JP5084761B2 - 地中熱交換体の施工方法及び該方法に用いる中空管体、ケーシング - Google Patents

地中熱交換体の施工方法及び該方法に用いる中空管体、ケーシング Download PDF

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Description

本発明は、地中熱を利用して、空調、給湯、融雪などに利用する地中熱交換技術に関し、特に熱交換媒体を収容して地中に埋設施工される地中熱交換体の施工方法及び該施工方法に用いる中空管体、ケーシングに関する。
なお、本明細書において地中熱交換体とは、地中に配置される熱交換媒体、熱交換媒体を地中に配置するための部材、機器類をいうものとする。
地中熱を利用して、空調や給湯、融雪などを行うことは、従来から行われている技術であり、特に近年は自然エネルギー利用の一つとして、注目されている。
地中熱を利用する一般的な方法は、地中熱との熱交換を行なう熱交換媒体を地中に配置してこの熱交換媒体の熱を前記空調等に利用するというものである。
熱交換媒体を地中に配置するための態様としては、いくつかの態様があり、欧米ではボアホールを利用する方法が広く普及している。
しかし、日本ではボアホールの掘削コストが高いという理由でそれほど普及していない。また、ボアホールは掘削する場合には、孔壁保護のために泥水やセメント等を用いるため地下水を汚染する危険がある。さらにまた、ボアホール内に収容される熱交換チューブが埋め殺しとなり、メンテナンス性に問題がある。
地中熱交換体の別の態様として、以下のようなものが提案されている。
(1)先端鋼管と削孔鋼管のいずれか一方の先端部に螺旋状羽根を備え、先端鋼管を装着した削孔鋼管を地中に回転・圧入して所定の掘削深度まで到達させ、次いで削孔鋼管内に熱交換チューブを挿入し、次に削孔鋼管を逆回転して先端鋼管を切離して削孔鋼管を引抜き回収しながら同時に熱交換チューブの周りの孔内にグラウト材を充填して熱交換チューブを設置する(特許文献1参照)。
この発明によれば、先端部のみに螺旋状羽根を設けた回転圧入鋼管を用いて無排土で削孔し、削孔内に熱交換チューブを挿入後、グラウト材を充填しながら削孔鋼管を先端鋼管と切離し離脱して引抜き、仮ケーシングなしで熱交換チューブを削孔に挿入設置可能としたため、排土処分が不要となり、熱交換チューブ設置工事の経済性、工期短縮等を図ることができるとしている。
(2)杭本体外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の杭ねじ込み用螺旋翼を、杭本体の外周面に1巻き以上突設して、さらに杭の下端に掘削爪を備えた鋼管杭を用いて、杭中空部内に熱交換用配管をした熱交換用鋼管杭(特許文献2参照)。
この発明によれば、地中の熱をより効率的に杭内部に伝えることができ、かつ施工性に優れた熱交換用鋼管杭を提供することができるとしている。
特開2002-303088 特開2004-177012
特許文献1に記載のものは、地盤に設けた掘削孔に熱交換チューブを挿入し、その周りの孔内にグラウトを注入するというものである。
このように、特許文献1のものは地盤に設けた掘削孔に直にグラウト材が注入されるため、地下水を汚染する危険がある。
また、仮に熱交換体を使用しなくなったとしても、地盤に注入したグラウト材を掘り起こすのは大変なことからそのまま放置される危険もあり、必ずしも環境にやさしいとはいえない。
他方、特許文献2のものは、地中に杭本体を打設し、これを熱交換体として利用するため、地盤に直にグラウト材を注入する特許文献1のものに比べると上記のような環境に対する問題は少ないといえる。
しかしながら、特許文献2のものには以下のような問題がある。
特許文献2のものは、通常の回転貫入杭の施工と同様に、杭頭部に回転トルクを掛けて施工する必要がある。そのため、杭頭部に掛ける回転トルクに耐えられる杭板厚にする必要があり、杭材コストが上昇し、不経済である。
また、特許文献2のものは、地中熱交換体専用であるため杭に必要とされるような支持力はいらないため、先端に設けられる羽根は施工時の推進力を得るためにのみ必要であるにもかかわらず、施工後において地中に埋設されたままとなり、無駄であり、この点からも不経済である。
特許文献2のものは、杭体を地中に埋設するものであるため、仮に熱交換体を使用しなくなった場合に地中から撤去することは特許文献1のものよりも容易であると言える。
しかしながら、杭体の引抜に関して、特許文献2のものは以下のような課題がある。
杭内部には熱交換チューブを配管することになるが、この熱交換チューブが日射の影響を受けないようにするために一般的にはこれを地表面より下に設置する必要があり、このため杭頭部も地表面より下になるように施工される。つまり、杭を回転させるためヤットコ施工を行う場合は杭頭部が地盤内に埋もれるのでそのままでよいが、仮に杭頭部が地表面から突出した状態で施工完了すれば頭部を切断することになる。
このように、施工後の状態では杭頭部が地盤内に埋もれた状態になるため、引き抜きを行う場合に、杭頭回転方式では、杭頭部の周囲の地盤を掘削して回転金具を取り付けなければならないなどの手間がかかるという問題がある。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、地下水や地盤を汚染しない環境にやさしく、経済的な地中熱交換体の施工方法、該施工方法に用いる中空管体を得ることを目的としている。
特許文献2に記載の発明においては、この発明よりも以前の発明においては構造体としての基礎杭と地中熱交換体とを兼用していたのに対して、杭体を地中熱交換体専用に用いている点で新規な考え方である。
このような考え方によれば、杭体には支持力が不要となることから、その分管厚を薄くできる。
しかしながら、特許文献2のものは従来の杭体という発想の範囲にあるため、杭体を構成する鋼管は地盤に孔を掘削する機能と共に地中に埋設されて熱交換媒体を収容する地中熱交換体としての機能を併せもつことが要求されている。
孔を掘削する機能を発揮するためには掘削のための回転トルクを全長に亘って伝達する必要があるため、鋼管はその回転トルクに耐えられるだけの厚みが必要とされる。特に、杭長が長く深いところまで貫入させる場合や、砂礫層など硬い地盤に打設する場合は、大きなトルクが必要となり、それに耐えられる大きな板厚や強度が必要となる。
他方、地中における熱交換のことを考えると、鋼管の厚みは薄い方が熱伝達性に優れるのでよいと言える。
このように、孔を掘削するために必要な機能と熱交換体としての機能では相反する機能が要求されるにもかかわらず、従来はこれを一つの部材でおこなっていたために不経済でかつ低効率なものとなっていた。
そこで、発明者はこの点に着目して、この相反する機能部材を分離することによって、経済性に優れ、かつ高効率の熱交換体およびその施工方法が実現できるとの知見を得た。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
(1)本発明に係る地中熱交換体の施工方法は、熱交換媒体を収容して地中に埋設されることで地中熱と前記熱交換媒体との熱交換を行なう地中熱交換体の施工方法であって、地盤への貫入機能を有するケーシング本体部と該ケーシング本体部の先端に開閉自在に取り付けられた蓋体を備えてなる筒状のケーシングを所定深さまで貫入させる貫入工程と、前記ケーシングの内部に中空管体を配置した状態で少なくとも前記ケーシング本体部を抜き取るケーシング抜取り工程とを備えていることを特徴とするものである。
なお、中空管体をケーシングの内部に配置するタイミングは、貫入工程の前であってもよいし、貫入工程が完了した後であってもよい。
また、蓋体が開閉自在とは、蓋体とケーシング本体部が連結部を介して常時連結された状態で開閉される態様の他、蓋体がケーシング本体部に着脱可能になっており開状態のときには蓋体がケーシング本体部から離脱し、閉状態のときには蓋体がケーシング本体部に当接する態様も含む。
(2)また、上記(1)に記載の貫入工程において、蓋体は地盤の押圧力によって閉止状態となり、ケーシング抜取り工程において蓋体はケーシング内部に配置された中空管体に当接することで開状態となるように構成されていることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、ケーシングはその先端部及び/または外周部に翼を有し、埋設工程においてはケーシングを地盤に回転貫入することを特徴とするものである。
(4)本発明に係る地中熱交換体の中空管体は、上記(1)〜(4)の何れかに記載の地中熱交換体の施工方法に用いられる中空管体であって、該中空管体の下端内面に該中空管体に回転力及び/または引抜力を伝達可能な係止部を備えてなることを特徴とするものである。
なお、係止部を設ける位置の具体例としては、例えば中空管体の径をDとしたときに、係止部が下端部の2Dの範囲内である。
(5)また、上記(4)に記載のものにおいて、中空管体が鋼管であることを特徴とするものである。
(6)また、上記(1)〜(3)の何れかに記載の地中熱交換体の施工方法に用いられるケーシングであって、蓋体が複数の蓋体片からなり、その周端部がケーシングの開口縁部にヒンジ結合されていることを特徴とするものである。
(7)また、上記(1)〜(3)の何れかに記載の地中熱交換体の施工方法に用いられるケーシングであって、蓋体が前記ケーシング本体部の端部に着脱可能に設けられていることを特徴とするものである。
(8)また、上記(7)に記載のものにおいて、前記蓋体は、ケーシング本体部の内周面に沿うように形成された板体からなり、該板体は、その周縁部から外方に突出して前記ケーシング本体部に係止する係止突部を備えてなることを特徴とするものである。
本発明の地中熱交換体の施工方法によれば、熱交換媒体を収容して地中に埋設されることで地中熱と前記熱交換媒体との熱交換を行なう地中熱交換体の施工方法であって、地盤への貫入機能を有するケーシング本体部と該ケーシング本体部の先端に開閉自在に取り付けられた蓋体を備えてなる筒状のケーシングを所定深さまで貫入させる貫入工程と、前記ケーシングの内部に中空管体を配置した状態で少なくとも前記ケーシング本体部を抜き取るケーシング抜取り工程とを備えたことにより、中空管体にはトルク等の力を作用させることなく埋設が可能となるので、中空管体を形成する部材の厚みを小さくすることができ、コスト低減が可能となると共に熱伝達率がよくなるので熱交換体としては高効率となる。
また、地中熱交換体として中空管体を用いるので、地中に設けた孔に直にグラウト材を注入するもののように地下水や地盤を汚染することがなく環境にやさしい。
本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法に使用する施工器具を説明する模式図である。 図1の矢視A−A図である。 図1に示した施工器具の動作説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法に使用する施工器具の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法に使用する施工器具の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法の他の態様の説明図である。 図6の矢視B−B断面図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法における中空管体の埋設する工程の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法における熱交換チューブの挿入方法の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る中空管体の引抜方法の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る中空管体の引抜方法の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る中空管体の引抜方法の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法における中空管体の埋設する工程の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態における翼の形態の効果を確認する実験結果を示すグラフである。 本発明の一実施の形態に係る翼の形態の効果を説明する説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の他の態様の説明図である。 本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法の態様の工程の説明図である。
図1は本発明の一実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法に使用する器具を説明する模式図、図2は図1における矢視A−A図である。
本実施の形態に係る施工方法に用いる器具は、地中に埋設されて熱交換体の一部となる中空管体1と、この中空管体1を地中に埋設させるための翼付きケーシング3とを備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
<翼付きケーシング>
翼付きケーシング3は、中空管体1を地中に埋設するための専用の器具であり、円筒状の鋼管からなるケーシング本体部5と、その下部周面に設けられた翼7と、下端面に開閉自在に設けられた蓋体8とを備えてなる構造である。
翼付きケーシング3は、N値が50を超える砂礫などの硬い地盤でも施工できるように、翼7の本体部への接続部は強固なものとし、また通常の杭施工よりも大きなトルクを掛けられるように板厚を十分大きくする。
それにより、大きなトルクを利用して、木ねじの要領で貫入性の良い翼付きケーシング3とすることができる。
必要に応じて、ケーシング下端側面部や翼に掘削刃などを取り付けたりして、掘削能力を向上させるようにしてもよい。
ケーシング本体部5の板厚は、ケーシング径の1.5%〜10%程度が望ましく、製造できる範囲で厚いものがよい。材質も高強度のものを用いれば、耐えられるトルクの範囲が広くなるので好ましい。
ケーシング本体部5の内径は、中空管体1の外径より多少大きく設定し、施工時に中空管体1と接触しないようにするのが望ましい。例えば、中空管体1の外径Dに対して、D1=1.2〜2D程度が望ましい。
ケーシング本体部5に取り付けられる翼7は、螺旋状や平板状のものでよい。
ケーシング本体部5の下端面に設けられた蓋体8は、円板を5分割した扇形状の5枚の蓋体片9の円弧側周端部をケーシング本体部5の下端周縁部に回動可能に連結してなるものである。
各蓋体片9は、地盤への貫入時においては、各蓋体片9の下面側に地盤からの押圧力が作用し、図2に示すように、蓋体8が閉止した状態となる。各蓋体片9は、図1、図2に示す蓋体8を閉止するほぼ水平になる位置でその動きが規制され、それよりも内側へ回動する動きが規制される。
他方、翼付きケーシング3を地中の所定の深さまで貫入させた後、翼付きケーシング3内に中空管体1を配置して、翼付きケーシング3を逆回転などして上方に引き上げるときには、図3に示すように、各蓋体片9の上面側に中空管体1の先端部が当接し、蓋体8が開放される。これによって、翼付きケーシング3の下端部が中空管体1の外側を通過でき、中空管体1を地中に残して引き上げることができる。
なお、蓋体8の構造は図1、図2に示したものに限られず、翼付きケーシング3の貫入時に閉じた状態であり、翼付きケーシング3を逆回転などして引き抜くときに開く構造であればよい。そのような蓋体8の他の例として、例えば図4に示すように、ケーシング本体部5の外径より大きい外径の円形鋼板を複数に分割して蓋体8を構成する蓋体片11を形成し、この蓋体片11の外周縁の一端をケーシング本体部5の先端部にヒンジ等によりそれぞれ回動可能に取付けてなるものでもよい。
上記のように構成した蓋体8は、翼付きケーシング3の地盤への貫入時においては、地盤の押圧力により各蓋体片11が内側に押圧されて、図4に示すように、先端部どうしが当接してコーン状になる。このため、地盤の抵抗が少なく、貫入し易い。また、翼付きケーシング3を引上げる場合は、図3に示したのと同様に、各蓋体片11はその内面側が中空管体1の先端に当接することにより、ヒンジを軸に外方に押し広げられて開放する。
なお、上記の例では蓋体8は、これを構成する蓋体片9、11の数が5個の場合を示したが、スムーズに開閉ができる構造であれば何個でも良く、1〜6個程度が望ましい。
また、図5に示すように、蓋体8の下側(地盤の接触側)に、地盤掘削用の三角板13や、掘削刃などを取り付けることにより、翼付きケーシング3をよりスムーズに貫入させることができる。
なお、本実施の形態の蓋体8は開閉できる構造であるため、蓋体片9、11同士やこれら蓋体片9、11とケーシング本体部5との接触点では多少の隙間等を生じることになるが、この隙間は土砂が流入して施工ができなくなるほどではない。
<中空管体>
中空管体1は、熱交換媒体を収容して地中に埋設されることで地中熱と熱交換媒体との熱交換を行なう地中熱交換体を構成する。
中空管体1は、下端部に底板14が設けられ上端部が開口した断面円形の有底の筒状体である。もっとも、中空管体1の断面形状は、例えば熱交換媒体を通流させる熱交換チューブや、その周りを充填する水などを入れることができる形状であれば特に限定されるものではなく、円形の他に四角や多角形でもよい。また、熱交換効率を上げるために全体を蛇腹状にしたり、フィンを取り付けた構造にしたりしてもよい。
また、中空管体1を形成する材質は、中空管体1内に収容される熱交換媒体と地中熱との熱交換ができる材質であれば何でもよく、例えば、鋼や樹脂などでもよい。
このように、中空管体1の形状材質は特に限定されないが、一般には、熱伝導率が大きく、コストの低い円形鋼管を用いるのが望ましい。
中空管体1の径や、本数、長さは、空調設計などで必要とされる負荷に応じて決められる。
中空管体1の径は、特に限定する必要はないが、施工コストや翼付きケーシング3のコストを考慮すると、φ80mm〜φ600mm程度が望ましい。
もっとも、地盤との接触面積が得られる熱量に大きく影響するので、大きな径の地中熱交換体を造成するよりも、小さな径を複数本造成する方が、全体の得られる熱量が大きくなる場合があるので、この点も考慮するのが望ましい。
また、中空管体1の中に入れる熱交換チューブの本数も得られる熱量に影響するので、この本数も考慮して中空管体1の径を決めることが望ましい。
なお、一般に、中空管体1の内径がφ200mm程度まではφ30mm程度の熱交換チューブを1本(1対、図10参照)入れることとし、中空管体1の内径がこれ以上の場合には入れる熱交換チューブの本数を複数本にするのが望ましい。熱交換チューブは、一般にポリブテン管や架橋ポリエチレン管を用いる。施工性、メンテナンス性、熱伝導性、コストを考慮して最適な材質を用いるのが良い。
地中熱交換体の全長が長い場合には、中空管体1とケーシング本体部5を継ぎ足しながら施工する。この場合、中空管体1内に充填する水などが地盤に流出しないように接続する必要があるため、中空管体1が鋼管の場合では溶接接合がよい。もっとも、接続部の密閉性を保てる構造であれば、別の接合方法を用いてもかまわない。
ケーシング本体部5は機械式継手接合にするのが望ましい。ケーシング本体部5は、中空管体1を所定深度に埋設した後、引き抜かれて再利用するため、継手部分を溶接するとガス切断や開先の取り直しなどの作業で手間が掛かるため、機械式の継手にしておいた方が便利だからである。
ケーシング本体部5には施工時に大きなトルクが作用するため、機械式継手はその大きなトルクに耐えられる構造のものを使用する。図6は機械式継手の一例を示す図、図7は図6の矢視B−B図であり、この図6、図7に示すように、フランジ15とボルト17を用いて接続する方法でも良い。
また、図8に示すようにボルト19のみでケーシング本体部5同士を接続する方法でもよいし、あるいはケーシング本体部5の接続端部にねじ部を設け、これらを互いにねじ込むようなねじ式の継手としてもよい。
なお、この機械式継手がケーシング本体部5の内側に張り出す場合は、この機械式継手が中空管体外面とぶつからないように両者間に十分な距離をとる必要がある。もっとも、ケーシング本体部5は、杭のように地盤との間で周面摩擦力を必要としないため、機械式継手がケーシング本体部5の外側に張り出す構造にしても問題ない。
本実施の形態のものは、翼付きケーシング3を用いて施工を行う構造であるため、中空管体1にはトルクが作用しない。したがって、本実施の形態の中空管体1の板厚は、地中熱交換体兼用の杭などに比べると薄くすることができることは当然であるが、特許文献2に示したものに比較しても、さらに薄くできる。よって、中空管体1として鋼管を用いる場合は、強度が高いものを使用する必要が無く、腐食により孔があいて水漏れなどがしないような板厚であればよく、外径の1〜5%程度の板厚または2〜10mm程度の板厚で十分である。
<施工方法>
図9は上記のように構成された中空管体1を、翼付きケーシング3を用いて地中に施工する施工方法を説明する説明図である。
以下、図9及び前述の図1〜図8を参照にしながらこの施工方法を説明する。
まず、図9(a)に示すように、中空管体1を地盤上の埋設予定位置に配置し、この中空管体1に翼付きケーシング3を嵌装する。あるいは、翼付きケーシング3を地盤上の埋設予定位置に配置し、この翼付きケーシング3の内側に中空管体1を嵌装するようにしてもよい。この状態では、中空管体1は蓋体8に載置されているだけである。
そして、翼付きケーシング3の頭部を図示しない接続具を介して施工機械23の回転モータ25に接続する。
この状態で、回転モータ25を正方向に回転して翼付きケーシング3を回転駆動すれば、翼付きケーシング3は翼7のねじ作用により、地中に貫入される(図9(b)参照)。このとき、翼付きケーシング3の先端部の蓋体8は地盤の押圧力により閉止した状態で地盤に貫入されるので、ケーシング本体部5内には土砂がほとんど流入せず、また中空管体1は蓋体8に乗っかっているだけであり、翼付きケーシング3から回転トルクや押込み力などが作用することはない。仮に、水が流入するなどで中空管体1が浮力で浮いてしまう場合には、中空管体1に水などを入れて浮かないように施工する。
なお、施工途中の中空管体1の頭部はフリーとなっており、中空管体1の外周面とケーシング本体部5の内周面が接触する恐れがあるので、これを防止するために中空管体1の外壁あるいはケーシング本体部5の内壁にスペーサなどを適宜設けてもよい。
中空管体1は熱交換体として機能するものであり、杭のように埋設後の状態において先端支持力や周面摩擦力を必要としない。したがって、翼付きケーシング3による地中への回転貫入時において、施工スピードを上げるために逆回転などによって上下動などを頻繁に行って施工しても良い。ただし、土が地上に排出したり、地下水流れを乱したりしないようにする必要がある。
地中熱交換体の全長が長い場合には、図9(c)に示すように、中空管体1とケーシング本体部5を継ぎ足しながら施工する。この例では、中空管体1とケーシング本体部5を各2本連結する例である。中空管体1とケーシング本体部5を継ぎ足した後、回転貫入を行なって所定の深さまで貫入させる。そして、所定の深さまでの貫入が完了すると、翼付きケーシング3を逆回転させて引き上げる。このとき、蓋体8の内面側が中空管体1の先端に当接するので、中空管体1の頭部を押えるようにすることにより、蓋体8が開放して(図9(d)参照)、中空管体1を地中に残して翼付きケーシング3引き上げ、翼付きケーシング3のみを回収することができる(図9(e)、(f)参照)。
なお、翼付きケーシング3を抜いた後の地盤と中空管体1との隙間は、通常は小さいので自然に消滅するが、必要であれば、ケーシング3の引抜き時などに、砂や砂利、それらに水分を混ぜたものや、熱伝導性の良い材料を混ぜた土などをこの隙間に充填することもできる。
中空管体1の施工が完了すると、図10に示すように、熱交換チューブ27を中空管体1内に挿入し(図10(a)参照)、中空管体1内に水を充填すれば(図10(b)参照)、地中熱交換体が完成する。
同様の施工を、複数繰り返して行うことにより、設計された負荷に応じた地中熱交換体群を形成することができる。
なお、各地中熱交換体は相互の熱作用を受けないように1m程度以上離して設置するのが望ましい。また、熱交換チューブ27をヒートポンプまで配管するとき、日射の影響を受けるので、地中1m程度に埋めるのが望ましい。日射の影響を考慮して、地中熱交換体は建物の北側など日陰に設置すると、日射の影響を受けにくく地中熱を有効に活用することができる。
以上のように、本実施の形態に係る地中熱交換体の施工方法においては、地盤への貫入機能を有する翼付きケーシング3の内側に中空管体1を配置し、翼付きケーシング3の地盤への貫入と共に中空管体1を地中に埋設してゆき、中空管体1が所定の深さに埋設された後、翼付きケーシング3のみを抜き取るようにしたので、地中へ埋設する工程においては、中空管体1にほとんど力が作用しないため、中空管体1を形成する部材の厚みを小さくすることができ、コスト低減が可能となると共に熱伝達率がよくなるので熱交換体としては高効率となる。
また、翼付きケーシング3は繰り返し利用できるので、翼付きケーシング3を種々の地盤、例えば硬い地盤にも貫入できるようにするために厚肉のものを製作したとしても、大きなコストアップになることがなく、むしろ作業効率の向上により、コスト低減が可能となる。
また、本実施の形態においては、先端付近に翼7を取り付けた翼付きケーシング3を用いるので、無排土施工が可能となり、それ故にセメントミルク等を用いる必要がないので、地下水や地盤を汚染することなく環境に優しい。
また、本実施の形態に係る地中熱交換体は、建物や空調機のリニューアルなどで不必要になったり、設置場所を移動したりする必要があるときは、中空管体1を引き抜くことにより簡単に撤去でき、再度別の場所に施工することで地中熱交換体として利用することができる。
中空管体1を引抜が容易にできるようにするために、図11に示すように、中空管体1の内面下部先端部付近に回転トルクおよび引抜き力伝達用の係止突部29を設けるのが望ましい。係止突部29は、1個でも複数個でも良い。中空管体1の引抜に際しては、例えば図11に示すように、先端部に係止突部29に係合可能な係合穴31を有する引抜き用ロッド33を用いる。引抜き用ロッド33の先端に設ける係合穴31は、例えば、図11に示すような下端側が開口した脚部と腕部からなるT字状のものでよい。もっとも、係合穴31や係止突部29は、中空管体1を引き抜くのに必要なトルクや引抜き力をかけられる構造であれば、どのような形でも良い。
中空管体1の引抜作業は以下のようにして行なう。
まず、中空管体1から熱交換チューブ27を引き抜き、中空管体1内の充填水をポンプ等でくみ上げ、空となった中空管体1内に引抜き用ロッド33を挿入する。なお、充填水はくみ上げなくても引抜き用ロッド33を挿入することはできるが、最初にくみ上げておいた方が作業性がよい。
引抜き用ロッド33を挿入して、係合穴31と係止突部29を係止させ、この状態で引抜き用ロッド33を地上にある重機のモータで回転させる。これによって、中空管体1と地盤との摩擦の縁が切れ、縁が切れた状態で中空管体1を引き上げれば容易に引き抜くことができる。
中空管体1の引抜に際して、中空管体1の頭部に回転力を作用させることも考えられるが、この場合には中空管体全長に作用する摩擦力が中空管体1に抵抗として作用するため(中空管体1の頭と先端の両方が固定点となるため)、中空管体1の板厚が薄いので、中空管体1と地盤との摩擦の縁が切れる前に中空管体1がねじ切れてしまう危険性がある。特に先端に翼がある特許文献2のものでは、翼の抵抗も大きいため板厚が薄いとねじ切れてしまう。
この点、図11に示すように、中空管体1の下端に回転力を作用させるようにすれば、中空管体1の下端から徐々に摩擦の縁が切れて(杭頭部はフリーで杭先端のみ固定点となる)、それほど大きなトルクが中空管に作用しないので、中空管体1の板厚が薄くても問題ない。
また、周面摩擦の縁が切れれば中空管体1は容易に引き抜けるので、翼付き杭のように翼7が付いていなくても、引抜き作業には支障がない。引き抜いた中空管体1は、別の場所で再度利用することが可能であるので、環境にやさしい方法である。
なお、上記の実施の形態においては、中空管体1の引抜のための機構として、中空管体1の内面に係止突部29を設け引抜き用ロッド33にT字状の係合穴31を設けた例を示したがこれに限定されるものではなく、中空管体1に対して回転力を与えることができ、引抜き用ロッド33と一体となって上方に移動できるものであれば、他の構造であってもよい。例えば、図12に示すように、中空管体1の内面先端の対向する位置にT字状のT字突部35を設け、中空管体1の底面とT字突部35の肩部との間に嵌入できる角部材37を先端に設けた引抜き用ロッド39を用いて回転力を与え、かつ引抜くようにしてもよい。また、図13に示すように、図12のT字突部35に代えてL字突部40を設けてもよい。
なお、上記の実施の形態においては、翼付きケーシング3の施工と同時に中空管体1を翼付きケーシング3に建て込むようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、翼付きケーシング3を所定深度まで施工した後に、中空管体1を建て込むようにしてもよい。図14はこの場合の施工手順を示す説明図であり、翼付きケーシング3の施工時には中空管体1を建て込まず(図14(a)、(b)、(c)参照)、翼付きケーシング3を所定深度まで施工したときに所定長さの中空管体1を建て込むようにする(図14(d)参照)。図14に示す例のように、中空管体1を後から建て込む方が、地上で中空管体1同士の継ぎ作業ができるなど、全体の施工スピードを上げることができる。もっとも、翼付きケーシング3を貫入したときにケーシング本体部5内に水が大量にしみ出てくるような場合では、水の浮力により中空管体1を建て込むことが困難になるので、中空管体1内に水を入れるなど浮力に打ち勝つようにして建て込む作業が必要となり、図14に示した施工方法はケーシング本体部5内に水がそれほど入ってこない状況に好適であるといえる。
また、ケーシング本体5に取り付けられる翼7の例として、上記の実施の形態においては螺旋状または平板状の翼を1段設けた例を示したが、本発明に係る翼7はこれに限られるものではなく翼の段数は複数段設けてもよい。
また、翼7はスパイラルオーガのように連続したものでも良いが、これを全長に亘って取り付けると地盤から土が排出されてしまうので、ケーシング本体部5の先端付近に2〜3巻き程度にするのが好ましい。また、翼7は連続したものでなく、先端部や中間部に非連続で取り付けてもよい。
図15は、翼の形状や段数を種々変更したときの施工時のトルクの変化を調べた実験結果を示すグラフである。横軸は施工時トルク(kN・m)を示し、縦軸は貫入深さ(mm)を示している。グラフ中において、(A)は翼径がケーシング本体径の2倍のものを1段設けた場合、(B)は翼径がケーシング本体径の2倍のものを連続して3段設けた場合、(C)は1段目に翼径がケーシング本体径の2倍のものを設け2段目に翼径がケーシング本体径の2.5倍のものを非連続で設けた場合、(D)は翼径がケーシング本体径の2倍のものを非連続で2段設けた場合である。
図15から判るように、発明者が実施した模型杭を用いた土槽試験では、1段の螺旋翼よりも連続していない2段の螺旋翼を取り付けた形状の方が、同じ条件で施工時トルクを小さくすることができた。図16はこのメカニズムを説明する説明図である。1段の翼では、図16(a)に示すように、翼7により上方に送られた土が、側方に移動できないため締め固まり、周方向から鋼管を押しつけることで周面摩擦力が上昇しトルクも大きくなったのに対し、図16(b)に示すように、非連続の翼7を設けた場合には上部の翼7が再度地盤を攪拌することで周面摩擦力を低減することで施工時トルクも小さくすることができるものと推測できる。このことから、翼7は複数段の非連続で取り付ける形状が施工上は望ましい。
非連続の場合の翼7の間隔は、ケーシング本体部5の外径D1の1〜5倍程度が目安となる。また、翼7の始端と終端の段差は、杭径の0.1〜1倍程度がよい。さらに、1枚の翼7の円周方向の巻き方は、270°〜450°程度が一般的であるが、土の移動のしやすさを考慮すると、360°以下の方が間隔が大きくなるのでよい。またさらに、翼7の径はケーシング本体部5の径の1.2〜3倍程度がよい。
また、複数段の翼を設ける場合、従来の杭においては、1段目(最下段)の翼径と2段目(上段)の翼径を比較すると、2段目の翼径を大きくしてトルクが大きくなってもより多くの支持力が得られるように形状が決められている。しかし、本発明では支持力を得る必要はなく所定長さの施工ができればよいので、施工時のトルクの減少率が大きくなるように形状を決定すればよい。この点、発明者の実施した実験結果を示す図15に示されるように、(C)の場合よりも(D)の場合の方が施工トルクが小さくなっていることから、1段目と2段目の翼径は同じにしておいた方が施工時のトルクの減少率が大きいことがわかった。
上記の実施の形態においては、ケーシング本体部5を機械式継手接合にした場合において、ボルト19のみでケーシング本体部5同士を接続する方法として、図8に示したように、機械式継手がケーシング本体部5の内側に張り出す場合を示した。この場合、前述したように、機械式継手が中空管体外面とぶつからないように両者間に十分な距離をとる必要がある。
もっとも、本発明においてケーシング本体部5は、杭のように地盤との間で周面摩擦力を必要としないため、図17のように機械式継手がケーシング本体部5の外側に張り出す構造にしても問題ない。
また、上記の実施の形態においては、ケーシング本体部5の下端面に設ける蓋体8の例として、円板を5分割した扇形状の5枚の蓋体片9の円弧側周端部をケーシング本体部5の下端周縁部に回動可能に連結するものを示した。
しかしながら、本発明に係る蓋体は、これに限られるものではなく、翼付きケーシング3の地盤への貫入時にケーシング本体部5内に土砂が入るのを防止でき、かつ、中空管体1を残置して翼付きケーシング3の引き上げを可能にできるものであれば、他の構造であってもよい。
図18は蓋体の他の構造の説明図であり、図18に示す蓋体41はケーシング本体部5の下端部に挿入される円板部41aと、円板部41aの周側面に設けられて外方に向かって突出する突出片41bとを備え、突出片41bがケーシング本体5の下端部に鋼管軸方向に矩形状に切り欠かれた係合穴43に係合するように構成されたものである。
このような蓋体41であれば、翼付きケーシング3を所定深度まで施工完了後、中空管体1を建て込み、最後に蓋体41を中空管体1によって下方に押し込めばケーシング本体部5から蓋体41を容易に切り離すことができ、中空管体1及び蓋体41を地盤に残して翼付きケーシング3を引き上げることができる。
施工時の地盤の硬さによっては、ケーシング本体部5を正回転させたり逆回転させたりすることを繰り返したり、また上下動を行うことで施工性を向上させることがある。上下動を実施したときは、蓋体41が地中に落下する可能性がある。そのようなときは、係合穴43やケーシング本体部5と蓋体41の隙間に、あらかじめ粘土やシリコンなどの詰め物をつめておけば、逆回転時に蓋体41が落下することはない。もっとも、事前の地盤調査で粘性土地盤の存在が確認されていれば、施工時に粘土が自然に詰まって、逆回転時に中空管体1が落下することはないので、あえて粘土等をつめる作業をしなくても良い。
また、図19(a)、図19(b)(底面側から見た図)に示すように、蓋体41の下面側に地盤への貫入を容易するため、貫入時に土を外側に排土するような三角板45を設けてもよい。図19に示す例では、上述した蓋体41が地中に落下するのを防止するために係合穴43やケーシング本体部5と蓋体41の隙間に、あらかじめ粘土やシリコンなどの詰め物47をした状態を示している。
また、蓋41とケーシング本体5の下端部との係合に関しては、図19(c)、図19(d)(底面側から見た図)に示すように、ケーシング本体部5の内面に側面視で略T字状の係止突部48を設け、底板41に係止突部48のT字の脚部が挿入可能な係止凹部41cを設けて構成してもよい。この場合も、上記と同様の効果がある。さらに、この場合にはケーシング本体部5に係合穴43を設ける必要がないので大きなトルクが作用するときに、係合穴43を設けた場合に必要となる係合穴43の周りを補強するなどの対応も必要なくなるという効果がある。
また、地盤の状況により、蓋体41に三角板など掘削機能を有するものが必要なく取り付けない場合は、図20(a)、図20(b)(上方から見た図)に示すように、突出片41bや係止凹部41cをなくし、ケーシング本体部5の内部に蓋体41の上方向への移動を規制する内面突起49を設けるようにしてもよい。内面突起49は離散的に配置してもよいし、連続したリング状に取り付けてもよい。また、この例の場合にも必要に応じて、蓋体41とケーシング本体部5の内面に粘土などをつめてもよい。
なお、ケーシング本体部5の内径に合うように蓋体41を取り付ければ、ケーシング本体部5内に土砂がほとんど入ることが無く、施工に支障を来すこともない。また、突出片41bにはトルクが作用するため、蓋体41と突出片41bが必要トルクに耐えられるような板厚にしておくことを要する。
図21は図19に示した蓋体41を設けた場合の施工方法の説明図である。
以下、図21を参照しながらこの施工方法を説明する。
まず、ケーシング本体部5の下端部に蓋体41を設置した状態で翼付きケーシング3を回転モータ25で回転駆動して、地中に貫入する(図21(a)参照)。
地中熱交換体の全長が長い場合には、図21(b)に示すように、ケーシング本体部5を継ぎ足しながら施工する。この例では、ケーシング本体部5を2本連結する例である。図21(c)は、中空管体1とケーシング本体部5を継ぎ足した後、回転貫入を行なってさらに貫入させた状態を示している。
翼付きケーシング3が所定深度まで到達後、翼付きケーシング3を数十cm上方に引き上げ、翼付きケーシング3の下方の地盤を緩い状態にし、この状態で中空管体1を翼付きケーシング3内に挿入する(図21(d))。そして、挿入した中空管体1をさらに下方に押し込む(図21(e))。これにより、ケーシング本体部5の係合穴43から蓋体41の突出片41bがはずれ、中空管体1を蓋体41と共に所定の位置に容易に設置することができる。
なお、所定深度での地盤が弱い場合は、翼付きケーシング3を引き上げなくても中空管体1を押し込むことはできるが、硬い場合は押し込むために大きな力を必要とするので、上述のように逆回転などして翼付きケーシング3を多少上に引き上げた方がよい。翼付きケーシング3と蓋体41は粘土等により接着されているので、逆回転引き上げを行っても蓋体41が勝手にはずれることはなく、このため押し込む作業が必要となるのである。
中空管体1を所定深度に設置した後、翼付きケーシング3を回転させて引き上げることにより、中空管体1と蓋体41を地中に残して翼付きケーシング3を回収することができる(図21(f)、(g)参照)。
なお、蓋体41は基本的に埋め殺しとなるが、蓋体41と中空管体1が接合できるような凹凸を設けたり、磁石や接着剤によりくっつけたりして、中空管体1を引抜く時に蓋体41を回収できる構造にしてもよい。
なお、中空管体内に充填するものとしては、水がメンテナンスとコストから有利であるが、地中熱交換器として利用する場合は、熱伝導性が良い物質を選定する方が望ましい。そこで、水に代えてコンクリートやモルタルなどを充填してもよい。コンクリートを充填すれば、水の時より熱交換特性が上昇するので、地中熱交換システムとして効率が上がる。
ただし、この場合には熱交換チューブ27のメンテナンスが困難となるため、熱交換チューブ27に不具合が発生した時は、中空管体1そのものを交換する。この場合、中空管体1を地中から引き抜くことになるが、中空管体1の中にコンクリートが中詰めされているため、中空管の板厚が薄くてもトルクによる破損の心配がないため、杭頭部に回転トルクを与えて、容易に引き抜くことができる。そして、引き抜いた場所に新しい中空管を打設すれば、地中熱交換器として再度利用することができる。
確かに、中空管体1にコンクリートなどを充填した場合には水を充填する場合に比較してメンテナンス性が悪くなるとも言えるが、コンクリートは中空管体1の中に収容されているので、特許文献1に記載された地盤に設けた掘削孔内にグラウトを直に注入するもののように、地下水の汚染の危険が無いし、また、上述のように撤去が容易であることから環境にやさしいと言える。
また、中空管体1に充填する他の例として、砂などの土を充填してもよい。この場合には、メンテナンス時に土をウォータージェット等で掻き出す、あるいは掘り出すことで容易に作業ができるので、メンテナンスが可能な態様となる。
1 中空管体
3 翼付きケーシング
5 ケーシング本体部
7 翼
8 蓋体
9 蓋体片
11 蓋体片
13 三角板
14 底板
15 フランジ
17 ボルト
19 ボルト
23 施工機械
25 回転モータ
27 熱交換チューブ
29 係止突部
31 係合穴
33 引抜き用ロッド
35 T字突部
37 角部材
39 引抜き用ロッド
40 L字突部
41 蓋体
41a 円板部
41b 突出片
43 係合穴
45 三角板
47 詰め物
48 係止突部
49 内面突起

Claims (8)

  1. 熱交換媒体を収容して地中に埋設されることで地中熱と前記熱交換媒体との熱交換を行なう地中熱交換体の施工方法であって、
    地盤への貫入機能を有するケーシング本体部と該ケーシング本体部の先端に開閉自在に取り付けられた蓋体を備えてなる筒状のケーシングを所定深さまで貫入させる貫入工程と、前記ケーシングの内部に中空管体を配置した状態で少なくとも前記ケーシング本体部を抜き取るケーシング抜取り工程とを備えていることを特徴とする地中熱交換体の施工方法。
  2. 貫入工程において蓋体は地盤の押圧力によって閉止状態となり、ケーシング抜取り工程において蓋体はケーシング内部に配置された中空管体に当接することで開状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の地中熱交換体の施工方法。
  3. ケーシングはその先端部及び/または外周部に翼を有し、埋設工程においてはケーシングを地盤に回転貫入することを特徴とする請求項1または2に記載の地中熱交換体の施工方法。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の地中熱交換体の施工方法に用いられる中空管体であって、該中空管体の下端内面に該中空管体に回転力及び/または引抜力を伝達可能な係止部を備えてなることを特徴とする地中熱交換体の中空管体。
  5. 中空管体が鋼管であることを特徴とする請求項4に記載の地中熱交換体の中空管体。
  6. 請求項1〜3の何れか一項に記載の地中熱交換体の施工方法に用いられるケーシングであって、蓋体が複数の蓋体片からなり、その周端部がケーシングの開口縁部にヒンジ結合されていることを特徴とする地中熱交換体の施工に用いるケーシング。
  7. 請求項1〜3の何れか一項に記載の地中熱交換体の施工方法に用いられるケーシングであって、蓋体が前記ケーシング本体部の端部に着脱可能に設けられていることを特徴とする地中熱交換体の施工に用いるケーシング。
  8. 前記蓋体は、ケーシング本体部の内周面に沿うように形成された板体からなり、該板体は、その周縁部から外方に突出して前記ケーシング本体部に係止する係止突部を備えてなることを特徴とする請求項7に記載の地中熱交換体の施工方法に用いるケーシング。
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