JP5215507B1 - 不快音圧決定システム、その方法およびそのプログラム、補聴器調整システムおよび不快音圧決定装置 - Google Patents

不快音圧決定システム、その方法およびそのプログラム、補聴器調整システムおよび不快音圧決定装置 Download PDF

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Abstract

より短時間でユーザが不快に感じる音圧レベル(UCL)を客観的に決定する。
不快音圧決定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成する音データ生成部と、音データに基づいて、複数の音をユーザに呈示する出力部と、複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、脳波信号の事象関連電位に基づいて、事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、特徴量抽出部によって抽出された特徴量に対応する音圧を、周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部とを備えている。

Description

本願は、純音を快適に聴取できたか否かを決定するための技術に関する。より具体的には、本願は、純音を聴取した時に、不快に感じる大きさの音圧を決定する不快音圧決定システム等に関する。
近年、社会の高齢化に伴い、老人性の難聴者が増加している。大音量の音楽を長時間聴く機会が増えたなどの影響により、音響性の難聴を有する若年者も増加している。また、補聴器の小型化・高性能化に伴い、補聴器を利用することに対して、ユーザが有する抵抗が少なくなってきている。そのため、補聴器を利用するユーザが増加している。
難聴を有するユーザは、特定の周波数を有する音を聞き取ることが難しい。この特定の周波数は、ユーザ毎に異なる。補聴器は、この特定周波数の音信号の振幅を増幅する。これにより、ユーザが音を聞き取りやすくする。
補聴器は、ユーザごとの聴力低下の度合いに応じて、音を増幅する量を変更することを求められる。そのため、補聴器の利用を開始する前に、ユーザごとの聴力に合わせて、音の増幅量を調整する「フィッティング」を行うことが必要である。
フィッティングの目的は、補聴器の出力する音圧を、MCL(most comfortable level)にすることである。ここで、補聴器の出力する音圧とは、音として人間が知覚することができる、大気の圧力変動である。MCLとは、ユーザが快適に聞き取ることができる音圧である。補聴器は、音の周波数毎に、出力する音圧をMCLすることが求められる。
不適切なフィッティングの例として、(1)音圧の増幅量が不足している場合、または、(2)音圧の増幅量が大きすぎる場合がある。たとえば、音圧の増幅量が不足している場合、ユーザは音声が聞き分けられない。この場合には、上述の補聴器を利用する目的が達成できない。また、音圧の増幅量が大きすぎる場合、ユーザは音声の聞き分けはできるが、音声をうるさく感じる。その結果、ユーザは、補聴器を長時間使用できない。そこで、上記(1)または(2)のいずれにも該当しないように、補聴器のフィッティングを行う必要がある。特に(2)は、補聴器は、ユーザに対して、必要以上に大きい音圧を有する音声を呈示する可能性がある。その結果、大きい音圧を有する音声により、ユーザの耳を傷つける危険性があった。
フィッティングは、大きく分けると、二つの手順を有する。フィッティングの最初の手順は、オージオグラムの測定である。「オージオグラム」とは、ユーザが聞き取ることができる純音の最小音圧である閾値(hearing threshold level:HTL)を測定した結果である。オージオグラムは、たとえば、閾値(デシベル値)を、周波数(たとえば250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz)ごとに、プロットした図である。
フィッティングの2つ目の手順は、音圧の増幅量の決定である。例えば、フィッティング理論と呼ばれる音の増幅量を推定するための関数を用いて、周波数ごとに、また、入力音の音圧ごとに増幅量を決定する。複数の種類のフィッティング理論がある。フィッティング理論の例であるハーフゲイン法は、各周波数の挿入利得をその周波数の閾値の半分にする。Berger法は、会話音声の周波数帯域とレベルを考慮して1000Hzから4000Hzの増幅をやや増強する。POGO法は、ハーフゲイン法を基礎とし語音情報が少なく騒音成分が多い250Hzと500Hzの利得をそれぞれ10dB、5dB減じる。NAL−R法は、言葉の長時間音響分析周波数が快適レベルに入るように増幅する。
また、フィッティング理論は、閾値と、ユーザが不快に感じる大きな音圧レベルであるUCL(uncomfortable level)、及びMCLの情報を活用して、音圧の増幅量を決める方法を含む。その場合には、音圧の増幅量を決める前に、UCLおよびMCLの測定あるいは推定が求められる。上記(2)の問題を回避するためには、UCLを測定し、UCLを超えない範囲に増幅量を設定する必要がある。
UCLは、オージオグラムの測定と同様に、周波数ごとに測定される。従来、主観報告を用いて、UCLを測定していた。「主観報告」とは、ユーザが音を聞いた後に、ユーザがその音に対する主観的な感想を報告することである。たとえば、オージオメータを用いて、連続音または断続音を、上昇法(段々と音圧レベルを上げる)を用いてユーザに呈示し、うるさすぎて長時間聞いていられない音圧であるか否かをユーザに報告させる。そして、ユーザが長時間聞いていられないと報告した音圧を、UCLとする(非特許文献1)。
主観報告によるUCL測定は、UCLの基準が個人または言語表現の影響を受けて変動するため難しく、確立された手法は存在しない。そこで、脳波を用いて、客観的にUCLを測定する方法が開発されつつある。たとえば、非特許文献2に開示の技術は、ABR(auditory brainstem response)と呼ばれる脳幹反応に含まれるV波の潜時と刺激強度との関係を用いて、UCLを推定している。音圧の増大に伴い、V波の潜時は短縮する。V波の潜時の短縮が頭打ちになった時に、ユーザが聞いていた音の音圧を特定する。特定した音圧に、定数(たとえば15や10)を足した音圧をUCLとする。
君付 隆他、「聴力に異常のない聴覚過敏患者における内耳機能検査の特徴」、2009年 Thornton,A.R.他、「The objective estimation of loudness discomfort level using auditory brainstem evoked responses」、1987年
しかしながら、脳波を用いてUCLを推定する従来技術は、UCLの推定時間の短縮化が求められていた。その理由は、この技術は微弱な信号成分のABRを指標にしており、刺激を1000回オーダーで繰り返し呈示することが必要だからである。長時間の検査は、ユーザにとって負担である。
本願の、限定的ではない例示的なある実施形態は、より短時間でUCLを客観的に測定する技術を提供する。
上記課題を解決するために、本発明の一態様である不快音圧決定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成する音データ生成部と、前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示する出力部と、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部とを含む。
上述の一般的かつ特定の態様は、システム、方法およびコンピュータプログラムを用いて実装され、またはシステム、方法およびコンピュータプログラムの組み合わせを用いて実現され得る。
本発明の一態様にかかる不快音圧決定システムによれば、同一周波数の純音の音圧を、単調上昇または単調下降で変化させながらn回(n:2以上の整数)連続呈示して、第1音から第n音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量を抽出し、その特徴量の変化パターンからUCLを推定する。同一周波数で音圧の異なる第1音から第n音に対する特徴量の変化パターンを用いることで、個人差の影響を受けにくく、より短時間・より高精度で不快音圧を決定できる。これにより、ユーザが補聴器装用時にうるささを感じることがなく、長時間にわたって補聴器を装用しても疲れにくい、周波数ゲインの設定が実現できる。
主観報告によって測定した個人ごとのUCL測定結果を示す図である。 脳波計測実験の音刺激の概要を示す図である。 (a)は国際10−20法(10−20 System)の電極位置を示す図であり、(b)は本実験で電極を装着した電極配置を示す。 上段は、中心部(Cz)における第1音から第5音に対する事象関連電位を、周波数によらず総加算平均した総加算平均波形を示す図であり、下段は総加算平均波形におけるP1−N1振幅およびN1−P2振幅(図4下段)を示す図である。 (a)および(b)は、主観UCL値の大きさに応じた加算平均して得られた波形の波形図である。 (a)および(b)は、中心部(Cz)における第1音から第5音に対するウェーブレット特徴量を、周波数によらず総加算平均した値を示す図である。 (a)および(b)は、条件ごと、主観UCL値ごとのウェーブレット特徴量を示す図である。 不快音圧推定で用いた教師データの例を示す図である。 (a)および(b)は、線形判別結果の例として、特徴量組合せ数が2の場合の、主観UCL値と線形判別による不快音圧推定結果の分布を条件ごとに示す図である。 特徴量組合せ数ごとの平均推定誤差の推移を示す図である。 不快音圧推定で第n音までの音刺激を用いた場合の平均推定誤差を条件ごとに示す図である。 例示的な実施形態による不快音圧決定システム100の構成および利用環境を示す図である。 例示的な実施形態による不快音圧決定装置1のハードウェア構成を示す。 例示的な実施形態による不快音圧決定システム100の機能ブロックの構成を示す図である。 結果蓄積DB80におけるデータ蓄積の例を示す図である。 不快音圧決定システム100において行われる処理の手順を示すフローチャートである。 不快音圧評価システム100(図14)の変形例に係る不快音圧評価システム105の構成を示す図である。 補聴器調整システム110の構成を示す図である。
これまでの、脳波を用いてUCLを推定する従来技術は、UCLの推定に時間がかかっていた。
本願発明者らは、その課題を解決するために本願発明をなすに至った。
本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
本発明の一態様である不快音圧決定システムは、ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成する音データ生成部と、前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示する出力部と、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部とを備えている。
前記音データ生成部は、たとえば少なくとも、前記複数の音の周波数を決定する音刺激群決定部と、少なくとも、前記第1音から第n音までの音圧を決定する詳細決定部と、前記音刺激群決定部によって決定された前記周波数を有し、かつ、前記詳細決定部によって決定された、前記第1音から前記第n音まで順に上昇または下降する音圧を有する、前記複数の音に関する音データを生成する音刺激生成部とを有する。
ある実施形態において、前記詳細決定部は、前記第1音から前記第n音にかけて所定単位で音圧を上昇または下降させる。
ある実施形態において、前記詳細決定部は、前記第1音から前記第n音にかけて5dBずつ音圧を上昇または下降させる。
ある実施形態において、前記不快音圧決定部は、予め用意された、他者の事象関連電位の周波数の時間変化の特徴量と音圧との関係を教師データとして保持し、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量と前記教師データとを利用して線形判別を実施する。
ある実施形態において、前記音刺激群決定部は、さらに前記複数の音を呈示すべき一方の耳を決定し、前記不快音圧決定部は、右耳および左耳の各々に関し、かつ、前記周波数の各々に関し、前記教師データを複数保持しており、前記音刺激群決定部によって決定された前記一方の耳が右耳か左耳かに応じて、および、前記周波数に応じて、前記教師データを切り換える。
ある実施形態において、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量は、ウェーブレット係数に関する特徴量であり、前記特徴量抽出部は、前記複数の音の各々が呈示された時刻から300ms以下の時間範囲に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位のウェーブレット係数を、前記特徴量として抽出する。
ある実施形態において、前記特徴量抽出部は、前記事象関連電位のウェーブレット係数を所定の周波数幅および所定の時間幅で平均した値を、前記特徴量として抽出する。
ある実施形態において、前記所定の周波数幅は5Hz以上15Hz以下である。
ある実施形態において、前記所定の時間幅は50msである。
ある実施形態において、前記不快音圧決定部は、前記第1音と第2音に対する前記特徴量を用いて、前記不快音圧を決定する。
ある実施形態において、前記不快音圧決定システムは、前記不快音圧決定部によって決定された、前記周波数における不快音圧を蓄積するデータベースをさらに備えている。
ある実施形態において、前記データベースは、左右の耳ごと、および、周波数ごとに、前記不快音圧を蓄積する。
ある実施形態において、前記生体信号計測部と、前記音データ生成部および前記出力部を有する音刺激装置と、前記特徴量抽出部、前記不快音圧決定部および前記データベースを有する音刺激装置とが通信可能に接続されている。
本発明の一態様である補聴器調整システムは、上述の不快音圧決定システムを用いて推定された前記不快音圧を受け取って、前記不快音圧を最大出力値として補聴器に設定する設定部を備えている。
本発明の一態様である不快音圧決定装置は、出力部が出力する第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音の各々が呈示されたときにおいて、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に脳波信号計測部によって計測されたユーザの脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部とを備えている。
本発明の一態様である不快音圧決定方法は、ユーザの脳波信号を計測するステップと、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成するステップと、前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示するステップと、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出するステップと、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、抽出する前記ステップによって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定するステップとを包含する。
本発明の一態様であるコンピュータプログラムは、不快音圧決定システムの不快音圧決定装置に設けられたコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、ユーザの脳波信号を取得するステップと、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成するステップと、出力部を介して、前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示するステップと、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出するステップと、予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、抽出する前記ステップによって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定するステップとを実行させる。
以下、添付の図面を参照しながら、例示的な実施形態による不快音圧決定システムを説明する。
例示的な実施形態による不快音圧決定システムは、純音聴取時のユーザの脳波を利用して、純音聴取時にユーザがうるさいと感じたか否か、を決定するために用いられる。より具体的には、本システムは、同一周波数の純音を単調上昇または単調下降の音圧変化でn回(n:2以上の整数)連続してユーザに呈示し、第1音から第n音までのそれぞれの音刺激に対するそのユーザの脳波の特徴量を抽出し、その特徴量の変化パターンから不快音圧を決定する。
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「事象関連電位(event−related potential:ERP)」とは、刺激に対して発生する脳波(electroencephalogram:EEG)の電位の変動である。
「P1成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約50msにおいて惹起される陽性の電位である。
「N1成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約100msにおいて惹起される陰性の電位である。
「P2成分」とは、聴覚刺激呈示を起点に約200msにおいて惹起される陽性の電位である。
「不快音圧」とは、ユーザが不快に感じるほど大きな音圧である。
「適切な音圧」とは、ユーザが不快に感じることのない範囲の音圧である。
「音を呈示する」とは、純音の聴覚刺激を出力することをいう。たとえば純音をヘッドフォンの片耳側から出力することは、「音を呈示する」の範疇である。
「純音」とは、周期振動を繰り返す楽音のうち、単一の周波数成分しか持たない正弦波で表される音である。
例示的な実施形態では、ヘッドフォンを利用してユーザに音を呈示する例を挙げて説明している。ヘッドフォンの種類は任意であるが、不快音圧を正しく決定するために、指定した音圧の純音を正確に出力できる必要がある。
本願明細書においては、事象関連電位の成分を定義するためにある時点から起算した所定時間経過後の時刻を、たとえば「潜時約100ms」と表現している。これは、100msという特定の時刻を中心とした範囲を包含し得ることを意味している。「事象関連電位(ERP)マニュアル−P300を中心に」(加我君孝ほか編集、篠原出版新社、1995)の30頁に記載の表1によると、一般的に、事象関連電位の波形には、個人ごとに30msから50msの差異(ずれ)が生じる。したがって、「約Xms」や「Xms付近」という語は、Xmsを中心として30msから50msの幅がその前後(例えば、100ms±30ms、200ms±50ms)に存在し得ることを意味している。
1.実験概要
本願発明者らは、従来と比較してより短時間で客観的にUCL(uncomfortable level)を決定する、不快音圧決定の実現を目指し、純音に対する不快音圧を反映した脳波特徴成分を特定するために、以下2つの実験を実施した。
一つは、主観報告に基づいて、UCLを決定する主観報告実験である。主観報告実験は、脳波計測実験とは別に2回実施した。
もう一つは、脳波を用いて、UCLを決定する脳波計測実験である。脳波計測実験では、同一周波数の純音を5dBSPL刻みの単調な音圧変化で5回連発呈示し、第1音から第5音までのそれぞれの音刺激に対する事象関連電位を計測した。
本願発明者らは、音圧を単調に上昇させるクレッシェンド条件、および単調に下降させるデクレッシェンド条件の2条件で実験を行った。そして、主観報告実験で得られたUCLを基準データとして、UCLに関連した事象関連電位の特徴を探索した。
実験結果を考察した本願発明者らは、複数の音のそれぞれの音刺激に対する事象関連電位の周波数の時間変化の情報の変化パターンに基づけば、主観報告のUCLが推定できることを見出した。事象関連電位の周波数の時間変化の情報の具体例として、ウェーブレット係数が挙げられる。本願発明者らは、事象関連電位のウェーブレット変換により算出したウェーブレット係数の変化パターンを線形判別することで、主観報告のUCLが推定できることを見出した。なお、線形判別では、他者のウェーブレット係数の変化パターンおよび主観報告のUCL値を教師データとして用いた。本手法により、短時間かつ高精度にUCLを決定できることがわかった。
以下で、これらをより詳細に説明する。はじめに、不快音圧決定を実現するために本願発明者らが実施した2条件の脳波計測実験および主観報告実験について説明する。その後、実施形態としての、不快音圧決定装置の概要および、不快音圧決定装置を含む不快音圧決定システムの構成および動作を説明する。
2.脳波計測実験および主観報告実験
2−1.主観報告実験
主観報告実験は、一定時間をあけて2回実施した。実験参加者は、正常な聴力を有する社会人12名(28〜49歳)であった。非特許文献1と同様に、オージオメータを用いて連続音を上昇法で呈示し、うるさすぎて耐えられない音圧を報告させ、その音圧をUCLとした。脳波計測実験で呈示する3周波数(1000Hz、2000Hz、4000Hz)それぞれについて、片耳ずつ両耳の測定を実施した。音圧の予測をさせないために、実験開始の音圧は、60、65、70dBHLからランダムに決定した。連続音の音圧は5dBずつ上昇させた。うるさすぎて耐えられない音圧は、挙手によって報告させた。参加者の挙手直後に音呈示をやめ、その音圧を記録した。
以下、主観報告実験の結果を説明する。
全ての参加者が健聴者であったが、主観報告実験の結果は、個人ごとに大きく異なった。最も大きい差異は、同一周波数において40dBであった。これは、「うるさすぎて我慢できない」という定義の解釈は個人ごとに大きく異なることを示している。よって、主観報告によるUCL決定は難しいといえる。
図1は、主観報告によって測定した個人ごとのUCL測定結果である。すなわち図1は、主観報告実験の結果を示す。図1には、2回の測定結果の平均値を示した。音圧の単位は、dBHLである。図1中に示した左右耳ごと、周波数ごとの標準偏差からも分かるように、個人ごとのばらつきが大きいことが分かる。また、左右と周波数を要因とした反復測定の分散分析を実施した結果、交互作用は有意でなかった(p=.169)。また、左右および周波数の主効果も有意ではなかった(p=.108、p=.124)。
よって、主観報告によるUCL測定結果には、左右差および周波数差がなかったといえる。なお、主観報告実験の2回の測定結果は、参加者ごと、周波数ごとの全結果のうち、約6割において5dB以上変動した。これは、主観報告による不快音圧決定はあいまいさを含むことを示している。
2−2.脳波計測実験
脳波実験では、3つの周波数(1000Hz、2000Hz、4000Hz)それぞれについて、UCLである音圧周辺の音圧であると想定される5つの音圧(80dBSPL、85dBSPL、90dBSPL、95dBSPL、100dBSPL)の音刺激を、単調な音圧変化で5回連発呈示し、音刺激ごとの事象関連電位の特徴変化を調べた。以下、図2〜11を参照しながら、脳波計測実験の実験設定および実験結果を説明する。
実験参加者は、主観報告実験と同じ、正常な聴力を有する社会人12名(28〜49歳)であった。
音刺激は、持続時間50msのトーンバースト音とした。音刺激の立ち上がり(rise)および下がり(fall)は3msとした。3種類の周波数(1000Hz、2000Hz、4000Hz)のそれぞれについて、5種類の音圧(80dBSPL、85dBSPL、90dBSPL、95dBSPL、100dBSPL)の音刺激を用いて、周波数ごとの音圧変化に対する事象関連電位の特徴量変化を調べた。同一の周波数である複数の音刺激を、音刺激群と称する。
音の音圧を上昇させるクレッシェンド条件と、音の音圧を下降させるデクレッシェンド条件とを用いて、ユーザに音刺激群を呈示した。クレッシェンド条件では、音刺激の音圧を80dBSPLから100dBSPLまで5dBずつ段階的に上げて、同一周波数を有する音刺激を呈示した。デクレッシェンド条件では、音刺激の音圧を100dBSPLから80dBSPLまで5dBずつ段階的に下げて、同一周波数を有する音刺激群を呈示した。
音刺激群に含まれる音刺激は、所定間隔をあけて、同じ耳に呈示した。クレッシェンド条件とデクレッシェンド条件は別々に実施した。クレッシェンド条件とデクレッシェンド条件の実験順序は、参加者間でカウンタバランスした。音刺激は、ヘッドフォンを用いて片耳ずつ呈示した。
図2は、脳波計測実験の音刺激の概要を示す。
参加者には音刺激に注意を向けなくてもよいと教示した。いずれの条件においても、連発して呈示される、同一周波数の音刺激群内の音刺激の間隔(図2中ではISI1)は300msに固定した。また、音刺激群間の間隔(図2中ではISI2)は、450±100msの範囲でランダムに決定した。左右耳ごと、周波数ごとの音刺激群をそれぞれ30回繰り返した(音刺激群としては計180回、音刺激としては計900回(180×5)の繰り返し)。
同じ音刺激群の連続呈示による聴覚誘発電位の慣れ(habituation)を低減するために、音刺激群の周波数および呈示耳は、次の制約で決定した。直前の音刺激群とは異なる周波数とする。音刺激群を呈示する耳は左右でランダムとする。ただし、左右の耳への刺激のランダム性を確保するために、左右どちらかの耳への音刺激群を4回以上連続させない。
脳波は頭皮上のC3、Cz、C4(国際10−20法)から、右マストイドを基準に記録した。「マストイド」とは、耳の裏の付け根の下部の頭蓋骨の乳様突起である。図3(a)は、国際10−20法(10−20 System)の電極位置を示す。図3(b)は本実験で電極を装着した電極配置を示す。図3(b)の(1)、(2)および(3)は、電極位置のC3、CzおよびC4をそれぞれ示す。
サンプリング周波数は1000Hz、時定数は0.3秒とし、30Hzのアナログローパスフィルタをかけた。計測した脳波データの全時間帯について、オフラインで5−20Hzのディジタルバンドパスフィルタをかけた。その後、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとの音刺激に対する事象関連電位として、それぞれの音刺激を起点に、−100msから400msの波形をそれぞれ切り出した。ここで、「−100ms」とは、音刺激を呈示した時刻より100ミリ秒前の時点をいう。
また、音刺激ごとに、事象関連電位の0ms以上300ms以下の範囲の脳波波形に対して、事象関連電位の周波数の時間変化の情報を求めた。一例として、連続ウェーブレット変換を実施することによって時間ごと周波数ごとのウェーブレット係数を求めた。マザーウェーブレットとして、メキシカンハット関数(ψ(t) = (1−t2)exp(−t2/2))を用いた。
事象関連電位の波形およびウェーブレット係数は、条件ごとに、個人ごと、左右耳ごと、周波数ごとの第1音から第5音までの音刺激群ごとに加算平均した。それぞれ加算平均波形、加算平均ウェーブレット係数と呼ぶ。いずれかの電極において絶対値で50μV以上の振幅を含む試行は、眼球運動や瞬目によるノイズの影響を含むことが想定されるため、総加算平均および加算平均から除外した。そして不快音圧の指標となりうる事象関連電位の特徴量として、加算平均ウェーブレット係数の5Hzから15Hzの周波数幅かつ、50msごとの時間幅の平均値(以下では、ウェーブレット特徴量とよぶ)を求めた。
以下、脳波計測実験の結果を説明する。
脳波計測実験の結果を概説するために、図4は、中心部(Cz)における第1音から第5音に対する事象関連電位を、周波数によらず総加算平均した総加算平均波形(図4上段)および、総加算平均波形におけるP1−N1振幅およびN1−P2振幅(図4下段)を示す。
総加算平均波形は、上述の方法で算出した加算平均波形を、周波数によらず個人間で加算平均した波形である。左側がクレッシェンド条件の総加算平均波形であり、右側がデクレッシェンド条件の総加算平均波形である。横軸は時間で単位はms、縦軸は電位で単位はμVである。横軸の0msは、音刺激呈示時刻である。図4の縦軸に示すとおり、グラフの下方向が正(陽性)に、上方向が負(陰性)に対応している。
結果の例として、第1音、第3音、第5音に対する波形を太実線、破線、細実線でそれぞれ示した。第2音および第4音は記載が煩雑になるため省略している。
第1音の音圧は、クレッシェンド条件では80dBSPL、デクレッシェンド条件では100dBSPLであった。第3音の音圧は、条件にかかわらず90dBSPLであった。第5音の音圧は、クレッシェンド条件では100dBSPL、デクレッシェンド条件では80dBSPLであった。いずれの音刺激に対しても、音刺激呈示後100msにN1成分(陰性のピーク)が生起している様子が見て取れる。
図4下段に示したP1−N1振幅は、音刺激呈示後約50msに生起するP1成分に関する陽性のピークを中心に前後10msの区間平均電位から、N1成分の陰性のピークを中心に前後10msの区間平均電位を引き算して求めた。またN1−P2振幅は、刺激呈示後約200msに生起するP2成分に関する陽性のピークを中心に前後25msの区間平均電位から、N1成分の陰性のピークを中心に前後10msの区間平均電位を引き算して求めた。横軸は音圧で単位はdBSPL、縦軸は振幅で単位はμVである。白丸はP1−N1振幅、黒丸はN1−P2振幅を示している。P1−N1振幅およびN1−P2振幅の変化特性はどちらも、条件ごとに大きく異なった。図4下段の左側に示したクレッシェンド条件の振幅は、第1音である80dBSPLの音刺激に対して最も大きく、第2音、第3音にかけて減少するが、そこから第4音、第5音にかけて増大した。一方、図4下段の右側に示したデクレッシェンド条件の振幅は、第1音である100dBSPLの音刺激に対して最も大きく、第2音、第3音にかけて急激に減少し、そこから第4音、第5音にかけてゆるやかに減少した。条件ごとに振幅の変化特性が異なる要因として、音圧変化のパターンが単調上昇と単調下降で異なること、音刺激群間で周波数を変更したこと、左右ランダムな耳に刺激を呈示したこと、が挙げられる。
図5(a)および(b)は、主観UCL値の大きさに応じた加算平均して得られた波形を示す。図5(a)および(b)は、中心部(Cz)における、第1音呈示前100msから第5音呈示後400msに計測された連続脳波データを、周波数および左右耳によらず主観UCL値が95dBHLより大きいか、95dBHL以下かごとに、別々に加算平均した波形である。太線は主観UCL値が95dBHLよりも大きい場合、細線は主観UCL値が95dBHL以下の場合の加算平均波形である。第1音呈示前100msでベースライン補正をしている。図5(a)がクレッシェンド条件の加算平均波形であり、図5(b)がデクレッシェンド条件の加算平均波形である。横軸は時間で単位はms、縦軸は電位で単位はμVである。横軸の0msは、第1音呈示時刻である。図5(a)および(b)に点線として、第1音から第5音の音刺激が呈示されたタイミングを示した。図5(a)および(b)に示したとおり、主観UCL値が大きい場合(太線)よりも小さい場合(細線)において、クレッシェンド条件では第2音に対するN1−P2振幅が、デクレッシェンド条件では第2音および第3音に対するN1−P2振幅がそれぞれ小さいことがわかる。
図6(a)および(b)は、中心部(Cz)における第1音から第5音に対するウェーブレット特徴量を、周波数によらず総加算平均した値を示す。図6(a)はクレッシェンド条件下での総加算平均値を示し、図6(b)はデクレッシェンド条件下での総加算平均値を示す。
結果の例として、音刺激の音圧ごとにウェーブレット特徴量の変化が大きかった、音刺激呈示後101−150ms、201−250ms、251−300msのウェーブレット特徴量の総加算平均値を、それぞれ白丸破線、白丸実線、黒丸実線で示す。
P1−N1振幅およびN1−P2振幅と同様に、図6(a)および(b)に示すウェーブレット特徴量も条件ごとに異なった。加えて、ウェーブレット特徴量の変化特性は、ウェーブレット特徴量を算出した時間帯によっても異なった。たとえば、デクレッシェンド条件の101−150msのウェーブレット特徴量は、90dBHLの音刺激までは変化せず、それ以降単調に減少したが、201−250msのウェーブレット特徴量は、80dBHLから95dBHLにかけて緩やかに増加するが100dBHLでは急激に増大した。よって、ウェーブレット特徴量はその時間帯によって異なる特性を示し、特徴量の組合せによって、不快音圧の推定精度が向上する可能性がある。
2−3.不快音圧推定
まず、音圧変化に対する事象関連電位の特徴量変化に、不快音圧推定の指標が含まれることを確認するために、主観UCL値とウェーブレット特徴量との関係を調べた。そして、その特徴量変化を用いた不快音圧推定の精度を明らかにするために、判別分析を実施した。以下、それぞれについて詳述する。
事象関連電位から不快音圧を推定するためには、参加者ごとの主観UCL値を反映する特徴量の存在が必須である。しかしながら、上述のように主観UCL値は、強大音に対するパーソナリティが異なることから、参加者ごとのばらつきを持った指標である。そのため、個人ごとのデータを用いて主観UCL値を反映した特徴量の有無を特定することは困難である。そこで、そのばらつきを低減するために、主観UCL値が大きかった場合と小さかった場合の2つに分けて、特徴量に差異を調べた。具体的には、参加者ごと周波数ごとの主観UCL値が95dBHLよりも大きかった場合と、95dBHL以下であった場合に分けて、ウェーブレット特徴量を加算平均し、比較した。なお、95dBHLは、主観報告実験で得られた全参加者の主観UCL値の中央付近の値であり、主観UCL値が95dBHLより大きい場合と、95dBHL以下の場合はほぼ同数であった。
図7(a)および(b)は、条件ごと、主観UCL値ごとのウェーブレット特徴量を示す。図7(a)および(b)には、結果の一例として、251msから300msの時間帯のウェーブレット特徴量が示されている。具体的には図7(a)にはクレッシェンド条件の結果が示されており、図7(b)にはデクレッシェンド条件の結果が示されている。図7(a)のクレッシェンド条件では、80dBSPLを有する第1音と、85dBSPLを有する第2音の音刺激に対するウェーブレット特徴量において、主観UCL値の違いによる差異がそれ以外の音刺激(第3音から第5音)に対するウェーブレット特徴量よりも大きかった。他方、図7(b)のデクレッシェンド条件では、第1音および第2音である100dBSPL、95dBSPLの音刺激に対するウェーブレット特徴量は、主観UCL値によって顕著に異なった。具体的には、100dBSPLおよび95dBSPLの音刺激に対するウェーブレット特徴量が、主観UCL値が95dBHL以下の場合に比べて、主観UCL値が95dBHLより大きな場合で大きかった。
これらの結果から、音圧変化に対する事象関連電位の特徴量変化は、少なくとも主観UCL値の違いによって異なることが明らかになった。よって、特徴量変化には、不快音圧推定の指標が含まれる可能性があるといえる。
次に、事象関連電位の特徴量変化を用いた不快音圧推定の精度を調べるために、判別分析を実施した。判別分析の手法として、線形判別を用いた。線形判別は、音圧ごとの事象関連電位のウェーブレット特徴量を、上記主観報告実験で得られた左右耳ごと周波数ごとの主観UCL値で教師づけ(対応付け)して実施した。不快音圧推定に適した特徴量を探索するために、特徴量を単独あるいは組合せて、主観UCL値との誤差をそれぞれの特徴量組合せ数ごとに比較した。上述のように、ウェーブレット特徴量は、時間帯によって異なる変化特性を有する。よって、組合せによってUCLの判別基準が変わるため、より少ない誤差でUCLを推定できる可能性がある。つまり、時間帯に応じてウェーブレット特徴量を分けているため、どの時間帯のデータを用いるのかによって組み合わせを変えることにより、少ない誤差でUCLを推定できる可能性がある。
以下、線形判別で用いるデータおよび、実施した線形判別について説明する。図8は、不快音圧推定で用いた教師データの例を示した。図8中の主観UCL値は、主観報告実験により測定した、参加者ごと、左右耳ごと、周波数ごとのUCL値である。図8中の第1音から第5音の列は、音刺激群の第1音から第5音に対する事象関連電位の特徴量である。図8中には、特徴量の例として、デクレッシェンド条件における251−300msのウェーブレット特徴量を示した。これら音刺激群ごとの特徴量を、主観UCL値で教師づけして、線形判別を実施した。
線形判別は、参加者ごとの音刺激群に対する事象関連電位の特徴量である線形判別対象データと、当該参加者以外の他者の事象関連電位の特徴量から作成した教師データを用いて実施した。教師データは、他者の事象関連電位の特徴量から、条件ごと、左右耳ごと、周波数ごとに作成した。たとえば、線形判別対象データを参加者01の右耳1000Hzとした場合、教師データは参加者01以外の参加者のデータの右耳1000Hzの主観UCL値と事象関連電位の特徴量から作成した。特徴量として、上述のウェーブレット特徴量(時間幅50ms)を用いた。
不快閾値推定の可能性を探索するために、特徴量を複数組合せて用いる場合には、線形判別対象データと教師データのいずれにおいても、特徴量を列方向に追加した。たとえば151msから200msのウェーブレット特徴量と251msから300msのウェーブレット特徴量を組合せる場合には、1列目から5列目を前者の第1音から第5音に対する特徴量、6列目から10列目を後者の第1音から第5音に対する特徴量とした。これらはベクトル化されたデータとして取り扱うことができる。主観UCL値と、不快音圧推定結果の差の絶対値を推定誤差とし、すべての参加者の左右および全周波数の推定誤差を平均した平均推定誤差を用いて推定精度を測定した。
図9(a)および(b)は、線形判別結果の例として、特徴量組合せ数が2の場合の、主観UCL値と線形判別による不快音圧推定結果の分布を条件ごとに示す。図9(a)はクレッシェンド条件の結果を示し、図9(b)はデクレッシェンド条件の結果を示す。分析は条件ごと、左右耳ごと、周波数ごとに実施したが、図9(a)および(b)では左右耳ごと、周波数ごとに得られた結果をまとめて示した。図9(a)および(b)中のスケールに示したように、横軸は主観UCL値で単位はdBHL、縦軸は不快音圧推定値で単位はdBHLである。主観UCL値に対する、不快音圧推定結果を○印で格子点上に示した。推定結果の度数分布を○印の大きさで示した。平均推定誤差は、クレッシェンド条件では6.5dB、デクレッシェンド条件では5.4dBであった。両条件の結果から、ばらつきはあるが主観UCL値と相関のある不快音圧が推定できていることが分かる。特徴量組合せ数が2の場合の、主観UCL値と不快音圧推定結果の相関係数は、クレッシェンド条件で0.35、デクレッシェンド条件で0.45であった。
図10は、特徴量組合せ数ごとの平均推定誤差の推移を示す。図10中の横軸は特徴量組合せ数、縦軸は平均推定誤差である。クレッシェンド条件の結果を白丸で、デクレッシェンド条件の結果を黒丸でそれぞれ示した。特徴量組合せ数に関わらず、クレッシェンド条件よりもデクレッシェンド条件で平均推定誤差が小さいことがわかる。また、デクレッシェンド条件では、特徴量を単独で用いる(特徴量組合せ数1)よりも特徴量を組合せたほうが、平均推定誤差が小さくなる場合があった。具体的には、特徴量組合せ数が2から4の場合には平均推定誤差が小さかった。たとえば特徴量組合せ数が2の場合には、201ms以上250ms以下のウェーブレット特徴量と、251ms以上300ms以下のウェーブレット特徴量を組合せた場合に平均推定誤差が最も小さかった。ところが、特徴量組合せ数が5以上の場合には、特徴量を単独で用いる場合と比較して、平均推定誤差が増大した。よって、特徴量組合せ数が最適な場合に、推定誤差が最も小さくなるといえる。今回は、条件ごと、左右耳ごと、周波数ごと、音圧ごとに6つのウェーブレット特徴量を用いたことから、特徴量組合せ数が5以上の場合には不快音圧推定にとってのノイズとなる特徴量を多く含んだ可能性がある。最適な特徴量組合せ数は、特徴量の設定方法によって変動するといえる。他方、今回の結果においてクレッシェンド条件では、特徴量組合せ数が1の場合に、平均推定誤差が最も小さかった。しかしながら、特徴量の設定方法(たとえば10msごとに30つのウェーブレット特徴量を用いる場合)によっては、デクレッシェンド条件と同様に、2つ以上の最適な組合せ数において平均推定誤差が最も小さくなると推測される。
ここまでは、判別分析において、脳波計測実験で用いた音刺激群の第1音から第5音(5つの音圧、80〜100dBSPL)すべてを用いた場合の結果を示した。つぎに、不快音圧推定において何番目の音までの分析が必要かを特定するために、各条件において第1音から第n音までのウェーブレット特徴量データのみを用いて判別分析を実施した。たとえば、第1音から第3音までのウェーブレット特徴量を用いる場合には、第4音と第5音の特徴量を除外した。図11は、不快音圧推定で第n音までの音刺激を用いた場合の平均推定誤差を条件ごとに示す。なお、図11に示した結果は、特徴量組合せ数が2のときのものである。クレッシェンド条件の結果を白丸で、デクレッシンド条件の結果を黒丸でそれぞれ示した。クレッシェンド条件では、第1音から第3音までの特徴量を用いた場合に最も平均推定誤差が小さかった。また、デクレッシェンド条件では、第1音から第2音までの特徴量を用いた場合に、最も平均推定誤差が小さかった。よって、不快音圧推定に適した音刺激の数は、条件ごとに異なり、クレッシェンド条件では第1音から第3音まで、デクレッシェンド条件では第1音から第2音までであるといえる。
この結果は、図7(b)に示した、デクレッシェンド条件では第1音(100dBSPL)と第2音(95dBSPL)のウェーブレット特徴量において、主観UCL値の差が顕著に反映された、という結果とも整合性がとれている。
なお、ウェーブレット特徴量に代えて、たとえばP1−N1振幅とN1−P2振幅の情報に基づいて判別分析を実施してもよい。図5(a)および(b)に示したように、主観UCL値が95dBHLよりも大きい場合と比べて主観UCL値が95dBHL以下の場合に、第2音・第3音に対するN1−P2振幅が小さくなる。よって、たとえば第2音に対するN1−P2振幅を所定の閾値と比較することで不快音圧の推定ができると考えられる。
なお、教師データは、左右耳および周波数によらず作成してもよい。
以上、本願発明者らが実施した主観報告実験および脳波計測実験により、同一周波数の純音を単調上昇または単調下降の音圧変化で5回連発呈示した場合に、第1音から第5音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の事象関連電位の周波数の時間変化の情報(一例ではウェーブレット係数に関する特徴量)を用いて不快音圧が推定可能であることが明らかとなった。
以下、例示的な実施形態にかかる不快音圧決定システムを説明する。不快音圧決定システムは、同一周波数の純音を単調上昇または単調下降の音圧変化でn回連発呈示し、第1音から第n音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量の変化パターンから、不快音圧決定を実現する。これは本願発明者らの上述の発見に基づき初めて実現される。
(実施形態1)
以下では、まず、不快音圧決定システムの概要を説明する。その後、不快音圧決定装置を含む不快音圧決定システムの構成および動作を説明する。
本実施形態による不快音圧決定システムは、同一周波数の純音を単調上昇または単調下降の音圧変化でn回(nは2以上の整数)呈示し、第1音から第n音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量を抽出し、その特徴量の変化パターンから不快音圧を決定する。
本実施形態においては、事象関連電位の特徴成分の振幅の大きさ又は極性は、脳波計測用の電極を装着する部位(基準電極および探査電極など)の設定位置に応じて変わる可能性がある。
しかしながら、以下の説明に基づけば、当業者は、そのときの基準電極および探査電極に応じて適切な改変を行って事象関連電位の特徴を抽出し、不快音圧の決定を行うことが可能である。そのような改変例は、本開示の範疇である。
図12は、本実施形態による不快音圧決定システム100の構成および利用環境を示す。この不快音圧決定システム100は、後述する実施形態1のシステム構成に対応している。
不快音圧決定システム100は、不快音圧決定装置1と、音刺激出力部10と、生体信号計測部50とを備えている。
音刺激出力部10は、ユーザ5に、音刺激を出力する。
生体信号計測部50は、少なくとも2つの電極Aおよび電極Bと接続されている。例えば、電極Aはユーザ5のマストイドに貼り付けられ、電極Bはユーザ5の頭皮上の中心部(いわゆるCz)に貼り付けられている。生体信号計測部50は、電極Aと電極Bとの電位差に対応するユーザ5の脳波5を計測する。
不快音圧決定システム100は、単調上昇あるいは単調下降の音圧変化で、ある周波数の音刺激群(第1音から第n音)を決定する。そして、決定された音刺激群を左右どちらかの耳にランダムな順序で呈示し、第1音から第n音の呈示時刻を起点にそれぞれ計測したユーザ5の脳波(事象関連電位)のウェーブレット係数を、周波数の時間変化の情報として抽出する。さらに、第1音から第n音に対する特徴量の変化パターンから、そのユーザにとっての不快音圧を推定する。
それぞれの構成の詳細は、後述する。
図12に示す不快音圧決定装置1は、生体信号計測部50および音刺激出力部10を、同じ筐体内に備える。不快音圧決定装置1は、生体信号計測部50および音刺激出力部10を、別筐体に備えてもよい。その場合には、生体信号計測部50は、計測した脳波信号を、無線または有線で接続されている不快音圧決定装置1に送信する。
不快音圧決定装置1は、不快音圧決定のための音刺激の左右耳、周波数、音圧、タイミングを決定する。決定した音刺激を生成して、音刺激出力部10は、不快音圧決定装置1が決定した音刺激をユーザ5に音刺激を呈示する。
また、第1音から第n音の音刺激を起点に切り出した事象関連電位から、不快音圧を推定するための特徴量を抽出し、音圧変化に対する特徴量変化のパターンに基づいて、左右耳ごと、周波数ごとの不快音圧を決定する。
図13は、本実施形態による不快音圧決定装置1のハードウェア構成を示す。不快音圧決定装置1は、CPU30と、メモリ31と、オーディオコントローラ32とを備えている。CPU30と、メモリ31と、オーディオコントローラ32とは、互いにバス34で接続されており、相互にデータの授受が可能である。
CPU30は、メモリ31に格納されているコンピュータプログラム35を実行する。コンピュータプログラム35には、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。不快音圧決定装置1は、このコンピュータプログラム35にしたがって、音刺激の生成、事象関連電位の特徴量抽出、不快音圧を決定する際の分析等の、不快音圧決定システム100の全体を制御する処理を行う。この処理は後に詳述する。
オーディオコントローラ32は、CPU30の命令に従って、それぞれ、呈示すべき音刺激を指定された音圧で音刺激出力部10を介して出力する。
なお、不快音圧決定装置1は、1つの半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現されてもよい。そのようなDSPは、1つの集積回路で上述のCPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32の機能を全て実現することが可能である。
上述のコンピュータプログラム35は、CD−ROM等の記録媒体に記録されて製品として市場に流通され、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送され得る。図13に示すハードウェアを備えた機器(たとえばPC)は、当該コンピュータプログラム35を読み込むことにより、本実施形態による不快音圧決定装置1として機能し得る。
図14は、本実施形態による不快音圧決定システム100の機能ブロックの構成を示す。不快音圧決定システム100は、音刺激出力部10と、生体信号計測部50と、不快音圧決定装置1とを備えている。不快音圧決定装置1は、事象関連電位特徴量抽出部55と、音データ生成部60と、不快音圧決定部65と、結果蓄積DB80とを備えている。音データ生成部60は、音刺激群決定部70と、音刺激詳細決定部71と、音刺激生成部75とを有している。説明の便宜のために、ユーザ5のブロックは示されている。不快音圧決定装置1は、音刺激出力部10及び生体信号計測部50と、有線又は無線で接続されている。
不快音圧決定装置1の各機能ブロックは、それぞれ、図13に関連して説明したプログラムが実行されることによって、CPU30、メモリ31、オーディオコントローラ32によって全体としてその時々で実現される機能に対応している。
音データ生成部60は、第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に単調上昇または単調下降する複数の音を生成する。この複数の音の各々は、同一の周波数の純音である。本明細書において、ユーザ5が聞き分けられない程度に異なる周波数を有する音は、同一の周波数の音とする。これらの機能は、音データ生成部60を構成する音刺激群決定部70、音刺激詳細決定部71および音刺激生成部75の各々によって実現される。
音刺激群決定部70は、ユーザ5に呈示する音の情報を決定する。音の情報は、ユーザ5の右耳か左耳のどちらに呈示するのか、及び、呈示する音の周波数を含む。呈示する音刺激群の左右耳および周波数を決定する。たとえば次の制約に基づいてランダム決定してもよい。直前の音刺激群と同じ周波数の音刺激は選択しない。左右耳はランダムな順序で選択する。ただし、左右どちらか一方の耳への音刺激群の呈示を4回以上連続させない。こうすることで、同一耳、周波数の音刺激群の連続呈示による脳波の慣れ(habituation)の影響が低減され、高精度な不快音圧決定が実現できる。そして、音刺激群決定部70は、決定した音刺激群の情報を、音刺激詳細決定部71に送付する。
音刺激詳細決定部71は、音刺激群決定部70から音刺激群の左右耳および周波数の情報を受け取る。音刺激詳細決定部71は、音刺激群内の音刺激の詳細を決定する。「音刺激の詳細」とは、音刺激群内における、音刺激数、第1音から第n音までの音圧、それぞれの音刺激の持続時間および音刺激間間隔(たとえば図2の300mms(ISI1))を含む。具体的に説明する。音刺激詳細決定部71は、まず2以上の整数から音刺激数を決定する。
次に、音刺激詳細決定部71は、決定した音刺激数の音刺激ごとに、音圧を決定する。音刺激ごとの音圧は、第1音から第n音にかけて単調上昇または単調下降するように、段階的に変化させて設定する。たとえば、第2音の音圧を第1音の音圧よりも5db大きく又は小さく設定し、第3音の音圧を第2音の音圧よりも5db大きく又は小さく設定するように、順に音圧を変化させる。変化させる音圧の大きさは、一定の大きさであっても良いし、異なる大きさであっても良く、単調上昇または単調下降すればよい。音圧は、難聴の状態に合わせて不快音圧が含まれることが想定され、かつ耳への障害が少ない範囲で決定する。たとえば、音刺激数が3で、中等度の難聴者の場合には、第1音から第3音を90dBSPL、95dBSL、100dBSPLのように設定してもよい。また、音刺激詳細決定部71は、音刺激の持続時間および呈示タイミングを決定する。持続時間は、聴覚誘発電位が安定して惹起されるよう、たとえば25ms以上に設定する。また、音刺激間間隔は、音刺激の持続時間以上で1秒以下の時間に設定する。例えば、音刺激間間隔を、100ms以上1s以下とする。なお、刺激呈示後200ms前後に惹起されるP2成分を利用できればよいので、たとえば200ms以上1s以下としてもよい。音刺激詳細決定部71は、決定した音刺激数、音圧、持続時間、音刺激間間隔および、音刺激群決定部70から受けた左右耳、周波数の情報を、所定のタイミングで音刺激生成部75および事象関連電位特徴量抽出部55(以下「抽出部55」と記述する。)に送付する。
音刺激生成部75は、音刺激詳細決定部71から受けた、左右耳、周波数、音刺激数、音圧、持続時間、音刺激間間隔の情報に基づいて、音刺激データを生成する。各音刺激の一例は、立ち上がり及び立下り3msのトーンバースト音である。音刺激生成部75は、音刺激出力部10を介してユーザに音刺激を出力し、そのタイミングで生態信号計測部50にトリガ信号を出力する。音刺激データは、たとえば一つ音刺激群に対して、所定の時間間隔で音圧変化のある複数の音刺激を含む音刺激データを一つ作成してもよい。その場合、生態信号計測部50に送付するトリガ信号は、第1音の呈示タイミングだけでもよい。
音刺激出力部10は、音刺激生成部75で生成された音刺激データを再生し、ユーザ5に出力する。
生体信号計測部50は、ユーザ5の生体信号を計測する脳波計であり、生体信号として脳波を計測する。音刺激生成部75から受けたトリガを起点に、所定区間(たとえば第1音呈示前100msから第n音呈示後400msの区間)の事象関連電位を切り出し、その波形データ(事象関連電位)を抽出部55に送付する。
事象関連電位は、刺激に対して発生する脳波の電位の変動である。事象関連電位は、たとえば、
(1)電位の極性(正又は負)、
(2)潜時(刺激発生から電位変動が生じるまでの時間)、
(3)電位の振幅の大きさ
に応じて、事象関連電位の種類が異なる。種類が異なる信号は、それぞれユーザ5に関する異なる情報を含む。なお、計測した脳波に対して、脳波データに対して適切な遮断周波数の周波数フィルタリングを行っても良い。周波数フィルタリングを行った脳波から事象関連電位を切り出しても良い。周波数フィルタとしてバンドパスフィルタを用いる場合は、たとえば5Hz以上15Hz以下の事象関連電位を通過させるように遮断周波数を設定してもよい。ユーザ5はあらかじめ脳波計を装着しているものとする。脳波計測用の探査電極はたとえば中心部のCzに装着される。
抽出部55は、生体信号計測部50から受けた事象関連電位から、音刺激詳細決定部71から受けた音刺激の内容に応じて、第1音から第n音(nは2以上の整数)に対する事象関連電位の周波数の時間変化の情報をそれぞれ算出する。事象関連電位の周波数の時間変化の情報の一例は、ウェーブレット係数に関する特徴量である。算出した特徴量と、音刺激の情報(左右耳、周波数、音圧等)を、不快音圧決定部65に送付する。ウェーブレット係数に関する特徴量は、たとえば周波数軸および時間軸それぞれに所定範囲の平均した値を求めてもよい。たとえば、周波数軸では5から15Hz、時間軸では50msの時間幅で平均をしてもよい。特徴量算出のために平均する周波数軸および時間軸の幅は5から15Hz、50msごと、よりも細かくしてもよいし、荒くしてもよい。
不快音圧決定部65は、事象関連電位の周波数の時間変化の情報に基づいて不快音圧を決定する。より具体的には、不快音圧決定部65は、抽出部55から受けた、第1音から第n音それぞれのウェーブレット係数に関する特徴量に対して不快音圧を決定する。不快音圧決定部65では、あらかじめ用意したウェーブレット特徴量と主観UCL値の教師データを利用して線形判別を実施する。教師データは、少なくとも2人以上の他者に対して、あらかじめ上述の主観報告実験および脳波計測実験を実施し決定した主観UCL値とウェーブレット特徴量から生成する。ここで教師データを生成する際の脳波計測実験の音圧および音刺激数に関する音刺激条件は、音刺激詳細決定部71で決定した刺激音圧の変化パターンと同一である必要がある。教師データの保持方法は、たとえば図8のように、左右耳ごと、周波数ごととしてもよい。その場合、抽出部55から受けた音刺激の左右耳と周波数の情報に基づいて、不快音圧決定に用いる教師データを、決定対象の左右耳および周波数と、教師データの左右耳および周波数が一致するように切り替えて用いてもよい。また、教師データは、ユーザの難聴の症状に合わせて切り替えてもよい。たとえば伝音性難聴と感音性難聴のような大きな分類で切り替えてもよいし、低音漸傾型や高音漸傾型などのオージオグラムのパターンによって切り替えてもよい。不快音圧決定部65は、決定した不快音圧を結果蓄積DB80に送付する。
結果蓄積DB80は、不快音圧決定部65から受けた不快音圧を、音刺激群決定部70から受けた音刺激群の情報である、左右耳、周波数ごとに保存する。
図15は、結果蓄積DB80におけるデータ蓄積の例である。図15では、左右耳ごと、周波数ごとの不快音圧(単位:dBHL)を蓄積する場合を例示している。
次に、図16を参照しながら図14の不快音圧決定システム100において行われる処理手順を説明する。図16は、不快音圧決定システム100において行われる処理の手順を示すフローチャートである。
ステップS101において、音刺激群決定部70は、呈示する音刺激群の左右耳および周波数を決定する。たとえば次の制約に基づいてランダム決定してもよい。直前の音刺激群と同じ周波数の音刺激は選択しない。左右耳はランダムな順序で選択する。ただし、左右どちらか一方の耳への音刺激群の呈示を4回以上連続させない。
ステップS102において、音刺激詳細決定部71は、音刺激群決定部70から音刺激群の左右耳および周波数の情報を受け取り、音刺激群内の音刺激の詳細として、音刺激群内における、音刺激数、第1音から第n音までの音圧、それぞれの音刺激の持続時間および音刺激間間隔を決定する。
ステップS103において、音刺激生成部75は、音刺激詳細決定部71から受けた音刺激の情報に基づいて音刺激データを生成する。各音刺激は、たとえば立ち上がり、立下り3msのトーンバースト音とする。
ステップS104において、音刺激生成部75は、音刺激出力部10を介してユーザに音刺激を出力し、そのタイミングで生態信号計測部50にトリガ信号を出力する。音刺激データは、たとえば一つ音刺激群に対して、所定の時間間隔で音圧変化のある複数の音刺激を含む音刺激データを一つ作成してもよい。その場合、生態信号計測部50に送付するトリガ信号は、第1音の呈示タイミングだけでもよい。
ステップS105において、生体信号計測部50は、生体信号として脳波を計測する。そして、脳波データに対して適切な遮断周波数の周波数フィルタリングを行い、音刺激生成部75から受けたトリガを起点に、所定区間(たとえば第1音呈示前100msから第n音呈示後400msの区間)の事象関連電位を切り出し、その波形データ(事象関連電位)を抽出部55に送付する。
ステップS106において、抽出部55は、生体信号計測部50から受けた事象関連電位から、音刺激詳細決定部71から受けた音刺激の内容に応じて、第1音から第n音に対する事象関連電位の周波数の時間変化の情報(一例ではウェーブレット係数に関する特徴量)をそれぞれ算出する。
抽出部55は、第1音から第n音の呈示時刻を起点(0ms)として0ms以上300ms以下の範囲の事象関連電位波形に対して、連続ウェーブレット変換を実施し、時間ごと周波数ごとのウェーブレット係数を算出する。マザーウェーブレットとしては、メキシカンハット関数を利用した。
ステップ107において、抽出部55は、ステップS106において算出した情報(一例ではウェーブレット係数に関する特徴量)を、音刺激詳細決定部71から受けた音刺激の情報に基づいて、周波数ごとに加算平均する。実験時と同様、事象関連電位の波形およびウェーブレット係数は、条件ごとに、第1音から第5音までの音刺激群ごとに加算平均される。少なくとも周波数毎に、事象関連電位の波形およびウェーブレット係数を加算平均する。なお、個人ごと、左右耳ごとに、事象関連電位の波形およびウェーブレット係数を加算平均しても良い。いずれかの電極において絶対値で50μV以上の振幅を含む試行は、眼球運動や瞬目によるノイズの影響を含むことが想定されるため、総加算平均および加算平均から除外される。そして不快音圧の指標となりうる事象関連電位の特徴量として、加算平均ウェーブレット係数の5Hzから15Hzの周波数幅かつ、50msごとの時間幅の平均値を算出し、これを特徴量として使用する。この特徴量は、ウェーブレット特徴量と呼ばれることもある。
ステップS108において、抽出部55はステップS104で呈示された音刺激群の音刺激に対する加算平均回数が所定回数に到達したか否かを判定する。加算平均回数が所定回数以下の場合には処理はステップS101へ戻り、音刺激群の呈示を繰り返す。加算平均回数が所定回数以上の場合には、抽出部55は、加算平均したウェーブレット係数に関する特徴量を、不快音圧決定部65に送付し、処理はステップS109へ進む。所定回数とは、たとえば20回である。なお、「20回」は、事象関連電位を計測する分野において多く採用される加算回数であるが、これは一例である。
ステップS109において、不快音圧決定部65は、抽出部55から受けた、第1音から第n音それぞれのウェーブレット係数に関する特徴量に対して不快音圧を決定する。不快音圧の決定は、あらかじめ用意した他者のウェーブレット特徴量と主観UCL値の教師データを利用して線形判別によって実現する。
ステップS110において、結果蓄積DB80は、ステップS104で呈示した音刺激群の、左右耳、周波数ごとに、不快音圧決定部65から受け取った不快音圧の決定結果の情報を蓄積する。
ステップS111において、音刺激群決定部70は、不快音圧を決定する予定の、全ての音刺激の呈示が完了したか否かを決定する。完了していない場合には処理はステップS101へ戻り、完了している場合には不快音圧決定を終了する。
本実施形態の不快音圧決定システム100は、同一周波数の純音を単調上昇または単調下降の音圧変化でn回(nは2以上の整数)呈示する。不快音圧決定システム100は、第1音から第n音までのそれぞれの音刺激に対する脳波の特徴量を抽出し、その複数の音刺激の特徴量の変化パターンを用いて、不快音圧が決定する。これにより、補聴器装用時にユーザが不快音圧を感じない、補聴器フィッティングが実現できる。
特徴量の変化パターンとは、複数の音に対する事象関連電位の特徴量と不快音圧とを対応付けた関係である。図8は、第1音から第5音に対応する事象関連電位の特徴量と予め定めた不快音圧に対応する主観UCL値とを対応付けた関係の一例である。特徴量の変化パターンは、周波数毎に、事象関連電位の特徴量と不快音圧との関係を有している。
なお、事象関連電位の特徴量は、複数の音の特徴量であれば良い。例えば、第1音と第2音の事象関連電位でも良いすなわち、第1音の事象関連電位の特徴量と、第2音の事象関連電位の特徴量と、不快音圧とを対応付けた関係である。また、第1音と第3音の事象関連電位等の他の組合せでもよい。
本実施形態の説明では、生体信号計測部50は、音刺激生成部75からのトリガを起点にして予め定められた範囲の事象関連電位を切り出し、抽出部55に送信するとした。しかしながら、この処理は一例である。他の処理として、たとえば、生体信号計測部50は継続的に脳波を計測し、抽出部55が必要な事象関連電位の切り出しおよびベースライン補正を行ってもよい。当該構成であれば、音刺激生成部75は生体信号計測部50にトリガを送信する必要はなくなり、抽出部55にトリガを送信すればよい。
また、本実施形態においては、不快音圧決定の結果は、結果蓄積DB80に蓄積されるとしたが、蓄積しなくてもよい。たとえば結果蓄積DB80を不快音圧決定装置1の外部に設ける場合には、不快音圧決定部65の各決定結果を単に出力すればよい。各決定結果は、不快音圧に関する情報として利用され得る。
また、図17は、不快音圧評価システム100(図14)の変形例に係る不快音圧評価システム105の構成を示す。この不快音圧評価システム105は、不快音圧決定装置1と、音刺激装置11と、生体信号計測部50とを有しており、これらは有線または無線により相互に接続され、情報の授受を行う。音刺激装置11は、音データ生成部60(音刺激群決定部70、音刺激詳細決定部71、音刺激生成部75)および音刺激出力部10を合わせた機能を有している。
このような変形例は他にも考えられる。当業者であれば、上述した1つまたは複数の構成要素をまとめて有する装置や回路を設けることが可能である。
なお、特徴量としてはウェーブレット係数やN1−P2振幅のみに限らない。事象関連電位の特徴は波形形状に現れ、ピークが現れたときの潜時(刺激呈示タイミングからの経過時間)と振幅によって記述可能である。これらの特徴を時間的、周波数的、もしくは形状的に記述されていれば、識別のための特徴として利用可能である。本明細書においては、ウェーブレット係数は、事象関連電位の周波数の時間変化を示す情報の一例である。また、考えられ得る特徴量をベクトルとして与えて、判別分析、ベイズ推定等の機械学習的手法に与えると、各パラメータが適切に重み付けされるため、特徴量を事前に絞り込む必要もなくなる。
なお、このUCLの評価結果は補聴器のフィッティングの際に、補聴器の最大出力値を設定するための情報として使用される。
たとえば図18は、補聴器調整システム110の構成を示す。補聴器調整システム110は、図14に示す不快音圧決定システム100と、特性設定部111と、補聴器112とを有している。なお、不快音圧決定システム100は一例である。不快音圧決定システム100に代えて、図17等の変形例にかかる不快音圧決定システムを用いて補聴器調整システムを構成してもよい。
特性設定部111は、不快音圧決定システム100で推定された不快閾値、およびユーザ1が聞き取ることができる、純音の最小音圧である最小可聴値HTLを受け取る。純音の周波数は、たとえば、1000Hz、2000Hz、4000Hzである。最小可聴値HTLは周波数ごとに定義される。最小可聴値HTLは、たとえば最小可聴値の測定器(オージオメータ;図示せず)から有線、無線または記録媒体などを介して送信される。特性設定部111は、不快閾値を最大出力値として補聴器112に設定する。また最小可聴値HTLを最小出力値として補聴器112に設定してもよい。
補聴器調整システム110は、少なくとも特性設定部111を含んでいればよい。特性設定部111は、不快音圧判定部65が判定した不快音圧を受け取って、補聴器112の特性を設定する。このときの不快音圧判定部65は、補聴器調整システム110でなくてもよい。
本発明の一態様にかかる不快音圧決定装置および不快音圧決定装置が組み込まれた不快音圧決定システムによれば、ユーザが不快に感じるほどうるさい音圧かどうかを、客観的に決定することができる。それによって、ユーザが不快音圧を感じることがなく、聞いていて疲れない補聴器フィッティングを実現できるため、全ての補聴器ユーザのフィッティングにおいて利用可能である。
1 不快音圧決定装置
5 ユーザ
10 音刺激出力部
11 音刺激装置
50 生体信号計測部
55 事象関連電位特徴量抽出部
65 不快音圧部
70 音刺激群決定部
71 音刺激詳細決定部
75 音刺激生成部
100 不快音圧決定システム

Claims (18)

  1. ユーザの脳波信号を計測する生体信号計測部と、
    第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成する音データ生成部と、
    前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示する出力部と、
    前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
    予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部と
    を備えた、不快音圧決定システム。
  2. 前記音データ生成部は、
    少なくとも、前記複数の音の周波数を決定する音刺激群決定部と、
    少なくとも、前記第1音から第n音までの音圧を決定する詳細決定部と、
    前記音刺激群決定部によって決定された前記周波数を有し、かつ、前記詳細決定部によって決定された、前記第1音から前記第n音まで順に上昇または下降する音圧を有する、前記複数の音に関する音データを生成する音刺激生成部と
    を有する、請求項1に記載の不快音圧決定システム。
  3. 前記詳細決定部は、前記第1音から前記第n音にかけて所定単位で音圧を上昇または下降させる、請求項2に記載の不快音圧決定システム。
  4. 前記詳細決定部は、前記第1音から前記第n音にかけて5dBずつ音圧を上昇または下降させる、請求項3に記載の不快音圧決定システム。
  5. 前記不快音圧決定部は、予め用意された、他者の事象関連電位の周波数の時間変化の特徴量と音圧との関係を教師データとして保持し、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量と前記教師データとを利用して線形判別を実施する、請求項3または4に記載の不快音圧決定システム。
  6. 前記音刺激群決定部は、さらに前記複数の音を呈示すべき一方の耳を決定し、
    前記不快音圧決定部は、右耳および左耳の各々に関し、かつ、前記周波数の各々に関し、前記教師データを複数保持しており、前記音刺激群決定部によって決定された前記一方の耳が右耳か左耳かに応じて、および、前記周波数に応じて、前記教師データを切り換える、請求項5に記載の不快音圧決定システム。
  7. 前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量は、ウェーブレット係数に関する特徴量であり、
    前記特徴量抽出部は、前記複数の音の各々が呈示された時刻から300ms以下の時間範囲に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位のウェーブレット係数を、前記特徴量として抽出する、請求項6に記載の不快音圧決定システム。
  8. 前記特徴量抽出部は、前記事象関連電位のウェーブレット係数を所定の周波数幅および所定の時間幅で平均した値を、前記特徴量として抽出する、請求項7に記載の不快音圧決定システム。
  9. 前記所定の周波数幅は5Hz以上15Hz以下である、請求項8に記載の不快音圧決定システム。
  10. 前記所定の時間幅は50msである、請求項8に記載の不快音圧決定システム。
  11. 前記不快音圧決定部は、前記第1音と第2音に対する前記特徴量を用いて、前記不快音圧を決定する、請求項8に記載の不快音圧決定システム。
  12. 前記不快音圧決定部によって決定された、前記周波数における不快音圧を蓄積するデータベースをさらに備えた、請求項6に記載の不快音圧決定システム。
  13. 前記データベースは、左右の耳ごと、および、周波数ごとに、前記不快音圧を蓄積する、請求項12に記載の不快音圧決定システム。
  14. 前記生体信号計測部と、
    前記音データ生成部および前記出力部を有する音刺激装置と、
    前記特徴量抽出部、前記不快音圧決定部および前記データベースを有する音刺激装置と
    が通信可能に接続されている、請求項12に記載の不快音圧決定システム。
  15. 請求項1に記載の不快音圧決定システムを用いて推定された前記不快音圧を受け取って、前記不快音圧を最大出力値として補聴器に設定する設定部
    を備えた、補聴器調整システム。
  16. 出力部が出力する第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音の各々が呈示されたときにおいて、前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に脳波信号計測部によって計測されたユーザの脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
    予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、前記特徴量抽出部によって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定する不快音圧決定部と
    を備えた、不快音圧決定装置。
  17. ユーザの脳波信号を計測するステップと、
    第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成するステップと、
    前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示するステップと、
    前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出するステップと、
    予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、抽出する前記ステップによって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定するステップと
    を包含する、不快音圧決定方法。
  18. 不快音圧決定システムの不快音圧決定装置に設けられたコンピュータによって実行されるコンピュータプログラムであって、
    前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータに対し、
    ユーザの脳波信号を取得するステップと、
    第1音から第n音(n:2以上の整数)まで順に上昇または下降する複数の音であって、各々が同一の周波数の純音である複数の音に関する音データを生成するステップと、
    出力部を介して、前記音データに基づいて、前記複数の音を前記ユーザに呈示するステップと、
    前記複数の音の各々が呈示された時刻から所定時間経過後に計測された、前記脳波信号の事象関連電位に基づいて、前記事象関連電位の周波数の時間変化に関する特徴量を抽出するステップと、
    予め用意された、事象関連電位の周波数の時間変化と不快音圧とを対応付けた関係を参照して、抽出する前記ステップによって抽出された前記特徴量に対応する音圧を、前記周波数における不快音圧であると決定するステップと
    を実行させる、コンピュータプログラム。
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