー光学系103に伝播することによって、不安定なレーザー光をビームエキスパンダー光学系103の正確な位置に入射させることができ、さらに被照射物104の表面に対しても正確な位置へレーザー光を伝播させることが可能となる。つまり、ここでは、補正レンズ102は、ビームエキスパンダー光学系103を構成する凹レンズ103aへ入射するレーザー光の入射位置を制御するために設けられている。
ビームエキスパンダー光学系103を通過したレーザー光は、被照射物104へと伝播される。被照射物104としては、例えば、回折光学素子を用いることができる。回折光学素子は、ディフラクティブオプティクス、またはディフラクティブオプティクスエレメントとも呼ばれ、光の回折を利用してスペクトルを得る素子である。また、回折光学素子は、微細で複雑な構造を持つ素子であるため、極めて正確な位置からレーザー光を入射させる必要がある。一般的に、回折光学素子の小径化には現状では非常に困難であり、ビームエキスパンダー光学系等によりレーザー光を拡大してから回折光学素子へと伝播する方法が回折光学素子の利用方法として適用されている。従って、ビームエキスパンダー光学系と回折光学素子を組み合わせて設ける場合には、上述したように、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系103との間に補正レンズ102を設け、回折光学素子へ入射するレーザー光の入射位置のずれを低減することが非常に有効となる。
補正レンズ102としては、入射光を集光する凸レンズを用いることができる。図1では、補正レンズ102として、平凸レンズを用いた例を示しているが、他にも両凸レンズ、凸メニスカスレンズ等を用いることが可能である。また、シリンドリカルレンズを用いてもよい。シリンドリカルレンズは一方向に曲率を持っており、1次元方向にのみ集光または拡散をさせることが可能なレンズである。従って、複数のシリンドリカルレンズを組み合わせて設け、各々のシリンドリカルレンズの曲率の方向を組み合わせることにより、光学調整を自由に行うことができる。
また、本実施の形態で示すレーザー光照射装置は、レーザー発振器101から発振されたレーザー光が補正レンズ102を介して凹レンズ103aに入射する場合において、レーザー発振器101の射出点(または、ビームウェスト、光源)を第1の共役点O1とし、当該第1の共役点O1の像が補正レンズ102を介して結像される点を第2の共役点O2とし、第1の共役点O1から補正レンズ102までの距離をa、補正レンズ102から第2の共役点O2までの距離をb、凹レンズ103aの焦点距離をf2とした際に、凹レンズ103aは、補正レンズ102と凹レンズ103aとの距離をXとすると以下の関係を満たすように配置する。
b−3|f2|≦X≦b+|f2|
これは、凹レンズ103aの焦点(ここでは、レーザー光の進行方向側に位置する凹レンズ103aの焦点)をF2とした場合、第2の共役点O2が、凹レンズ103aの焦点F2からレーザー光の進行方向およびその反対方向に対してそれぞれ2f2の範囲に位置する関係を満たしている。Xがこのような関係を満たすように、レーザー発振器101、補正レンズ102および凹レンズ103a等を配置することによって、ビームエキスパンダー光学系へのレーザー光の入射誤差を低減し、且つ、被照射物104へのレーザー光の照射位置の誤差を低減することが可能となる。
なお、好ましくは、凹レンズ103aを配置する位置Xが、X=b−|f2|となる位置に凹レンズ103aを設けるとよい(図2)。つまり、第2の共役点O2が凹レンズ103aの焦点F2(ここでは、レーザー光の進行方向側に位置する凹レンズ103aの焦点)となる位置に形成されるように凹レンズ103aを設ける。この場合、ビームエキスパンダーを介して被照射物にレーザー光の照射を行う場合に、被照射物へのレーザー光の照射位置の誤差を最も低減することが可能となる。これは凹レンズ103aがより外側にビームを広げようとする作用と、凸レンズ103bのより内側にレーザー光を収束させようとする作用が最もうまく相殺される配置で、ビームエキスパンダー光学系103から射出されるレーザー光の変動をよく抑えることができる。
なお、補正レンズ102の焦点距離をf1、第1の共役点O1から補正レンズ102までの距離をa、補正レンズ102から第2の共役点O2までの距離をbとした場合、補正レンズ102の焦点距離f1は、1/a+1/b≒1/f1を満たす関係となっている。
また、本実施の形態で示したレーザー光照射装置またはレーザー光照射方法は、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系103との距離が大きくなればなるほど効果を発揮する。一般的に、光学系を配置する場合には、装置の関係上、一定の間隔を空けて設ける必要がある。従って、本実施の形態で示したレーザー光照射装置は、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系103を構成する凹レンズ103aとの距離を、好ましくは0.5m以上離して設ける場合、より好ましくは1m以上離して設ける場合に特に有効となる。
本実施の形態は、ビームエキスパンダー光学系を用いた全てのレーザー光照射装置およびレーザー光の照射方法に適用することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なるレーザー光照射装置およびレーザー光照射方法に関して図面を参照して説明する。具体的には、第1の凸レンズと第2の凸レンズを有するビームエキスパンダー光学系を用いる場合に関して示す。
まず、本実施の形態で示すレーザー光照射装置の一構成例を図3に示す。図3に示すレーザー照射装置は、レーザー発振器101と、補正レンズ102と、ビームエキスパンダー光学系203とを少なくとも有している。レーザー発振器101から発振されたレーザー光105は、光路を補正する補正レンズ102を介してビームエキスパンダー光学系203へと伝播され、ビームエキスパンダー光学系203でレーザー光のスケールが大きくされた後に被照射物104に照射される(図3)。
ビームエキスパンダー光学系203としては、第1の凸レンズと第2の凸レンズとを組み合わせて設けることができる。図3においては、レーザー発振器101から発振されたレーザー光105の進行方向に向かって第1の凸レンズ203aと第2の凸レンズ203bとが順に配置されている。ここでは、第1の凸レンズ203a、第2の凸レンズ203bは、平凸レンズを用いているが、これに限られず、両凸レンズや凸メニスカスレンズ等を用いてもよい。もちろん、第1の凸レンズ203aと第2の凸レンズ203bとを異なる種類の凸レンズを用いてもよい。
ビームエキスパンダー光学系203に入射するレーザー光は、その入射角度が変化した場合であっても、レーザー光がビームエキスパンダー光学系203の最適な位置に入射された場合には当該レーザー光を拡大し、一定の位置、角度から次の照射面(ここでは、被照射物104)へとレーザー光を伝播する。そこで、入射位置を一定に保つために補正レンズ102をレーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系203との間に配置する。このように、レーザー発振器101から発振されたレーザー光を補正レンズ102を介してビームエキスパンダー光学系203に伝播することによって、不安定なレーザー光をビームエキスパンダー光学系203の正確な位置に入射させることができ、さらに被照射物104の表面に対しても正確な位置へレーザー光を伝播させることが可能となる。つまり、ここでは、補正レンズ102は、ビームエキスパンダー光学系203を構成する第1の凸レンズ203aへ入射するレーザー光の入射位置を制御するために設けられている。
ビームエキスパンダー光学系203を通過したレーザー光は、被照射物104へと伝播され所望の形状に回折される。被照射物104としては、例えば、回折光学素子を用いることができる。一般的に、回折光学素子の小径化には現状では非常に困難であり、ビームエキスパンダー等によりレーザー光を拡大してから回折光学素子へと伝播する方法が回折光学素子の利用方法として適用されている。そのため、上述したように、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系203との間に補正レンズ102を設けることによって、被照射物104(例えば、回折光学素子)へ入射するレーザー光の入射位置のずれを低減することができる。
また、本実施の形態で示すレーザー光照射装置は、レーザー発振器101から発振されたレーザー光が補正レンズ102を介して第1の凸レンズ203aに入射する場合において、レーザー発振器101の射出点(または、ビームW、光源)を第1の共役点O1とし、当該第1の共役点O1の像が補正レンズ102を介して結像される点を第2の共役点O2とし、第1の共役点O1から補正レンズ102までの距離をa、補正レンズ102から第2の共役点O2までの距離をb、第1の凸レンズ203aの焦点距離をf2とした際に、第1の凸レンズ203aは、補正レンズ102と第1の凸レンズ203aとの距離をXとすると以下の関係を満たすように配置する。
b−|f2|≦X≦b+3|f2|
これは、第1の凸レンズ203aの焦点(ここでは、レーザー光の進行方向の反対側に位置する第1の凸レンズ203aの焦点)をF2とした場合、第2の共役点O2が、第1の凸レンズ203aの焦点F2からレーザー光の進行方向およびその反対方向に対してそれぞれ2f2の範囲に位置する関係を満たしている。Xがこのような関係を満たすように、レーザー発振器101、補正レンズ102および第1の凸レンズ203a等を配置することによって、ビームエキスパンダー光学系へのレーザー光の入射誤差を低減し、且つ、被照射物104へのレーザー光の照射位置の誤差を低減することが可能となる。
なお、好ましくは、第1の凸レンズ203aを配置する位置Xが、X=b+|f2|となる位置に第1の凸レンズ203aを設けるとよい。つまり、第2の共役点O2が第1の凸レンズ203aの焦点F2(ここでは、レーザー光の進行方向側に位置する第1の凸レンズ203aの焦点)となる位置に形成されるように第1の凸レンズ203aを設ける。この場合、ビームエキスパンダー光学系203を介して被照射物104にレーザー光の照射を行う場合に、被照射物104へのレーザー光の照射位置の誤差を最も低減することが可能となる。これはレンズの中心から外側にそれようとしているレーザー光をレンズの中心側に戻す第1の凸レンズ203aの作用と、第1の凸レンズ203aによりレンズの中心側に戻されたレーザー光が再び外側にそれようとするのを抑える第2の凸レンズ203bの作用が最もうまく相殺される配置で、ビームエキスパンダー光学系203から射出されるレーザー光の変動をよく抑えることができる。
なお、補正レンズ102の焦点距離をf1、第1の共役点O1から補正レンズ102までの距離をa、補正レンズ102から第2の共役点O2までの距離をbとした場合、補正レンズ102の焦点距離f1は、1/a+1/b≒1/f1を満たす関係となっている。
また、本実施の形態で示したレーザー光照射装置またはレーザー光照射方法は、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系203との距離が大きくなればなるほど効果を発揮する。一般的に、光学系を配置する場合には、装置の関係上、一定の間隔を空けて設ける必要がある。従って、本実施の形態で示したレーザー光照射装置は、レーザー発振器101とビームエキスパンダー光学系203を構成する第1の凸レンズ203aとの距離を、好ましくは0.5m以上離して設ける場合、より好ましくは1m以上離して設ける場合に特に有効となる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したレーザー光照射装置またはレーザー光の照射方法を用いた半導体装置の作製方法に関して、図面を参照して説明する。
まず、基板701の一表面に剥離層702を形成し、続けて下地となる絶縁膜703および非晶質半導体膜704(例えば非晶質珪素を含む膜)を形成する(図6(A))。なお、剥離層702、絶縁膜703および非晶質半導体膜704は、連続して形成することができる。
基板701は、ガラス基板、石英基板、金属基板やステンレス基板の一表面に絶縁膜を形成したもの、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用いるとよい。このような基板701であれば、その面積や形状に大きな制限はないため、基板701として、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。このような利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大きな優位点である。なお、本工程では、剥離層702は、基板701の全面に設けているが、必要に応じて、基板701の全面に剥離層を設けた後に、フォトリソグラフィ法により選択的に設けてもよい。また、基板701に接するように剥離層702を形成しているが、必要に応じて、基板701に接するように下地となる絶縁膜を形成し、当該絶縁膜に接するように剥離層702を形成してもよい。
剥離層702は、金属膜や金属膜と金属酸化膜の積層構造等を用いることができる。金属膜としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる膜を単層又は積層して形成する。また、これらの材料を用いて、スパッタ法やプラズマCVD法等の各種CVD法等により形成することができる。金属膜と金属酸化膜の積層構造としては、上述した金属膜を形成した後に、酸素雰囲気化またはN2O雰囲気下におけるプラズマ処理、酸素雰囲気化またはN2O雰囲気下における加熱処理を行うことによって、金属膜表面に当該金属膜の酸化物または酸化窒化物を設けることができる。例えば、金属膜としてスパッタ法やCVD法等によりタングステン膜を設けた場合、タングステン膜にプラズマ処理を行うことによって、タングステン膜表面にタングステン酸化物からなる金属酸化膜を形成することができる。また、この場合、タングステンの酸化物は、WOxで表され、Xは2〜3であり、Xが2の場合(WO2)、Xが2.5の場合(W2O5)、Xが2.75の場合(W4O11)、Xが3の場合(WO3)などがある。タングステンの酸化物を形成するにあたり、上記に挙げたXの値に特に制約はなく、エッチングレート等を基に、どの酸化物を形成するかを決めるとよい。他にも、例えば、金属膜(例えば、タングステン)を形成した後に、当該金属膜上にスパッタ法で酸化珪素(SiO2)等の絶縁膜を設けると共に、金属膜上に金属酸化物(例えば、タングステン上にタングステン酸化物)を形成してもよい。また、プラズマ処理として、例えば上述した高密度プラズマ処理を行ってもよい。また、金属酸化膜の他にも、金属窒化物や金属酸化窒化物を用いてもよい。この場合、金属膜に窒素雰囲気下または窒素と酸素雰囲気下でプラズマ処理や加熱処理を行えばよい。
絶縁膜703は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜を、単層又は積層で形成する。下地となる絶縁膜が2層構造の場合、例えば、1層目として窒化酸化珪素膜を形成し、2層目として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜が3層構造の場合、1層目の絶縁膜として酸化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。または、1層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜は、基板701からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
非晶質半導体膜704は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25〜200nm(好ましくは30〜150nm)の厚さで形成する。
次に、非晶質半導体膜704にレーザー光を照射して結晶化を行う。なお、レーザー光の照射と、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とを組み合わせた方法等により非晶質半導体膜704の結晶化を行ってもよい。その後、得られた結晶質半導体膜を所望の形状にエッチングして、結晶質半導体膜704a〜704dを形成し、当該半導体膜704a〜704dを覆うようにゲート絶縁膜705を形成する(図6(B))。
結晶質半導体膜704a〜704dの作製工程の一例を以下に簡単に説明すると、まず、プラズマCVD法を用いて、膜厚50〜60nmの非晶質半導体膜を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体膜上に保持させた後、非晶質半導体膜に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体膜を形成する。その後、レーザー光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いることよって結晶質半導体膜704a〜704dを形成する。なお、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化を行わずに、レーザー光の照射だけで非晶質半導体膜の結晶化を行ってもよい。
ここでは、レーザー光の照射に用いるレーザー光照射装置およびレーザー光の照射方法の一例を示す(図4)。図4に示すレーザー光照射装置は、レーザー発振器901、補正レンズ902、凹レンズ903aおよび凸レンズ903bを有するビームエキスパンダー光学系903、回折光学素子904、ミラー905、吸着ステージ908、Xステージ909、Yステージ910から構成される。
まず、非晶質半導体膜704を成膜した基板701を用意する。基板701は、吸着ステージ908上に固定されている。吸着ステージ908は、Xステージ909およびYステージ910を用いることによって、X軸およびY軸方向に自在に移動が可能である。なお、X軸方向およびY軸方向の移動は、モータステージ、ボールベアリングステージ、リニアモータステージなどの各種ステージを用いることができる。
レーザー発振器901から発振されたレーザー光は、補正レンズ902を介してビームエキスパンダー光学系903に入射され、当該ビームエキスパンダー光学系903によりレーザー光のスケールが大きく加工された後、回折光学素子904を通った後、基板701上に設けられた非晶質半導体膜704に照射される。
レーザー発振器901としては、連続発振型のレーザー(CWレーザー)やパルス発振型のレーザー(パルスレーザー)を用いることができる。ここで用いることができるレーザーは、Arレーザー、Krレーザー、エキシマレーザーなどの気体レーザー、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのうち一種または複数種から発振されるものを用いることができる。このようなレーザービームの基本波、及びこれらの基本波の第2高調波から第4高調波のレーザービームを照射することで、大粒径の結晶を得ることができる。例えば、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(355nm)を用いることができる。このときレーザーのパワー密度は0.01〜100MW/cm2程度(好ましくは0.1〜10MW/cm2)が必要である。そして、走査速度を10〜2000cm/sec程度として照射する。なお、単結晶のYAG、YVO4、フォルステライト(Mg2SiO4)、YAlO3、GdVO4、若しくは多結晶(セラミック)のYAG、Y2O3、YVO4、YAlO3、GdVO4に、ドーパントとしてNd、Yb、Cr、Ti、Ho、Er、Tm、Taのうち1種または複数種添加されているものを媒質とするレーザー、Arイオンレーザー、またはTi:サファイアレーザーは、連続発振をさせることが可能であり、Qスイッチ動作やモード同期などを行うことによって10MHz以上の発振周波数でパルス発振をさせることも可能である。10MHz以上の発振周波数でレーザービームを発振させると、半導体膜がレーザーによって溶融してから固化するまでの間に、次のパルスが半導体膜に照射される。従って、発振周波数が低いパルスレーザーを用いる場合と異なり、半導体膜中において固液界面を連続的に移動させることができるため、走査方向に向かって連続的に成長した結晶粒を得ることができる。
また、レーザー発振器901、補正レンズ902、凹レンズ903aは、上記実施の形態1で示した関係を満たすように配置する。このように、レーザー発振器901と凹レンズ903aとの間に補正レンズ902を設けることによって、ビームエキスパンダー光学系903を通った後、回折光学素子904を介して基板701に入射するレーザー光の位置ズレを低減し、レーザー光の照射位置を正確に制御することができる。
回折光学素子904の代表例としては、ホログラフィック光学素子、バイナリー光学素子等が上げられる。回折光学素子904はディフラクティブオプティクス、またはディフラクティブオプティクスエレメントとも呼ばれ、光の回折を利用してスペクトルを得る素子である。回折光学素子904の表面に複数の溝を形成することにより集光レンズ機能を奏するものが用いられる。そして、この回折光学素子904を用いることにより、レーザー発振器から射出されたレーザー光のエネルギー分布を均一な線状または矩形状のビームに形成することができる。
なお、本実施の形態で用いることができるレーザー光照射装置は、図4の構成に限られない。例えば、図4において、ビームエキスパンダー光学系903を構成する凹レンズ903aを凸レンズに置き換えてもよい。この場合、レーザー発振器901、補正レンズ902、凹レンズ903aの代わりに置き換えた凸レンズは、上記実施の形態2で示した関係を満たすように配置する。
回折光学素子904の照射面側に、集光レンズを設けても良い。例えば、2つのシリンドリカルレンズを用いることができる。この場合、この2つのシリンドリカルレンズに対して垂直にレーザー光を入射させる。シリンドリカルレンズは一方向に曲率を持っているため、1次元方向にのみ集光または拡散をさせることが可能である。したがって、2つのシリンドリカルレンズの曲率の方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向にすることにより、照射面におけるビームスポットの大きさをXY方向で任意に変更することができるため、光学調整が容易であり、かつ調整の自由度が高い。あるいは、シリンドリカルレンズを1枚使い、1方向のみに作用させてもよい。また、回折光学素子904で形成された像の長軸と短軸の長さの比を保ったまま集光を行う場合は、シリンドリカルレンズの代わりに球面レンズを用いてもよい。
なお、図4で示したレーザー光照射装置では、装置の関係上、レーザー発振器901と凹レンズ903aとの間隔を、好ましくは0.5m以上、より好ましくは1m以上離して設ける。
このように、上述したレーザー光の照射方法を用いることによって、非晶質半導体膜704を均一に結晶化することができる。
次に、結晶質半導体膜704a〜704dを覆うゲート絶縁膜705を形成する。ゲート絶縁膜705は、CVD法やスパッタ法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む膜を、単層又は積層して形成する。具体的には、酸化珪素を含む膜、酸化窒化珪素を含む膜、窒化酸化珪素を含む膜を、単層又は積層して形成する。
また、ゲート絶縁膜705は、半導体膜704a〜704dに対し前述の高密度プラズマ処理を行い、表面を酸化又は窒化することで形成しても良い。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO2)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波の導入により行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することができる。
このような高密度プラズマを用いた処理により、1〜20nm、代表的には5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と半導体膜との界面準位密度はきわめて低くすることができる。このような、高密度プラズマ処理は、半導体膜(結晶性シリコン、或いは多結晶シリコン)を直接酸化(若しくは窒化)するため、形成される絶縁膜の厚さのばらつきをきわめて小さくすることができる。加えて、結晶性シリコンの結晶粒界でも酸化が強くされることがないため、非常に好ましい状態となる。すなわち、ここで示す高密度プラズマ処理で半導体膜の表面を固相酸化することにより、結晶粒界において異常に酸化反応をさせることなく、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。
ゲート絶縁膜は、高密度プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それにプラズマや熱反応を利用したCVD法で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積し、積層させても良い。いずれにしても、高密度プラズマで形成した絶縁膜をゲート絶縁膜の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができる。
また、半導体膜に対し、連続発振レーザー光若しくは10MHz以上の周波数で発振するレーザー光を照射しながら一方向に走査して結晶化させて得られた半導体膜704a〜704dは、そのビームの走査方向に結晶が成長する特性がある。その走査方向をチャネル長方向(チャネル形成領域が形成されたときにキャリアが流れる方向)に合わせてトランジスタを配置し、上記ゲート絶縁層を組み合わせることで、特性ばらつきが小さく、しかも電界効果移動度が高い薄膜トランジスタ(TFT)を得ることができる。
次に、ゲート絶縁膜705上に、第1の導電膜と第2の導電膜とを積層して形成する。ここでは、第1の導電膜は、プラズマCVD法やスパッタ法等により、20〜100nmの厚さで形成する。第2の導電膜は、100〜400nmの厚さで形成する。第1の導電膜と第2の導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で形成する。または、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶珪素に代表される半導体材料により形成する。第1の導電膜と第2の導電膜の組み合わせの例を挙げると、窒化タンタル膜とタングステン膜、窒化タングステン膜とタングステン膜、窒化モリブデン膜とモリブデン膜等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、第1の導電膜と第2の導電膜を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層構造ではなく、3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法を用いてレジストからなるマスクを形成し、ゲート電極とゲート線を形成するためのエッチング処理を行って、半導体膜704a〜704dの上方にゲート電極707を形成する。
次に、フォトリソグラフィ法により、レジストからなるマスクを形成して、結晶質半導体膜704a〜704dに、イオンドープ法またはイオン注入法により、n型を付与する不純物元素を低濃度に添加する。n型を付与する不純物元素は、15族に属する元素を用いれば良く、例えばリン(P)、砒素(As)を用いる。
次に、ゲート絶縁膜705とゲート電極707を覆うように、絶縁膜を形成する。絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタ法等により、珪素、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層又は積層して形成する。次に、絶縁膜を、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングして、ゲート電極707の側面に接する絶縁膜708(サイドウォールともよばれる)を形成する。絶縁膜708は、後にLDD(Lightly Doped drain)領域を形成する際のドーピング用のマスクとして用いる。
次に、フォトリソグラフィ法により形成したレジストからなるマスクと、ゲート電極707および絶縁膜708をマスクとして用いて、結晶質半導体膜704a〜704dにn型を付与する不純物元素を添加して、第1のn型不純物領域706a(LDD領域ともよぶ)と、第2のn型不純物領域706bと、チャネル領域706cとを形成する(図6(C))。第1のn型不純物領域706aが含む不純物元素の濃度は、第2のn型不純物領域706bの不純物元素の濃度よりも低い。
続いて、ゲート電極707、絶縁膜708等を覆うように、絶縁膜を単層または積層して形成することによって、薄膜トランジスタ730a〜730dを形成する(図6(D))。絶縁膜は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法、スクリーン印刷法等により、珪素の酸化物や珪素の窒化物等の無機材料、ポリイミド、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、アクリル、エポキシ等の有機材料やシロキサン材料等により、単層または積層で形成する。例えば、絶縁膜が2層構造の場合、1層目の絶縁膜709として窒化酸化珪素膜で形成し、2層目の絶縁膜710として酸化窒化珪素膜で形成することができる。
なお、絶縁膜709、710を形成する前、または絶縁膜709、710のうちの1つまたは複数の薄膜を形成した後に、半導体膜の結晶性の回復や半導体膜に添加された不純物元素の活性化、半導体膜の水素化を目的とした加熱処理を行うとよい。加熱処理には、熱アニール、レーザーアニール法またはRTA法などを適用するとよい。
次に、フォトリソグラフィ法により絶縁膜709、710等をエッチングして、第2のn型不純物領域706bを露出させるコンタクトホールを形成する。続いて、コンタクトホールを充填するように、導電膜を形成し、当該導電膜を選択的にエッチングして導電膜731を形成する。なお、導電膜を形成する前に、コンタクトホールにおいて露出した半導体膜704a〜704dの表面にシリサイドを形成してもよい。
導電膜731は、CVD法やスパッタリング法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジウム(Nd)、炭素(C)、シリコン(Si)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムを主成分としニッケルを含む材料、又は、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素と珪素の一方又は両方とを含む合金材料に相当する。導電膜731は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン(Al−Si)膜と窒化チタン(TiN)膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜に相当する。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜731を形成する材料として最適である。また、上層と下層のバリア層を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア膜を形成すると、結晶質半導体膜上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、結晶質半導体膜と良好なコンタクトをとることができる。
次に、導電膜731を覆うように、絶縁膜711を形成し、当該絶縁膜711上に導電膜731と電気的に接続するように導電膜712を形成する(図7(A))。絶縁膜711は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法またはスクリーン印刷法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。また、絶縁膜711は、好適には、0.75μm〜3μmの厚さで形成する。また、導電膜712は上述した導電膜731で示したいずれかの材料を用いることができる。
次に、導電膜712上に導電膜713を形成する。導電膜713は、CVD法、スパッタ法、液滴吐出法、スクリーン印刷法等を用いて、導電性材料により形成する(図7(B))。好ましくは、導電膜713は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層又は積層で形成する。ここでは、スクリーン印刷法により、銀を含むペーストを導電膜712上に形成し、その後、50〜350度の加熱処理を行って導電膜713とする。また、導電膜712上に導電膜713を形成した後に、電気的な接続を向上させるために導電膜713および導電膜712の重なっている領域にレーザー光の照射を行ってもよい。なお、絶縁膜711および導電膜712を設けずに、導電膜731上に選択的に導電膜713を設けることも可能である。
次に、導電膜712、713を覆うように絶縁膜714を形成し、フォトリソグラフィ法により絶縁膜714を選択的にエッチングして、導電膜713を露出させる開口部715を形成する(図7(C))。絶縁膜714は、CVD法、スパッタ法、SOG法、液滴吐出法またはスクリーン印刷法等を用いて、無機材料又は有機材料により、単層又は積層で形成する。
次に、薄膜トランジスタ730a〜730d等を含む層732(以下、「層732」とも記す。)を基板701から剥離する。ここでは、レーザー光(例えばUV光)を照射することによって開口部716を形成後(図8(A))、物理的な力を用いて基板701から層732を剥離することができる。また、基板701から層732を剥離する前に、開口部716にエッチング剤を導入して、剥離層702を除去してもよい。エッチング剤は、フッ化ハロゲンまたはハロゲン間化合物を含む気体又は液体を使用する。例えば、フッ化ハロゲンを含む気体として三フッ化塩素(ClF3)を使用する。そうすると、層732は、基板701から剥離された状態となる。なお、剥離層702は、全て除去せず一部分を残存させてもよい。こうすることによって、エッチング剤の消費量を抑え剥離層の除去に要する処理時間を短縮することが可能となる。また、剥離層702の除去を行った後にも、基板701上に層732を保持しておくことが可能となる。また、層732が剥離された基板701は、コストの削減のために、再利用することが好ましい。
ここでは、レーザー光の照射により絶縁膜をエッチングして開口部716を形成した後に、層732の一方の面(絶縁膜714の露出した面)を、第1のシート材717に貼り合わせて基板701から完全に剥離する(図8(B))。第1のシート材717としては、例えば熱を加えることによって粘着力が弱まる熱剥離テープを用いることができる。
次に、層732の他方の面(剥離した面)に、第2のシート材718を設け、その後加熱処理と加圧処理の一方または両方を行って、第2のシート材718を貼り合わせる。また、第2のシート材718を設けると同時または設けた後に第1のシート材717を剥離する(図9(A))。第2のシート材718としては、ホットメルトフィルム等を用いることができる。また、第1のシート材717として熱剥離テープを用いた場合には、第2のシート材718を貼り合わせる際に加えた熱を利用して剥離することができる。
また、第2のシート材718として、静電気等を防止する帯電防止対策を施したフィルム(以下、帯電防止フィルムと記す)を用いることもできる。帯電防止フィルムとしては、帯電防止可能な材料を樹脂中に分散させたフィルム、及び帯電防止可能な材料が貼り付けられたフィルム等が挙げられる。帯電防止可能な材料が設けられたフィルムは、片面に帯電防止可能な材料を設けたフィルムであってもよいし、両面に帯電防止可能な材料を設けたフィルムであってもよい。さらに、片面に帯電防止可能な材料が設けられたフィルムは、帯電防止可能な材料が設けられた面をフィルムの内側になるように層に貼り付けてもよいし、フィルムの外側になるように貼り付けてもよい。なお、帯電防止可能な材料はフィルムの全面、あるいは一部に設けてあればよい。ここでの帯電防止可能な材料としては、金属、インジウムと錫の酸化物(ITO)、両性界面活性剤や陽イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤等の界面活性剤用いることができる。また、他にも帯電防止材料として、側鎖にカルボキシル基および4級アンモニウム塩基をもつ架橋性共重合体高分子を含む樹脂材料等を用いることができる。これらの材料をフィルムに貼り付けたり、練り込んだり、塗布することによって帯電防止フィルムとすることができる。帯電防止フィルムを設けることによって、商品として取り扱う際に、外部からの静電気等によって半導体素子に悪影響が及ぶことを抑制することができる。
次に、開口部715を覆うように導電膜719を形成することによって素子群733を形成する(図9(B))。なお、導電膜719の形成前または形成後に導電膜712および713にレーザー光を照射することによって、電気的な接続を向上させてもよい。
次に、レーザー光を素子群733に選択的に照射することによって、複数の素子群に分断する(図10(A))。
次に、アンテナとして機能する導電膜722が形成された基板721に素子群733を圧着させる(図10(B))。具体的には、基板721上に形成されたアンテナとして機能する導電膜722と素子群733の導電膜719とが電気的に接続するように貼り合わせて設ける。ここでは、接着性を有する樹脂723を用いて基板721と素子群733とを接着する。また、樹脂723に含まれる導電性粒子724を用いて導電膜722と導電膜719とを電気的に接続する。
なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。つまり、上記実施の形態で示した材料や形成方法は、本実施の形態でも組み合わせて利用することができるし、本実施の形態で示した材料や形成方法も上記実施の形態でも組み合わせて利用することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態3で示した作製方法を用いて得られた半導体装置の使用形態の一例について説明する。具体的には、非接触でデータの入出力が可能である半導体装置の適用例に関して図面を参照して以下に説明する。非接触でデータの入出力が可能である半導体装置は利用の形態によっては、RFIDタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。
半導体装置80は、非接触でデータを交信する機能を有し、高周波回路81、電源回路82、リセット回路83、クロック発生回路84、データ復調回路85、データ変調回路86、他の回路の制御を行う制御回路87、記憶回路88およびアンテナ89を有している(図11(A))。高周波回路81はアンテナ89より信号を受信して、データ変調回路86より受信した信号をアンテナ89から出力する回路であり、電源回路82は受信信号から電源電位を生成する回路であり、リセット回路83はリセット信号を生成する回路であり、クロック発生回路84はアンテナ89から入力された受信信号を基に各種クロック信号を生成する回路であり、データ復調回路85は受信信号を復調して制御回路87に出力する回路であり、データ変調回路86は制御回路87から受信した信号を変調する回路である。また、制御回路87としては、例えばコード抽出回路91、コード判定回路92、CRC判定回路93および出力ユニット回路94が設けられている。なお、コード抽出回路91は制御回路87に送られてきた命令に含まれる複数のコードをそれぞれ抽出する回路であり、コード判定回路92は抽出されたコードとリファレンスに相当するコードとを比較して命令の内容を判定する回路であり、CRC判定回路93は判定されたコードに基づいて送信エラー等の有無を検出する回路である。
次に、上述した半導体装置の動作の一例について説明する。まず、アンテナ89により無線信号が受信される。無線信号は高周波回路81を介して電源回路82に送られ、高電源電位(以下、VDDと記す)が生成される。VDDは半導体装置80が有する各回路に供給される。また、高周波回路81を介してデータ復調回路85に送られた信号は復調される(以下、復調信号)。さらに、高周波回路81を介してリセット回路83およびクロック発生回路84を通った信号及び復調信号は制御回路87に送られる。制御回路87に送られた信号は、コード抽出回路91、コード判定回路92およびCRC判定回路93等によって解析される。そして、解析された信号にしたがって、記憶回路88内に記憶されている半導体装置の情報が出力される。出力された半導体装置の情報は出力ユニット回路94を通って符号化される。さらに、符号化された半導体装置80の情報はデータ変調回路86を通って、アンテナ89により無線信号に載せて送信される。なお、半導体装置80を構成する複数の回路においては、低電源電位(以下、VSS)は共通であり、VSSはGNDとすることができる。
このように、リーダ/ライタから半導体装置80に信号を送り、当該半導体装置80から送られてきた信号をリーダ/ライタで受信することによって、半導体装置のデータを読み取ることが可能となる。
また、半導体装置80は、各回路への電源電圧の供給を電源(バッテリー)を搭載せず電磁波により行うタイプとしてもよいし、電源(バッテリー)を搭載して電磁波と電源(バッテリー)により各回路に電源電圧を供給するタイプとしてもよい。
上記実施の形態で示した作製方法を用いることによって、折り曲げることが可能な半導体装置を作製することが可能となるため、曲面を有する物体に貼り付けて設けることが可能となる。
次に、可撓性を有し、非接触でデータの入出力が可能な半導体装置の使用形態の一例について説明する。表示部3210を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ3200が設けられ、品物3220の側面には半導体装置3230が設けられる(図11(B))。品物3220が含む半導体装置3230にリーダ/ライタ3200をかざすと、表示部3210に品物の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商品に関する情報が表示される。また、商品3260をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダ/ライタ3240と、商品3260に設けられた半導体装置3250を用いて、該商品3260の検品を行うことができる(図11(C))。このように、システムに半導体装置を活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。
また、上述した非接触データの入出力が可能である半導体装置における信号の伝送方式は、電磁結合方式、電磁誘導方式またはマイクロ波方式等を用いることができる。伝送方式は、実施者が使用用途を考慮して適宜選択すればよく、伝送方式に伴って最適なアンテナを設ければよい。
例えば、半導体装置における信号の伝送方式として、電磁結合方式または電磁誘導方式(例えば13.56MHz帯)を適用する場合には、磁界密度の変化による電磁誘導を利用するため、アンテナとして機能する導電膜を輪状(例えば、ループアンテナ)、らせん状(例えば、スパイラルアンテナ)に形成する。
また、半導体装置における信号の伝送方式として、マイクロ波方式(例えば、UHF帯(860〜960MHz帯)、2.45GHz帯等)を適用する場合には、信号の伝送に用いる電磁波の波長を考慮してアンテナとして機能する導電層の長さ等の形状を適宜設定すればよい。例えば、基板1201上にアンテナとして機能する導電膜1202を線状(例えば、ダイポールアンテナ(図13(A))、平坦な形状(例えば、パッチアンテナ(図13(B))またはリボン型の形状(図13(C)、(D))等に形成した後、導電膜1202と電気的に接続するようにICチップ1203(集積回路)を設けることができる。また、アンテナとして機能する導電膜1202の形状は線状に限られず、電磁波の波長を考慮して曲線状や蛇行形状またはこれらを組み合わせた形状で設けてもよい。
アンテナとして機能する導電膜は、CVD法、スパッタ法、スクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、メッキ法等を用いて、導電性材料により形成する。導電性材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)から選択された元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層構造又は積層構造で形成する。
例えば、スクリーン印刷法を用いてアンテナとして機能する導電膜を形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電体粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性のペーストを選択的に印刷することによって設けることができる。導電体粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、珪素樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電膜の形成にあたり、導電性のペーストを押し出した後に焼成することが好ましい。例えば、導電性のペーストの材料として、銀を主成分とする微粒子(例えば粒径1nm以上100nm以下)を用いる場合、150〜300℃の温度範囲で焼成することにより硬化させて導電膜を得ることができる。また、はんだや鉛フリーのはんだを主成分とする微粒子を用いてもよく、この場合は粒径20μm以下の微粒子を用いることが好ましい。はんだや鉛フリーはんだは、低コストであるといった利点を有している。
また、上述した材料以外にも、セラミックやフェライト等をアンテナに適用してもよいし、他にもマイクロ波帯において誘電率および透磁率が負となる材料(メタマテリアル)をアンテナに適用することも可能である。
また、電磁結合方式または電磁誘導方式を適用する場合であって、アンテナを備えた半導体装置を金属に接して設ける場合には、当該半導体装置と金属との間に透磁率を備えた磁性材料を設けることが好ましい。アンテナを備えた半導体装置を金属に接して設ける場合には、磁界の変化に伴い金属に渦電流が流れ、当該渦電流により発生する反磁界によって、磁界の変化が弱められて通信距離が低下する。そのため、半導体装置と金属との間に透磁率を備えた材料を設けることにより金属の渦電流を抑制し通信距離の低下を抑制することができる。なお、磁性材料としては、高い透磁率を有し高周波損失の少ないフェライトや金属薄膜を用いることができる。
なお、上述した以外にも可撓性を有する半導体装置の用途は広範にわたり、非接触で対象物の履歴等の情報を明確にし、生産・管理等に役立てる商品であればどのようなものにも適用することができる。例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することができる。これらの例に関して図12を用いて説明する。
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するもの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指す(図12(A))。証書類とは、運転免許証、住民票等を指す(図12(B))。無記名債券類とは、切手、おこめ券、各種ギフト券等を指す(図12(C))。包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル等を指す(図12(D))。書籍類とは、書物、本等を指す(図12(E))。記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指す(図12(F))。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指す(図12(G))。身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指す(図12(H))。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話機等を指す。
紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類等に半導体装置20を設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、書籍類、記録媒体等、身の回り品、食品類、生活用品類、電子機器等に半導体装置20を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類、保健用品類、薬品類等に半導体装置20を設けることにより、偽造や盗難の防止、薬品類ならば、薬の服用の間違いを防止することができる。半導体装置20の設け方としては、物品の表面に貼ったり、物品に埋め込んだりして設ける。例えば、本ならば紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。可撓性を有する半導体装置を用いることによって、紙等に設けた場合であっても、上記実施の形態で示した構造を用いることにより、当該半導体装置に含まれる素子の破損等を防止することができる。
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に半導体装置を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類に半導体装置を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物にセンサーを備えた半導体装置を埋め込むことによって、生まれた年や性別または種類等はもちろん体温等の健康状態を容易に管理することが可能となる。
なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。つまり、上記実施の形態で示した材料や形成方法は、本実施の形態でも組み合わせて利用することができるし、本実施の形態で示した材料や形成方法も上記実施の形態でも組み合わせて利用することができる。