JP5096250B2 - 酸化物焼結体の製造方法、酸化物焼結体、スパッタリングタ−ゲット、酸化物薄膜、薄膜トランジスタの製造方法及び半導体装置 - Google Patents
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酸化物薄膜は、例えば、酸化物からなるターゲットをスパッタリングして形成される。スパッタリングターゲットとしては、酸化インジウム・酸化亜鉛からなるターゲットが知られている。
また、酸化物焼結体中のIn及びZnの原子比[In/(In+Zn)]が0.2〜0.85であるスパッタリングターゲットが提案されている(特許文献2)。
さらに、一般式In2O3(ZnO)m(m=2〜7)で表される六方晶層状化合物を含み、かつ酸化物焼結体中のInとZnの原子比[In/(In+Zn)]が0.2〜0.9であり、体積抵抗率が10−2Ωcm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲットが知られている(特許文献3)。
しかしながら、このターゲットでは酸化インジウムのインジウム元素の一部が亜鉛元素で置換固溶されておらず、酸化インジウム相と六方晶層状化合物相との抵抗差が大きく、ノジュールやアーキングの発生を制御できないおそれがある。
1.少なくともインジウム化合物及び亜鉛化合物を含む原料を混合する工程(A)と、前記工程(A)で得られる混合物を成形する工程(B)と、前記工程(B)で得られる成形体を、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで加熱した後、1時間以上保持する工程(C)と、前記工程(C)後の成形体を1200℃以上で焼結させる工程(D)を含む、酸化物焼結体の製造方法。
2.酸化インジウム及び酸化亜鉛を混合する工程(A)と、前記工程(A)で得られる混合物を成形する工程(B)と、前記工程(B)で得られる成形体を、室温から400〜450℃に昇温し脱溶媒する工程を有し、前記400〜450℃の温度帯域から、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで、0.1〜1.0℃/分の速度で昇温し、800℃以上1200℃未満の温度帯域で1時間以上保持し、その後、1200℃以上で焼結させ、焼結後、0.1〜1.0℃/分で降温する工程を含む、酸化物焼結体の製造方法。
3.上記1又は2に記載の製造方法により製造した酸化物焼結体。
4.亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相と、In2O3(ZnO)m(ここで、mは2〜20の整数を示す)で表される六方晶層状化合物相を含有する酸化物焼結体。
5.前記酸化インジウム相が、正4価以上の金属元素(M)及び亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相である4に記載の酸化物焼結体。
6.前記正4価以上の金属元素(M)の含有量[M/(酸化物焼結体中の全金属元素)]が、原子比で0.0001〜0.005である5に記載の酸化物焼結体。
7.前記正4価以上の金属元素(M)の含有量[M/(酸化物焼結体中の全金属元素)]が、前記亜鉛元素の含有量[Zn/(酸化物焼結体中の全金属元素)]よりも少ない5又は6に記載の酸化物焼結体。
8.前記正4価以上の金属元素(M)が、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ge、Sn及びCeからなる群から選択される1種以上の元素である5〜7のいずれかに記載の酸化物焼結体。
9.酸化物焼結体中のインジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.0001〜0.1である4〜8のいずれかに記載の酸化物焼結体。
10.前記請求項1〜9のいずれかに記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
11.上記10に記載のスパッタリングターゲットを用い、25〜450℃の成膜温度下でスパッタリングして得られる酸化物薄膜。
12.前記酸化物薄膜が、薄膜トランジスタのチャネル層用の薄膜である、11に記載の酸化物薄膜。
13.酸化物薄膜と酸化物絶縁体層とを含む薄膜トランジスタの製造方法であって、
(i)上記11の酸化物薄膜を、酸化雰囲気中で熱処理する工程;及び
(ii)前記熱処理した酸化物薄膜上に酸化物絶縁体層を形成する工程、
を含む、薄膜トランジスタの製造方法。
14.上記13に記載の薄膜トランジスタの製造方法により製造した薄膜トランジスタを備えた半導体装置。
本発明の酸化物焼結体の製造方法は、下記の工程(A)〜(D)を有する。
(A)少なくともインジウム化合物及び亜鉛化合物を含む原料を混合する工程
(B)工程(A)で得られる混合物を成形する工程
(C)工程(B)で得られる成形体を、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで加熱した後、1時間以上保持する工程
(D)工程(C)後の成形体を1200℃以上で焼結させる工程
本工程では、原料粉末であるインジウム化合物粉末及び亜鉛化合物粉末等を混合する。
インジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウム等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等が挙げられる。各々の化合物として、焼結のしやすさ、副生成物の発生の少なさから、酸化物が好ましい。
インジウム化合物粉末及び亜鉛化合物粉末の他に、正4価以上の金属元素(M)の化合物を混合してもよい。正4価以上の金属元素としては、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ge、Sn又はCeが挙げられる。これら金属元素の酸化物が好ましい。
尚、比表面積はBET法で求めた値である。
さらに、原料について、比表面積が3〜16m2/gであるインジウム化合物粉及び亜鉛化合物粉を含み、粉体全体の比表面積が3〜16m2/gである混合粉体を原料とすることが好ましい。尚、各原料粉末の比表面積が、ほぼ同じである粉末を使用することが好ましい。これにより、より効率的に粉砕混合できる。具体的には、比表面積の比を1/4〜4倍以内にすることが好まく、1/2〜2倍以内が特に好ましい。
ここで、各粉体の比表面積はBET法で測定した値である。各粉体の粒度分布のメジアン径は、粒度分布計で測定した値である。これらの値は、粉体を乾式粉砕法、湿式粉砕法等により粉砕することにより調整できる。
混合粉砕の際、ポリビニルアルコール(PVA)を1容積%程度添加した水、又はエタノール等を媒体として用いてもよい。
これらの原料酸化物粉末のメジアン径(d50)は、例えば、0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmとすることが好ましい。原料酸化物粉末のメジアン径(d50)が0.5μm以上であれば、焼結体中に空孔ができ焼結密度が低下することを防ぐことができ、20μm以下であれば、焼結体中の粒径の増大が防げるので好ましい。
仮焼工程では、上記工程で得られた混合物が仮焼される。仮焼を行うことにより、最終的に得られるスパッタリングターゲットの密度を上げることが容易になる。
仮焼工程においては、500〜1200℃、好ましくは、800〜1200℃で、1〜100時間、好ましくは2〜50時間の条件で(a)工程で得られた混合物を熱処理することが好ましい。500℃以上かつ1時間以上の熱処理条件であれば、インジウム化合物や亜鉛化合物、錫化合物の熱分解が十分に行われるので好ましい。熱処理条件が、1200℃以下及び100時間以下であれば、粒子が粗大化することもないので好適である。
さらに、ここで得られた仮焼き後の混合物を、続く成形工程及び焼結工程の前に粉砕することが好ましい。この仮焼き後の混合物の粉砕は、ボールミル、ロールミル、パールミル、ジェットミル等を用いて行うことが適当である。粉砕後に得られた仮焼き後の混合物の平均粒径は、例えば、0.01〜3.0μm、好ましくは0.1〜2.0μmであることが適当である。得られた仮焼き後の混合物の平均粒径が0.01μm以上であれば、十分な嵩比重を保持することができ、かつ取り扱いが容易になるので好ましい。また、仮焼き後の混合物の平均粒径が1.0μm以下であれば最終的に得られるスパッタリングターゲットの密度を上げることが容易になる。
尚、仮焼き後の混合物の平均粒径は、JIS R 1619に記載及び方法によって測定することができる。
成形工程は、原料粉末の混合物(上記仮焼工程を設けた場合には仮焼き後の混合物)を加圧成形して成形体とする工程である。この工程により、混合物(又は仮焼き後の混合物)をスパッタリングターゲットとして好適な形状に成形する。
尚、成形処理に際しては、ポリビニルアルコールやメチルセルロース、ポリワックス、オレイン酸等の成形助剤を用いてもよい。
乾式法のコールドプレス(Cold Press)法としては、粉砕工程後の原料をスプレードライヤー等で乾燥した後、成形する。
湿式のコールドプレス法としては、例えば、濾過式成形法(特開平11−286002号公報参照)を用いるのが好ましい。この濾過式成形法は、セラミックス原料スラリーから水分を減圧排水して成形体を得るための非水溶性材料からなる濾過式成形型であって、1個以上の水抜き孔を有する成形用下型と、この成形用下型の上に載置した通水性を有するフィルターと、このフィルターをシールするためのシール材を介して上面側から挟持する成形用型枠からなり、成形用下型、成形用型枠、シール材、及びフィルターが各々分解できるように組立てられている。該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水する濾過式成形型を用い、混合粉、イオン交換水と有機添加剤からなるスラリーを調製し、このスラリーを濾過式成形型に注入し、該フィルター面側からのみスラリー中の水分を減圧排水して成形体を作製し、得られたセラミックス成形体を乾燥脱脂後、焼結する。
本工程は、上記工程(B)で得た成形体を、焼結工程の前に加熱するものである。具体的に、工程(B)で得られる成形体を、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで加熱した後、1時間以上保持する。
本工程においては、酸素を流通させた酸素雰囲気中、大気圧又は加圧下で室温から400〜450℃まで、例えば、約50℃刻みで段階的に温度を上げ、脱溶媒を行うことが好ましい。脱溶媒を行う温度が450℃以下であれば、焼結工程において酸化物焼結体が割れることがないため好ましい。
ここで、50℃刻みとは、焼結炉等の加熱装置の設定値を意味する。具体的に、装置内部の温度が設定値まで昇温した段階で、さらに、装置の設定温度を50℃高く設定することである。この操作を繰り返すことにより、加熱装置内部の温度を400〜450℃に加熱する。
上記の温度帯域までの昇温速度は、好ましくは0.1〜1.0℃/分であり、より好ましくは0.3〜0.5℃/分である。昇温速度を1.0℃/分以下とすることにより、酸化インジウム相へ置換固溶された亜鉛元素の組成比が変化するおそれがなく好ましい。
上記温度帯域での保持時間は、好ましくは0.1〜10時間であり、より好ましくは1〜5時間である。
本工程は、上記工程(C)に続けて、成形体を焼結するものである。
成形体の焼結温度は、1200〜1600℃、好ましくは1250〜1550℃、特に好ましくは1350〜1500℃である。焼結温度が1200℃以上であれば、六方晶層状化合物が形成されることにより、酸化物焼結体の密度が上昇し、スパッタリングの際に酸化物焼結体が割れることもなく、異常放電が発生することもなく、さらに適度な時間内に焼結を行うことができるため好ましい。1600℃以下であれば、成分が気化することもなく、亜鉛が蒸発し焼結体の組成が変化する及び/又は酸化物焼結体中にボイド(空隙)が発生するおそれもないので好適である。
焼結後、冷却時の降温速度は0.1〜1.0℃/分が好ましく、0.3〜0.5℃/分がさらに好ましい。降温速度が1.0℃/分以下であれば、酸化インジウム相へ置換固溶された亜鉛元素の組成比が変化するおそれがなく好ましい。
還元方法としては、例えば、還元性ガスを循環させる方法、真空中で焼結する方法、及び不活性ガス中で焼結する方法等が挙げられる。
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、これらのガスと酸素との混合ガス等を用いることができる。
還元ガスや不活性ガスの圧力は、例えば、9800〜1000000Pa、好ましくは、98000〜500000Paである。真空中で焼結する場合、真空とは、具体的には、10−1〜10−8Pa、好ましくは10−2〜10−5a程度の真空を言い、残存ガスはアルゴンや窒素等である。
スパッタリングターゲットの厚みは、通常2〜20mm、好ましくは3〜12mm、特に好ましくは4〜6mmである。スパッタリングターゲットの表面は200〜10,000番のダイヤモンド砥石により仕上げを行うことが好ましく、400〜5,000番のダイヤモンド砥石により仕上げを行うことが特に好ましい。200番〜10,000番のダイヤモンド砥石を使用すれば、スパッタリングターゲットが割れることもないので好ましい。また、複数のスパッタリングターゲットを一つのバッキングプレートに取り付け、実質一つのターゲットとしてもよい。バッキングプレートとしては、例えば、無酸素銅製のものが挙げられる。
本発明の酸化物焼結体は、亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相と、In2O3(ZnO)m(ここで、mは2〜20の整数を示す)で表される六方晶層状化合物相を含有することを特徴とする。酸化物焼結体が有する置換固溶した酸化インジウム相と六方晶層状化合物相のバルク抵抗の差は小さいため、スパッタリング時のノジュールの発生やアーキングを抑えることができる。そのため、アーキング等による異物の発生が低減できるため、表面平滑性に優れた酸化物半導体の薄膜を形成することができる。
尚、金属元素(M)の含有量は、例えば、原料粉末の混合量により制御できる。また、酸化物焼結体中の含有量(原子比)は、ICP(Inductively Coupled Plasma)測定により、各元素の存在量を測定することで求めることができる。
正4価以上の金属元素(M)は、焼結体中ではドーパントとして機能し、キャリアを発生させるが、結晶質酸化物半導体薄膜状態では、キャリアの発生効率が低く抑えることができる元素が好ましい。従って、Ti、Nb、Ta、W、Ge、Sn又はCeは、薄膜でのキャリアを増加させる効果が小さいため、更に好適である。
尚、[Zn/(Zn+In)]は、例えば、原料粉末の混合量により制御できる。また、酸化物焼結体中の含有量(原子比)は、ICP(Inductively Coupled Plasma)測定により、各元素の存在量を測定することで求めることができる。
また、酸化物焼結体の密度は、6.7g/cm3以上が好ましい。6.7g/cm3未満では、ノジュールが発生したり、アーキングが発生したりして、得られる酸化物半導体膜の表面平滑性の低下を招く場合がある。好ましくは、6.8g/cm3、より好ましくは、6.9g/cm3、更に好ましくは、7.0g/cm3以上である。上限に規定はないが、酸化インジウムの真密度である7.14g/cm3未満が好ましい。
スパッタリング法としては、DC(直流)スパッタ法、AC(交流)スパッタ法、RF(高周波)マグネトロンスパッタ法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。DC(直流)スパッタ法及びRF(高周波)スパッタ法が好ましく利用される。
スパッタ時の成膜温度は、スパッタ法によって異なるが、例えば、0〜350℃、好ましくは、10〜200℃、より好ましくは、20〜120℃であることが適当である。ここで、成膜温度とは、薄膜を形成する基板の温度である。
スパッタ時のスパッタリングチャンバー内の圧力は、スパッタ法によって異なるが、例えば、DC(直流)スパッタ法の場合は、0.1〜2.0MPa、好ましくは、0.3〜0.8MPaであり、RF(高周波)スパッタ法の場合は0.1〜2.0MPa、好ましくは、0.2〜1.0MPaであることが適当である。
スパッタ時に投入される電力出力は、スパッタ法によって異なるが、例えば、DC(直流)スパッタ法の場合は、10〜1000W、好ましくは、100〜300Wであり、RF(高周波)スパッタ法の場合は、10〜1000W、好ましくは、50〜250Wであることが適当である。
RF(高周波)スパッタ法の場合の電源周波数は、例えば、50Hz〜50MHz、好ましくは、10k〜20MHzであることが適当である。
スパッタ時のキャリアーガスとしては、スパッタ法によって異なるが、例えば、酸素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、クリプトンが挙げられる。好ましくは、アルゴンと酸素の混合ガスである。アルゴンと酸素の混合ガスを使用する場合、アルゴン:酸素の流量比は、Ar:O2=100〜80:0〜20、好ましくは、100〜90:0〜10であることが適当である。
ボンディングしたスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングを行い、基板上にIn及びZnの酸化物を主成分とする酸化物薄膜を得る。ここで、「主成分とする」とは、酸素を除く元素の原子比の和を100%として、In及びZnの各元素を原子比で50%以上含むことを意味する。
基板としては、ガラス、樹脂(PET、PES等)等を用いることができる。
得られたアモルファス酸化物薄膜の膜厚は、成膜時間やスパッタ法によっても異なるが、例えば、5〜300nm、好ましくは、10〜90nmであることが適当である。
また、得られる酸化物薄膜の電子キャリア濃度は、例えば、1×1018/cm3未満、好ましくは、5×1017〜1×1012/cm3であることが適当である。
さらに、得られた酸化物薄膜の密度は、6.0g/cm3以上、好ましくは、6.1〜7.2g/cm3であることが適当である。このような密度であれば、得られた酸化物薄膜においても、ノジュールやパーティクルの発生が少なく、膜特性に優れた酸化物薄膜を得ることができる。
以下、本発明の酸化物薄膜を薄膜トランジスタのチャネル層に適用した例について説明する。
この薄膜トランジスタは、ガラス基板等の基板1上にゲート電極2を形成してある。ゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3を有し、その上にチャネル層4がある。チャネル層4の両端部に、ソース電極5及びドレイン電極6のいずれか一方が形成されている。ソース電極5及びドレイン電極6の一部を除き、保護膜7が形成されている。
図2の薄膜トランジスタでは、ガラス基板等の基板11上にゲート電極12を形成してある。ゲート電極12を覆うようにゲート絶縁膜13を有し、その上にチャネル層14がある。チャネル層14上に保護膜15(エッチングストッパー)を形成し、その後、ソース電極・ドレイン電極17を形成している(図2(1))。その後、ソース電極・ドレイン電極17をエッチング等によりパターニングする(図2(2))
本発明の酸化物薄膜は、チャネル層4、14として好適に使用できる。
(i)本発明の酸化物薄膜を、酸化雰囲気中で熱処理する工程
(ii)前記熱処理した酸化物薄膜上に酸化物絶縁体層を形成する工程
また、熱処理は、例えば、100〜450℃、好ましくは150〜350℃で、0.1〜10時間、好ましくは、0.5〜2時間行う。これにより、酸化物薄膜の半導体特性を安定化できる。
酸化物絶縁体層の方法としては、例えば、CVD法やスパッタ法が挙げられる。
酸化物絶縁体層としては、例えば、SiO2,SiNx,Al2O3,Ta2O5,TiO2,MgO,ZrO2,CeO2,K2O,Li2O,Na2O,Rb2O,Sc2O3,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3,PbTi3,BaTa2O6,SrTiO3,AlN等を用いることができる。これらのなかでも、SiO2,SiNx,Al2O3,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3を用いるのが好ましく、より好ましくはSiO2,SiNx,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3であり、特に好ましくはSiO2,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3等の酸化物である。これらの酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiO2でもSiOxでもよい)。また、SiNxは水素元素を含んでいても良い。
また、結晶質、多結晶質、非晶質のいずれであってもよいが、工業的に製造しやすい多結晶質か、非晶質であるのが好ましく、非晶質であることが特に好ましい。非晶質膜であれば界面の平滑性が良好となり、高いキャリア移動度を維持することができ、閾値電圧やS値が大きくなりすぎることもない。
尚、S値(Swing Factor)とは、オフ状態からゲート電圧を増加させた際に、オフ状態からオン状態にかけてドレイン電流が急峻に立ち上がるが、この急峻さを示す値である。下記式で定義されるように、ドレイン電流が1桁(10倍)上昇するときのゲート電圧の増分をS値とする。
S値=dVg/dlog(Ids)
S値が小さいほど急峻な立ち上がりとなる(「薄膜トランジスタ技術のすべて」、鵜飼育弘著、2007年刊、工業調査会)。S値が大きいと、オンからオフに切り替える際に高いゲート電圧をかける必要があり、消費電力が大きくなるおそれがある。
また、S値は0.8V/dec以下が好ましく、0.3V/dec以下がより好ましく、0.25V/dec以下がさらに好ましく、0.2V/dec以下が特に好ましい。0.8V/decより大きいと駆動電圧が大きくなり消費電力が大きくなるおそれがある。特に、有機ELディスプレイで用いる場合は、直流駆動のためS値を0.3V/dec以下にすると消費電力を大幅に低減できるため好ましい。
1.基板
基板としては、特に制限はなく、本技術分野で公知のものを使用できる。例えば、ケイ酸アルカリ系ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等のガラス基板、シリコン基板、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等の高分子フィルム基材等が使用できる。基板や基材の厚さは0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板の場合は、化学的に、或いは熱的に強化させたものが好ましい。透明性や平滑性が求められる場合は、ガラス基板、樹脂基板が好ましく、ガラス基板が特に好ましい。軽量化が求められる場合は樹脂基板や高分子機材が好ましい。
半導体層は、上述したとおり本発明のスパッタリングターゲットを使用して酸化物薄膜を形成することで作製できる。
本発明において、半導体層は製膜時に非晶質膜であることが好ましい。非晶質膜であることにより、エッチング特性が向上する。さらに、絶縁膜や保護膜との密着性が改善される、大面積でも均一なトランジスタ特性が容易に得られることとなる。ここで、半導体層が非晶質膜であるか否かは、X線結晶構造解析により確認できる。明確なピークが観測されない場合が非晶質である。
さらに熱処理を行うことにより、薄膜が半導体化し、半導体層となることが特徴である。結晶はX線回折でビクスバイト相のメインピークが観測されることにより確認できる。
バンドギャップが2.0〜6.0eVであることが好ましく、特に、2.8〜5.0eVがより好ましい。バンドギャップは、2.0eV以上であれば、可視光を吸収し電界効果型トランジスタが誤動作するおそれもない。一方、6.0eV以下であれば、キャリアが供給されにくくなり電界効果型トランジスタが機能しなくなるおそれも低い。
半導体層は、熱活性型を示す非縮退半導体であることが好ましい。非縮退半導体であれば、キャリアが多すぎてオフ電流・ゲートリーク電流が増加する、閾値が負になりノーマリーオンとなるなどの不利益を回避できる。半導体層が非縮退半導体であるか否かは、ホール効果を用いた移動度とキャリア密度の温度変化の測定を行うことにより判断できる。また、半導体層を非縮退半導体とするには、成膜時の酸素分圧を調整する、後処理をすることで酸素欠陥量を制御しキャリア密度を最適化することで達成できる。
半導体層の保護膜は、上述した酸化物薄膜上に形成した酸化物絶縁体層である。半導体の保護膜があれば、真空中や低圧下で半導体の表面層の酸素が脱離せず、オフ電流が高くなったり、閾値電圧が負になるおそれもない。また、大気下でも湿度等周囲の影響を受けることもなく、閾値電圧等のトランジスタ特性のばらつきが大きくなるおそれもない。
尚、半導体層の保護膜として、さらに、ポリ(4−ビニルフェノール)(PVP)、パリレン等の有機絶縁膜を用いてもよい。さらに、半導体層の保護膜は無機絶縁膜及び有機絶縁膜の2層以上の積層構造を有してもよい。
ゲート絶縁膜を形成する材料にも特に制限はない。本発明の効果を失わない範囲で一般に用いられているものを任意に選択できる。例えば、SiO2,SiNx,Al2O3,Ta2O5,TiO2,MgO,ZrO2,CeO2,K2O,Li2O,Na2O,Rb2O,Sc2O3,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3,PbTi3,BaTa2O6,SrTiO3,AlN等を用いることができる。これらのなかでも、SiO2,SiNx,Al2O3,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3を用いるのが好ましく、より好ましくはSiO2,SiNx,Y2O3,Hf2O3,CaHfO3である。これらの酸化物の酸素数は、必ずしも化学量論比と一致していなくともよい(例えば、SiO2でもSiOxでもよい)。また、SiNxは水素元素を含んでいても良い。
このようなゲート絶縁膜は、異なる2層以上の絶縁膜を積層した構造でもよい。また、ゲート絶縁膜は、結晶質、多結晶質、非晶質のいずれであってもよいが、工業的に製造しやすい多結晶質か、非晶質であるのが好ましい。
また、ゲート絶縁膜は、ポリ(4−ビニルフェノール)(PVP)、パリレン等の有機絶縁膜を用いてもよい。さらに、ゲート絶縁膜は無機絶縁膜及び有機絶縁膜の2層以上積層構造を有してもよい。
ゲート絶縁膜は、厚さが50〜500nmであることが好ましい。ゲート絶縁膜の成膜はスパッタ法でもよいが、TEOS−CVD法やPECVD法等のCVD法が好ましい。
ゲート電極、ソ−ス電極及びドレイン電極の各電極を形成する材料に特に制限はなく、本発明の効果を失わない範囲で一般に用いられているものを任意に選択することができる。
例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、ZnO、SnO2等の透明電極や、Al,Ag,Cr,Ni,Mo,Au,Ti,Ta、Cu等の金属電極、又はこれらを含む合金の金属電極を用いることができる。また、それらを2層以上積層して接触抵抗を低減したり、界面強度を向上させることが好ましい。また、ソ−ス電極、ドレイン電極の接触抵抗を低減させるため半導体の電極との界面をプラズマ処理、オゾン処理等で抵抗を調整してもよい。
コンタクト層の作製方法に特に制約はないが、成膜条件を変えて半導体層と同じ組成比のコンタクト層を成膜したり、半導体層と組成比の異なる層を成膜したり、半導体の電極とのコンタクト部分をプラズマ処理やオゾン処理により抵抗を高めることで構成したり、半導体層を成膜する際に酸素分圧等の成膜条件により抵抗を高くなる層を構成してもよい。また、本発明の薄膜トランジスタでは、半導体層とゲート絶縁膜との間、及び/又は半導体層と保護膜との間に、半導体層よりも抵抗の高い酸化物抵抗層を有することが好ましい。酸化物抵抗層があればオフ電流が発生することもなく、閾値電圧が負となりノーマリーオンとなることもなく、保護膜成膜やエッチングなどの後処理工程時に半導体層が変質し特性が劣化するおそれもない。
・半導体膜の成膜時よりも高い酸素分圧で成膜した半導体層と同一組成の非晶質酸化物膜
・半導体層と同一組成であるが組成比を変えた結晶性酸化物膜
酸化物抵抗層は、In及びZnを含む酸化物であることが好ましい。これらを含む場合、酸化物抵抗層と半導体層の間で元素の移動が発生することもなく、ストレス試験等を行った際に閾値電圧のシフトが大きくなるおそれもない。
具体的に、成膜方法としては、スプレー法、ディップ法、CVD法等の化学的成膜方法、又はスパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、パルスレーザーディポジション法等の物理的成膜方法を用いることができる。キャリア密度が制御し易い、及び膜質向上が容易であることから、好ましくは物理的成膜方法を用い、より好ましくは生産性が高いことからスパッタ法を用いる。
スパッタリングでは、複合酸化物の焼結ターゲットを用いる方法、複数の焼結ターゲットを用いコスパッタを用いる方法、合金ターゲットを用い反応性スパッタを用いる方法等が利用できる。好ましくは、複合酸化物の焼結ターゲットを用いる。RF、DCあるいはACスパッタリングなど公知のものが利用できるが、均一性や量産性(設備コスト)からDCあるいはACスパッタリングが好ましい。
本発明では半導体層を、本発明のターゲットを用い、DC又はACスパッタリングにより成膜することが好ましい。DC又はACスパッタリングを用いることにより、RFスパッタリングの場合と比べて、成膜時のダメージを低減できる。このため、電界効果型トランジスタにおいて、閾値電圧シフトの低減、移動度の向上、閾値電圧の減少、S値の減少等の効果が期待できる。
熱処理温度は120〜350℃がより好ましく、150〜320℃が特に好ましい。特に、熱処理温度が320℃以下であれば、基板として耐熱性の低い樹脂基板を利用できる。
熱処理時間は、通常1秒〜24時間が好ましいが、処理温度により調整することが好ましい。例えば、100〜200℃では、10分から24時間がより好ましく、20分から6時間がさらに好ましく、30分〜3時間が特に好ましい。200〜250℃では、6分から4時間がより好ましく、15分から2時間がさらに好ましい。250〜300℃では、30秒から4時間がより好ましく、1分から2時間が特に好ましい。300〜450℃では、1秒から1時間がより好ましく、2秒から30分が特に好ましい。
熱処理は、特に限定されないが、窒素等の不活性ガス中で酸素分圧が10−3Pa以下の環境下で行うか、あるいは半導体層を保護膜で覆った後に行うことが好ましい。上記条件下だと再現性が向上する。
オンオフ比は、106以上が好ましく、107以上がより好ましく、108以上が特に好ましい。
オフ電流は、2pA以下が好ましく、1pA以下がより好ましい。オフ電流が2pA以下であれば、ディスプレイのTFTとして用いた場合に十分なコントラストが得られ、良好な画面の均一性が得られる。
ゲートリーク電流は1pA以下が好ましい。1pA以上であれば、ディスプレイのTFTとして用いた場合に良好なコントラストが得られる。
閾値電圧は、通常0〜10Vであるが、0〜4Vが好ましく、0〜3Vがより好ましく、0〜2Vが特に好ましい。0V以上であればノーマリーオンとなることもなく、オフ時に電圧をかけることも必要なく、消費電力を低く抑えることができる。10V以下であれば駆動電圧が大きくなることもなく、消費電力を低く抑えることができ、移動度を低く抑えることができる。
また、S値は0.8V/dec以下が好ましく、0.3V/dec以下がより好ましく、0.25V/dec以下がさらに好ましく、0.2V/dec以下が特に好ましい。0.8V/dec以下であれば、駆動電圧を低く抑えることができ、消費電力も抑制できる。特に、有機ELディスプレイで用いる場合は、直流駆動のためS値を0.3V/dec以下にすると消費電力を大幅に低減できるため好ましい。
また、伝達曲線でゲート電圧を昇降させた場合のヒステリシスが小さい方が好ましい。
また、チャンネル幅Wとチャンネル長Lの比W/Lは、通常0.1〜100、好ましくは0.5〜20、特に好ましくは1〜8である。W/Lが100以下であれば漏れ電流が増えることもなく、オンオフ比が低下したりするおそれがある。0.1以上であれば電界効果移動度が低下することもなく、ピンチオフが明瞭になる。また、チャンネル長Lは通常0.1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは2〜10μmである。0.1μm以上であれば工業的に製造が難しくまた漏れ電流が大きくなるおそれもなく、1000μm以下であれば素子が大きくなりすぎることもない。
実施例1
(1)酸化物焼結体の作製及び評価
原料粉として、比表面積が6m2/gである酸化インジウム粉と比表面積が3m2/gである酸化亜鉛粉を重量比で99.5:0.5(原子比[Zn/(Zn+In)]=0.008)となるように秤量し、湿式媒体撹拌ミルを使用して72時間混合粉砕した。媒体には1mmφのジルコニアビーズを使用した。混合粉砕の結果、粉砕後の混合粉の比表面積は原料混合粉の比表面積より2m2/g増加した。
混合後、混合粉をスプレードライヤーで乾燥させた。その後、直径4インチの金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形した。
酸素を流通させて酸素雰囲気とした炉内で、室温から400℃まで50℃刻みで段階的に温度を上げ、成形体の脱溶媒を行った。
次いで、炉内を昇温速度0.5℃/minで400℃から1000℃まで昇温し、1000℃で2時間保持した。
その後、さらに0.5℃/minの昇温速度で1000℃から1450℃まで昇温し、1450℃で48時間焼結した。焼結終了後は1.0℃/minで降温して室温まで冷却した。
これによって、密度が6.8g/cm3である酸化物焼結体を得た。この焼結体のバルク抵抗は80mΩcmであった。
焼結体の組成をICP装置で測定したところ、原料比と組成はほぼ一致していた。
尚、バルク抵抗は三菱化学株式会社製の低抵抗率計「ロレスターEP」(JIS K 7194に準拠)によって測定した。
このX線回折チャートより、得られた焼結体中には、ビックスバイト相、及び六方晶層状化合物であるIn2O3(ZnO)3相が存在することがわかる。即ち、図4に参照すると、標準試料であるIn2O3と比較して焼結体のチャートが高角度側にシフトしていることから、Znがビックスバイト相に置換固溶していることがわかる。また、置換固溶していない酸化亜鉛と反応したIn2O3(ZnO)3が析出していることがわかる。
上記(1)で得られた焼結体からなるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリング装置(島津HSM−552)で、Ar雰囲気、スパッタリング圧力0.2Pa、RF出力100Wで、膜厚50nmの薄膜を作製した。
得られた薄膜を300℃で1時間加熱した後、薄膜をX線回折(リガクUltimaIII)で測定した。その結果、In2O3ビックスバイト相が析出しており、結晶化していた。薄膜の表面をAFM装置(JSPM−4500、日本電子製)で10ミクロン×10ミクロン角の平均表面粗度を測定したところ、0.4nmと非常に平坦であった。薄膜のホール測定での比抵抗は10−2Ωcmであり、キャリア濃度は1.6×1016/cm3であった。尚、ホール測定装置、及びその測定条件は下記のとおりであった。
東陽テクニカ製:Resi Test8310
・測定条件
測定温度:室温(25℃)
測定磁場:0.5T
測定電流:10−12〜10−4A
測定モード:AC磁場
薄膜を薄膜トランジスタ半導体素子とし、室温下で測定したところ半導体特性が得られた。
(1)で得られた焼結体からなるスパッタリングターゲットを用いて、(2)と同様にスパッタリング装置に装着し、RF出力400W、8時間連続してスパッタリングを行ったところノジュールは全く発生しなかった。
酸化物焼結体の製造条件を表1に示す。また、作製した焼結体の性状、ノジュール評価、及び得られた薄膜の性状について表2に示す。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で99:1(原子比[Zn/(Zn+In)]=0.017)となるように秤量した他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体密度は6.9g/cm3、63.6mΩcmであった。
図5に、得られた酸化物焼結体のX線回折のチャートを示す。
実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で98:2(原子比[Zn/(Zn+In)]=0.034)となるように秤量した他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体密度は7.0g/cm3、25.5mΩcmであった。
図6に、得られた酸化物焼結体のX線回折のチャートを示す。
実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で95:5(原子比[Zn/(Zn+In)]=0.08)となるように秤量した他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体密度は6.9g/cm3、22.3mΩcmであった。
図7に、得られた酸化物焼結体のX線回折のチャートを示す。
実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で97:3(原子比0.05)となるように秤量し、焼結温度を1450℃から1500℃に変更した他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.8g/cm3、バルク抵抗は40.3mΩcmであった。
図8に、得られた酸化物焼結体のX線回折のチャートを示す。
実施例1とは焼結温度及び組成が異なるため、この焼結体は、Znの置換固溶した酸化インジウムのビックスバイト相と六方晶層状化合物であるIn2O3(ZnO)4(PDF#20−1438)からなる相を有する構造であった。
実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
酸化スズを2000ppm含む酸化インジウム粉であって、比表面積が6.2m2/gである粉末と、酸化亜鉛粉を、重量比で95:5(原子比[Zn/(Zn+In+X)]=0.08)となるように秤量した他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.9g/cm3、バルク抵抗は6.2mΩcmであった。
図9に、得られた酸化物焼結体のX線回折のチャートを示す。
この酸化物焼結体は、Znの置換固溶した酸化インジウムのビックスバイト相と六方晶層状化合物であるIn2O3(ZnO)3からなる相を有し、添加したスズは酸化インジウム相に置換固溶している。酸化スズがビックスバイト相に置換固溶していることは、SnのXAFSにより確認した。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で95:5(原子比0.08)となるように秤量し、400℃から1000℃までの昇温速度を1.2℃/min、焼結時間を2時間とした他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.7g/cm3、バルク抵抗は10.2mΩcmであった。
この焼結体のX線チャートから、Znの置換固溶した酸化インジウムのビックスバイト相、六方晶層状化合物であるIn2O3(ZnO)4及びIn2O3(ZnO)5からなる相が確認された。
この焼結体をスパッタリング装置に装着し、実施例1(3)と同様の条件で、DC出力400Wで8時間連続スパッタ放電した。その結果、ターゲット表面上にノジュールは全く観察されなかった。実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
酸化インジウム粉と酸化亜鉛粉を重量比で95:5(原子比0.08)となるように秤量し、保持温度を1000℃から800℃に変更し、焼結を1450℃で72時間とした他は、実施例1と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.8g/cm3、バルク抵抗は10.8mΩcmであった。
保持温度を800℃から900℃に変更した他は、実施例8と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.7g/cm3、バルク抵抗は12.4mΩcmであった。
保持温度を800℃から1050℃に変更した他は、実施例8と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は6.9g/cm3、バルク抵抗は9.8mΩcmであった。
保持温度を800℃から1100℃に変更した他は、実施例8と同様にして酸化物焼結体を作製し、評価した。
焼結体の密度は7.0g/cm3、バルク抵抗は8.4mΩcmであった。
これらの焼結体からなるスパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着し、実施例1(3)と同様の条件で、DC出力400Wで8時間連続スパッタ放電をした。その結果、ターゲット表面上にノジュールは全く観察されなかった。実施例1(2)と同様の方法で半導体素子を作製したところ良好な半導体特性が得られた。
原子比[Zn/(Zn+In)]が0.08となるように、酸化インジウムと酸化亜鉛を混合し、湿式ボールミルで72時間混合粉砕した。スプレードライヤーで乾燥させた混合粉を、直径4インチの金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形した。
成形物を、酸素雰囲気とした炉内で昇温速度を1℃/minで1450℃まで加熱し、その温度で36時間焼結して、酸化物焼結体を作製した。
焼結体の密度は6.8g/cm3、バルク抵抗は109mΩcmであった。
この焼結体のX線回折では、亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相が確認されなかった。また、この焼結体からなるスパッタリングターゲットを用いて、実施例1と同様にして成膜した結果、ノジュールの発生が観察された。
酸化スズを2000ppm含む酸化インジウム粉と、酸化亜鉛粉を、重量比で95:5(原子比[Zn/(Zn+In+X)]=0.08)となるように秤量したものを使用し、湿式ボールミルで24時間混合粉砕した。スプレードライヤーで乾燥させた混合粉を、直径4インチの金型に充填しコールドプレス機にて加圧成形した。酸素雰囲気とした炉内で、成形物を昇温速度1℃/minで1100℃まで加熱し、その温度で10時間焼結し、酸化物焼結体を作製した。
焼結体の密度は6.0g/cm3、バルク抵抗は1300Ωcmであった。
X線回折の結果、この焼結体では酸化インジウムと酸化亜鉛からなる一般式:In2O3(ZnO)m(ここで、mは2〜20の整数を示す)で現される六方晶層状化合物相が確認されなかった。
この焼結体からなるターゲットを用いて、実施例1と同様なスパッタしたところ、ターゲットのバルク抵抗が高いため安定したDC放電ができなかった。
本発明のスパッタリングターゲットは、酸化物半導体の形成材料として好適である。例えば、薄膜トランジスタの半導体層、結晶性酸化物半導体の形成に使用できる。
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁膜
4 チャネル層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 保護膜
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 チャネル層
15 保護膜
17 ソース・ドレイン電極
Claims (15)
- 半導体膜をスパッタリング成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに用いる酸化物焼結体の製造方法であって、
少なくともインジウム化合物及び亜鉛化合物を含む原料を混合する工程(A)と、
前記工程(A)で得られる混合物を成形する工程(B)と、
前記工程(B)で得られる成形体を、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで加熱した後、1時間以上保持する工程(C)と、
前記工程(C)後の成形体を1200℃以上で焼結させる工程(D)を含む、
インジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.008〜0.1である酸化物焼結体の製造方法。 - 半導体膜をスパッタリング成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに用いる酸化物焼結体の製造方法であって、
酸化インジウム及び酸化亜鉛を混合する工程(A)と、
前記工程(A)で得られる混合物を成形する工程(B)と、
前記工程(B)で得られる成形体を、室温から400〜450℃に昇温し脱溶媒する工程を有し、
前記400〜450℃の温度帯域から、800℃以上1200℃未満の温度帯域まで、0.1〜1.0℃/分の速度で昇温し、
800℃以上1200℃未満の温度帯域で1時間以上保持し、
その後、1200℃以上で焼結させ、
焼結後、0.1〜1.0℃/分で降温する工程を含む、
インジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.008〜0.1である酸化物焼結体の製造方法。 - 前記インジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.008〜0.08である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により製造した酸化物焼結体。
- 半導体膜をスパッタリング成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに用いる酸化物焼結体であって、
酸化物焼結体中のインジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.008〜0.1であって、
亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相と、
In2O3(ZnO)m(ここで、mは2〜20の整数を示す)で表される六方晶層状化合物相を含有する酸化物焼結体。 - 前記酸化インジウム相が、正4価以上の金属元素(M)及び亜鉛元素が置換固溶した酸化インジウム相である請求項5に記載の酸化物焼結体。
- 前記正4価以上の金属元素(M)の含有量[M/(酸化物焼結体中の全金属元素)]が、原子比で0.0001〜0.005である請求項6に記載の酸化物焼結体。
- 前記正4価以上の金属元素(M)の含有量[M/(酸化物焼結体中の全金属元素)]が、前記亜鉛元素の含有量[Zn/(酸化物焼結体中の全金属元素)]よりも少ない請求項6又は7に記載の酸化物焼結体。
- 前記正4価以上の金属元素(M)が、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、Ge、Sn及びCeからなる群から選択される1種以上の元素である請求項6〜8のいずれか1項に記載の酸化物焼結体。
- 酸化物焼結体中のインジウム元素及び亜鉛元素に対する亜鉛元素の含有量[Zn/(Zn+In)]が、原子比で0.008〜0.08である請求項5〜9のいずれか1項に記載の酸化物焼結体。
- 前記請求項4〜10のいずれか1項に記載の酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲット。
- 請求項11に記載のスパッタリングターゲットを用い、25〜450℃の成膜温度下でスパッタリングして得られる半導体膜。
- 前記半導体膜が、薄膜トランジスタのチャネル層用の薄膜である、請求項12に記載の半導体膜。
- 半導体膜と酸化物絶縁体層とを含む薄膜トランジスタの製造方法であって、
(i)請求項12の半導体膜を、酸化雰囲気中で熱処理する工程;及び
(ii)前記熱処理した半導体膜上に酸化物絶縁体層を形成する工程、
を含む、薄膜トランジスタの製造方法。 - 請求項14に記載の薄膜トランジスタの製造方法により製造した薄膜トランジスタを備えた半導体装置。
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