JP5098477B2 - 穿孔圧延用のプッシャ装置及びそれを用いた継目無管の製造方法 - Google Patents

穿孔圧延用のプッシャ装置及びそれを用いた継目無管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プッシャ装置及びそれを用いた継目無管の製造方法に関し、さらに詳しくは、ビレットを穿孔圧延して素管にするときに利用される、穿孔圧延用のプッシャ装置、及び、それを用いた継目無管の製造方法に関する。
継目無管は、中実の丸ビレットを穿孔機で穿孔圧延することにより製造される。穿孔機は複数の傾斜ロールを備え、複数の傾斜ロールの間にはプラグが配設される。また、穿孔機の入側には、プッシャ装置が配設される。
加熱炉で加熱されたビレットは、その後端をプッシャ装置に押され、傾斜ロールの間に向かって搬送される。ビレットが傾斜ロールに噛み込まれたとき、プッシャはビレットを押す動作を停止する。傾斜ロールに噛み込まれたビレットは、螺旋状に回転しながら穿孔圧延され、素管になる。
上述の穿孔圧延では、回転鍛造効果及び付加的なせん断変形により、穿孔圧延後の素管の内面に葉状、ひれ状又はラップ状の疵(以下、これらの疵を内面疵という)が発生するという問題がある。
穿孔圧延において内面疵の発生を抑制するには、従来よりも小さい圧下率で穿孔圧延すればよい。しかしながら、圧下率が下がれば、ビレットの傾斜ロールへの噛み込みが不安定になり、いわゆる噛み込み不良が発生しやすくなる。
このような噛み込み不良を解決する技術が、特開2000−246311号公報及び特開2001−162306号公報に開示されている。これらの文献では、ビレットの先端が傾斜ロールと接触してから、ビレットの傾斜ロールへの噛み込みが安定するまでの間、プッシャ装置によりビレットを後ろから押し続ける。これにより、噛み込み不良が抑制されるとしている。以下、このような穿孔圧延をプッシャ穿孔圧延と称する。
プッシャ穿孔圧延は、確かに、ビレットの噛み込み不良を抑制することができる。しかしながら、プッシャ穿孔圧延を行った場合、素管に偏肉が発生する場合がある。特に、プッシャ装置で押されながら穿孔圧延された部分である素管先端部に偏肉が発生しやすい。
特開2000−246311号公報 特開2001−162306号公報
本発明の目的は、プッシャ穿孔圧延により製造された素管の先端部の偏肉を抑制できるプッシャ装置及びそれを用いた継目無管の製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明者らは、プッシャ穿孔圧延により製造された素管先端部に偏肉が発生する原因について調査した。その結果、プッシャ穿孔圧延では、ビレットが傾斜ロールに噛み込まれたとき、プッシャ装置のプッシャ芯金が、周方向に偏心回転していることを見出した。
プッシャ芯金の偏心回転は、穿孔圧延されているビレットにも伝播するため、ビレットも偏心回転する。その結果、プッシャ装置に押されながら穿孔圧延された素管先端部に、偏肉や曲がりが発生すると推定される。
このようなプッシャ芯金の偏心回転を抑制する解決策の1つは、プッシャ穿孔圧延時に、ビレットの軸芯をプッシャ芯金の軸芯と一致させた状態で維持することである。しかしながら、ビレットの外径は必ずしも真円ではない。また、ビレット外径は必ずしも一定ではなく、長手方向に多少ばらつきを有する。したがって、プッシャ穿孔圧延時に、ビレットの軸芯をプッシャ芯金の軸芯と一致させた状態で維持することは困難である。
そこで、本発明者らは、ビレットの軸芯がプッシャ芯金の軸芯とずれていても、プッシャ芯金の偏心回転を抑制する方法を検討した。具体的には、プッシャ芯金の横断面積Sp(mm)、ビレットの横断面積Sb(mm)、プッシャ芯金の長さLp(mm)、穿孔圧延時におけるシリンダ軸の先端の移動距離Lc(mm)及びシリンダ軸の外径Dc(mm)に注目した。そして、これらの値を変化させてプッシャ穿孔圧延を実施し、得られた素管の先端部の偏肉を調査した。その結果、本発明者らは、プッシャ装置において、式(1)〜(3)を満たせば、素管の偏肉を抑制できることを見出した。
0.3≦Sp/Sb (1)
Lp/Sp≦1.2 (2)
Lc/Dc≦45 (3)
以上の知見に基づいて完成された本発明の要旨は以下のとおりである。
本発明によるプッシャ装置は、ビレットを穿孔圧延する穿孔機の入側に配設される穿孔圧延用のプッシャ装置である。本発明によるプッシャ装置は、シリンダ軸を含むシリンダ装置と、シリンダ軸の先端に取り付けられ、その先端が前記ビレットの後端に当接される棒状のプッシャ芯金とを備える。プッシャ芯金の横断面積Spとビレットの横断面積Sbとは式(1)を満たす。また、プッシャ芯金の長さLpとプッシャ芯金の横断面積Spとは式(2)を満たす。穿孔圧延時におけるシリンダ軸の先端の移動距離Lcとシリンダ軸の外径Dcとは式(3)を満たす。
0.3≦Sp/Sb (1)
Lp/Sp≦1.2 (2)
Lc/Dc≦45 (3)
ここで、移動距離Lcとは、シリンダ装置を駆動してシリンダ軸の先端が前進し始めてから、シリンダ軸の先端が前進を停止するまでの移動距離である。
本発明によるプッシャ装置は、式(1)〜(3)を満たすことにより、プッシャ穿孔圧延により製造された素管の先端部の偏肉を抑制できる。
好ましくは、プッシャ芯金の先端は凸状に丸みを帯びている。
この場合、プッシャ芯金の先端とビレット後端との接触面積は小さい。そのため、プッシャ芯金がビレットと接触したときに生じる摩擦力が小さくなり、プッシャ芯金の偏心回転が抑制される。その結果、素管の先端部の偏肉が抑制される。
好ましくは、プッシャ芯金は、棒状の芯金本体部材と、芯金先端部材とを備える。芯金先端部材は、芯金本体部材の端部に、周方向に回転可能に取り付けられる。芯金先端部材の先端は、ビレットの後端に当接される。
この場合、傾斜ロールに噛み込まれたビレットが周方向に回転したとき、芯金先端部材も、ビレット回転方向と同じ方向にほぼ同じ回転速度で容易に回転する。そのため、ビレットの回転速度とプッシャ芯金の回転速度とのずれに起因した摩擦力の発生を抑制できる。
本発明による継目無管の製造方法は、複数の傾斜ロールを含む穿孔機と、穿孔機の入側に配設された上述のプッシャ装置とを用いて、ビレットを穿孔圧延する。本発明による継目無管の製造方法は、ビレットをプッシャ装置と穿孔機との間に配置する工程と、プッシャ装置によりビレットの後端を押して、ビレットの先端を傾斜ロールに噛み込ませる工程と、ビレットの先端が傾斜ロールに噛み込まれてからビレットの先端が所定距離移動するまでの間、プッシャ装置によりビレットを押し進める工程とを備える。
好ましくは、ビレットを押し進める工程は、少なくとも、ビレットの先端が傾斜ロールに噛み込まれてから穿孔圧延が定常状態に至るまでの間、プッシャ装置によりビレットを押し進める。ここで、定常状態とは、たとえば、穿孔圧延されたビレットの先端(すなわち、素管の先端)が傾斜ロール後端の間から抜け出た時からビレット後端が傾斜ロールに接触した時までの期間をいう。
この場合、ビレットの噛み込み不良の発生を抑制でき、かつ、素管の先端部の偏肉を抑制できる。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
1.第1の実施の形態
[穿孔機の全体構成]
図1及び図2を参照して、穿孔機10は、2つのコーン型傾斜ロール(以下、単に傾斜ロールという)1と、プラグ2とを備える。穿孔機10の入側には、プッシャ装置3が配設され、穿孔機10の出側には、複数のHMD(Hot Metal Detector:熱鋼検知器)4が配設される。なお、図示していないが、穿孔機10とプッシャ装置3との間のパスラインX−X上には、ビレット20を搬送するためのトラフ又は複数の搬送ローラが配設される。
2つの傾斜ロール1は、パスラインX−Xを挟んで配置される。各傾斜ロール1は、パスラインX−Xに対して、傾斜角δ及び交叉角γを有する。プラグ2は2つの傾斜ロール1の間であって、パスラインX−X上に配設され、その後端は、プラグ芯金21の先端に接続される。
検知装置である2つのHMD4は、穿孔機10の出側であって、傾斜ロール1の後端近傍に配設される。HMD4は、穿孔圧延された素管の先端が傾斜ロール1間を通過したか否かを検知する。プッシャ装置3は、HMD4の検知結果に基づいて、素管の先端部が傾斜ロール1間を通過するまでビレット20を押し進めることができ、かつ、素管先端部が傾斜ロール1間を通過した後、ビレット20を押すのを停止することができる。
[プッシャ装置の構成]
プッシャ装置3は、穿孔機10の入側前方に、パスラインX−Xに沿って配設される。プッシャ装置3は、シリンダ装置30と、接続部材33と、プッシャ芯金34とを備える。シリンダ装置30は、シリンダ本体31と、シリンダ軸32とを備える。シリンダ装置30は油圧式又は電動式であり、シリンダ軸32を前進又は後退させる。シリンダ軸32は中実の丸棒材であり、その横断面形状は円形状である。
プッシャ芯金34は棒状である。プッシャ芯金34の横断面形状は、たとえば、円形状又は円環状である。つまり、プッシャ芯金34は、中実の棒材であってもよいし、中空の棒材であってもよい。プッシャ芯金34は、接続部材33により、周方向に回転可能にシリンダ軸32と接続される。
プッシャ装置3は、プッシャ芯金34の先端をビレット20の後端に当接する。そして、シリンダ軸32及びプッシャ芯金34を前進させる。これにより、プッシャ装置3は、ビレット20を後方から押す。
プッシャ装置3を用いたプッシャ穿孔圧延の工程は以下のとおりである。まず、ビレット20が、穿孔機10とプッシャ装置3との間のパスラインX−X上に配置される。続いて、プッシャ装置3がビレット20を押して、ビレット20を穿孔機10に向かって前進させる。これにより、ビレット20は傾斜ロール1に噛み込まれる。このとき、プッシャ装置3はさらに、穿孔圧延されたビレットの先端(すなわち、素管の先端)が所定距離移動するまで、ビレットを押し進める。
好ましくは、プッシャ装置3は、ビレットの先端が傾斜ロールに噛み込まれてから、穿孔圧延されたビレットの先端が傾斜ロール後端の間から抜け出るまで、つまり、穿孔圧延が定常状態になるまで、ビレットの後端を押し続ける。このとき、プッシャ芯金34の移動速度は、ビレット20の圧延方向進行速度以上とするのが好ましい。
このように、プッシャ穿孔圧延では、プッシャ装置3によりビレット20を押し進めながら穿孔圧延する。そのため、ビレット20の噛み込み不良が抑制される。
プッシャ装置3はさらに、ビレット20の横断面積Sb(mm)、プッシャ芯金34の横断面積Sp(mm)、プッシャ芯金34の長さLp(mm)、シリンダ軸32外径Dc(mm)及びプッシャ穿孔圧延時におけるシリンダ軸先端の移動距離Lc(mm)が、以下の式(1)〜(3)を満たす。
0.3≦Sp/Sb (1)
Lp/Sp≦1.2 (2)
Lc/Dc≦45 (3)
プッシャ装置3は、上記(1)〜(3)式を満たすことにより、上述のプッシャ穿孔圧延時における素管の偏肉の発生を抑制する。以下、各式(1)〜(3)について詳述する。
[式(1)について]
式(1)中のプッシャ芯金34の横断面積Spは、以下の方法で求める。プッシャ芯金34の任意10箇所で横断面積を求める。求めた10個の横断面積の平均をSpとする。また、ビレット20の横断面積Sbは以下の方法で求める。ビレット20の任意の10箇所で横断面積を求める。求めた10個の横断面積の平均をSbとする。
なお、プッシャ芯金34が中空の棒材である場合、横断面形状は円環形状となるが、円環形状の面積を横断面積として求める。
式(1)を満たすことにより、素管の偏肉は改善される。その理由は定かではないが、以下の事項が推定される。すなわち、式(1)を満たすことにより、プッシャ穿孔圧延時にプッシャ芯金が偏心回転しにくくなる。そのため、ビレットの偏心回転が抑えられ、素管の偏肉が抑制されると考えられる。
図3に、Sp/Sbと素管の偏肉との関係を示す。図3のグラフは以下の試験により得られた。
70mmの外径を有し、横断面積Sbが3846.5mmである複数の丸ビレットを準備した。準備された複数のビレットは、いずれも、0.45質量%の炭素含有量を有する炭素鋼とした。各ビレットに対して表1に示す条件でプッシャ穿孔圧延を実施し、素管を製造した。
Figure 0005098477
表1を参照して、Lc及びDcは一定とし、式(3)を満たした。また、プッシャ芯金長さLp(mm)と横断面積Sp(mm)とが互いに異なる、複数のプッシャ芯金を準備した。複数のプッシャ芯金は、いずれもLp/Sp=1.0であり、式(2)を満たした。各プッシャ芯金は、横断面形状が円環形状の中空の棒材とした。
以上の条件で製造された素管の先端部の偏肉を調査した。具体的には、素管の先端(ビレットの2つの端部のうち、初めに穿孔された端部に相当)から長手方向に150mmの位置まで、10mmピッチで測定位置を決定した。各測定位置の横断面で、周方向に等間隔の8箇所で肉厚を測定した。測定された肉厚を用いて、式(4)に基づいて、各測定位置での偏肉率を算出した。
各測定位置での偏肉率=(Tmax−Tmin)/Tave×100(%) (4)
ここで、Tmaxは、8箇所で測定された複数の肉厚のうち最大の肉厚、Tminは、測定された複数の肉厚のうち最小の肉厚、Taveは、測定された8箇所の肉厚の平均である。各ビレットの偏肉率(%)は、算出された各測定位置の偏肉率の平均とした。
また、プッシャ芯金の横断面積Spは以下の方法で求めた。使用されたプッシャ芯金の任意の10箇所で横断面積を求めた。求めた横断面積の平均値をSpとした。ビレットの横断面積Sbは以下の方法で求めた。穿孔圧延されるビレットの任意の10箇所で横断面積を求めた。求めた横断面積の平均値をSbとした。
図3を参照して、Sp/Sbが大きくなるに従い、偏肉率は低下した。さらに、Sp/Sb=0.3を境に、曲線の傾きは大きく変化した。具体的には、Sp/Sbが大きくなり、Sp/Sb=0.3になるまでは、偏肉率は急速に低下した。その結果、Sp/Sb=0.3では偏肉率が4.5%未満にまで低下した。一方、Sp/Sb=0.3より大きくなると、偏肉率の低下の度合いは緩やかになった。したがって、Sp/Sbは0.3以上とした。
なお、Sp/Sbが大きくなれば、プッシャ芯金34の横断面積が大きくなるため、プッシャ装置3は大型化される。プッシャ装置の大型化は設備コストの増大につながる。したがって、Sp/Sbの好ましい上限は1.0とする。ただし、Sp/Sbが1.0を越えても、本発明の効果を得ることができる。
図4は、Sp/Sbと素管先端の曲がりとの関係を示す図である。図4は、図3と同じ試験により得られた各素管の曲がり量(mm)を測定した結果である。各素管の曲がり量は以下の方法により求めた。すなわち、素管先端から200mmの範囲で、真直な鋼尺を素管表面に当て、鋼尺と素管表面との間隙を周方向に測定した。測定された間隙の最大値を曲がり量とした。 図4を参照して、素管の曲がり量も偏肉と同様の傾向を示した。すなわち、Sp/Sb=0.3以下のとき、Sp/Sbが大きくなるに従い、曲がり量は急速に減少し、Sp/Sb=0.3において、曲がり量は1mm未満となった。一方、Sp/Sbが0.3を越えた場合、曲がり量は緩やかに低下した。
以上の結果より、Sp/Sbを0.3以上とすることにより、素管の偏肉及び曲がり量を抑制できる。具体的には、素管先端部の偏肉率を4.5%未満とすることができ、曲がり量を1mm未満とすることができる。
なお、上記説明では、プッシャ芯金34の横断面形状は円形状又は円環状としたが、他の形状であってもよい。たとえば、プッシャ芯金34は、横断面形状が矩形や多角形の中実の棒材であってもよいし、横断面形状が矩形又は多角形の中空の棒材であってもよい。これらの形状であっても、式(1)を満たせば素管の偏肉及び曲がりを抑制できる。
[式(2)について]
式(1)を満たすことに加え、Lp/Spを1.2以下にすることにより、素管の偏肉は改善される。その理由は定かではないが、式(2)を満たすことにより、プッシャ穿孔圧延時におけるプッシャ芯金の偏心回転が抑制されるためと考えられる。
図5に、Lp/Spと素管の偏肉との関係を示す。図5のグラフは以下の試験方法で得られた。
図3での試験と同様の寸法の複数のビレットを準備した。さらに、横断面が円環状であり、横断面積Spが1963mmであり、長さLpが互いに異なる複数の中空プッシャ芯金を準備した。準備された各プッシャ芯金をプッシャ装置に取り付け、表1に示す条件でプッシャ穿孔圧延を実施した。このとき、Sp/Sb=0.51で式(1)を満たした。また、式(3)も満たされていた。製造された各素管の偏肉率(%)は、図3での試験の場合と同じ方法で求めた。
図5を参照して、Lp/Spが小さくなるに従い偏肉率は低下した。さらに、Lp/Sp=1.2を境に、曲線の傾きは変化した。具体的には、Lp/Spが小さくなり、1.2になるまで、偏肉率は急速に低下し、4.5%未満となった。一方、Lp/Spが1.2以下になると、偏肉率の低下の度合いは緩やかになった。したがって、Lp/Spは1.2以下とした。
[式(3)について]
式(1)及び(2)と同様に、式(3)を満たすことにより素管の偏肉が改善される。その理由として、以下の事項が推定される。すなわち、プッシャ穿孔圧延時におけるシリンダ軸32の先端の移動距離Lcが長くなるほど、シリンダ本体31から押し出されるシリンダ軸32の長さは大きくなる。シリンダ本体31から押し出されるシリンダ軸32の長さが大きいほど、シリンダ軸32はたわみやすくなる。なぜなら、シリンダ軸32は、シリンダ本体から押されるとともに、傾斜ロール1に噛み込まれたビレット20からも押されるからである。シリンダ軸32がたわめば、シリンダ軸32が偏心回転しやすくなるため、素管に偏肉が発生しやすくなると推定される。
Lc/Dcが45を越えると、素管の偏肉率が大きくなり、具体的には、偏肉率が4.5%以上となる。したがって、Lc/Dcは45以下とする。
図1に示すように、プッシャ芯金34の先端は凸状に丸みを帯びている。先端が丸みを帯びているため、プッシャ芯金34の先端がビレット20の後端と接触したときの接触面積は小さい。そのため、プッシャ芯金34とビレット20との接触により生じる摩擦力を小さくすることができる。摩擦力が小さければ、プッシャ芯金34の偏心回転が抑制されるため、素管の偏肉がより抑制される。なお、プッシャ芯金34の先端面が平坦であっても、式(1)〜(3)を満たせば、本発明の効果は得られる。
また、図1に示すように、2つの芯金ガイド部材5は、プッシャ芯金34を挟んで、互いに対向して配置される。各芯金ガイド部材5とプッシャ芯金34との間にはある程度の隙間が設けられる。芯金ガイド部材5は、プッシャ芯金34が偏心回転してパスラインX−Xからずれるのを抑制する。芯金ガイド部材5はなくてもよいが、芯金ガイド部材5を配置すれば、プッシャ芯金34が偏心回転するのをある程度抑制できる。
プッシャ芯金34及びシリンダ軸32の材質は特に限定されず、ヤング率の大きい金属材料であればよい。
2.第2の実施の形態
プッシャ芯金は複数の部材から構成されてもよい。図6を参照して、第2の実施の形態によるプッシャ装置3は、プッシャ芯金34の代わりにプッシャ芯金35を備える。
プッシャ芯金35は、芯金先端部材36と、芯金本体部材37とを備える。好ましくは、芯金先端部材36の長さは、芯金本体部材37の長さよりも短い。
図7を参照して、芯金先端部材36は、先端部361と、回動部362と、接続部363とを備える。回動部362は、内部にスラストローラベアリング364及びニードルベアリング365を収納する。回動部362は、スラストローラベアリング364及びニードルベアリング365により、先端部361を周方向に回転可能に保持する。接続部363は、雄ねじが切られており、先端に雌ねじを有する芯金本体部材37に取り付けされる。これにより、芯金先端部材36は、芯金本体部材37に固定される。
図1に示したプッシャ芯金34は、接続部材33により周方向に回転可能に接続されている。そのため、プッシャ穿孔圧延時に、傾斜ロール1に噛み込まれたビレット20が周方向に回転を始めると、ビレット20に接触したプッシャ芯金34も周方向に回転する。しかしながら、プッシャ芯金34の重量が大きい場合、周方向に回転しにくく、その回転速度が、ビレット20の回転速度とずれる場合がある。この場合、ビレット20の後端とプッシャ芯金34の先端との間に摩擦力が発生する。このような摩擦力はプッシャ芯金34を偏心回転させるため、素管に偏肉が発生する。
これに対して、本実施の形態のプッシャ芯金35は、芯金先端部材36と芯金本体部材37とで構成され、芯金先端部材36は周方向に回転可能に芯金本体部材37に取り付けられる。芯金先端部材36は、プッシャ芯金35全体よりも当然に軽い。そのため、傾斜ロール1に噛み込まれたビレット20が周方向に回転したとき、芯金先端部材36もビレット回転方向と同じ方向にほぼ同じ回転速度で容易に回転することができる。そのため、回転速度のずれに起因した摩擦力の発生が抑制され、素管の偏肉が抑制される。
さらに、図7に示すように、芯金先端部361の先端366は、凸状に丸みを帯びている。そのため、プッシャ芯金34がビレット20と当接したときに生じる摩擦力を小さくすることができる。
ビレット横断面積Sb、プッシャ芯金横断面積Sp、プッシャ芯金長さLp、シリンダ軸外径Dc及びシリンダ軸先端の移動距離Lcを、表2に示す各条件1〜8に設定し、プッシャ穿孔圧延を実施した。プッシャ穿孔圧延後、製造された素管の先端部の偏肉率を調査した。
Figure 0005098477
準備された複数の丸ビレットは、いずれも、0.45%の炭素含有量を有する炭素鋼とした。なお、プッシャ芯金は、丸棒状の中空材であった。また、プッシャ芯金の先端は平坦であった。表2中のプッシャ芯金横断面積Sp(mm)は、以下の方法で求めた。各条件番号で使用されるプッシャ芯金の任意の10箇所で横断面積を求め、求めた10個の横断面積の平均をSpとした。また、表2中のビレット横断面積Sb(mm)は、以下の方法で求めた。各条件番号で使用されるビレットの任意の10箇所で横断面積を求め、求めた10個の横断面積の平均をSbとした。
各条件1〜8で製造された素管の偏肉率(%)は、以下の方法で求めた。素管の先端から長手方向に150mmの位置まで、10mmピッチで測定位置を決定した。各測定位置の横断面で、周方向に等間隔の8箇所で肉厚を測定した。測定された肉厚から、式(4)に基づいて、各測定位置での偏肉率を算出した。各ビレットの偏肉率は、算出された各測定位置での偏肉率の平均とした。求めた偏肉率を表2に示す。
表2を参照して、条件4〜8は、いずれも式(1)〜式(3)を満たした。そのため、製造された素管の偏肉率は4.5%未満であった。
一方、条件1〜3は、式(1)〜(3)のいずれかを満足せず、偏肉率が4.5%以上となった。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明の第1の実施の形態による穿孔機及びプッシャ装置の全体構成を示す上面図である。 図1に示した穿孔機の側面図である。 図1に示したプッシャ芯金の横断面積Sp及びビレットの横断面積Sbと、プッシャ穿孔圧延により製造された素管の偏肉率との関係を示す図である。 図1に示したプッシャ芯金の横断面積Sp及びビレットの横断面積Sbと、プッシャ穿孔圧延により製造された素管の曲がり量との関係を示す図である。 図1に示したプッシャ芯金の長さLp及び横断面積Spと、プッシャ穿孔圧延により製造された素管の偏肉率との関係を示す図である。 本発明の第2の実施の形態による穿孔機及びプッシャ装置の全体構成を示す上面図である。 図6に示した芯金先端部材の縦断面図である。
符号の説明
1 傾斜ロール
2 プラグ
3 プッシャ装置
10 穿孔機
30 シリンダ装置
31 シリンダ本体
32 シリンダ軸
33 接続部材
34,35 プッシャ芯金
36 芯金先端部材
37 芯金本体部材

Claims (4)

  1. ビレットを穿孔圧延する穿孔機の入側に配設される穿孔圧延用のプッシャ装置であって、
    シリンダ軸を含むシリンダ装置と、
    前記シリンダ軸の先端に周方向に回転可能に取り付けられ、その先端が前記ビレットの後端に当接される、棒状のプッシャ芯金とを備え、
    前記プッシャ芯金の横断面積Spと前記ビレットの横断面積Sbとは式(1)を満たし、前記プッシャ芯金の長さLpと前記プッシャ芯金の横断面積Spとは式(2)を満たし、穿孔圧延時における前記シリンダ軸の先端の移動距離Lcと前記シリンダ軸の外径Dcとは式(3)を満たすことを特徴とするプッシャ装置。
    0.3≦Sp/Sb (1)
    Lp/Sp≦1.2 (2)
    Lc/Dc≦45 (3)
  2. 請求項1に記載のプッシャ装置であって、
    前記プッシャ芯金の先端は、凸状に丸みを帯びていることを特徴とするプッシャ装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のプッシャ装置であって、
    前記プッシャ芯金は、
    棒状の芯金本体部材と、
    前記芯金本体部材の端部に、周方向に回転可能に取り付けられ、その先端が前記ビレットの後端に当接される芯金先端部材とを備えることを特徴とするプッシャ装置。
  4. 複数の傾斜ロールを含む穿孔機と、前記穿孔機の入側に配設される請求項1〜3のいずれか1項に記載のプッシャ装置とを用いて、ビレットを穿孔圧延する継目無管の製造方法であって、
    前記ビレットを前記プッシャ装置と前記穿孔機との間に配置する工程と、
    前記プッシャ装置により前記ビレットの後端を押して、前記ビレットの先端を前記傾斜ロールに噛み込ませる工程と、
    前記ビレットの先端が噛み込まれてから、前記ビレットの先端が所定距離移動するまでの間、前記プッシャ装置により前記ビレットを押し進める工程とを備えることを特徴とする継目無管の製造方法。
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