JP5086926B2 - 算出方法、プログラム及び露光方法 - Google Patents

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Description

本件は、算出方法、プログラム及び露光方法に関する。
フォトリソグラフィー(焼き付け)技術を用いて半導体デバイスを製造する際に、原版(マスク又はレチクル)に描画された回路パターンを投影光学系によってウエハ等の基板に投影して回路パターンを転写する投影露光装置が使用されている。近年では、半導体デバイスの微細化に伴い、投影露光装置には、更なる解像力の向上(高解像度化)が望まれている。
投影露光装置の高解像度化を達成する手段としては、投影光学系の高NA化(投影光学系の開口数(NA)の増加)及び露光光の短波長化が従来から知られている。また、k1ファクター(「プロセス定数」とも呼ばれる)を小さくすることにより投影露光装置の解像度の向上を図る超解像技術(RET:Resolution Enhanced Technology)も注目されている。
一方、k1ファクターが小さくなるにつれて、露光の難易度は増している。従来では、実験を何回か繰り返して露光可能かどうか(即ち、回路パターンを忠実に投影することができるかどうか)を確認し、露光(露光条件や露光方法など)の最適化をしていた。但し、露光の難易度が増している現在では、露光可能かどうかを実験で確認するのでは時間もコストもかかってしまう。そこで、現在では、コンピュータを用いて露光シミュレーションを繰り返して露光の最適化をしている。かかるシミュレーションにおいては、予め決められたルールに基づいたシミュレーションから、光学の物理モデルに基づいたシミュレーションを実行する、所謂、モデルベース超解像技術が主流となっている。
モデルベース超解像技術は、一般的に、部分コヒーレント結像計算を使用している。従って、部分コヒーレント結像計算の計算速度を向上させれば、モデルベース超解像技術(シミュレーション)にかかる時間を短縮することが可能となる。現在では、コンピュータ環境の進歩に伴い、複数台のコンピュータを並列化させて計算速度を向上させる技術も提案されている。また、部分コヒーレント結像計算を実行するアルゴリズムを改良することで、コンピュータの並列化よりも効果的に計算速度を向上させる技術も提案されている。
例えば、非特許文献1(Cris Spence著)において、SOCSというアルゴリズムは計算速度(シミュレーション速度)を10000倍にしたとの報告がなされている。また、非特許文献2には、部分コヒーレント結像計算について記載されているが、SOCSのアルゴリムを用いた場合の計算速度を上回る計算速度を実現するアルゴリズムは紹介されていない。なお、非特許文献2では、SOCSをCoherent Decompositionと呼んでいる。
Full−Chip Lithography Simulation and Design Analysis−How OPC is Changing IC Design,Proc. of SPIE,USA、SPIE press,2005,Vol.5751,pp.1−14 Alfred Kwok−kit Wong著,「Optical Imaging in Projection Microlithography」,アメリカ合衆国、SPIE press,2005年,pp.151−163
しかしながら、SOCSは、相互透過係数(TCC:Transmission Cross Coefficient)の算出や固有値及び固有関数の分解に時間がかかってしまう。
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みて、投影光学系の像面に形成される光強度分布を短時間で算出することができる算出方法を提供することを例示的目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の側面としての算出方法は、照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布をコンピュータによって算出する算出方法であって、前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を、複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、を有することを特徴とする。
本発明の第2の側面としてのプログラムは、照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、を実行させることを特徴とする。
本発明の第3の側面としての露光方法は、照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出された前記光強度分布に基づいて露光条件を調整する調整ステップと、前記調整ステップの後、前記原版のパターンの像を前記基板に投影する露光ステップと、を有し、前記算出ステップは、前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、を含むことを特徴とする。
本発明の第4の側面としてのプログラムは、照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータに、前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を、複数の領域に分割して、前記複数の領域のそれぞれについて前記有効光源を複数の点光源に分割する分割ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記点光源の各位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、を実行させることを特徴とする。
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
本発明によれば、例えば、投影光学系の像面に形成される光強度分布を短時間で算出する算出方法を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本発明は、例えば、露光装置や顕微鏡などにおいて、部分コヒーレント結像に基づいた光学系の結像計算(部分コヒーレント結像計算)に適用することができる。また、本発明は、IC、LSIなどの半導体チップ、液晶パネルなどの表示素子、磁気ヘッドなどの検出素子、CCDなどの撮像素子等の各種デバイスの製造やマイクロメカニクスで用いる原版のデータの生成に適用することもできる。なお、マイクロメカニクスとは、半導体集積回路製造技術を微細構造体の製作に応用して、高度な機能を有するミクロン単位の機械システムを作成する技術や、かかる機械システム自体である。
また、本発明で開示される概念は、数学的にモデル化することができる。従って、コンピュータ・システムのソフトウエア機能として実装することができる。コンピュータ・システムのソフトウエア機能は、実行可能なソフトウエア・コードを有するプログラミングを含み、本実施形態では、部分コヒーレント結像計算を実行する。ソフトウエア・コードは、コンピュータ・システムのプロセッサによって実行される。ソフトウエア・コード動作中において、コード又は関連データ記録は、コンピュータ・プラットフォームに格納される。但し、ソフトウエア・コードは、他の場所に格納される、或いは、適切なコンピュータ・システムにロードされることもある。従って、ソフトウエア・コードは、1つ又は複数のモジュールとして、コンピュータで読み取り可能な記録媒体で保持することができる。本発明は、上述したコードという形式で記述することが可能であり、1つ又は複数のソフトウエア製品として機能させることができる。
まず、本実施形態における露光装置の座標系について説明する。露光装置の座標系は、本実施形態では、2つに大別される。
第1の座標系は、マスク面(投影光学系の物体面)及びウエハ面(投影光学系の像面)における座標であって、本実施形態では、(x、y)で表す。マスク面上のパターンの大きさとウエハ面上のパターンの大きさとでは、投影光学系の倍率だけ異なる。但し、以下では、説明を簡単にするために、マスク面上のパターンの大きさに投影光学系の倍率をかけて、マスク面上のパターンの大きさとウエハ面上のパターンの大きさを1:1で対応させる。これにより、マスク面の座標系とウエハ面の座標系も1:1で対応する。
第2の座標系は、投影光学系の瞳面における座標であって、本実施形態では、(f、g)で表す。また、投影光学系の瞳面における座標(f、g)は、投影光学系の瞳の半径が1となるように規格化した座標系である。
露光装置では、投影光学系の物体面にマスクを配置しない状態において、投影光学系の瞳面に形成される光強度分布を有効光源と呼び、本実施形態では、S(f、g)で表す。また、投影光学系の瞳は、本実施形態では、瞳関数P(f、g)で表す。瞳関数には収差や偏光の影響(情報)を組み込むことができるため、一般的には、瞳関数といえば、収差や偏光の影響が含まれる。
露光装置は、部分コヒーレント照明でマスクを照明して、マスクのパターン(マスクパターン)をウエハに投影する。本実施形態では、透過率及び位相情報を含むマスクパターンをo(x、y)で定義し、ウエハ面に形成される光強度分布(空中像)をI(x、y)で定義する。また、マスクパターンで回折された回折光の振幅は、投影光学系の瞳面で定義され、本実施形態では、a(f、g)とする。
ここで、従来の部分コヒーレント結像計算について説明する。従来の部分コヒーレント結像計算(投影光学系の像面における光強度分布の計算)は、3種類の計算方法に大別することができる。
第1の計算方法は、光源面積分の方法(所謂、アッベの方法)である。具体的には、光源面積分の方法は、以下の数式1に示すように、光強度分布I(x、y)を算出する。
数式1において、Nは数値計算上の点光源の数を表し、Fはフーリエ変換を表す。
第2の計算方法は、TCCを固有値分解せずに計算する方法である。TCCは、以下の数式2に示すように定義される。
数式2を参照するに、TCCは、4次元関数であることがわかる。光強度分布I(x、y)は、TCCを用いることで、以下の数式3から算出することができる。
数式3において、Nは、i、j、k、lがとりうる種類(数)を表し、数値計算上の瞳分割数に依存する。
第3の計算方法は、SOCSと呼ばれる方法であって、数式2に示すTCCを複数の固有値及び固有関数に分解する。第i番目の固有値をλ、第i番目の固有関数をΨとすると、光強度分布I(x、y)は、以下の数式4で算出される。
数式4において、Nは、数値計算上の点光源の数を表す。
光源面積分の方法は、小規模計算(小規模シミュレーション)に好適である。具体的には、光源面積分の方法は、マスクの一部分に関するシミュレーションをしたり、光学的な設定(有効光源、収差、偏光など)の違いによって結像性能がどのように変化するのかを調べたりする場合に好適である。
TCCを用いた計算方法、即ち、数式3を用いた計算方法は、4重積分を実行する必要があるため、光源面積分の方法及びSOCSと比較して計算速度が遅い。そこで、4重積分を実行せずに光強度分布を求める方法としてSOCSがある。SOCSは、大規模計算(大規模シミュレーション)に好適である。
大規模計算では、マスクを複数の領域に分割して計算する。もし、光学的な設定(有効光源、収差、偏光など)が変化しなければ、数式2に示すTCCは変化しないため、数式4における固有関数Ψも変化しない。従って、固有値λ及び固有関数Ψを一度求めてしまえば、マスク、即ち、回折光の振幅a(f、g)が変化しても、2次元のフーリエ変換と2乗和をとるという単純計算の繰り返しであるため、SOCSはマスクのみを変化させる大規模計算に好適である。
一方、数式2から理解されるように、TCCを算出するためには、2重積分を実行する必要がある(即ち、TCCが4次元関数である)。従って、SOCSでは、TCCの算出に時間がかかると共に、膨大なコンピュータ・メモリが必要となる。また、SOCSは、固有値λ及び固有関数Ψの算出にも時間がかかってしまう。更に、SOCSは、光学的な設定(有効光源、収差、偏光など)が変化すると、TCCを算出しなおさなければならない。従って、SOCSは、光学的な設定を変化させて結像性能の変化を調べる場合(小規模計算)には適していない。
以上のように、従来の計算方法は、シミュレーションに多大な時間を必要としていた。また、従来技術では、計算対象(即ち、小規模計算であるのか、或いは、大規模計算であるのか)に応じて、光源面積分の方法とSOCSとを使い分ける必要がある。
図1は、本発明の一側面としての算出方法を実行する処理装置1の構成を示す概略ブロック図である。
処理装置1は、例えば、汎用のコンピュータで構成され、図1に示すように、バス配線10と、制御部20と、表示部30と、記憶部40と、入力部50と、媒体インターフェース60とを有する。
バス配線10は、制御部20、表示部30、記憶部40、入力部50及び媒体インターフェース60を相互に接続する。
制御部20は、例えば、CPU、GPU、DSP又はマイコンで構成され、一時記憶のためのキャッシュメモリなどを含む。
表示部30は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。
記憶部40は、例えば、メモリやハードディスクで構成される。
記憶部40は、本実施形態では、パターンデータ401と、有効光源情報402と、NA情報403と、λ情報404と、収差情報405と、偏光情報406と、レジスト情報407とを記憶する。更に、記憶部40は、P演算子408と、空中像409と、マスクデータ410と、空中像計算プログラム420とを記憶する。
パターンデータ401は、集積回路などの設定において、レイアウト設計されたパターン(レイアウトパターン又は目標パターン)のデータである。
有効光源情報402は、露光装置の投影光学系の瞳面に形成される光強度分布(有効光源)に関する情報である。
NA情報403は、露光装置の投影光学系の像面側の開口数(NA)に関する情報である。
λ情報404は、露光装置の光源から射出される光(露光光)の波長に関する情報である。
収差情報405は、露光装置の投影光学系の収差に関する情報である。
偏光情報406は、露光装置の照明装置(照明光学系)で形成される光の偏光(照明光の偏光状態)に関する情報である。
レジスト情報407は、ウエハに塗布されるレジストに関する情報である。
P演算子408は、後述するように、ウエハ面に形成される光強度分布である空中像を算出する過程(即ち、空中像計算プログラム420)で必要となる行列である。
空中像409は、空中像計算プログラム420による空中像(光強度分布)の算出結果である。
マスクデータ410は、実際の原版であるマスク(レチクル)のデータである。なお、マスクデータ410は、一般的に、パターンデータ401と異なる。
空中像計算プログラム420は、空中像(光強度分布)を算出するためのプログラムである。
入力部50は、例えば、キーボードやマウスなどを含む。
媒体インターフェース60は、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブやUSBインターフェースなどを含み、記憶媒体70と接続可能に構成される。なお、記憶媒体70は、フレキシブルディスク、CD−ROMやUSBメモリなどである。
以下、空中像計算プログラム420による空中像409の算出について、特に、P演算子408に注目して説明する。なお、本実施形態では、露光光の波長をλとし、投影光学系の像面側の開口数をNAとする。また、照明光学系からマスク面に入射する照明光の開口数と投影光学系の物体面側の開口数との比をσとする。
露光装置におけるマスクパターンと空中像との関係は、部分コヒーレント結像の関係にある。部分コヒーレント結像計算は、上述したように、3種類(数式1、数式3及び数式4参照)に大別されている。数式1及び数式4では、フーリエ変換Fが用いられているため、フーリエ光学の観点から、平面波の足し合わせが空中像を形成していると考えることができる。なお、平面波は、exp[−i2π(fx+gy)]で表される。また、数式3では、フーリエ変換Fが明確に現われていないが、平面波exp[−i2π(fx+gy)]が含まれているため、同様に、平面波の足し合わせであると考えることができる。
このように、部分コヒーレント結像は、光学的には、平面波exp[−i2π(fx+gy)]を基本としていると考えることができる。一方、平面波exp[−i2π(fx+gy)]は、数学的には、完全直交系である。そこで、本実施形態では、平面波が完全直交系であるという性質を利用して、空中像409をより短い時間で算出することを実現している。
まず、1次元の空中像(光強度分布)を算出する場合を例に説明する。この場合、平面波は、exp(−i2πfx)で表すことができる。また、以下の数式5に示すように、完全直交系をベクトルで定義する。
数式5において、Mは、fの範囲を−2≦f≦2とした場合に、数値計算でfの範囲を何分割したかを表す。
ここで、P演算子408について説明する。なお、本実施形態では、数式5におけるMを7としているため、図2に示すように、f=−2、f=−4/3、f=−2/3、f=0、f=2/3、f=4/3、f=2となる。図2は、1次元の平面波(完全直交系)を模式的に示す図である。
マスクパターンで回折された回折光の振幅a(f)を用いると、fから像面に達する平面波は、a(f)exp(−i2πfx)で表すことができる。従って、投影光学系の瞳上の回折光分布が像面に達する光を平面波の重ね合わせで表現するベクトル(即ち、回折光分布のベクトル)|φ’>は、以下の数式6で表すことができる。
数式6において、Aは、回折光の振幅a(f)を対角成分に有する対角行列である。
投影光学系が無収差である場合、投影光学系の瞳は、−1≦f≦1の範囲に存在する回折光をそのまま透過させ、|f|>1の範囲に存在する回折光を遮光する機能を有する。有効光源上の1点f’から射出した光は、投影光学系の瞳をf’だけずらす(シフトする)ことと同等であると考えられる。従って、有効光源上の1点f’から射出した光がマスクパターンで回折された場合、−1≦f−f’≦1の範囲に存在する回折光が投影光学系の瞳を通過し、|f−f’|>1の範囲に存在する回折光が投影光学系の瞳で遮光される。
例えば、有効光源上でf=f=0から射出した光がマスクパターンで回折され、投影光学系の瞳で絞られた場合、投影光学系の瞳を透過した後の回折光の振幅|φ>は、以下の数式7で表すことができる。
投影光学系の瞳を透過した後の回折光の振幅の絶対値を2乗すれば、ウエハ面上の光強度を算出することができるため、f=f=0の点光源がウエハ面に形成する光強度分布I(x)は、以下の数式8で表される。
但し、数式8において、<φ|は、|φ>の転置共役(アジョイント)行列を表す。
同様に、有効光源上でf=fから射出した光がマスクパターンで回折され、投影光学系の瞳で絞られた場合、投影光学系の瞳を透過した後の回折光の振幅|φ>は、以下の数式9で表すことができる。
従って、f=fの点光源がウエハ面に形成する光強度分布I(x)は、以下の数式10で表される。
また、部分コヒーレント照明は、インコヒーレントな点光源の集まりと考えることができる。例えば、有効光源上に2つの点光源が存在し、かかる点光源の座標をf=0、f=fとする。2つの点光源はインコヒーレントであるため、かかる2つの点光源によってウエハ面に形成される光強度分布I(x)は、I(x)+I(x)(即ち、ウエハ面上の光強度の加算)となる。
ここで、以下の数式11に示すように、P演算子P1Dを定義する。
数式11を参照するに、P演算子P1Dの各行は、有効光源上に存在する点光源の位置に応じて投影光学系の瞳をずらした(シフトさせた)ベクトルである。具体的には、投影光学系の瞳面における中心位置と点光源の位置との差分だけ投影光学系の瞳をずらせばよい。P演算子P1Dを用いれば、ウエハ面に形成される光強度分布I(x)は、以下の数式12で表すことができる。
但し、数式12において、「+」記号は、ある行列の転置共役行列を表す。数式12を参照するに、光強度分布I(x)がI(x)+I(x)になっていることを確認することができる。換言すれば、P演算子P1Dを用いることによって、ウエハ面に形成される光強度分布である空中像を簡単に表すことができる。
数式12を変形すれば、以下の数式13を得ることができる。
但し、T1Dは、以下の数式14で定義される行列である。
数式14で定義される行列T1Dは、TCCを表している。P演算子P1Dの算出においては、投影光学系の瞳をずらす(シフトさせる)だけであり、掛け算や足し算を必要としない。従って、P演算子P1Dを、より短い時間で算出することができる。また、P演算子P1DとP演算子P1Dの転置共役との掛け算からTCCを算出することができるため、P演算子を用いれば、TCCもより短い時間で算出することが可能となる。
なお、P演算子P1Dは、行の数と列の数とが一致する正方行列ではない。そこで、特異値分解(Singular Value Decomposition)を用いて、以下の数式15に示すように、P演算子P1Dを変形する。
数式15において、Sは対角行列であり、W及びVはユニタリー行列である。P演算子P1DをL行M列の行列とすると、一般的には、WはL行L列、SはL行M列、VはM行M列となる。但し、LがM以上である場合には、WはL行M列、SはM行M列、VはM行M列にすることができる。一方、LがMよりも小さい場合には、転置行列を用いることで、行数を列数よりも多くすることができる。従って、Sは、以後の計算に寄与しない要素が全て0となる(不要な)行又は列を多く含むことになる。これらの行又は列を削除して(即ち、行列を圧縮して)L及びMのうち大きくない方の行数又は列数となる正方行列を生成すれば、Sを対角行列にすることができる。
数式15を数式12に代入して、WWが単位行列になるという特異値分解の性質を用いれば、以下の数式16を得ることができる。
数式16において、Vは、行列Vの第j行をとったものである。
従来の部分コヒーレント結像計算の1つの計算方法であるSOCSは、上述したように、TCCを固有値及び固有関数に分解する。TCCは非常に大きな行列であるため、TCCの算出には多大な時間とコンピュータ・メモリを必要とする。更には、固有値及び固有関数の分解にも多大な時間が必要となる。
一方、本実施形態では、P演算子を特異値分解している。P演算子がL行M列の行列であるとすると、数式14から、TCCはM行M列となる。ここで、Lは、瞳分割によって形成される点光源の数である。また、Mは、瞳の2倍の範囲の分割数であり、瞳の分割数、即ち、−1≦f≦1の範囲の分割数のほぼ2倍となる。従って、P演算子の要素数はTCCの要素数よりも必ず少なくなるため、特異値分解にかかる時間が少なくてすむ。更に、P演算子の算出には、掛け算や足し算などの複雑な計算を必要としないため、P演算子をより少ない時間で算出することができる。換言すれば、P演算子を用いることで、SOCSより少ない計算量及び小容量のコンピュータ・メモリで固有値及び固有関数を算出することができる。その結果、ウエハ面に形成される光強度分布である空中像をより短い時間で算出することができる。また、数式14を用いれば、TCCをより短い時間で算出することも可能である。
ここで、有効光源の複数の点光源を複数の点光源集合に分割する(即ち、有効光源を複数の領域に分割する)場合について考える。
数式7における回折光シフト行列P 1D=(0 0 1 1 1 0 0)と数式9における回折光シフト行列P 1D=(0 0 0 1 1 1 0)とを用いると、数式12は、以下の数式17に示すように変形することができる。
数式17は、有効光源の全体で定義したP演算子を用いて光強度分布を算出した結果と、複数の点光源集合(複数の領域)のそれぞれで定義したP演算子を用いて光強度分布を算出して合成した結果とが一致することを示している。本実施形態では、全体として2つの点光源を含む有効光源を1つの点光源を含む点光源集合に分割しているが、点光源集合が複数の点光源を含むように分割してもよいことは明らかである。
これまでは、1次元の空中像(光強度分布)を算出する場合を説明したが、以下では、2次元の空中像(光強度分布)を算出する場合を説明する。
離散化された投影光学系の瞳面における座標を(f、g)とする。但し、i及びjの範囲は、1からMとする。回折光分布のベクトル|φ’2D>は、以下の数式18に示すように、1次元に並べて表される。
|φ’2D>を具体的に表すために、floorは小数点以下切り捨てを表すものとする。|φ’2D>の第n行は、j=floor[(n−1)÷M]+1、i=n−(j−1)×Mとして、a(f、g)exp[−i2π(fx+gy)]である。このように、2次元の完全直交系を表す。
有効光源上の第1の点光源の座標を(f、g)とすると、第1の点光源から射出した光は、投影光学系の瞳を示す瞳関数P(f、g)を(f、g)だけずらすことと同等であると考えられる。そのため、回折光に作用する瞳関数P(f、g)は、P(f+f、g+g)で表される。瞳関数P(f、g)の各要素を、数式19に示すように1次元に並べる。これにより、瞳関数Pを1次元のベクトルで表現することができる。
を具体的に表すために、floorは小数点以下切り捨てを表すものとする。Pの第n列は、j=floor[(n−1)÷M]+1、i=n−(j−1)×Mとして、P(f、g)である。このように、2次元の完全直交系を表す。
有効光源上の第2の点光源の座標を(f、g)とすると、第2の点光源から射出した光に作用する瞳関数P(f、g)は、P(f、g)を(f、g)だけずらして、P(f+f、g+g)で表される。瞳関数Pは、瞳関数Pと同様に、以下の数式20に示すような1次元のベクトルで表現することができる。
有効光源にN個の点光源が存在する場合、以下の数式21に示すように、2次元のP演算子を定義することが可能となる。
|φ’2D>及びP2Dを用いれば、ウエハ面に形成される2次元の光強度分布I(x、y)は、以下の数式22を用いて算出することができる。
数式22において、P2Dを特異値分解すれば、以下の数式23を得ることができる。
このように、2次元の空中像(光強度分布)を算出する場合であっても、P演算子の要素数はTCCの要素数よりも少なく、且つ、P演算子の算出に複雑な計算を必要としない。その結果、ウエハ面に形成される光強度分布である空中像をより短い時間で算出することができる。
ここで、N個の点光源を含む有効光源をN1個の点光源を含む点光源集合X1とN−N1個の点光源を含む点光源集合X2に分割した場合について考える。数式21におけるPi(i=1〜N)をi=1〜N1、j=N1+1〜Nで分割し、以下の数式24及び25に示すように、それぞれについて2次元のP演算子を定義する。
数式24及び数式25を用いると、数式23は、以下の数式26に示すように変形することができる。
数式26は、数式17を2次元で表しており、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割した場合であっても、それぞれのP演算子を特異値分解すればよいことを示している。数式26を参照するに、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割しても同じ光強度分布が得られることがわかる。
但し、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割すると計算時間が短縮することは自明ではない。有効光源を複数の点光源集合に分割した場合、それぞれのP演算子の行数が低減する。例えば、数式21に示す有効光源の全体のP演算子は、N行M列の行列である。一方、数式24及び25のそれぞれに示すP演算子は、N1行M列の行列及び(N−N1)行M列の行列となり、行列の大きさが小さくなる。これにより、特異値分解の計算時間が短縮される。本発明者がMATLAB(登録商標)でL行L列の行列を特異値分解を行った結果、Lの約2.7乗で計算時間が増加することがわかった。従って、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割することは、例えば、計算精度を向上させるために瞳分割数を増やした場合などにおける計算時間の短縮に寄与する。
また、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割することで、瞳離散行列(P演算子)をより効果的に圧縮することが可能となる。瞳離散行列の圧縮とは、特異値分解の際に不要である要素が全て0である列又は行を削除することである。例えば、数式11を圧縮すると、以下の数式27が得られる。
図3(a)及び図3(b)は、瞳離散行列(P演算子)の圧縮の効果を説明するための図である。図3(a)は、4重極形状の有効光源に対する圧縮後のP演算子を示し、図3(b)は、かかる有効光源の1つの極(4重極形状の有効光源を4分割したときの1つの領域)に対する圧縮後のP演算子を示している。また、図3(a)及び図3(b)において、黒い部分は行列の要素が0であることを表し、白い部分は行列の要素が1であることを表している。
図3(a)に示すP演算子は、332行10345列の行列である。図3(b)に示すP演算子は、83行4183列の行列である。図3(a)及び図3(b)を参照するに、有効光源を4分割することによって、P演算子の行数は単純に1/4になるが、P演算子の列数は半分以下になっていることがわかる。図3(a)に示すP演算子は、要素が0である部分が多くあるにもかかわらず、他の点光源での回折光シフト行列の要素によって圧縮が効果的に機能していない。一方、図3(b)に示すP演算子は、圧縮が効果的に機能して列数が大きく低減しているため、特異値分解にかかる計算時間を大幅に短縮することができる。
有効光源を分割しない場合、行数と列数との積で表すことができる要素数は3434540であり、これを正方行列の要素数とすると、行数(列数)は約1853となる。一方、有効光源を分割した場合、行数と列数との積で表すことができる要素数は347189であり、これを正方行列の要素数とすると、行数は約589となる。これらの値を2.7乗すると、それぞれ665677123、30151665となり、後者を4倍しても前者の0.18倍程度となり、かかる差が計算時間の差となって現れる。
なお、本実施形態では、非正方行列を正方行列と仮定しているが、非正方行列に対して特異値分解にかかる計算時間のデータベース又は経験式を作成することは難しくない。
ここで、2次元の空中像(光強度分布)の算出について、もう少し一般的に説明する。マスクパターンで回折された2次元の回折光の集合は、以下の数式28に示すように表すことができる。
数式28を参照するに、Ψ2Dは、M行M列の行列であって、M個の要素を含む。ここで、M行M列の行列を一定の法則で1行M列の行列に変換する(即ち、並び替える)演算子(スタッキング演算子)Yを導入する。スタッキング演算子Yの導入によって、2次元の回折光分布のベクトル|φ’2D>は、以下の数式29で表される。
有効光源上の第1の点光源の座標を(f、g)とすると、第1の点光源から射出した光は、投影光学系の瞳をずらすことと同等であると考えられるため、回折光に作用する瞳関数P(f、g)は、P(f+f,g+g)で表される。従って、瞳関数P(f、g)は、以下の数式30に示すように表すことができる。
同様に、有効光源上の第2の点光源の座標を(f、g)とすると、第2の点光源から射出した光に作用する瞳関数P(f、g)は、P(f+f、g+g)で表される。従って、瞳関数P(f、g)は、瞳関数P(f、g)と同様に、以下の数式31に示すように表すことができる。
有効光源上にN個の点光源が存在する場合、2次元のP演算子は、スタッキング演算子Yを用いて、以下の数式32のように表すことができる。
数式29及び数式32からウエハ面に形成される光強度分布である空中像を算出する場合には、数式22又は数式23を用いればよい。
また、TCCを算出する場合には、以下の数式33を用いればよい。
これまでは、数式21や数式32に示したように、点光源が行方向に形成されるように投影光学系の瞳をずらしたP演算子について説明した。但し、以下の数式34に示すように、点光源が列方向に形成されるように投影光学系の瞳をずらしたP演算子であっても本質的には変わらない。従って、P演算子を数式34に示すように表した場合であっても、直交関数系の記述を整合させればよい。
2次元の空中像(光強度分布)を算出する場合、P演算子は、上述したように、数式32で表すことができる。瞳分割数をL、点光源の数をNとすると、P演算子は、N行(2L)列の行列である。また、P演算子の各行は独立しているため、P演算子の階数(Rank)はNである。従って、P演算子を特異値分解すると、N個の固有値及び固有関数が算出され、完全な空中像を算出するためにはN個の固有値及び固有関数が必要となる。但し、実際には、N個の固有値及び固有関数を使用する必要はなく、絶対値が大きい固有値のみを使用すれば十分である。
固有値の2乗を大きい順に並べ替えた後に行った番号付けをk(k=1、2、・・・、N)とする。全ての固有値の2乗和をE、kの順でi番目までの固有値の2乗和をEiとすると、Ei/Eがある一定の大きさ(例えば、0.98以上)となる固有値までを考慮すれば、十分な精度の光強度分布を算出することができる。また、kの数をNから低減することで、数式23における和をとる数を減らすことができる。V|φ’2D>の計算は、2次元の離散的フーリエ変換に相当するため、計算階数を減らすことになるkの数の低減は、計算時間の短縮に効果的である。なお、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割した場合、それぞれの点光源集合に対してEi/Eを与えることも可能である。
このように、P演算子を用いた部分コヒーレント計算方法では、P演算子を特異値分解すること、及び、固有ベクトルに対する離散的フーリエ変換を行うことが計算時間を決めることになる。
図4は、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理を説明するためのフローチャートである。なお、空中像計算プログラム420は、媒体インターフェース60に接続された記憶媒体70からインストールされ、制御部20を介して記憶部40に記憶されているものとする。また、空中像計算プログラム420は、入力部50から入力されるユーザの起動命令に従って起動され、制御部20によって実行される。
ステップS1002において、制御部20は、有効光源情報402、NA情報403、λ情報404、収差情報405、偏光情報406、レジスト情報407及びマスクデータ410を含む空中像算出用情報を決定する。具体的には、ユーザは、入力部50を介して、有効光源情報「4重極照明」、NA情報「0.73」、λ情報「248nm」、収差情報「無収差」、偏光情報「無偏光」、レジスト情報「考慮しない」及びマスクデータ「コンタクトホール」を入力(選択)する。そして、制御部20は、空中像計算プログラム420に従って、ユーザによって入力(選択)された空中像算出用情報を表示部30に表示して空中算出用情報を決定する。なお、本実施形態では、空中像算出用情報は予め記憶部40に記憶されており、ユーザは記憶部40に記憶された空中像算出用情報を入力(選択)する場合を例に説明する。但し、ユーザは記憶部40に記憶されていない空中像算出用情報を入力することも可能である。
ステップS1004において、制御部20は、ステップS1002で決定された有効光源情報402に基づいて、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割するか否かを判定する。有効光源を複数の点光源集合に分割するか否かの判定基準は、例えば、空中像409を算出するための計算時間が短縮される場合などとする。この場合、空中像計算プログラム420は、空中像算出用情報に対応する計算時間(空中像409の算出にかかる時間)のデータベースや経験式を含む。なお、ステップS1004の有効光源の分割の判定については、後で詳細に説明する。
ステップS1004で有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割しないと判定された場合には、有効光源を1つの点光源集合とみなし、ステップS1006において、制御部20は、P演算子408を算出する。具体的には、制御部20は、ユーザによって入力(選択)された空中像算出用情報を記憶部40から受け取り、かかる空中像算出用情報に基づいて、例えば、数式21や数式32からP演算子408を算出する。また、制御部20は、算出したP演算子408を記憶部40に記憶させる。
ステップS1008において、制御部20は、空中像409を算出する。具体的には、ユーザによって入力(選択)された空中像算出用情報、ステップS1006で算出したP演算子408を用いて、例えば、数式16や数式23から空中像409を算出する。また、制御部20は、空中像409を表示部30に表示させると共に、記憶部40に記憶させる。
一方、ステップS1004で有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割すると判定された場合には、ステップS1010において、制御部20は、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割する。具体的には、制御部20は、後述するように、ステップS1004で選択される分割モデルに従って、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割する。
ステップS1012において、制御部20は、ステップS1010で分割した複数の点光源集合(複数の領域)のうち1つの点光源集合(1つの領域)を選択する。かかる点光源集合は、有効光源情報402に対応する有効光源とは異なるが、ある有効源情報に対応する有効光源を表している。
ステップS1014において、制御部20は、ステップS1012で選択した点光源集合について、ステップS1006と同様に、P演算子408を算出する。
ステップS1016において、制御部20は、ステップS1012で選択した点光源集合について、ステップS1008と同様に、空中像409を算出する。この際、上述したように、P演算子408を特異値分解(即ち、固有値及び固有関数に分解)して(第1の算出ステップ)、空中像409を算出する(第2の算出ステップ)。
ステップS1018において、制御部20は、ステップS1010で分割した全ての点光源集合を選択したか否かを判定する。
ステップS1010で分割した全ての点光源集合を選択していないと判定された場合には、ステップS1012に戻って、ステップS1012以降を繰り返す。一方、ステップS1010で分割した全ての点光源集合を選択していないと判定された場合には、ステップS1020に進む。
ステップS1020において、制御部20は、ステップS1012乃至S1018を繰り返して算出された複数の空中像409(即ち、複数の点光源集合のそれぞれが形成する空中像409)を合成する。数式2にも示されているように、点光源のそれぞれによる空中像の和は有効光源全体の空中像となるため、複数の点光源集合(複数の領域)のそれぞれから算出された空中像を合成する(総和する)ことで有効光源全体の空中像になることは自明である。
ここで、図5を参照して、ステップS1004の有効光源の分割の判定について詳細に説明する。
ステップS2002において、制御部20は、有効光源を点光源に分割して、点光源の総数Npと各点光源の位置情報(座標)を取得する。
ステップS2004において、制御部20は、ステップS2002で取得した点光源の総数Npが指定範囲(予め指定された範囲)であるか否かを判定する。ここで、指定範囲とは、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割することで空中像409の算出にかかる時間が短縮されることを保証する点光源の数の範囲である。本実施形態では、点光源の総数Npがある程度多い場合には空中像409の算出にかかる時間を効果的に短縮することができるため、指定範囲として指定数N以上を設定する。但し、指定範囲を上限及び下限の範囲で指定範囲を設定することも可能である。
ステップS2002で取得した点光源の総数Npが指定範囲でない(本実施形態では、指定数N以上でない)と判定された場合には、有効光源を分割せずに空中像409を算出するため、図4に示すステップS1006に進む。一方、ステップS2002で取得した点光源の総数Npが指定範囲である(本実施形態では、指定数N以上である)と判定された場合には、ステップS2006に進む。なお、指定数Nに1を設定することも可能であり、この場合、有効光源は必ず分割されることになる。
ステップS2006において、制御部20は、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割する際に、予め設定された分割モデルを使用するか否かを判定する。なお、分割モデルとは、有効光源をどのように分割するのか(有効光源の分割方法)を示すモデルであって、例えば、有効光源を矩形形状に分割する分割モデルなどを含む。また、分割モデルは、有効光源に2次元座標を設定した場合において、2次元座標の象限ごとに分割する分割モデル、2次元座標の角度方向に分割する分割モデル、2次元座標の角度方向及び動径方向に分割する分割モデルなども含む。
分割モデルを使用すると判定された場合には、ステップS2008において、制御部20は、ステップS2002で取得した各点光源の位置情報に基づいて、上述した互いに異なる複数の分割モデルから1つの分割モデルを選択する。また、複数の分割モデルのそれぞれについて、空中像409の算出に関する処理を実行したときの時間を計算し、かかる時間が所定の時間よりも短くなる分割モデルを選択してもよい。分割モデルを選択したら、図4に示すステップS1010に進む。
一方、分割モデルを使用しないと判定された場合には、ステップS2010以降において、分割モデルを使用せずに有効光源を分割する処理を行う。なお、本実施形態では、空中像409を算出する際の計算時間が最小になるように有効光源を分割するが、コンピュータが必要とする記憶容量が最小になるように有効光源を分割することも可能である。
ステップS2010において、制御部20は、最小計算時間tminを設定する。ここでは、最小計算時間tminとして、非常に大きな値、例えば、1.0E30(秒)を設定する。
ステップS2012において、制御部20は、有効光源の分割方法及び分割数を仮設定する。
ステップS2014において、制御部20は、ステップS2012で仮設定した有効光源の分割方法及び分割数に従って有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割した場合に、点光源集合のそれぞれについて、点光源の数が指定範囲であるか否かを判定する。指定範囲としては、例えば、指定数N’以上を設定してもよいし、上限及び下限の範囲で設定してもよい。
点光源集合のそれぞれについて、点光源の数が指定範囲であると判定された場合には、ステップS2016に進む。一方、点光源集合のそれぞれについて、点光源の数が指定範囲ではないと判定された場合には、ステップS2022に進む。
ステップS2016において、制御部20は、空中像409を算出する際の計算時間tpを推定する。具体的には、全ての点光源集合に対するSVD計算にかかる時間を行列の要素数を用いて、データベース又は経験式から求めることで計算時間tpを推定することができる。また、空中像409の算出に必要となる高速フーリエ変換(FFT)の1回当たりの計算時間及び必要なFFTの回数もわかるため、FFTの1回当たりの計算時間及び必要なFFTの回数から計算時間tpを推定することが可能である。
ステップS2018において、制御部20は、ステップS2016で推定された計算時間tpがステップS2010で設定した最小計算時間tminよりも小さいか否かを判定する。
計算時間tpが最小計算時間tminよりも小さい(t<tmin)と判定された場合には、ステップS2020に進む。一方、計算時間tpが最小計算時間tminよりも小さくない(tp≧tmin)と判定された場合には、ステップS2012に戻り、有効光源の分割方法及び分割数の仮設定を再度行う。
ステップS2020において、制御部20は、ステップS2012で仮設定した有効光源の分割方法及び分割数、及び、ステップS2016で推定した計算時間tpを記憶部40に記憶させる。
ステップS2022において、制御部20は、ステップS2012乃至S2020を繰り返すか否かを判定する。換言すれば、分割方法及び分割数を更に変更して計算時間tpを推定するか否かを判定する。
ステップS2012乃至S2020を繰り返すと判定された場合には、ステップS2012に戻る。一方、ステップS2012乃至S2020を繰り返さないと判定された場合には、ステップS2024に進む。
ステップS2024において、制御部20は、ステップ2020で記憶した有効光源の分割方法及び分割数を分割モデルとして選択し、図4に示すステップS1010に進む。
なお、ステップS2012では、任意の分割方法及び分割数を仮設定することが可能であるが、後述するように、複雑な分割方法や大きな分割数が好ましいということではない。例えば、上述した分割モデル(有効光源を矩形形状に分割する分割モデルなど)を変形させて分割方法及び分割数を仮設定してもよい。
このように、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理では、P演算子408を用いて空中像409を算出することができる。換言すれば、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理は、SOCSでは必要となるTCCを算出することなく、空中像409を算出することができため、計算を全体的に簡素化して空中像409の算出にかかる時間を短縮することができる。また、P演算子を用いた空中像409の算出において、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割して、各点光源集合について空中像409を算出して合成することで、計算時間を更に短縮することができる。
空中像計算プログラム420による空中像409の算出結果は、必要に応じて分析される。空中像の分析は、例えば、空中像の目視確認、空中像の傾斜(Normalized Intensity Log Slope; NILS)、コントラスト、デフォーカス特性(DOF特性)、パターンデータ401との一致具合の確認などを含む。また、空中像409がどのようにレジストに作用するかなどを確認することもできる。なお、空中像の分析に関しては、当業界で周知のいかなる方法を適用してもよい。
更に、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理を応用して、様々なモデルベース超解像技術に適用することも可能である。例えば、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理を光学近接効果補正に適用することで、微細なパターンを精度よく形成することができるマスクデータを短時間で生成することができる(即ち、マスクを短時間で作成することができる)。なお、光学近接効果補正は、一般的には、OPC(Optical Proximity Correction)と呼ばれる。
以下、各実施形態において、空中像計算プログラム420による空中像409の算出処理の効果や露光装置への適用などについて詳細に説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、処理装置1の制御部20を構成するCPUとしてXeon(登録商標)32bitを使用し、記憶部40として約2GByteのメモリを使用した。MATLAB(登録商標)を用いて空中像計算プログラム420を作成し、有効光源を分割して空中像409を算出する際の計算時間と、有効光源を分割せずに空中像409を算出する際の計算時間とを比較した。
また、第1の実施形態では、露光装置として、投影光学系のNAが0.73(NA情報403に相当)であり、露光光の波長が248nmである(λ情報404に相当)場合を考える。更に、投影光学系は無収差(収差情報405に相当)、照明光は無偏光(偏光情報406に相当)、ウエハに塗布されるレジストは考慮しない(レジスト情報407に相当)ものとする。有効光源は、図6(a)に示すような四重極照明を用いる。パターンデータ(目標パターン)401は、2つのコンタクトホールパターンで構成される。また、それぞれのコンタクトホールパターンの直径は120nmとし、それぞれのコンタクトホールパターンの中心は(−120nm、0nm)、(120nm、0nm)とする。従って、マスクデータ410は、図6(b)に示すようになる。また、投影光学系の瞳の分割数を64とすると、図6(a)に示す有効光源の点光源の総数は332となる。なお、フーリエ変換を実行する際の分割数は256に設定し、Ei/E=1.0、即ち、全ての固有値を使用して空中像409を算出する。
まず、図6(a)に示す有効光源を分割せずに空中像409を算出した。具体的には、制御部20は、上述した空中像算出用情報に基づいて、P演算子408を算出する。この際、P演算子408の算出にかかった時間は、0.1秒以下であった。また、制御部20は、P演算子408を特異値分解(即ち、固有値及び固有関数に分解)する。この際、P演算子408の特異値分解にかかった時間は、9.2秒であった。更に、全ての固有関数を足し合わせて完全な空中像を算出したところ、図7に示すような空中像409が得られ、空中像409の算出にかかった時間は約28秒であった。但し、図7示す空中像409は、最大値が1になるように規格化されている。
次に、図6(a)に示す有効光源を分割して空中像409を算出した。具体的には、制御部20は、図6(a)に示す有効光源を図8(a)乃至図8(d)に示すように4つの点光源集合(4つの領域)に分割する。第1の実施形態では、2次元座標(x、y)に関して、それぞれが正であるか、或いは、負であるかの4通りに分割したと考えることができる。また、2次元座標を極座標(R、θ)として考え、360°を4分割したと考えることもできる。そして、制御部20は、点光源集合のそれぞれについてP演算子408を算出し、かかるP演算子408を特異値分解する。この際、1つの点光源集合についてP演算子408の特異値分解にかかった時間は、0.56秒乃至0.57秒であり、合計しても2.26秒であった。従って、有効光源を分割しない場合と比較して、P演算子408の特異値分解にかかる時間が大幅に(約1/4に)短縮されている。
また、点光源集合のそれぞれから算出される空中像を合成したところ、図9に示すような空中像409が得られ、空中像409の算出にかかった時間は約21秒であった。従って、有効光源を分割しない場合と比較して、空中像409の算出にかかる時間が約7秒短縮されており、かかる時間差は特異値分解にかかる時間差とほぼ一致している。なお、図7に示す空中像409と図9に示す空中像409とは、1.0×10−15のオーダーで一致している。
このように、有効光源を複数の点光源集合(複数の領域)に分割し、それぞれの点光源集合に対して空中像を算出して合成することで、P演算子の特異値分解及び有効光源の全体に対する空中像の算出にかかる時間を効果的に短縮することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、処理装置1の制御部20を構成するCPUとしてXeon(登録商標)32bitを使用し、記憶部40として約2GByteのメモリを使用した。MATLAB(登録商標)を用いて空中像計算プログラム420を作成し、有効光源を分割して空中像409を算出する際の計算時間と、有効光源を分割せずに空中像409を算出する際の計算時間とを比較した。
また、第2の実施形態では、露光装置として、投影光学系のNAが0.73(NA情報403に相当)であり、露光光の波長が248nmである(λ情報404に相当)場合を考える。更に、投影光学系は無収差(収差情報405に相当)、照明光は無偏光(偏光情報406に相当)、ウエハに塗布されるレジストは考慮しない(レジスト情報407に相当)ものとする。有効光源は、図10に示すようなσ=0.7の円形照明を用いる。パターンデータ(目標パターン)401は、第1の実施形態と同様に、図6(b)に示す2つのコンタクトホールパターンで構成される。
図10に示す有効光源を分割せずに空中像409を算出した場合、空中像409の算出にかかった時間は約168秒であった。
次に、図10に示す有効光源を分割して空中像409を算出した場合を説明する。2次元座標の極座標(x軸の正方向を0°とし、反時計回りに360°回る極座標)を用いて、図10に示す有効光源を角度方向に分割する場合について考える。具体的には、図11に示すように、図10に示す有効光源を角度方向にn分割(図11では、n=6)する。nを2、3、4、6、8、16と変化させたとき、空中像409の算出にかかった時間は、それぞれ、90秒、70秒、62秒、55秒、56秒、55秒、59秒であった。nを大きくすると空中像409の算出にかかる時間が短縮され、nを6以上にした場合には、有効光源を分割しない場合と比較して、計算時間が約1/3に短縮された。
更に、図10に示す有効光源を角度方向に加えて動径方向に分割することも可能である。具体的には、図12に示すように、図10に示す有効光源を角度方向にn分割(図12では、n=4)し、動径方向にm分割(図12では、m=2)する。(m、n)=(2、8)、(4、4)とすると、空中像409の算出にかかった時間は、それぞれ、52秒、55秒であり、有効光源の分割が効果的であることがわかる。
一方、(m、n)=(36、1)とすると(即ち、動径方向のみに分割すると)、空中像409の算出にかかった時間は73秒であった。これは、有効光源の分割数を大きくしてもP演算子の圧縮が効率的に行われないからである。具体的には、(m、n)=(1、36)とすると、圧縮後のP演算子は51行4388列となるのに対し、(m、n)=(36、1)とすると、圧縮後のP演算子は、大きいもので列数が2倍(8613列)になる。従って、有効光源に応じて、適切に有効光源を分割することが好ましい。
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、図10に示す有効光源を第2の実施形態と異なる分割方法(分割モデル)で分割した場合について説明する。
有効光源の2次元座標を(f、g)の直交座標系で設定する。図10に示す有効光源は、f+g=(0.7)で表すことができるため、−0.7≦f≦0.7、−0.7≦g≦0.7となる。そこで、f方向の分割数をM、g方向の分割数をNとして、図10に示す有効光源を矩形形状に分割する。この場合、点光源集合(m、n)(m=1〜M、n=1〜N)の領域は、以下の数式35で表現することができる。図13は、図10に示す有効光源の分割の一例を示す図である。
−0.7+1.4×(m−1)/M≦f<−0.7+1.4×m/M
−0.7+1.4×(n−1)/N≦g<−0.7+1.4×n/N ・・・(数式35)
図13は、図10に示す有効光源の分割の一例を示す図である。但し、図13では、(m、n)=(4、2)である。
数式35に従って有効光源を分割した場合に、空中像409の算出にかかった時間を求めた。具体的には、(m、n)=(3、1)、(4、1)、(6、1)、(8、1)、(4、2)、(8、2)、(2、8)、(4、4)、(6、6)とすると、それぞれ、73秒、65秒、59秒、60秒、53秒、53秒、52秒、52秒、55秒であった。このように、数式35に従って有効光源を分割しても、空中像409の算出にかかる時間を効果的に短縮することができる。
有効光源の総分割数Z=m×nで考えると、Z=3〜8程度においては総分割数Zが大きくなると計算時間は短縮されるが、Z>8においては総分割数Zを大きくしても計算時間の短縮の効果は大きくない。また、x方向のみで分割するよりもx及びyの両方向で分割した方がよい。有効光源を角度方向に分割した場合(第2の実施形態)と比較すると、総分割数が同じであれば、計算時間はほぼ同じである。
<第4の実施形態>
第4の実施形態では、上述した処理装置1で算出された空中像(投影光学系の像面に形成される光強度分布)に基づいて露光条件を調整し、露光処理を実行する露光装置100について説明する。ここで、図14は、露光装置100の構成を示す概略ブロック図である。
露光装置100は、投影光学系140とウエハ150との間に供給される液体LWを介して、マスク130のパターンをステップ・アンド・スキャン方式でウエハ150に露光する液浸露光装置である。但し、露光装置100は、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式も適用することができる。
露光装置100は、図14に示すように、照明光学系120と、マスク130を載置するマスクステージ135と、投影光学系140と、ウエハ150を載置するウエハステージ155と、液体供給回収部160と、主制御システム170とを備える。なお、光源110及び照明光学系120は、転写用の回路パターンが形成されたマスク130を照明する照明装置を構成する。
光源110は、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどのエキシマレーザーを使用する。但し、光源110の種類及び個数は限定されず、例えば、波長約157nmのFレーザーを光源110として使用することもできる。
照明光学系120は、光源110からの光束を用いてマスク130を照明する光学系である。照明光学系120は、本実施形態では、ビーム整形光学系121と、集光光学系122と、偏光制御部123と、オプティカルインテグレーター124と、開口絞り125とを含む。更に、照明光学系120は、集光レンズ126と、折り曲げミラー127と、マスキングブレード128と、結像レンズ129とを含む。照明光学系は、変形照明(4重極照明や2重極照明)など様々な照明モードを実現することができる。
ビーム整形光学系121は、例えば、複数のシリンドリカルレンズを含むビームエクスパンダ等を使用する。ビーム整形光学系121は、光源110からの平行光の断面形状の縦横比率を所定の値に変換する(例えば、断面形状を長方形から正方形にする)。ビーム整形光学系121は、本実施形態では、オプティカルインテグレーター124を照明するために必要な大きさ及び発散角を有する光束に整形する。
集光光学系122は、複数の光学素子を含み、ビーム整形光学系121で整形された光をオプティカルインテグレーター124に効率よく導光する。集光光学系122は、例えば、ズームレンズシステムを含み、オプティカルインテグレーター124に入射する光束の形状及び角度の分配を調整する。
偏光制御部123は、例えば、偏光素子を含み、投影光学系140の瞳面142と略共役な位置に配置される。偏光制御部123は、投影光学系140の瞳面142に形成される有効光源の所定領域の偏光状態を制御する。
オプティカルインテグレーター124は、マスク130を照明する照明光を均一化し、入射光の角度分布を位置分布に変換して射出する機能を有する。オプティカルインテグレーター124は、例えば、入射面と射出面とがフーリエ変換の関係に維持されたハエの目レンズを使用する。なお、ハエの目レンズは、複数のロッドレンズ(即ち、微小レンズ素子)を組み合わせることによって構成される。但し、オプティカルインテグレーター124は、ハエの目レンズに限定されず、光学ロッド、回折格子、各組が直交するように配置されたシリンドリカルレンズアレイ板などを使用してもよい。
開口絞り125は、オプティカルインテグレーター124の射出面の直後の位置であって、投影光学系140の瞳面142に形成される有効光源と略共役な位置に配置される。開口絞り125の開口形状は、投影光学系140の瞳面に形成される光強度分布(即ち、有効光源)に相当する。換言すれば、開口絞り125は、有効光源を制御する。開口絞り125は、照明モードに応じて切り替え可能に構成される。なお、開口絞りを使用せずに、オプティカルインテグレーター124の前段に回折光学素子(CGHなど)やプリズム(円錐プリズムなど)を配置して有効光源を形成してもよい。
集光レンズ126は、オプティカルインテグレーター124の射出面近傍に形成される2次光源から射出して開口絞り125を通過した光束を集光し、折り曲げミラー127を介して、マスキングブレード128を均一に照明する。
マスキングブレード128は、マスク130と略共役な位置に配置され、複数の可動遮光板で構成される。マスキングブレード128は、投影光学系140の有効面積に対応する略矩形形状の開口を形成する。マスキングブレード128を通過した光束は、マスク130を照明する照明光として使用される。
結像レンズ129は、マスキングブレード128の開口を通過した光束をレチクル30に結像させる。
マスク130は、回路パターンを有し、マスクステージ135に支持及び駆動される。マスク130から発せられた回折光は、投影光学系140を介して、ウエハ150に投影される。マスク130とウエハ150とは、光学的に共役の関係に配置される。露光装置100はステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であるため、マスク130とウエハ150とを同期走査することによって、マスク130の転写すべき回路パターンをウエハ150に転写する。なお、露光装置100がステップ・アンド・リピート方式の露光装置であれば、マスク130とウエハ150とを静止させた状態で露光する。
マスクステージ135は、マスクチャックを介してマスク130を支持し、図示しない駆動機構に接続されている。図示しない駆動機構は、例えば、リニアモーターなどで構成され、X軸方向、Y軸方向、X軸方向及び各軸の回転方向にマスクステージ135を駆動する。なお、マスク130又はウエハ150の面内で走査方向をY軸、それに垂直な方向をX軸、マスク130又はウエハ150の面に垂直な方向をZ軸とする。
投影光学系140は、マスク130の回路パターンをウエハ150に投影する光学系である。投影光学系140は、屈折系、反射屈折系、或いは、反射系を使用することができる。投影光学系140の最終レンズ(最終面)には、液体供給回収部160から供給される液体LWによる影響を低減(保護)するためのコーティングが施されている。
ウエハ150は、マスク130の回路パターンが投影(転写)される基板である。但し、ウエハ150は、ガラスプレートやその他の基板に置換することもできる。ウエハ150には、レジストが塗布されている。
ウエハステージ155は、ウエハ150を支持し、マスクステージ135と同様に、リニアモーターを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にウエハ150を移動させる。
液体供給回収部160は、投影光学系140の最終レンズ(最終面)とウエハ150との間の空間に液体LWを供給する機能を有する。また、液体供給回収部160は、投影光学系140の最終レンズとウエハ150との間の空間に供給された液体LWを回収する機能を有する。液体LWには、露光光に対して高い透過率を有し、投影光学系140(の最終レンズ)に汚れを付着させず、レジストプロセスとのマッチングがよい物質を選択する。
主制御システム170は、CPUやメモリを有し、露光装置100の動作を制御する。例えば、主制御システム170は、マスクステージ135、ウエハステージ155及び液体供給回収部160と電気的に接続し、マスクステージ135とウエハステージ155との同期走査を制御する。また、主制御システム170は、露光時のウエハステージ155の走査方向及び速度などに基づいて、液体LWの供給と回収、或いは、停止の切り替えを制御する。更に、主制御システム170には、処理装置1で算出された光強度分布(空中像)が入力され、かかる光強度分布に基づいて露光条件を調整(制御)する。例えば、主制御システム170は、照明光学系120を構成する開口絞り、回折光学素子、プリズム等を調整して、所望の有効光源が形成されるように露光条件を制御する。なお、処理装置1で算出された光強度分布(空中像)の入力は、ユーザによって入力されてもよいし、処理装置1と露光装置100をデータ通信可能に接続して、処理装置1から露光装置100に光強度分布(空中像)を送信することによって行ってもよい。処理装置1と露光装置100をデータ通信可能に接続する場合は、露光装置100は周知のデータ受信部を備え、処理装置1は周知のデータ送信部を備える。
処理装置1としては、露光装置100の外部に配置されたコンピュータを用いることができるが、主制御システム170が処理装置1の機能を備えることもできる。その場合、主制御システム170によって、P演算子を用いて投影光学系140の像面に形成される光強度分布(空中像)をより短い時間で算出することができる。換言すれば、主制御システム170は、部分コヒーレント結像計算の計算速度を向上させ、モデルベース超解像技術にかかる時間を短縮することができる。従って、露光装置100においては、露光条件の最適化(例えば、マスク130に対する有効光源の最適化)を短時間で行うことができ、スループットを向上させることができる。
露光において、光源110から発せられた光束は、照明光学系120によりマスク130を照明する。マスク130を通過して回路パターンを反映する光束は、投影光学系140により、液体LWを介してウエハ150に結像される。露光装置100は、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。かかるデバイスは、露光装置100を用いてフォトレジスト(感光剤)が塗布された基板(ウエハ、ガラスプレート等)を露光する工程と、露光された基板を現像する工程と、その他の周知の工程と、を経ることによって製造される。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、毎回、図4に示すフローチャートのS1004の判定を行わずに、有効光源を複数の領域に分割してもよい。
本発明の一側面としての算出方法を実行する処理装置の構成を示す概略ブロック図である。 1次元の平面波(完全直交系)を模式的に示す図である。 瞳離散行列(P演算子)の圧縮の効果を説明するための図である。 図1に示す処理装置において、空中像計算プログラムによる空中像の算出処理を説明するためのフローチャートである。 図4に示すステップS1004の有効光源の分割の判定について詳細に説明するためのフローチャートである。 本発明にかかる第1の実施形態を説明するための図であって、図6(a)は第1の実施形態で用いた有効光源を示す図、図6(b)は第1の実施形態で用いたマスクデータを示す図である。 図6(a)に示す有効光源を分割せずに算出された空中像を示す図である。 図6(a)に示す有効光源を4つの点光源集合(4つの領域)に分割した場合を示す図である。 図6(a)に示す有効光源を分割して算出された空中像を示す図である。 第2の実施形態で用いた有効光源を示す図である。 図10に示す有効光源の分割の一例を示す図である。 図10に示す有効光源の分割の一例を示す図である。 図10に示す有効光源の分割の一例を示す図である。 露光装置の構成を示す概略ブロック図である。
符号の説明
1 処理装置
10 バス配線
20 制御部
30 表示部
40 記憶部
401 パターンデータ
402 有効光源情報
403 NA情報
404 λ情報
405 収差情報
406 偏光情報
407 レジスト情報
408 P演算子
409 空中像
410 マスクデータ
420 空中像計算プログラム
50 入力部
60 媒体インターフェース
70 記憶媒体
100 露光装置
110 光源
120 照明光学系
123 偏光制御部
125 開口絞り
130 マスク
140 投影光学系
150 ウエハ
170 主制御システム

Claims (9)

  1. 照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布をコンピュータによって算出する算出方法であって、
    前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を、複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、
    前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、
    前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、
    を有することを特徴とする算出方法。
  2. 前記定義ステップで定義された前記行列について、前記行列の要素が全て0となる行又は列を削除して前記行列を圧縮する圧縮ステップを更に有し、
    前記圧縮ステップで圧縮された前記行列を用いて、前記定義ステップ、前記第1の算出ステップ、前記第2の算出ステップ、及び、前記合成ステップを実行することを特徴とする請求項1に記載の算出方法。
  3. 前記判定ステップでは、前記有効光源を複数の点光源に分割したときの点光源の数が予め指定された範囲であれば、前記有効光源を複数の領域に分割すると判定することを特徴とする請求項1に記載の算出方法。
  4. 前記分割ステップでは、互いに異なる複数の分割モデルから選択される1つの分割モデルに従って前記有効光源を複数の領域に分割することを特徴とする請求項1に記載の算出方法。
  5. 前記分割ステップでは、前記有効光源を複数の領域に分割するための互いに異なる複数の分割モデルのそれぞれについて、前記生成ステップ、前記定義ステップ、前記第1の算出ステップ、前記第2の算出ステップ、及び、前記合成ステップを含む処理を実行したときの時間を算出し、当該時間が所定の時間よりも短くなる分割モデルに従って、前記有効光源を複数の領域に分割することを特徴とする請求項1に記載の算出方法。
  6. 前記複数の分割モデルは、前記有効光源を矩形形状に分割する分割モデル、前記有効光源に2次元座標を設定した場合において、前記有効光源を前記2次元座標の象限ごとに分割する分割モデル、前記有効光源を前記2次元座標の角度方向に分割する分割モデル、及び、前記有効光源を前記2次元座標の角度方向及び動径方向に分割する分割モデルのうち少なくとも2つを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の算出方法。
  7. 照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、
    前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、
    前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、
    を実行させることを特徴とするプログラム。
  8. 照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する算出ステップと、
    前記算出ステップで算出された前記光強度分布に基づいて露光条件を調整する調整ステップと、
    前記調整ステップの後、前記原版のパターンの像を前記基板に投影する露光ステップと、
    を有し、
    前記算出ステップは、
    前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を複数の領域に分割するか否かを判定する判定ステップと、
    前記有効光源を複数の領域に分割すると判定した場合に、前記有効光源を複数の領域に分割する分割ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、複数の点光源に分割された各点光源の位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、
    前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、
    を含むことを特徴とする露光方法。
  9. 照明光学系を用いて原版を照明して、前記原版のパターンの像を投影光学系を介して基板に投影する際に、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
    前記コンピュータに、
    前記原版が前記投影光学系の物体面に配置されていない場合に前記投影光学系の瞳面に形成される有効光源を、複数の領域に分割して、前記複数の領域のそれぞれについて前記有効光源を複数の点光源に分割する分割ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記点光源の各位置に応じて、前記投影光学系の瞳を示す瞳関数をシフトさせることによってシフトされた複数の瞳関数を生成する生成ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記生成ステップで生成された前記複数の瞳関数を含む行列を定義する定義ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記定義ステップで定義された前記行列を特異値分解して固有値と固有関数とを算出する第1の算出ステップと、
    前記複数の領域のそれぞれについて、前記原版のパターンで回折された回折光の回折光分布、前記第1の算出ステップで算出された前記固有値と前記固有関数とに基づいて、前記投影光学系の像面に形成される光強度分布を算出する第2の算出ステップと、
    前記第2の算出ステップで算出された前記複数の領域のそれぞれについての前記光強度分布を合成する合成ステップと、
    を実行させることを特徴とするプログラム。
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