JP5089281B2 - 状態推定装置及び状態推定方法 - Google Patents
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Description
上記の状態方程式は、システムの動特性と観測系の性質を数学的に表現した数式モデルに相当する。
ただし、カルマンフィルタは、この数式モデルが時間的に変動せず一定であるか、もしくは、その変動が確定的で事前に既知であることを前提としている。
したがって、このような場面では使用することができないカルマンフィルタの弱点を克服するフィルタ方式として、事前に想定される複数のモデルに対応するカルマンフィルタを並列に動作させる多重モデル方式のフィルタが各種提案されている。
その中でも、推定精度と演算負荷のバランスから最も有効とされるのが、IMM(Interacting Multiple Model)フィルタである(例えば、非特許文献1を参照)。
また、x kはp次元状態ベクトル、y kはq次元観測ベクトル、rkはシステムのモデル変数、w kはシステム雑音ベクトル、v kは観測雑音ベクトルを表している。
また、係数行列A(),B(),H(),G()はrkの既知の行列関数である。なお、kはサンプリング時刻(以下、単に時刻と称する)tkを表すインデックスである。
例えば、モータの制御機器においては、コイルに流れる電流値や、モータシャフトの回転位置、速度などで構成される。
また、衛星の追跡システムにおいては、衛星の位置、速度、姿勢角などで構成される。
また、ある種の経済予測システムにおいては、収入、税率、失業率、経済成長率などが含まれ、生体計測機器の例では、血糖値、脈拍、呼吸数、体温などが含まれる。
観測ベクトルy kの時系列データに基づいて状態ベクトルx kを推定することがフィルタ処理の目的となる。
また、システム雑音ベクトルw k、観測雑音ベクトルv kは、互いに独立な白色ガウス雑音であると仮定する。
モデル変数rkは、時刻tkにおいて、s個の離散的状態(S={1,2,・・・,s}で表す)のいずれかをとり、その値は、確率的に推移すると仮定する。
そこで、下記の式(3)に示すように、時刻tk-1でシステムが離散的状態iであったときに時刻tkで状態jに推移する確率pijを予め規定する。ただし、定義により、下記の式(4)が成立する。
まず、初期時刻t0に対するs個のモデルj(j=1,2,・・・,s)のモデル確率の初期値μ0(j)と、各モデルに対応するカルマンフィルタの状態ベクトル推定値の初期値x 0|0(j)ハットと、推定誤差共分散行列の初期値P0|0(j)とを設定して、フィルタ処理を開始する。
サンプリング時刻毎の処理ループに入ると、最初に、以下の混合処理を行う。ただし、以下では、時刻tkにおける処理を示すものとする。
これにより、各モデルの状態ベクトル予測値x k|k-1(j)ハットと、予測誤差共分散行列Pk|k-1(j)と、更新後の状態ベクトル推定値x k|k(j)ハットと、推定誤差共分散行列Pk|k(j)とが得られる。
まず、以下の式(9)、式(10)にしたがって、各モデルの残差ベクトルy k(j)チルダと、残差共分散行列Dk(j)を算出する。
残差ベクトルy k(j)チルダは、状態ベクトル予測値から求められた観測ベクトルの予測値と、実際に取得された観測ベクトルとの差を表すベクトルである。
この残差ベクトルy k(j)チルダは、平均零ベクトルと残差共分散行列Dk(j)の多変量ガウス分布にしたがって実現すると仮定すれば、式(11)により算出される確率密度Λk(j)はモデルjの尤度を表すものとなる。
なお、モデルjの尤度Λk(j)は現時刻tkの観測ベクトルy kを受けた結果として、各モデルのフィルタがどの程度適合しているかを測る指標値となる。
この尤度Λk(j)を使用する式(12)にしたがって、現時刻tkに対応するモデル確率μk(j)が算出される。
式(12)と式(8)により逐次的に計算されるモデル確率μk(j)は、前時刻tk-1のモデル確率μk-1(j)及びモデル間の推移pijと、現時刻tkの尤度Λk(j)から推論された「モデルjが正しい確率」であり、下記の式(13)が成立する。
(1)予め用意されているモデルのカルマンフィルタ処理を実施して、当該モデルの状態ベクトル推定値x k|k(j)ハットと推定誤差共分散行列Pk|k(j)を更新する複数のカルマンフィルタ処理部
(2)複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態ベクトル推定値x k|k(j)ハットと推定誤差共分散行列Pk|k(j)から、式(9)〜式(11)によって、各モデルのモデル尤度Λk(j)を計算するモデル尤度計算部
(3)モデル尤度計算部により計算されたモデル尤度Λk(j)から、式(12)によって、各モデルのモデル確率μk(j)を計算するモデル確率計算部
(4)複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態ベクトル推定値x k|k(j)ハットと推定誤差共分散行列Pk|k(j)を、式(14)〜式(15)によって、モデル確率計算部により計算されたモデル確率μk(j)に応じた統合加重で統合する統合処理部
(5)複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態ベクトル推定値x k|k(j)ハットと推定誤差共分散行列Pk|k(j)を、式(5)〜式(8)によって、モデル確率計算部により計算されたモデル確率μk(j)に応じた混合加重で混合し、混合後の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(j)ハットと推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(j)を複数のカルマンフィルタ処理部に出力する混合処理部
また、事前に設定したモデルの中に、システムや観測系の性質を正確に描写したものが存在しなくても、それに近いモデルのフィルタ出力ほど高いモデル確率で重み付けされて統合処理されることにより、近似的にシステム状態量を計算することができる。
図1はこの発明の実施の形態1による状態推定装置を示す構成図である。図1では、モデル数がs=3の場合の例を示している。言うまでもないが、他のモデル数の場合にも同様に構成することができる。
図において、観測装置1は例えばセンサなどの計測手段であり、時刻tkの観測ベクトルy kを状態推定装置に出力する。
なお、混合処理部2は混合処理手段を構成している。
カルマンフィルタ処理部3−2は混合処理部2により混合されたモデル(2)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(2)ハット及び推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(2)と、観測装置1から出力された観測ベクトルy kとを入力して、モデル(2)のカルマンフィルタ処理を実施し、モデル(2)の状態ベクトル推定値の更新値x k|k(2)ハット及び推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(2)を推定値記憶部4−2及び統合処理部10に出力する。
なお、カルマンフィルタ処理部3−1〜3−3はカルマンフィルタ処理手段を構成している。
推定値記憶部4−1〜4−3はカルマンフィルタ処理部3−1〜3−3から出力された状態ベクトル推定値の更新値x k|k(j)ハット及び推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(j)を記憶するメモリである。
モデル確率計算部6はモデル尤度計算部5により計算されたモデル尤度Λk(j)から、式(12)によって、各モデルのモデル確率μk(j)を計算する処理を実施する。
なお、モデル尤度計算部5及びモデル確率計算部6からモデル確率算出手段が構成されている。
モデル確率記憶部7はモデル確率計算部6により計算された各モデルのモデル確率μk(j)を記憶するメモリである。
なお、モデル構成判定部8はモデル判別手段を構成している。
モデル構成記憶部9はモデル構成判定結果S’を記憶するメモリである。
なお、統合処理部10は統合処理手段を構成している。
混合計算部12−1は推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットを混合加重mijで混合して、モデル(1)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(1)ハットをカルマンフィルタ処理部3−1に出力するとともに、推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を混合加重mijで混合して、モデル(1)の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(1)をカルマンフィルタ処理部3−1に出力する。
混合計算部12−3は推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットを混合加重mijで混合して、モデル(3)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(3)ハットをカルマンフィルタ処理部3−3に出力するとともに、推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を混合加重mijで混合して、モデル(3)の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(3)をカルマンフィルタ処理部3−3に出力する。
統合計算部22はカルマンフィルタ処理部3−1〜3−3から出力された各モデルの状態ベクトル推定値の更新値x k|k(j)ハットを統合加重μ’(j)で統合して、統合後の状態ベクトル推定値x k|kを出力するとともに、カルマンフィルタ処理部3−1〜3−3から出力された各モデルの推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(j)を統合加重μ’(j)で統合して、統合後の推定誤差共分散行列Pk|kを出力する。
図4はこの発明の実施の形態1による状態推定方法を示すフローチャートである。
最初に、モデル確率記憶部7にモデル確率の初期値μ0(j)(j=1,2,・・・,s)が設定され、また、推定値記憶部4−1〜4−3に各モデルの状態ベクトル推定値の初期値x 0|0(j)ハットと、推定誤差共分散行列の初期値P0|0(j)が設定される。
その後、観測装置1から時刻tk(k≧1とする)の観測ベクトルy kが得られると、以下のフィルタ処理を開始する。
混合処理部2の混合計算部12−1〜12−3は、混合加重計算部11が混合加重mijを計算すると、推定値記憶部4−1〜4−3から前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットと推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)の読み出しを行う。
また、混合計算部12−1〜12−3は、前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)と、前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットと、混合後の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(j)ハットと、混合加重mijとを式(6)に代入して、前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を混合し、混合後の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(j)をカルマンフィルタ処理部3−1〜3−3に出力する(ステップST3)。
また、カルマンフィルタ処理部3−1は、モデル(1)の状態ベクトル予測値x k|k-1(1)ハット及び予測誤差共分散行列Pk|k-1(1)と、観測ベクトルy kとをモデル尤度計算部5に出力する。
即ち、カルマンフィルタ処理部3−2は、混合処理部2により混合されたモデル(2)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(2)ハット及び推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(2)と、観測装置1から出力された観測ベクトルy kとを入力して、モデル(2)のカルマンフィルタ処理を実施し、モデル(2)の状態ベクトル推定値の更新値x k|k(2)ハット及び推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(2)を推定値記憶部4−2及び統合処理部10に出力する(ステップST4)。
また、カルマンフィルタ処理部3−2は、モデル(2)の状態ベクトル予測値x k|k-1(2)ハット及び予測誤差共分散行列Pk|k-1(2)と、観測ベクトルy kとをモデル尤度計算部5に出力する。
即ち、カルマンフィルタ処理部3−3は、混合処理部2により混合されたモデル(3)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(3)ハット及び推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(3)と、観測装置1から出力された観測ベクトルy kとを入力して、モデル(3)のカルマンフィルタ処理を実施し、モデル(3)の状態ベクトル推定値の更新値x k|k(3)ハット及び推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(3)を推定値記憶部4−3及び統合処理部10に出力する(ステップST4)。
また、カルマンフィルタ処理部3−3は、モデル(3)の状態ベクトル予測値x k|k-1(3)ハット及び予測誤差共分散行列Pk|k-1(3)と、観測ベクトルy kとをモデル尤度計算部5に出力する。
また、モデル尤度計算部5は、その予測誤差共分散行列Pk|k-1(j)を式(10)に代入して、各モデルの残差共分散行列Dk(j)を算出する。
モデル尤度計算部5は、各モデルの残差ベクトルy k(j)チルダと残差共分散行列Dk(j)を算出すると、各モデルの残差ベクトルy k(j)チルダと残差共分散行列Dk(j)を式(11)に代入して、各モデルのモデル尤度Λk(j)を計算する(ステップST5)。
統合加重調整部21は、下記の式(16)に示すように、現時刻tkで使用しないモデルの統合加重を0とし、現時刻tkで使用するモデルの統合加重の総和が1になるように、モデル確率計算部6により計算されたモデル確率μk(j)に応じた各モデルの統合加重μ’(j)を計算する(ステップST8)。
また、統合計算部22は、各モデルの統合加重μ’(j)と、各モデルの推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(j)と、各モデルの状態ベクトル推定値の更新値x k|k(j)ハットと、統合後の状態ベクトル推定値x k|kとを下記の式(18)に代入して、各モデルの推定誤差共分散行列の更新値Pk|k(j)を統合し、統合後の推定誤差共分散行列Pk|kを出力する(ステップST10)。
その理由は、上記カルマンフィルタの出力より得られるモデル尤度を継続的に監視するなどして、使用再開の判断を行えるよう配慮したものである。
また、一旦処理を停止してしまうと、処理を再開する際、初期値から動作を開始する必要があり、処理結果が収束するまでの間に、フィルタ全体の推定精度に影響を与えることがあるからである。
図5はこの発明の実施の形態2による状態推定装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
混合処理部30は推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハット及び推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)のうち、前時刻tk-1のモデル構成判定部8の処理により現時刻tkで使用すると判別されたモデルの状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハット及び推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を、モデル確率計算部6により計算されたモデル確率μk(j)に応じた混合加重で混合する処理を実施する。
なお、混合処理部30は混合処理手段を構成している。
混合加重調整部32はモデル構成記憶部9に記憶されている前時刻tk-1のモデル構成判定結果S’を参照して、現時刻tkで使用するモデルを認識し、現時刻tkで使用するモデルの混合加重の総和が1になるように(使用しないモデルの統合加重は0とする)、混合加重計算部31により計算された混合加重mijを調整する処理を実施する。
混合計算部33−1は推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットを調整後の混合加重m’ijで混合して、モデル(1)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(1)ハットをカルマンフィルタ処理部3−1に出力するとともに、推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を調整後の混合加重m’ijで混合して、モデル(1)の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(1)をカルマンフィルタ処理部3−1に出力する。
混合計算部33−3は推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットを調整後の混合加重m’ijで混合して、モデル(3)の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(3)ハットをカルマンフィルタ処理部3−3に出力するとともに、推定値記憶部4−1〜4−3に記憶されている前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)を調整後の混合加重m’ijで混合して、モデル(3)の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(3)をカルマンフィルタ処理部3−3に出力する。
混合処理部30以外は、上記実施の形態1と同様であるため、混合処理部30の処理内容のみを説明する。
混合処理部30の混合加重計算部31は、モデル確率記憶部7に記憶されている前時刻tk-1のモデル確率μk-1(j)を式(7)〜式(8)に代入して、混合加重mijを計算する。
混合加重調整部32は、下記の式(19)に示すように、現時刻tkで使用しないモデルの混合加重を0とし、現時刻tkで使用するモデルの混合加重の総和が1になるように、混合加重計算部31により計算された混合加重mijを調整する。
混合加重調整部32は、調整後の混合加重m’ijを混合計算部33−1〜33−3に出力する。ただし、i=1,2,・・・,sである。
また、混合計算部33−1〜33−3は、前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pk-1|k-1(j)と、前時刻tk-1の状態ベクトル推定値x k-1|k-1(j)ハットと、混合後の状態ベクトル推定値x m k-1|k-1(j)ハットと、調整後の混合加重m’ijとを下記の式(21)に代入して、前時刻tk-1の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(j)を混合し、混合後の推定誤差共分散行列Pm k-1|k-1(j)をカルマンフィルタ処理部3−1〜3−3に出力する。
その理由は、上記カルマンフィルタの出力より得られるモデル尤度を継続的に監視するなどして、使用再開の判断を行えるよう配慮したものである。
また、一旦処理を停止してしまうと、処理を再開する際、初期値から動作を開始する必要があり、処理結果が収束するまでの間に、フィルタ全体の推定精度に影響を与えることがあるからである。
図7はこの発明の実施の形態3による状態推定装置のモデル構成判定部8を示す構成図であり、図において、第1の判別部である状態量によるモデル構成判定部41は統合処理部10より統合された状態ベクトル推定値x k|kハットに含まれている状態変数の値を調べて、使用するモデルを判別する処理を実施する。
第2の判別部であるモデル尤度によるモデル構成判定部42はモデル尤度計算部5により計算されたモデル尤度Λk(j)に基づいて使用するモデルを判別する処理を実施する。
第3の判別部であるモデル構成決定部43はモデル構成判定部41,42の判別結果を統合して、最終的に使用するモデルを判別する処理を実施する。
状態量によるモデル構成判定部41は、統合処理部10から統合後の状態ベクトル推定値x k|kハットを入力し、その状態ベクトル推定値x k|kハットに含まれている状態変数の値を調べて、使用するモデルを判別する。
モデル構成判定部41の判別処理は、特に状態変数の値に応じて、どのようなモデルのカルマンフィルタが必要であるかを事前知識として有している場合に有効である。
図8では、以下に示すようなモデルの選択ルールを表している。ただし、a,bは閾値である。
x1 k<a AND x2 k<b → モデル(1)(2)(3)を使用
x1 k<a AND x2 k≧b → モデル(1)(2)を使用
x1 k≧a AND x2 k<b → モデル(2)(3)を使用
x1 k≧a AND x2 k≧b → モデル(2)を使用
なお、上記の選択ルールは、一例であり、AND条件の代わりにOR条件を使用したり、あるいは、例えば、状態変数x1 k,x2 kの和や積をとるなど、状態変数x1 k,x2 kに対して、何らかの演算を施したりして、その結果の範囲に対する条件などでルールを作成してもよい。
ただし、モデル尤度Λk(j)は、観測雑音の影響を受けて変動するため、時間平滑化を行ってから使用するものとする。即ち、時間平滑化後のモデル尤度Λk(j)バーを所定の閾値と比較して、必要なモデルか否かを判別する。
判定基準としては、状態量によるモデル構成判定部41と、モデル尤度によるモデル構成判定部42の両方で使用すると判別されたモデルを、最終的に使用するモデルとするAND条件や、いずれか一方で使用すると判別されたモデルを、最終的に使用するモデルとするOR条件を用いることが考えられる。
また、状態量によるモデル構成判定部41の判別結果と、モデル尤度によるモデル構成判定部42の判別結果に優先度を設定し、優先度の高い方の判別結果が使用するモデルとされていれば、そのモデルを使用するようにしてもよい。
さらに、上記優先度が時刻や運用条件によって変動せず、予め固定的に設定できる場合は、当初から状態量によるモデル構成判定部41、モデル尤度によるモデル構成判定部42のいずれか必要な方のみを動作させ、モデル構成決定部43の処理を省略することにより装置を簡素化できることは言うまでもない。
さらに、あるモデルについての判別結果が、時刻毎に頻繁に入れ替わるのを防ぐ目的で、連続して何回か同じ判別結果が得られた場合に限り、「使用/不使用」の判別結果を反転させることができるとする条件を加味することも考えられる。
図9はこの発明の実施の形態4による状態推定装置のモデル構成判定部8を示す構成図であり、図において、図7と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
モデル確率調整部44はモデル構成決定部43により最終的に使用すると判別されたモデルのモデル尤度Λk(j)(または、時間平滑化後のモデル尤度Λk(j)バー)を正規化し、正規化後のモデル尤度Λk(j)にしたがってモデル確率記憶部7に記憶されているモデル確率μk(j)を変更する処理を実施する。
モデル確率調整部44は、モデル構成決定部43により決定された現時刻のモデル構成判定結果が前時刻のモデル構成判定結果と異なり、あるモデルの使用が中止されたり、逆にあるモデルの使用が新たに開始された場合に、モデル確率記憶部7に記憶されているモデル確率μk(j)を変更するものである。
ここで、式(12)と式(8)によって逐次的に計算されるモデル確率μk(j)は、過去から現時刻に至るまでのモデル尤度Λk(j)の情報を含んでいる。このため、モデル構成が変更された場合には、過去の情報を極力排除し、最近のモデル尤度の情報のみでモデル確率を再設定することが、フィルタ全体の収束性を高めるために有効である。
ただし、各時刻のモデル尤度は、観測雑音の影響を受けて変動する可能性があるため、式(22)や式(23)によって時間平滑化されたモデル尤度Λk(j)バーを用いることが望ましい。
Claims (9)
- 予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理部と、
上記カルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算部と、
上記モデル尤度計算部により計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算部と、
上記複数のモデル尤度計算部により計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別するモデル構成判定部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列のうち、上記モデル構成判定部により必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理部と
を備えた状態推定装置。 - 予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理部と、
上記カルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算部と、
上記モデル尤度計算部により計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理部と、
上記統合処理部により統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別するモデル構成判定部とを備え、
上記統合処理部が上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を統合する際、上記モデル構成判定部により必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列だけを統合することを特徴とする状態推定装置。 - 予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理部と、
上記カルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算部と、
上記モデル尤度計算部により計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算部と、
上記複数のモデル尤度計算部により計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別するモデル構成判定部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列のうち、上記モデル構成判定部により必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列だけを上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた混合加重で混合し、混合後の状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のカルマンフィルタ処理部に出力する混合処理部と
を備えた状態推定装置。 - 予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理部と、
上記カルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算部と、
上記モデル尤度計算部により計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理部と、
上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算部により計算されたモデル確率に応じた混合加重で混合し、混合後の状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のカルマンフィルタ処理部に出力する混合処理部と、
上記統合処理部により統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別するモデル構成判定部とを備え、
上記混合処理部が上記複数のカルマンフィルタ処理部により更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を混合する際、上記モデル構成判定部により必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列だけを混合することを特徴とする状態推定装置。 - モデル構成判定部は、統合処理部により統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別する第1の判別部のほかに、
複数のモデル尤度計算部により計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別する第2の判別部を備えるとともに、
上記第1の判別部の判別結果と上記第2の判別部の判別結果とを統合して、最終的に必要なモデルを判別する第3の判別部を備えている
ことを特徴とする請求項2または請求項4記載の状態推定装置。 - モデル構成判定部は、複数のモデル尤度計算部により計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別する第2の判別部のほかに、
統合処理部により統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別する第1の判別部を備えるとともに、
上記第1の判別部の判別結果と上記第2の判別部の判別結果とを統合して、最終的に必要なモデルを判別する第3の判別部を備えている
ことを特徴とする請求項1または請求項3記載の状態推定装置。 - モデル構成判定部は、必要なモデルのモデル尤度を正規化し、正規化後のモデル尤度にしたがってモデル確率計算部により計算されたモデル確率を変更することを特徴とする請求項1、請求項3、請求項5または請求項6記載の状態推定装置。
- 複数のカルマンフィルタ処理部が、予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理ステップと、
複数のモデル尤度計算部が、上記カルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算ステップと、
複数のモデル確率計算部が、上記モデル尤度計算ステップで計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算ステップと、
統合処理部が、上記複数のカルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算ステップで計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理ステップと、
モデル構成判定部が、上記統合処理ステップで統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別する第1の判別処理と、上記複数のモデル尤度計算ステップで計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別する第2の判別処理と、上記第1の判別処理の判別結果と上記第2の判別処理の判別結果とを統合して、最終的に必要なモデルを判別する第3の判別処理とを実施するモデル構成判定ステップとを備え、
上記統合処理ステップが上記複数のカルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を統合する際、上記モデル構成判定ステップで必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列だけを統合することを特徴とする状態推定方法。 - 複数のカルマンフィルタ処理部が、予め用意されている複数のモデルのうち、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列と観測装置により観測された観測値とを、当該モデルに対応するカルマンフィルタに入力して、上記カルマンフィルタの処理を実施することで、当該モデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列を更新する複数のカルマンフィルタ処理ステップと、
複数のモデル尤度計算部が、上記カルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列から当該モデルのモデル尤度を計算する複数のモデル尤度計算ステップと、
複数のモデル確率計算部が、上記モデル尤度計算ステップで計算されたモデル尤度から当該モデルのモデル確率を計算する複数のモデル確率計算ステップと、
統合処理部が、上記複数のカルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算ステップで計算されたモデル確率に応じた統合加重で統合する統合処理ステップと、
混合処理部が、上記複数のカルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記複数のモデル確率計算ステップで計算されたモデル確率に応じた混合加重で混合し、混合後の状態推定値及び推定誤差共分散行列を上記カルマンフィルタ処理ステップに出力する混合処理ステップと、
モデル構成判定部が、上記統合処理ステップで統合された状態推定値に含まれている状態変数の値に基づいて、予め用意されている複数のモデルの中から、必要なモデルを判別する第1の判別処理と、上記複数のモデル尤度計算ステップで計算されたモデルのモデル尤度を所定の閾値と比較して、上記モデル尤度が上記閾値より高ければ、上記モデルは必要なモデルであると判別し、上記モデル尤度が上記閾値より低ければ、上記モデルは不要なモデルであると判別する第2の判別処理と、上記第1の判別処理の判別結果と上記第2の判別処理の判別結果とを統合して、最終的に必要なモデルを判別する第3の判別処理とを実施するモデル構成判定ステップとを備え、
上記混合処理ステップが上記複数のカルマンフィルタ処理ステップで更新された状態推定値及び推定誤差共分散行列を混合する際、上記モデル構成判定ステップで必要であると判別されたモデルの状態推定値及び推定誤差共分散行列だけを混合することを特徴とする状態推定方法。
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