JP5091366B2 - 音圧評価システム、その方法およびそのプログラム - Google Patents

音圧評価システム、その方法およびそのプログラム Download PDF

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Description

本発明は、語音が快適に聴取できたか否かを評価するための技術に関する。より具体的には、本発明は、補聴器等において、音の周波数ごとの増幅量を調整して個々のユーザにとって適切な大きさの音を得る「フィッティング」のための、純音に対するうるささの程度を評価する音圧評価システム等に関する。
近年、社会の高齢化に伴い、老人性の難聴者が増加している。若年者においても、大音量の音楽を長時間聴く機会が増えたなどの影響により、音響性の難聴者が増加している。また、補聴器の小型化・高性能化に伴い、補聴器の装用に対するユーザの抵抗が少なくなってきている。これらを背景として、会話の聞き分け能力の向上を目的に、日常的に補聴器を装用するユーザが増加している。
補聴器は、ユーザが聞きとりにくい音を構成する種々の周波数のうち、特定周波数の信号の振幅を増幅させることにより、ユーザの低下した聴力を補うための装置である。ユーザが補聴器に求める音の増幅量は、ユーザごとの聴力低下の度合いに応じて異なる。そのため、補聴器の利用を開始する前には、まずユーザごとの聴力に合わせて音の増幅量を調整する「フィッティング」が必須である。
フィッティングは、補聴器の周波数ごとの出力音圧(音として知覚され得る、大気の圧力変動) をMCL(most comfortable level:ユーザが快適に感じる音圧)にすることを目指して行われる。このとき、(1)増幅量不足、または、(2)増幅量過多のいずれかの場合には、フィッティングが適切であるとは言えない。たとえば、増幅量不足の場合、音声が聞き分けられず、補聴器装用の目的が達成できない。また、増幅量過多の場合、音声の聞き分けはできるがユーザがうるさく感じ長時間使用できないという問題が発生する。そのため、上記(1)または(2)のいずれにも該当しないよう、フィッティングを行う必要がある。特に(2)は、補聴器から必要以上の大音量が呈示される場合があるため、ユーザの耳を傷つける危険性があった。
フィッティングの最初の手順では、オージオグラムが測定される。「オージオグラム」とは、聴取可能な純音の最小音圧である聴力閾値を評価した結果である。たとえば、「オージオグラム」とは、複数の周波数の音のそれぞれについて、そのユーザが聞き取ることが可能な最も小さい音圧(デシベル値)を周波数(たとえば250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz)に応じてプロットした図である。
フィッティングの次の手順では、周波数ごとの増幅量を推定するための関数であるフィッティング理論に基づき、周波数ごとの増幅量を決定する。フィッティング理論にはいくつかの種類が存在する。たとえば各周波数の挿入利得をその周波数の聴力閾値の半分にするハーフゲイン法、これに会話音声の周波数帯域とレベルを考慮して1000Hzから4000Hzの増幅をやや増強したBerger法、ハーフゲイン法を基礎とし語音情報が少なく騒音成分が多い250Hzと500Hzの利得をそれぞれ10dB、5dB減じたPOGO法、言葉の長時間音響分析周波数が快適レベルに入るように増幅するNAL−R法がある。また、聴力閾値だけでなく、ユーザが不快に感じるほど大きな音圧レベルである「不快レベル」(uncomfortable level;以下「UCL」と記述する。)およびMCLの情報を活用して、ゲイン調整量を決めるフィッティング理論も存在する。その場合には、ゲイン調整量を決める前に、UCLおよびMCLの測定、あるいは推定が必須になる。
UCLは、オージオグラムと同様に周波数ごとに測定する。従来、UCLは主観報告に基づいて測定された。具体的には、たとえばオージオメータを用いて連続音を上昇法(段々と音圧レベルを上げる)で呈示し、うるさすぎて耐えられない音圧を報告させ、その音圧をUCLとして測定した(非特許文献1)。
また、脳波を用いてUCLを測定する方法が開発されつつある。たとえば、非特許文献2では、ABR(auditory brainstem response)と呼ばれる脳幹反応のV波潜時と刺激強度との関係から、UCLを推定する手法が開示されている。音圧の増大に伴うV波潜時の短縮が頭打ちになった音圧に定数(たとえば15や10)を足した音圧をUCLとする。
一方、MCL(most comfortable level)は、一般的に主観報告による測定が難しいため、聴力閾値の半分の傾き(ハーフゲイン)やUCLと聴力閾値の中央値として近似される場合が多い。
君付 隆他、「聴力に異常のない聴覚過敏患者における内耳機能検査の特徴」、2009年 Thornton,A.R.他、「The objective estimation of loudness discomfort level using auditory brainstem evoked responses」、1987年
上述の主観報告によるUCL測定では、あいまいな主観報告を指標にしている。さらに、「不快に感じるほど大きな音圧」の基準は、個人または言語表現の影響を受けて変動するため、ばらつきが生じる。そのため、UCLを正確に測定できないという課題があった。また、強大な連続音をユーザに聞かせる必要があり、ユーザの耳を傷つける危険性があった。
他方、脳波を用いたUCL推定では、微弱な信号成分のABRを指標にしている。そのため、UCL推定の対象とする音圧や周波数の各々について、刺激を1000回オーダーで繰り返し呈示する必要があり、時間がかかるという課題があった。長時間の検査は、ユーザにとって負担である。
従来の技術には、上述のような種々の課題が存在していた。これらの少なくとも一つ、好ましくは全てを解決することが必要とされている。
本発明の目的は、短時間および/または高精度でUCLを客観的に測定する、うるささ評価システムを実現することである。
本発明のある実施形態にかかる音圧評価システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、純音のデータを複数保持している音データベースと、前記音データベースを参照して、呈示する音を決定する呈示音決定部と、前記呈示音決定部で決定された音を第1音として前記ユーザに呈示し、前記第1音を呈示してから所定の時間後に、前記第1音と少なくとも周波数及び音圧が同じ音を第2音として前記ユーザに呈示する出力部と、前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出する変化量抽出部と、前記変化量抽出部で抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧が前記ユーザにとって大きすぎるか否かを判定するうるささ判定部とを備えている。
前記変化量抽出部は、前記変化量として、前記第2音に関するN1成分から得られた振幅を、前記第1音に関するN1成分から得られた振幅で除算した振幅比の変化量を求め、前記うるささ判定部は、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記ユーザにとってうるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、前記ユーザにとって適切な音圧であると判定してもよい。
前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、前記変化量抽出部は、前記ペア刺激ごとに、前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陽性成分であるP1成分の振幅と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陽性成分であるP1成分の振幅との変化量を抽出し、前記抽出した脳波信号の事象関連電位を、前記複数組の前記第1音ごと及び前記第2音ごとに加算平均し、加算平均後の前記第1音のP1成分の振幅値及び前記第1音のN1成分の振幅値の差分と、加算平均後の前記第2音のP1成分の振幅値及び前記第2音のN1成分の振幅値の差分との比を変化量として抽出してもよい。
前記変化量抽出部は、前記変化量として、前記第2音に関するN1成分から得られた振幅と、前記第1音に関するN1成分から得られた振幅との差分の変化量の絶対値を求め、前記うるささ判定部は、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、前記ユーザにとってうるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値より小さい場合に、前記ユーザにとって適切な音圧であると判定してもよい。
前記N1成分は、前記出力部により第1音又は第2音が呈示された時刻から、80ms以上130ms以下の範囲に含まれる事象関連電位の陰性成分であってもよい。
前記P1成分は、前記出力部により第1音又は第2音が呈示された時刻から、30ms以上70ms以下の範囲に含まれる事象関連電位の陽性成分であってもよい。
前記音データベースは、前記音と、前記音を呈示するユーザの左右の耳、前記音の周波数、および前記音の音圧の少なくとも1つの音の特徴とを対応付けて保持し、前記変化量抽出部は、前記脳波信号の事象関連電位を、前記第1音及び前記第2音ごとに、並びに前記音の特徴ごとに、加算平均してもよい。
前記変化量抽出部は、前記第1音及び前記第2音が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、30ms以上70ms以下の事象関連電位の陽性のピーク値と、第1音目及び第2音目が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、80ms以上150ms以下の陰性のピーク値との差分である、前記第1音及び第2音の事象関連電位のP1−N1振幅を算出し、前記第2音の事象関連電位のP1−N1振幅と前記第1音の事象関連電位のP1−N1振幅との振幅比を前記変化量とし、前記うるささ判定部は、前記振幅比が第1の閾値よりも小さい場合に、前記音刺激はうるさかったと判定し、前記振幅比が前記第1の閾値以上の場合に前記音刺激は適切な音圧であると判定してもよい。
前記第1の閾値は、0.5であってもよい。
前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、前記変化量抽出部は、前記脳波信号において、前記第1音が呈示された時刻を起点とする160ms以上250ms以下の陽性成分であるP2成分と、前記脳波信号において、前記第2音が呈示された時刻を起点とする160ms以上250ms以下の陽性成分であるP2成分とを抽出し、前記抽出した脳波信号の事象関連電位を、前記第1音及び前記第2音ごとに加算平均し、前記第1音のP2成分の振幅値及び前記第1音のN1成分の振幅値の差分と、前記第2音のP2成分の振幅値及び前記第2音のN1成分の振幅値の差分との比を変化量として抽出してもよい。
前記変化量抽出部は、第1音目及び第2音目が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、80ms以上150ms以下の陰性のピーク値と、前記第1音及び前記第2音が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、160ms以上250ms以下の事象関連電位の陽性のピーク値との差分である、前記第1音及び第2音の事象関連電位のN1−P2振幅を算出し、前記第2音の事象関連電位のN1−P2振幅と前記第1音の事象関連電位のN1−P2振幅との振幅比を前記変化量とし、前記うるささ判定部は、前記振幅比が第2の閾値よりも小さい場合には、前記音刺激は前記ユーザにとってうるさかったと判定し、前記振幅比が第2の閾値以上であった場合には、前記音刺激は適切な音圧であると判定してもよい。
前記第2の閾値を0.55としてもよい。
前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、直前に呈示された前記第1音及び前記第2音の組と異なる周波数を有する、前記第1音及び前記第2音の組を呈示してもよい。
本発明のある実施形態にかかる音圧評価システムは、さらに、ユーザの聴力閾値を入力する最小可聴レベル入力部と、前記最小可聴レベル入力部に入力された前記聴力閾値に基づいて、前記ユーザの不快レベルを予測する不快レベル予測部とをさらに備え、前記呈示音決定部において、前記最小可聴レベル予測部で予測された音圧を基準に所定の範囲内から前記第1音及び第2音を決定してもよい。
前記出力部は、音圧が異なる少なくとも2つの前記第1音を出力し、前記変化量抽出部は、前記出力した2つの第1音の音圧の差に対する、前記出力した2つの前記第1音に対するN1成分の振幅の差を変化量として抽出し、前記うるささ判定部は、前記変化量が第3の閾値よりも小さいか否かに基づいて、小さい場合をうるさい、小さくならなかった場合を適切な音圧であると判定してもよい。
前記出力部は、音圧が異なる少なくとも2つの前記第1音および第2音を出力し、前記変化量抽出部は、前記出力した2つの第2音の音圧の差に対する、前記出力した2つの前記第2音に対するN1成分の振幅の差を変化量として抽出し、前記うるささ判定部は、前記変化量が第4の閾値よりも小さいか否かに基づいて、小さい場合をうるさい、小さくならなかった場合を適切な音圧であると判定してもよい。
本発明のある実施形態にかかる音圧評価装置は、複数の純音のデータを保持する音データベースを参照して、呈示する音を決定する呈示音決定部と、前記呈示音決定部で決定された音を第1音としてユーザに呈示し、前記第1音を呈示してから所定の時間後に、前記第1音と少なくとも周波数及び音圧が同じ音を第2音として前記ユーザに呈示する出力部と、生体信号計測部が計測した前記ユーザの脳波信号における、前記第1音が呈示された時刻を起点とする事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出する変化量抽出部と、前記変化量抽出部で抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するうるささ判定部とを備えている。
本発明のある実施形態にかかる音圧評価方法は、ユーザの脳波信号を計測するステップと、前記ユーザに呈示する音を決定するステップと、前記決定した音を第1音として前記ユーザに呈示し、第1音を呈示してから所定の時間後に、第1音と同じ音を第2音として前記ユーザに呈示するステップと、前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出するステップと、抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するステップとを包含する。
うるささを判定する前記ステップは、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、うるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、適切な音圧であると判定してもよい。
本発明のある実施形態にかかるコンピュータプログラムは、コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、ユーザの脳波信号を受け取るステップと、前記ユーザに呈示する音を決定するステップと、前記決定した音を第1音として前記ユーザに呈示し、第1音を呈示してから所定の時間後に、第1音と同じ音を第2音として前記ユーザに呈示するステップと、前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出するステップと、抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するステップとを実行させる。
うるささを判定する前記ステップは、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、うるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、適切な音圧であると判定してもよい。
本発明によれば、同一周波数で同一音圧の純音を2回連発で呈示し、第1音目と第2音目に対する脳波のN1成分に関する特徴をそれぞれ抽出し、特徴の変化量からUCLを推定する。第1音目と第2音目に対する特徴の変化量を用いることで、呈示した音の音圧がそのユーザに採って大きすぎるといえるかどうかを判定する。個人差の影響を受けにくく、短時間・高精度のうるささ評価を実現できる。これにより、ユーザが補聴器装用時にうるささを感じることがなく、長時間にわたって補聴器を装用しても疲れにくい、周波数ゲインの設定が実現できるようになる。
脳波計測実験の手続きの概要を示す。 (a)は、国際10−20法の電極位置を示す図であり、(b)は本実験で電極を装着した電極配置を示す図である。 第1音刺激と第2音刺激が呈示された時刻を起点とした中心部(Cz)における事象関連電位を音圧ごとに加算平均した波形および、音圧ごとのP1−N1振幅、N1−P2振幅の振幅をプロットした図である。 P1−N1振幅比およびN1−P2振幅比をプロットした図である。 主観報告実験の結果を示す図である。 本願発明者らによってまとめられた、P1−N1振幅比とうるささ判定との対応関係を示す。 本発明の実施形態1によるうるささ評価システム100の構成および利用環境を示す図である。 本発明の実施形態1によるうるささ評価装置1のハードウェア構成を示す図である。 本発明の実施形態1によるうるささ評価システム100の機能ブロックの構成を示す図である。 音DB71の例を示す図である。 本発明の実施形態1による手法を用いたうるささの判定結果蓄積の例を示す図である。 うるささ評価システム100において行われる処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の実施形態2によるうるささ評価システム200の機能ブロックの構成を示す図である。 UCL予測値の例を示す図である。 本発明の実施形態2によるうるささ評価システム200の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の実施形態2によるうるささ評価システム300の機能ブロックの構成を示す図である。 本発明の実施形態2によるうるささ評価システム400の機能ブロックの構成を示す図である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるうるささ評価システムの実施形態を説明する。
本発明によるうるささ評価システムは、純音聴取時のユーザ状態として、脳波を利用して純音聴取時にユーザがうるさいと感じたか否か、を評価するために用いられる。より具体的には、本システムは、同一周波数で同一音圧の純音を2回連発で呈示し、第1音目と第2音目に対する脳波のN1成分に関する特徴をそれぞれ抽出し、特徴の変化量からうるささを評価する。
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「事象関連電位(event−related potential:ERP)」とは、脳波(electroencephalogram:EEG)の一種であり、外的あるいは内的な事象に時間的に関連して生じる脳の一過性の電位変動をいう。
「N1成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約100msにおいて惹起される陰性の聴覚誘発電位である。
「P1成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約50msにおいて惹起される陽性の聴覚誘発電位である。
「P2成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約200msにおいて惹起される陽性の誘発電位である。
「陰性成分」とは、一般的には、0μVよりも小さい電位である。
「陽性成分」とは、一般的には、0μVよりも大きい電位である。
ただし、複数の電位を比較する場合には、より小さい値を有する電位を陰性成分ともいい、より大きい値を有する電位を陽性成分ともいう。ここでの比較は、絶対値ではなく、正負を含めた値で比較する。
「うるさい音圧」とは、ユーザにとって大き過ぎる音圧である。例えば、ユーザが不快に感じる程度に、大きい音圧をいう。
「適切な音圧」とは、最小可聴レベル(hearing threshold level;以下「HTL」)以上で、かつ、ユーザがうるさすぎて不快に感じることのない範囲の音圧である。
「音を呈示する」とは、純音の聴覚刺激を出力することをいう。たとえば純音をヘッドフォンの片耳側から出力することは、「音を呈示する」の範疇である。
「純音」とは、周期振動を繰り返す楽音のうち、単一の周波数成分しか持たない正弦波で表される音である。
本発明の実施形態では、ヘッドフォンを利用してユーザに音を呈示する例を挙げて説明している。ヘッドフォンの種類は任意であるが、正しく評価を行うために指定した音圧で正確に純音を出力できる必要がある。
本願明細書においては、事象関連電位の成分を定義するためにある時点から起算した所定時間経過後の時刻を、たとえば「潜時約100ms」と表現している。これは、100msという特定の時刻を中心とした範囲を包含し得ることを意味している。「事象関連電位(ERP)マニュアル−P300を中心に」(加我君孝ほか編集、篠原出版新社、1995)の30頁に記載の表1によると、一般的に、事象関連電位の波形には、個人ごとに30msから50msの差異(ずれ)が生じる。したがって、「約Xms」や「Xms付近」という語は、Xmsを中心として30から50msの幅がその前後(例えば、100ms±30ms、200ms±50ms)に存在し得ることを意味している。
1.実験概要
本願発明者らは、短時間かつ高精度でUCLを客観的に測定するうるささ評価の実現を目指し、純音に対するうるささを反映した脳波特徴成分を特定するために以下2つの実験を実施した。
第一の実験は、同一周波数であり、かつ、同一音圧である純音を、所定の間隔をあけて、2回連発で呈示し、第1音目と第2音目に対する事象関連電位をそれぞれ計測する脳波計測実験である。なお、本明細書では、上述のように2回連発で呈示された刺激を「ペア刺激」と呼ぶ。なお、第1音目と第2音目は、同一の周波数でなくても、人間が聞き分けることができない程度に異なる周波数であっても良い。また、第1音目と第2音目は、同一音圧でなくても人間が聞き分けることができない程度に異なる音圧であっても良い。
第二の実験は、主観報告に基づいてUCL(“uncomfortable level”、以下同様。)を測定する主観報告実験である。主観報告実験は、脳波計測実験の前後にそれぞれ実施した。そして、主観報告実験で得られたUCLを基準データとして、UCLに関連した事象関連電位成分を探索した。
その結果、主観報告によりUCLと評価された以上に強大な音圧のペア刺激を呈示した場合には、第1音目に対するN1成分に関する特徴に比べて、第2音目に対するN1成分に関する特徴が顕著に減少することを発見した。この発見から、第1音目と第2音目の各N1成分に関する特徴の変化量を指標に、UCLが推定可能であることを見出した。本手法により、短時間かつ高精度にUCLを評価できる。
以下で、これらをより詳細に説明する。はじめに、うるささ評価を実現するために本願発明者らが実施した脳波計測実験および主観報告実験について説明する。その後、実施形態としての、うるささ評価装置の概要および、うるささ評価装置を含むうるささ評価システムの構成および動作を説明する。
2.脳波計測実験および主観報告実験
2−1.脳波計測実験
脳波計測実験では、UCLである音圧より大きな音圧が含まれることが想定される複数の音圧でペア刺激を呈示し、第1音目と第2音目に対する事象関連電位の特徴変化を調べた。以下、図1から図4を参照しながら、脳波計測実験の実験設定および実験結果を説明する。
実験参加者は、正常な聴力を有する社会人12名(28〜49歳)であった。
音刺激は、持続時間50msのトーンバースト音とした。音の立ち上がり(rise)および下がり(fall)は3msとした。周波数ごとおよび音圧ごとの事象関連電位を調べるために、3周波数(1000、2000、4000Hz)のそれぞれについて5種類の音圧(80、85,90、95、100dBSPL)の音刺激を用意した。音刺激は、ヘッドフォンを用いて片耳ずつ呈示した。そしてペア刺激として、同一の音刺激を、第1音および第2音として同側の耳に所定の間隔をあけて2回連発で呈示した。
図1は、脳波計測実験の手続きの概要を示す。
参加者には音刺激に注意を向けなくてもよいと教示した。1つのペア刺激内の第1音と第2音の間隔(ペア間間隔)は、300msに固定した。また、あるペア刺激の第1音と、その次のペア刺激の第1音の間隔(刺激間間隔)は、1000±200msの範囲でランダムに決定した。実験は、750回のペア刺激を1ブロックとして、2ブロック実施した。
ペア刺激として呈示する音刺激は、次の制約条件で決定することが好ましい。直前のペア刺激と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。たとえば図1のペア刺激002の選択に際しては、直前のペア刺激001と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。ペア刺激を呈示する耳は左右でランダムとする。ただし、左右どちらかの耳へのペア刺激を4回以上連続させないことが好ましい。これらの制約によって、同一ペア刺激の連続呈示による聴覚誘発電位の慣れ(habituation)の影響が低減されると考えられる。
脳波は頭皮上のFz、Cz、Pz(いずれも国際10−20法)、右目の右、右目の下、左右マストイドから鼻を基準に記録した。「マストイド」とは、耳の裏の付け根の下部の頭蓋骨の乳様突起である。図2(a)は、国際10−20法(10−20 System)の電極位置を示す。図2(b)は本実験で電極を装着した電極配置を示す。
サンプリング周波数は1000Hz、時定数は1秒とし、30Hzのアナログローパスフィルタをかけた。オフラインで5−20Hzのディジタルバンドパスフィルタをかけ、両マストイド連結基準に再基準化した。音刺激に対する事象関連電位として、第1音および第2音が呈示された時刻を起点に、−100msから400msの波形をそれぞれ切り出した。ここで、「−100ms」とは、音刺激を呈示した時刻より100ミリ秒前の時点をいう。
音圧ごとの全体的な脳波特徴の傾向を調べるために、本願発明者らは、第1音および第2音に対する事象関連電位を周波数に関わらず音圧ごとにそれぞれ総加算平均した。また、個人ごとの左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとの脳波特徴を調べるために、本願発明者らは、第1音および第2音に対する事象関連電位を個人ごと、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとにそれぞれ加算平均した。いずれかの電極において絶対値で50μV以上の振幅を含む試行は、総加算平均あるいは加算平均から除外した。
そして、うるささ評価の指標となり得る特徴として、音刺激呈示後約100msに生起するN1成分の2つの特徴を求めた。
第一の特徴は、音刺激呈示後約50msに生起するP1成分に関する陽性のピークを中心に前後10msの区間平均電位から、N1成分の陰性のピークを中心に前後10msの区間平均電位を引き算して得られる。この特徴を、以下では、「P1−N1振幅」と呼ぶ。
第二の特徴は、音刺激呈示後約200msに生起するP2成分に関する陽性のピークを中心に前後25msの区間平均電位から、N1成分の陰性のピークを中心に前後10msの区間平均電位を引き算して得られる。この特徴を、以下では、「N1−P2振幅」と呼ぶ。
以下、脳波計測実験の結果を説明する。
図3の左側2つの図は、中心部(Cz)における第1音と第2音に対する事象関連電位を、音圧ごとに総加算平均した総加算平均波形を示す。上段が第1音に対する総加算平均波形であり、下段が第2音に対する総加算平均波形である。横軸は時間でその単位はms、縦軸は電位でその単位はμVである。横軸の0msは、音刺激呈示時刻である。
図3に示されたスケールから明らかなとおり、グラフの下方向が正(陽性)に、上方向が負(陰性)に対応している。図3では、90、95、100dBSPLの音刺激を呈示した場合の波形を破線、細実線、太実線でそれぞれ示している。いずれの音圧の音刺激に対しても、音刺激呈示後約100msにN1成分(陰性のピーク)が生起している様子が見て取れる。
また、図3の右側2つの図は、総加算平均から求めた音圧ごとのN1成分の振幅を示す。横軸は音圧でその単位はdBSPL、縦軸は振幅でその単位はμVである。黒丸はP1−N1振幅、白丸はN1−P2振幅を示している。上段に示した第1音に対する振幅は、音刺激の音圧増大に伴ってどちらも緩やかに増大している。一方で下段に示した第2音に対するP1−N1振幅は、90dBSPLより大きな音圧の音刺激において、90dBSPLより小さな音圧と比較して減少している様子が見て取れる。
図4は、N1成分に関する特徴の変化量を示す。P1−N1振幅、N1−P2振幅それぞれについて、第2音に対する振幅を第1音に対する振幅で除算して求めた。黒丸はP1−N1振幅比、白丸はN1−P2振幅比である。横軸の単位は音圧値(dBSPL)である。たとえば、黒丸のP1−N1振幅比を例に説明すると、80dBSPLにおけるP1−N1振幅比は、約0.7である。この値は、図3の右下のグラフにおける80dBSPLの値(約1.2μV)を分子とし、図3の右上のグラフにおける80dBSPLの値(約1.7μV)を分母として除算を実行した値である。図4の横軸の他の音圧値に関しても同様に、各音圧値に対応する図3の右下のグラフの電位を分子とし、図3の右上のグラフの電位を分母として除算を実行する。この計算によって求められた値が図4の縦軸の値となる。図4において白丸によって示されるN1−P2振幅比の求め方も同様である。
図4に示されるように、どちらの振幅比も、音圧増大に伴って減少している。特にP1−N1成分(黒丸)では、90dBSPLより大きな音圧の音刺激に対する振幅比が、90dBSPL以下の音圧に対する振幅比と比較して、顕著に減少していることが分かる。
2−2.主観報告実験
主観報告実験は、脳波計測実験の前後それぞれにおいて実施した。非特許文献1と同様に、オージオメータを用いて連続音を上昇法で呈示し、うるさすぎて耐えられない音圧を報告させ、その音圧をUCLとした。脳波計測実験で呈示する3周波数(1000、2000、4000Hz)それぞれについて、片耳ずつ両耳の測定を実施した。音圧の予測をさせないために、実験開始の音圧は、60、65、70dBHLからランダムに決定した。連続音の音圧は5dBずつ上昇させた。うるさすぎて耐えられない音圧は、挙手によって報告させた。参加者の挙手直後に音呈示をやめ、その音圧を記録した。
以下、主観報告実験の結果を説明する。
全ての参加者が健聴者であったが、主観報告実験の結果は、個人ごとに大きく異なった(同一周波数において最大で40dB)。これは、「うるさすぎて我慢できない」という定義の解釈は個人ごとに大きく異なることを示している。よって、主観報告によるUCL評価は難しいといえる。
図5は、主観報告によって測定したUCL評価結果の平均値と分散である。音圧の単位は、脳波計測実験との対応をとるために、dBHLからdBSPLに変換した。上述のように主観報告によるUCL測定の結果はばらついていることから、全体的な傾向を調べるために全参加者の結果を呈示音の周波数に関わらず加算平均した。脳波計測実験の前後で実施した主観報告実験の結果をbefore、afterとしてそれぞれ示した。脳波計測実験の前で実施した結果(before)と比較して、後で実施した結果(after)において有意にUCLが増大したが(p<.001)、どちらにおいても90から95dBSPLの範囲内であった。
なお、主観報告実験の結果は、参加者ごと、周波数ごとの全結果のうち、58%においてbeforeとafterで5dB以上変動した。これは、主観報告によるうるささ評価はあいまいさを含むことを示している。
2−3.両実験からの考察
図5に示したとおり、主観報告実験の結果、参加者がうるさすぎて耐えられないと報告した音圧は90から95dBSPLの範囲内であった。また、図4に示したとおり脳波計測実験の結果、P1−N1振幅比は、ペア刺激の音圧が90から95dBSPLの場合に顕著に減少した。これらの結果から、本願発明者らは、主観的なUCLである音圧周辺において、P1−N1振幅比が顕著に減少しているという相関関係を見出した。このような相関関係に基づけば、ペア刺激の第1音および第2音に対するN1成分の特徴の変化量を指標にすることにより、UCLに関するうるささ評価を実現できるといえる。
具体的には、以下のような方法でうるささ評価が実現できる。たとえば、P1−N1振幅比を所定の閾値(たとえば0.5)と比較し、振幅比が閾値よりも小さくなった最小の音圧をUCLと評価する。なお、個人ごと、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとの加算平均波形から算出したP1−N1振幅比を、所定の閾値と比較して推定したUCLと、主観報告実験で得られたUCLを比較すると、61.9%において誤差5dBSPL以下であった。
上述の例では、P1−N1振幅比を利用する例を説明したが、振幅比ではなく、振幅差を利用してもよい。具体的には、第2音に対する振幅を第1音に対する振幅で減算することにより、N1成分に関する特徴の変化量を求めてもよい。減算結果を求めることによっても、主観的なUCLである音圧周辺において、P1−N1振幅比が顕著に減少しているという相関関係は保たれる。よって振幅差の絶対値がある閾値以上であればユーザはうるさいと判定し、閾値より小さければユーザにとって適切な音圧であると判定してもよい。
UCLの推定精度は、N1成分に関する特徴抽出の方法、および識別方法の改善により向上すると考えられる。たとえば、特徴として振幅の代わりに、事象関連電位をウェーブレット変換したウェーブレット係数を用い、特定の時刻および周波数のウェーブレット係数の変化量を用いて判別することもできる。
また、判別についても閾値との比較の代わりに、線形判別やSVM(support vector machine)等の識別アルゴリズムを用いることもできる。その場合には、所定の閾値は不要である。これらの識別アルゴリズムを用いる場合には、一般的なユーザにおいてあらかじめ取得したUCLである音圧以下および以上の音刺激に対する事象関連電位の特徴量を教師データとして用いてもよい。なお、今回の実験では、P1−N1振幅の比を指標にUCLを推定できることを確認する意味で12人の参加者の脳波および主観報告の結果を総加算平均したが、上述のような特徴量抽出の方法や識別方法の工夫により、ユーザごと、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとに20回程度の加算平均であってもN1成分に関する特徴の変化量の抽出は可能である。
ところで、従来研究により、純音聴覚刺激(トーンピップ、トーンバースト)に対するN1成分の潜時およびN1−P2振幅は、音刺激の強度と立ち上がり時間に応じて変化することが知られている(鈴木 他, 1985, 聴性脳幹反応−その基礎と臨床− p384-385参照)。具体的には、所定の音圧よりも小さな音圧の範囲においては、刺激音の強度増大に伴い、N1成分の潜時は短縮し、かつ、N1−P2振幅は増大する。また、所定の音圧以上になると、N1成分の潜時短縮およびN1−P2振幅の増大は頭打ちになる。ここで、「頭打ち」とは、音刺激の音圧増大に対するN1成分の潜時短縮や振幅増大に関する変化量が、所定の値よりも小さくなることを意味している。
図3右の上段示したように、第1音に対するN1−P2振幅は、主観報告実験でUCLであると報告された90−95dBSPL周辺の音圧までは、音圧増大に伴っておよそ増大した。また、それ以上の音圧では振幅増大は頭打ちになった。そこで、第1音に対するN1−P2振幅を所定の閾値と比較する、あるいは、音圧増大に伴うN1−P2振幅の増大が頭打ちになったことを検出してUCLが測定できると考えられる。
ただし、事象関連電位の振幅は個人差が大きいため個人ごとに閾値を設定する必要があること、加えて、N1−P2振幅の増大は緩やかであることから、第1音に対するN1―P2振幅のみを指標としたUCL推定は精度が低くなる可能性がある。実際に、ペア刺激の第1音に対するP1−N1振幅あるいはN1−P2振幅を所定の閾値で判別した場合、第1音と第2音のP1−N1振幅比あるいはN1−P2振幅を用いる場合と比較して推定精度が有意に低かった。
よって、ペア刺激を呈示し、UCLである音圧の周辺で顕著に減少する第1音と第2音にそれぞれに対するN1成分に関する特徴(P1−N1振幅)の変化量を指標とすることで、短時間で高精度のうるささ評価が実現できるといえる。第1音および第2音に対する特徴の変化量は、個人ごとに生起した特徴成分の比較であるため、事象関連電位の個人差の影響を受けにくいロバストなうるささ評価が実現できる。
なお、図3右の下段から、第2音に対するN1成分の振幅に関する特徴量も、主観報告によりUCLと評価された音圧周辺において、音圧増大に伴う振幅増大が頭打ちになることが分かった。特に、P1−N1振幅は、主観報告によりUCLと評価された音圧以上の音圧で減少した。よって、第2音に対するN1成分の振幅に関する特徴量を所定の閾値(たとえば1.0μV)と比較する、あるいは、第2音の音圧増大にともなうN1成分の振幅に関する特徴量の増大が頭打ちになったことを検出してUCLを測定することも可能である。
以上、本願発明者らが実施した脳波計測実験および主観報告実験により、ペア刺激の第1音と第2音が呈示された時刻を起点とした事象関連電位のN1成分に関する特徴が、UCLである音圧周辺で顕著に変化することが明らかになった。ゆえに、ペア刺激に対する事象関連電位のたとえばP1−N1振幅比を指標に、うるささ評価が実現可能となる。
図6は、本願発明者らによってまとめられた、P1−N1振幅比とうるささ判定との対応関係を示す。P1−N1振幅比が所定の閾値よりも小さい場合に「うるさい」と判定し、所定の閾値以上の場合に「適切な大きさである」と判定する。
以下、本発明の実施形態にかかるうるささ評価システムを説明する。うるささ評価システムは、ペア刺激を呈示し、ペア刺激の第1音と第2音の事象関連電位のN1成分に関する特徴の変化量に基づいてうるささ評価を実現する。これは本願発明者らが見出した上述の知見に基づき初めて実現される。なお、下記実施形態においては、第2音に対する振幅を第1音に対する振幅で除算した振幅比を利用する例を説明する。しかしながら、上述のように、たとえば振幅比ではなく、振幅差を用いてもよい。この場合には、振幅比を計算する構成要素が振幅差の絶対値を計算し、振幅比に対応する閾値を振幅差の絶対値に対応する閾値に変更すればよい。
(実施形態1)
以下では、まず、うるささ評価システムの概要を説明する。その後、うるささ評価装置を含むうるささ評価システムの構成および動作を説明する。
本実施形態によるうるささ評価システムは、ペア刺激を呈示し、第1音目と第2音目に対する脳波のN1成分に関する特徴をそれぞれ抽出し、特徴の変化量からUCLを判定する。
本実施形態においては、探査電極を中心部(Cz)に設け、基準電極を左右のマストイドに設けて、探査電極と基準電極の電位差である脳波を計測する。なお、事象関連電位の特徴成分のレベルや極性は、脳波計測用の電極を装着する部位、又は基準電極および探査電極の設定の仕方に応じて変わる可能性がある。しかしながら、以下の説明に基づけば、当業者は、そのときの基準電極および探査電極に応じて適切な改変を行って事象関連電位の特徴を抽出し、うるささの評価を行うことが可能である。そのような改変例は、本発明の範疇である。
図7は、本実施形態によるうるささ評価システム100の構成および利用環境を示す。このうるささ評価システム100は後述する実施形態1のシステム構成に対応させて例示している。
うるささ評価システム100は、うるささ評価装置1と、音刺激出力部11と、生体信号計測部50とを備えている。生体信号計測部50は少なくとも2つの電極Aおよび電極Bと接続されている。電極Aはユーザ5のマストイドに貼り付けられ、電極Bはユーザ5の頭皮上の中心部(いわゆるCz)に貼り付けられている。
うるささ評価システム100は、左右一方の耳に、ある周波数、ある音圧のペア刺激をユーザ5に呈示し、第1音と第2音の呈示時刻を起点にそれぞれ計測したユーザ5の脳波(事象関連電位)において、それぞれ潜時約100msのN1成分に関する特徴を抽出する。そして、第1音および第2音に対する特徴の変化量が所定の閾値よりも小さいか否かを識別し、ユーザがうるさいと感じたかを判定する。
ユーザ5の脳波は、電極Aと電極Bとの電位差に基づいて、生体信号計測部50により取得される。生体信号計測部50は、電位差に対応する情報(脳波信号)をうるささ評価装置1に送信する。図7では、うるささ評価装置1が生体信号計測部50および音刺激出力部11と同じ筐体内にある例を示したが、うるささ評価装置は別筐体であってもよい。その場合には、生体信号計測部50で計測した脳波信号を無線または有線でうるささ評価装置1に送付する。
うるささ評価装置1は、うるささ評価のための音刺激の呈示タイミングの制御を行い、音刺激出力部11(たとえばヘッドフォン内のスピーカ)を介してユーザ5に音刺激を呈示する。
図8は、本実施形態によるうるささ評価装置1のハードウェア構成を示す。うるささ評価装置1は、CPU30と、メモリ31と、オーディオコントローラ32とを有している。これらは互いにバス34で接続され、相互にデータの授受が可能である。
CPU30は、メモリ31に格納されているコンピュータプログラム35を実行する。コンピュータプログラム35には、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。うるささ評価装置1は、このコンピュータプログラム35にしたがって、同じメモリ31に格納されている音データベース(DB)71を利用して、うるささ評価システム100の全体を制御する処理を行う。この処理は後に詳述する。
オーディオコントローラ32は、CPU30の命令に従って、それぞれ、呈示すべき音刺激を指定された音圧で音刺激出力部11を介して出力する。
なお、うるささ評価装置1は、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。そのようなDSPは、1つの集積回路で上述のCPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32の機能を全て実現することが可能である。
上述のコンピュータプログラム35は、CD−ROM等の記録媒体に記録されて製品として市場に流通され、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送され得る。図8に示すハードウェアを備えた機器(たとえばPC)は、当該コンピュータプログラム35を読み込むことにより、本実施形態によるうるささ評価装置1として機能し得る。なお、音DB71はメモリ31に保持されていなくてもよい。たとえばバス34に接続されたハードディスク(図示せず)に格納されていてもよい。
図9は、本実施形態によるうるささ評価システム100の機能ブロックの構成を示す。うるささ評価システム100は、音刺激出力部11と、生体信号計測部50と、うるささ評価装置1とを有している。また、図9に、うるささ評価装置1の詳細な機能ブロックも示している。すなわち、うるささ評価装置1は、事象関連電位変化量抽出部55(以下「変化量抽出部55」と記述する)と、うるささ判定部65と、呈示音決定部70と、音DB71と、ペア刺激制御部75と、結果蓄積DB80とを備えている。ユーザ5のブロックは説明の便宜のために示されている。うるささ評価装置1は、音刺激出力部11及び生体信号計測部50と、有線又は無線で接続されている。なお、うるささ評価装置1は、呈示音決定部70と、音刺激出力部11と、変化量抽出部55と、うるささ判定部65とを少なくとも備えていれば良い。
うるささ評価装置1の各機能ブロック(音DB71を除く)は、それぞれ、図8に関連して説明したプログラムが実行されることによって、CPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32によって全体としてその時々で実現される機能に対応している。
音DB71は、うるささ評価を行うための音刺激のデータベースである。図10は、左右耳ごと、周波数ごとにうるささ評価を行うために、たとえば左右耳ごとに250Hzから4000Hzの周波数において80dBSPLから110dBSPLの音圧の純音を用いる場合の音DB71の例を示す。図10に示した音DB71では、呈示する音刺激ファイル、音刺激を呈示する耳の左右、音刺激の周波数および音圧の情報を保持する。各音刺激は、たとえば持続時間50msのトーンバースト音(rise−fall3ms)としてもよい。音刺激の持続時間は、N1成分が明瞭に生起する範囲である限り、たとえば25msや100msでもよい。
再び図9を参照する。呈示音決定部70は、音DB71を参照し、呈示する音刺激の左右耳、周波数、音圧を決定する。呈示音は、たとえば次の制約に基づいてランダム決定してもよい。直前のペア刺激と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。左右耳をランダムな順序で呈示する。ただし、左右どちらか一方の耳へのペア刺激を4回以上連続させないことが好ましい。こうすることで、同一ペア刺激の連続呈示による脳波の慣れ(habituation)の影響が低減され、高精度なうるささ評価が実現できる。そして、呈示音決定部70は、決定した音刺激の情報を、ペア刺激制御部75に送付する。
ペア刺激制御部75は、呈示音決定部70から音刺激の情報を受け取り、所定のペア間間隔で音刺激を連発呈示する(第1音、第2音)。ペア間間隔は、第1音に対するN1成分と第2音に対するN1成分をそれぞれ明瞭に生起させるため、たとえば100ms以上に設定する。具体的には、たとえば300msとしてもよいし、200msとしてもよい。また、ペア間間隔は、第1音の影響が消失しない範囲であればたとえば10秒以下で任意に設定してもよい。ペア間間隔は、たとえばペア刺激制御部75内に保持してもよい。ペア刺激制御部75は、第1音および第2音の音刺激呈示時刻に合わせて、トリガを生体信号計測部50へ出力する。また、呈示した音刺激の左右耳、周波数、音圧および、ペア間間隔に関する情報を、変化量抽出部55に送信する。
音刺激出力部11は、呈示音決定部70によって決定された音刺激を、ペア刺激制御部75において制御されたタイミングで再生し、ユーザ5に呈示する。
生体信号計測部50は、ユーザ5の生体信号を計測する脳波計であり、生体信号として脳波を計測する。そして、脳波データに対してN1成分の抽出に適した遮断周波数の周波数フィルタリングを行い、ペア刺激制御部75から受けたトリガを起点に第1音および第2音それぞれに対する所定区間(たとえば−100msから400msの区間)の事象関連電位を切り出し、その波形データ(事象関連電位)を変化量抽出部55に送付する。N1成分の周波数は10Hz程度であることから、周波数フィルタとしてバンドパスフィルタを用いる場合には、たとえば5Hzから15Hzまでを通過させるように設定してもよい。ユーザ5はあらかじめ脳波計を装着しているものとする。脳波計測用の探査電極はたとえば中心部のCzに装着される。
変化量抽出部55は、ペア刺激制御部100から受けた音刺激の内容に応じて、第1音および第2音それぞれに対する、生体信号計測部50から受けた事象関連電位の加算平均演算を行う。加算平均演算は、たとえば第1音および第2音それぞれに対して、同一の特徴(周波数および音圧)を有する音刺激に対する事象関連電位のみを選択して行う。そして、変化量抽出部55は、第1音目、第2音目それぞれにN1成分に関する特徴を求め、特徴の変化量を算出する。たとえばP1−N1振幅をN1成分に関する特徴とする場合には、潜時約50msの最大値から、潜時約100msの最小値を引き算した値をP1−N1振幅としてもよい。また、たとえば潜時約50msの陽性のピーク±10msの区間平均電位から、潜時約100msの陰性のピーク±10msの区間平均電位を引き算した値をP1−N1振幅としてもよい。そして、特徴の変化量として、たとえば第2音に対する振幅を第1音に対する振幅で除算した振幅比を算出する。変化量抽出部55は、算出したN1成分に関する特徴の変化量を、うるささ判定部65に送付する。
うるささ判定部65は、変化量抽出部55からN1成分に関する特徴の変化量のデータを受け取り、その変化量に基づいてうるささ判定を実施する。たとえば、変化量抽出部55から、第1音目と第2音目のP1−N1振幅比(第2音に対する振幅/第1音に対する振幅)を受け取った場合には、その振幅比に基づいてうるささの判定を行う。判定は、たとえば所定の閾値との比較によって行ってもよい。その場合には、振幅比が所定の閾値よりも小さい場合に「うるさい」と判定し、振幅比が所定の閾値以上の場合に「適切な大きさである」と判定する。所定の閾値は、たとえば0.5としてもよい。
なお、上述した変化量抽出部55およびうるささ判定部65の機能の説明は一例である。ここでは変化量抽出部55がN1成分に関する特徴の変化量を検出するとして説明しているが、うるささ判定部65が変化量を検出してもよい。
また、上述の記載では、うるささ判定部65は、「うるさい」又は「適切な大きさである」と判定しているが、具体的な値のみを決定してもよい。例えば、第1音目と第2音目のP1−N1振幅比を判定結果としても良い。
結果蓄積DB80は、呈示音決定部70から呈示した音刺激の左右耳、周波数、音圧に関する情報を受け取る。また結果蓄積DB80は、うるささ判定部65からペア刺激ごとのうるささ判定の結果の情報を受け取る。そして、たとえば音刺激の左右耳、周波数、音圧ごとに、受け取ったうるささの判定結果の情報を蓄積する。
図11は、結果蓄積DB80におけるデータ蓄積の例である。図11では、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとにうるささの情報を蓄積する場合を例示している。たとえば図11中の「1」は、うるささ判定部65において「うるさい」と判定された場合を示し、「0」は「適切な大きさである」と判定された場合を示す。なお、左右の耳についてそれぞれデータが設けられている理由は、ユーザは左右のいずれか、または両方に補聴器を装着し得るためである。本実施形態にかかるうるささ評価システム100は、左右のいずれの耳に関しても、うるささの評価を行う必要があるため、左右の耳のデータを設けた。
次に、図12を参照しながら図9のうるささ評価システム100において行われる処理手順を説明する。図12は、うるささ評価システム100において行われる処理の手順を示すフローチャートである。
ここで、うるささ評価システム100が用いる脳波を説明する。音刺激を呈示した後、80ms以上150ms以下の範囲に現れる陰性の脳波成分を、N1成分として測定する。音刺激を呈示した後、30ms以上70ms以下の範囲に現れる陽性の脳波成分を、P1成分として測定する。音刺激を呈示した後、160ms以上250ms以下の範囲に現れる陽性の脳波成分を、P2成分として測定する。
ステップS101において、呈示音決定部70は音DB71を参照しながら呈示する音刺激の左右耳、周波数、音圧を決定する。そして、決定した音刺激の情報をペア刺激制御部75に送付する。音刺激は、たとえば次の制約に基づいてランダム決定してもよい。直前のペア刺激と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。ペア刺激を呈示する耳は左右でランダムとする。ただし、左右どちらかの耳へのペア刺激を4回以上連続させないことが好ましい。
ステップS102において、ペア刺激制御部75は、呈示音決定部70で決定された音刺激を、音刺激出力部11を介してユーザ5に呈示する(第1音)。そして、生体信号計測部50にトリガを送信し、変化量抽出部55に呈示した音刺激の左右耳、周波数、音圧の情報を送信する。
ステップS103において、ペア刺激制御部75は、ステップS102から所定のペア間間隔をあけて、呈示音決定部70で決定された音刺激を、音刺激出力部11を介して再度ユーザ5に呈示する(第2音)。所定のペア間間隔は、たとえばペア刺激制御部75内に保持してもよい。そして、ステップS102と同様に、生体信号計測部50にトリガを送信し、変化量抽出部55に呈示した音刺激の左右耳、周波数、音圧の情報を送信する。なお、ステップS102およびステップS103において、さらにペア間間隔の情報を変化量抽出部55に送付してもよい。
ステップS104において、生体信号計測部50はペア刺激制御部75からトリガを受けて、計測した脳波のうち、第1音および第2音のトリガを起点にたとえば−100msから400msまでの事象関連電位をそれぞれ切り出す。そしてたとえば−100msから0msの平均電位を求め、その平均電位が0μVになるよう、得られた事象関連電位のベースラインを補正する。なお、生体信号計測部50では、評価中、常に脳波を計測し、脳波データに対してN1成分に関する特徴の抽出に適した周波数フィルタをかけているものとする。適した周波数フィルタとは、たとえばN1成分の中心周波数である10Hzをはさんだ、5Hzから15Hzを通過させるバンドパスフィルタである。なお、脳波データに対してたとえば5Hz以上のハイパスフィルタをかけた場合には、ベースライン変化の影響をほとんど受けないため、ベースライン補正は必須ではない。
ステップS105において、変化量抽出部55はステップS104で切り出した事象関連電位を、ペア刺激制御部75から受けた音刺激の左右耳、周波数、音圧の情報に基づき、それぞれ左右耳、周波数、音圧ごとに加算平均する。
ステップS106において、変化量抽出部55はステップS102およびステップS103で呈示された音刺激に対する事象関連電位の加算平均回数が所定回数に到達したか否かを判定する。加算平均回数が所定回数以下の場合には処理はステップS101へ戻り、ペア刺激の呈示を繰り返す。加算平均回数が所定回数以上の場合には、処理はステップS107へ進む。所定回数とは、たとえば20回である。なお、「20回」は、事象関連電位を計測する分野において多く採用される加算回数であるが、これは一例に過ぎない。たとえば、変化量抽出部55において、P1−N1振幅をシグナルとしてS(signal)/N(noise)を求め、S/Nが一定以上となる加算回数を所定回数としてもよい。
ステップS107において、変化量抽出部55は所定回数の加算平均演算をした第1音および第2音に対する左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとの事象関連電位から、N1成分に関する特徴およびその変化量を算出する。たとえば、特徴としてP1−N1振幅を、変化量として第1音と第2音に対するP1−N1振幅の比を算出する。P1−N1振幅は、たとえば潜時約50msの最大値から、潜時約100msの最小値を引き算した値としてもよい。また、たとえば潜時約50msの陽性のピーク±10msの区間平均電位から、潜時約100msの陰性のピーク±10msの区間平均電位を引き算した値としてもよい。P1−N1振幅比は、たとえば第2音に対するP1−N1振幅を第1音に対するP1−N1振幅で除算する。そして、うるささ判定部100に、算出した特徴の変化量を送付する。
ステップS108において、うるささ判定部100は、変化量抽出部55から、特徴の変化量を受け取り、その変化量に対する識別を行う。識別は、たとえば受け取った変化量と所定の閾値との比較によって行ってもよい。所定の閾値は、たとえばうるささ判定部65内に保持してもよい。第1音と第2音に対するP1−N1振幅比を変化量として受け取った場合には、たとえば0.5を所定の閾値として比較を行う。
ステップS109において、うるささ判定部100は、ステップS108の識別結果を受けて、うるささを判定する。たとえばステップS108において、P1−N1振幅比と所定の閾値との比較を行った場合には、P1−N1振幅比が所定の閾値より小さい場合に「うるさい」と判定し、所定の閾値以上の場合に「適切な大きさである」と判定する。
ステップS110において、結果蓄積DB80は、ステップS102およびステップS103で呈示した音刺激の、左右耳、周波数ごとに、うるささ判定部65から受け取ったうるささの判定結果の情報を蓄積する。
ステップS111において、呈示音決定部70は、うるささを評価する予定の、全ての音刺激の呈示が完了したか否かを判定する。完了していない場合には処理はステップS101へ戻り、完了している場合にはうるささ評価を終了する。
本実施形態のうるささ評価システム100によれば、同一の音刺激を所定の間隔で2回連発呈示した場合の、第1音目および第2音目に対するN1成分に関する特徴の変化量に基づいて、UCLが判定される。これにより、補聴器装用時にユーザがうるささを感じない、補聴器フィッティングが実現できる。
なお、上述のように、第1音または第2音に対するN1成分の振幅が頭打ちになったことを、UCL評価の指標として利用することも可能である。よって、変化量抽出部55において、第1音および第2音に対するN1成分の振幅(P1−N1振幅あるいはN1−P2振幅)と、第1音および第2音に対するP1−N1振幅の変化量の両方を抽出してもよい。そして、うるささ判定部65において、第1音または第2音に対するN1成分の振幅が頭打ちになったこと、およびP1−N1振幅比が所定の閾値よりも小さいことを検出し、その音刺激に対して、うるさいと判定してもよい。両方を組合せて利用することで、うるささ評価の精度がより向上する可能性がある。
本実施形態の説明では、生体信号計測部50は、ペア刺激制御部75からのトリガを起点にして予め定められた範囲の事象関連電位を切り出し、ベースライン補正を行って電位波形のデータを変化量抽出部55に送信するとした。しかしながら、この処理は一例である。他の処理として、たとえば、生体信号計測部50は継続的に脳波を計測し、変化量抽出部55が必要な事象関連電位の切り出しおよびベースライン補正を行ってもよい。当該構成であれば、ペア刺激制御部75は生体信号計測部50にトリガを送信する必要はなくなり、変化量抽出部55にトリガを送信すればよい。
また、本実施形態においては、うるささ評価の結果は、結果蓄積DB80に蓄積されるとしたが、蓄積しなくてもよい。たとえば結果蓄積DB80をうるささ評価装置1の外部に設ける場合には、うるささ判定部65の各判定結果を単に出力すればよい。各判定結果は、うるささに関する情報として利用され得る。
(実施形態2)
実施形態1によるうるささ評価システム100では、第1音目と第2音目のN1成分に関する特徴の変化量に基づいたうるささ判定を、音DB71に保存されたたとえば80dBSPLから110dBSPLの全ての音刺激に対して探索的に実施した。
しかしながら、上述のような広い幅の音圧における探索的なうるささ評価は、時間がかかる、UCL以上の音圧の音刺激の呈示によりユーザの耳を傷つける可能性がある、という課題があった。
そこで本実施形態では、ユーザごとの聴力閾値であるHTLを入力し、入力した聴力閾値から仮想的にUCLを予測して、予測したUCL付近に限定したうるささ評価を行う、うるささ評価システムについて説明する。
図13は、本実施形態によるうるささ評価システム200の機能ブロックの構成を示す。うるささ評価システム200は、HTL入力部12と、音刺激出力部11と、生体信号計測部50と、うるささ評価装置2とを有している。うるささ評価装置2は、音刺激出力部11、HTL入力部12、及び生体信号計測部50と、有線又は無線で接続されている。図9と同じブロックについては同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
なお、うるささ評価装置2のハードウェア構成は、図8に示すとおりである。実施形態1で説明したプログラム35(図8)と異なる処理を規定するプログラムが実行されることにより、図13に示す本実施形態によるうるささ評価装置2が実現される。
本実施形態によるうるささ評価装置2が、実施形態1によるうるささ評価装置1と大きく相違する点は、新たに不快レベル(UCL)予測部72を設けた点である。なお、うるささ評価装置2の構成要素名に関しては、原則として実施形態1と同じ名称を用いているが、異なる動作および/または機能を有している場合には、異なる参照符号を用いている。たとえば、本実施形態では、実施形態1では行わなかった、予測したUCL周辺の音圧に限定した音刺激を選択するために、呈示音決定部70に代えて、制約呈示音決定部73を設けている。
以下、HTL入力部12、UCL予測部72、制約呈示音決定部73について説明する。
HTL入力部12は、補聴器フィッティングのソフトウェアを利用する補聴器フィッティングの専門家から、別途取得したユーザの聴力閾値の情報を受ける。そして、UCL予測部72にその情報を送付する。この情報は、ユーザの検査を行う範囲を決定するために用いられる、周波数ごとの閾値の情報である。
UCL予測部72は、HTL入力部12から受けたユーザごとのHTLの情報を受けて、左右耳ごと、周波数ごとにUCLの予測を行う。UCLの予測は、たとえば、式1に示したように、ハーフゲイン法に基づいて左右耳ごと、周波数ごとのHTL値を所定値である「2」で割り、それに所定値αを足す方法で算出してもよい。たとえば、αの値を75とした場合には、図14のように予測する。なおαは周波数ごとに変えてもよい。
(式1) UCL値=HTL/2+α
制約呈示音決定部73は、実施形態1にかかる呈示音決定部70と同様に音DB71を参照し、音刺激の左右耳、周波数、音圧を決定する。呈示音決定部70との差異は、UCL予測部72から受けた、UCL予測値を基準に所定の範囲内の音圧から音刺激を選択する点である。所定の範囲内は、左右耳、周波数ごとに、たとえばUCL予測値±5dBとしてもよいし、±10dBとしてもよい。たとえば、次の制約に基づいて、所定の範囲内の音圧を有する音刺激をランダム決定してもよい。直前のペア刺激と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。ペア刺激を呈示する耳は左右でランダムとする。ただし、左右どちらかの耳へのペア刺激を4回以上連続させないことが好ましい。
次に、図15のフローチャートを参照しながら、うるささ評価システム200において行われる全体的な処理の手順を説明する。
図15は、本実施形態によるうるささ評価システム200の処理手順を示す。図15では、うるささ評価システム100の処理(図12)と同じ処理を行うステップについては同一の参照符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態によるうるささ評価システム200の処理が、実施形態1によるうるささ評価システム100の処理と相違する点は、ステップS201、S202、S203およびS204である。それ以外のステップについては、図12に関連して既に説明しているため、説明を省略する。
ステップS201において、HTL入力部12は、補聴器フィッティングを実施する専門家から、別途取得したユーザの左右耳ごと、周波数ごとの聴力閾値の情報を受ける。そして、UCL予測部72にその情報を送付する。
ステップS202において、UCL予測部72は、HTL入力部12から受けたユーザごとのHTLの情報を受けて、左右耳ごと、周波数ごとにUCLの予測を行う。UCLの予測は、たとえば、式1に示したように左右耳ごと、周波数ごとのHTL値を所定値2で割り、それに所定値αを足す方法で算出してもよい。
ステップS203において、制約呈示音決定部73は、UCL予測部72で予測した仮のUCL音圧を基準に所定の範囲内の音圧から音刺激を選択し決定する。所定の範囲内は、左右耳、周波数ごとに、たとえばUCL予測値±5dBとしてもよいし、±10dBとしてもよい。音刺激は、所定の範囲内においてたとえば次の制約に基づいてランダム決定してもよい。直前のペア刺激と同じ周波数の音刺激は選択しないことが好ましい。ペア刺激を呈示する耳は左右でランダムとする。ただし、左右どちらかの耳へのペア刺激を4回以上連続させないことが好ましい。
そしてステップS204において、制約呈示音決定部73は、所定の範囲内の全ての音で評価を終了するか否かを判定する。
このような処理によって、たとえば、ユーザが不快に感じるほど大きな音圧であるUCLを短時間で高精度に測定できる。
本実施形態のうるささ評価システム200によれば、入力されたHTLから予測した仮のUCL音圧を基準に所定の範囲内の音圧に対して、うるささ評価ができる。これによって、より短時間でユーザのUCL評価が実現できるようになる。
なお、図9に示すうるささ評価システム100、及び図13に示すうるささ評価システム200は、一体の装置として構成されていても良い。
また、図16に示すように、うるささ評価装置3は、変化量抽出部55と、うるささ判定部65と、呈示音決定部70と、ペア刺激制御部75とを備えている。うるささ評価システム300は、音刺激出力部11と、生体信号計測部50と、音DB71と、結果蓄積DB80と、うるささ評価装置3とを備えている。
うるささ評価装置3は、図9に示すうるささ評価装置1から音DB71及び結果蓄積DB80を除いたこと以外は同じである。うるささ評価装置3は、有線又は無線により、音DB71及び結果蓄積DB80と接続し、情報の送信及び受信を行う。
また、図17に示すように、うるささ評価装置4は、変化量抽出部55と、うるささ判定部65と、UCL予測部72と、制約呈示音決定部73と、ペア刺激制御部75とを備えている。うるささ評価システム400は、HTL入力部12と、音刺激出力部11と、生体信号計測部50と、音DB71と、結果蓄積DB80と、うるささ評価装置4とを備えている。
うるささ評価装置4は、図16に示すうるささ評価装置2から音DB71及び結果蓄積DB80を除いたこと以外は同じである。うるささ評価装置4は、有線又は無線により、音DB71及び結果蓄積DB80と接続し、情報の送信及び受信を行う。
以上、本発明の各実施形態を説明した。
なお、本明細書においては、うるささ評価装置システム、うるささ評価装置、及びうるささ評価方法はそれぞれ、音圧評価システム、音圧評価装置、音圧評価方法とも表記する。
本発明の音圧評価装置および音圧評価装置が組み込まれたうるささ評価システムによれば、ユーザが不快に感じるほどうるさい音圧かどうかを、客観的かつ高精度に測定することができる。それによって、ユーザがうるささを感じることがなく、聞いていて疲れない補聴器フィッティングを実現できるため、全ての補聴器ユーザのフィッティングにおいて利用可能である。
1、2、3、4 うるささ評価装置
5 ユーザ
11 音刺激出力部
12 HTL入力部
50 生体信号計測部
55 事象関連電位変化量抽出部
65 うるささ判定部
70 呈示音決定部
71 音DB
72 UCL予測部
73 制約呈示音決定部
80 結果蓄積DB
100、200、300、400 うるささ評価システム

Claims (20)

  1. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、
    純音のデータを複数保持している音データベースと、
    前記音データベースを参照して、呈示する音を決定する呈示音決定部と、
    前記呈示音決定部で決定された音を第1音として前記ユーザに呈示し、前記第1音を呈示してから所定の時間後に、前記第1音と少なくとも周波数及び音圧が同じ音を第2音として前記ユーザに呈示する出力部と、
    前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出する変化量抽出部と、
    前記変化量抽出部で抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧が前記ユーザにとって大きすぎるか否かを判定するうるささ判定部と
    を備えた、音圧評価システム。
  2. 前記変化量抽出部は、前記変化量として、前記第2音に関するN1成分から得られた振幅を、前記第1音に関するN1成分から得られた振幅で除算した振幅比の変化量を求め、
    前記うるささ判定部は、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記ユーザにとってうるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、前記ユーザにとって適切な音圧であると判定する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  3. 前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、
    前記変化量抽出部は、前記ペア刺激ごとに、前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陽性成分であるP1成分の振幅と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陽性成分であるP1成分の振幅との変化量を抽出し、前記抽出した脳波信号の事象関連電位を、前記複数組の前記第1音ごと及び前記第2音ごとに加算平均し、加算平均後の前記第1音のP1成分の振幅値及び前記第1音のN1成分の振幅値の差分と、加算平均後の前記第2音のP1成分の振幅値及び前記第2音のN1成分の振幅値の差分との比を変化量として抽出する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  4. 前記変化量抽出部は、前記変化量として、前記第2音に関するN1成分から得られた振幅と、前記第1音に関するN1成分から得られた振幅との差分の変化量の絶対値を求め、
    前記うるささ判定部は、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、前記ユーザにとってうるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値より小さい場合に、前記ユーザにとって適切な音圧であると判定する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  5. 前記N1成分は、前記出力部により第1音又は第2音が呈示された時刻から、80ms以上130ms以下の範囲に含まれる事象関連電位の陰性成分である、請求項1に記載の音圧評価システム。
  6. 前記P1成分は、前記出力部により第1音又は第2音が呈示された時刻から、30ms以上70ms以下の範囲に含まれる事象関連電位の陽性成分である、請求項3に記載の音圧評価システム。
  7. 前記音データベースは、前記音と、前記音を呈示するユーザの左右の耳、前記音の周波数、および前記音の音圧の少なくとも1つの音の特徴とを対応付けて保持し、
    前記変化量抽出部は、前記脳波信号の事象関連電位を、前記第1音及び前記第2音ごとに、並びに前記音の特徴ごとに、加算平均する、請求項5に記載の音圧評価システム。
  8. 前記変化量抽出部は、前記第1音及び前記第2音が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、30ms以上70ms以下の事象関連電位の陽性のピーク値と、第1音目及び第2音目が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、80ms以上150ms以下の陰性のピーク値との差分である、前記第1音及び第2音の事象関連電位のP1−N1振幅を算出し、前記第2音の事象関連電位のP1−N1振幅と前記第1音の事象関連電位のP1−N1振幅との振幅比を前記変化量とし、
    前記うるささ判定部は、前記振幅比が第1の閾値よりも小さい場合に、呈示された音前記ユーザにとってうるさかったと判定し、前記振幅比が前記第1の閾値以上の場合には呈示された音の音圧は前記ユーザにとって適切であると判定する、請求項3に記載の音圧評価システム。
  9. 前記第1の閾値は、0.5である、請求項8に記載の音圧評価システム。
  10. 前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、
    前記変化量抽出部は、前記脳波信号において、前記第1音が呈示された時刻を起点とする160ms以上250ms以下の陽性成分であるP2成分と、前記脳波信号において、前記第2音が呈示された時刻を起点とする160ms以上250ms以下の陽性成分であるP2成分とを抽出し、前記抽出した脳波信号の事象関連電位を、前記第1音及び前記第2音ごとに加算平均し、前記第1音のP2成分の振幅値及び前記第1音のN1成分の振幅値の差分と、前記第2音のP2成分の振幅値及び前記第2音のN1成分の振幅値の差分との比を変化量として抽出する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  11. 前記変化量抽出部は、第1音目及び第2音目が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、80ms以上150ms以下の陰性のピーク値と、前記第1音及び前記第2音が呈示されたそれぞれの時刻を起点とした、160ms以上250ms以下の事象関連電位の陽性のピーク値との差分である、前記第1音及び第2音の事象関連電位のN1−P2振幅を算出し、前記第2音の事象関連電位のN1−P2振幅と前記第1音の事象関連電位のN1−P2振幅との振幅比を前記変化量とし、
    前記うるささ判定部は、前記振幅比が第2の閾値よりも小さい場合には、呈示された音は前記ユーザにとってうるさかったと判定し、前記振幅比が第2の閾値以上であった場合には、呈示された音の音圧前記ユーザにとって適切であると判定する、請求項10に記載の音圧評価システム。
  12. 前記第2の閾値を0.55とする、請求項11に記載の音圧評価システム。
  13. 前記出力部は、前記第1音及び前記第2音を含むペア刺激を、複数組呈示し、直前に呈示された前記第1音及び前記第2音の組と異なる周波数を有する、前記第1音及び前記第2音の組を呈示する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  14. さらに、ユーザの聴力閾値を入力する最小可聴レベル入力部と、
    前記最小可聴レベル入力部に入力された前記聴力閾値に基づいて、前記ユーザの不快レベルを予測する不快レベル予測部とをさらに備え、
    前記呈示音決定部において、前記不快レベル予測部で予測された音圧を基準に所定の範囲内から前記第1音及び第2音を決定する、請求項1に記載の音圧評価システム。
  15. 複数の純音のデータを保持する音データベースを参照して、呈示する音を決定する呈示音決定部と、
    前記呈示音決定部で決定された音を第1音としてユーザに呈示し、前記第1音を呈示してから所定の時間後に、前記第1音と少なくとも周波数及び音圧が同じ音を第2音として前記ユーザに呈示する出力部と、
    生体信号計測部が計測した前記ユーザの脳波信号における、前記第1音が呈示された時刻を起点とする事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出する変化量抽出部と、
    前記変化量抽出部で抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するうるささ判定部と
    を備えた、音圧評価装置。
  16. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、
    純音のデータを複数保持している音データベースと、
    前記音データベースを参照して、呈示する音を決定する呈示音決定部と、
    前記呈示音決定部で決定された音を第1音として前記ユーザに呈示し、前記第1音を呈示してから所定の時間後に、前記第1音と少なくとも周波数及び音圧が同じ音を第2音として前記ユーザに呈示する出力部と、
    前記第1音が呈示された時刻を起点とする、−100ミリ秒から400ミリ秒の区間に含まれる事象関連電位と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、−100ミリ秒から400ミリ秒の区間に含まれる事象関連電位との変化量を抽出する変化量抽出部と、
    前記変化量抽出部で抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧が前記ユーザにとって大きすぎるか否かを判定するうるささ判定部と
    を備えた、音圧評価システム。
  17. ユーザの脳波信号を計測するステップと、
    前記ユーザに呈示する音を決定するステップと、
    前記決定した音を第1音として前記ユーザに呈示し、第1音を呈示してから所定の時間後に、第1音と同じ音を第2音として前記ユーザに呈示するステップと、
    前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出するステップと、
    抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するステップと
    を包含する、音圧評価方法。
  18. うるささを判定する前記ステップは、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、うるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、適切な音圧であると判定する、請求項17に記載の音圧評価方法。
  19. コンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、
    ユーザの脳波信号を受け取るステップと、
    前記ユーザに呈示する音を決定するステップと、
    前記決定した音を第1音として前記ユーザに呈示し、第1音を呈示してから所定の時間後に、第1音と同じ音を第2音として前記ユーザに呈示するステップと、
    前記第1音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第1音に対するN1成分と、前記第2音が呈示された時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の陰性成分である、第2音に対するN1成分との変化量を抽出するステップと、
    抽出した変化量に基づいて、前記呈示した音の音圧に対するうるささを判定するステップと
    を実行させる、コンピュータプログラム。
  20. うるささを判定する前記ステップは、前記変化量を所定の閾値と比較し、前記変化量が前記所定の閾値よりも小さい場合に、うるさいと判定し、前記変化量が前記所定の閾値以上の場合に、適切な音圧であると判定する、請求項19に記載のコンピュータプログラム。
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