JP5098007B2 - 非スフェロイド化幹細胞の調製方法 - Google Patents

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本発明は、スフェロイド化していない未分化の幹細胞を調製し、又は保存する方法に関する。
近年、血液細胞、免疫細胞、神経細胞、皮膚組織などの機能的な分化細胞へと分化する能力を有する幹細胞を用いて、所望の細胞および/または組織を必要に応じて生体外で作製して生体内へ移植する、あるいは幹細胞を直接患部等に接種して生体内で所望の細胞および/または組織にまで再生させる、いわゆる幹細胞を利用した再生医療技術が多大な注目を集めている。
幹細胞の代表例は、自己複製能(自己増幅能)および多分化能(個体を形成する全ての細胞種へ分化する能力)を有する胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)や造血幹細胞であるが、その他にも例えば肝臓、筋肉、皮膚、神経などの各組織からも幹細胞が同定されている。
幹細胞の再生医療技術への利用の一態様は、採取した幹細胞をインビトロ等で培養し、さらに所望の分化細胞への分化誘導を行い、当該分化細胞を生体に戻す方法である。この方法においては、幹細胞を所望の分化細胞にのみ誘導することが重要な要素となる。幹細胞の再生医療技術への利用のもう一つの態様は、採取した未分化の幹細胞を、好ましくは未分化のまま生体外で増殖させてその細胞数を増やした幹細胞を、生体の所定の組織に戻し、生体内で分化させて組織の再生を行う方法である。この方法においては、幹細胞を未分化のままで増殖させることが重要な要素となる。
しかし、幹細胞の増殖及び/又は分化は、増殖因子またはサイトカインなどの液性因子や種々の高分子からなる細胞外基質や足場(scaffold)の化学的性質のみならず、細胞外基質や足場との物理的接触によっても誘導されること、また細胞外基質や足場の微細な物理的形状が幹細胞の増殖や分化の誘導に影響を与えることなどが知られている。この様に幹細胞は、一般に幹細胞に対して分化を誘導すると言われるBMP2, TGF等の化学的因子が存在しなくても、細胞外基質や足場と物理的に接触するだけで容易に分化してしまう性質を有しているのである。例えば、神経幹細胞は、ガラス製又は樹脂製のペトリシャーレに置かれるだけで、神経細胞へと分化してしまう。この幹細胞の分化を抑制するには、LIF等の分化抑制因子を培地中に加える必要があるが、その様な因子が混入した幹細胞を移植に用いるのは好ましくない。そのため、幹細胞を未分化の状態で増殖させることのできる足場の開発は、細胞工学、組織工学の分野において急務である。
一方、培養細胞用の有用な基材としてのハニカム状多孔質体とその利用法が報告されている(例えば特許文献1、特許文献2)。このハニカム状多孔質体(ハニカム構造体あるいはハニカムシートとも呼ばれる)は、水滴を鋳型とした簡便な方法によって製造される微細な周期構造を有する構造体(特許文献3)である。この構造体は、膜の垂直方向に向けられた微少な孔(くぼみを含む)が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている薄膜構造体と表すことができる。孔は膜を垂直方向に貫通していてもよく、また平面方向に存在する周囲の孔と連通していてもよい。この様なハニカム状という規則的な配置で孔が設けられている多孔質の薄膜は、孔の径、形状あるいは深さなどがまちまちである不規則な孔を有する通常の多孔質体とは全く異なる構造体として理解されている。
ハニカム状多孔質体が培養細胞に対して良好な足場となり得ることは、前記の特許文献2、3に記載の通り、幾つかの細胞種について報告されているが、これまでの報告にかかる培養細胞はいずれも特定の分化細胞である。これに対して本発明者らは、ハニカム状多孔質体が、未分化の状態で神経幹細胞を増殖させる足場となることを見いだし、特願2005−058236として特許出願を行った。
特開2001−157574号公報 特開2002−335949号公報 特開平8−311231号公報
移植医療への幹細胞の利用において、上記発明者らによる特許出願に係る発明の様に、未分化の状態で幹細胞を増殖させるための足場の提供は重要な課題のひとつであるが、一方で、幹細胞を分化も増殖もしない状態に維持、保存することができれば、移植医療への幹細胞の利用可能性をさらに広げることも可能である。本発明の目的は、幹細胞を分化も増殖しない状態に維持、保存する技術を提供することにある。
本発明者らは、ハニカム状多孔質体上で幹細胞をインキュベーションすると、分化せず、またスフェロイド化せずに生存している幹細胞を提供できることを見出し、以下の各発明を完成した。
(1)ハニカム状多孔質体に採取した幹細胞を定着させる工程(a)、及び定着した幹細胞を無血清培地中でインキュベーションする工程(b)を含む、非スフェロイド化幹細胞を調製及び/又は保存する方法。
(2)ハニカム状多孔質体の孔径が0.01μm〜100μm、膜厚が0.01μm〜100μmである、(1)に記載の方法。
(3)幹細胞が体性幹細胞又は胚性幹細胞である、(1)に記載の方法。

(4)無血清培地が幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が添加されていない培地である、(1)に記載の方法。
(5)幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が、bFGF、TGFβ、EGF, PDGF、リン脂質、フッ素付加ステロイド、アリール酢酸系非ステロイド化合物及びレチノインからなる群より選ばれる一種以上である、(4)に記載の方法。
(6)ハニカム状多孔質体上に形成された幹細胞のスフェロイドを除去する工程(c)をさらに含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
本発明の方法によれば、スフェロイド化していない未分化の幹細胞を調製することができ、またかかるスフェロイド化していない未分化の幹細胞を4日〜10前後にわたって保存することができる。この様な未分化の幹細胞は、遺伝子治療、臓器移植、骨髄移植、ガン治療、または再生医学といった多岐にわたる医療分野において非常に有用である。
本発明で利用されるハニカム状多孔質体について説明する。ハニカム状多孔質体は、前記に述べたとおり、膜の垂直方向に向けられた微少な孔(くぼみを含む)が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている膜構造体であるが、本発明では、微少な孔が0.01μm〜100μm、好ましくは0.1μm〜30μm、特に好ましくは1〜5μmの孔径を有し、膜厚が0.01μm〜100μm、好ましくは0.1μm〜30μm、特に好ましくは3〜5μmであるハニカム状多孔質体を使用することが好ましい。孔の大きさは、調製しようとする幹細胞に応じて上記範囲から適宜定めることができる。例えば、神経幹細胞に対しては、孔径は1〜3μm、特に3μmが好ましい。また、前記孔は平面方向に存在する周囲の他の孔と連通していてもよい。
ハニカム状多孔質体は、種々の公知の方法に従って製造することができる。例えばフォトリソグラフィーやソフトリソグラフィー(ホワイトサイドら、Angew.Chem.Int.Ed.、1998年、第37巻、第550−575頁)、ブロックコポリマーの相分離(アルブレヒトら、マクロモレキュール(Macromolecules)、2002年、第35巻、第8106−8110頁)、サブミクロンのコロイド微粒子を集積することで2次元、3次元の周期構造を作製する方法(グら、Langmuir、第17巻)、これを鋳型にしてインバースドオパール構造を作製する方法(カルソら、Langmuir、1999年、第15巻、第8276−8281頁)などを挙げることができる。
また、これらの方法とは異なる方法である特開平8−311231、特開2001−157475、特開2002−347107あるいは特開2002−335949に記載された方法も使用することができる。これらの方法は、非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液表面上に水滴を結露させ、該水滴を鋳型としてハニカム状多孔質体を調製するものであり、製造コストや効率等の点でその他の製造法に比べて有利である。以下、さらに詳しく説明する。
この方法では、水不溶性有機溶媒、特に50dyn/cm以下の表面張力γLを有する水不溶性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解した非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液を、表面の表面張力をγSとし、塗布される水不溶性有機溶媒の表面張力γLならびに該基板と該溶媒との間の表面張力γLSとした場合にγS−γSL>γLの関係を満たす基板の表面に塗布し、さらに30%以上の空気の存在下で基板上に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液を蒸発させることが好ましい。
ここにいう水不溶性有機溶媒は、50dyn/cm以下の表面張力を有し、かつ該溶液表面に結露した水滴を保持し得る程度の水不溶性と、大気圧下で0〜150℃、好ましくは10〜50℃の沸点を有する有機溶媒を言う。例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性のケトン類、二硫化炭素などを挙げることができる。
また非水溶性ポリマーは、水に不溶性でかつ上記の水不溶性有機溶媒に可溶な、あるいは適当な界面活性剤の存在下で水不溶性有機溶媒に溶解し得るポリマーであれば特別の制限はなく、適宜選択して使用することができる。
例えば、ポリ乳酸やポリヒドロキシ酪酸のような生分解性ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、両親媒性ポリマー、光機能性ポリマー、電子機能性ポリマーなどを挙げることができる。具体的な例示としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などの共役ジエン系高分子;ポリε−カプロラクトン;ポリウレタン;酢酸セルロース、セルロイド、硝酸セルロース、アセチルセルロース、セロファンなどのセルロース系高分子;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド12、ポリアミド46などのポリアミド系高分子;ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、パーフルオロエチレン−プロピレン共重合体などのフッ素系高分子;ポリスチレン、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン−アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系高分子;ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテンなどのオレフィン系高分子;フェノール樹脂、アミノ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのホルムアルデヒド系高分子;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系高分子;エポキシ樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体などの(メタ)アクリル系高分子;ノルボルネン系樹脂;シリコン樹脂;ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリグリコール酸などのヒドロキシカルボン酸の重合体などが挙げられる。これらは単独で使用されても組み合わせて使用されてもよい。
なお、本発明で使用するハニカム状多孔質体を構成するポリマーは必ずしも生分解性である必要はないが、幹細胞を調製するための非水溶性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)を挙げることができる。
また本発明で利用されるハニカム状多孔質体の調製は、両親媒性ポリマーを含んで構成されることが好ましい。好ましい両親媒性ポリマーとしては、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし疎水性側鎖としてドデシル基と親水性側鎖としてラクトース基またはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性樹脂;ヘパリンやデキストラン硫酸、核酸(DNAやRNA)などのアニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのイオンコンプレックス;ゼラチン、コラーゲン、アルブミンなどの水溶性タンパク質を親水性基とした両親媒性樹脂;ポリ乳酸−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリε−カプロラクトン−ポリエチレングリコールブロック共重合体、ポリリンゴ酸−ポリリンゴ酸アルキルエステルブロック共重合体などの両親媒性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記の水不溶性有機溶媒と非水溶性ポリマーとの具体的な組み合わせの例としては、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアルキルシロキサン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリアルキルアクリルアミド、およびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、二硫化炭素などの有機溶媒を組み合わせて使用することができる。また、フッ素化アルキルを側鎖に持つアクリレート、メタクリレートおよびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、AK−225(旭硝子株式会社製)などのフッ化炭素溶媒、トリフルオロベンゼン、フルオロエーテル類などの使用も良好な結果を与える。これらの中から、具体的に使用する非水溶性ポリマーに対する溶解性を考慮して、適宜選択して使用することができる。
また、フッ素化アルキルを側鎖に持つポリアクリレートやメタクリレートの側鎖の水素をフッ素に置換したフッ素系ポリマーを用いてハニカム状多孔質体を製造する際には、フッ素系の有機溶媒(AK−225等)の使用も良好な結果を与える。本発明の目的において好適な非水溶性ポリマーと水不溶性有機溶媒の組み合わせは、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)とクロロホルム、ジクロロメタンなどを挙げることができる。
水不溶性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解する際には、同溶媒に対して0.1g/L〜10g/Lの非水溶性ポリマーを溶解して使用することができるが、本発明で使用するハニカム状多孔質体を調製するには、0.5g/L〜5g/Lとすることが好ましい。
非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液を塗布する基板は、例えば、紙、ガラス板、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、シリコン製板等が挙げられる。
特に基板表面の表面張力γSと塗布される水不溶性有機溶媒の表面張力γLならびに該基板と該溶媒との間の表面張力γLSとの間で、γS−γSL>γLの関係を満たす基板を用いることが望ましい。これは、非水溶性ポリマー溶液の水不溶性有機溶媒溶液を塗布する基板自体の水不溶性有機溶媒に対する濡れ性が、基板上に形成される液膜の厚みに影響を与え得るためである。基板には、塗布される非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液との親和性が高いものであることが好ましい。具体的には、水不溶性有機溶媒の表面張力γLを指標にして上記式で表すことのできる表面張力を示す表面を有する基板を利用すればよい。そのような基板の好適な例としては、ガラス板、シリコン製板あるいは金属板などを挙げることができる。
また、水不溶性有機溶媒溶液との親和性を高めることのできる加工を表面に施した基板の使用も可能である。この様な基板表面の濡れ性の改良は、基板と使用する水不溶性有機溶媒に合わせて、自体公知の方法、例えばガラス製や金属製の基板に対してはそれぞれシランカップリング処理やチオール化合物による単分子膜形成処理方法などを利用することができる。
例えば、クロロホルムなどの疎水性有機溶媒を水不溶性有機溶媒として用いる場合の基板としては、十分に洗浄されたSi基板や、アルキルシランカップリング剤などで表面を修飾したガラス基板などの使用が好ましい。また、フッ素系溶媒を用いる場合は、フッ素による表面加工された基板、あるいはフッ素化アルキルシランカップリング剤などで修飾したガラス基板などの使用が好ましい。
非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液を基板に塗付して同溶液の液膜を形成させる際の液膜厚としては50μm〜5mm、好ましくは2mm以下とすることが望ましい。また基板に非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液を塗付する方法としては、基板に同溶液を滴下する方法の他、バーコート、ディップコート、スピンコート法などを挙げることができ、バッチ式、連続式の何れも利用することができる。
基板表面に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液は、相対湿度30%以上の空気に接触させることによって蒸発させる。ここで溶媒の蒸発速度を非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液の基板表面への塗布時の液膜厚が20分以内に50μmにまで減少する速度とすることによって、1μm〜10μmの孔径を有するハニカム状多孔質体を調製することができる。この蒸発速度は、基板上に塗布した非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液の液膜の面方向に対してほぼ平行ないし上方向に0.1L(リットル)/分以上の空気層の流れを形成して水不溶性有機溶媒を蒸発させる方法、水不溶性有機溶媒の沸点未満かつ液膜に接触する空気の露点未満で非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液が塗布された基板を加熱(例えばベルチェ素子を用いて加熱)して水不溶性有機溶媒を蒸発させる方法、あるいは非水溶性有機溶媒の沸点ならびに液膜に接触する空気の露点を超えないような減圧下に基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液をおいて水不溶性有機溶媒を蒸発させる方法、等によって達成することができる。ここで、露点とは、ある温度におかれた空気の中に含まれている水蒸気が飽和に達して凝結する温度をいい、相対湿度と絶対温度に対して定まる値である。
好適な例としては、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液の液膜に対してほぼ平行ないし上方向に相対湿度30%以上の湿度を有する流速0.1〜10L/分の気流を発生させることである。
また気流は、基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液の液膜に対して斜め上方向から、あるいは垂直方向から気流を当たるような配置では、気流による風圧によって液膜に歪みや亀裂が発生することもあり得る。その様な場合には、気流は基板に塗布された非水溶性ポリマーの水不溶性有機溶媒溶液の液膜に平行に、あるいは上方向に生じさせることが好ましい。この場合、気流はその上流からの陽圧あるいは下流からの負圧の何れによって発生させても構わない。例えば、基板に向けて設置したノズルから所定の空気を噴射しても、基板上部の空気を一方向から吸引しても、何れでも良い。
また、本発明では、上記の方法によって調製される非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体を鋳型として、これに無電解鍍金処理を行って調製することができる金属製のハニカム状多孔質体も利用することができる。この金属製のハニカム状多孔質配とその製造方法は、本発明の出願人による別の特許出願である特願2006−16377の願書に添付した明細書に、詳細に記載されている。この方法は、鋳型であるハニカム状多孔質体の表面に触媒となる白金を塗布する工程、ならびに鋳型表面に遷移金属、その酸化物もしくはその硫化物を析出させる工程を含む。
ここで使用される金属は、溶液中での還元反応を利用した金属鍍金処理、いわゆる無電解鍍処理によって鋳型となる物質の表面に結晶を析出させることのできる金属である。その具体的な金属元素は、クロム(Cr、原子番号24)、マンガン(Mn、原子番号25)、鉄(Fe、原子番号26)、コバルト(Co、原子番号27)、ニッケル(Ni、原子番号28)、銅(Cu、原子番号29)、亜鉛(Zn、原子番号30)、イットリウム(Y、原子番号39)、ジルコニウム(Zr、原子番号40)、ニオブ(Nb、原子番号41)、モリブデン(Mo、原子番号42)、テクネチウム(Tc、原子番号43)、ルテニウム(Ru、原子番号44)、ロジウム(Rh、原子番号45)、パラジウム(Pd、原子番号46)、銀(Ag、原子番号47)、カドミウム(Cd、原子番号48)である。またこれらの酸化物の例としては酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(FeO)などを、硫化物の例としては硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)などを例示することができる。
鋳型となるハニカム状多孔質体への白金の塗布は、スパッタリング法(イオンスパッタリング法)によって行うことができる。イオンスパッタリング法は、例えば牛木辰男ら(2000年、共立出版株式会社発行、「走査電子顕微鏡」、第181頁〜第182頁)に紹介されており、本発明ではこの方法に従ってハニカム状多孔質体に白金を塗布することができる。
白金を塗布した非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体の表面での遷移金属、その酸化物もしくはその硫化物の析出は、適当な還元剤ならびに遷移金属元素、その酸化物またはその硫化物を溶解した溶液に白金を塗布した非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体を浸すことで行うことができる。以下の例示に限定されないが、還元剤としてはヒドラジン(NH)、次亜リン酸ナトリウム、DMAB(ジメチルアミンボラン)等を例示することができる。また金属源としては硝酸銀、硝酸亜鉛等の金属硝酸化合物、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化銅、塩化銀等の金属塩化物等を例示できる。これらは水溶液として調整し、pH調整のために適宜アンモニアや酢酸、水酸化ナトリウム等を加えても良い。還元剤と金属源の組み合わせは、析出させたい金属の厚みや物性に応じて適宜選択することができる。金属酸化物を製造する手法としては、一度還元剤によって金属化した表面を直接オゾン等で酸化する手法や電気化学的に酸化する手法が適宜使用できる。金属硫化物を製造する手法としては、硫化水素蒸気に接触させる手法や硫化水素バブリング溶液中で還元剤による金属の析出を行う手法等が挙げられる。
上記の鋳型表面に対する白金の塗布ならびに遷移金属等の析出操作は、広く行われている無電解鍍金処理そのものであり、従って「表面技術者のための電気化学」(青山志郎著、2001年、丸善)、「無電解めっき」(電気化学研究会、1994年、日刊工業新聞社)などの文献や操作マニュアルの記載を参照しながら行うことができる。
上記に述べた方法によって製造することができる金属被膜が施された非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体は、非水溶性ポリマーによって中空部分が充填された、膜の垂直方向に向けられた微少な孔が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている中空状金属製薄膜と表すこともできる。本発明の中空状金属製薄膜は、この様な構造を有する金属薄膜を含むものである。
また、かかる構造を有する金属薄膜を、非水溶性ポリマーを溶解することのできる適当な有機溶媒に浸す、酸素プラズマによって分解する、あるいは焼成するなどの処理を行って、金属被膜部分を残して非水溶性ポリマーを除去することができる。この様にして得られる薄膜は、中空部分がポリマー等の物質によって充填されていない、膜の垂直方向に向けられた微少な孔が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている中空状金属製薄膜である。さらに、この非水溶性ポリマーを除去した後の中空状金属製薄膜を、該金属の融点近く付近まで加熱することにより中空部を溶融した金属で埋めることもできる。
本発明において、対象となる幹細胞が神経幹細胞である場合に好適なハニカム状多孔質体は、1〜3μmの孔径と1〜3μmの膜厚を有する、ポリスチレン、ポリ乳酸あるいはポリ(ε−カプロラクトン)からなるハニカム状多孔質体である。またこのハニカム状多孔質体は、上記のハニカム状多孔質体の調製条件において、水不溶性有機溶媒における非水溶性ポリマーの濃度を1〜2mg/ml、湿度40%の気流(0.5〜1L/min)とすることで再現性よく調製することができる。
次に、本発明で使用される幹細胞について説明する。幹細胞とは、一般にある種の細胞に分化する能力ならびに未分化の状態で自らを複製、再生する能力を備えた細胞を意味し、胚盤胞の内層細から採取される胚性幹細胞(ES細胞)と、成体中の組織から採取される未分化状態の細胞である体性幹細胞とに分けることができる。本発明の工程(a)で用意される幹細胞の種類は特に限定されず、体性幹細胞または胚性幹細胞のいずれであってもよい。特に再生医療に応用される体性幹細胞としては、造血幹細胞(造血器悪性腫瘍、造血不全、免疫不全、代謝性疾患、固形腫瘍など)、間葉系幹細胞(骨折後の骨再生、筋疾患、虚血部欠陥新生など)、神経幹細胞(末梢神経損傷(外傷)、虚血、神経系悪性腫瘍、神経変性疾患など)、肝幹細胞(肝不全)、筋幹細胞(筋疾患)、膵幹細胞(糖尿病)、皮膚幹細胞(熱傷、皮膚切除後)、網膜幹細胞(網膜変性疾患)、毛包幹細胞(脱毛症)等を挙げることができる。なお、括弧内は各幹細胞を利用した再生医療によって治療効果が望める主な対象疾患を示す。
これら幹細胞の採取は、各種の幹細胞が存在する臓器あるいは組織から、それぞれの幹細胞に関する公知の採取方法によって採取すればよく、本発明に特有の条件や操作法等はない。
本発明の工程(a)は、上記に説明したハニカム状多孔質体に幹細胞を定着させる工程である。幹細胞の定着は、血清培地中でハニカム状多孔質体と幹細胞とをインキュベーションすることで行うことができる。また、血清培地中でハニカム状多孔質体をプレインキュベーションし、ここに幹細胞を加えてインキュベーションしてもよい。工程(a)における好ましい培地は牛胎児血清培地であり、特に後に述べる様な幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が添加されていない血清培地である。
工程(a)におけるハニカム状多孔質体と幹細胞とのインキュベーション時間は、概ね数時間〜1日程度であればよい。また定着開始時の幹細胞の個数は、培地1mlあたり1×10〜2×10個の幹細胞を含む様に調整し、この培地をハニカム状多孔質体1cm2当たり1ml〜2ml程度使用すればよい。さらに、ハニカム状多孔質体と幹細胞とのインキュベーションにおける温度、培地のpHその他の諸条件は、培養細胞が生存あるいは増殖することのできる通常の条件に設定すればよい。例えば温度は33℃〜39℃、培地pHは5.0〜8.0、CO濃度は3%〜6%程度に設定すればよい。ただし、この様な幹細胞の個数や培地の使用量その他の条件設定は飽くまでも目安であり、上記の数値に拘束されるものではない。
本発明の工程(b)は、定着した幹細胞を無血清培地中でインキュベーションする工程である。この工程では、工程(a)で使用した血清培地を無血清培地に交換した後に、さらに概ね1日〜4日間インキュベーションが継続される。特に、幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が添加されていない無血清培地中で、ハニカム状多孔質体に定着させた幹細胞をインキュベーションすることが好ましい。
既に説明したとおり、幹細胞の分化は細胞外基質や足場との物理的な接触によって誘導されるが、上記の化学的因子による刺激を受けることでも容易に誘導される。本発明の方法におけるハニカム状多孔質体は、従来の細胞外基質や足場と異なり、幹細胞に接触することのみによって幹細胞の分化を誘導するものではないが、それでもなお上記のような幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が同時に存在すると、かかる化学的因子の刺激によって幹細胞が分化するおそれもある。よって本発明では、かかる化学的因子が添加されていない培地中でハニカム状多孔質体と幹細胞とをインキュベーションすることが好ましい。本発明にいう幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子としては、例えばbFGF、TGFβ、EGF, PDGFなどの蛋白質、βグリセロホスフェート等のリン脂質、デキサメタゾン等のフッ素付加ステロイド、インドメタシン等のアリール酢酸系非ステロイド、レチノイン酸等の低分子化合物などを挙げることができる。
幹細胞とハニカム状多孔質体とのインキュベーションにおける温度、培地のpHその他の諸条件は、培養細胞が生存あるいは増殖することのできる通常の条件に設定すればよい。例えば温度は33℃〜39℃、培地pHは5.0〜8.0、CO濃度は3%〜6%程度に設定すればよい。ただし、この様な条件設定は飽くまでも目安であり、上記の数値に拘束されるものではない。
一般に培養細胞は、平面培地上では平面方向に広がってコンフルエントに達するまで増殖するか、適当な細胞外基質あるいは足場が存在すると互いに積層あるいは凝集するように増殖して、3次元的な凝集塊すなわちスフェロイドを形成する。本発明の出願人による別の特許出願である特願2005−058236にかかる発明である培養基材で神経幹細胞を培養すると、当該培養基材上で未分化の神経幹細胞の凝集塊を形成(スフェロイド化)する。
一方、本発明の方法によってハニカム状多孔質体と神経幹細胞とをインキュベートすると、ハニカム状多孔質体の上で増殖してスフェロイド化した未分化の神経幹細胞が確認されるとともに、分化もスフェロイド化もしていない細胞が存在することが確認された(図2)。この細胞は、ハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される。また、この細胞は、神経幹細胞/前駆細胞のマーカーであるネスチン(Nestin)に対する抗体を用いた抗体染色法で陽性であり、分化した神経細胞のマーカーであるMAP2(Microtubule−associated protein 2)に対する抗体を用いた抗体染色法で陰性であった。また、培養細胞が増殖能を保持していることを示す指標となる核酸取り込み実験で陽性であった。以上の結果は、当該細胞が未分化の神経幹細胞であり、スフェロイドに至るまでには増殖していないが、依然として増殖するポテンシャルを保持している細胞であることを意味する。
この様に、本発明の方法によって、スフェロイド化していない未分化の幹細胞、すなわち本発明にいう非スフェロイド化幹細胞を調製することができる。従って本発明は、本明細書で説明したハニカム状多孔質体からなる、非スフェロイド化幹細胞を調製するための足場剤も提供する。
またこの細胞は、上記に説明した条件下において4日〜10日間ほどスフェロイド化せず、分化もせずに生存することが確認された。すなわち、本発明の方法は、非スフェロイド化幹細胞を保存することもできる。従って本発明は、本明細書で説明したハニカム状多孔質体からなる、非スフェロイド化幹細胞を保存するための保存剤も提供する。
また、本発明の方法によってハニカム状多孔質体と神経幹細胞とをインキュベートすると、幹細胞の一部はハニカム状多孔質体の上で増殖してスフェロイド化するが、この増殖したスフェロイド化幹細胞はピペッティング操作等によって簡単にハニカム状多孔質体から除去することができる。このスフェロイド化した幹細胞を除去する工程(c)をさらに含む本発明は、非スフェロイド化幹細胞を選択的に調製し、保存することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
(1)ポリ(ε−カプロラクトン)(Poly(ε−caprolactone);(株)和光純薬工業、MW70,000〜100,000:以下PCLと称する)と両親媒性アクリルアミドポリマー(Cap)とを重量比10:1の割合で混合した後にクロロホルムに溶解し、PCLの濃度を2 mg/mLに調製した混合溶液をガラスシャーレ(直径9cm)に3mlキャストし、湿度40%の気流下(1L/min)で溶媒を蒸発させ、膜厚2μmのPCLからなるハニカム状多孔質体を作製した(図1)。
走査型電子顕微鏡(SEM、HITACHI、S−3500N)を用いて上記のハニカム状多孔質体を撮影した画像1枚あたり5個の孔を選択してその直径の平均を孔径として求め、合計5枚の画像について孔径を測定することで、上記のハニカム状多孔質体の孔の孔径が3μmであることを確認した。
(2)(1)で作製したハニカム状多孔質体を切り取って、18mm角のカバーガラス(MATSUNAMI)に密着させ、1−プロパノール中で5分間浸漬して洗浄し、細胞培養容器35mm/non−treated polystylene culture dish(IWAKI)中にてエタノールおよびUV照射によって滅菌した後、50mg/LのポリL−リジン(Sigma)を含む0.1Mホウ酸溶液(pH8.3)に1時間浸漬した後、滅菌水で3回洗浄し、さらに10%FBS(Fetal Bovine Serum)と2−メルカプトエタノール(Gibco)を含む培地(Opti−MEM培地)中にて37℃で1時間プレインキュベーションした。
(3)胎生14日目のICRマウスの大脳皮質組織から、以下のようにして神経細胞を調製した。まず、妊娠14日目のマウスから胎仔を取り出した後に脳を摘出した。さらに、大脳半球から大脳皮質を分離してOpti−MEM培地に回収し、パスツールピペットによって細胞を分散させ、幹細胞の細胞懸濁液を調製した。次いで、血球計算板を用いて細胞数を計数し、トリパンブルー(Gibco)染色によるViability測定を行った。
(4)(1)で用意したハニカム状多孔質体に対し、(3)で用意した幹細胞の細胞懸濁液を、細胞密度2.0×10細胞/cmとなるように播種した。37℃、5%COの条件下にて、1日目はOpti−MEM培地で、2日目以降は培地を2−メルカプトエタノールを含む無血清培地(Opti−MEM、B27 Supplement(Gibco))に換えて4日間インキュベートした。
インキュベーション終了後の2種類の膜をそれぞれPBSで洗浄し、2.5%グルタールアルデヒド/PBSを用いて4℃で一晩、細胞を固定した。次いで、PBS、90%PBS、70%PBS、50%PBS、30%PBS、およびMilliQ水でそれぞれ洗浄し、エタノール(20%、50%、70%、99%)で順次脱水した後3時間減圧乾燥した。乾燥させた試料にイオンスパッタリング装置(HITACHI,E−1030)を用いて白金パラジウムを蒸着させ、SEMを用いて観察した。
その結果、ハニカム状多孔質体の膜上面に、神経幹細胞からなる直径約30〜50μmの凝集塊(スフェロイド)が確認された(図2)。またスフェロイドの底部には、スフェロイドから5〜7本の突起が放射状に伸展したネットワーク様構造が形成されていた。一方、このスフェロイド化した神経幹細胞とは別に、ハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される非スフェロイド化幹細胞が観察された(図3)。
試験例
(1)抗Nestin抗体と抗MAP2抗体を用いた2重免疫染色
実施例の(4)で4日間のインキュベーションを終了したハニカム状多孔質体をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBSを添加して、室温で1時間放置して膜にある細胞を固定した。PBSで3回(各10分間)洗浄した後、Blocking solution(5%ヤギ血清、2.5%BSA、0.2%Triton−X100を含むPBS)を添加して、室温で1時間インキュベーションした。Blocking solutionを除去した後、2種類の一次抗体(PBSで1000倍に希釈した抗Nestin抗体とPBSで1000倍に希釈した抗MAP2抗体)を加えて室温で1時間インキュベーションした。PBSで3回(各10分間)洗浄した後、2種類の2次抗体(PBSで2000倍に希釈したAlexa488標識アビジンとCY3標識ウサギIgG抗体)を加えて室温で30分間インキュベーションした。PBSで3回(各10分間)、蒸留水で1回洗浄した後、サンプルをスライドガラスに載せ、Mounting media(KPL)によってマウントした。Nestinは神経幹細胞/前駆細胞の、すなわち未分化の神経幹細胞のマーカーであり、MAP2は分化した神経細胞に特異的なマーカー蛋白質である。
上記の免疫化学反応による染色を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果、ハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される細胞は、抗Nestin抗体染色で陽性、抗MAP2抗体染色で陰性であった(図4a)。
(2)BrdU取り込みラベリング
実施例の(4)で5日間のインキュベーションを終了したハニカム状多孔質体の培地を20μM BrdU(Chemicon社)を含む培地に交換して、さらに2時間インキュベーションした。その後、10%ホルマリンを用いて室温にて2時間、膜にある細胞を固定した。PBSで3回(各10分間)洗浄し、2M HCl溶液中にて37℃で60分間インキュベーションした後、0.1M H3BO4緩衝液で2回、PBSで2回(各5分間)洗浄した。次いで、Blocking solution(5%ヤギ血清、2.5%BSA、0.2%Triton−X100を含むPBS)を添加して、室温で1時間インキュベーションした。Blocking solutionを除去した後、一次抗体(PBSで1000倍に希釈した抗BrdUマウスIgGを加えて室温で1時間インキュベーションした。PBSで3回(各10分間)洗浄した後、PBSで1000倍に希釈したビオチン化抗マウスIgGを加えて室温で1時間インキュベーションした。さらにPBSで洗浄した後、PBSで2000倍に希釈したAlexa488標識アビジンを加えて30分間インキュベーションした。PBSで3回(各10分間)、蒸留水で1回洗浄した後、サンプルをスライドガラスに載せ、Mounting media(KPL)によってマウントした。
上記の免疫化学反応による染色を共焦点レーザー顕微鏡にて観察したところ、ハニカム状多孔質体の貫通孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される細胞は陽性であった(図5a)。抗BrdU抗体染色で陽性となる細胞は、適当な条件下に置かれたときに増殖するポテンシャルを備えた細胞である。
以上の(1), (2)ならびに電子顕微鏡写真の結果から、本発明の方法によって調製されるハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される細胞は、スフェロイド化していないが、増殖能を保持している未分化の神経幹細胞であることが確認された。
比較例
実施例の(1)で調製された混合溶液を18mm角のカバーガラス上に滴下し、1000rpm、30秒の条件でスピンコーター(MIKASA)を用い、PCLからなる平膜(比較例2)を作製した。この比較例について、実施例の(2)〜(4)ならびに試験例の(1)、(2)と同様の操作を行った。
SEM電子顕微鏡観察では、比較例の平膜上に多数の神経突起が伸展しネットワーク構造を形成している、紡錘型の神経細胞が観察された(図6)。また比較例における細胞は、抗β−TubulinIII抗体反応で陽性、抗Nestin抗体反応で陰性、抗BrdU抗体反応で陰性であり、増殖するポテンシャルを失った神経細胞へと分化した細胞であることが確認された(図4b、図5b)。
図1は、実施例において作製したハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真である。 図2は、実施例においてハニカム状多孔質体上で観察された未分化神経幹細胞のスフェロイドを表した電子顕微鏡写真である。 図3は、実施例においてハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される非スフェロイド神経幹細胞を表した電子顕微鏡写真である。 図4aは、ハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される細胞に対する抗Nestin抗体ならびに抗MAP2抗体を用いた2重免疫化学染色を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真を示す。図中、緑色の発色は細胞が未分化な神経幹細胞であることを示す。 図4bは、比較例の平膜上に存在している細胞に対する抗Nestin抗体ならびに抗MAP2抗体を用いた2重免疫化学染色を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真を示す。図中、赤色の発色は細胞が分化した神経細胞であることを示す。 図5aは、ハニカム状多孔質体の孔に一部または全部がはまり込んでいると推察される細胞に対する抗BrdU抗体を用いた免疫化学染色を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真を示す。図中、緑色の発色は細胞が増殖能を保持している細胞であることを示す。 図5bは、比較例の平膜上に存在している細胞に対する抗BrdU抗体を用いた免疫化学染色を共焦点レーザー顕微鏡で観察した写真を示す。図中、緑色に発色しないのは細胞が増殖能を失った分化した神経細胞であることを示す。 図6は、比較例の平膜上で観察された神経細胞の電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. ハニカム状多孔質体に幹細胞を定着させる工程(a)、定着した幹細胞を無血清培地中でインキュベーションする工程(b)、及びハニカム状多孔質体上に形成された幹細胞のスフェロイドをピペッティングにより除去する工程(c)を含
    前記ハニカム状多孔質体の孔径が1μm〜3μm、膜厚が0.01μm〜100μmである、
    非スフェロイド化幹細胞を調製及び/又は保存する方法。
  2. 幹細胞が体性幹細胞又は胚性幹細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 無血清培地が幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が添加されていない培地である、請求項1に記載の方法。
  4. 幹細胞に対して分化を誘導する化学的因子が、bFGF、TGFβ、EGF、PDGF、リン脂質、フッ素付加ステロイド、アリール酢酸系非ステロイド化合物及びレチノインからなる群より選ばれる一種以上である、請求項に記載の方法。
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