JP5085643B2 - エチン前駆体としてのα−アルキノールの形態でのエチンの輸送 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、エチンを(a)カルボニル化合物と反応させて(a)α−アルキノールを合成することと、得られたα−アルキノールを安全な方法で輸送することとを含むエチンの新規な安全輸送方法に関するが、α−アルキノールはエチン前駆体と見なすことができ、これは輸送および/または貯蔵の後に開裂させてエチンおよび(a)カルボニル化合物にすることができる。エチンおよびカルボニル化合物は開裂反応で得ることができ、これらはさらなる利用のために分離して純粋生成物を生じさせることができる。
エチン(アセチレン)にはさまざまな工業的用途があり、例えば、エチンの高い火炎温度を必要とする金属加工がある。別の例として、プラスチック材料の製造におけるエチンの使用がある。しかし、エチンは熱力学的に不安定であり高反応性であるため、エチンの安全輸送が問題となる。エチンには爆燃または爆発する傾向があるため、他の気体のようにエチンを圧縮してガスボンベに貯蔵することはできない(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、完全改訂第5版、第A1巻、135,5.2頁)。そのため、ガスボンベに貯蔵するためには、エチンを例えばアセトンのような溶媒に溶かさなければならない。しかし、この方法においても多くの問題が生じる。例えば、アセトンを溶媒として使用する場合、不純物によって溶解力(dissolving capacity)が減少する。さらに、エチンのボンベに使用する材料はすべて使用前に検査および許可されなければならない。これは、ボンベの材料とエチンとの間の相互作用を避けなければならないためである。
エチンは高度可燃性と見なされているので、この気体の分類は2.1(UN 1001)、包装グループ等級(packaging group class)1である。これに対して、例えばメチルブチノールは、UN1987における輸送では等級3に分類される。エチンの代わりに、例えばメチルブチノールを輸送する場合、等級3の化合物に関する安全規定が緩和されているため格納容器(containments)の要求条件が厳しくなくなり、その結果としてさらに、輸送がより安全かつ安価になる。同じことが他のα−アルキノールにも当てはまる。
したがって、エチンの新規の安全輸送方法は工業的用途にとって非常に関心を引くものである。本発明は、多量のエチン(好ましくは、最大100tあるいはさらにそれ以上)をα−アルキノールの形態で安全かつ経済的に輸送する方法を提供する。エチンを出発物質として使用するα−アルキノールの合成は、文献で知られている。
国際公開第03/029175号パンフレットは、アンモニアおよび強塩基性マクロ孔質陰イオン交換樹脂の存在下で、アルデヒドまたはケトンをエチンと反応させることによってα−アルキノールを製造する方法を開示している(国際公開第03/029175号パンフレット、第1頁、第7〜10行)。反応生成物は、例えばテルペノイド(例えば、ビタミンおよびカロチノイド)の合成に使用される。強塩基性マクロ孔質陰イオン交換樹脂は、カルボニル化合物のこのエチニル化において触媒として使用される。国際公開第03/029175号パンフレットに従ったα−アルキノールの合成方法は、本発明によるα−アルキノールの合成にも適している。
このエチニル化方法の別の方法で、アルカリ金属水酸化物を触媒として使用したものが、国際公開第2004/018400号パンフレットに開示されている。この方法でも、アンモニアおよびカルボニル化合物の存在下でエチンを使用しており、アルカリ金属水酸化物とカルボニル化合物とのモル比が1:200未満である(国際公開第2004/018400号パンフレット、第1頁、第7〜9行)。この方法も本発明に使用できる。
本発明に利用できるさらなる方法が、米国特許第2,163,720号明細書に開示されている。そこでは、飽和ケトンをアルカリ金属水酸化物(水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムなど)と反応させてから、得られた反応混合物をアセチレンで処理することによってこの方法が実施されている(米国特許第2,163,720号明細書、第1欄、第26〜29行)。得られたアセチレンアルコールは、有機合成における出発物質として非常に有益なものとして記載されている。
1−エチニルシクロヘキサノールおよび同族体の製造方法がGB894,907号明細書に記載されている。凝縮層手法の使用により、アルキル置換シクロヘキサノン類を反応させる方法が提供されるが、高温を用いると、収率が良好になる。
例えばメチルブチノールを製造する別の方法が、GB1,342,166号明細書に開示されている。この方法でも、液体アンモニアおよび気体混合物(アルキンと少なくとも1種のアルケンを含む)を使用している。この方法も本発明に利用できる。
上記のα−アルキノールは、反応性が低いため、取り扱いがより容易であり、貯蔵がより簡単であり、さらに輸送が非常に容易なものであって、上述のエチンの安全性リスクがない。所轄庁によって許可されなければならない高い安全上の要求条件のある一般的に使用されるエチンの貯蔵ボンベの欠点については、非気体状「輸送形態」エチンとしてα−アルキノールを使用するため、危険等級3および包装グループIIの化合物に関して指定された格納容器を使用できるので、克服される。
輸送後および使用前に、エチンの安定前駆体と見なすことができるα−アルキノールは、逆向きプロセス(reverse process)で開裂させて、エチンおよびカルボニル化合物を得ることができる。それらの合成に類似したものである塩基触媒プロセスを開裂反応に使用でき、これは文献で知られている。
ホアン(Huang)らは、アルカリ交換ゼオライト(alkali−exchanged zeolites)を使用したメチルブチノールの開裂反応を開示している(Catalyses Letters、1993年、18、373−389頁)。アルカリ交換ゼオライトはルイス酸の部分(centers)とルイス塩基の部分の両方を有するが、ルイス塩基部分がメチルブチノールの開裂反応を触媒し、それによってアセトンとアセチレンが生成する。この方法も本発明による開裂反応に利用できる。
したがって本発明は、エチンの安全前駆体としてα−アルキノールを使用したエチンの輸送および貯蔵方法を提供する。エチンに関連した安全上の問題は、3つのステップを含む本発明の方法によって克服される。第1ステップは、エチンおよび(a)カルボニル化合物および好ましくは触媒系を使用して(a)α−アルキノールを合成することを含む。第2ステップでは、第1ステップで製造されたα−アルキノールをその送り先に輸送し、そこで第3ステップを行った後にそれは使用されることになる。任意選択的にα−アルキノールを貯蔵できるが、その貯蔵はエチンの貯蔵よりも安全である。第3ステップは、α−アルキノールを開裂させてエチンと(a)カルボニル化合物にすることを含むが、その場合に純粋のエチンおよびカルボニル化合物を得ることができる。その後、それらの化合物は、化学合成などのさらなる利用のために使用できる。
本発明は、
i)エチンを(a)カルボニル化合物と反応させてα−アルキノールを合成するステップと、
ii)α−アルキノールを輸送するステップと、
iii)輸送後にα−アルキノールを開裂させてエチンとカルボニル化合物にするステップと
を含む、エチンの安全輸送方法に関する。
好ましい方法では、α−アルキノールは次式I:
Figure 0005085643

(式中、RおよびRは独立して水素および炭化水素残基からなる群から選択される)で表される。好ましくは炭化水素残基は1〜20個の炭素原子を含み、1〜15個の炭素原子がより好ましく、1〜10個の炭素原子が最も好ましい。
式I中のRおよびRは、式II中のRおよびRに相当する。
本発明の1つの実施態様では、RおよびRは独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜15のアルキル基、C1〜15のアリール基、C1〜15のアラルキル基、C1〜15のアルキルアリール基、C1〜15のシクロアルキル基、C1〜15のシクロアルケニル基、1〜7個の二重結合、好ましくは1〜4個の二重結合を有するC1〜15のアルケニル基および1〜3個の三重結合を有するC1〜15のアルキニル基からなる群から選択される。
本発明におけるカルボニル化合物は、次式II:
Figure 0005085643

(式中、RおよびRは、上に明記したα−アルキノール(式Iに対応する)のRおよびRに相当する)で表される。
より好ましいのは、α−アルキノールが、メチルブチノール、デヒドロリナロール(dehydrolinalool)、ジヒドロデヒドロリナロール、ジヒドロイソフィトール、エチニル−β−イオノール、エチニルフェニルカルビノール(2−フェニルブタ−3−イン−2オール)からなる群から選択される方法である。α−アルキノールはメチルブチノールであるのが最も好ましい。
特に好ましい実施態様では、カルボニル化合物およびα−アルキノールのRおよびRは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびフェニルからなる群から選択される。
本発明の別の好ましい実施態様では、α−アルキノールはメチルブチノールであり、この場合、カルボニル化合物およびα−アルキノールのRおよびRがメチル基である。
さらに好ましい実施態様では、α−アルキノールが、メチルブチノール、デヒドロリナロール、ジヒドロデヒドロリナロール、ジヒドロイソフィトール、エチニル−β−イオノール、エチニルフェニルカルビノール(2−フェニルブタ−3−イン−2オール)からなる群から選択される。
本発明の好ましい実施態様では、2種類のカルボニル化合物の混合物とエチンがα−アルキノールの合成に使用され、この場合、2種類のα−アルキノールの混合物が生成する。1種類だけのカルボニル化合物を使用し、1種類だけのα−アルキノールが生成されるのが、さらにより好ましい。
α−アルキノールの合成が塩基触媒される方法が好ましい。
本発明の1つの実施態様では、カルボニル化合物/触媒のモル比が250/1を超える。
好ましい実施態様では、触媒系は、アルカリ金属水酸化物、陰イオン交換樹脂、塩基性ポリマー、固体塩基からなる群から選択される。
α−アルキノール合成用の触媒がKOHである方法がさらにより好ましい。
α−アルキノールの合成は、−20℃から+50℃の間の温度で実施されるのが好ましい。α−アルキノールの合成は、0℃から+40℃の間の温度で実施されるのがより好ましい。α−アルキノールの合成は、15℃から30℃の間の温度で実施されるのが最も好ましい。
別の実施態様では、α−アルキノールの合成は5から50バールの間の圧力で実施される。より好ましい実施態様では、α−アルキノールの合成は10から30バールの間の圧力で実施される。
α−アルキノールの開裂は塩基触媒されるのが好ましい。
好ましい実施態様では、α−アルキノールの開裂は20℃から150℃の間の温度で実施される。より好ましい実施態様では、α−アルキノールの開裂は30℃から85℃の間の温度で実施される。
α−アルキノールの開裂は、50ミリバールから標準気圧(約1013ミリバール)の間の圧力で実施されるのが好ましい。α−アルキノールの開裂は、標準気圧(約1013ミリバール)で実施されるのがより好ましい。
本発明の1つの実施態様では、エチンおよびカルボニル化合物は、α−アルキノールの開裂時に反応混合物から連続的に取り出される。
本発明による方法は、α−アルキノールの合成、輸送および開裂を含むが、これら3つのステップについて以下にさらに詳細に説明する。
本発明に使用するα−アルキノールの合成は、エチンおよびカルボニル化合物を出発物質として使用する任意の方法で実施できる。例えば、上に開示されている方法を使用してα−アルキノールを合成できる。エチンは反応混合物に直接投入することができる。あるいは適切な溶媒に溶かしてその後、加えることもできる。アンモニアをエチンの溶媒として使用するのが好ましい。温度および圧力を適切に選択することにより、アンモニアは液体状態で使用されるが、それと同時に十分なアセチレン圧力も加えて、反応器内で維持しなければならない。さらにまたカルボニル化合物の混合物を使用できる。
α−アルキノールの合成に適したカルボニル化合物は、いずれかのアルデヒドまたはケトンである。好ましい有機カルボニル化合物は次式IIで定義することができる。
Figure 0005085643

式中、RおよびRは独立して水素またはC1〜20の炭化水素残基を表しうる。RおよびRは独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜15のアルキル基、C1〜15のアリール基、C1〜15のアラルキル基、C1〜15のアルキルアリール基、C1〜15のシクロアルキル基、C1〜15のシクロアルケニル基、1〜10個の二重結合を有するC1〜15のアルケニル基、およびアルキニル基から選択されるのが特に好ましい。
式II中のRおよびRは、式I中のRおよびRに相当する。
およびRは独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜10のアルキル基、C1〜10のアリール基、C1〜10のアラルキル基、C1〜10のシクロアルキル基、C1〜10のシクロアルケニル基、1〜5個の二重結合を有するC1〜10のアルケニル基、およびアルキニル基から選択されるのがよりいっそう好ましい。
およびRは、水素、フェニル基および直鎖または分岐のC1〜8のアルキル基(これは任意選択的にフェニル基で置換されている)から選択されるのがさらに好ましい。
最も好ましいカルボニル化合物は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、ホルムアルデヒド、n−プロパナール、イソブチルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヘキサヒドロプソイドイオノン、エチルヘプテノン、フィトン、プソイドイオノン、プソイドイロン(pseudoirone)、ゲラニルアセトン、ファルネシルアセトン(farnesylacetone)、6,10−ジメチル−9−ウンデセン−2−オン、ケトイソホロン、メチルヘプテノン、メチルヘプタノン、β−イオノン、アセトフェノンである。得られるα−アルキノールは、次式:
Figure 0005085643

で表すことができ、カルボニル化合物の場合のRおよびRとα−アルキノールの場合のRおよびRは同じである。式中、RおよびRは独立して水素またはC1〜20の炭化水素残基を表しうる。RおよびRは独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜15のアルキル基、C1〜15のアリール基、C1〜15のアラルキル基、C1〜15のアルキルアリール基、C1〜15のシクロアルキル基、C1〜15のシクロアルケニル基、1〜10個の二重結合を有するC1〜15のアルケニル基およびC1〜15のアルキニル基から選択されるのが特に好ましい。
およびRは、水素、直鎖または分岐のC1〜10のアルキル基、C1〜10のアリール基、C1〜10のアラルキル基、C1〜10のアルキルアリール基、C1〜10のシクロアルキル基、C1〜10のシクロアルケニル基、1〜5個の二重結合を有するC1〜10のアルケニル基、およびC1〜10のアルキニル基から選択されるのがよりいっそう好ましい。
最も好ましいα−アルキノールは、メチルブチノール、デヒドロリナロール、ジヒドロデヒドロリナロール、ジヒドロイソフィトール、エチニル−β−イオノール、エチニルフェニルカルビノール(2−フェニルブタ−3−イン−2オール)であるが、メチルブチノールがさらにより好ましい。
エチンおよびカルボニル化合物の他に、本発明による合成では触媒系を使用するのが好ましい。反応は、好ましくは塩基触媒され、その場合に、好ましくはアルカリ金属水酸化物、陰イオン交換樹脂、塩基性ポリマー、または固体塩基を使用できる。触媒として特に好ましいのはアルカリ金属水酸化物であり、水酸化カリウムがさらにより好ましい。
好ましい基質と触媒との比として、250/1を超えるカルボニル化合物/触媒のモル比を選択できる。
α−アルキノールの合成は−20℃から+50℃の間の温度で実施するのが好ましいが、0℃〜+40℃の温度範囲がさらにより好ましく、たいていは15℃から30℃の間の温度範囲が好ましい。
α−アルキノールの合成は好ましくは5から50バールの間の圧力で実施され、さらにより好ましくは10から30バールの間で実施される。第1ステップで調製されるα−アルキノールは、好適な格納容器に満たすことができる。α−アルキノールは、純粋形態で格納容器に満たすか、または普通の有機溶媒に溶かすことができる。α−アルキノールは純粋形態で貯蔵するのが特に好ましい。
第2ステップはα−アルキノールを輸送することを含む。「輸送」という用語は、少なくとも10km、好ましくは少なくとも20km、最も好ましくは少なくとも50kmの距離にわたってα−アルキノールを輸送することを指す。α−アルキノールの輸送は、ばら積み貨物または包装貨物でのあらゆる可能な輸送手段によって実施できる。但し、輸送単位または包装単位は次のそれぞれの危険物輸送に関する国際輸送規定(international transport rules and regulations)を満たすことを条件とする:道路(ADR)、鉄道(RID)、荷船(ADNR)、遠洋(IMO IMDG)、航空(ICAO IATA)。輸送するエチンの好ましい量は、100tを超える量、特に好ましいのは1000tを超える量である。α−アルキノールの輸送は、パイプラインを用いて実施することもできる。さらにα−アルキノールの貯蔵の要求条件は、エチンの場合の要求条件と比べて厳しくない。したがって、α−アルキノールは、輸送の前または後の貯蔵に非常に適している。
第3ステップはα−アルキノールを開裂させることを含む。開裂によりエチンと(a)カルボニル化合物が生じるが、ここで、2種類のα−アルキノールの混合物を使用するのが好ましい。1種類のα−アルキノールを使用するのがさらにより好ましく、これによりエチンと1種類のカルボニル化合物が生じることになる。
α−アルキノールの他に、触媒系を使用することが好ましい。開裂反応は好ましくは塩基触媒される。好ましい触媒系は、アルカリ金属水酸化物、陰イオン交換樹脂、塩基性ポリマー、ハイドロタルサイト(hydrotalcid)、酸化アルミニウム上のフッ化カリウム、および固体塩基である。アルカリ金属水酸化物は、純粋形態で、あるいは水溶液またはアルコール溶液として使用でき、溶液の場合、1%〜60%、好ましくは10%〜50%のアルカリ金属水酸化物を含む。
開裂反応は、好ましくは20から150℃の間の温度で行われ、50℃から95℃の間の温度がさらにより好ましく、最も好ましくは30℃から85℃の間である。
開裂反応は、好ましくは5ミリバールから1013ミリバール(標準気圧)の間、さらにより好ましくは50ミリバールから1013ミリバールの間の圧力で行われる。開裂反応は、還流させながら攪拌および加熱を行うことができる反応装置で行わせることができる。反応装置への充填は、全量のα−アルキノールを一度に加えるか、あるいは何回かに分けて加えるか、あるいはα−アルキノールを反応装置へ連続供給することによって実施できる。
さらに、好ましくは開裂反応は連続プロセスで行う。図1は技術的プロセスの例を示している。上に記載したようにして高温で反応を行わせるとき、気体状態にあるので、生成物の少なくとも1種を反応混合物から取り出すことができる。触媒は反応混合物中に残る。特に好ましい実施態様では、反応温度においてエチンとカルボニル化合物の両方を反応混合物から留去できるが、得られた化合物は分別蒸留(fractionated distillation)で分離および精製ができる。さらなる精製ステップを実施して、得られた留分をさらに精製することができる。気体生成物の混合物中に含まれていることがある未反応のα−アルキノールは、反応混合物に戻すことができる。
開裂反応によりエチンとカルボニル化合物が生じる。これらの化合物は蒸留で分離するのが好ましい。α−アルキノールの開裂後にこうして生成したエチンは、適切な溶媒に溶かすことができる。あるいはさらなる用途に直接使用できる。エチン用の好ましい溶媒はDMF、NMP、アセトンまたはTHFである。
[実施例1:6−メチル−5−ヘプテン−2−オンのエチニル化による3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イン−3−オールの製造]
水酸化カリウム(KOH)の45%(wt./vol.)水溶液796mgおよび6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(MH)194.5gを反応器に投入した。したがってKOH:MHのモル比は1:250であった。反応器から空気を4回真空引きし、その後に窒素でフラッシング(反応器の不活性化(inertisation))を行った後に、369gのアンモニアを投入した。その後、アセチレンを加えて16.1バール(1.61MPa)の圧力をかけた(30℃)。これは、アンモニアとアセチレンの混合物中における21%(wt./vol.)のアセチレンに相当する。反応器の内容物をガス攪拌(gas stirring)でかき混ぜた。ガスクロマトグラフィー(GC)で内容物を分析するために、さまざまな時間間隔で試料を採取した。5時間後に、反応は最終的に停止した。というのは、その時点までに非常に多量の所望生成物3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イン−3−オール(デヒドロリナロール;DLL)およびほんの少量のジオール副生成物、ならびに変化していないMHが存在していることが確認されたからである。結果を以下の表1に示す。
Figure 0005085643
メチルブチノールの合成は、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イン−3−オールの合成と同様にして実施できるが、この場合、6−メチル−5−ヘプテン−2−オンの代わりにアセトンを使用する。
[実施例2:メチルブチノールの輸送方法]
50000kgの純粋メチルブチノールをUN1987、等級3、TKGR IIに従って好適な格納容器に満たす。格納容器は、ばら積み貨物または包装貨物でのあらゆる可能な輸送手段による輸送に適している。但し、輸送単位または包装単位は次のそれぞれの危険物輸送に関する国際輸送規定を満たすことを条件とする:道路(ADR)、鉄道(RID)、荷船(ADNR)、遠洋(IMO IMDG)、航空(ICAO IATA)。
[メチルブチノールの開裂]
[実施例3a:]
撹拌機、温度計(PT−100)、基質注入口(計量分配装置(dosimate)、Metrohm 718 Stat Titrino)、およびビグリューカラム(vigreux columne)(長さが40cm)を備えた、加熱冷却ジャケット(heating−cooling jacket)を有する350mlの四つ口フラスコに、15mlのKOH(HO中に41.42%、0.154mol)を仕込み、攪拌しながら(750rpm)80℃まで加熱した。数時間(45時間)の間に、0.8ml/分の供給量でメチルブチノール(MBI)を加えた(合計2160ml、22.11mol)。反応中にアセトンを留去し、冷却装置(二面凝縮器(double surface condenser))を用いて0℃で凝結させた。アセトン留分を0〜5℃(氷浴)で貯蔵した。アセトンの収量:1220g95%(最適化は行っていない)。エチンの収量:アセトン中に61g(5%)、および13リットルのDMF(20℃)中に541g(94%)が回収された。
[実施例3b:]
撹拌機、温度計(PT−100)、基質注入口(Gilsonポンプ305)、およびビグリューカラム(長さが40cm)を備えた(加熱冷却ジャケットを有する)250mlの四つ口フラスコに、30mlのKOH(HO中に41.42%、0.308mol)を仕込み、攪拌しながら(800rpm)84℃まで加熱した。数時間(12時間)の間に、0.79ml/分の供給量でメチルブチノール(MBI)を加えた(合計567ml、5.8mol)。反応中にアセトンを留去し、冷却装置(二面凝縮器)を用いて0℃で凝結させた。アセトン留分を0〜5℃(氷浴)で貯蔵した。アセトンの収量:316g、93.8%(最適化は行っていない)。エチンの収量:アセトン中に15.8g(5%)、および3.5リットルのDMF(20℃)中に140.5g(93%)が回収された。
[実施例3c]
温度計、還流冷却器、および撹拌機を備えた100mlの四つ口フラスコに、17.22g(205mmol)の2−メチル−3−ブチン−2−オール(MBI)を仕込み、750rpmで攪拌し、還流温度まで加熱した。5分後に内部温度は90℃に達したので、酸化アルミニウム上のフッ化カリウム(Fluka60244、21.5%KF)2gを加えた。反応は、GCで制御した(試料を60分後、155分後および385分後に採取した)。ケトンを蒸留で分離した。アセトンの収量:11.47g(96.5%)(最適化は行っていない)。
[2種類のα−アルキノールの混合物の開裂]
[実施例4a]
温度計、還流冷却器、および撹拌機を備えた100mlの四つ口フラスコに、8.61g(102)mmolの2−メチル−3−ブチン−2−オール(MBI)および15.58g(102)mmolの3,7−ジメチル−6−オクテン−1−イン−3−オール(DLL)を仕込み、750rpmで攪拌し、還流温度まで加熱した。5分後に内部温度が93℃に達したので、2mlのKOH(HO中に41.42%、20.53mmol)を加えた。反応は、GCで制御した(試料を60分後、155分後および385分後に採取した)。ケトンを蒸留で分離した。アセトンの収量:5.7g、(95.8%)、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(MH)の収量:12.3g、(95.2%)(最適化は行っていない)。
[実施例4b]
温度計、還流冷却器、および撹拌機を備えた100mlの四つ口フラスコに、8.61g(102)mmolの2−メチル−3−ブチン−2−オール(MBI)および30.14g(102mmol)の3,7,11,15−テトラメチル−1−ヘキサデシン(hexadecin)−3−オール(DIP)を仕込み、750rpmで攪拌し、還流温度まで加熱した。5分後に内部温度が95℃に達したので、2mlのKOH(HO中に41.42%、20.53mmol)を加えた。反応は、GCで制御した(試料を60分後、155分後および385分後に採取した)。ケトンを蒸留で分離した。アセトンの収量:5.8g、(97.5%)、6,10,14−トリメチル−2−ペンタデカノン(C18−K)の収量:26.1g、(96.1%)(最適化は行っていない)。
[実施例5:連続プロセスでのメチルブチノールの開裂]
メチルブチノールの開裂は、例えば図1のような連続プロセスで実施できる。反応器にはメチルブチノールおよび触媒を連続的な方法で供給できる。メチルブチノールの開裂により、好適な反応温度では気体であるアセトンおよびエチンが生じる。気体状生成物は反応器から直接取り出され、分別凝縮(fractionated condensation)で分離されるが、この場合にエチンは気体のままであり、アセトンおよび未反応のメチルブチノールを凝縮できる。その後、メチルブチノールを反応混合物へ戻すことができる。気体状エチンは純粋生成物として直接取得できる。アセトンはまだエチンを含んでおり、この混合物はさらなる精製ステップで分離される。この第2蒸留ステップの後、純粋なアセトンおよびエチンを取得できる。エチンの収率は95%である。
α−アルキノールを開裂させる技術的方法に使用する装置を示す。図1中の技術的要素は、次のように明記されている:1(反応器のループ)、2(熱交換器)、3(カラム)、4aおよび4b(熱交換器)、5(分離器)、6(熱交換器)、7(カラム)。

Claims (17)

  1. i)エチンを(a)カルボニル化合物と反応させてα−アルキノールを合成するステップと、
    ii)前記α−アルキノールを輸送するステップと、
    iii)輸送後に前記α−アルキノールを開裂させてエチンとカルボニル化合物にするステップと
    を含む、エチンの安全輸送方法。
  2. 前記α−アルキノールが次式:
    Figure 0005085643
    (式中、RおよびRは独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜15のアルキル基、C1〜15のアリール基、C1〜15のアラルキル基、C1〜15のアルキルアリール基、C1〜15のシクロアルキル基、C1〜15のシクロアルケニル基、1〜7個の二重結合を有するC1〜15のアルケニル基、およびC1〜15のアルキニル基からなる群から選択される)で表される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記カルボニル化合物が次式:
    Figure 0005085643
    (式中、RおよびRは前記α−アルキノールに関してRおよびRと定義されたものである)で表される、請求項1または2に記載の方法。
  4. およびRが独立して、水素、直鎖または分岐のC1〜10のアルキル基、C1〜10のアリール基、C1〜10のアラルキル基、C1〜10のアルキルアリール基、C1〜10のシクロアルキル基、C1〜10のシクロアルケニル基、1〜5個の二重結合を有するC1〜10のアルケニル基、およびC1〜10のアルキニル基からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記α−アルキノールの合成が塩基触媒される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. カルボニル化合物/触媒のモル比が250/1を超える、請求項5に記載の方法。
  7. 前記触媒系が、アルカリ金属水酸化物、陰イオン交換樹脂、塩基性ポリマー、固体塩基からなる群から選択される、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記α−アルキノールの合成が0℃から+40℃の間の温度で実施される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記α−アルキノールの合成が10から30バールの間の圧力で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記α−アルキノールの開裂が塩基触媒される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記α−アルキノールの開裂が20℃から150℃の間の温度で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記α−アルキノールの開裂が50ミリバールから標準気圧の間の圧力で実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記エチンおよびカルボニル化合物が前記α−アルキノールの開裂時に前記反応混合物から取り出される、請求項1に記載の方法。
  14. エチンの安定前駆体としてのα−アルキノールの使用であって、前記α−アルキノールは安全な方法で輸送でき、前記輸送後に前記α−アルキノールを開裂させてエチンとカルボニル化合物にすることができ、さらに前記α−アルキノールが次式:
    Figure 0005085643
    (式中、RおよびRは独立して、水素、フェニル基、直鎖または分岐のC1〜8のアルキル基(任意選択的にフェニル基で置換されている)からなる群から選択される)で表される、エチンの安定前駆体としてのα−アルキノールの使用。
  15. 前記α−アルキノールの開裂が連続プロセスで実施される、請求項14に記載の使用。
  16. 前記連続プロセスが、分別蒸留である少なくとも1つの精製ステップを含む、請求項15に記載の使用。
  17. およびRが独立して水素、メチル、エチル、プロピルおよびフェニルからなる群から選択される、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
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