この発明は、電子線を用いた試料の検査において、液状試料の構成物(液体を含む試料の構成物)を選択的に検査することのできる試料保持体、試料検査方法及び試料検査装置並びに試料検査システムに関する。
走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」という)の構成を備える試料検査装置では、検査対象とされる試料は、真空引きにより減圧された試料室内に配置される。そして、このように減圧雰囲気とされた試料室内に配置された試料に電子線が照射され、当該照射により試料から発生する反射電子(後方散乱電子)や二次電子等の二次的信号が検出される。
また、透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」という)の構成を備える試料検査装置でも、検査対象とされる試料は、真空引きにより減圧された試料室内に配置される。TEMの場合には、試料室内に配置された試料に電子線が照射され、当該試料を透過した透過電子線が検出されることとなる。
このような試料検査装置を用いた試料検査においては、試料室内において試料が減圧雰囲気に晒されることとなる。従って、水分を含有する試料が検査対象であるときには、減圧雰囲気とされた試料室内に試料をそのまま配置すると、試料から水分が蒸発してしまう。この場合には、水分が含まれた状態での試料の検査に支障をきたすこととなる。
このように試料が減圧雰囲気に晒されることなくSEMを用いて試料検査を行う例の一つとして、膜により開口(アパーチャ)が密閉された試料容器(サンプルチャンバ)の内部に試料を配置し、減圧雰囲気とされたSEMの試料室内に、この試料容器を設置する手法が考えられている。
ここで、試料が配置される試料容器の内部は減圧されない。そして、試料容器に形成された該開口を覆う膜は、SEMの試料室内の減圧雰囲気と試料容器内部の減圧されていない雰囲気(例えば、大気圧雰囲気)との圧力差に耐えられるとともに、電子線が透過されるものとなっている(特許文献1参照)。
試料検査を行う際には、減圧雰囲気とされたSEMの試料室内に配置された試料容器の当該膜を介して、試料容器の外部から試料容器内の試料に電子線が照射される。電子線が照射された試料からは反射電子が発生し、この反射電子は試料容器の当該膜を通過して、SEMの試料室内に設けられた反射電子検出器によって検出される。これにより、SEMによる像(SEM像)が取得されることとなる。
なお、このように真空と大気圧との圧力差に耐えられる膜を介して試料に電子線を照射し、試料から発生する反射電子を検出してSEM像を取得する例は、非特許文献1(当該文献のChapter1 Introduction)にも記載されている。
また、電子線が透過する一対の膜を備えるセル構造(試料ホルダ)をTEMの試料室内に設置し、当該セル構造内に試料を配置して電子線を試料に照射し、試料を透過した透過電子線を検出する例は、特許文献2及び特許文献3に記載されている。
特表2004−515049号公報
特開昭47−24961号公報
特開平6−318445号公報
「Atmospheric scanning electron microscopy」 Green, Evan Drake Harriman, Ph.D., Stanford University, 1993
水分等を含有する液状試料に含まれた構成物が検査対象である場合、当該試料中には大きさの異なる複数種類の構成物が含まれていることが多い。このとき、所定寸法を有する特定の構成物を検査対象として検査を行う際には、当該構成物を選択して検査を行うのが効率的である。
しかしながら、従来技術においては、試料容器の中で、液状試料中の特定の大きさを備える構成物を選択して抽出し、このようにして選択・抽出された構成物を検査対象として検査を行う手法は検討されていなかった。
また、液状試料中の構成物のうち、所定の吸着機能膜に吸着される特性を備える特定の構成物もしくはそれを除いた他の構成物を検査対象とする場合には、それらを試料容器の中で選択・抽出して検査を行う手法も検討されていなかった。
さらに、特にSEMによる試料検査の場合、液状試料が試料容器内に配置されると、試料容器内で当該試料の構成物が沈殿し、電子線が透過される膜(通常、試料容器の上部に配置される)から離間することが多い。この場合には、当該膜を通過して試料に入射した電子線が当該構成物(沈殿物)に到達するまでに減衰するとともに、電子線が照射された当該構成物から発生した反射電子も当該膜に到達するまでに減衰することとなる。この結果、適切なSEM像を取得することができず、試料検査を良好に行うことができない。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、試料中の構成物を選択して効率的に試料検査を行うことができるとともに、当該試料検査を良好に行うことのできる試料保持体、試料検査方法及び試料検査装置並びに試料検査システムを提供することを目的とする。
本発明に基づく第1の試料保持体は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路又は該試料保持空間には段差部又は傾斜部が形成されており、これにより該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることを特徴とする。
本発明に基づく第2の試料保持体は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路又は該試料保持空間には段差部又は傾斜部が形成されており、これにより該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることを特徴とする。本発明に基づく第3の試料保持体は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路又は該試料保持空間には少なくとも一つの突起又は柱が設けられており、これにより該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることを特徴とする。本発明に基づく第4の試料保持体は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路又は該試料保持空間には少なくとも一つの突起又は柱が設けられており、これにより該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることを特徴とする。
本発明に基づく第1の試料検査方法は、前記試料保持体の前記試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することを特徴とする。本発明に基づく第2の試料検査方法は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有し、該試料保持空間及び該供給路の幅が10nm〜20μmに設定されている試料保持体の前記試料保持空間に試料を供給した後、該試料保持空間内の試料から液体成分を除去し、該試料保持空間に残存した試料の構成物に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することを特徴とする。本発明に基づく第3の試料検査方法は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有し、該試料保持空間及び該供給路の幅が10nm〜20μmに設定されている試料保持体の前記試料保持空間に試料を供給した後、該試料保持空間内の試料から液体成分を除去し、該試料保持空間に残存した試料の構成物に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することを特徴とする。
本発明に基づく第4の試料検査方法は、前記試料保持体の前記供給路に試料を供給して、該供給路を介して前記試料保持空間に試料を供給する供給工程と、該試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射する照射工程と、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して試料の情報を取得する検出工程とを有することを特徴とする。
本発明に基づく試料検査装置は、前記試料保持体を備える試料検査装置であって、当該試料保持体の前記試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射する照射手段と、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出する検出手段とを有することを特徴とする。
本発明に基づく試料検査システムは、前記試料検査装置を備え、試料の前処理手段と、前処理がされた試料を前記試料保持体の流路に供給する試料供給手段と、試料が供給された試料保持体を当該試料検査装置に移動する移動手段とを具備することを特徴とする。
本発明では、試料保持体に設けられた供給路及び試料保持空間のうちの少なくとも一方に、試料中の構成物を分別するフィルター構造が備えられている、もしくは該供給路及び試料保持空間の幅を制限することにより試料を試料保持空間に近接させる機能が備えられている。
よって、試料保持体の試料保持空間には、該フィルター構造を通過した試料の構成物が供給されることとなり、この試料保持空間に保持された該構成物を検査対象とすることにより、試料中の構成物を試料保持体内にて選択・抽出した状態で効率的に試料検査を行うことができる。試料保持体の膜が吸着機能を備える場合には、試料中の構成物を選択的に膜に吸着させ、効率的に試料検査を行うことができる。
一方、フィルター構造が吸着機能膜を備える場合には、該吸着機能膜に吸着されない試料中の構成物を試料保持体内にて選択・抽出した状態で効率的に試料検査を行うことができる。
さらに、試料保持体の膜の面に垂直な方向における試料保持空間の幅を特定する場合には、選択された試料中の構成物が該試料保持空間内において該膜に接近することとなる。これにより、該膜と該構成物とが離間することを防ぐことができ、該構成物に到達する電子線及び該構成物から発生する反射電子が減衰することを防止することができるので、適切なSEM像もしくはTEM像を取得して良好な試料検査を行うことができる。
以下、図面を参照して、本発明における各実施例について説明する。
図1に、本発明の実施例の概略構成を示す。本実施例は、電子源1、コンデンサーレンズ2、対物レンズ3、走査ユニット4よりなる電子線鏡筒5、電子線検出器6、真空チャンバー7、及び試料セル(試料保持体)8より成る。試料セル8はチャンバー7にOリング9を用いて接触しているため、チャンバー7内部を真空あるいは減圧状態にできる。なお、Oリング9の代わりにグリスを用いることもできる。以下の実施例においても、同様にグリスを用いることができる。
試料セル8の構造を、図2に示す。試料セル8は、電子線16を透過できる膜11、セルベース12、セルキャップ13、及びこれらを接着する接着剤14より成る。また、図に示すように、セルベース12部分に入口8a、出口8b、及び供給路8cを設けた。セルキャップ13には、開口13aが形成されており、これにより膜11の一部が露出されている。膜11の当該一部の下には、試料保持空間8dが位置している。
試料セル8の入口8aと出口8bの双方にパイプを接続して、入口8aに接続されたパイプ22aを介して試料を試料セル8の供給路8cに供給する。供給路8cの出口8bに接続されたパイプ22bから、試料が適宜排出される(図3参照)。
このような構造を用いることにより、セル8に簡単に試料を入れることができる。また、開口13aを介して、セル8内部の供給路8c内に配置された試料15に集束した電子線16を照射・走査することができるとともに、この電子線16により発生した反射電子を電子線検出器6で検出できる。これにより、試料15の走査電子顕微鏡像(SEM像)を得ることができる。
試料セル8の作り方を図4に示す。樹脂の原材料を、ナノインプリント技術を用いて加工する。これにより、セルベース12とセルキャップ13を作製する。次に、セルベース12とセルキャップ13の接着面に、スプレーを用いて接着剤14を塗布する。最後に、ポリイミドの有機膜11をセルベース12とセルキャップ13に接着する。このような構造とすることにより、安価で安定なセル(試料セル)8を作製できる。
このような構造のセル8では、入口8aと出口8bにパイプ22a,22b等を接続することにより、セル8内部に簡単に試料を導入することができる(図3参照)。また、Oリング9を介してチャンバー7にセル8を配置したため、簡単に試料を交換できる。これらにより、大気圧状態の試料を簡単に観察することができる。
本実施例では、膜11の厚さを10nm〜1000nmの間とした。薄い膜を使うと電子線16の散乱を少なく出来るために、SEM観察の分解能を向上できる。しかしながら、膜11の強度が低下する。これに対し、厚い膜を使うと分解能は劣化するが、強度が向上する。必要に応じて使い分けた。より望ましくは、膜11の膜厚を20nm〜200nmとするのが良い。
本実施例では、膜11にポリイミドを用いた例を示したが、ポリプロピレンやポリエチレンを初めとする有機系膜を用いることができるのはいうまでもない。また、カーボンを用いられるのはいうまでもない。
このような構造のセル8において、膜11直下の試料保持空間8d及び供給路8cの幅を液体試料の含まれた構成物の大きさの1.1〜1.2倍に設定することにより、該構成物を膜に近接させた状態にすることができる。この状態でSEM観察を行うことにより、膜11と該構成物との間隙における電子線の減衰を極力抑えることができ、高分解能な像を得ることができた。より具体的な幅の範囲は、構成物の大きさに依存するが、SEMで一般的に観察対象となる試料の大きさを考慮して、10nm〜20μmであり、例えば生体細胞の観察には10nm〜5μmが適する。
本実施例は、基本的に実施例1と同様の構成を備える。ただし、X線検出器22を配置した点が異なる(図5参照)。
X線検出器22を配置したことにより、電子線16を試料15に照射した結果、試料15より発生した特性X線を検出できる。特性X線のエネルギーは元素に固有であるため、電子線16を照射している試料15の領域の組成がわかる。
本実施例は、基本的に実施例1と同様である。ただし、膜11とセル本体(セルベース12及びセルキャップ13)を接着するために、接着剤ではなく融着を用いた点が異なる(図6参照)。このような構成としたため、セル作成時における接着行程を簡略化できた。
本実施例は、基本的に実施例1と同様である。ただし、膜11に、導電性の有機膜11aをさらに付加した点が異なる(図7参照)。なお、膜11と有機膜11aの位置関係は、逆でもよいし、また膜11自身に導電性を持たせるようにしてもよい。
このような構造とすることにより、膜11が帯電するのを低減できる。これにより、実施例1よりも安定な観察ができる。
本実施例は、基本的に実施例1と同様である。ただし、試料セル8の膜11部分に、メッシュ21bを付加した点が異なる(図8参照)。
本セルの作成方法を、図9に示す。樹脂に対して、ナノインプリント技術を用いてメッシュ21bと開口部21cを形成し、セルキャップ13とする。次に、同様にナノインプリント技術を用いて、セルベース12を形成する。セルキャップ13とセルベース12の接着面に、スプレーを用いて接着剤20を塗布する。最後に、セルキャップ13、膜11、セルベース12を、接着剤20を介して接着する。
チャンバー7内部を真空あるいは減圧にした際に、膜11の両側には圧力差が生じる。この圧力差により、膜11が破壊することがある。これに対し、メッシュ21bで膜11を支持することにより、膜11が破壊しにくくなる。
本実施例では上記メッシュ構造を採用したが、ラインアンドスペース型の構造や、ハニカム構造を用いられるのは言うまでもない。本実施例では、膜11にポリイミドを用いた例を示したが、ポリプロピレンやポリエチレンを初めとする有機系膜を用いられるのはいうまでもない。また、カーボンを用いられることもいうまでもない。さらに、実施例3のように融着により接着する、あるいは、実施例4のように導電性膜を付加できるのはいうまでもない。
本実施例は、基本的に実施例1と同様である。ただし、試料セル8を半導体デバイスと類似のプロセスを用いて、別の材料で形成した点が異なる(図10参照)。
試料セルの作り方を図11に示す。Si基板30の上に、熱酸化により酸化膜31を形成する。酸化膜31の厚さは、電子線が透過できる厚さに制御する。次に、フォトレジストとリソグラフィーを用いて、レジストパターン(図示せず)を形成する。本レジストパターンをマスクに、ディープRIE(リアクティブイオンエッチング)を用いて選択的にSiをエッチングする。最後にアッシングを行い、レジストパターンを除去する。これらの工程により、セルキャップ13を形成した。
次に、セルベース12を加工する。別のSi基板32に、熱酸化膜33を形成する。セルキャップと同様にレジストパターン(図示せず)をマスクに、熱酸化膜(酸化シリコン)33とSi基板32をエッチングする。Si基板32は、当該エッチングにより貫通させないように適当な深さとする。これにより、セルベース12を形成できた。最後に、セルキャップ13とセルベース12をガラス融着により接着する。これらの工程により、セル8を形成できた。
本実施例では、酸化シリコンを膜11に用いたので、膜11の耐久性を向上することができた。本実施例では膜11に酸化シリコンを用いたが、窒化シリコンや窒化ホウ素など他の無機膜を用いられるのはいうまでもない。また、各種膜を、CVDやスパッタリング等の化学的、あるいは、物理的膜形成方法を用いて形成できるのはいうまでもない。
本実施例は、基本的に実施例6と同様である。ただし、試料セル8の膜11部分に、メッシュを付加した点が異なる。
本セルの作成方法を、図12に示す。Si層34a、酸化シリコン層34b、及びSi層34cを備えるSOIウェハ34の表面(Si層34cの表面)に、酸化シリコン35を形成する。次に、SOIウェハ34の反対面(Si層34aの表面)に、フォトレジストとリソグラフィーを用いてレジストパターン36を形成する。本レジストパターン36をマスクに、ディープRIEを用いて選択的にSiをエッチングする。これにより、観察領域を形成した。アッシングを行ってレジストパターン36を除去する。
次に、上記加工品について、メッシュを形成する。観察部を形成した側に、スプレーによりレジスト37を塗布する。リソグラフィーでパターン37aを形成した後、酸化膜エッチングとSiの選択的なRIEを連続して行うことによりメッシュ38を形成し、セルキャップ13とした。
さらに、別のSi基板39に対してレジストパターン40をマスクとしたRIEにより供給路8cを形成し、セルベース12とした。最後に、セルキャップ13とセルベース12を融着した。これらの工程により、メッシュ付のセルを形成することができた。
チャンバー7内部を真空あるいは減圧した際に、膜11の両側には圧力差が生じる。この圧力差により、膜11が破壊することがある。これに対し、本メッシュで膜11を支持することにより、膜11が破壊しにくくなる。
本実施例では、上記メッシュ構造を採用したが、ラインアンドスペース型の構造や、ハニカム構造を用いられるのは言うまでもない。また、本実施例では膜12に酸化シリコンを用いたが、窒化シリコンや窒化ホウ素など他の無機膜を用いられるのはいうまでもない。さらに、各種膜を、CVDやスパッタリング等の化学的、あるいは、物理的膜形成方法を用いて形成できるのはいうまでもない。
本実施例は、基本的に実施例1と同様である。ただし、複数のセルを同一の樹脂上に形成した点が異なる(図13参照)。また、図14に、上記セルに試料を導入するためのパイプ141を接続する際の概略を示す。このような構成とすることにより、複数の試料を効率よく観察できる。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。
本実施例に用いるセルは、実施例8と同様である。セルに、試料を挿入する際には、膜が破れないように細心の注意が必要である。特に、セル内部と外部で圧力差が少なくなるように調整する必要がある。このために、本実施例では、圧力調整機構42を作成した(図15参照)。
概略を図16に示す。圧力調整機構42は、板43、Oリング44、圧力調整装置(図示せず)に接続されたパイプ45から構成される。本圧力調整機構42をセル8に、図16に示すように接続する。セル8に試料を挿入する際に、膜11の両側の圧力差が最小になるように、圧力調整機構42を用いて調整する。このような構成を用いたことにより、膜11が破れることを防ぐことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
本実施例は、実施例9と同様である。ただし、セル8に試料を入れる前に、圧力調整機構42を用いて膜11の両側に圧力差を印加し、セル8の膜11が破損しないか確かめるようにした点が異なる。
セル8には極薄の膜11を用いているため、膜11の作成や加工の精度の影響が大きくなる。最悪の場合、これらのゆらぎに起因し、観察中にセル8の膜11が破壊する場合がある。この際、試料が鏡筒やチャンバー内部に飛散することにより、これらが汚染されることがある。
これに対し、本手順を導入することにより、膜11の作製や加工ゆらぎに起因する膜11の破壊を事前に調べることができる。これにより、液体を含む試料をセル8に導入した後にチャンバー内部で膜11が破損することによる鏡筒やチャンバーの汚染を防ぐことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
本実施例は、実施例1又は実施例8と同様である。ただし、フィルター構造を有する。
図17に、セル8の構成を示す。図17(A)は平面図(断面を含む)、図17(B)は図17(A)のA−A断面図、図17(C)は図17(A)のB−B断面図である。入口(供給口)51、出口(排出口)52、流路53、流路53から分岐した複数の分岐路(供給路)54、分岐路54に連通する観察部(試料保持空間)55より構成される。図17に示すように、流路53から観察部55に至るまでに断面積(開口断面積)の異なる構造(フィルター構造)を有することが特徴である。断面積を変更する手段として、本実施例では分岐路54の膜11の面に沿う方向の幅を変更した。分岐路54に代えて、又は分岐路54に加えて、観察部55の開口断面積を変えるようにしてもよい。なお、以下の各実施例においても、このように分岐路及び/又は観察部の開口断面積を変更させてなる構造は、本発明におけるフィルター構造に該当する。
このような構成とすることにより、当該フィルター構造により試料中の構造物(構成物)の分別が行われ、観察部55に大きさの異なる構造物を導くことができた。この結果、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコン、窒化シリコン、あるいは窒化ホウ素などの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
実施例11では、流路53と分岐路54aと分岐路54bの深さ(膜11に垂直な方向の幅)がそれぞれ同じであった。これに対し、本実施例では観察部55につながる分岐路54aと分岐路54bの深さをそれぞれ流路53の深さに対して浅くした。すなわち、各分岐路54における膜11に垂直な方向の幅を小さくした。
概略構成を、図18に示す。図18(A)は、実施例11の図17のA−A断面図に相当し、図18(B)は、図18(A)のB−B断面図に相当する。このように各分岐路54の深さを浅く(膜に垂直方向の幅を小さく)した場合にも、観察部55には、各分岐路54を介して毛細管現象により試料が入る。
このような構成とすることにより、観察部55に小さな構造物(試料中の構成物)を選択的に導くことができた。
次に、膜11部分直下の観察部55の厚さ、すなわち、膜11に垂直方向の幅を10nm〜20μm(試料に含まれた構成物の大きさの1.1〜1.2倍にすると特によい)にした。これにより、液体成分を含む試料をセル8内部に導入した際に、検査対象となる構造物が膜11に接近して近接することとなるので、膜11と該構造物との間に介在する液体成分等によって電子線が散乱される度合いを小さくすることができる。これにより、観察領域内部全域で良好な走査電子顕微鏡像を得ることができた。なお、試料に大気が含まれる場合でも同様である。
次に、膜11部分直下の観察部55の深さ、すなわち、膜11に垂直方向の分岐路幅を10nm〜5μmとした。これにより、液体成分を含む試料をセル8内部に導入した際に、セル8内部における電子線の経路が短くなるために、液体や気体による電子線の散乱を少なくすることができる。これにより、観察領域内部全域で良好な走査電子顕微鏡像を得ることができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
本実施例は、実施例19と同様である。ただし、観察部55に連通する分岐路54の深さ、すなわち、膜11に垂直方向の分岐路幅が、異なる複数の値となるようにした点が異なる。
概略構成を示すために、図19に、実施例12の図18(B)に相当する断面図を示す。分岐路54cと分岐路54dでその深さを変えた。また、分岐路54eと分岐路54fでその深さを変えた。このような構造とすることにより、観察部55に大きさの異なる構造物を選択的に導くことができた。これにより、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。
変形例:本実施例は、実施例12と同様である。ただし、分岐路54の断面積が連続的に変わる点が異なる(図20参照)。
このような構造とすることにより、大きさの異なる構造物を選択的に分類できる。特に、連続的に断面積が変わるために、離散的(不連続的)に変わる場合と比較して構造物が分岐路54内でひっかからない。このため、スムースに大きさの異なる構造物を分類できる。
また、膜11直下で、観察部55の深さ、すなわち、膜11に垂直方向の流路幅を連続的に可変にすることもできる(図21参照)。このようにすると、大きな構造物は深い部分で留まるが、小さな構造物は浅い部分まで移動する。従って、観察部55内部で、大きさの異なる構造物を流路の深さに応じて分離して観察することができる。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
本実施例は、実施例11と同様である。ただし、分岐路54の一部に、フィルター構造として複数の突起物を配置した点が異なる。
本実施例の概略構成を、図22に示す。観察部55につながる分岐路54gと分岐路54hに、突起物としてそれぞれ図23に示す円柱を設けた。突起物の大きさと間隔を、それぞれ異なる値とした。
このような構成とすることにより、観察部55に大きさの異なる構造物を導くことができた。この結果、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。なお、一つの突起物を設けるようにしてよい。また、突起物としては、円柱形状のものの他に突起(凸部)を配置するようにしてもよい。また、ボール(球体)を配置した構造にしてもよい。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。
本実施例は、実施例11と同様である。ただし、図24に示すように、試料の入口51と出口52をセル8の同一面上に設けた点が異なる。また、試料をセル8内に供給した後は、接着剤(図示せず)を用いて試料をセル8内に封入した。
このようにすることにより、セル8にパイプを接続せずに試料を供給した後、チャンバー内にセル8を入れることができた。このため、構成を簡単にすることができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、あるいは、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置できるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例11と同様である。ただし、流路53に連通する入口(供給口)51、出口(排出口)52に加えて、引き口52aを設けた点が異なる。
本実施例の概略構成を、図25に示す。入口51から出口52に至る流路53に、断面積の小さな分岐路54i、分岐路54jが接続されている。これらの分岐路54は、観察部55及び連通路60を通じて、引き口52aにつながる引出路61に接続されている。入口51から出口52に向けて試料を導入することにより、流路53には試料が入る。分岐路54にも通常毛細管現象で試料が入るが、分岐路54の断面積が著しく小さな場合では、十分な量の試料が観察部55に導入されない場合がある。これに対し、本実施例では、引き口52aの圧力を入口51及び出口52に対して低くすることにより、分岐路54を介して観察部55に十分な量の試料を入れることができる。
このような構成とすることにより、断面積の小さな分岐路54を介して観察部55に試料を導入することができるので、小さな構造物を観察することができる。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口・出口をセルの上側(同一面上)に設けられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例16と同様である。ただし、流路53に接続されている断面積の小さな分岐路54に、図26に示すように、フィルター62a,62b,62c,62dをそれぞれ設けた点が異なる。これらのフィルターは、図23に示す突起で構成した。フィルター62a,62b,62c,62dで、それぞれ突起物の間隔が異なるフィルターを採用した。
このような構成とすることにより、観察部55に大きさの異なる構造物を導くことができた。この結果、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側に設けられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例17と同様である。ただし、観察部55と引出路61との間に位置する連通路60に、他のフィルター63a,63b,63c,63dをそれぞれ設置した点が異なる(図27参照)。これらのフィルターは、実施例17と同様に突起で構成した。ただし、他のフィルター63を、上記フィルター62よりも間隔が狭い突起で構成した点が特徴的である。
本実施例の動作は、次のとおりである。最初に、実施例17と同様に、入口51から出口52に向けて試料を導入し、流路53を試料で満たす。次に、引き口52aを減圧し、観察部55に連通する分岐路54に試料を満たす。この際、フィルター62により、大きさの異なる構造物がそれぞれの観察部55の下に入る。
次に、入口51、出口52、引き口52aの圧力をほぼ同等にした上で、出口52から試料を排出する。この際、観察部55に試料が残り、かつ、流路53から試料がなくなるようにする。この状態で引き口52aを減圧することにより、フィルター63を介して液体成分のみを連通路60及び引出路61を通じて引き口52aから排出することができる。これにより、観察部55には、液体成分のない構造物だけを選択的に残すことができる。
膜11に入射した電子線16は、セル8内部に液体が有る場合、液体により散乱される。これに対し、本実施例では液体を選択的に排除し構造物だけを観察部55に配置することができたために、液体による散乱をなくすことができた。このため電子線16の散乱が少なくなるので、観察時の分解能を向上することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例18と同様である。ただし、液体を除去した後で、飽和水蒸気をセル8内部に導入した点が異なる。
実施例18と同様に液体成分を除去した後、入口51より飽和水蒸気を流路53に導入し、観察部55にも飽和水蒸気が入るように、引き口52aの圧力を調整した。このような手順を取り入れることにより、試料が乾燥するのを防ぐことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、本実施例では複数の観察部(試料保持空間)を持つが、該観察部は1つでもよい。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、セル8の膜11の上側に試料15を配置し、かつ、セル8の膜11の下側から電子線16を照射できる構造とした。図28に、本実施例の概略構成を示す。セル8を、電子線16が透過する膜11部分が下側(重力で引かれる側)になるように、チャンバー7の上に配置した。セル8の流路及び観察部内部には試料が配置されている。電子線鏡筒5は、上記膜11を介して上記試料15に電子線16を照射できるように、下から上方向に電子線16を照射できるように配置した。本構造を用いることにより、セル8の内部にある試料15に、下から集束した電子線16を照射・走査することができるとともに、同電子線16により発生した反射電子を電子線検出器6で検出できる。これにより、試料下部の走査電子顕微鏡像を得ることができる。
このような構造のセル8では、試料15内部の沈殿性構造物が、沈殿により電子線16を透過する膜11に接触する。膜11の下部から集束電子線16を照射・走査することにより、沈殿性構造物に集束電子線16を照射・走査することができる。これにより発生する反射電子を用いて画像形成を行うことにより、試料15内に沈殿した構造物を大気圧のまま走査電子顕微鏡で観察できる。
本実施例では、膜の厚さを10nm〜1000nmの間とした。薄い膜を使うと電子線の散乱を少なく出来るために、SEM観察の分解能を向上できる。しかしながら、膜11の強度が低下する。これに対し、厚い膜を使うと分解能は劣化するが、強度が向上する。必要に応じて使い分けた。より望ましくは、膜11の膜厚を20〜200nmとするのが良い。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、実施例8のように、複数のセルを集積化できるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。実施例18のように液体を除去する、あるいは、実施例19のように飽和水蒸気を導入できるのはいうまでもない。
本実施例は、試料セル8を、真空チャンバー7内部に入れた(図29参照)。また、セル8を移動するためのステージ9bを設置した。さらには、実施例15に記載したセル8を採用し、真空チャンバー7に入れる前に入口51と出口52を封止した。
このような構造とすることにより、試料15を移動させるためのステージ9bを簡単に作成することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、実施例8のように、複数のセルを集積化できるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路14の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路14の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例19のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。実施例18のように液体を除去する、実施例19のように飽和水蒸気を印加する、あるいは、実施例20のように下側から電子線を照射・走査できるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例21と同様である。ただし、セル8の観察部55の深さ、すなわち、上記膜11に垂直方向の幅を10nm〜20μm(より望ましくは10nm〜5μm)にしたこと、および、試料を傾斜できるステージ9bを採用した点が異なる(図30参照)。
観察部55の深さを浅くしたことにより、観察部55内の試料15を傾斜させても観察部55内部で試料15中の構造物が動きにくい。このため、傾斜観察が簡単にできた。その結果、当該構造物の3次元的な構造を取得することができた。特に、複数の傾斜画像から、試料中構造物の輪郭をコンピューターを用いて再構築することにより、3次元立体画像を構築することができる(コンピュータートポグラフィー)。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、実施例8のように、複数のセルを集積化できるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路14の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路14の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例11と同様である。ただし、セル8の一部分に寸法の基準を寸法指標として示す指標パターンを形成した点が異なる。
本実施例によるセル8の構成を、図31に示す。セル8の表面であって、各観察部55の近傍に、長さの標準パターン(指標パターン)200を形成した。長さの標準パターンの例を、図32に示す。間隔や周期の異なるラインアンドスペースなどから成る。
試料観察の際に、このような長さ標準の画像を取得し、試料中の構造物の画像と比較・参照することにより、試料中の構造物の正確な寸法がわかる。
本実施例は、実施例1〜実施例23で説明した観察・検査を含む全ての工程を自動的にできるようにしたものである。
自動観察をするための装置の概要を、図33に示す。自動観察のフローを、図34に示す。最初に、試料の自動前処理を行う。オートピペット70を用いて試料を自動的に第1の前処理ユニット71に入れた後、オートピペットを用いて固定液をこの第1の前処理ユニット71に入れる。この状態で、必要に応じて攪拌をしながら、固定処理が終了するまで待つ。処理中の温度は、37℃に維持した。次に、オートピペットを用いて、固定処理後の試料を第2の前処理ユニット72に移す。その後、不要な上澄み液を捨てた後、試料の洗浄を行う。
その後、オートピペットを用いて、導電性染色液を第2の前処理ユニット72に入れる。この状態で、必要に応じて攪拌をしながら、染色処理が完了するのを待つ。不要な上澄み液を捨てた後、試料の洗浄を行う。以上が前処理工程である。
ここで、固定液はグルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド、ホルマリン等が使用可能であり、導電染色液はオスミウム酸水溶液、タンニン酸水溶液、リンタングステン酸水溶液等が使用可能であり、目的によって使い分ける。いずれも真空観察用のSEM及びTEM用に開発されている固定、導電染色のための薬液である。
次に、オートピペットを用いて、試料を自動的にセル8に入れる(試料セルへの試料セット)。セル8の入口に接続したパイプにオートピペットを接続することにより、セル8の流路内に試料を入れることができる。セル8の出口には、あふれ出た試料を廃液タンク73に流すためのパイプが接続してある(図33参照)。
そして、セル8を、搬送ユニット74を用いてOリング9の直下に移動(試料セルの自動ロード)した後、チャンバー7内を真空にする。試料移動機構9dを用いて、セル8を移動させ、セル8内の試料を観察位置に移動する(観察位置への自動移動)。電子線16のフォーカスやスティグマの調整を自動的に行った(自動SEM調整)後、SEM像を取得する(自動SEM観察)。取得した像は、観察試料や前処理ごとに、自動的に画像サーバー75に保存される(サーバーへの画像転送)。試料の移動からサーバーへの画像転送については、必要な回数繰り返す。なお、図中の75aは計算機であり、75bは本体コントローラである。
このような方法を用いることにより、試料前処理を含む全ての観察工程を自動化することができた。その結果、人の手間を省くことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、実施例8のように、複数のセルを集積化できるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路14の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路14の一部に突起物を配置する、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aのとりつけ、あるいは、実施例22のように傾斜機構をとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例24と同様である。ただし、実施例9に記載した圧力制御を自動的にできるようにした点が異なる。
実施例24と同様に前処理を行った後、オートピペットと、セル8の入口に接続したパイプとを使ってセル8に試料を供給するが、この際に実施例9に記載した圧力調整機構42を自動的にセルに接続し、試料をセル8に入れる際での膜11の両側の圧力差が大きくならないように自動的に調整した。セル8に試料を入れた後は、実施例24と同様に自動搬送・自動観察を行った。
本自動化をすることにより、セル8の膜11の破壊を防止できるとともに、人の手間を省くことができた。
本実施例は、実施例24と類似である。ただし、前処理の最初に試料への蛍光マーカー付加処理を行った点、および、検出器に蛍光検出器を付加した点が異なる(図35参照)。具体的には、蛍光マーカーを付加した抗体を、抗原抗体反応を用いることにより試料に付加した。
試料に集束電子線を照射した際に、上記蛍光マーカーはカソードルミネッセンスを起こす。これにより発生した光は、蛍光検出器で検出される。本実施例では観察の際に、最初、反射電子を検出して電子線15のフォーカス・スティグマなどの調整を行った上で、蛍光検出器を用いて蛍光する場所を特定し、最後に再び反射電子検出器を用いて反射電子像を取得した。このような工程とすることにより、どの部位が蛍光しているかがわかる。これによって、蛍光マーカーが反応する部位を特定することができた。また、蛍光マーカーが付加された部分の近傍を、反射電子像で詳細に観察できた。
本実施例は、実施例24と類似である。ただし、前処理の最初に試料への金属のマーカー付加処理(例えば、金粒子にprotein Aを吸着させたものを使用する)を行った点が異なる。具体的には、金マーカーを付加した抗体を、抗原抗体反応を用いることにより試料に付加した。このとき、直径10nm〜50nmの金粒子をマーカーとして用いた。
試料に集束電子線を照射した際に、上記金属マーカーは生体部分よりも原子量が大きいために、反射電子像、あるいは、透過電子像として明瞭に観察することができる。
本実施例は、実施例24に自動画像処理と画像分類を付加したものである(図36参照)。
実施例24と同様に試料の自動前処理・自動観察をした後、取得した画像を次の方法で分類した。まず、画像より特徴量を抽出する(画像処理)。本実施例では、構造物の大きさ、偏心量、エッジのラフネス、密度、表面形態、突起(構造物表面の突起)などの特定構造を抽出した。これらの特徴量の組み合わせにより、試料を自動的に分類した。試料の移動から分類については、必要な回数繰り返す。
特徴量と分類方法の関係については、あらかじめ多数の試料について手動分類の結果を用いて学習させることにより、分類精度を高めた。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、基本的に実施例24と同様である。ただし、一方向からの観察だけでなく、鏡筒が傾斜する装置を用いて、複数の方向から自動的に観察する点が異なる。これらの画像を用いて、試料中の構造物の3次元形状を計算することができる。
真空チャンバー7内にセル8を入れる必要があるため、図37のように、セル8に試料を供給した後、その入口と出口を接着剤78,79で封入した。実施例24と類似の搬送ロボットを用いて、真空チャンバー7内にセル8を導入できるようにした。複数方向からの観察を自動化することにより、人の手間を省くことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。また、実施例8のように、複数のセルを集積化できるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路の一部に突起物を配置する、実施例19のように入口・出口をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口のとりつけ、あるいは、実施例22のように傾斜機構をとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、基本的に実施例29と同様である。ただし、実施例29に記載した3次元形状構築処理を自動的にできるようにした点が異なる(図38参照)。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、実施例30に自動画像認識と画像分類を付加したものである。
実施例30と同様に、試料の自動前処理・自動観察をした後、自動的に3次元形状を得た。この3次元形状より、特徴量を抽出する。本実施例では、構造物の大きさ、3次元的な偏心量、エッジのラフネス、密度、表面形態、突起(構造物表面の突起)などの特定構造を抽出した。これらの特徴量の組み合わせにより、試料を自動的に分類した。
特徴量と分類方法の関係については、あらかじめ多数の試料について手動分類の結果を用いて学習させることにより、分類精度を高めた。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、実施例31と同様である。ただし、特に血球の観察を行い、その3次元的な形状を分類した結果と病因の関係を用いることにより、分類結果を用いて自動的に病因判定できるようにした点が異なる。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。血球以外でも、生体細胞を用いて同様の効果を得ることができた。
本実施例は、実施例31と同様である。ただし、特に粉体の観察を行い、その3次元的な形状を分類した結果と過去の測定結果の関係を用いることにより、分類結果を用いて自動的に良品か不良品かの合否判定をできるようにした点が異なる。本実施例では、粉体として、コピー用トナー、化粧品、顔料、黒鉛の検査を行った。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
図39に、本実施例に用いたセルの構造を示す。試料の入口81、出口82、流路83、分岐路(供給路)84、観察部(試料保持空間)85を設けた。これらの入口81と出口82には、実施例1と同様に試料の供給と排出用のパイプを接続することができる。入口81と出口82の間には、流路83を設けた。試料は入口81より注入され、流路を通って出口82より抽出される。
流路83から分岐する複数の分岐路84を設け、各分岐路84は観察部85に連通する。各観察部85は、電子線を透過する対向配置された2つの膜の間隙部から構成される。これにより、各観察部85内に導入された試料は、一方の膜を介して電子線が照射される。また、試料を透過した透過電子線は、他方の膜を介してセル外に到達する。この観察部55を用いて、その内部に配置された試料の走査型透過電子顕微鏡観察、あるいは、透過電子顕微鏡観察ができる。
本セルの作成方法を記載する(図40(a)参照)。樹脂91と樹脂92に、それぞれナノインプリント技術を用いて、流路、分岐路、および観察部をそれぞれ設けた。樹脂91と樹脂92の接着面に、それぞれスプレーで接着剤93,94を塗布し、それぞれの樹脂91,92に膜95,96を接着した。
2枚の膜95,96が薄い隙間をもって接着できるように、一方の膜96に接着剤97を塗布した後、双方の膜95,96を接着する。接着剤はメタルマスク98を用いることにより、必要な部分のみ塗布した。接着剤の分量、粘性、接着時の圧力を制御することにより、膜間の隙間を制御することができる。あるいは、2枚の膜95,96間にスペーサーを入れて、隙間を制御することもできる。これらの接着を行った後、余分な膜をカットした。
さらに別のメタルマスク99とイオンビーム100を用いて、流路の中心付近にある膜を除去する。流路のキャップになる部分101をナノインプリントで形成した後、スプレーで接着剤102を塗布した上で樹脂91と接着した。これらの工程により、セルを形成した。
走査透過電子像を観察するための全体構成を、図41に示す。電子源1、コンデンサーレンズ2、対物レンズ3、走査ユニット4よりなる電子線鏡筒5、真空チャンバー7、上部電子線検出器103、軸上電子線検出器104、軸外電子線検出器106、試料セル108、ステージ107より成る。
本構造を用いることにより、セル108の観察部85内部の試料に集束した電子線16を照射・走査することができるとともに、同電子線16により発生した反射電子を上部電子線検出器103で検出できる。これにより、試料の走査電子顕微鏡像を得ることができる。また、同時に軸上電子線検出器104と軸外電子線検出器105を用いることにより、走査透過型電子線顕微鏡像を得ることができる。
本実施例では、膜95,96の厚さを10nm〜1000nmの間とした。薄い膜を使うと電子線16の散乱を少なく出来るために、SEM観察の分解能を向上できる。しかしながら、膜の強度が低下する。これに対し、厚い膜を使うと分解能は劣化するが、強度が向上する。必要に応じて使い分けた。より望ましくは、膜95,96の膜厚を20nm〜200nmとするのが良い。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、あるいは、実施例4に記載した導電性膜を用いたセルを使えるのはいうまでもない。また、実施例15のように入口・出口をセルの上側にとりつけられるのはいうまでもない。
上記実施例よりも簡単な構造の試料保持体でも、同様の効果を得ることができた。図40(b)にその構造を示す。試料保持空間85は一つで、該試料保持空間85には供給路84を接続した。このような試料保持体において、膜95直下の試料保持空間85及び供給路84の幅を、液体試料に含まれた構成物の大きさの1.1〜1.2倍に設定することによって、該構成物を膜に近接させた状態にすることができる。この状態でTEM観察を行い、高分解能な像を得ることができた。より具体的な幅の範囲は、構成物の大きさに依存するが、TEM又はSEMで一般的に観察対象となる試料の大きさを考慮して、10nm〜20μmであり、例えば生体細胞の観察には10nm〜5μmが適する。本試料保持体の作り方は、図40と同様である。
本実施例は、基本的に実施例34と同様である。ただし、X線検出器22を配置した点が異なる(図42参照)。
X線検出器22を配置したことにより、電子線16を試料に照射した結果、試料より発生した特性X線を検出できる。特性X線のエネルギーは元素に固有であるため、電子線16を照射している領域の組成がわかる。
セルに、試料を挿入する際には、膜が破れないように細心の注意が必要である。特に、セル内部と外部で圧力差が少なくなるように調整する必要がある。このために、圧力調整機構142を作成した。基本的な構成は実施例9と同様であるが、膜が試料の両側にあるため、調整機構をセルの両側に配置する点が異なる。
概略を図43に示す。圧力調整機構142は、板143、Oリング144、圧力調整装置(図示せず)に接続されたパイプ145から構成される。本圧力調整機構142をセル108に、図43に示すように接続する。セル108に試料を挿入する際に、膜の両側の圧力差が最小になるように、圧力調整機構142を用いて調整する。このような構成を用いたことにより、膜が破れることを防ぐことができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、あるいは、実施例4に記載した導電性膜を用いたセルを使えるのはいうまでもない。また、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例34と同様である。ただし、実施例12と同様に、観察部55につながる分岐路84の深さを流路83の深さに対して浅くした。すなわち、分岐路84における膜に垂直な方向の幅が、異なる複数の値となるようにした点が異なる。
図44に、セルの構成を示す。図44(A)は平面図(断面を含む)、図44(B)は図44(A)のB−B断面図である。
分岐路84aと分岐路84bで深さ、すなわち、膜と垂直方向の幅を変えた。また、分岐路84cと分岐路84dで深さ、すなわち、膜と垂直方向の幅を変えた。このような構造とすることにより、観察部に大きさの異なる構造物を選択的に導くことができた。これにより、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、あるいは、実施例4に記載した導電性膜を用いたセルを使えるのはいうまでもない。また、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例34と同様である。ただし、分岐路の一部に実施例14と同様に、複数の突起物を配置した点が異なる。
本実施例の概略構成を、図45に示す。観察部55につながる分岐路84eと分岐路84fに、突起物としてそれぞれ図46に示す円柱を設けた。このような構成とすることにより、観察部に大きさの異なる構造物を導くことができた。この結果、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、あるいは、実施例4に記載した導電性膜を用いたセルを使えるのはいうまでもない。また、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例11や実施例12のように分岐路の断面積をかえるようにできるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例34と同様である。ただし、実施例16と同様に、流路に連通する入口51、出口52に加えて、引き口52aを付加した点が異なる。
本実施例の概略構成を、図47に示す。入口51から出口52に至る流路53に、断面積の小さな分岐路54i、分岐路54jが接続されている。これらの分岐路54は、観察部55及び連通路60を通じて、引き口52aにつながる引出路61に接続されている。入口51から出口52に向けて試料を導入することにより、流路53には試料が入る。分岐路54にも通常毛細管現象で試料が入るが、分岐路54の断面積が著しく小さな場合では、十分な量の試料が観察部55に導入されない場合がある。これに対し、本実施例では、引き口52aの圧力を入口51及び出口52に対して低くすることにより、分岐路54を介して観察部55に十分な量の試料を入れることができる。
このような構成とすることにより、断面積の小さな分岐路54を介して観察部55に試料を導入することができるので、小さな構造物を観察することができる。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側(同一面上)に設けられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例39と同様である。ただし、流路53に接続されている断面積の小さな分岐路54に、図48に示すように、フィルター62a,62b,62c,62dをそれぞれ設けた点が異なる。これらのフィルターは、図46に示す突起物で構成した。フィルター62a,62b,62c,62dで、それぞれ突起物の間隔が異なるフィルターを採用した。
このような構成とすることにより、観察部55に大きさの異なる構造物を導くことができた。この結果、大きさの異なる構造物を選択的に観察することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側に設ける、あるいは、実施例16のように引き口52aを設けられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例40と同様である。ただし、観察部55と引出路61との間に位置する連通路60に、他のフィルター63a,63b,63c,63dをそれぞれ設置した点が異なる(図49参照)。これらのフィルターは、実施例40と同様に突起で構成した。ただし、他のフィルター63を、上記フィルター62よりも間隔が狭い突起で構成した点が特徴的である。
本実施例の動作は、次のとおりである。最初に、実施例40と同様に、入口51から出口52に向けて試料を導入し、流路53を試料で満たす。次に、引き口52aを減圧し、観察部55に連通する分岐路54に試料を満たす。この際、フィルター62により、大きさの異なる構造物がそれぞれの観察部55の下に入る。
次に、入口51、出口52、引き口52aの圧力をほぼ同等にした上で、出口52から試料を排出する。この際、観察部55に試料が残り、かつ、流路53から試料がなくなるようにする。この状態で引き口52aを減圧することにより、フィルター63を介して液体成分のみを連通路60及び引出路61を通じて引き口52aから排出することができる。これにより、観察部55には、液体成分のない構造物だけを選択的に残すことができる。
膜11に入射した電子線16は、セル8内部に液体が有る場合、液体により散乱される。これに対し、本実施例では液体を選択的に排除し構造物だけを観察部55に配置することができたために、液体による散乱をなくすことができた。このため電子線16の散乱が少なくなるので、観察時の分解能を向上することができた。
本実施例では、実施例1と同様に樹脂を含むセルを用いた例を示したが、実施例3のように融着により接着したセル、実施例4に記載した導電性膜を用いたセル、実施例6に記載した酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機膜を用いたセル、あるいは、実施例5や7に記載した構造体で膜を支えたセルを用いることができるのはいうまでもない。実施例11や実施例12のように分岐路54の断面積を変えるようにしたり、実施例14のように分岐路54の一部に突起物を配置する、あるいは、実施例15のように入口51・出口52をセルの上側にとりつける、あるいは、実施例16のように引き口52aをとりつけられるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例41と同様である。ただし、液体を除去した後で、飽和水蒸気をセル8内部に導入した点が異なる。
実施例41と同様に液体成分を除去した後、入口51より飽和水蒸気を流路53に導入し、観察部55にも飽和水蒸気が入るように、引き口52aの圧力を調整した。このような手順を取り入れることにより、試料が乾燥するのを防ぐことができた。
本実施例は、基本的に実施例34と同様である。ただし、試料セルの膜部分に、メッシュを付加した点が異なる。作製方法は、実施例5と同様である。また、実施例7と同様の作成方法でもよい。
図50(a)にメッシュ501が付加された試料セルの断面構造を示す。実施例34と同様に、樹脂91と樹脂92にそれぞれナノインプリント技術を用いて、流路、供給路、及び観察部を設けた。この際に、メッシュ501も形成した。その後の工程は、実施例34と同様であり、接着剤93,94,97を用いて膜95,96を樹脂91,92に固定する。
チャンバー内部を真空あるいは減圧にした際に、膜の両側には圧力差が生じる。この圧力差により、膜が破壊することがある。これに対し、本メッシュで膜を支持することにより、膜が破壊しにくくなる。
本実施例では上記メッシュ構造を採用したが、ラインアンドスペース型の構造や、ハニカム構造を用いられるのは言うまでもない。本実施例では、膜にポリイミドを用いた例を示したが、ポリプロピレンやポリエチレンを初めとする有機系膜を用いられるのはいうまでもない。また、カーボンを用いられることもいうまでもない。さらに、実施例3のように融着により接着する、あるいは、実施例4のように導電性膜を付加できるのはいうまでもない。
また、上述した各実施例の実施形態が適用され得るのはいうまでもない。
本実施例は、基本的に実施例34と同様である。ただし、試料セルを半導体デバイスと類似のプロセスを用いて、別の材料で形成した点が異なる。
試料セルの作り方を図51に示す。Si基板の一部分511を、フォトリソグラフィーを用いて形成したレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングを用いて加工する。次に、熱酸化により加工面に酸化膜512を形成する。再度、フォトリソグラフィーを用いて形成したレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングを用いて加工する。これにより流路513及び膜514を形成する。
上記加工面と反対側に、同様な手法により観察領域を形成した。この際に、RIEを用いてSiを選択的にエッチングした。これを2組互いに膜が近接するように、ガラス誘着を用いて接着した。これらの工程により、セルを形成できた。
本実施例では、酸化シリコンを膜に用いたので、膜の耐久性を向上することができた。本実施例では膜に酸化シリコンを用いたが、窒化シリコン、窒化ホウ素など他の無機膜を用いられるのはいうまでもない。また、各種膜を、CVDやスパッタリング等の化学的、あるいは、物理的膜形成方法を用いて形成できるのはいうまでもない。
本実施例においても、上述した各実施例の形態を適用できるのはいうまでもない。
本実施例においても、図50(b)に示すように、実施例43と同様なメッシュ構造を形成できることはいうまでもない。この場合、実施例43と同様に膜が破壊されにくくなる。
本実施例は、実施例34と同様である。ただし、セルの観察部の深さ、すなわち、上記膜に垂直方向の幅を10nm〜20μm(より望ましくは10nm〜5μm)にしたこと、及び試料を傾斜できるステージを採用した点が異なる(図52参照)。
観察部85の深さを浅くしたことにより、観察部85内の試料15を傾斜させても観察部55内部で試料15中の構造物が動きにくい。このため、傾斜観察が簡単にできた。その結果、当該構造物の3次元的な構造を取得することができた。特に、複数の傾斜画像から、試料中構造物の輪郭をコンピューターを用いて再構築することにより、3次元立体画像を構築することができる(コンピュータートポグラフィー)。
本実施例においても、上述した各実施例の形態を適用できるのはいうまでもない。
本実施例は、実施例45と同様である。ただし、セルの観察部の深さ、すなわち、上記膜に垂直方向の幅を5μm以下にしたこと、および、試料を傾斜できるステージを採用した点が異なる。
観察部55の深さを浅くしたことにより、観察部55内の試料15を傾斜させても観察部55内部で試料15中の構造物が動きにくい。このため、傾斜観察が簡単にできた。その結果、当該構造物の3次元的な構造を取得することができた。特に、複数の傾斜画像から、試料中構造物の輪郭をコンピューターを用いて再構築することにより、3次元立体画像を構築することができる(コンピュータートポグラフィー)。
本実施例においても、上述した各実施例の形態を適用できるのはいうまでもない。
本実施例は、上記観察・検査を含む全ての工程を自動的にできるようにしたものである。
自動観察をするための装置の概要を、図53に示す。
最初に、試料の自動前処理を行う。オートピペット70を用いて試料を自動的に第1の前処理ユニット71に入れた後、オートピペットを用いて固定液を第1の前処理ユニット71に入れる。この状態で、必要に応じて攪拌をしながら、固定処理が終了するまで待つ。処理中の温度は、37℃に維持した。次に、オートピペットを用いて、固定処理後の試料を第2の前処理ユニット72に移す。その後、不要な上澄み液を捨てた後、試料の洗浄を行う。
その後、オートピペットを用いて、導電性染色液を第2の前処理ユニット72に入れる。この状態で、必要に応じて攪拌をしながら、染色処理が完了するのを待つ。不要な上澄み液を捨てた後、試料の洗浄を行う。以上が前処理工程である。
ここで、固定液はグルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド、ホルマリン等が使用可能であり、導電染色液はオスミウム酸水溶液、タンニン酸水溶液、リンタングステン酸水溶液等が使用可能であり、目的によって使い分ける。いずれも真空観察用のSEM及びTEM用に開発されている固定、導電染色のための薬液である。
次に、オートピペットを用いて、試料を自動的にセル8に入れる。セル8の入口に接続したパイプにオートピペットを接続することにより、セル8の流路内に試料を入れることができる。セル8の出口には、あふれ出た試料を廃液タンク73に流すためのパイプが接続してある(図33参照)。
そして、セル8を、搬送ユニット74を用いてチャンバー7内に配置した後、チャンバー7内を真空にする。試料移動機構9dを用いて、セル8を移動させ、セル8内の試料を観察位置に移動する。電子線16のフォーカスやスティグマの調整を自動的に行った後、SEM像ないしTEM像を取得する。取得した像は、観察試料や前処理ごとに、自動的に画像サーバー75に保存される。試料の移動からサーバーへの画像転送については、必要な回数繰り返す。
このような方法を用いることにより、試料前処理を含む全ての観察工程を自動化することができた。その結果、人の手間を省くことができた。
本実施例は、実施例47と同様である。ただし、圧力制御を自動的にできるようにした点が異なる。
実施例47と同様に前処理を行った後、オートピペットと、セル8の入口に接続したパイプとを使ってセル8に試料を供給するが、この際に実施例9に記載した圧力調整機構42を自動的にセルに接続し、試料をセル8に入れる際での膜11の両側の圧力差が大きくならないように自動的に調整した。セル8に試料を入れた後は、自動搬送・自動観察を行った。
本自動化をすることにより、セル8の膜11の破壊を防止できるとともに、人の手間を省くことができた。
本実施例は、前処理の最初に試料への蛍光マーカー付加処理を行った点、および、検出器に蛍光検出器を付加した点が異なる。具体的には、蛍光マーカーを付加した抗体を、抗原抗体反応を用いることにより試料に付加した。
試料に集束電子線を照射した際に、上記蛍光マーカーはカソードルミネッセンスを起こす。これにより発生した光は、蛍光検出器で検出される。本実施例では観察の際に、最初、反射電子を検出して電子線16のフォーカス・スティグマなどの調整を行った上で、蛍光検出器を用いて蛍光する場所を特定し、最後に再び反射電子検出器を用いて反射電子像を取得した。このような工程とすることにより、どの部位が蛍光しているかがわかる。これによって、蛍光マーカーが反応する部位を特定することができた。また、蛍光マーカーが付加された部分の
本実施例は、前処理の最初に試料への金属のマーカー付加処理を行った点が異なる。具体的には、金マーカーを付加した抗体を、抗原抗体反応を用いることにより試料に付加した。このとき、直径10nm〜50nmの金粒子をマーカーとして用いた。
試料に集束電子線を照射した際に、上記金属マーカーは生体部分よりも原子量が大きいために、反射電子像、あるいは、透過電子像として明瞭に観察することができる。
本実施例は、自動画像処理と画像分類を付加したものである。
実施例24と同様に試料の自動前処理・自動観察をした後、取得した画像を次の方法で分類した。まず、画像より特徴量を抽出する(画像処理)。本実施例では、構造物の大きさ、偏心量、エッジのラフネス、密度、表面形態、突起(構造物表面の突起)などの特定構造を抽出した。これらの特徴量の組み合わせにより、試料を自動的に分類した。試料の移動から分類については、必要な回数繰り返す。
特徴量と分類方法の関係については、あらかじめ多数の試料について手動分類の結果を用いて学習させることにより、分類精度を高めた。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
変形例:本実施例は、一方向からの観察だけでなく、鏡筒が傾斜する装置を用いて、複数の方向から自動的に観察する点が異なる。これらの画像を用いて、試料中の構造物の3次元形状を計算することができる。
真空チャンバー7内にセル8を入れる必要があるため、セルに試料を供給した後、その入口と出口を接着剤で封入した。搬送ロボットを用いて、真空チャンバー7内にセルを導入できるようにした。複数方向からの観察を自動化することにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、3次元形状構築処理を自動的にできるようにした点が異なる。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、自動画像認識と画像分類を付加したものである。
試料の自動前処理・自動観察をした後、自動的に3次元形状を得た。この3次元形状より、特徴量を抽出する。本実施例では、構造物の大きさ、3次元的な偏心量、エッジのラフネス、密度、表面形態、突起(構造物表面の突起)などの特定構造を抽出した。これらの特徴量の組み合わせにより、試料を自動的に分類した。
特徴量と分類方法の関係については、あらかじめ多数の試料について手動分類の結果を用いて学習させることにより、分類精度を高めた。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、特に血球の観察を行い、その3次元的な形状を分類した結果と病因の関係を用いることにより、分類結果を用いて自動的に病因判定できるようにした点が異なる。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、特に粉体の観察を行い、その3次元的な形状を分類した結果と過去の測定結果の関係を用いることにより、分類結果を用いて自動的に良品か不良品かの合否判定をできるようにした点が異なる。本実施例では、粉体として、コピー用トナー、化粧品、顔料、黒鉛の検査を行った。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、特にタンパク質の観察を行い、その3次元的な形状を自動的に再構築できるようにした点が異なる。本自動化をすることにより、人の手間を省くことができた。
本実施例は、対物レンズが上部磁極3aと下部磁極3bの2段で構成されている点が異なる(図54参照)。
このような構成とすることにより、対物レンズの収差を小さくすることができるので、電子線を集束しやすい。このため、より高分解能の観察ができた。
本実施例は、前方散乱された電子を検出する際に、検出散乱角度を選択するための、散乱電子角度選択レンズ3cを付加した点が異なる(図55参照)。これにより、試料により電子が散乱された際に、電子の散乱角度を選択することができる。従って、各種のコントラストを選ぶことができた。これにより、より明瞭な画像を得ることができた。
本実施例は、試料を透過した電子を結像するためのレンズ3dを付加した点、および、走査ユニット4をアライメントに用いた点が異なる(図56参照)。
このような構成とすることにより、通常の透過型電子顕微鏡像を得ることができた。このため、通常の透過電子顕微鏡で取得した画像と比較をしやすい。なお、図中の3eは、高感度電子線カメラである。
本実施例は、実施例59と類似である。ただし、試料を透過した電子の位相差像を取得するため、位相板3fを付加した点が異なる(図57参照)。
このような構成とすることにより、試料の位相差像を得ることができる。これにより、材料コントラストのつきにくい試料を、明瞭に観察することができた。また、染色等を行っていない場合についても、明瞭な観察をすることができた。
本実施例は、試料を透過した電子の微分干渉像を取得するため、位相板を付加した点が異なる。
このような構成とすることにより、試料の微分干渉像を得ることができる。これにより、材料コントラストのつきにくい試料を、明瞭に観察することができた。また、染色等を行っていない場合についても、明瞭な観察をすることができた。
本実施例は、試料と薬品をセル内で混合できるように、同一の流路53に連通する複数の入口51が設けられ、それぞれの流路53内で試料と薬液とが混合できるように構成されている点が異なる(図58参照)。
このような構成とすることにより、セル上で試料と薬品の混合を行うことができた。
この混合により生じた物質を、供給路54を通して試料保持空間55に導入する。試料保持空間55の周囲の構造は、図17もしくは図39のようになっている。セルを走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡の試料室に設置する。セルの試料保持空間に存在する該物質に電子線を照射させ、これにより発生する二次的信号、もしくは透過電子を検出して試料の情報を取得することができた。
ここで、薬液とは、試料が生体細胞の場合、該生体細胞を固定又は染色する物質を含む。具体的には、固定液はグルタールアルデヒド、ホルムアルデヒド、ホルマリン等が使用可能であり、導電染色液はオスミウム酸水溶液、タンニン酸水溶液、リンタングステン酸水溶液が使用可能であり、目的によって使い分ける。いずれも真空観察用のSEM及びTEM用に開発されている固定、導電染色のための薬液である。
本実施例では、試料と一つの薬品を混合する構成としたが、試料と複数の薬品を混合できる構成が可能であるのはいうまでもない。また、流路にディレイ等を配置することにより、薬液の混合タイミングを制御できることはいうまでもない。
以上に実施例において、試料保持空間55に試料を入れる前もしくは後に、試料保持空間55につながっている供給路54から蒸留水、エタノール等を用いて洗浄すると、試料保持空間55に付着している異物の除去ができる。これにより、撮像画像がより明瞭になった。
以上、本発明の各実施例について説明した。
本発明の試料保持体は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることを特徴とする。すなわち、上記フィルター構造を、試料保持体の該供給路又は/及び該試料保持空間に設けるようにできる。
また、本発明の試料保持体は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることも特徴とする。これも上述と同様に、上記フィルター構造を、試料保持体の該供給路又は/及び該試料保持空間に設けるようにできる。
さらに、本発明の試料保持体は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、試料が供給される流路と、該流路から該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることも特徴とする。これも上述と同様に、上記フィルター構造を、試料保持体の該供給路又は/及び該試料保持空間に設けるようにできる。
そして、本発明の試料保持体は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、試料が供給される流路と、該流路から該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該供給路及び該試料保持空間のうちの少なくとも一方に試料中の構成物を分別するフィルター構造を備えることも特徴とする。これも上述と同様に、上記フィルター構造を、試料保持体の該供給路又は/及び該試料保持空間に設けるようにできる。
また、本発明の試料保持体は、前記フィルター構造が、設定された第1の寸法を超える試料中の構成物が通過するのを防止する機能を備えることも特徴とする。
さらに、本発明の試料保持体は、前記膜の面に沿う方向又は/及び当該面に垂直な方向における前記供給路の一部又は前記試料保持空間の一部の幅を特定することにより、前記フィルター構造が構成されていることも特徴とする。上記各例において、このような構成を備えることができる。
そして、本発明の試料保持体は、前記幅が、10nm〜20μmに設定され、若しくは10nm〜5μmに設定されていることも特徴とする。
また、本発明の試料保持体は、前記供給路又は前記試料保持空間に、差部又は傾斜部が形成されており、これら各部の何れかにより前記フィルター構造が構成されていることも特徴とする。
さらに、本発明の試料保持体は、前記供給路又は前記試料保持空間に、少なくとも一つの突起又は柱が設けられており、これにより前記フィルター構造が構成されていることも特徴とする。すなわち、当該供給路又は当該試料保持空間に、フィルター構造として突起又は柱を設けることができる。
そして、本発明の試料保持体は、前記フィルター構造が、試料中の特定の構成物を吸着する吸着機能膜を備えることも特徴とする。すなわち、当該供給路又は当該試料保持空間に、フィルター構造として吸着機能膜を設けることができる。
また、本発明の試料保持体は、前記吸着機能膜が、細胞外基質成分であることも特徴とする。すなわち、当該供給路又は当該試料保持空間に、フィルター構造として細胞外基質成分からなる吸着機能膜を設けることができる。
さらに、本発明の試料保持体は、前記吸着機能膜が、ポリLリジン、ポリDリジン、コラーゲン、マトリゲル、フィブロネクチン、ラミニン、セルタックのうちの少なくとも一つからなることも特徴とする。すなわち、当該供給路又は当該試料保持空間に、フィルター構造として、ポリLリジン、ポリDリジン、コラーゲン、マトリゲル、フィブロネクチン、ラミニン、セルタックのうちの少なくとも一つからなる吸着機能膜を設けることができる。
そして、本発明の試料保持体は、電子線が透過する膜と該膜に対向するベースとの間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該試料保持空間及び該供給路の幅が10nm〜20μmに設定され、又は当該幅が10nm〜5μmに設定されていることも特徴とする。
また、本発明の試料保持体は、電子線が透過する対向配置された2つの膜の間に設けられた試料保持空間と、該試料保持空間に試料を供給するための供給路とを有する試料保持体であって、該試料保持空間及び該供給路の幅が10nm〜20μmに設定され、又は10nm〜5μmに設定されていることも特徴とする。
そして、本発明の試料保持体は、前記試料保持空間が、試料の一部を引き出すための引出路と連通していることも特徴とする。
また、本発明の試料保持体は、前記試料保持空間が連通路を介して前記引出路と接続されており、該連通路には第2の寸法を超える試料中の構成物が通過するのを防止する機能を備える他のフィルター構造が備えられていることも特徴とする。上記各例において、このような構成をとることができる。
さらに、本発明の試料保持体は、前記膜が、酸化シリコン、窒化シリコン、カーボン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、窒化ホウ素のうちの少なくとも一つを含むことも特徴とする。
そして、本発明の試料保持体は、前記膜の厚さが、10nm〜1000nmであることも特徴とする。
また、本発明の試料保持体は、前記膜に導電層が設けられていることも特徴とする。上記各例において、このような構成をとることができる。
さらに、本発明の試料保持体は、前記膜を支えるグリッド又はメッシュを備えることも特徴とする。すなわち、当該試料保持体に備えられた膜に、グリッド又はメッシュを配置することができる。
そして、本発明の試料保持体は、前記試料保持空間が複数設けられており、各試料保持空間に対応して個別に供給路が設けられていることも特徴とする。上記各例において、このような構成をとることができる。
また、本発明の試料保持体は、前記試料保持空間が複数設けられており、各試料保持空間に対応して個別に供給路が設けられ、これら供給路又は試料保持空間に備えられたフィルター構造において、前記第1の寸法として2種以上の寸法が設定されていることも特徴とする。上記各例において、このような構成をとることができる。
さらに、本発明の試料保持体は、前記流路に連通する供給口と排出口とが、試料保持体における同一表面に設けられていることも特徴とする。
そして、本発明の試料保持体は、前記流路路に連通する供給口が複数設けられていることも特徴とする。
また、本発明の試料保持体は、表面に寸法指標となる指標パターンが形成されていることも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、前記試料保持体の前記試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することを特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記試料保持体の前記試料保持空間に試料を供給した後、該試料保持空間内の試料から液体成分を除去し、該試料保持空間に残存した試料の構成物に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、前記試料保持空間内の試料から液体成分を除去した後、前記供給路を介して前記試料保持空間に水蒸気を供給し、その後試料の情報を取得することも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、試料保持体に設けられた複数の供給口のうち、第1の供給口を介して前記流路に試料を供給するとともに、第2の供給口を介して前記流路に薬液を供給し、前記流路内で薬液と反応した試料が前記供給路を介して前記試料保持空間に供給され、前記試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得することも特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記試料が生体構成物を含んでおり、前記薬液は該生体構成物を固定又は染色する物質を含むことも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、前記試料保持体の試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射し、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して、試料の情報を取得する試料検査方法であって、当該試料保持体の表面に形成された前記指標パターンに電子線を照射した際に得られるパターン情報を取得し、得られた試料情報と当該パターン情報とを参照することも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、前記試料保持体の前記供給路に試料を供給して、該供給路を介して前記試料保持空間に試料を供給する供給工程と、該試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射する照射工程と、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出して試料の情報を取得する検出工程とを有することも特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記供給工程において、前記膜の両面側での圧力の差が小さくなるように、前記膜における少なくとも一方の面側の圧力を調整することも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、前記供給工程において、前記供給路に試料を供給する前に、前記膜の両面側に所定の圧力差を生じさせ、これにより該膜の破壊の有無又は該膜の強度を確認することも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、前記供給工程の実施前に行われる試料の前処理工程をさらに有することも特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記前処理工程において、試料の固定処理、染色処理、蛍光マーカー付加処理、若しくは金属マーカー付加処理のうちの少なくとも一つを行うことも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、前記二次的信号は、反射電子、二次電子、X線、もしくは蛍光のうちの少なくとも一つであることも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、前記二次的信号として蛍光を検出して試料の蛍光領域を探索し、その後該蛍光領域からの二次的信号として反射電子又は二次電子を検出することにより、該蛍光領域の構造を取得することも特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記二次的信号として反射電子を検出するとともに、これと同時に透過電子線を検出することも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、取得された試料の情報データの画像処理を行い、該画像処理結果に基いて画像分類を行うことも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査方法は、前記画像分類結果に基づいて、病因判定又は合否判定を行うことも特徴とする。
そして、本発明の試料検査方法は、前記供給工程の実施前に前記試料保持体の少なくとも前記供給路及び前記試料保持空間内の洗浄を行う洗浄工程をさらに有することも特徴とする。
また、本発明の試料検査方法は、前記供給工程の実施後に前記試料保持体の前記供給路へ連通する供給口又は/及び排出口の封止を行う封止工程をさらに有することも特徴とする。
これら各試料検査方法は、上記試料保持体を用いて実施することができる。
さらに、本発明の試料検査装置は、前記試料保持体を備える試料検査装置であって、当該試料保持体の前記試料保持空間に保持された試料に前記膜を介して電子線を照射する照射手段と、当該照射により試料から発生する二次的信号又は試料を透過した透過電子線を検出する検出手段とを有することを特徴とする。
そして、本発明の試料検査装置は、前記照射手段を支持するとともに、前記検出手段を内部に備える真空チャンバを有し、前記試料保持体がOリング又はグリスを介して該真空チャンバに設置されていることも特徴とする。
また、本発明の試料検査装置は、前記試料保持体を傾斜させるための傾斜手段を有することも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査装置は、前記透過電子の検出散乱角度を選択できる選択手段を備えることも特徴とする。
そして、本発明の試料検査装置は、前記透過電子の位相差又は微分干渉成分を結像する結像手段を備えることも特徴とする。
また、本発明の試料検査装置は、前記二次的信号としての反射電子を検出する反射電子検出器と、前記透過電子を検出する透過電子検出器とを備えることも特徴とする。
さらに、本発明の試料検査装置は、取得された試料の情報データの画像処理を行い、該画像処理結果に基いて画像分類を行うことも特徴とする。
そして、本発明の試料検査装置は、前記分類結果に基づいて、病因判定又は合否判定を行うことも特徴とする。
これら各試料検査装置は、上記試料保持体を用いて構成することができる。
また、本発明の試料検査システムは、前記試料検査装置を備え、試料の前処理手段と、前処理がされた試料を前記試料保持体の流路に供給する試料供給手段と、試料が供給された試料保持体を当該試料検査装置に移動する移動手段とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の試料検査システムは、前記前処理手段が、試料の固定処理、染色処理、蛍光マーカー付加処理、若しくは金属マーカー付加処理のうちの少なくとも一つを行うことも特徴とする。
そして、本発明の試料検査システムは、前記試料供給手段が、前記試料保持体の前記膜における少なくとも一方の面側の圧力を調整することができることも特徴とする。
このように、本発明では、試料保持体に設けられた供給路及び試料保持空間のうちの少なくとも一方に、試料中の構成物を分別するフィルター構造が備えられている。
よって、試料保持体の試料保持空間には、該フィルター構造を通過した試料の構成物が供給されることとなり、この試料保持空間に保持された該構成物を検査対象とすることにより、試料中の構成物を試料保持体内にて選択・抽出した状態で効率的に試料検査を行うことができる。
また、フィルター構造が吸着機能膜を備える場合には、該吸着機能膜に吸着されない試料中の構成物を試料保持体内にて選択・抽出した状態で効率的に試料検査を行うことができる。
さらに、試料保持体の膜の面に垂直な方向における試料保持空間の幅を特定する場合には、選択された試料中の構成物が該試料保持空間内において該膜に接近することとなる。これにより、該膜と該構成物とが離間することを防ぐことができ、該構成物に到達する電子線及び該構成物から発生する反射電子が減衰することを防止することができるので、適切なSEM像を取得して良好な試料検査を行うことができる。
実施例1の装置構成を示す図である。
実施例1の試料セルの構成を示す図である。
試料セルにパイプを接続する状態を示す図である。
試料セルの作成方法を示す図である。
実施例2を説明する図である。
実施例3を説明する図である。
実施例4を説明する図である。
実施例5を説明する図である。
実施例5を説明する図である。
実施例6を説明する図である。
実施例6を説明する図である。
実施例7を説明する図である。
実施例8を説明する図である。
実施例8を説明する図である。
実施例9を説明する図である。
実施例9を説明する図である。
実施例11を説明する図である。
実施例12を説明する図である。
実施例13を説明する図である。
実施例13の変形例を説明する図である。
実施例13の変形例を説明する図である。
実施例14を説明する図である。
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実施例15を説明する図である。
実施例16を説明する図である。
実施例17を説明する図である。
実施例18を説明する図である。
実施例20を説明する図である。
実施例21を説明する図である。
実施例22を説明する図である。
実施例23を説明する図である。
実施例23を説明する図である。
実施例24を説明する図である。
実施例24を説明する図である。
実施例26を説明する図である。
実施例28を説明する図である。
実施例29を説明する図である。
実施例30を説明する図である。
実施例34を説明する図である。
実施例34を説明する図である。
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実施例35を説明する図である。
実施例36を説明する図である。
実施例37を説明する図である。
実施例38を説明する図である。
実施例38を説明する図である。
実施例39を説明する図である。
実施例40を説明する図である。
実施例41を説明する図である。
実施例43を説明する図である。
実施例44を説明する図である。
実施例45を説明する図である。
実施例47を説明する図である。
実施例57を説明する図である。
実施例58を説明する図である。
実施例59を説明する図である。
実施例60を説明する図である。
実施例62を説明する図である。
符号の説明
1…電子源、2…コンデンサーレンズ、3…対物レンズ、4…走査ユニット、5…電子線鏡筒、6…電子線検出器、7…真空チャンバー、8…試料セル(試料保持体)、9…Oリング、11…有機膜(膜)、12…セルベース(ベース)、13…セルキャップ、14…接着剤、15…試料、53…流路、54…分岐路(供給路)、55…観察部(試料保持空間)、16…電子線、62a,62b,62c,62d…フィルター