JP3126269B2 - 培養基質 - Google Patents
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Description
培養する場合に使用する新規培養基質に関するものであ
る。一般に、細胞は生体内では様々な大きさの特異な形
態を持つ集合体を形成している。また、この集合体は相
互に情報伝達を行っているが、このような形態、機能、
情報伝達の作用を明らかにすることが病因の解明、新薬
の創製、治療法の開発につながることから、これらに関
する活発な研究がなされている。特に脳神経系は、最
近、分子生物学の手法を取りいれた研究が電気生理学の
手法と結び付き多くの成果がで始めている。本発明は、
このような研究及び開発に必須な手法である細胞培養法
に用いる新規培養基質に関するものである。
は、細胞を凝集体として培養する方法、均一な平面上で
の単層培養法、浮遊状態で培養する浮遊培養法が代表的
なものとして使用されている。これらは、培養基質とし
て、ガラス、プラスチックのような材料からなる平面基
質をそのまま用いるか、あるいはコラーゲン、フィブロ
ネクチン、ポリリジンなどの細胞接着性タンパク質をコ
ートしたものを使用するものである。また、ゲル状のコ
ラーゲン、細胞外マトリックスを用いる方法、単層培養
した細胞を培養基質とする方法も細胞の種類によっては
汎用されている方法である。培養基質としては、更に膜
をファイバー状、カップ状にしたものがよく用いられ
る。しかしながら、従来のものは、いずれの方法も細胞
の任意の形態制御は不可能であり、例えば、均一平面上
での培養は同種の細胞が無制御に増えてくるため細胞の
形態を制御することは困難である。また、細胞どうしが
ランダムな接触を行うため特定細胞の情報伝達機能を測
定することも難しいと云った各種の問題点がある。
培養方法のなかで安定性の高い方法としてグリア細胞を
培養基質として使用する手法がある(M.A.Dich
ter,Brain.Res.,149巻,279ペー
ジ,1978年、及びR.I.Freshney,“C
ulture of Animal Cells.”,
1987年、他)。これは培養基質上でグリア細胞を最
初に培養しておき、次に、神経細胞をこのグリア細胞の
上で培養するいわゆる共培養法によるものである。当該
培養法によると、グリア細胞の産生する神経栄養因子な
どの働きにより培養が安定化すると云う効果が得られ
る。
では神経細胞のシナプスによる結合はランダムに起こり
制御された神経ネットワークを形成することはできな
い。すなわち、最初に培養しておくグリア細胞を一定の
培養状態に制御しなければ、共培養する神経細胞を一定
の形態制御された結合体として形成することはできない
ことから、神経細胞の形態制御を簡便に行うことが可能
な新しい培養方法を開発することが強く要請されている
状況にあった。
みて、神経細胞に対して毒性や阻害作用を示さず、グリ
ア細胞の培養状態を制御し得る基質を開発することを目
標として種々検討した結果、細胞接着性を示さないポリ
マーにより基質上に細胞非接着性の微少領域を形成する
方法が大きな効果を示すことを見い出し、更に検討を重
ねて、本発明を完成するに至ったものである。
生体外においてグリア細胞と共培養する培養基質により
神経細胞を安定に培養し、かつその培養形態を制御する
培養方法を提供することにある。
は、次の技術的手段よりなるものである。 グリア細胞と
共培養して、神経細胞の培養形態を制御し、安定に培養
する方法であって、金属酸化物の薄層が細胞の接着領域
となる微少領域を形成している基質にポリハイドロキシ
エチルメタクリレートをコートし、当該金属酸化物領域
をそのコート層と共に除去してなる培養基質でグリア細
胞を培養し、次いで、当該グリア細胞の上で神経細胞を
培養することを特徴とする神経細胞の形態制御安定培養
方法。
る。本発明において、基質とは、本発明の培養基質のベ
ースとして使用されるものを意味するものであり、例え
ば、培養した細胞に毒性を示さないガラスや、ポリスチ
レン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポ
リエーテルスルホン等のプラスチック、銀、金等の金
属、インジウム−スズ酸化物等の金属酸化物、セラミッ
ク等を意味するが、これらに限らず、これらと同効の物
質であれば同様に使用することができる。
養基質の形態は、特に限定されないが、例えば、フィル
ム、シャーレ、プレート、フラスコ、ボトル、スライド
グラス、カバーグラス、マイクロキャリアー、ホローフ
ァイバー、ファイバー等の適宜の形態に形成したものが
好適なものとして例示される。
ートの一種のポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリレ
ート)は細胞非接着性ポリマーとして知られている(N
ature,273巻,345ページ,1978年)。
本発明は、当該ポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリ
レート)等のポリハイドロキシエチルメタクリレートを
使用することを必須の構成とするものであるが、これを
基質上に単にコートするために使用するのではなく、こ
のポリマーを基質上に細胞非接着性の微少領域として形
成することにより、グリア細胞の培養状態を制御して、
形態制御した神経細胞の安定した培養を可能とするもの
として使用するものである。
細胞非接着性の微少領域の形成法としては様々な方法が
可能であるが、例えば、次の方法が好適なものとして例
示される。まず、細胞の接着領域となる金属酸化物の微
少領域を形成する。この部分は最終的にはポリハイドロ
キシエチルメタクリレートが存在しない細胞接着性の微
少領域となる。また、金属酸化物は特に限定されないが
酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジ
ウム−スズ酸化物、酸化チタンなどが好適である。金属
酸化物の薄層の形成は、スパッタリング法等適宜の方法
により行えばよく特に限定されるものではない。この場
合、基質として、例えば、ポリエーテルスルホンの0.
1mm厚のフィルム(住友ベークライト社製)を使用
し、これにインジウム−スズ酸化物層をスパッタリング
法(装置:日立工機社製)で形成する方法等が好適なも
のとして例示される。
に汎用されているフォトレジストで細胞の接着領域とな
る微少領域パターンを形成する。当該微少領域の形状は
特に限定されるものではないが、細胞の接着領域として
最小0.01〜0.02mmは必要である。他の大きさ
は検討項目、実験対象により適切なものを選べばよい。
また、フォトレジストは特に限定されるものではないが
微少領域の大きさにより高解像度のものを使う必要があ
る場合もある。フォトレジストでパターンを形成後、
0.1〜10規定の酸で洗浄してフォトレジスト非被覆
部の金属酸化物を除いてから、アルコールで洗浄してフ
ォトレジストを除く。
属酸化物の微少領域を形成してからポリハイドロキシエ
チルメタクリレートを基質上にコートする。この場合、
ポリハイドロキシエチルメタクリレートとしては、0.
1〜12%のポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリレ
ート)等のアルコール溶液が好適なものとして使用され
るが、これに限らず、これと同効のものであれば同様に
使用することができる。また、コートを均一化するため
にコートする際に基質を回転させることが好ましい。最
後に1〜10規定の酸で基質を超音波洗浄して金属酸化
物領域をそのコート層とともに除去することにより、本
発明の培養基質は製造される。
初代細胞等に限定されるものではないが、初代細胞を用
いたほうが安定性が良く、好適である。培養する神経細
胞が、中枢神経であれば中枢神経組織を、末梢神経であ
れば末梢神経組織を用いて定法により細胞を採取、調製
し、培養すればよい。細胞の調製法は特に限定されない
が、例えば、0.1〜5%のトリプシン、コラゲナーゼ
等の酵素を用いて組織を分散して細胞を採取し、調製す
る方法が好適のものとして例示される。採取した細胞
は、例えば、神経細胞の培養に用いるDME/F−1
2、DME、EME、F−12・L−15(GIBCO
BRL社製)等の培地に牛胎児血清10%を加えたも
のを用いて、約37℃の炭酸ガスインキュベーター中で
培養すればよい。
の培養基質で培養し、更にこのグリア細胞の上で神経細
胞を培養する。ここでいう神経細胞とは、株化されたも
のではなく初代中枢神経細胞、初代末梢神経細胞等を意
味する。これらの神経細胞を本発明の基質、方法で培養
するにはその手段は特に限定されるものではなく、上記
した培養液、培養法を用いて常法に準じて実施すればよ
い。以上の如く、本発明は、基質上にポリハイドロキシ
エチルメタクリレートによる細胞非接着性の微少領域を
形成した培養基質を使用し、グリア細胞と共培養して神
経細胞の形態制御を安定に行うことを可能にするもので
あり、本発明の培養基質を使用すことによってはじめて
このような結果が得られるものである。
体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定されるも
のではない。 実施例1 (1)培養基質の製造 ポリエーテルスルホンを基質として使用し、これにイン
ジウム−スズ酸化物の薄層を被覆した0.1mm厚のフ
ィルム20cm角(住友ベークライト社製、FST−1
300)に、ポジ型フォトレジスト(東京応化工業社
製、OFPR−5000)をスピンナーコーティング法
により膜厚1.5μmにコートした。露光装置(ニコン
社製、NSR−15053A)を用いて、20μm幅、
長さ1000μmの矩形を平行に50本、形成した。露
光時間は150ms、現像液(東京応化工業社製、NW
D−W)で現像後、純水で洗浄し、80℃で20分乾燥
した。次いで、1規定塩酸、純水、エチルアルコール、
純水の順で洗浄してフォトレジスト非被覆部の金属酸化
物を除いてからフォトレジストを除いた後、スピンナー
コーティング法で12%、6%、4%、2%のポリ(2
−ハイドロキシエチルメタクリレート)のエチルアルコ
ール溶液をコートしたものをそれぞれ調製した。2規定
塩酸で3分超音波洗浄して金属酸化物領域をそのコート
層とともに除去し、純水洗浄を行い本発明の培養基質を
製造した。
(Methods in Neuroscience
s,2巻,33ページ,1990年)によりグリア細胞
を取り出し牛胎児血清10%を添加したDME/F−1
2液(GIBCOBRL社製)を用いて2週間培養し
た。なお、培養はすべて37℃で、炭酸ガスインキュベ
ーター中で行った。直径35mmのガラスシャーレ内に
上記したフィルムを直径34mmに切りとり、これをそ
の中におき、培養したグリア細胞を10万/mlの濃度
で2ml加え3日間培養した。
erらの方法(Nature,341巻,230−23
3ページ,1989年)により取り出し、5万/mlの
濃度で上記したあらかじめグリア細胞を培養してある本
発明の培養基質へ加え、7日間培養した。
ンのフィルムを入れて培養する他は上記実施例1の場合
と同様にして神経細胞の培養を行った。
いて、その形態制御が安定に行われているかどうかを比
較テストしたところ、比較例1では神経細胞がランダム
状態で培養されており細胞同士の結合も不規則であり神
経細胞の結合によるシナプスはランダムなものであった
が、本発明により調製したサンプルではいずれも安定し
た培養状態が観察されるとともに直線状の神経細胞の結
合(シナプス形成)が認められ、良好に培養形態が制御
されていることが観察され、本発明の培養基質は優れた
特性を有するものであることが確認された。尚、他の基
質、及び金属酸化物を用いて製造した培養基質を用いて
同様に比較したとろろ、同様の効果がえられることが分
った。
着性ポリマーであるポリ(2−ハイドロキシエチルメタ
クリレート)等のポリハイドロキシエチルメタクリレー
トの細胞非接着性の微少領域を形成することによる培養
基質とその製造方法、及びこれを用いたグリア細胞と神
経細胞の共培養方法による神経細胞の形態制御安定培養
方法に係わるものであり、本発明によれば、特に初代神
経細胞の培養を好適に行うことを可能とするものであ
り、また、従来の培養にみられるような情報伝達を行う
機能を持つ神経細胞のランダムな結合状態の培養ではな
く、神経細胞のシナプスによる結合を任意の形態に制御
してその培養を安定に行うことを可能とするものであ
る。
Claims (1)
- 【請求項1】 グリア細胞と共培養して、神経細胞の培
養形態を制御し、安定に培養する方法であって、金属酸
化物の薄層が細胞の接着領域となる微少領域を形成して
いる基質にポリハイドロキシエチルメタクリレートをコ
ートし、当該金属酸化物領域をそのコート層と共に除去
してなる培養基質でグリア細胞を培養し、次いで、当該
グリア細胞の上で神経細胞を培養することを特徴とする
神経細胞の形態制御安定培養方法。
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-
1993
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