JP5915944B2 - 不快音圧推定システム、不快音圧推定装置、不快音圧推定方法およびそのコンピュータプログラム - Google Patents

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Description

本願は、脳波を用いて、不快音圧を推定する技術に関する。
難聴とは、たとえば、特定の周波数あるいは周波数帯の音が聞こえにくい状態を意味する。聞こえにくい周波数あるいは周波数帯は、ユーザごとに異なる。
補聴器は、ユーザが音を聞くことができるように、音を増幅する。ユーザの聴覚特性の違いにより、ユーザごとに必要な増幅量が異なる。
補聴器を利用する前にフィッティングを行い、音の周波数ごとの利得を決定する。フィッティングを行うためには、ユーザの聴覚特性を正確に測定することが必要になる。
聴覚特性の検査では、最初に最小可聴閾値(hearing threshold level:HTL)が調べられる。次に、不快レベル(uncomfortable level:UCL)が調べられる。HTL及びUCLは、補聴器から出力する音の音圧のダイナミックレンジを決定するために利用される。
脳波を用いて、UCLを測定する方法が開発されつつある。
たとえば、非特許文献1は、クリック音に対する聴性脳幹反応(auditory brainstem response: ABR)のV波潜時とUCLとに相関関係があることを開示している。
また、非特許文献2は、振幅変調音に対する聴性定常反応(auditory steady state response: ASSR)の振幅から、その人が感じるラウドネスが近似できることを開示している。非特許文献2に記載の技術では、周波数ごとのUCL推定ができず、また、推定に30分以上の時間を要し、さらにUCL付近の大きな音に関しては推定精度が低い場合があった。
Thornton, A. R., Yardley, L., & Farrell, G. (1987). The objective estimation of loudness discomfort level using auditory brainstem evoked responses. Scandinavian Audiology, 16, 219-225. Zenker-Castro, F., & Barajas de Prat, J. J. (2008). Auditory steady-state responses and hearing device fitting Part A: The role of auditory steady-state responses in fitting hearing aids. (pp. 241-258). In G. Rance (Ed.), The auditory steady-state response: Generation, recording, and clinical application. San Diego: Plural.
上述した従来の技術では、ユーザをできるだけ不快な状態にさせることなく、そのユーザのUCLを良好な精度で求めることが望まれていた。また、周期的なノイズが脳波に影響を与え得る場合において、UCLを良好な精度で求めることが望まれていた。
本願の、限定的ではない例示的なある実施形態は、ユーザに強大な音を呈示せずに、ユーザの不快音圧をより向上した精度で推定することが可能な技術を提供する。また、本願の、限定的ではない例示的なある実施形態は、周期的なノイズが脳波測定に影響を与え得る環境において、良好な精度でユーザのUCLを推定することを可能にする技術を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、不快音圧推定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、前記ユーザに音刺激を呈示する出力部と、音刺激が呈示された時刻に基づいて決定される起点時刻を有する所定の分析区間における脳波信号から、前記音刺激に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出した特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を決定する不快音圧判定部と、前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出する周期的ノイズ抽出部と、前記周期的ノイズ抽出部が抽出した少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測部と、前記ノイズ発生予測部で予測された次のノイズの発生時刻に基づいて、前記音刺激を出力するタイミングを決定する音刺激スケジューリング部とを含む。
上述の一般的かつ特定の態様は、システム、装置、方法およびコンピュータプログラムを用いて実装され、またはシステム、装置、方法およびコンピュータプログラムの組み合わせを用いて実現され得る。
本発明の一態様にかかる不快音圧推定システムによれば、周期的ノイズを発生するような装置をつけたユーザであっても、強大音を聞かせることなく良好な精度でUCLを推定することができる。
本発明者らが実施した主観報告実験における不快音圧の主観報告値を例示する図である。 本発明者らが実施した脳波実験で使用した音刺激の構成を例示する図である。 国際10−20法の電極位置と、本発明者らが実施した脳波実験での電極位置を示す図である。 本発明者らが実施した脳波実験における事象関連電位の特徴データを例示する図である。 本発明者らが実施した脳波実験における事象関連電位のウェーブレット係数を例示する図である。 主観報告実験で得られた主観報告値と脳波実験から推定した不快音圧推定結果のばらつきを例示する図である。 主観報告値と脳波推定値の平均誤差が小さい上位1%の推定で用いられたウェーブレット特徴量の頻度を例示する図である。 本発明者らが記録した周期的ノイズの例を示す図である。 本発明者らが考案した周期的ノイズが推定精度の及ぼす影響の低い刺激呈示タイミングを例示する図である。 実施形態1の不快音圧測定システムの実現形態の構成を例示する図である。 実施形態1の不快音圧推定システムの利用環境を例示する図である。 実施形態1のハードウェア構成を例示する図である。 結果蓄積DBにおける結果蓄積の例を示す図である。 不快音圧推定システムの全体処理の概要を例示するフローチャートである。 刺激の提示方法の一例を示す図である。 HTL値ごとの推定UCL値を例示する図である。
上記非特許文献1および非特許文献2に開示される従来の手法では、ユーザには、不快なレベルの音圧の音刺激を呈示し、ユーザが不快な状態になった後に、その音刺激の音圧がUCLであったかどうかを判定する方法がとられていた。つまり、ユーザが不快な状態になったかどうかによって、不快音圧を調べるアプローチが採られていた。このため、聴力評価を行うには、ユーザには強大な音が呈示され、それによりユーザは実際に不快な状態を経験する必要があった。
これに対し、本開示による不快音圧推定システムの一実施形態においては、ユーザをできるだけ不快な状態にさせることなく、良好な精度でUCLを求める。以下、添付の図面を参照しながら、本開示による不快音圧推定システムの実施形態を説明する。
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「事象関連電位(event−related potential:ERP)」とは、刺激に対して発生する脳波(electroencephalogram:EEG)の電位の変動である。
「音刺激」とは、聴覚刺激とも呼ばれ、ユーザに対して呈示する音である。
「N1成分」とは、音刺激を呈示した時刻を起点として、約100ms後に現れる事象関連電位の陰性成分である。
「P2成分」とは、音刺激を呈示した時刻を起点として、約200ms後に現れる事象関連電位の陽性成分である。
「潜時」とは、音声刺激が呈示された時刻を起点として陽性成分または陰性成分のピーク電位が出現するまでの時間である。
「陰性成分」とは、一般的には、0μVよりも小さい電位をいう。電位を比較する対象がある場合には、より負の値を有する電位を陰性成分ともいう。
「陽性成分」とは、一般的には、0μVよりも大きい電位をいう。電位を比較する対象がある場合には、より正の値を有する電位を陽性成分ともいう。
「不快音圧(uncomfortable loudness level:UCL)」とは、ユーザが不快に感じる大きさの音圧である。
「最小可聴値(hearing threshold level:HTL)」とは、ユーザが聞き取ることのできる最も小さい音の音圧である。単に閾値とも表記する。
「音を呈示する」とは、純音を出力することである。
「純音」とは、周期振動を繰り返す楽音のうち、単一の周波数成分しか持たない正弦波で表される音である。
本願明細書においては、事象関連電位の成分を定義するためにある時点から起算した所定時間経過後の時刻を、たとえば「潜時約100ms」と表現している。これは、100msという特定の時刻を中心とした範囲を包含し得ることを意味している。「事象関連電位(ERP)マニュアル−P300を中心に」(加我君孝ほか編集、篠原出版新社、1995)の30頁に記載の表1によると、一般的に、事象関連電位の波形には、個人ごとに30msから50msの差異(ずれ)が生じる。したがって、「約Xms」や「Xms付近」という語は、Xmsを中心として30から50msの幅がその前後(例えば、100ms±30ms、200ms±50ms)に存在し得ることを意味している。
本開示によれば、ユーザには不快音圧ではない程度の音圧の音刺激を呈示し、その呈示音に対する脳波誘発反応を計測し、脳波誘発反応の解析結果に基づいて、そのユーザのUCLを推定する。これにより、不快と感じるほどの強大音をユーザに聞かせなくても、そのユーザのUCLを推定できる。
以下、添付の図面を参照しながら、本開示による不快音圧推定システムの各実施形態を説明する。
以下に説明する実施形態による不快音圧推定システムでは、ユーザが不快と感じない程度の大きさの音圧を有する音刺激を、周期的に脳波に混入するノイズ(周期的ノイズと呼ぶ)を避けて、適切なタイミングで呈示することで、不快音圧を高精度に推定する。
不快音圧の推定システムや方法などを説明する前に、実施した実験とその実験結果を説明する。また、その後、周期的に脳波にノイズが混入する状況でも、高精度に不快音圧を推定するための音刺激呈示タイミングの制御方法について説明する。
(実験概要の説明)
1.実験概要
本発明者らは、脳波に基づく不快音圧の推定を目指し、以下の2つの実験を実施した。
一つは、主観報告に基づいてUCLを実測する主観報告実験である。主観報告実験は、脳波計測実験の前後にそれぞれ実施した。この主観報告実験で得られたUCLデータを、下記の脳波からUCLを推定する場合の基準データとして使用した。
もう一つは、音刺激に対する反応を計測する脳波計測実験である。脳波計測実験では、同一周波数の純音を5dB刻みの単調下降の音圧変化で3連発呈示し、第1音から第3音までのそれぞれの音刺激に対する事象関連電位を計測した。
以下、単調下降の音圧変化で音刺激を複数回連発呈示することを「デクレッシェンド刺激」とも表記する。この音刺激呈示に対する事象関連電位を取得して、UCL値の推定のデータとした。
その結果、本願発明者らは、一般的にUCLと評価される音圧よりも低い音圧のデクレッシェンド刺激を呈示した場合にも、第1音から第3音に対する事象関連電位のウェーブレット変換により算出したウェーブレット係数の変化パターンを線形判別することで、主観報告のUCLが推定できることを見出した。
なお、一般的にUCLと評価される音圧よりも低い音圧とは、HTL値によって変動するものとする。たとえば、Pascoeの研究成果(Pascoe, D.P. (1988). (Clinical measurements of the auditory dynamic range and their relation to formulas for hearing aid gain. In 1ensen. H. 1. (Ed.) Hearing Aid Fitting: Theoretical and Practical Views 13th Danavox Symposium. Copenhagen: Stougaard.))に基づき、図16に示したHTL値ごとの推定UCL値よりも少なくとも5dB以上低い値を、上述した「低い音圧」とする。
また、音刺激に対する事象関連電位が生起するのは、音刺激の音圧がHTLよりも高い場合である。すなわち、一般的にUCLと評価される音圧よりも低い音圧範囲とは、HTLよりも高い音圧の範囲とする。本手法により、強大音を呈示しなくても短時間かつ高精度なUCL推定が可能になる。
以下、本発明者らが実施した実験とその結果、そして分析により明らかになった脳波特徴について詳述する。
(実験条件の説明)
2.UCL主観報告実験および脳波計測実験
本実験により、主観報告を用いて計測したUCLと、音刺激に対する聴性誘発反応(auditory evoked potential:AEP)から推定したUCLとを比較し、AEPに基づくUCL推定の可能性を検討する。
以下、主観報告を用いて計測したUCLを「主観UCL」と表記し、AEPから推定したUCLを「推定UCL」と表記することがある。
正常な聴力を持つ社会人男性18名(25−56歳、平均39.6±8.4歳)に対してインフォームドコンセントを実施し、実験参加の同意を得た。
2−1.UCL主観報告実験
オージオメータ(AA−72、RION製)を用いて、1kHz、2kHz、4kHzの断続音を片耳ずつ上昇法で呈示した。うるさくて長時間聞いていられないと感じた場合に挙手をさせ、左右耳・周波数ごとの主観UCLとして記録した。主観UCLは、脳波計測の前後で1回ずつ実施した。
以下、主観報告実験の結果を述べる。全ての参加者が健聴者であった。しかしながら、主観報告実験の結果は、個人ごとに大きく異なった。たとえば、同一周波数において主観UCLに個人間で最大40dBの差異があった。
これは、「うるさすぎて我慢できない」という定義の解釈は個人ごとに大きく異なることを示している。よって、主観報告によるUCL測定は難しいといえる。
図1は、主観報告によって測定した個人ごとのUCL測定結果である。図1には、2回の測定結果の平均値が示されている。音圧の単位は、dBHLである。図1中に示した左右耳ごと、周波数ごとの標準偏差からも分かるように、主観UCL値はある程度ばらついている。このように、主観UCL値は、個人ごとのばらつきが比較的大きい。
2−2.脳波計測実験
脳波実験では、3つの周波数(1000Hz(1kHz)、2000Hz(2kHz)、4000Hz(4kHz))について、一般的にUCLと評価される音圧よりも低い3つの音圧(80、75、70dBHL)の音刺激が呈示された。3つの音圧は単調下降させた。そして、音刺激ごとの事象関連電位の特徴変化を調べた。
なお、本明細書において、「単調下降」とは、次の音が、前の音より小さい音圧を有することを意味する。
以下、図2、図3、及び図4を参照しながら、脳波計測実験の実験設定および実験結果を説明する。
図2に、右耳及び左耳に呈示した音刺激を示す。図2の横軸は時間である。
音刺激としては、立ち上がり及び立ち下がりが3msであり、持続時間44msを有するトーンバースト音を用いた。
同一の周波数を有する3個の音刺激を、80dBHLから5dBずつ音圧を下げて、左耳および右耳のそれぞれに呈示した。音刺激の間隔は、300msであった。また、音刺激の周波数を、1kHz、2kHz、および4kHzのそれぞれに設定して各周波数について実験を行った。このようにして、同一周波数の3個の音刺激を1セットとして、3種類の周波数と2種類の呈示する耳とにより、6種類の条件で実験を行った。
本明細書では、上記の3個の音刺激を、呈示する順(ここでは音圧の大きい順)に、第1音、第2音、第3音と表記し、それぞれS1、S2、S3と呼ぶ。また、同一の周波数である複数の音刺激を、「音刺激群」と称することがある。
前の音刺激群に含まれる第3音(S3)の終了時刻と、次の音刺激群に含まれる第1音(S1)の開始時刻までの間隔は、450±50msとした。
人間の慣れによる脳波への影響を低減するために、同じ周波数の連発音が続かないように設定した。連発音は、6種類の条件ごとに50回ずつ、計300回呈示した。参加者に対して、聞こえてくる音を黙って聞くように教示した。行動反応は求めなかった。
音刺激は、PCからヘッドフォン(HDA200、SENNHEISER製)を介して出力した。音刺激の音圧は、騒音計(LA−1440、ONO SOKKI製)及びカプラ(IEC318、Larson Davis製)を用いて校正した。
次に、脳波を計測するために装着される電極の位置を説明する。図3(a)は、国際10−20法(10−20 System)の電極位置を示す。図3(b)は本実験で電極を装着した電極配置を示す。図3(b)の丸付き数字1、2および3は、電極位置のC3、CzおよびC4をそれぞれ示す。
本願発明者らは、頭皮上のC3、Cz、C4(国際10−20法)に装着したアクティブ電極及び右目上に装着したアクティブ電極(図3(b)の丸付き数字4)と、右マストイドに装着した基準電極との電位差を脳波として計測した。「マストイド」とは、耳の裏の付け根の下部の頭蓋骨の乳様突起である。図3(b)には、マストイドの位置が「Ref」によって示されている。
サンプリング周波数は1000Hz、時定数は1秒とした。オフラインで1−20Hzのバンドパスフィルタをかけた。
S1を起点に、−100msから1000ms(S3呈示後400ms)までの波形を切り出し、左右耳・周波数ごとに加算平均してAEPを求めた。ここで、「−100ms」とは、S1を呈示した時刻より100ミリ秒前の時点をいう。また、いずれかの電極において±80μVを超える電位が含まれた試行は、眼球運動や瞬目によるノイズの影響を含むことが想定されるため、加算平均から除外した。
一方で、脳波に含まれる時間−周波数成分を抽出するために、100Hzにダウンサンプリングした脳波に対してウェーブレット変換を施した。ウェーブレット変換により得られた係数(ウェーブレット係数)は、脳波の時間−周波数の情報に対応する。
マザーウェーブレットには、メキシカンハット(ψ(t)=(1t^2)exp(t^2/2))を用いた。ウェーブレット係数のスケールは1から9の整数とした(2.5−12.5Hzに対応)。
そして、呈示した耳(左耳又は右耳)、及び音刺激の周波数ごとに、ウェーブレット係数を加算平均して、連発音に対する誘発反応(AEP)を求めた。なお、スケールアウトのため主観UCLが正しく測定できなかった1名のデータと、左右耳・周波数ごとのAEP算出において加算回数が15回に満たなかった3名のデータを分析対象から除外した。
このようにして得られた、連発音に対する誘発反応(ウェーブレット特徴量)に対して判別分析(線形判別)を実施することで、UCLを推定することとした。
具体的には、ウェーブレット特徴量は、加算平均後のウェーブレット係数の0msから900msの範囲を、50msの時間窓で分割し、スケール(分割単位)ごとにウェーブレット係数を平均することによって生成した。また、任意の2つのウェーブレット特徴量を組合せるとともに、自分以外の参加者の主観UCLとウェーブレット特徴量との組合せの対応関係を学習し、教師データとして用いた。教師データは、左耳及び右耳に音刺激を呈示して測定した脳波を用いて、音刺激の周波数ごとに作成した。
UCL推定の精度は、平均誤差(分析した全参加者の左右耳・周波数ごとの主観UCLと推定UCLの差の絶対値の平均)によって評価した。平均誤差は、全てのウェーブレット特徴量の組合せに対して求めた(計13041通り)。
3.実験結果
以下、脳波計測実験の結果を説明する。
まず、音圧変化に対する事象関連電位に、不快音圧推定の指標が含まれることを確認するために、主観UCL値と、加算平均した事象関連電位との比較を行った。参加者ごとの主観UCL値の差が、事象関連電位の差として反映されるのであれば、事象関連電位から不快音圧を推定できると考えられる。
ここで、上述のように主観UCL値は、強大音に対するパーソナリティが異なることから、参加者ごとのばらつきを持った指標である。そこで、そのばらつきを低減するために、主観UCL値が大きかった場合と小さかった場合の2つにグループに分けて事象関連電位を加算平均し、比較を行った。具体的には、参加者ごと、周波数ごとの主観UCL値が100dBHL以上であった場合と、100dBHL未満であった場合とに分けて加算平均を実施した。なお、100dBHLは、主観報告実験で得られた全参加者の主観UCL値の中央付近の値である。
図4に、中心部(Cz)の電極と基準電極との電位差に対応する事象関連電位の総加算平均波形を示す。図4に示す波形は、条件毎に、測定した事象関連電位を加算して、平均した波形である。以下、加算して平均した波形を総加算平均波形と表記する。
図4において、太線は、100dBHL以上の主観UCLを有する参加者(UCL高グループ)の総加算平均波形を示しており、破線は、100dBHLより低い主観UCLを有する参加者(UCL低グループ)の総加算平均波形を示している。
S1、S2、S3の呈示タイミング(0ms、300ms、600ms)を縦の実線で明示した。
主観UCLの高低によらず、それぞれの音刺激を呈示してから約100ms後に陰性成分(N1成分)が現れ、約200ms後に陽性成分(P2成分)が現れている。
また、UCL高グループとUCL低グループとの波形の差は、S1に対する波形よりも、S2及びS3に対する波形において顕著である。S2及びS3に対する波形において、UCL高グループは、UCL低グループよりも、小さい振幅を有することがわかる。このことから、事象関連電位(特に、S2およびS3に関連する事象関連電位)がUCL推定の指標となり得ることがわかる。
次に、上記のようにして求めたウェーブレット係数に基づいてUCLを推定する場合を説明する。
図5(a)及び(b)に、UCL高グループとUCL低グループの総加算平均ウェーブレット係数を示す。図5(a)及び(b)において、濃淡により強度(ウェーブレット特徴量の大きさ)が示されており、濃い部分は強度が大きく、明るい部分は強度が小さい。例えば、UCL低グループは、UCL高グループより、S3に対する波形において、5Hz以下の反応が小さいことがわかる。
図6に、上記に説明した線形判別による、脳波の時間−周波数の情報を用いて推定したUCLと、主観UCLとの分布を示す。ここでは、左右耳・刺激周波数を区別せずに得られた結果が示されている。また、各格子点に該当した度数を丸印の大きさで示している。
また、図6には、主観UCLと推定UCLとが等しい場合に対応する破線が示されている。つまり、丸印の中心が破線上にあれば、推定UCLが、主観UCLと一致したことになる。
推定UCLと主観UCLとの間でばらつきが存在するものの、脳波の時間−周波数の情報を用いて、UCLが推定できていることがわかる。平均誤差は、4.9±5.0dBであった。なお、全体の72.6%において、推定誤差が5dB以下であり、実測値と推定値の相関係数はr=0.566であった。
図7(a)は、平均誤差が小さかった上位1%の推定で用いられたウェーブレット特徴量の頻度を示す。図7(b)は、上位1%の推定で用いられた時間窓ごとのウェーブレット特徴量の頻度を示す。
図7(a)及び(b)より、S3呈示後のウェーブレット特徴量がUCL推定に有効であるとわかる。特に、S3呈示後150−200msのウェーブレット特徴量は、上位1%の推定において、15%以上の頻度で利用されている。この区間は、図4に示す総加算平均波形で差が大きかった区間と一致している。
このようにして、本発明者らは、実験によって、下記の2つの知見を得た。
1つ目は、図4からわかるように、UCL高グループとUCL低グループとの事象関連電位の波形の差は、S1に対する波形よりも、S2及びS3に対する波形の方が大きいという点である。
2つ目は、図5及び図7からわかるように、S3の脳波の時間−周波数の情報は、UCL推定に有効であるという点である。
つまり、主観UCLの高低によって、S2およびS3に対する事象関連電位が異なり、主観UCLが低い場合に振幅が小さいことが明らかになった。
また、ウェーブレット特徴量を線形判別した結果、5dB以下の平均誤差でUCLを推定できた。
平均誤差は、S3に対するウェーブレット特徴量(特に、S3呈示後150−200ms)を用いて推定した場合に特に小さくなった。これらの結果は、S3呈示後の事象関連電位にUCLの情報が含まれており、その分析によりUCLが推定できることを示唆している。
実測した主観UCLと推定したUCLとの平均誤差は4.9±5.0dBであった。一般的なオージオメータの最小目盛が5dBであること、実測した主観UCLの2回のばらつきが4.0±4.3dBであることを考慮すれば、聴覚特性の測定においては、許容できる誤差範囲だと考えられる。
S1と比べて、S2およびS3に対する事象関連電位の振幅は減衰した。これは、短い間隔で音刺激を連発呈示した影響である。本発明者らの実験により、その減衰特性は主観UCLの高低により異なり、UCL高グループと比較して、UCL低グループにおいて大きく減衰することが明らかになった。この現象の解釈として、大きな音への耐性が、不応期の持続時間と関係する可能性が挙げられる。UCL低グループでは、脳によるS1の処理が完了せず、S2とS3の分析ができなかった(AEPが抑制された)と推察できる。
一方、S1に対するAEPは、UCLの高低によらず大きな差がなかった。また、上位1%の推定において、S3ほど頻繁に利用されなかった。日常的に耳にする音圧範囲での音刺激に対するN1成分の振幅は、音刺激の音圧の大きさに応じてほぼ線形に増大する。よって、S1に対するAEPは、音刺激の物理的特性を反映し、UCLの情報をほとんど含まない可能性がある。したがって、日常的に耳にする音圧の音刺激を用いて、ユーザの負担が少ないUCL推定を実現するには、複数の音刺激を連続して呈示することが有効であるといえる。
なお、ウェーブレット特徴量だけでなく、P1−N1振幅とN1−P2振幅の情報を加えて判別分析を行っても、同様の傾向が得られるものと考えられる。ここで、N1−P2振幅とは、N1成分の陰性の振幅とP2成分の陽性の振幅の差の絶対値を表している。P1−N1振幅についても同様である。
P1成分、N1成分、及びP2成分を含む事象関連電位は、音刺激呈示からピーク発生までの時間(潜時)と、その成分の振幅の大きさ等で定められるため、時間と周波数の関係に依存すると考えられる。
また、以上に説明した判別分析を行うとき、教師データは、左右耳および周波数によらず作成してもよい。
(周期的ノイズが混入する場合の刺激呈示タイミングの制御方法)
ペースメーカーをつけたユーザの脳波を計測すると、拍動のタイミングで脳波にノイズが発生する。図8(a)は、本発明者らが、ペースメーカー装着者の脳波を記録した結果を示す。脳波は、上述と同様の設定で記録した。
図8(a)は、右マストイドに装着した基準電極と中心部(Cz)に装着した基準電極との電位差に対応する生波形の一部を示す。図8(a)の縦軸は、電位(μV)であり、横軸は、時間(ms)である。
生波形のレベルにおいて、拍動に起因して約50μVの振幅を持つ大きなノイズが混入し、そのノイズは発生開始から約250ms程度持続している様子がみてとれる。ペースメーカーに限らず、その他の電気機器(例えば、リハビリ用電気刺激器や人工弁)により周期的なノイズが生じる場合であっても、同様のノイズが脳波形に現れると考えられる。
図8(b)は、図8(a)の生波形を1階微分した波形である。微分により、拍動に関連するノイズの起点が顕著に検出できることがわかる(図8(b)中の矢印)。
これは、不快音圧推定の精度を悪化させる大きなノイズである。図4に示したように、5μV以下の波形の差を利用して、UCLを推定することが有効である。そのため、刺激とは時間同期しないノイズであっても数十μVのノイズが混入すると、推定誤差が大きくなると考えられる。
このような周期的ノイズの影響を低減する方法として、事象関連電位を求める際の除外試行判定の基準を厳しく設定する方法が考えられる。しかしながら、たとえば、±30μVを超える電位を含む試行を除外した場合、周期的ノイズによってほとんどの試行が加算できず、検査時間が延びるという問題が発生する。また、他の方法として、特開2009−195571号公報には、周期的ノイズのテンプレート波形を作成し、生波形から減算する方法が開示されている。しかしながら、たとえばドライ電極を用いてペーストをつけずに脳波を計測する場合には、頭皮と電極の接触抵抗が時間変動するため、拍動由来のノイズ成分の振幅も変動し、単純にテンプレート波形を引き算するだけでは、ノイズを除去することはできない。
そこで、本発明者らは、音刺激を呈示するタイミングを制御することによって、不快音圧推定の精度悪化を低減する方法について検討した。その結果、周期的ノイズが不快音圧推定に影響しにくい適切なタイミングで音刺激を呈示することによって、高い精度で不快音圧を推定することができることを見出した。なお、本手法は、上述のテンプレート波形を減算する従来方法との併用も可能である。
図9(a)〜(c)は、本開示に係る実施形態による、周期的ノイズと、音刺激タイミングの時間関係とを示す。図9(a)は、周期的ノイズが1Hzで混入する場合(心拍数60)を示し、図9(b)は、周期的ノイズが1.7Hzで混入する場合(心拍数約100)を示し、図9(c)は、周期的ノイズが0.8Hzで混入する場合(心拍数48)を示す。
本発明者らは、ノイズが発生する時刻と、ノイズ発生後に脳波がノイズの影響を受ける時間とに基づいて、音刺激の発生時刻(タイミング)を制御することにより、ノイズの影響を低減して、上述の第2音及び第3音の事象関連電位を測定する方法を見出した。以下、具体的に説明する。
以下、ノイズが発生する時刻を「ノイズ発生時刻」と表記し、ノイズ発生後に脳波がノイズの影響を受ける時間を「ノイズ継続時間」とも表記する。
図9(a)〜(c)に示す太実線は、周期的ノイズが混入するタイミングを示している。図9(a)〜(c)において、周期的ノイズが混入するタイミングは、拍動のタイミングである。
周期的ノイズが混入するタイミングは、例えば、事前に測定した拍動から拍動の周期を求め、求めた周期に基づいて、次の拍動の発生時刻を計算することで求められる。
図9(a)〜(c)に、ノイズ混入後から約250ms程度までの時間DN2を網掛けで示す。ノイズ混入後から約250ms程度までの時間DN2は、上述のように、脳波がノイズの影響を受ける時間(ノイズ継続時間)である。ただし、この約250msという期間は、ノイズ継続時間の一例であり、ノイズ発生源となる電気機器等に依存して変動し得る。
ノイズ継続時間は、周期的ノイズが混入するタイミングから所定時間経過後の時刻までの期間として定められる。なお、周期的ノイズが混入するタイミングの予測誤差として、斜線で示すノイズ混入前の所定時間DN1(例えば、100ms)をノイズ継続時間に含めても良い。
事象関連電位を用いたUCLの推定において、音刺激呈示後の有効な期間にノイズの影響を受けないように音刺激を呈示することで、UCLの推定精度を向上させることができる。
例えば、本発明者らが見出したUCL推定に有効な第2音及び第3音の事象関連電位の測定時間に、ノイズ継続時間が重ならないように、音刺激を呈示する。あるいは、特に有効な第3音目の音刺激(S3)呈示後の事象関連電位の測定時間に、ノイズ継続時間が重ならないように、音刺激を呈示する。これにより、不快音圧の推定精度を向上させることができる。以下、より具体的に説明する。
複数の音刺激を呈示した時の第2音及び第3音の事象関連電位の測定時間を、分析重要区間と考える。図9(a)〜(c)では、分析重要区間DIを、グレーで示す。なお、図9(a)および(b)では、第3音の事象関連電位の測定時間のみを分析重要区間DIとして設定した場合を示している。分析重要区間DIは、音刺激発生後の所定時間として決定することができる。
ノイズ発生時刻からノイズ継続時間DN2が経過した後に、分析重要区間DIが設けられるように(すなわち、ノイズ継続時間DN2と分析重要区間DIとが重ならないように)、音刺激を発生させる。このために、例えば、第1音、第2音、及び第3音のそれぞれの間隔の情報(刺激間の時間情報)と、音刺激発生後の事象関連電位の測定時間(刺激後から測定までの時間)とを予め決定しておく。なお、常に事象関連電位は測定しても良く、測定した脳波から、音刺激発生後の事象関連電位の測定時間の情報を抽出しても良い。
第2音及び第3音の事象関連電位の測定時間を分析重要区間とする場合(例えば、図9(c)に示す場合)には、例えば、下記の示す期間Aと期間Bとが同じ時刻で終わるように、音刺激を発生すればよい。なお、期間Aと期間Bとは必ずしも同じ時刻に終了する必要は無く、期間Aの終了後に期間Bが終了してもよい。
期間Aは、ノイズ発生時刻からノイズ継続時間が経過し終えるまでの期間である。期間Bは、第1音呈示時刻から第2音呈示時刻までの期間である。あるいは、期間Bは、第1音呈示時刻から、第1音についての事象関連電位の測定を終了する時刻までの期間であってもよい。
また、第3音の関連電位の測定時間のみを分析重要区間とする場合(例えば、図9(a)および(b)に示す場合)、期間Bは、例えば、第1音呈示時刻から、第2音呈示後の事象関連電位の測定時間が終了する時刻までの期間であってよい。この場合、期間Bの長さは、第1音及び第2音の音刺激の長さと、第1音と第2音との間隔と、第2音発生後から事象関連電位の測定時間(刺激後から測定までの時間)とを加算した時間となる。
なお、周期的ノイズが1.7Hzよりも短い周期で混入する場合には、ノイズ影響低区間が、分析重要区間の300msよりも短くなる可能性がある。つまり、第2音発生後から事象関連電位の測定時間が、次のノイズ発生時刻と重なる可能性がある。
その場合には、分析重要区間(第2音及び第3音)の中でも最も重要な区間(第3音)であるS3呈示後150から200msの区間が、ノイズ影響低区間に入るように、音刺激を呈示することも可能である。
以下、ノイズ発生時刻の推定について説明する。
図8(b)に、拍動に伴う周期的ノイズが発生したタイミングを示している。計測した脳波を微分した結果が所定の閾値より大きい時刻を、ノイズが発生した時刻として検出することができる。
次の周期的ノイズの発生タイミングは、過去の周期的ノイズの発生間隔から求めることが可能である。
たとえば直前10回の周期的ノイズの発生間隔の平均値を、最終の周期的ノイズ発生タイミングに加えることで求めてもよい。また、発生間隔は、直前の周期的ノイズの発生間隔に重みをつけて平均して求めてもよい。さらに、心拍数がユーザの年齢・性別における一般的なユーザの心拍数よりも高い場合、上述の方法で求めた発生間隔に、所定の減衰係数をかけて補正してもよい。
一般に、拍動に伴う周期的ノイズの場合には、安静にしている場合であれば、時間経過とともに安定する傾向にある。一方で、疾病等の理由により、周期が安定せず、変動するユーザも存在する。そこで、ユーザの拍動による周期的ノイズの間隔の変動の幅や、変動の傾向(増加または減少)を算出し、時間経過によって周期が変動するか否かを判断することも可能である。
時間経過によって周期が所定の幅を超えて変動する場合には、脳波の計測開始を遅らせることで、周期的ノイズの影響を受けないようにすることもできる。
一方、時間経過によって周期が所定の幅よりも変動しない場合には、脳波の計測の時間を変更せず、周期的ノイズの影響を少なくするために、加算回数を増加させる等の処理を追加してもよい。
所定の幅は、一般的なユーザにおいて生じる周期的ノイズの間隔の標準偏差から決めることができる。たとえば、一般的な安定状態のユーザにおいて、周期的ノイズの発生間隔の標準偏差が0.1sの場合には、所定の幅を0.1としてもよい。安定状態であればほぼ全てのユーザがカバーされる標準偏差の3倍以下としてもよい。なお、周期的ノイズの間隔が所定の幅を超えて変動し続ける場合には、次の周期的ノイズ発生の予測誤差のマージンをたとえば200msのように広く設定してもよい。
疾病等の理由ではなく、周期的ノイズの間隔が変動している場合には、周期はいずれ安定すると考えられる。そこで、そのようなユーザにおいて時間経過により周期的ノイズの周期が変動する傾向が見られた場合には、あと、どれくらいの時間で安定した脳波の計測が可能かを判断することも可能である。このような時間の情報を計測者に提示することで、ユーザへの計測の説明や準備の時間を有効に活用することができるようになる。
ここまでにおいては、ノイズ影響低区間と分析重要区間の関係から、音刺激を提示するタイミングのスケジュールを決定する例について述べた。周期的ノイズの周期が短くなることで、ノイズ影響低区間の長さが短くなる。また、安定状態にある一般的なユーザでは、拍動等による周期的ノイズの周期の分散は小さい。そのため、拍動の周波数が高く、周期的ノイズの周期が短くなった場合には、ノイズ影響低区間に分析重要区間を設定するための音刺激タイミングの自由度が低くなる。その結果、図15に示す刺激タイミング1のように、音刺激のタイミングが一定になり、事象関連電位計測における慣れ(habituation)の問題が発生する。そこで、たとえば、図15に示す音刺激タイミング2のように、ある刺激を欠落させたり、図15に示す音刺激タイミング3のようにある音刺激のタイミングを前後どちらかにずらす、というスケジューリング方法も可能である。ただし、音刺激のタイミングをずらした場合には、分析重要区間がノイズ影響低区間から外れることがある。この場合には、該当する測定結果を分析対象から除外するようにしてもよい。
以上に説明した不快音圧の推定を実現するための本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
本発明の一態様である不快音圧推定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、同一の周波数を有し、かつ、所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する出力部と、前記第2音及び前記第3音のうちの少なくとも一方が前記ユーザに呈示されたそれぞれの時刻を起点として定められる所定の分析区間の脳波信号から、前記第2音及び前記第3音の少なくとも一方に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する判定部と、前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出する周期的ノイズ抽出部と、前記周期的ノイズ抽出部が抽出した少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測部と、前記第2音及び第3音の少なくとも一方についての分析区間が、前記予測された次のノイズの発生時刻から所定時間が経過した後に設けられるように、前記音刺激群の出力タイミングを決定する音刺激スケジューリング部とを備える。
前記出力部は、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音を、音圧が順に減少するように出力してもよい。
前記特徴量抽出部は、N1−P2振幅、または、ウェーブレット係数に関する特徴量を抽出してもよい。
前記周期的ノイズ抽出部は、前記ユーザの脳波信号を微分し、前記微分の結果が所定の閾値以上の場合にノイズが発生したものと判断してもよい。
前記ノイズ発生予測部において、過去複数回のノイズ発生タイミングの発生間隔の平均値または重み付け平均値によって、周期的ノイズ発生の周期を算出し、次のノイズ発生タイミングを予測してもよい。
前記音刺激スケジューリング部において、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズ発生タイミングの前100msから後ろ250msの時間帯に、前記分析区間としての前記第3音出力後0msから300msの区間が入らないように、前記音刺激群の出力タイミングが設定されてもよい。
さらに、それぞれが純音で構成される前記第1音、前記第2音および第3音を含む音刺激群の周波数を決定する音刺激群決定部と、所定の閾値以下の音圧を有し、かつ、前記第1音、前記第2音、前記第3音の順に順番に音圧が減少するように、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音の音圧を決定する音刺激音圧決定部とを備え、前記出力部は、前記音刺激群決定部が決定した周波数で、かつ、音刺激音圧決定部が決定した音圧で、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音を出力してもよい。
前記音刺激スケジューリング部は、前記第1音及び前記第2音の時間間隔を参照して、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズが発生する時刻から所定のノイズ継続時間経過後に、前記第2音及び第3音の事象関連電位の計測時間となるように、第1音、第2音、および第3音を出力する時刻を決定してもよい。
前記音刺激スケジューリング部は、前記周期的ノイズが発生した時間間隔が、前記第2音の事象関連電位の計測開始時刻から前記第3音の事象関連電位の計測終了時刻までの時間よりも小さい場合には、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズが発生する時刻から所定のノイズ継続時間経過後に、前記第3音についての分析区間が設けられるように、第1音、第2音、および第3音を出力する時刻を決定してもよい。
本発明の一態様である不快音圧推定装置は、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部が計測した前記ユーザの脳波信号から得られた周期的ノイズの発生時間間隔に基づいて予測された、次のノイズが発生する時刻を受け取り、予め保持する第1音、第2音、および第3音の間隔に基づいて、前記第2音及び第3音の事象関連電位の計測時間が、前記次のノイズ発生時刻から所定のノイズ継続時間後となるように、前記第1音、前記第2音、および前記第3音を出力する時刻を決定する音刺激スケジューリング部と、前記音刺激スケジューリング部で決定した前記第1音、前記第2音、及び前記第3音が出力される時刻を受け取り、前記生体信号計測部が計測したユーザの脳波信号において、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音が出力されたそれぞれの時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出した特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する判定部とを備える。
本発明の別の一態様である不快音圧推定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、前記ユーザに音刺激を呈示する出力部と、音刺激が呈示された時刻に基づいて決定される起点時刻を有する所定の分析区間における脳波信号から、前記音刺激に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記特徴量抽出部で抽出した特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を決定する不快音圧判定部と、前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出する周期的ノイズ抽出部と、前記周期的ノイズ抽出部が抽出した少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測部と、前記ノイズ発生予測部で予測された次のノイズの発生時刻に基づいて、前記音刺激を出力するタイミングを決定する音刺激スケジューリング部とを備える。
本発明の一態様である不快音圧推定方法は、ユーザの脳波信号を計測する第1の生体信号計測ステップと、前記第1の生体信号計測ステップで計測された前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出するノイズ抽出ステップと、前記ノイズ抽出ステップで抽出された少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測ステップと、同一の周波数を有しかつ所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する前に、前記第2音及び第3音の少なくとも一方についての分析区間が、前記予測された次のノイズの発生時刻から所定時間が経過した後に設けられるように、前記音刺激群の出力タイミングを決定する音刺激スケジューリングステップと、前記音刺激スケジューリングステップで決定された出力タイミングで、前記同一の周波数を有し、かつ、所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する出力ステップと、前記出力ステップにおいて前記出力タイミングで前記音刺激群が呈示された時の前記ユーザの脳波信号を計測する第2の生体信号計測ステップと、前記第2の生体信号計測ステップにおいて計測された、前記第2音及び前記第3音のうちの少なくとも一方が前記ユーザに呈示されたそれぞれの時刻を起点として定められる所定の分析区間の脳波信号から、前記第2音及び前記第3音の少なくとも一方に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記特徴量抽出ステップにおいて抽出された特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する不快音圧判定ステップとを含む。
本発明の一態様であるコンピュータプログラムは、不快音圧推定システムの不快音圧推定装置に設けられたコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、ユーザの脳波信号を取得する第1の生体信号計測ステップと、前記第1の生体信号計測ステップで取得された前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出するノイズ抽出ステップと、前記ノイズ抽出ステップで抽出された少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測ステップと、同一の周波数を有しかつ所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する前に、前記第2音及び第3音の少なくとも一方についての分析区間が、前記予測された次のノイズの発生時刻から所定時間が経過した後に設けられるように、前記音刺激群の出力タイミングを決定する音刺激スケジューリングステップと、前記音刺激スケジューリングステップで決定された出力タイミングで、前記同一の周波数を有しかつ所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する出力ステップと、前記出力ステップにおいて前記出力タイミングで前記音刺激群が呈示された時の前記ユーザの脳波信号を取得する第2の生体信号計測ステップと、前記第2の生体信号計測ステップにおいて取得された、前記第2音及び前記第3音のうちの少なくとも一方が前記ユーザに呈示されたそれぞれの時刻を起点として定められる所定の分析区間の脳波信号から、前記第2音及び前記第3音の少なくとも一方に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記特徴量抽出ステップにおいて抽出された特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する不快音圧判定ステップとを実行させる。
(実施形態1)
まず、実施形態1による不快音圧推定システムの構成および動作を説明する。
図10は、本実施形態の不快音圧推定システム100の機能ブロックの構成を示す。
不快音圧推定システム100(以下、「推定システム100」と記述することがある)は、音刺激出力部10と、生体信号計測部50と、不快音圧推定装置1とを備えている。不快音圧推定装置1(以下、「推定装置1」と記述することがある)は、事象関連電位特徴量抽出部55と、不快音圧判定部65と、音刺激群決定部70と、音刺激音圧決定部71と、音刺激生成部75と、結果蓄積DB80と、音刺激スケジューリング部90と、周期的ノイズ抽出部95と、ノイズ発生予測部96とを備えている。なお、以下では、事象関連電位特徴量抽出部55を「特徴量抽出部55」と記述することがあり、不快音圧判定部65を「判定部65」と記述することがあり、音刺激音圧決定部71を「音圧決定部71」と記述することがある。
推定装置1は、音刺激出力部10及び生体信号計測部50と、有線又は無線で接続されている。音刺激出力部10はユーザ5に音刺激を呈示するように構成され、生体信号計測部50はユーザ5の生体信号を計測できるように構成されている。なお、説明の便宜のために、図においてユーザ5のブロックも示されている。
図10に示す推定装置1の構成は一例である。推定装置1は、少なくとも、特徴量抽出部55と、不快音圧判定部65と、音刺激スケジューリング部90とを備えていれば良い。推定装置1は、例えば、音刺激出力部10を含むように構成されていても良い。
本実施形態による推定システム100は、例えば、HTLよりも高くかつ一般的にUCLと評価される音圧よりも低い音圧範囲の純音を単調下降の音圧変化で、周期的ノイズの影響の影響を受けにくい時間帯において3回連発呈示し、第1音から第3音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量を抽出し、その特徴量の変化パターンから不快音圧を測定する。
<利用環境>
図11は、本実施形態の不快音圧推定システム100の構成および利用環境を示す。推定システム100は、図10に示す実施形態1のシステム構成に対応している。推定システム100は、推定装置1と、音刺激出力部10と、生体信号計測部50とを備えている。
<音刺激出力部10>
音刺激出力部10は、ユーザ5に、音刺激を出力する。音刺激出力部10は、例えば、周波数特性に歪みのないヘッドフォンやスピーカであってよい。
音刺激出力部10は、推定装置1(音刺激生成部75)で生成された音刺激データを、ユーザ5に出力する。音刺激出力部10は、左耳及び右耳のそれぞれに、推定装置1(音刺激生成部75)で生成された音刺激を、別個に出力できることが好ましい。以下、音刺激出力部10は、「出力部」とも表記する。
<生体信号計測部50>
生体信号計測部50は、ユーザ5の生体信号を計測する計測器である。本開示においては、生体信号計測部50は、脳波計である。生体信号計測部50は、ユーザ5に装着した探査電極B及び基準電極Aの電位差に対応する脳波を計測する。
探査電極Bは、例えば、図3(a)に示す国際10−20法(10−20System)に準拠する電極位置に配置される。基準電極Aは、例えば、ユーザ5のマストイドに配置される。
なお、事象関連電位の特徴成分のレベル(振幅の大きさ)又は極性(振幅の正負)は、脳波計測用の電極を装着する部位、又は基準電極および探査電極の設定位置に応じて、変わる可能性がある。
しかしながら、以下の説明に基づけば、当業者は、そのときの基準電極および探査電極に応じて適切な改変を行って、事象関連電位の特徴を抽出し、不快音圧の測定を行うことが可能である。そのような改変例は、本発明の範疇である。
脳波データに対して、適切な遮断周波数の周波数フィルタリングを行っても良い。生体信号計測部50は、計測した脳波またはフィルタリングした脳波を推定装置1(周期的ノイズ抽出部95および特徴量抽出部55)に送る。以下、計測した脳波又はフィルタリングした脳波を、「脳波データ」とも表記する。
例えば、脳波データに対して、適切な遮断周波数の周波数フィルタリングを行い、推定装置1(音刺激生成部75)から受けたトリガ情報とともに、推定装置1(周期的ノイズ抽出部95および特徴量抽出部55)に送付する。
周波数フィルタとして、バンドパスフィルタを用いる場合は、たとえば5Hzから15Hzまでを通過させるように遮断周波数を設定してもよい。ユーザ5はあらかじめ脳波計を装着しているものとする。脳波計測用の探査電極はたとえば中心部のCzに装着される。
<不快音圧推定装置1>
推定装置1は、ユーザ5に出力する複数の音刺激の情報を決定する。具体的には、分析重要区間の事象関連電位を計測する時間と、周期的ノイズの時間とが重ならないように、複数の音刺激を出力する時刻を決定する。複数の音刺激を出力する時刻の決定を、「音刺激のスケジューリング」とも表記する。
分析重要区間とは、複数の音刺激に対する事象関連電位のうち、不快音圧の推定に有効な区間である。上記に説明した本発明者らの知見によれば、複数の音刺激が第1音、第2音、及び第3音で構成される場合には、第2音及び第3音に対する事象関連電位(特に、第3音に対する事象関連電位)が得られる期間を分析重要区間に設定することが好ましい。
推定装置1が決定した音刺激が、音刺激出力部10によってユーザ5に呈示される。
推定装置1は、複数の音刺激が呈示された時刻のそれぞれを起点に切り出した事象関連電位の特徴量を抽出する。複数の音刺激に対する事象関連電位のうち、分析重要区間の事象関連電位に基づいて、不快音圧を推定する。不快音圧は、例えば、ユーザの耳(左耳又は右耳)、及び音の周波数毎に推定することが好ましい。詳細は、後述する。
図11に示す推定システム100では、推定装置1と、生体信号計測部50と、音刺激出力部10とが、同じ筐体内に備えられている。
推定システム100は、生体信号計測部50および音刺激出力部10を、推定装置1と別の筐体に備えてもよい。その場合には、生体信号計測部50は、計測した脳波信号を、無線または有線で接続されている推定装置1に送信する。
<不快音圧推定装置1のハードウェア構成>
図12は、本実施形態の不快音圧推定装置1のハードウェア構成の一例を示す。
推定装置1は、CPU30と、メモリ31と、オーディオコントローラ32とで構成される。CPU30と、メモリ31(記録媒体)と、オーディオコントローラ32とは、互いにバス34で接続されており、相互にデータの授受が可能である。推定装置1の各構成要素は、CPU30で構成される。
CPU30は、メモリ31に格納されているコンピュータプログラム35を実行する。コンピュータプログラム35には、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。推定装置1は、このコンピュータプログラム35にしたがって、音刺激の生成、周期的ノイズの抽出および予測、事象関連電位の特徴量抽出、不快音圧判定の判別分析等の、推定システム100の全体を制御する処理を行う。この処理は後に詳述する。
オーディオコントローラ32は、CPU30の命令に従って、それぞれ、呈示すべき音刺激を指定された音圧で音刺激出力部10を介して出力する。
なお、推定装置1は、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。そのようなDSPは、1つの集積回路で上述のCPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32の機能を全て実現することが可能である。
上述のコンピュータプログラム35は、CD−ROM等の記録媒体に記録されて製品として市場に流通され、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送され得る。図12に示すハードウェアを備えた機器(たとえばPC)は、当該コンピュータプログラム35を読み込むことにより、本実施形態による推定装置1として機能し得る。
推定装置1の各機能ブロックは、それぞれ、図12を用いて説明したプログラムが実行されることによって、CPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32によって全体としてその時々で実現される機能に対応している。
以下、推定装置1の各構成要素を説明する。
<音刺激群決定部70>
音刺激群決定部70は、ユーザ5に呈示する複数の音刺激(音刺激群)の情報を決定する。本実施形態において、音刺激群は、少なくとも第1音、第2音、及び第3音を含む。
音刺激群の情報は、音刺激群の周波数を含むことが好ましい。第1音、第2音、及び第3音は、同じ周波数を有することが好ましい。本明細書において、「同じ周波数」とは、完全に同一の周波数を意味するだけでなく、人間が聞き取れる精度以下の範囲で異なる周波数をも意味している。例えば、5Hz以下で異なる周波数は、同じ周波数であるとみなす。
音刺激群の情報は、音刺激を呈示する耳(右耳または左耳)、呈示する音刺激の周波数、音刺激群内の音刺激の持続時間、複数の音刺激間の間隔を含んでいても良い。
音刺激群決定部70は、音刺激群の呈示耳および周波数を、たとえば次の制約に基づいてランダムに決定してもよい。直前の音刺激群と、異なる周波数を有する音刺激群を選択することが好ましい。左右耳はランダムな順序で選択することが好ましい。ただし、左右どちらか一方の耳のみに、音刺激群の呈示を4回以上連続させないことが好ましい。こうすることで、同一耳、周波数の音刺激群の連続呈示による脳波の慣れ(habituation)の影響が低減され、高精度な不快音圧推定が実現できる。
音刺激の持続時間は、聴覚誘発電位が安定して惹起されるように、たとえば25ms以上に設定される。また、連続する音刺激間の間隔は、音刺激の持続時間以上で1秒以下の時間に設定される。たとえば、300msとしてもよいし、200msとしてもよい。
音刺激群決定部70は、決定した、複数の音刺激の情報を、音刺激音圧決定部71又は音刺激生成部75に送信する。
<音刺激音圧決定部71>
音圧決定部71は、所定の音圧以下の範囲で、かつ、順に音圧が単調減少するように、複数の音刺激群の音圧を決定する。
所定の音圧以下の範囲とは、例えば、あらかじめ設定されたユーザ5のHTLより大きく、かつ、一般的にUCLとされるよりも小さい音圧範囲である。
音圧決定部71は、例えば、複数の音刺激群の音圧を、一般的にUCLと評価される音圧(閾値)未満に設定する。つまり、ユーザ5が快適に聞くことができる音圧範囲内に、音刺激群(例えば、第1音から第3音)のそれぞれの音刺激の音圧を設定する。音圧決定部71は、予め所定の閾値を保持しても良い。
例えば、ある周波数におけるHTL値が50dBHLであり、所定の音圧が90dBHLの場合を考える。このとき、第1音の音圧を80dBHL、第2音の音圧を75dBHL、第3音の音圧を70dBHLと決定してもよい。
また、上述のように、「単調下降」とは、次の音が、前の音と同じ音圧、又は前の音より小さい音圧を有することを意味する。音刺激群が第1音、第2音、及び第3音で構成される場合、第1音の音圧>第2音の音圧>第3音の音圧の関係を満たすように、音圧を決定する。
また、音圧決定部71は、音刺激群内の音刺激の間隔を音刺激スケジューリング部90に送る。
<周期的ノイズ抽出部95>
周期的ノイズ抽出部95は、生体信号計測部50からユーザ5の脳波を受取り、周期的ノイズの抽出を行う。
たとえば、周期的ノイズとしてペースメーカーによるノイズを抽出する場合には、生体信号計測部50から受けた脳波を微分し、所定の閾値より大きい脳波が発生した時刻を、周期的ノイズの発生タイミングとして検出することができる。
上記の所定の閾値は、生体信号計測部50のサンプリング周波数、時定数、又はアナログローパスフィルタに基づいて決定されてよい。サンプリング周波数1000Hz、時定数1秒、ローパスフィルタ60Hzの場合には、所定の閾値をたとえば10としてもよい。周期的ノイズ抽出部95は、抽出した周期的ノイズの発生タイミングの情報を、ノイズ発生予測部96に送付する。
<ノイズ発生予測部96>
ノイズ発生予測部96は、脳波に混入する周期的ノイズが次に発生するタイミングを予測する。次の周期的ノイズの発生タイミングは、過去の周期的ノイズの発生間隔から求めることが可能である。たとえば直前10回の周期的ノイズの発生間隔の平均値を、最終の周期的ノイズ発生タイミングに加えることで求めてもよい。
また、ノイズ発生間隔は、直前の周期的ノイズの発生間隔に重みをつけて平均して求めてもよい。さらに、心拍数がユーザの年齢・性別における一般的なユーザの心拍数よりも高い場合、上述の方法で求めた発生間隔に、所定の減衰係数をかけて補正してもよい。そして、予測した次の周期的ノイズ発生タイミング(時刻)を、音刺激スケジューリング部90に送付する。
<音刺激スケジューリング部90>
音刺激スケジューリング部90は、分析重要区間と、周期的ノイズの発生期間(ノイズ継続時間)とが重ならないように、複数の音刺激を呈示する時刻を決定する。
分析重要区間は、複数の音刺激が第1音、第2音、及び第3音で構成される場合には、例えば、第2音及び第3音呈示後の時間帯(第2音及び第3音に対する事象関連電位が計測される期間)である。分析重要区間は、第2音及び第3音の出力後の所定期間を分析重要区間としても良いし、第2音及び第3音を出力してから所定時間経過後の時刻を開始点とする所定期間を分析重要区間としても良い。
音刺激スケジューリング部90は、第1音、第2音、及び第3音の各刺激の間隔と、第2音、及び第3音の出力後の所定時間とを参照して、分析重要区間を決定しても良い。また、第1音を出力後からの第2音、及び第3音の事象関連電位の計測時間までの時間に相当する所定時間を予め保有することにより、分析重要区間を決定してもよい。
音刺激スケジューリング部90は、例えば、周期的ノイズの発生間隔、周期的ノイズの発生時刻、及びノイズの継続時間の情報を取得し、分析重要区間がノイズの発生時刻からノイズ継続時間と重ならないように、複数の音刺激を出力する時刻を決定する。
ノイズ発生時刻からノイズ継続時間を経過するまでの時間を「ノイズ区間」とも表記する。ノイズ発生時刻からノイズ継続時間を経過後、次のノイズが発生するまでの時間を、「ノイズ影響低区間」とも表記する。
上記の分析重要区間のうちでも、特に第3音の事象関連電位の計測時間をノイズ区間と重ならないようにすることが好ましい。第2音及び第3音の事象関連電位の計測時間の合計がノイズ影響低区間よりも長い場合、音刺激スケジューリング部90は、第2音ではなく第3音の事象関連電位の計測時間がノイズ区間と重ならないように、複数の音刺激を出力する時刻を決定してもよい。
以下、複数の音刺激を呈示する時刻の決定方法の一例を説明する。
音刺激スケジューリング部90は、音圧決定部71から音刺激群内の刺激間隔を受け取り、また、ノイズ発生予測部96から、次に周期的ノイズが発生する時刻の情報を受け取る。
音刺激スケジューリング部90は、次の音刺激群の第3音呈示後0msから300msの時間帯(分析重要区間)が、ノイズ影響低区間になるように音刺激の呈示タイミングを決定する。
ノイズ影響低区間は、たとえば、最新の周期的ノイズ発生タイミングから250ms経過後の時点から、次の周期的ノイズ発生タイミングの100ms前の時点までの期間に設定されてもよい。次の周期的ノイズ発生タイミングは、ノイズ発生予測部96によって予測され、音刺激スケジューリング部90に通知される。
なお、周期的ノイズが1.7Hzよりも高い周波数(短い周期)で混入する場合には、ノイズ影響低区間が、分析重要区間の300msよりも短くなる可能性がある。その場合には、分析重要区間の中でも最も重要な区間であるS3呈示後150から200msの区間が、ノイズ影響低区間に入るように、音刺激の呈示タイミングを決定する。
つまり、周期的ノイズの発生間隔からノイズ継続時間を引いた時間が、分析重要区間よりも小さい場合には、分析重要区間のうち優先する区間を、ノイズ区間と重ならないように、音刺激を発生する時刻を決定する。
なお、図9(a)〜(c)を用いて説明した内容も、音刺激スケジューリング部90が複数の音刺激を呈示する時刻を決定する一例である。音刺激スケジューリング部90は、決定した第1音から第3音の音刺激呈示タイミングを、音刺激生成部75に送る。
<音刺激生成部75>
音刺激生成部75は、音圧決定部71から受け取った、音刺激群の呈示耳・周波数、音刺激群内の音刺激の持続時間・呈示間隔・音圧の情報に基づいて、音刺激データを生成する。各音刺激は、たとえば、立ち上がりおよび立ち下がりが3msのトーンバースト音であってよい。そして、音刺激スケジューリング部90から受け取った音刺激群の呈示タイミングで、音刺激出力部10を介してユーザ5に音刺激を出力する。また、音刺激を出力したタイミングで、生体信号計測部50にトリガ信号を出力する。なお、音刺激生成部75は、必ずしも生体信号計測部50にトリガ信号を出力しなくてもよく、音刺激出力部10に対して生成した音刺激データを送るだけであっても良い。
音刺激データは、たとえば、一つ音刺激群に対して、所定の時間間隔で音圧変化のある複数の音刺激を含む音刺激データを一つ作成してもよい。その場合、生体信号計測部50に送付するトリガ信号は、第1音の呈示タイミングだけでもよい。
なお、音刺激生成部75は入力装置を含んでいてもよいし、あるいは、外部の入力装置に接続されていても良い。この場合、ユーザ5又はユーザ5の聴力検査者は、入力装置を用いて所望の情報を入力することができ、音刺激生成部75は、入力装置から受け取った情報を用いて音刺激を生成することができる。
<事象関連電位特徴量抽出部55>
特徴量抽出部55は、生体信号計測部50から受け取った脳波およびトリガ情報に基づいて、トリガ情報を起点にして定められる所定区間(たとえば第1音呈示前100msから第3音呈示後400msの区間)の事象関連電位の波形を切り出す。また、音圧決定部71から受け取った音刺激の情報に基づいて、第1音から第3音に対するウェーブレット係数に関する特徴量をそれぞれ算出する。
算出した特徴量と、音刺激の情報(左右耳、周波数、音圧等)とを、不快音圧判定部65に送付する。ウェーブレット係数に関する特徴量は、たとえば周波数軸および時間軸のそれぞれで所定範囲を平均した値として求められてもよい。たとえば、周波数軸では5Hzから15Hzの周波数幅で平均が取られ、時間軸では50msの時間幅で平均が取られてもよい。たとえば、P2成分に関連するウェーブレット特徴量を求めるために、音刺激呈示の時刻から音刺激呈示後300ms以下の時間範囲の生体信号を用いても良い。特徴量算出のために平均する周波数軸および時間軸の幅は、不快音圧が推定できる範囲において、任意に設定されてよい。すなわち、周波数幅は5Hzから15Hzに限られず、時間幅は50msに限られない。これらよりも細かくしてもよいし、粗くしてもよい。
なお、特徴量抽出部55は、生体信号計測部50から受け取った事象関連電位から、第2音と第3音に対するN1−P2振幅に関連する特徴量をそれぞれ算出してもよい。N1−P2振幅は、N1振幅とP2振幅の差の絶対値として求めてもよい。たとえば、N1振幅は、第2音および第3音のそれぞれの音刺激呈示後50msから150msにおける区間平均電位としてもよいし、ピーク振幅としてもよい。たとえばP2振幅は、それぞれの音刺激呈示後150msから250msにおける区間平均電位としてもよいし、ピーク振幅としてもよい。
<不快音圧判定部65>
不快音圧判定部65は、特徴量抽出部55が抽出した第1音、第2音、及び第3音の特徴量と、予め特徴量と不快音圧の値とを対応付けた所定の基準を参照して、ユーザ5の不快音圧を判断する。なお、判定部65は、分析重要区間に測定した事象関連電位の特徴と、所定の基準を参照して、ユーザ5の不快音圧を判断しても良い。
具体的には、判定部65は、特徴量抽出部55から受け取った、第1音から第3音それぞれの時間−周波数情報(例えば、ウェーブレット係数)に関する特徴量を用いて、不快音圧を判定する。判定部65は、あらかじめ用意した時間−周波数情報(例えば、ウェーブレット特徴量)と所定の基準とを利用して、線形判別を実施してもよい。
所定の基準とは、予め特徴量と不快音圧の値とを対応付けた情報を意味する。所定の基準は、ウェーブレット特徴量と不快音圧の値とを対応付けた表であっても良いし、所定の式であっても良い。判定部65は、予め所定の基準を保持する。
所定の基準とは、例えば、主観UCL値の教師データである。教師データは、少なくとも2人以上の他者に対して、あらかじめ上述の主観報告実験および脳波計測実験を実施し測定した主観UCL値と時間−周波数情報(例えば、ウェーブレット特徴量)とから生成する。
ここで、教師データを生成する際の脳波計測実験の音圧および音刺激数に関する音刺激条件は、音圧決定部71で決定した刺激音圧の変化パターンと同一である必要がある。教師データの保持方法は、たとえば図13に示すように、左右耳ごと、周波数ごととしてもよい。その場合、特徴量抽出部55から受けた音刺激の左右耳と周波数の情報に基づいて、不快音圧推定に用いる教師データを、測定対象の左右耳および周波数と、教師データの左右耳および周波数が一致するように切り替えて用いてもよい。また、教師データは、ユーザの難聴の症状に合わせて切り替えてもよい。たとえば伝音性難聴と感音性難聴のような大きな分類でそれぞれ教師データを用意し、切り替えてもよい。また、低音漸傾型や高音漸傾型などのオージオグラムのパターンごとに教師データを用意し、切り替えてもよい。不快音圧判定部65は、判定した不快音圧を結果蓄積DB80に送付する。
<結果蓄積DB80>
結果蓄積DB80は、不快音圧判定部65から受けた不快音圧を、音刺激群決定部70から受けた音刺激群の情報である、左右耳、周波数ごとに保存する。図13は、結果蓄積DB80におけるデータ蓄積の例である。図13では、左右耳ごと、周波数ごとの不快音圧を蓄積する場合を例示している。
<不快音圧推定システム100の処理>
次に、図14を参照しながら図10の推定システム100において行われる処理手順を説明する。図14は、推定システム100において行われる処理の手順を示すフローチャートである。
<ステップS101>
音刺激群決定部70は、ユーザ5に呈示する音刺激の持続時間および間隔を決定する。音刺激の持続時間は、聴覚誘発電位が安定して惹起されるよう、たとえば25ms以上に設定する。また、刺激間間隔は、音刺激の持続時間以上で1秒以下の時間に設定する。たとえば、300msとしてもよいし、200msとしてもよい。そして、音刺激音圧決定部71を介して音刺激スケジューリング部90に送付する。
<ステップS102>
生体信号計測部50は、生体信号としてユーザ5の脳波を計測する。そして、脳波データに対して適切な遮断周波数の周波数フィルタリングを行い、ノイズ抽出部95および、特徴量抽出部55に送る。なお、脳波は、後述するステップS115が終了するまで計測され続け、この間、脳波データがノイズ抽出部95および特徴量抽出部55に送られるものとする。また、生体信号計測部50にトリガ情報が入力された場合には、特徴量抽出部55にはトリガ情報も送られる。
<ステップS103>
周期的ノイズ抽出部95は、生体信号計測部50からユーザ5の脳波を受け取り、周期的ノイズの抽出を行う。たとえば、周期的ノイズとしてペースメーカーによるノイズを抽出する場合には、生体信号計測部50から受けた脳波を微分し、所定の閾値より大きい場合に周期的ノイズが発生したと判断し、周期的ノイズの発生タイミングを検出する。所定の閾値は、生体信号計測部50におけるサンプリング周波数や時定数、アナログローパスフィルタによって決定できる。サンプリング周波数1000Hz、時定数1秒、ローパスフィルタ60Hzの場合には、所定の閾値をたとえば10としてもよい。そして、抽出した周期的ノイズの発生タイミングの情報を、ノイズ発生予測部96に送る。
<ステップS104>
ノイズ発生予測部96は、脳波に混入する周期的ノイズが次に発生するタイミングを予測する。次の周期的ノイズの発生タイミングは、過去の周期的ノイズの発生間隔から求めることが可能である。たとえば直前10回の周期的ノイズの発生間隔の平均値を、最終の周期的ノイズ発生タイミングに加えることで求めてもよい。また、発生間隔は、直前の周期的ノイズの発生間隔に重みをつけて平均して求めてもよい。さらに、心拍数がユーザの年齢・性別における一般的なユーザの心拍数よりも高い場合、上述の方法で求めた発生間隔に、所定の減衰係数をかけて補正してもよい。そして、予測した次の周期的ノイズ発生タイミング(時刻)を、音刺激スケジューリング部90に送る。
<ステップS105>
音刺激スケジューリング部90は、音圧決定部71から、音刺激群内の刺激間隔を受け取り、ノイズ発生予測部96から、次に周期的ノイズが発生する時刻の情報を受け取る。音刺激スケジューリング部90は、次の音刺激群の第2音および第3音(あるいは第3音のみ)が呈示された後0msから300msの時間帯(分析重要区間)が、ノイズ影響低区間になるように音刺激の呈示タイミングを決定する。ノイズ影響低区間は、たとえば最新の周期的ノイズ発生タイミングから250msより後で、ノイズ発生予測部96から受けた次の周期的ノイズ発生タイミングの100ms前までであってもよい。なお、周期的ノイズが1.7Hzよりも短い周期で混入する場合には、ノイズ影響低区間が、分析重要区間の300msよりも短くなる可能性がある。その場合には、分析重要区間の中でも最も重要な区間であるS3呈示後150から200msの区間が、ノイズ影響低区間に入るように、音刺激の呈示タイミングを決定する。そして、音刺激スケジューリング部90は、決定した第1音から第3音の音刺激呈示タイミングを、音刺激生成部75に送る。
<ステップS106>
音刺激群決定部70は、音刺激群の呈示耳・周波数を決定する。呈示耳および周波数は、たとえば次の制約に基づいてランダムに決定されてもよい。直前の音刺激群と同じ周波数の音刺激は選択しない。左右耳はランダムな順序で選択する。ただし、左右どちらか一方の耳への音刺激群の呈示を4回以上連続させない。
<ステップS107>
音刺激音圧決定部71は、音刺激群決定部70から音刺激群の呈示耳・周波数、音刺激群内の音刺激の持続時間・刺激間間隔の情報を受け取る。音刺激音圧決定部71は、また、あらかじめ設定されたHTLよりも高く、一般的にUCLと評価される音圧よりも低い音圧範囲に音圧を有し、かつ、連続する音刺激において音圧が単調下降するように、音刺激群の音圧を決定する。たとえば、ある周波数におけるHTL値が50dBHLであった場合には、第1音の音圧を80dBHL、第2音の音圧を75dBHL、第3音の音圧を70dBHLと決定してもよい。また、第1音の音圧を80dBHL、第2音の音圧を70dBHL、第3音の音圧を60dBHLとしてもよい。決定した音刺激群内の音刺激ごとの音圧は、音刺激群決定部70から受け取った情報とともに、音刺激生成部75に送られる。
<ステップS108>
音刺激生成部75は、音刺激音圧決定部71から受け取った音刺激の情報に基づいて音刺激データを生成する。各音刺激は、たとえば、立ち上がりおよび立ち下がりが3msであるトーンバースト音であってよい。
<ステップS109>
音刺激生成部75は、音刺激スケジューリング部90から受け取った音刺激の呈示タイミングにおいて、音刺激出力部10を介してユーザに音刺激を出力する。音刺激生成部75は、また、このタイミングで生体信号計測部50にトリガ信号を出力する。音刺激生成部75は、たとえば1つの音刺激群に対して1つの音刺激データを作成してもよい。このようにして作成された1つの音刺激データには、所定の時間間隔で音圧変化のある複数の音刺激に対応するデータが含まれる。その場合、生体信号計測部50に送付するトリガ信号は、第1音の呈示タイミングだけでもよい。
<ステップS110>
事象関連電位特徴量抽出部55は、生体信号計測部50から受けた脳波およびトリガ情報に基づき、トリガ情報を起点に所定区間(たとえば第1音呈示前100msから第3音呈示後400msの区間)の事象関連電位を切り出す。
ステップS111において、特徴量抽出部55は、音圧決定部71から受けた音刺激の内容に応じて、第1音から第3音に対するウェーブレット係数に関する特徴量をそれぞれ算出する。
<ステップS112>
特徴量抽出部55は、ステップS107において算出したウェーブレット係数を、音刺激音圧決定部71から受けた音刺激の情報に基づいて、左右耳ごと、周波数ごとに加算平均する。
<ステップS113>
特徴量抽出部55は、ステップS105で呈示された音刺激群の音刺激に対する加算平均回数が所定回数に到達したか否かを判定する。加算平均回数が所定回数以下の場合には処理はステップS103へ戻り、音刺激群の呈示を繰り返す。加算平均回数が所定回数以上の場合には、事象関連電位特徴量抽出部55は、加算平均したウェーブレット係数に関する特徴量を、不快音圧判定部65に送る。その後、処理はステップS109へと進む。所定回数とは、たとえば20回である。なお、「20回」は、事象関連電位を計測する分野において多く採用される加算回数であるが、これは一例であり、任意の回数が選択されても良いことは言うまでもない。
<ステップS114>
不快音圧判定部65は、事象関連電位特徴量抽出部55から受け取った、第1音から第3音それぞれのウェーブレット係数に関する特徴量を用いて、ユーザ5の不快音圧を判断する。不快音圧判定は、あらかじめ用意した他者のウェーブレット特徴量と主観UCL値の教師データとを利用した線形判別によって実現することができる。不快音圧推定に用いる教師データは、測定対象の左右耳および周波数と、教師データの左右耳および周波数が一致するように切り替えて用いてもよい。また、教師データは、ユーザの難聴の症状に合わせて切り替えてもよい。たとえば伝音性難聴と感音性難聴のような大きな分類でそれぞれ教師データを用意し、切り替えてもよい。また、低音漸傾型や高音漸傾型などのオージオグラムのパターンごとに教師データを用意し、切り替えてもよい。
<ステップS115>
結果蓄積DB80は、ステップS105で呈示された音刺激群の、左右耳、周波数ごとに分けて、不快音圧判定部65から受け取った不快音圧の判定結果の情報を蓄積する。
本実施形態の不快音圧推定システム100によれば、同一周波数で単調下降の音圧変化の3連発音を、周期的ノイズが推定精度に及ぼす影響が低いタイミングで呈示し、第1音から第3音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量が抽出される。また、抽出された特徴量の変化パターンから不快音圧が推定される。これにより、ペースメーカーを装着したユーザであっても、補聴器装用時にユーザが不快音圧を感じない、補聴器フィッティングが実現できる。
(その他実施形態)
なお、実施形態1においては、単調下降の音圧変化の3連発音を呈示するタイミングを周期的ノイズの影響を受けないように制御し、脳波の分析によりユーザの不快音圧を測定する場合について説明した。しかしこれは実施形態の一例に過ぎない。本明細書で述べた、分析重要区間をノイズ影響低区間に設定するという思想に基づいて、他の目的で事象関連電位の他成分を計測する際の刺激タイミングをスケジューリングするように種々の改変が可能である。たとえば、事象関連電位のN1成分の有無により音刺激が聞こえたかどうかを判定する場合には、N1成分が惹起される潜時80ms−150msが分析重要区間である。その分析重要区間が、ノイズ影響低区間に含まれるように音刺激の呈示タイミングを設定すればよい。
実施形態1の説明では、生体信号計測部50は、音刺激生成部75からのトリガ情報を起点にして予め定められた範囲の事象関連電位を切り出し、事象関連電位特徴量抽出部55に送信するとした。しかしながら、この処理は一例である。他の処理として、たとえば、生体信号計測部50は継続的に脳波を計測し、特徴量抽出部55が必要な事象関連電位の切り出しおよびベースライン補正を行ってもよい。当該構成であれば、音刺激生成部75は生体信号計測部50にトリガ情報を送信する必要はなくなり、特徴量抽出部55にトリガ信号を直接送信すればよい。
また、実施形態1においては、不快音圧推定の結果は、結果蓄積DB80に蓄積されるとしたが、蓄積しなくてもよい。たとえば結果蓄積DB80を不快音圧推定装置1の外部に設ける場合には、不快音圧判定部65の各判定結果を単に出力すればよい。各判定結果は、不快音圧に関する情報として利用され得る。
(補聴器の調整について)
補聴器の基本機能は音の増幅である。その増幅量(利得)は、聴覚特性の個人差により、ユーザごとに設定する必要がある。そこで、補聴器を使い始める前には,補聴器の周波数ごとの利得を設定する「フィッティング」を行う。適切なフィッティングを実現するためには、まずユーザの聴覚特性の正確な測定が必須である。
聴覚特性の検査では、まず最小可聴閾値(hearing threshold level:HTL)が、つぎに不快レベル(uncomfortable level:UCL)が調べられる。HTLとUCLは、補聴器から出力する音圧のダイナミックレンジを決定するために利用される。難聴判断に用いられるHTLは、オージオメータを用いて周波数ごとに音が聞こえたかどうかを測定する比較的簡単な検査である。HTLを周波数(たとえば250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz)ごとにプロットした図は、オージオグラムと呼ばれる。他方、UCLは、不快になる大きな音を出して測定する必要があり,心理的なストレス・疲労を招くため、HTLから周波数ごとに計算で求められる場合が多い。なお、主観報告によりUCLを測定する場合には、オージオメータを用いて、連続音または断続音を、上昇法(段々と音圧レベルを上げる)を用いてユーザに呈示し、うるさすぎて長時間聞いていられない音圧であるか否かをユーザに報告させ、ユーザが報告した音圧を、UCLとする。
「主観報告」とは、ユーザが音を聞いた後に、ユーザがその音に対する主観的な感想を報告することである。
補聴器の周波数ごと、入力音の音圧ごとの利得は、上述の聴覚特性とフィッティング理論と呼ばれる関数を用いて決定される。現在、全てのユーザに対して汎用的に利用できるフィッティング理論はなく、いくつかのフィッティング理論が混在している。たとえばハーフゲイン法は、各周波数の挿入利得をその周波数のHTLの半分にする。Berger法は、会話音声の周波数帯域とレベルを考慮して1000Hzから4000Hzの増幅をやや増強する。POGO法は、ハーフゲイン法を基礎とし語音情報が少なく騒音成分が多い250Hzと500Hzの利得をそれぞれ10dB、5dB減じる。NAL−R法は、言葉の長時間音響分析周波数が快適レベルに入るように増幅する。
不適切なフィッティングの例として、(1)音圧の増幅量が不足している場合、または、(2)音圧の増幅量が大きすぎる場合がある。たとえば、音圧の増幅量が不足している場合、ユーザは音声が聞き分けられない。この場合には、上述の補聴器を利用する目的が達成できない。また、音圧の増幅量が大きすぎる場合、ユーザは音声の聞き分けはできるが、音声をうるさく感じる。その結果、ユーザは、補聴器を長時間使用できない。そこで、上記(1)または(2)のいずれにも該当しないように、補聴器のフィッティングを行う必要がある。特に(2)は、補聴器は、ユーザに対して、必要以上に大きい音圧を有する音声を呈示する可能性がある。その結果、大きい音圧を有する音声により、ユーザの耳を傷つける危険性があった。
(2)の問題を回避するためには、UCLを正しく求める必要があるが、HTLから計算で求めたUCLには、個人差が反映されず、個人差に起因する誤差が含まれた。また、主観報告によりUCLを測定する方法もあるが、UCLの基準が個人または言語表現の影響を受けて変動するため精度が低かった。
これに対して、以上に説明した本開示の不快音圧推定システムの一実施形態によれば、強大な音刺激を呈示することなく、かつ、周期的なノイズを発生する装置を装着しているユーザであっても、ユーザの不快音圧を良好な精度で推定できる。したがって、補聴器のフィッティングを適切に行うことができる。
本開示の不快音圧推定システムは、補聴器店や家庭などでの補聴器の調整等に有用である。
1 不快音圧推定装置 (推定装置)
5 ユーザ
10 音刺激出力部
50 生体信号計測部
55 事象関連電位特徴量抽出部 (特徴量抽出部)
65 不快音圧判定部 (判定部)
70 音刺激群決定部
71 音刺激音圧決定部 (音圧決定部)
75 音刺激生成部
80 結果蓄積DB
90 音刺激スケジューリング部
95 周期的ノイズ抽出部
96 ノイズ発生予測部
100 不快音圧推定システム (推定システム)

Claims (12)

  1. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、
    同一の周波数を有し、かつ、所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する出力部と、
    前記第2音及び前記第3音のうちの少なくとも一方が前記ユーザに呈示されたそれぞれの時刻を起点として定められる所定の分析区間の脳波信号から、前記第2音及び前記第3音の少なくとも一方に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
    前記特徴量抽出部で抽出された前記特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する判定部と、
    前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出する周期的ノイズ抽出部と、
    前記周期的ノイズ抽出部が抽出した少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測部と、
    前記第2音及び第3音の少なくとも一方についての分析区間が、前記予測された次のノイズの発生時刻から所定時間が経過した後に設けられるように、前記音刺激群の出力タイミングを決定する音刺激スケジューリング部と
    を備える不快音圧推定システム。
  2. 前記出力部は、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音を、音圧が順に減少するように出力する、請求項1に記載の不快音圧推定システム。
  3. 前記特徴量抽出部は、N1−P2振幅、または、ウェーブレット係数に関する特徴量を抽出する、請求項1または2に記載の不快音圧推定システム。
  4. 前記周期的ノイズ抽出部は、前記ユーザの脳波信号を微分し、前記微分の結果が所定の閾値以上の場合にノイズが発生したものと判断する、請求項1から3のいずれかに記載の不快音圧推定システム。
  5. 前記ノイズ発生予測部において、過去複数回のノイズ発生タイミングの発生間隔の平均値または重み付け平均値によって、周期的ノイズ発生の周期を算出し、次のノイズ発生タイミングを予測する、請求項1から4のいずれかに記載の不快音圧推定システム。
  6. 前記音刺激スケジューリング部において、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズ発生タイミングの前100msから後ろ250msの時間帯に、前記分析区間としての前記第3音出力後0msから300msの区間が入らないように、前記音刺激群の出力タイミングが設定される、請求項1から5のいずれかに記載の不快音圧推定システム。
  7. それぞれが純音で構成される前記第1音、前記第2音および第3音を含む音刺激群の周波数を決定する音刺激群決定部と、
    所定の閾値以下の音圧を有し、かつ、前記第1音、前記第2音、前記第3音の順に順番に音圧が減少するように、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音の音圧を決定する音刺激音圧決定部とを備え、
    前記出力部は、前記音刺激群決定部が決定した周波数で、かつ、音刺激音圧決定部が決定した音圧で、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音を出力する、請求項1から6のいずれかに記載の不快音圧推定システム。
  8. 前記音刺激スケジューリング部は、前記第1音及び前記第2音の時間間隔を参照して、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズが発生する時刻から所定のノイズ継続時間経過後に、前記第2音及び第3音の事象関連電位の計測時間となるように、第1音、第2音、および第3音を出力する時刻を決定する、請求項1から7のいずれかに記載の不快音圧推定システム。
  9. 前記音刺激スケジューリング部は、前記周期的ノイズが発生した時間間隔が、前記第2音の事象関連電位の計測開始時刻から前記第3音の事象関連電位の計測終了時刻までの時間よりも小さい場合には、前記ノイズ発生予測部が予測した次のノイズが発生する時刻から所定のノイズ継続時間経過後に、前記第3音についての分析区間が設けられるように、第1音、第2音、および第3音を出力する時刻を決定する、請求項1に記載の不快音圧推定システム。
  10. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部が計測した前記ユーザの脳波信号から得られた周期的ノイズの発生時間間隔に基づいて予測された、次のノイズが発生する時刻を受け取り、予め保持する第1音、第2音、および第3音の間隔に基づいて、前記第2音及び第3音の事象関連電位の計測時間が、前記次のノイズ発生時刻から所定のノイズ継続時間後となるように、前記第1音、前記第2音、および前記第3音を出力する時刻を決定する音刺激スケジューリング部と、
    前記音刺激スケジューリング部で決定した前記第1音、前記第2音、及び前記第3音が出力される時刻を受け取り、前記生体信号計測部が計測したユーザの脳波信号において、前記第1音、前記第2音、及び前記第3音が出力されたそれぞれの時刻を起点とする、前記脳波信号の事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
    前記特徴量抽出部で抽出した特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する判定部と
    を備える、不快音圧推定装置。
  11. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、
    前記ユーザに音刺激を呈示する出力部と、
    音刺激が呈示された時刻に基づいて決定される起点時刻を有する所定の分析区間における脳波信号から、前記音刺激に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
    前記特徴量抽出部で抽出した特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を決定する不快音圧判定部と、
    前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出する周期的ノイズ抽出部と、
    前記周期的ノイズ抽出部が抽出した少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測部と、
    前記ノイズ発生予測部で予測された次のノイズの発生時刻に基づいて、前記音刺激を出力するタイミングを決定する音刺激スケジューリング部と
    を備える、不快音圧推定システム。
  12. 不快音圧推定システムの不快音圧推定装置に設けられたコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、
    ユーザの脳波信号を取得する第1の生体信号計測ステップと、
    前記第1の生体信号計測ステップで取得された前記ユーザの脳波信号から、周期的ノイズに含まれる複数のノイズのうちの少なくとも1つのノイズの発生時刻を抽出するノイズ抽出ステップと、
    前記ノイズ抽出ステップで抽出された少なくとも1つのノイズの発生時刻から、次のノイズの発生時刻を予測するノイズ発生予測ステップと、
    同一の周波数を有しかつ所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する前に、前記第2音及び第3音の少なくとも一方についての分析区間が、前記予測された次のノイズの発生時刻から所定時間が経過した後に設けられるように、前記音刺激群の出力タイミングを決定する音刺激スケジューリングステップと、
    前記音刺激スケジューリングステップで決定された出力タイミングで、前記同一の周波数を有しかつ所定の範囲内の音圧を有する第1音、第2音、及び第3音を含む音刺激群を前記ユーザに呈示する出力ステップと、
    前記出力ステップにおいて前記出力タイミングで前記音刺激群が呈示された時の前記ユーザの脳波信号を取得する第2の生体信号計測ステップと、
    前記第2の生体信号計測ステップにおいて取得された、前記第2音及び前記第3音のうちの少なくとも一方が前記ユーザに呈示されたそれぞれの時刻を起点として定められる所定の分析区間の脳波信号から、前記第2音及び前記第3音の少なくとも一方に関連する事象関連電位の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
    前記特徴量抽出ステップにおいて抽出された特徴量に基づいて、前記音刺激群の周波数に対する不快音圧を判定する不快音圧判定ステップと
    を実行させる、コンピュータプログラム。
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