ハイブリッド車両の駆動条件は多種多様である。従って、内燃機関及び電動機が共に停止したソーク状態において、内燃機関の始動が要求される可能性もある。そのような場合、従来の技術では、触媒温度が不十分であれば内燃機関の始動が許可されないため、電動機が、理論上の又は制御上の出力範囲を超えた動作を要求されたとしても、内燃機関の動力を車両の走行に供することができずに動力性能が著しく低下してしまう。実践的にみれば、この種の動力性能の低下は回避せざるを得ず、このような場合には結局、触媒温度が不十分なまま内燃機関の始動を許可せざるを得なくなってエミッションの悪化が回避され難い。即ち、従来の技術には、場合によって内燃機関の始動時におけるエミッションの悪化を回避することが困難であるという技術的な問題点がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の始動時におけるエミッションの悪化を抑制し得るハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、前記内燃機関と共に動力源として機能する少なくとも一つの電動機と、前記電動機の電源として機能し、外部電源から供給される外部電力を使用した第1の通電による充電が可能な蓄電手段と、前記内燃機関の排気経路に設置され、前記内燃機関の排気を浄化可能な触媒と、前記外部電力及び前記蓄電手段に蓄電された蓄電電力のうち少なくとも一方を使用した第2の通電による前記触媒の加熱が可能な加熱手段と、前記外部電力の供給経路を、少なくとも前記蓄電手段側の第1経路と前記加熱手段側の第2経路との間で選択可能な選択手段を備えた、前記第1及び第2の通電を行うための通電手段とを備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記外部電力が供給されているか否かを判別する第1判別手段と、前記外部電力が供給されている旨が判別された場合に、前記第1の通電が前記第2の通電に優先して行われるように前記通電手段を制御する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記外部電力が供給されている旨が判別された場合に、前記第1経路が選択されるように前記選択手段を制御することにより前記第1の通電を優先させることを特徴とする。
本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室においてガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料が燃焼した際に発生する爆発力たる動力の少なくとも一部を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等の出力軸を介してハイブリッド車両の車軸に出力可能な機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。
また、本発明に係るハイブリッド車両には、内燃機関とは異なる動力源としての、例えば、モータ或いはモータジェネレータ等の形態を採り得る電動機が備わり、例えばインバータや各種のPCU(Power Control Unit)等を介した、電流制御、電圧制御又は電力制御等各種の動力制御により、車軸に対し、バッテリ等からの放電電力に応じた動力を出力可能に構成される。尚、この内燃機関における、例えばクランクシャフト等の機関出力軸には、例えば直接的に又は間接的に、ジェネレータ或いはモータジェネレータ等の形態を採り得る発電機が接続され、内燃機関の動力により適宜発電可能に構成されていてもよい。
本発明に係るハイブリッド車両には、この電動機の電源として機能し得るように構成された、例えばハイブリッドバッテリ等の蓄電手段が備わる。この蓄電手段は、好適な一形態として、例えば本発明に係る電動機が電力回生手段として機能する場合等にはその回生電力により、また例えばハイブリッド車両が発電機を備える場合にはその発電電力により適宜に充電され得ると共に、本発明では特に、外部電源から供給される外部電力(即ち、ハイブリッド車両内部で生成される電力とは異なる)を使用した第1の通電により、適宜に充電がなされる構成を有する。
ここで、「外部電源」とは、例えば家庭に設置された設置型の又は可搬性を有する各種電源(好適な一形態として、例えば家庭用コンセント及び専用又は汎用の充電プラグ等を適宜含む)、或いは市街地又は郊外地に、専用又は汎用のインフラ設備等として設置された(好適な一形態として、例えばガソリンスタンドやそれに類するインフラ施設等に付設されていてもよい)各種電源等を指す。即ち、本発明に係るハイブリッド車両は、蓄電手段の充電状態をドライバの意思等に基づいて比較的自由に制御することが可能に構成された、所謂プラグインハイブリッド車両である。
一方、本発明に係る内燃機関の排気経路には、例えば、三元触媒、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)又は酸化触媒の各種形態を採り得る、或いはその設置場所によりS/C(Start Converter)触媒又は床下触媒等の形態を採り得る各種の触媒が、各種の形態を採り得る排気浄化手段の少なくとも一部として備わっている。この触媒は、例えば熱線、ヒータコイル、又はセラミックヒータ等の形態を採り得る加熱手段に対し、外部電力及び蓄電電力のうち少なくとも一方を使用した第2の通電がなされた際に当該加熱手段から付与される熱により、直接的に又は間接的に加熱される構成となっている。
加熱手段の構成(とりわけ物理的、機械的及び電気的な構成)は、加熱手段が、第2の通電がなされた際に触媒に対し熱供与を行うことにより触媒を加熱可能(言い換えれば、暖機可能)である限りにおいて何ら限定されず、例えば触媒の一部又は全体を熱線或いはそれに類する手段が取り囲み、直接的な熱伝達により触媒を暖機せしめる構成であってもよいし、例えば触媒の排気上流側にヒータ等として設置され、例えば輻射熱により触媒を間接的に暖機せしめる構成であってもよい。また、加熱手段は、触媒と一体に構成され、或いはその上流側に近接して配置され、所謂EHCの一部として構成されていてもよい。
本発明に係るハイブリッド車両には、上述した第1の通電及び第2の通電をおこなうための、例えば電流制御回路、電圧制御回路、電力制御回路、スイッチング回路又は整流回路等の各種電気回路及び各種電気配線等の各種要素を適宜に含む通電手段が備わる。通電手段の構成は、外部電源、蓄電手段及び加熱手段相互間の物理的、機械的又は電気的接続態様に応じて各種の態様を採る。また、外部電力の供給経路は、当該供給経路を選択的に切り替え可能な切り替え手段としての選択手段の作用により、少なくとも蓄電手段側の第1経路と加熱手段側の第2経路との間で切り替え可能に構成される。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1判別手段によって、外部電力が供給されているか否かが判別される。この際、第1判別手段は、外部電力の供給の有無を、物理的、機械的、電気的、磁気的又は化学的の別を問わず如何に判別してもよく、例えば、ハイブリッド車両に備わる充電プラグ等の各種導通手段を介する等して外部電源と蓄電手段とが少なくとも電気的に接続されているか否かを判別することにより係る判別を行ってもよいし、例えば然るべき検出手段により検出される、外部電源と接続可能な接続端子の端子電圧に基づいて係る判別を行ってもよい。
ここで、ハイブリッド車両が外部電源と電気的に接続され、外部電力の供給がなされている状況において、ハイブリッド車両は、高い確率で内燃機関及び電動機が共に停止した所謂ソーク状態にある。ソーク状態においては、内燃機関の冷却(尚、ここで言う「冷却」とは、好適には、燃焼室における熱生成が停止することにより経時的に進行する冷却を意味する)が進行し、同時に触媒の冷却も進行する。一方で、触媒は、例えば触媒活性温度未満の低温度領域等において、予め期待される排気浄化作用が得られ難い性質を有する。従って、内燃機関の始動時におけるエミッションの悪化を回避する観点からは、内燃機関の始動時に既に触媒が活性温度に達している、或いは少なくとも何らの対策も講じられぬまま放置されている場合と較べて幾らかなり触媒の温度上昇又は温度維持が図られるのが望ましい。
このような観点からみれば、外部電力の供給が存在する状況においては、係る外部電力の少なくとも一部を使用して、或いは蓄電手段に蓄電された蓄電電力の一部を使用して、その実行の度合いはさておき第2の通電を実行し、触媒の温度低下を幾らかなり抑制しておくことが望ましい形態の一となり得る。この場合、ハイブリッド車両がソーク状態から脱した際(例えば、イグニッション操作がなされた場合等を指し、必ずしも外部電力の供給が停止した時期と符合しない)に、例え即座に内燃機関の始動が要求されたとしても、排気が全く浄化されぬまま車外に排出されるといった事態は防止される。
補足すれば、家庭内やインフラ施設等に設置された充電装置を介した充電経路を有さぬハイブリッド車両(即ち、好適な一形態として、ハイブリッド車両の走行中や一時停止中に、内燃機関又は電動機或いは発電機等を利用して適宜充電を行う以外に充電をなし得ない構成を有するハイブリッド車両)では、ソーク中に蓄電電力を使用することは、理論的には可能であれ実質的には不可能であり(ソーク時間は、一時的なソークから長期間のソークまで存在するため、蓄電手段が完全放電する可能性を排除できない)、ソーク状態における触媒冷却の進行を食い止めることが実践上不可能に近い。それに対し、外部電力を使用した第1の通電により充電可能な蓄電手段を有することに着目し、外部電力の供給中に加熱手段に対し第2の通電が行われた場合には、触媒を内燃機関の始動以前に暖機することが可能となるのである。
ところが、本来、外部電力の供給は、日常的な作業として行われる(例えば、自宅ガレージに待機中に蓄電手段の蓄電量によらず言わばルーチンワークとしてなされる場合等)にせよ、幾らかなり必要にせまられてなされる(例えば、蓄電手段の蓄電量が不足している等の理由で、充電をなすべく、例えば上述した各種インフラ施設においてなされる場合等)にせよ、蓄電手段の充電が主目的である点に変わりはなく、外部電源から供給される外部電力の少なくとも一部を使用する形で第2の通電が行われる点に鑑みれば、外部電力の少なくとも一部を直接加熱手段に供給することにより第2の通電がなされるにせよ、また蓄電手段を一時的にしろ経由した後に第2の通電がなされるにせよ、蓄電手段側の事情が何ら考慮されることなく第2の通電がなされた場合には、蓄電手段の蓄電量が不足した状態でハイブリッド車両の走行が再開される可能性を排除できない。この場合、例えばハイブリッド車両の動力源たる電動機、或いはその他各種補機類への電力供給が阻害されかねない。
特に、通電手段が、外部電力を所定比率で分配する機能を有さぬ構成(即ち、少なくとも外部電力を直接利用する形で第1の通電と第2の通電とが同時に実行されることがない)においては、第2の通電を充電に先んじて行えば、折角第2の通電により発熱せしめた触媒の温度が第1の通電の実行中に再度低下して、先に行われた第2の通電に要した電力が無駄となりかねない。
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段が、外部電力が供給されている旨が判別された場合に、第1の通電が第2の通電に優先して行われるように通電手段を制御する。
ここで、「第1の通電が第2の通電に優先して行われる」とは、好適な一形態として、例えば予め設定される判断基準に基づいて充電が終了した旨の判別が下された後に第2の通電が開始される等といった、優先順位に従って通電順序が制御されること等を含み、直接的であるにせよ、蓄電手段を経由する等間接的であるにせよ、外部電力の少なくとも一部が加熱手段に供給されることに鑑みれば、供給される外部電力のうち通電に供される割合(以下、適宜「通電割合」と称する。また当該通電割合は、必ずしも可変値でなくてよく、例えば加熱手段への通電が二値的(即ち、通電するかしないか)な制御態様を有する場合には、無論固定値(この場合、即ち、典型的には0%か100%である)であってもよい)が、第1の通電により進行する蓄電手段の充電が少なくとも実践上問題となる程度に遅滞しないように(このような判断に際しての判断基準は、例えば、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、当該通電割合が当該充電の進行速度に与える影響を実測又は推定した上で、個別具体的に設定されてよい)制限される等、通電の度合いが縮小されること等を包括する概念である。
尚、この際、制御手段は、例えば、蓄電手段の蓄電レベルの高低に応じて、夫々許容される通電割合を大小に変化させてもよい(例えば、通電割合が二値的である場合に、蓄電手段が満充電に近い状態で通電が許可され、完全放電に近い状態で通電が禁止される等の態様も含む)が、ハイブリッド車両の構成として、外部電力が蓄電手段又は通電手段に選択的に供給される場合には、この種の通電割合は結局0%と100%との間で選択的に切り替わるのみであり、好適な一形態として、この種の通電の制限とは、通電を行うか否かに帰結してもよい。
このように、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、外部電力を利用した第1の通電が、加熱手段に対する第2の通電に優先される。このため、第2の通電が、少なくとも実践上問題が生じる程度に第1の通電を阻害するといった事態が生じることはなく、蓄電手段の充電を可及的に早期に完了することが可能となる。従って、蓄電手段の充電が十分になされぬことによりハイブリッド車両の走行に影響が及ぶといった事態が防止される。また、この際、好適な一形態として、例えば充電の必要性が低下した、或いは最初から第1の通電が不用である旨が明らかである場合等に、加熱手段に対する第2の通電が開始される若しくは再開される又は通電割合が増加される等の措置が講じられるため、ソーク状態において経時的に冷却が進行する触媒に対し、加熱手段を介して可及的に効率的に熱供与を行うことが可能となる。即ち、内燃機関の始動時におけるエミッションの悪化を好適に抑制することが可能となるのである。
また特に、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、外部電力の供給経路が、少なくとも蓄電手段側の第1経路と加熱手段側の第2経路との間で選択可能な選択手段を備えており、制御手段は、外部電力が供給されている旨が判別された場合には、第1経路が選択されるように選択手段を制御することにより第1の通電を優先させる構成となっている。従って、例えばスイッチング回路等として構成される選択手段の制御を介して、第1及び第2の通電を、いずれも外部電力を使用して比較的簡便に行うことが可能である。
尚、第1の通電が如何なる形態でなされるにせよ(例えば、外部電源と接続された状態
で半ば自動的に第1の通電が開始される(即ち、第1の通電を開始するに際し積極的な制
御を必要としない)、或いは何らかの切り替え制御により第1の通電と第2の通電とが切
り替わる等)、第1の通電が第2の通電に優先される限りにおいて、本発明に係る効果は
十分に担保されるものであり、制御手段の動作範囲に第1の通電に係る積極的な制御は必
ずしも含まれずともよい。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記第2の通電を行う場合に、前記触媒の温度が少なくとも所定の下限値以上となるように前記通電手段を制御する。
この態様によれば、制御手段により、触媒温度が、例えば触媒活性温度に対応する値等として規定される下限値以上となるように通電手段が制御されるため、内燃機関の始動時に最低限の排気浄化能力が担保され得ると共に、不要な通電を可及的に抑制され、実践上極めて有益である。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記充電の要否を判別する第2判別手段を更に具備し、前記制御手段は、前記充電が不要である旨が判別された場合に前記第2の通電が開始されるように前記通電手段を制御する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2判別手段が、充電の要否を判別し、充電が不要である旨が判別された場合に第2の通電が開始されるため、充電を確実に行いつつエミッションの悪化を可及的に抑制することが可能となる。
第2判別手段が充電の要否を判別するに際しての判別基準及び判別態様は、蓄電手段を実践上十分に充電し且つ可及的に早期に通電が開始され得るように、ハイブリッド車両の仕様或いは仕向け等に応じて個別具体的に定められる性質のものであってよく、例えば、蓄電手段のSOC(State Of Charge:充電状態、ここでは、充電状態を規定する各種の指標値を包括するものとする)が所定レベル(例えば、理論上の或いは制御上の最大蓄電量に相当するレベル)に到達した場合に、或いは到達することが確実であると予測される場合に、充電が不要である旨の判別が下されてもよい。
第2判別手段を備えた本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記蓄電手段の蓄電状態を特定する特定手段を更に具備し、前記第2判別手段は、前記特定された蓄電状態に基づいて前記充電の要否を判別する。
この態様によれば、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段により、例えば先に述べたSOC等として蓄電手段の蓄電状態が特定される。蓄電手段の蓄電状態は、充電の要否に直結する要素であり、第2判別手段の判別基準を与える指標として有効である。
尚、本発明に係る「特定」とは、特定対象又は特定対象と相関する物理量を所定の検出手段を介して直接的に又は間接的に検出すること、当該検出手段を介して直接的に又は間接的に検出された特定対象と相関する物理量に基づいて予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する値を選択すること、この種の特定対象と相関する物理量又は選択された値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式に従って導出すること、或いはこのように検出、選択又は導出された値等を、例えば電気信号等の形で単に取得すること等を包括する広い概念である。
尚、この態様では、前記第2判別手段は、前記特定された蓄電状態が所定の満充電状態に該当する場合に前記充電が不要であるものと判別してもよい。
このように、例えばSOC等蓄電状態を規定する各種の指標値が、物理的な、理論的な又は制御上の実質的な最大値、或いは予め設定された基準値以上である場合等、蓄電状態が満充電状態に該当する場合に充電が不要である旨の判別がなされることにより、蓄電手段を少なくとも満充電状態まで、与えられた環境において最速で充電することが可能となり、実践上有益である。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記外部電力が供給されている旨が判別された場合において前記第2の通電を行う場合に、前記第2経路が選択されるように前記選択手段を制御する。
この態様によれば、外部電力が供給されている状況においては、第2経路の選択により、加熱手段に対する第2の通電が蓄電電力を使用することなく行われるため、蓄電手段の蓄電状態に影響を与えることなく触媒暖機を促進し得る点において顕著に効果的である。また、蓄電手段における電力の入出力には、度合いの大小はあれ、幾らかなり蓄電手段毎に定まる充放電効率が影響する。即ち、外部電力を一時的にせよ蓄電手段を経由して加熱手段に供給した場合、外部電力の効率的な利用が幾らかなり阻害されることとなる。即ち、この態様は、電力資源の有効利用を図り得る点においても実践上有益である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる模式的なブロック図である。
図1において、ハイブリッド車両10は、減速機構11及び車輪12、並びにECU100、エンジン200、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、動力分割機構300、EHC400、PCU500、バッテリ600、充電プラグ700及び切り替えスイッチ800を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
減速機構11は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から出力された動力に応じて回転可能に構成された、デファレンシャルギア(不図示)等を含んでなるギア機構であり、これら動力源の回転速度を所定の減速比に従って減速可能に構成されている。減速機構11の出力軸は、ハイブリッド車両10の車軸(符号省略)に連結されており、これら動力源の動力は、回転速度が減速された状態で当該車軸及び当該車軸に連結された、駆動輪としての車輪12に伝達されるように構成されている。
尚、減速機構11の構成は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から供給される動力を、その動力に基づいた軸体の回転速度を減速しつつ車軸に伝達可能である限りにおいて何ら限定されず、単にデファレンシャルギア等を含んでなる構成を有していてもよいし、複数のクラッチ及びブレーキ並びに遊星歯車機構により構成される所謂リダクション機構として複数の変速比を得ることが可能に構成されていてもよい。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述するバッテリ充電制御を実行することが可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「第1判別手段」、「制御手段」、「第2判別手段」及び「特定手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。ここで、図2を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、エンジン200の一断面構成を概念的に且つ模式的に例示する模式断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト205の近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。
尚、本発明に係る「内燃機関」は、ガソリンエンジンに限らず、軽油を燃料とするディーゼルエンジン又はアルコールとガソリンとの混合燃料を使用可能なバイフューエルエンジン等の形態を有していてもよい。また、ガソリンエンジンであるにせよ、その気筒配列は、直列に限定されない。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210において、インジェクタ212から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に圧送供給されている。尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図示するような所謂吸気ポート噴射型インジェクタの構成を採らずともよく、例えば、フィードポンプ或いは他の低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒201内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
気筒201内部と吸気管207とは、吸気バルブ211の開閉によってその連通状態が制御されている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。排気管215は、本発明に係る「排気経路」の一例である。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、スロットルバルブモータ209は、基本的には不図示のアクセルポジションセンサにより検出されるアクセル開度に応じたスロットル開度が得られるように、ECU100により駆動制御されるが、その駆動制御に際してドライバの意思が介在する必要はなく(無論、ドライバの意思に反することのない範囲である)、言わば自動的にスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ209は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、EHC400が設置されている。ここで、図3を参照し、EHC400について説明する。ここに、図3は、排気管215の伸長方向に沿ったEHC400の一断面構成を概念的に表してなる模式断面図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、EHC400は、ケース410、三元触媒420及びヒータ430を備える。
ケース410は、その内部に三元触媒420及びヒータ430を収容する、EHC400の筐体である。ケース410は、排気の流れと直交する方向(即ち、紙面と垂直な方向である)の断面が円環状をなす金属性の円筒状部材であり、電位的に接地されている。
三元触媒420は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能に構成された、本発明に係る「触媒」の一例たる触媒コンバータである。
ヒータ430は、上述した排気の流れと直交する方向の断面が渦状をなす抵抗体であり、本発明に係る「加熱手段」の一例である。ヒータ430は、少なくとも電気的な絶縁特性は有しておらず、後述するように通電されることにより印加電圧に応じた電流を流し得る、好適には金属性の材料で構成されている。ヒータ430の一端部は、ケース410に接続されており、電位的に接地されている。一方、ヒータ430の他端部(不図示)は、後述するPCU500と電気的に接続されており、上述した通電がなされる構成となっている。この際、ヒータ430を構成する材料は、通電により発熱を伴い得る限りにおいて、例えば電気抵抗値或いは導電率といった導電性を規定する物性値によって限定されるものではなく、例えば相対的に高い導電特性(即ち、相対的に低い電気抵抗値により規定される導電特性)を有する例えば金属材料や、相対的に低い導電特性(即ち、相対的に高い電気抵抗値により規定される導電特性)を有する、一般的には抵抗体と称されるような材料であってもよい。
図2に戻り、EHC400には、三元触媒420の温度たる触媒床温Tcを検出可能に構成された、温度センサ216が設置されている。温度センサ216は、ECU100と電気的に接続されており、検出された触媒床温Tcは、ECU100により、一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
また、排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。また、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータジャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。尚、前述した触媒床温Tcは、この水温センサ218により検出される冷却水温により代替的に検出されてもよい。この場合、ECU100のROMに、冷却水温と触媒床温Tcとの相関を規定するマップ等が格納されていてもよい。
図1に戻り、モータジェネレータMG1は、バッテリ600を充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200の動力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
動力分割機構300は、エンジン200の動力をMG1及び車軸へ分配することが可能に構成された遊星歯車機構である。尚、動力分割機構300の構成は公知の各種態様を採り得るため、ここではその詳細な説明を省略するが、簡略的に説明すると、動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギアと、サンギアの外周に同心円状に設けられたリングギアと、サンギアとリングギアとの間に配置されてサンギアの外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアと、クランクシャフト205の端部に結合され、各ピニオンギアの回転軸を軸支するプラネタリキャリアとを備える。
このサンギアは、サンギア軸を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合され、リングギアは、リングギア軸を介してMG2の不図示のロータに結合されている。リングギア軸は、車軸と連結されており、MG2が発する動力は、リングギア軸を介して車軸へと伝達され、同様に車軸を介して伝達される車輪12からの駆動力は、リングギア軸を介してMG2に入力される。係る構成の下、動力分割機構300により、エンジン200が発する動力は、プラネタリキャリアとピニオンギアとによってサンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割される。
PCU500は、バッテリ600から取り出した直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ600に供給することが可能に構成された不図示のインバータ等を含み、バッテリ600と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ600を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された電力制御ユニットである。PCU500は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
一方、PCU500は、EHC400とも電気的に接続されており、EHC400に対して、直流駆動電圧Vdを供給可能に構成されている。EHC400のヒータ430には、この直流駆動電圧Vdに応じた駆動電流Idが生じ、この駆動電流Idによりヒータ430が発熱する構成となっている。即ち、PCU500は、本発明に係る「通電手段」の一例である。補足すると、PCU500は、例えばDC−DCコンバータ等の昇圧回路を内蔵しており、ヒータ430に供給される駆動電圧Vdは、少なくとも二値的に可変制御可能である。
尚、本実施形態では、PCU500が本発明における「通電手段」の一例とされるが、通電手段の態様は、EHC400への通電(本実施形態では、ヒータ430への通電)を可能とする限りにおいて何ら限定されない趣旨である。例えば、ハイブリッド車両10には、本発明に係る「通電手段」の一例として、バッテリ600或いは他の蓄電手段等から供給される1次電圧を、例えば数百ボルトの高電圧に昇圧させることが可能な、2次電圧供給装置が備わっていてもよい。
バッテリ600は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池であり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。ここで、バッテリ600は、ハイブリッド車両10の車外に設置される外部電源20(即ち、本発明に係る「外部電源」の一例)により、適宜充電可能に構成されている。即ち、バッテリ600は、各モータジェネレータの発電作用により生じる電力の他に、外部電源20からの電力供給によっても充電される構成となっている。
バッテリ600にはSOCセンサ610が付設されている。SOCセンサ610は、バッテリ600のSOC(バッテリの充電状態の指標値であり、ここでは完全放電を0%、且つ満充電を100%等として規格化されてなる蓄電残量値であるとする)を検出可能なセンサである。SOCセンサ610は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたSOCは、ECU100により、本発明に係る「蓄電状態」の一例として、一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
充電プラグ700は、切り替えスイッチ800の入力端子と電気的に接続されており、且つ外部電源20との電気的な接続を可能とする金属製のプラグである。尚、外部電源20は、例えば家庭用の100V電源であってもよいし、市街地や郊外の然るべきインフラ施設(例えば、ガソリンスタンドやサービスステーション)等にインフラ設備として設置されるものであってもよく、その物理的、機械的、機構的、電気的又は化学的態様は何ら限定されない趣旨である。
切り替えスイッチ800は、上述した一の入力端子と、バッテリ600と電気的に接続された出力端子A、EHC400のヒータ430と電気的に接続された出力端子B及び開放端子(即ち、電気的に中立な端子)である出力端子Cの三種類の出力端子を備えたスイッチング回路である。切り替えスイッチ800は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100により入力端子と各出力端子との接続状態が切り替えられる構成となっている。
補足すると、切り替えスイッチ800は、充電プラグ700が外部電源20と接続された状態において、(1)入力端子と出力端子Aとが接続された場合に外部電源20から供給される外部電力によりバッテリ600に通電(即ち、本発明に係る「第1の通電」の一例)を行うことによりバッテリ600の充電がなされ、(2)入力端子と出力端子Bとが接続された場合に外部電力によりEHC400に通電(即ち、本発明に係る「第2の通電」の一例)を行うことによりヒータ430の加熱がなされ、(3)入力端子と出力端子Cとが接続された場合に外部電力が消費されない構成となっている。即ち、切り替えスイッチ800は、入力端子の接続状態により、外部電源20から供給される外部電力をEHC400に直接的に供給することが可能であり、PCU500と共に、本発明に係る「通電手段」の一例を構成している。尚、充電プラグ700から入力端子及び出力端子Aを経由する電力供給経路は、本発明に係る「第1経路」の一例であり、充電プラグ700から入力端子及び出力端子Bを経由する電力供給経路は、本発明に係る「第2経路」の一例である。
<実施形態の動作>
次に、図4を参照し、本実施形態の動作として、ECU100により実行されるバッテリ充電制御の詳細について説明する。ここに、図4は、バッテリ充電制御のフローチャートである。
図4において、ECU100は、ハイブリッド車両10がソーク状態にあるか否かを判別する(ステップS101)。ここで、本実施形態に係る「ソーク状態」とは、モータジェネレータMG2、モータジェネレータMG1及びエンジン200のいずれもが停止した状態を指す。ECU100は、エンジン200及び各モータジェネレータの動作を制御する制御ユニットであり、ハイブリッド車両10がソーク状態にあるか否かについて、ECU100は簡便にその判別を行うことが可能である。例えば、ECU100は、エンジン200及び各モータジェネレータの回転速度がゼロであるか否か等に基づいて当該判別を行う。或いは、エンジン200の始動を促すイグニッションスイッチの動作状態及びPCU500における電力の供給状態に基づいて係る判別を行ってもよい。
ハイブリッド車両10がソーク状態にない場合(ステップS101:NO)、ECU100は、切り替えスイッチ800の入力端子を出力端子Cに接続し、切り替えスイッチ800を中立位置に保持する(ステップS108)。切り替えスイッチ800が中立位置に保持されると、処理はステップS101に戻される。即ち、ハイブリッド車両10が稼動している状態では、切り替えスイッチ800は絶えず中立位置に保持される。
ステップS101において、ハイブリッド車両10がソーク状態にある旨が判別された場合(ステップS101:YES)、ECU100は、充電プラグ700が外部電源20と接続されているか否かを判別する(ステップS102)。充電プラグ700が外部電源20と接続されているか否かは、切り替えスイッチ800の入力端子の端子電圧に基づいて判別可能である。例えば、外部電源20が家庭用100V電源であれば、当該端子電圧は100Vである。外部電源20の種類によらない汎用的な表現をすれば、充電プラグ700が外部電源20と接続されていない状態では入力端子の端子電圧は略0Vであるから、端子電圧が0Vより大きい値として設定された閾値以上である場合に、充電プラグ700が外部電源20と接続されている旨の判別が下されてもよい。
充電プラグ700が外部電源20と接続されていない場合(ステップS102:NO)、処理はステップS101に戻されると共に、充電プラグ700が外部電源20と接続されている場合(ステップS102:YES)、ECU100は、バッテリ600のSOCが、予め設定された制御上の最大値SOCmax未満であるか否かを判別する(ステップS103)。ここで、制御上の最大値とは、バッテリ600の物理的な蓄電限界を規定する値ではなく、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、ハイブリッド車両10の走行中に発電される電力による充電を可能としつつ、且つハイブリッド車両10の走行に支障をきたさないように定められている。例えば、SOCmaxは、80(%)〜90(%)程度の値に設定されている。尚、ステップS103に係る処理は、本発明に係る「充電の要否を判別する」旨の処理の一例である。
バッテリ600のSOCがSOCmax未満である場合(ステップS103:YES)、ECU100は、切り替えスイッチ800の入力端子を出力端子Aに接続し、外部電源20とバッテリ600とを電気的に接続する(ステップS104)。バッテリ600が外部電源20と接続されると、処理はステップS101に戻される。ここで、入力端子が出力端子Aに接続されると、外部電源20から供給される電力を使用したバッテリ600の充電が開始される。ここで、切り替えスイッチ800の物理構成に鑑みれば、入力端子が出力端子Aに接続されることにより、自動的に入力端子が出力端子Bと非接続状態となり、外部電源20から供給される電力を使用したEHC400への通電は停止される。
一方、バッテリ600のSOCが、制御上の最大値SOCmax以上である場合(ステップS103:NO)、ECU100は、更に触媒床温Tcが下限値TcL未満であるか否かを判別する(ステップS105)。尚、下限値TcLは、三元触媒420の触媒活性温度に設定されている。触媒床温Tcが下限値TcL未満である場合(ステップS105:YES)、ECU100は、切り替えスイッチ800の入力端子を出力端子Bに接続し、外部電源20とEHC400とを電気的に接続する(ステップS106)。この段階で、外部電源20からの外部電力によるEHC400への通電が開始される。EHC400が外部電源20と接続されると、処理はステップS101に戻される。尚、SOCがSOCmax以上である場合とは、即ち、本発明に係る「蓄電状態が所定の満充電状態に該当する場合」の一例である。
一方、触媒床温Tcが下限値TcL以上である場合(ステップS105:NO)、触媒床温Tcが上限値TcH以上であるか否かが判別される(ステップS107)。触媒床温Tcが上限値TcH以上である場合(ステップS107:YES)、ECU100は、切り替えスイッチ800の入力端子を出力端子Cに接続する(ステップS108)。即ち、従前の状態として外部電力を使用したEHC400への通電がなされている場合には、当該通電が終了する。一方、触媒床温Tcが上限値TcH未満である場合(ステップS107:NO)、処理はステップS101に戻される。即ち、バッテリ600のSOCが満充電状態に相当するSOCmax以上である場合には、EHC400への通電が開始され、触媒床温Tcが下限値TcLと上限値TcHとの間の範囲に維持される。即ち、本発明に係る「充電が不要である旨が判別された場合に第2の通電が開始されるように」及び「触媒の温度が少なくとも所定の下限値以上となるように」なされる制御手段の動作の一例が実現される。
ここで、図5を参照し、本実施形態の効果について説明する。ここに、図5は、バッテリ充電制御の実行過程におけるバッテリ600及びEHC400の状態を模式的に表してなるタイミングチャートである。
図5において、上段には外部電源20からの供給電力たる外部電力Wの時間特性が、中段にはバッテリ600のSOCの時間特性が、また下段には触媒床温Tcの時間特性が、夫々表されている。
図示時刻T0以前において、バッテリ600のSOCが制御上の下限値SOCmin(SOCmin<SOCmax)であるとする。ここで、時刻T0において、外部電源20と充電プラグ700とが接続されると、上述したバッテリ充電制御に従い、バッテリ600の充電が優先的に実行される。即ち、外部電力は、バッテリ600への充電に要するW1となる。バッテリ600の充電は、時刻T2においてSOCがSOCmaxに到達するまで継続される。その間、EHC400への通電がなされないため、触媒床温Tcは、経時的に低下する。その過程における、時刻T2以前の時刻T1において、触媒床温Tcは下限値TcLまで減少し、時刻T2においては既に、下限値TcL未満まで減少している。
一方、時刻T2においてバッテリ600のSOCがSOCmaxに到達すると、触媒床温Tcが下限値TcL未満であるため、切り替えスイッチ800の切り替え制御により、EHC400への通電が開始される。その結果、時刻T3において、触媒床温Tcが上限値TcHに到達して、EHC400への通電が終了する。この際、EHC400への通電量は、時刻T3の時点で、バッテリ600の充電に要する電力よりも十分に小さいW2となっている。尚、図中外部電力Wの値は、時刻T2から漸増しているが、これは、EHC400への通電開始時において、駆動電圧Vdcは一定であるものの駆動電流の立ち上がりが遅れるためである。
また、時刻T3においてEHC400への通電が停止されるため、触媒床温Tcは再び低下し始める。その結果、時刻T4において再び下限値TcLに到達して通電が開始され、時刻T5において触媒床温Tcが再び上限値TcHに到達して通電が終了する。この場合、通電開始時の触媒床温Tcが時刻T2と較べて高いため、通電に要する外部電力は、W3(W3<W2)となっている。
このように、本実施形態によれば、外部電力の供給時において、EHC400への通電も行われるため、ハイブリッド車両10がソーク状態を脱して即座にエンジン200の始動を要求されたとしても、三元触媒420が幾らかなり昇温しているため、エミッションの悪化が抑制される。ここで特に、係るEHC400への通電(本発明に係る「第2の通電」の一例)は、バッテリ600への通電(即ち、本発明に係る「第1の通電」の一例)が完了した後に開始される。即ち、EHC400への通電に優先してバッテリ600の充電が行われ、EHC400への通電は、バッテリ600の蓄電状態に基づいて判別される充電の要否に応じて実行される。このため、例えば限られた時間の中で外部電力が供給される場合等において、バッテリ600のSOCが十分に回復しないままハイブリッド車両10が走行を要請されるといった事態が可及的に防止される。
一方、この種の優先処理において重要な点として、バッテリ600におけるSOCの経時的な低下に係る速度が、触媒床温Tcの経時的な低下に係る速度と較べて無視し得る程度に小さい点がある。即ち、バッテリ600は、一旦充電が完了すれば、少なくともこの種の外部電力の供給時においてSOCの低下が生じないのに対し、触媒床温Tcは、EHC400への通電停止と共に低下し始め、下限値TcLと上限値TcHとの間で絶えず変化する。このため、バッテリ600の充電に先んじてEHC400への通電を行い、触媒床温Tcが上限値TcHに到達したことをもってバッテリ600の充電を開始した場合、バッテリ600の充電終了時には、既に触媒床温Tcは大きく低下しており、再びEHC400への通電が必要となる可能性が高い。即ち、バッテリ600の充電開始以前になされたEHC400への通電は、その通電量の大小とは無関係に、単に無駄な電力消費となる可能性が高くなる。
その点、本実施形態によれば、バッテリ600の充電が優先されるため、EHC400への通電に要する通電量を可及的に抑制することが可能であり、エミッションの悪化を好適に抑制することが可能となるのである。また、インフラ施設等において外部電力を利用する場合、基本的には、バッテリ600の充電が完了するまで外部電力の供給は継続される可能性が高い(即ち、ガソリン車における給油と同様である)から、先に述べた、SOCが回復しないまま走行を要請される等の問題は生じない可能性もあるが、この場合、充電以前にEHC400への通電を行うことにより、上述した触媒床温の低下に起因して作業時間の長大化を招くことは必死であり、結局は、時間資源のロスとして問題が顕在化することは自明である。
また、本実施形態において、EHC400への通電は、外部電力の供給時には、切り替えスイッチ800の作用により外部電源20から直接的に(即ち、バッテリ600及びPCU500を経由することなく)なされる構成となっている。このため、充電直後のバッテリ600から蓄電された電力を持ち出す必要はなく、バッテリ600のSOCの低下を防止して、ハイブリッド車両10の走行性能が可及的に担保されている。
尚、本実施形態では、切り替えスイッチ800による出力端子の選択的な切り替えにより、外部電力はバッテリ600又はEHC400のいずれか一方に供給される構成となっているが、切り替えスイッチ800を有さぬ構成においても、バッテリ600の充電を優先することは勿論可能である。例えば、充電プラグ700が外部電源700と接続された場合に、半ば自動的にバッテリ600への充電が開始され、バッテリ600のSOCが最大値SOCmaxに到達した時点で、PCU500を介してEHC400への通電が開始されてもよい。尚、この場合、バッテリ600の過充電を防止する観点から、バッテリ600と充電プラグ700との間の電力供給経路に、リレー回路等の断続手段が設けられていてもよい。
また、本実施形態では、切り替えスイッチ800による出力端子の選択的な切り替えにより、外部電力はバッテリ600又はEHC400のいずれか一方に供給される構成となっているが、外部電力を然るべき分配手段により分配して、所定の分配比率でバッテリ600及びEHC400の両方に供給する構成が採られてもよい。この際、充電を優先する旨の制御態様は、バッテリ600の充電を遅滞なく終了させ得る範囲で、SOCを上昇させることによる走行性能の確保と、EHC400の温度低下を抑制することによるエミッションの悪化抑制効果とが相互に協調的に得られるように各種の態様を採ることが可能であり、例えば、SOCに応じて分配比率を変化させる等の制御も可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…ハイブリッド車両、100…ECU、200…エンジン、201…気筒、203…ピストン、205…クランクシャフト、300…動力分割機構、400…EHC、420…三元触媒、430…ヒータ、500…PCU、600…バッテリ、700…充電プラグ、800…切り替えスイッチ。