本発明の光ピックアップ装置は、第1及び第2の集光部材を搭載したホルダをトラッキング方向に移動させるトラッキングコイルを、その巻回用の仮想中心軸がトラッキング方向と略平行になるように配置し、このトラッキングコイルに磁界を与える第1及び第2のトラッキングマグネットは、トラッキングコイルを挟んで相対向させるとともに、その対向面が同じ磁極を有するようにしたものである。
これにより、トラッキングコイルにおいて電磁力生成に寄与する対向2辺の直線部分が、第1及び第2のトラッキングマグネットの対向面に挟まれた有効磁界領域から逸脱する位置まで駆動されても、トラッキングコイルの有効部分における電流の向きは磁界の向きと同じであるため、光ピックアップに対する不要なラジアルチルトの発生が抑制される。
また、本発明の光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置は、長波長レーザ用の光ディスクとブルーレーザ対応光ディスクが共用できるので、光ディスク装置の小型化および薄型化を実現することができる。
前記課題を解決するために、本発明の光ピックアップ装置は、第1の光源からの光を集光する第1の集光部材と、第2の光源からの光を集光する第2の集光部材と、第1の集光部材と第2の集光部材を取り付けたホルダと、ホルダを光ディスクのトラッキング方向に駆動する1対のトラッキングコイルと、ホルダを光ディスクのフォーカス方向に駆動する2対のフォーカスコイルと、1対のトラッキングコイルのそれぞれに磁界を与えるトラッキングマグネットと、2対のフォーカスコイルのそれぞれに磁界を与えるフォーカスマグネットとを有し、複数の2対のフォーカスコイルは、巻回用の仮想中心軸をフォーカス方向とトラッキング方向とに対して垂直であるタンジェンシャル方向と略平行にしてホルダ16に配置され、第1の集光部材及び第2の集光部材が取り付けられた領域を矩形形状に囲うように四方に配置され、1対のトラッキングコイルは、巻回用の仮想中心軸をトラッキング方向と略平行にしてホルダに配置され、タンジェンシャル方向において、第1の集光部材と第2の集光部材との間に配置され、1対のトラッキングコイルと2対のトラッキングマグネットは、タンジェンシャル方向に沿って配置され、前記2対のトラッキングマグネットにおける各対の第1のトラッキングマグネットと第2のトラッキングマグネットは、タンジェンシャル方向に沿って第1のトラッキングマグネット,トラッキングコイル,第2のトラッキングマグネットの順に配置され、第1のトラッキングマグネットと第2のトラッキングマグネットのトラッキングコイルに対向する面は同じ磁極を有することを特徴とする。
この光ピックアップ装置においては、ホルダの四方に配置されたフォーカスコイルに正方向または逆方向に同じ大きさの電流を流すことにより、フォーカスマグネットの磁界とのフレミングの左手の法則に基づく作用によってホルダはフォーカス方向に沿って正逆方向に駆動される。このときは、四方に配置されたフォーカスコイルによりホルダは均等な力で駆動されるので、トラッキングチルトは基本的には生じない。一方、トラッキングコイルに正方向または逆方向に電流を流すと、一つのトラッキングコイルの平行な対向2辺の一方と他方では電流の向きが反対になる。その一方の辺に流れる電流には第1のトラッキングマグネットの磁極から発生する磁界が作用し、他方の辺に流れる電流には第2のトラッキングマグネットの磁極から発生する磁界が作用する。第1のトラッキングマグネットの磁極と第2のトラッキングマグネットの磁極とは同じ極性であるので、トラッキングコイルの一方の辺と他方の辺に流れる電流の向きと磁界の向きは逆になり、したがって、トラッキングコイルの両辺にはフレミングの左手の法則に従う同じ方向の力が発生する。この力は、トラッキングコイルの有効部分が、第1及び第2のトラッキングマグネットの対向面に挟まれた有効磁界領域から逸脱する位置まで駆動されても同じであるため、光ピックアップに対する不要なラジアルチルトの発生が抑制される。
前記1対のトラッキングコイルは、第1の集光部材及び第2の集光部材が取り付けられた領域の両側に配置すると、1対のトラッキングコイルでホルダのほぼ重心位置を駆動することになり、トラッキング方向への駆動時にホルダがトラッキング方向に対して傾くことを抑制することができる。
前記トラッキングコイルは、輪状に巻回されており、トラッキングコイルの輪状の内側には、磁性体が設けられているものとすると、その磁性体にトラッキングマグネットの磁束が通り、磁気抵抗が小さくなるため、磁界の強さが増し、トラッキングコイルに流す電流を小さくすることができる。
前記2対のフォーカスコイルの各対は、第1の集光部材の光軸と第2の集光部材の光軸とを含む平面に関して、面対称に配置された構成とすると、各対のフォーカスコイルでホルダのほぼ重心位置を駆動することになり、フォーカス方向への駆動時にホルダがフォーカス方向に対して傾くことを抑制することができる。また、フォーカスコイルに流れる電流によりフォーカスコイルが発熱するが、前記のように2対のフォーカスコイルを配置することにより、ホルダ上の温度分布には大きな偏りが生じにくく、第1の集光部材、第2の集光部材が熱せられても、これらの集光部材の機械的な歪みによる光学的な歪みが大きくなることがない。
前記1対のトラッキングコイルは、第1の集光部材の光軸と第2の集光部材の光軸とを含む平面に関して、面対称に配置された構成とすると、1対のトラッキングコイルでホルダのほぼ重心位置を駆動することになり、トラッキング方向への駆動時にホルダがトラッキング方向に対して傾くことを抑制することができる。
前記フォーカスマグネットとフォーカスコイルとは、タンジェンシャル方向に沿って配置され、フォーカスマグネットはフォーカスコイルに対向して設けられた構成とすると、2対のフォーカスマグネットとフォーカスコイルによる電磁力がホルダをフォーカス方向への駆動力に効率的に変換される。
本発明の光ディスク装置は、前記の光ピックアップ装置と、光ピックアップ装置を移動自在に保持するベースと、ベースに設けられ光ディスクを回転駆動する回転駆動部材とを有する。これにより、長波長レーザ用の光ディスクとブルーレーザ対応光ディスクの記録再生を同じ光ピックアップ装置で行うことができ、光ディスク装置の小型化および薄型化を実現することができる。
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における光ピックアップ装置の構成を示す概略図である。なお、図1における二重波線のA側、つまり、短波長光学ユニット1,長波長光学ユニット3からコリメータレンズ8までは、光ピックアップ装置を図2におけるZ方向(紙面上方)から見た模式図であり、また、図1における二重波線のB側、つまり、立ち上げミラー9から光ディスク2までは、光ピックアップ装置を図2におけるR方向から見た模式図となっている。
図1において、1は短波長レーザを出射する短波長光学ユニットで、短波長光学ユニット1から出射される光は、400nm〜415nmの波長であり、本実施の形態では略405nmの光を出射するように構成した。なお、一般に上述のレーザ波長の光は青色〜紫色をしている。本実施の形態においては、短波長光学ユニット1の詳細は後述するが、短波長のレーザを出射する光源部1aと、光ディスク2から反射してきた光を受光する信号検出用の受光部1bと、光源部1aから出射された光の光量をモニターする様に設けられた受光部1cと、光学部材1dと、それら構成部材を所定の位置関係に保持する保持部材(図示せず)とを含んでいる。光源部1aには、GaNもしくはGaNを主成分とする半導体レーザ素子(図示せず)が設けられており、この半導体レーザ素子から出射された光は光学部材1dに入射され、入射された光の一部は光学部材1dにて反射され受光部1cに入る。図示していないが、この受光部1cで光を電気信号に変換し、その電気信号を元に光源部1aから出射される光の強さを所望の強度に調整する回路などが設けられている。また、光源部1aから出射された光のほとんどは光学部材1dを通して光ディスク2の方へ導かれる。また光ディスク2で反射してきた光は光学部材1dを介して受光部1bに入射される。受光部1bは、光を電気信号に変換し、その電気信号よりRF信号,トラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号などを生成する。光学部材1d中にはフォーカスエラー信号を得ることが出来るように光ディスク2からの反射光を分離するホログラム1eが設けられている。
なお、本実施の形態においては、光ピックアップ装置を小型化するために、光源部1a,受光部1b,1c及び光学部材1dを含んだひとつの短波長光学ユニットとして構成したが、受光部1b,1cの少なくとも一方を短波長光学ユニット1から外に出して別体として構成したり、あるいは光学部材1dを短波長光学ユニット1から外に出して別体として構成してもよい。
3は長波長のレーザを出射する長波長光学ユニットで、長波長光学ユニット3から出射される光は、640nm〜800nmの波長であり、一種の波長の光を単数出射したり、あるいは複数種の波長の光を複数出射する構成となっている。本実施の形態では、略660nmの波長の光束(赤:例えばDVD対応)と略780nmの光束(赤外:例えばCD対応)を出射する構成とした。本実施の形態においては、長波長光学ユニット3の詳細は後述するが、長波長のレーザを出射する光源部3aと、光ディスク2から反射してきた光を受光する信号検出用の受光部3bと、光源部3aから出射された光の光量をモニターするように設けられた受光部3cと、光学部材3dと、それら構成部材を所定の位置関係に保持する保持部材(図示せず)とを含んでいる。光源部3aには、半導体レーザ素子(図示せず)が設けられており、この半導体レーザ素子はモノブロックで構成され(モノリシック構造)、このモノブロックの素子から略660nmの波長の光束(赤)と略780nmの光束(赤外)を出射する。なお、本実施の形態では、モノブロックの素子で2つの光束を出射する構成としたが、一つのブロック素子で一つの光束を出射する素子を2つ内蔵した構成としてもよい。この半導体レーザ素子から出射された複数の光束は光学部材3dに入射され、入射された光の一部は光学部材3dにて反射され受光部3cに入る。図示していないが、この受光部3cで光を電気信号に変換し、その電気信号を元に光源部3aから出射される光の強さを所望の強度に調整する回路などが設けられている。また、光源部3aから出射された光のほとんどは光学部材3dを通して光ディスク2の方へ導かれる。また光ディスク2で反射してきた光は光学部材3dを介して受光部3bに入射される。受光部3bは、光を電気信号に変換し、その電気信号よりRF信号,トラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号などを生成する。なお、光学部材3dには、CD用のフォーカスエラー信号を生成するために光ディスク2からの反射光を複数本に分離して、それぞれ受光部3bの所定の場所に導くホログラム3eが設けられている。
なお、本実施の形態においては、光ピックアップ装置を小型化するために、光源部3a,受光部3b,3c及び光学部材3dを含んだひとつの長波長光学ユニット3として構成したが、受光部3b,3cの少なくとも一方を長波長光学ユニット3から外に出して別体として構成したり、あるいは光学部材3dを長波長光学ユニット3から外に出して別体として構成してもよい。
4は短波長光学ユニット1から出射された光と、光ディスク2からの反射光が通過するビーム整形レンズである。ビーム整形レンズ4は、短波長レーザの通過による劣化が少ないガラスで構成されることが好ましい。本実施の形態においては、ビーム整形レンズ4をガラスで構成したが、短波長レーザの通過による劣化が少ない材料であれば、他の材料によってビーム整形レンズ4を構成することも同様に実施可能である。ビーム整形レンズ4は、短波長のレーザの非点収差をおよび短波長光学ユニット1から光ディスク2に至る光路中で発生する非点収差を打ち消す目的で設けられている。このビーム整形レンズ4の目的上、光ディスク2から反射してきた光はこのビーム整形レンズ4を介さずに短波長光学ユニット1に入射させてもよいが、光学的な配置上光ディスク2からの反射光を本実施の形態では、ビーム整形レンズ4を介して短波長光学ユニット1に入射させている。なお、本実施の形態では短波長の光の非点収差を低減させるようにビーム整形レンズ4を用いたが、ビーム整形プリズムやビーム整形ホログラムを代わりに用いてもよい。
また、ビーム整形レンズ4の両端にはそれぞれ凸部4a及び凹部4bが設けられており、短波長光学ユニット1から出射された光はまず凸部4aに入射して凹部4bから出射するようにビーム整形レンズ4は配置される。
5は光学部品で、光学部品5は光路上ビーム整形レンズ4の先に配置され、ビーム整形レンズ4の凹部4b側に配置される。すなわち、短波長光学ユニット1から出射された光はビーム整形レンズ4を介して光学部品5に入射され、光ディスク2へと導かれ、光ディスク2から反射してきた光は、光学部品5,ビーム整形レンズ4を順に経由して短波長光学ユニット1に入射される。光学部品5にはホログラムなどが設けられており、少なくとも以下の機能を有する。すなわち、光ディスク2から反射してきた光を主にトラッキングエラー信号を生成するように所定の光束に分離させる機能である。前述の通り、光学部材1d中に設けられたホログラム1eにてフォーカスエラー信号を作成するために複数本の光束に分離し、光学部品5にてトラッキングエラー信号を生成するために複数本の光束に分離する。
更に詳細には後述するが、光学部品5には、短波長の光の略中央部分の光量を減衰させるRIM強度補正フィルタの役目をする機能を持たせてもよい。更には、光学部品5を2つに分離して、一方の光学部品5に光ディスク2から反射してきた光を主にトラッキングエラー信号を生成するように所定の光束に分離させる機能を持たせ、他方の光学部品5にRIM強度補正フィルタの機能を持たせることもできる。
6は長波長光学ユニット3から出射された長波長の光が通過するリレーレンズで、リレーレンズ6は樹脂やガラスなどの透明部材にて構成される。リレーレンズ6は長波長光学ユニット3から出射された光を効率よく後方の部材に導くように設けられる。また、リレーレンズ6を設けることによって、長波長光学ユニット3をよりビームスプリッタ7側に配置できるようになるので、装置の小型化を実現できる。
7は光学部材であるビームスプリッタであり、ビームスプリッタ7中には少なくとも2つの透明部材7b、7cを接合して設けられており、透明部材7b,7cの間には一つの傾斜面7aが設けられており、その傾斜面7aには波長選択膜が設けられている。短波長光学ユニット1から出射された光が入り込む透明部材7cの傾斜面7aには波長選択膜が直接形成されており、この波長選択膜が形成された透明部材7cの傾斜面7aに樹脂やガラス等の接合材を介して透明部材7bが接合されている構成となっている。
また、ビームスプリッタ7は短波長光学ユニット1から出射された短波長の光を反射し、長波長光学ユニット3から出射された光を透過させる機能を有する。すなわち短波長光学ユニット1から出射された光と長波長光学ユニット3から出射された光をほぼ同一方向に導く構成としている。
8は移動自在に保持されたコリメータレンズで、コリメータレンズ8はスライダ8bに取り付けられ、スライダ8bは略平行に設けられた1対の支持部材8aに移動可能に取り付けられている。ヘリカル状の溝が設けられたリードスクリュー8cが支持部材8aに対して略平行となるように設けられており、このリードスクリュー8cの溝に入り込む突起がスライダ8bの端部に設けられている。リードスクリュー8cにはギア群8dが結合されており、ギア群8dには駆動部材8eが設けられている。駆動部材8eの駆動力はギア群8dを介してリードスクリュー8cに伝えられ、しかもその駆動力によってリードスクリュー8cは回転し、その結果スライダ8bは支持部材8aに沿って移動する。すなわち、駆動部材8eの駆動方向の違いや駆動速度の違いによってコリメータレンズ8はビームスプリッタ7に対して近づく方向に移動させたりあるいは離れる方向に移動させたりすることができ、しかもその移動の速さなどを調整できる。
なお、駆動部材8eとしては、各種モータなどが好適に用いられるが、特に駆動部材8eとしては、ステッピングモータを用いることが好ましい。すなわち、ステッピングモータに送るパルスの数を調整することによって、リードスクリュー8cの回転量が決定し、その結果コリメータレンズ8の移動量を容易に設定可能となる。
この様に、コリメータレンズ8をビームスプリッタ7に近づけたり離したりする構成を採用することで、球面収差の調整を容易に行うことができる。すなわち、コリメータレンズ8の位置によって、短波長の光の球面収差を調整することができるので、短波長対応の光ディスクに設けられた第1の記録層と、その第1の記録層と異なる深さに設けられた第2の記録層に対してそれぞれに記録または再生の少なくとも一方を効果的に行わせるように構成できる。
コリメータレンズ8には、ビームスプリッタ7から入射される長波長及び短波長の光が透過するので、ガラスもしくは好ましくは耐短波長光樹脂(短波長によって劣化しないあるいは劣化しにくい樹脂)で構成される。このコリメータレンズ8は光ディスク2で反射してきた短波長あるいは長波長の光も透過する。
また、本実施の形態では、短波長の光の球面収差の補正を行う構成として、駆動部材8eにてコリメータレンズ8を移動させる構成としたが、その他の構成によって、コリメータレンズ8を移動させてもよいし、他の手段を用いて、短波長の光の球面収差を調整する構成としてもよい。
9は立ち上げミラーであり、立ち上げミラー9には短波長の光に対して作用する1/4波長部材9aが設けられている。この1/4波長部材9aとしては、二度(往路と復路で)通過した光の偏光方向を略90度回転させる1/4波長板が好適に用いられる。本実施の形態では1/4波長部材9aは立ち上げミラー9の中に挟みこんだ構成とした。立ち上げミラー9において各ユニット1,3から出射された光が入射する面には波長選択膜9bが設けられており、長波長光学ユニット3から出射された長波長の光をほとんど反射し、短波長光学ユニット1から出射された短波長の光をほとんど透過させる機能を有する。
10は長波長レーザ用の対物レンズで、対物レンズ10は立ち上げミラー9から反射してきた光を光ディスク2に集光させる。本実施の形態では対物レンズ10を用いたが、ホログラム等その他の集光部材で構成してもよい。また、当然のごとく、光ディスク2から反射してきた光はこの対物レンズ10を通過する。対物レンズ10はガラスや樹脂などの材料で構成される。
11は対物レンズ10と立ち上げミラー9の間に設けられた光学部品で、光学部品11はDVD(略660nmの波長の光)及びCD(略780nmの波長の光)の光ディスク2に対応可能な様に必要な開口数を実現するための開口フィルタと、略660nmの波長の光に対して反応する偏光ホログラムと、1/4波長部材(好適には1/4波長板)を具備している。光学部品11は、誘電体多層膜や回折格子開口手段などで構成される。偏光ホログラムは略660nmの光に対して偏光を加える(略660nmの波長の光をトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号用の光に分離する)。また、1/4波長部材は、略660nm及び略780nmの波長の光の往路に対する復路の偏光方向を略90度回転させる。
12は短波長の光をほとんど反射する立ち上げミラーで、立ち上げミラー12には反射膜が設けられている。
13は対物レンズで、対物レンズ13は立ち上げミラー12から反射してきた光を光ディスク2に集光させる。本実施の形態では対物レンズ13を用いたが、ホログラム等その他の集光部材で構成してもよい。また、当然のごとく、光ディスク2から反射してきた光はこの対物レンズ13を通過する。対物レンズ13はガラスで構成されたり、あるいは樹脂で構成されるが、対物レンズ13を樹脂で構成する場合には好ましくは、耐短波長光樹脂(短波長によって劣化しないあるいは劣化しにくい樹脂)で構成される。
14は対物レンズ13と立ち上げミラー12の間に設けられた色消し回折レンズで、色消し回折レンズ14は色収差を補正するという機能を有する。色消し回折レンズ14は短波長の光が通過する各光学部品などで生じる色収差を打ち消して低減させるように設けられている。色消し回折レンズ14は基本的にはレンズの上に所望のホログラムを形成して構成され、色収差の補正度合いは、ホログラムの格子ピッチ,レンズの曲率半径の少なくとも一つを調整することで決定可能である。色消し回折レンズ14はプラスチックなどの樹脂やガラスで構成されている。樹脂などを用いる場合には、耐短波長光樹脂(短波長によって劣化しないあるいは劣化しにくい樹脂)で構成されることが好ましい。
以上の様に構成された光学系の具体的は配置について、以下、図2を基に説明する。
図2は実際に、図1で示した光ピックアップ装置の光学構成を具現化した例を示す平面図であり、図1に示す各部材とは多少形状などが異なるが、機能などはほぼ同じである。
15は基台で、基台15は上述の各部材が固定あるいは移動可能に取り付けられている。基台15は、亜鉛,亜鉛合金,アルミ,アルミ合金,チタン,チタン合金などの金属あるいは金属合金材料で構成され、量産的な面から好ましくはダイカスト製法などを用いて構成されている。基台15は図3,図4に示すピックアップモジュール306に、移動自在に保持される。
図3は、図2に示す光学構成が搭載されたピックアップモジュール306の平面図、図4は、図3のピックアップモジュール306にフレームカバー30を被せた状態の平面図である。図3,図4において、20はフレームで、フレーム20には略平行に配置されたシャフト21,22が取り付けられており、このシャフト21,22に基台15が移動可能に取り付けられている。また、シャフト22のシャフト21側と反対側には、ヘリカル状の溝を設けたスクリューシャフト23がシャフト21,22と略平行にしかも回転自在にフレーム20に取り付けられている。詳細には図示していないが、基台15に一体あるいは別に設けられた部材がこのスクリューシャフト23に設けられた溝に噛み込んでいる。スクリューシャフト23はフレーム20に回転自在に設けられたギア群24aと噛み合っており、このギア群24aはフィードモータ24と噛み合っている。従って、フィードモータ24が回転すると、ギア群24aが回転し、それに伴ってスクリューシャフト23が回転し、スクリューシャフト23が回転することによって、基台15は図3に示す矢印方向に往復運動を行うことができる。このとき、本実施の形態では、フィードモータ24は、スクリューシャフト23に略平行に配置される。また、フレーム20には光ディスク2を装着し、光ディスク2を回転させるスピンドルモータ25がネジ止めや接着などの手法にて取り付けられている。
図2に戻って、17はサスペンションホルダーで、このサスペンションホルダー17は後述するヨーク部材を介して各種接合手法によって基台15に取り付けられており、レンズホルダー16とサスペンションホルダー17は複数本のサスペンション18を介して結合されており、レンズホルダー16は基台15に対して所定の範囲移動可能なように支持される。レンズホルダー16には対物レンズ10,13および光学部品11,色消し回折レンズ14(図1参照)等が取り付けられており、レンズホルダー16の移動によって、レンズホルダー16とともに、対物レンズ10,13および光学部品11,色消し回折レンズ14も移動する。
さらに、補足的に、図3に示すように、フレーム20とは別体に制御基板26を設け、この制御基板26と基台15の間は、例えばフレキシブル基板29を介して電気的に接合され、さらには図示していない部材によってスピンドルモータ25と制御基板26は電気的に接続されている。制御基板26には光ディスク装置に設けられた制御基板との間の電気的接続を行うコネクタ27が設けられており、このコネクタ27に図示していないフレキシブル基板等を差し込んで電気的接続を行う。
さらに図4に示す様にフレーム20において、少なくとも光ディスクと対向する側に、部材の保護を行うことを一つの目的としたフレームカバー30を設けてもよい。フレームカバー30には貫通孔31が設けられており、この貫通孔31からは、基台15における少なくとも対物レンズ10,13が表出し、さらにはスピンドルモータ25が所定量突出している。また、図3,図4において、フレーム20には他の部材へ固定するために取付部20aが設けられており、この取付部20aにネジなどを挿入して他の部材へフレーム20を取り付ける。
図5は、図2において示した光学構成において、2つの対物レンズ10および13の中心を結ぶ線上の断面をR方向から見た図である。図5において、基台15には、短波長光学ユニット1,長波長光学ユニット3,ビーム整形レンズ4,光学部品5,リレーレンズ6,ビームスプリッタ7,支持部材8a,リードスクリュー8c,ギア群8d,駆動部材8e(以上、図2参照),立ち上げミラー9,12等が光硬化型接着剤やエポキシ系接着剤等の有機系の接着剤を用いて接着されたり、半田や鉛フリー半田等の金属系の接着剤を用いて接着されたり、もしくはネジ止め,嵌合,圧入等の手法を用いて取り付けられている。
なお、リードスクリュー8cおよびギア群8dは、回転自在に基台15に取り付けられている。
図5に示すように、立ち上げミラー9,12は基台15に隆起して設けられた隆起部15d,15eにそれぞれ光硬化性樹脂や瞬間接着剤などによって取り付けられる。隆起部15dに立ち上げミラー9を取り付ける際には、立ち上げミラー9を透過していく光を遮らないように立ち上げミラー9と隆起部15dとの接着位置を考慮する。立ち上げミラー9,12はレンズホルダー16の下部に位置するように設けられているため、図2には図示されていない。
立ち上げミラー9は、短波長光学ユニット1から出射されビームスプリッタ7やコリメータレンズ8を通過してきた光束に対して傾斜して設けられているので、短波長光学ユニット1から到来する光束は、立ち上げミラー9を通過すると屈折され、対物レンズ10,13から遠ざかる向きに図5に示す距離dだけ移動する。
対物レンズ10と、対物レンズ10よりもレンズの軸上厚が厚く構成されている対物レンズ13は、図5に示すように、短波長光学ユニット1や長波長光学ユニット3から出射されビームスプリッタ7やコリメータレンズ8を通過した光が進んでくる方向に沿って、対物レンズ10,対物レンズ13の順で配置されている。言い換えると、図2に示すようにレンズホルダー16において、サスペンションホルダー17側から対物レンズ13,対物レンズ10の順で配置されている。
対物レンズ10,13をこのような配置とすることにより、レンズホルダー16が上下に駆動されても、光束が対物レンズ13や色消し回折レンズ14により遮られることがなくなるので、光ピックアップ装置を薄型化することが可能となる。
図6は、本実施の形態における光ディスク装置を示す斜視図である。図6に示す光ディスク装置301において、302はカバーで、カバー302は上カバー302aと下カバー302bで構成され、カバー302は一方の端部に開口302cを有した袋状の構成となっている。カバー302には、トレイ303が図6に示すX方向に挿抜自在に保持されており、トレイ303は樹脂材料などの軽量な材料で構成されている。トレイ303にはフロント部分にベゼル304が設けられており、このベゼル304はトレイ303をカバー302内に収納した際に開口302cを塞ぐようになっている。ベゼル304にはイジェクトボタン305が表出しており、このイジェクトボタン305を押すことで、図示していない機構によって、カバー302からトレイ303が図6に示すX方向にわずかに飛び出し、トレイ303はカバー302に対してX方向に出し入れ可能となる。
トレイ303には、ピックアップモジュール306が取り付けられている。ピックアップモジュール306には光ディスク2を回転駆動させるスピンドルモータ25が設けられており、更には、スピンドルモータ25に対して近づいたり離れたりする基台15が移動自在に設けられている。基台15には、詳しくは後述するが、レンズホルダー16が基台15に対して弾性的に移動可能に取り付けられている。レンズホルダー16には、対物レンズ10,13等が取り付けられている。基台15において、スピンドルモータ25に装着される光ディスク2の情報記録面と対向する面には、金属板で構成された基台カバー15fが取り付けられており、基台15に取り付けられたフレキシブル基板29やレンズホルダー16等の部品の少なくとも一部を覆っている。これにより、基台15に取り付けられた部品が、光ディスク2に接触することを防ぐことができ、また逆に、これらの部品を埃や電気的ノイズ等から保護することができる。
307,308は下カバー302bに保持され、しかもトレイ303の両側部に係合されたレールである。レール307,308は、下カバー302bとトレイ303とに対して、トレイ303を挿抜するX方向に所定の範囲で摺動可能に構成されている。
次に、ピックアップモジュール306に設けられた基台15についてより詳細に説明する。
図7は、基台15の全体斜視図である。なお説明のために、基台15から基台カバー15fやフレキシブル基板29等の部品を取り外した状態を示している。また、図7において、フォーカス方向とは、対物レンズ10,13の光軸の方向であり、スピンドルモータ25の回転軸と平行な方向でもある。トラッキング方向とは、サスペンションホルダー17においてサスペンション18が固定されている面に平行かつフォーカス方向に垂直な方向である。タンジェンシャル方向とは、フォーカス方向とトラッキング方向とに垂直な方向である。
基台15は、図3,図4を用いて説明したように、シャフト21,22に移動可能に取り付けられている。
基台15には、大まかに言って、短波長光を出射し受光する短波長光学ユニット1と、長波長光を出射し受光する長波長光学ユニット3と、対物レンズ10,13を搭載するレンズホルダー16とが設けられている。
レンズホルダー16は、サスペンション18によってサスペンションホルダー17に弾性的に支持されている。サスペンションホルダー17は、ヨーク部材32に接着などの手法により固定されており、ヨーク部材32もまた接着などの手法によって基台15に接合されている。
次に、基台15に取り付けられるヨーク部材32を含むレンズホルダー16周りの構成についてさらに詳細に説明する。
図8〜図11は、図7で説明した光ピックアップ装置からレンズホルダー16、サスペンションホルダー17、サスペンション18、ヨーク部材32等の部分を抜き出して示した図であり、図8は、光ピックアップ装置の斜視図、図9は、図8に示す光ピックアップ装置の平面図、図10は、図9に示す光ピックアップ装置のA−A矢視断面図、図11は、図9に示す光ピックアップ装置のB−B矢視断面図である。
以下、主に図8を用いて説明する。ヨーク部材32には、立設部32a,32b,32c,32e,32f,32g,32h,32i,32jが切り起こし加工などによってヨーク部材32に一体に設けられている。ヨーク部材32の下面には開口部32dが設けられており、この開口部32dからは、図4および図5に示す基台15に固定された図1および図5に示す立ち上げミラー9,12が入り込む構成となる。また、ヨーク部材32が図4および図5に示す基台15に取り付けられた際に、図7に示すシャフト21の中心軸とシャフト22の中心軸とで形成される平面に対して略平行となり開口部32dを形成する部分を、ヨーク部材32の主面部32kと称す。主面部32kに対して、立設部32a,32b,32c,32e,32f,32g,32h,32i,32jは略垂直に設けられる。
ヨーク部材32には、接着などの手法によりフォーカスマグネット136,137,138,139とトラッキングマグネット140,141,142,143とが設けられる。
フォーカスマグネット136は立設部32cに取り付けられてフォーカスコイル130に対向し、フォーカスマグネット137は立設部32cに取り付けられてフォーカスコイル131に対向し、フォーカスマグネット138は立設部32bに取り付けられてフォーカスコイル132に対向し、フォーカスマグネット139は立設部32aに取り付けられてフォーカスコイル133に対向している。それぞれのフォーカスマグネット136〜139はそれらのそれぞれに対向するフォーカスコイル130〜133に磁力を与える。またそれぞれのフォーカスマグネット136〜139とそれらのそれぞれに対向するフォーカスコイル130〜133との組み合わせは、それぞれタンジェンシャル方向に沿って配置されている。なお、本実施の形態ではヨーク部材32の剛性等を増すように、立設部32cを図8に示すトラッキング方向に広く形成したが、立設部32cを二つに分割し、その一方にフォーカスマグネット136を接着などによって取り付け、フォーカスマグネット137を他方に取り付けた構成としてもよい。
また、トラッキングマグネット140は立設部32gに取り付けられてトラッキングコイル134に対向し、トラッキングマグネット141は立設部32hに取り付けられてトラッキングコイル134に対向し、トラッキングマグネット142は立設部32iに取り付けられてトラッキングコイル135に対向し、トラッキングマグネット143は立設部32jに取り付けられてトラッキングコイル135に対向している。
さらにフォーカスマグネット136,137とトラッキングマグネット140,141,142,143とは、その底面の少なくとも一部を主面部32kに支持または固定されている。このような構成によりマグネットの位置決めが容易となる。
レンズホルダー16に設けられた各コイルには、サスペンション18を介して電流が流される。
次に、図9を参照して、レンズホルダー16の対物レンズ10,13を保持する部分の構成について説明する。
図9に示すようにレンズホルダー16は、それぞれ略同一形状に構成される対物レンズ支持面110d,110e,110f(対物レンズ支持面110と総称する。)、それぞれ略同一形状に構成される接着部111d,111e,111f,111g,111h,111i(接着部111と総称する。)、それぞれ略同一形状に構成される接着部113a,113b,113c(接着部113と総称する。)を有する。
図9に示すように、対物レンズ支持面110dと対物レンズ支持面110eと対物レンズ支持面110fとは、対物レンズ10(より正確には貫通孔16a)の周縁部に等間隔に配置されている。言い換えると、対物レンズ10(より正確には貫通孔16a)の中心から見て120度間隔で配置されている。そして、これら対物レンズ支持面110d,110e,110fの両端に、それぞれ接着部111dと接着部111e,接着部111fと接着部111g,接着部111hと接着部111iが配置されている。つまり、接着部111dと接着部111fと接着部111hは略等間隔に配置され、接着部111eと接着部111gと接着部111iも略等間隔に配置されていることとなる。このように、対物レンズ支持面110を対物レンズ10(より正確には貫通孔16a)の中心軸回りに略等角度となる間隔で配置することにより対物レンズ支持面110で対物レンズ10を安定して支持することができる。また、上に述べたように接着部111を配置することにより、接着部111に注入された接着剤が固化する時に収縮しても、対物レンズ10がレンズホルダー16から引っ張られる力は打ち消し合い、位置決めをした対物レンズ10がずれにくくなる。
本実施の形態において、対物レンズ10はガラスと樹脂とを組み合わせて構成されている。これにより、金型成型などの手法を用いることが可能となるので、対物レンズ10にホログラムを設けることが容易となり、複数種の波長の光の球面収差を調整することが可能となる。対物レンズ13はガラスで構成されている。
図11に示すように、レンズホルダー16には貫通孔16a,16bが設けられており、図11に示す矢印P1方向から対物レンズ10,13がそれぞれ貫通孔16a,16bに落とし込まれて、光硬化性接着剤などで固定される。このとき対物レンズ10,13の外周部がレンズホルダー16の貫通孔16a,16bの周縁部に当接する。また、光学部品11と1/4波長板19とは図11の矢印P2方向からそれぞれ貫通孔16a,16bに挿入され、やはり、光硬化性接着剤や瞬間接着剤などによって固定される。このときも光学部品11と1/4波長板19との外周部がレンズホルダー16の貫通孔16a,16bの周縁部に当接する。またこれらの部品は、フォーカス方向に光ディスク2側から見ると、対物レンズ10,光学部品11の順番で、また、対物レンズ13,1/4波長板19の順番でレンズホルダー16に配置されている。
また、レンズホルダー16のフォーカスコイル130,131側の端面には、レンズホルダー16から立設部32c側に突出したメカストッパー16dが、レンズホルダー16のフォーカスコイル132,133側の端面に、レンズホルダー16からサスペンションホルダー17側に突出したメカストッパー16eが設けられている。レンズホルダー16が、図11に示すフォーカス方向について対物レンズ10,13側に、つまり光ディスク2側に大きく動くと、メカストッパー16d,16eの上面が、図6で説明した基台カバー15fの裏面に当接し、レンズホルダー16の動きは規制され、それ以上光ディスク2側へは接近しない。
次に、ヨーク部材32に取り付けられるレンズホルダー16周りの構成についてさらに詳細に説明する。
図12および図13は、図8〜図11で説明した光ピックアップ装置からヨーク部材32を省略して示した図であり、図12は、斜視図、図13は、図12に示す光ピックアップ装置の平面図、図14は、図12に示す光ピックアップ装置の底面図である。図13は、光ディスク装置においてレンズホルダー16周りを、図6に示すZ方向から見た図、言い換えると対物レンズ10,13の光軸方向に光ディスク2側から見た図、さらに言い換えるとフォーカス方向に光ディスク2側から見た図となっている。
主に図12において、サスペンション18a〜18fはレンズホルダー16を挟むように片方に3本ずつ設けられている。サスペンション18a〜18fはサスペンションホルダー17とレンズホルダー16とを弾性的に連結しており、少なくともレンズホルダー16は所定の範囲で、サスペンションホルダー17に対して変位可能となっている。サスペンション18a〜18fの両端部はそれぞれレンズホルダー16とサスペンションホルダー17にインサート成型で固定されている。なお本実施の形態では、一方の3つのサスペンションを光ディスク2と対向する側からそれぞれサスペンション18a,18b,18cとし、もう一方の3つのサスペンションを光ディスク2と対向する側からそれぞれサスペンション18d,18e,18fとして、片方に3本ずつ、合計6本としたが、それ以上の数(例えば8本)のサスペンション18を設けても、それ以下の数(例えば4本)のサスペンション18を設けてもよい。
サスペンション18a〜18fは、その断面が略円形状や略楕円形状のワイヤもしくは矩形状などの多角形状のワイヤで構成してもよく、さらには板バネを加工することでサスペンション18としてもよい。サスペンション18a〜18fは、サスペンションホルダー17を下にして対物レンズ10,13の光の出射方向から見ると略ハの字型になっており、テンションが加えられている。これにより、小型化とサスペンション18の座屈方向の共振を低減させることが可能となる。
このサスペンション18a〜18fとレンズホルダー16に設けられた各コイルとの配線の一例について説明する。
図示していないが、フォーカスコイル131とフォーカスコイル133とは直列に接続されており、このコイル群の両端はそれぞれサスペンション18a,18bに接続され電気的に導通している。また、フォーカスコイル130とフォーカスコイル132とは直列に接続されており、このコイル群の両端はそれぞれサスペンション18d,18eに接続され電気的に導通している。さらに、トラッキングコイル134とトラッキングコイル135とは直列に接続されており、このコイル群の両端はそれぞれサスペンション18c、18fに接続され電気的に導通している。各コイルの端部とサスペンション18は例えば半田や鉛フリー半田などの金属系の接合材によって、電気的に接続されている。
また本実施の形態の光ピックアップ装置は、図9に斜線で示すように、サスペンションホルダー17と立設部32bと立設部32eとフォーカスマグネット138とでゲルポケット144を、サスペンションホルダー17と立設部32aと立設部32fとフォーカスマグネット139とでゲルポケット145を構成する。サスペンション18a〜18fの一部が貫通するこのゲルポケット144,145には、ダンピングを行うダンパーゲル等の弾性材料が充填されている。つまりサスペンション18a〜18fの一部、より正確にはサスペンション18a〜18fのサスペンションホルダー17側の根元の部分が弾性材料に包まれている。これによりレンズホルダー16をフォーカス方向やトラッキング方向に駆動するときに生じるサスペンション18a〜18fの不要共振を抑制することができる。弾性材料としては、紫外線照射等でゲル状になる材料を使用することが可能である。
図13に示すようにレンズホルダー16には、対物レンズ10,13が取り付けられている。
対物レンズ10の主点である対物レンズ主点10dは、図9において説明した対物レンズ支持面110の略球面の中心と略一致し、図11における貫通孔16aの略中心軸上にある。図13における対物レンズ10の光軸は、貫通孔16aの中心軸と略一致する。従って図13における対物レンズ主点10dは、貫通孔16aの中心軸と対物レンズ10の光軸の両方を示している。
対物レンズ13の主点である対物レンズ主点13dは、図11における貫通孔16bの略中心軸上にある。図13における貫通孔16bの中心軸は、対物レンズ13の光軸と略一致する。従って、図13における13dは、貫通孔16bの中心軸と対物レンズ13の光軸の両方を示している。
図13において、対物レンズ主点10dと対物レンズ主点13dとを共に通り、メカストッパー16d,16eの主面に対して垂直となる面を面10d−13dとする。面10d−13dはもちろん、貫通孔16aの中心軸と貫通孔16bの中心軸とをともに含む平面とも一致し、また、対物レンズ10の光軸と対物レンズ13の光軸とをともに含む平面とも略一致する。言い換えると面10d−13dは、レンズホルダー16のトラッキング方向の中心を通り、タンジェンシャル方向とフォーカス方向とで定義される面である。
次に、コイルの配置を図15を用いて説明する。
図15は、図8〜図11で説明した光ピックアップ装置の可動部を示す斜視図である。
図15に示すように、フォーカスコイル130,131,132,133は、それぞれ略リング状で略同一形状に巻線されており、レンズホルダー16の四隅にそれぞれ設けられている。トラッキングコイル134,135は、それぞれ略リング状で略同一形状に巻線されている。トラッキングコイル134,135のそれぞれのリング状中央の穴部は、レンズホルダー16のタンジェンシャル方向の中央付近にある十字形状のコイル取付部161j,161kの中心に設けられた磁性体16j,16kの周囲に巻線され、フォーカスコイル130とフォーカスコイル132との間、フォーカスコイル131とフォーカスコイル133との間にそれぞれ設けられている。言い換えれば、トラッキングコイル134,135は輪状に巻回されており、その輪状の内側には磁性体16j,16kが設けられている。そして、トラッキングコイル134,135は、それぞれトラッキングマグネット140とトラッキングマグネット141、トラッキングマグネット142とトラッキングマグネット143とに挟まれる位置に配置されている。このようなコイル配置にすることにより、レンズホルダー16の不要な傾きなどを抑制することができる。これらのコイル130〜135および磁性体16j,16kとレンズホルダー16との接合には、好ましくは熱硬化性接着剤が用いられるが、光硬化性接着剤やその他の接着剤を用いて接合することも同様に実施可能である。またコイル130〜135とレンズホルダー16を所定の位置に確実に配置することができれば、その他の方法を用いて接合してもよい。
コイルの配置についてさらに詳細に説明する。
フォーカスコイル130は、レンズホルダー16について、サスペンションホルダー17の反対側の端面に設けられており、レンズホルダー16のサスペンション18d,18e,18f側に設けられている。
フォーカスコイル131は、レンズホルダー16について、サスペンションホルダー17の反対側の端面に設けられており、レンズホルダー16のサスペンション18a,18b,18c側に設けられている。
フォーカスコイル132は、レンズホルダー16について、サスペンションホルダー17側の端面に設けられており、レンズホルダー16のサスペンション18d,18e,18f側に設けられている。
フォーカスコイル133は、レンズホルダー16について、サスペンションホルダー17側の端面に設けられており、レンズホルダー16のサスペンション18a,18b,18c側に設けられている。
また、トラッキングコイル134,135はそれぞれ、対物レンズ10および対物レンズ13が取り付けられた領域の両側に配置され、フォーカスコイル130とフォーカスコイル132,フォーカスコイル131とフォーカスコイル133に挟まれる位置に設けられている。
図13に戻って、130a,131a,132a,133aはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133の重心、130b,131b,132b,133bはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133における面10d−13dと反対側の外周部、130c,131c,132c,133cはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133における面10d−13d側の外周部、130d,131d,132d,133dはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133におけるサスペンションホルダー17側の巻回面、130e,131e,132e,133eはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133におけるサスペンションホルダー17と反対側の巻回面、130f,131f,132f,133fはそれぞれフォーカスコイル130,131,132,133における巻線中心軸である。
また、134a,135aはそれぞれトラッキングコイル134,135の重心、134b,135bはそれぞれトラッキングコイル134,135における面10d−13dと反対側の巻回面、134c,135cはそれぞれトラッキングコイル134,135における面10d−13d側の巻回面、134d,135dはそれぞれトラッキングコイル134,135におけるサスペンションホルダー17側の外周部、134e,135eはそれぞれトラッキングコイル134,135におけるサスペンションホルダー17と反対側の外周部、134f,135fはそれぞれトラッキングコイル134,135における巻線中心軸である。
巻線中心軸130fは重心130aを通り、外周部130bと外周部130cとからの距離が等しく、巻回面130d,130eと略垂直で、面10d−13dと略平行かつ貫通孔16a,16bの中心軸や対物レンズ10,13の光軸と略垂直な関係にある。言い換えると巻線中心軸130fは、スピンドルモータ25の回転軸と略垂直、さらにはスピンドルモータ25に装着された光ディスク2の主面とも略平行な関係にある。
巻線中心軸131f,132f,133fも、それぞれの重心131a,132a,133a、外周部131b,132b,133b、外周部131c,132c,133c、巻回面131d,132d,133d、巻回面131e,132e,133eと上述の関係にあり、またスピンドルモータ25やスピンドルモータ25に装着された光ディスク2の主面とも同じく上述の関係にある。つまり巻線中心軸130f,131f,132f,133fはそれぞれ略平行である。
また、巻線中心軸134fは重心134aを通り、外周部134d,134eとからの距離が等しく、巻回面134b,134cと略垂直で、面10d−13dと略垂直かつ貫通孔16a,16bの中心軸や対物レンズ10,13の光軸と略垂直な関係にある。言い換えると巻線中心軸134fは、スピンドルモータ25の回転軸と略垂直、さらにはスピンドルモータ25に装着された光ディスク2の主面とも略平行な関係にある。巻線中心軸135fも、その重心135a、巻回面135bおよび135c、外周部135dおよび135eと上述の巻線中心軸134fと同様の関係にあり、またスピンドルモータ25やスピンドルモータ25に装着された光ディスク2の主面とも同じく上述の巻線中心軸134fと同様の関係にある。巻線中心軸134f,135fは略平行である。
このように構成したことにより、光ピックアップ装置のフォーカス方向の投影面積が小さくなるので、光ピックアップ装置の可動部が基台15上で占める割合を小さくすることができ、部品点数の多い多波長対応型の光ピックアップ装置を小型に構成することが可能となる。
ここで、重心130a,131a,132a,133aのうち2点を結ぶ各線分を、線分130a−131a,132a−133a,130a−132a,131a−133a,130a−133a,131a−132aとし、重心134aと135aとを結ぶ線分を、線分134a−135aとする。
線分130a−132aは巻線中心軸130f,132fと一致し、線分131a−133aは巻線中心軸131f,133fと一致する。また、線分134a−135aは巻線中心軸134f,135fと一致する。
図13に示されるように、線分130a−131aの中点と線分132a−133aの中点と線分130a−133aの中点と線分131a−132aの中点と線分134a−135aの中点は、全て面10d−13d上に存在する。特に、線分130a−133aの中点と線分131a−132aの中点とは一点で交わり、この点を通りフォーカス方向に平行な直線上に線分134a−135aの中点が存在する。この直線を重心軸148と称する。
また、巻回面130dと巻回面131d、巻回面132eと巻回面133eはそれぞれ同一面内にあり、それぞれを含む面を、面130d−131d,面132e−133eとする。これら2つの面はそれぞれ略平行であり、面130d−131d,面132e−133eから線分134a−135aまでの距離が等しい。言い換えると、フォーカスコイル130からトラッキングコイル134までの距離、フォーカスコイル131からトラッキングコイル135までの距離、フォーカスコイル132からトラッキングコイル134までの距離、フォーカスコイル133からトラッキングコイル135までの距離は、全て等しい。
また、フォーカスコイル130からフォーカスコイル133までの距離と、フォーカスコイル131からフォーカスコイル132までの距離も等しい。
さらに、外周部130bと外周部132b、外周部131bと外周部133b、外周部130cと外周部132c、外周部131cと外周部133cは、それぞれ同一面内にあり、それぞれを含む面を、面130b−132b,面131b−133b,面130c−132c,面131c−133cとする。これら4つの面はそれぞれ、対物レンズ10の光軸と対物レンズ13の光軸とを含む面10d−13dと略平行である。フォーカスコイル130とフォーカスコイル131、フォーカスコイル132とフォーカスコイル133は、それぞれ面10d−13dに関して面対称であり、トラッキングコイル134とトラッキングコイル135も、面10d−13dに関して面対称である。また、フォーカスコイル130とフォーカスコイル132、フォーカスコイル131とフォーカスコイル133は、それぞれ線分134a−135aの延長線に関して線対称であり、さらにまた、フォーカスコイル130とフォーカスコイル133、フォーカスコイル131とフォーカスコイル132は、それぞれ重心軸148に関して線対称である。
さらに言えば、フォーカスコイル130〜133はそれらの巻回用の仮想中心軸がフォーカス方向とトラッキング方向とに対して垂直であるタンジェンシャル方向と略平行となるようホルダに配置されており、対物レンズ10および13が取り付けられた領域を矩形形状に囲うように四方に配置されている。トラッキングコイル134および135は、それらの巻回用の仮想中心軸がトラッキング方向と略平行となるようホルダに配置され、またそれらの仮想中心軸がタンジェンシャル方向において対物レンズ10および13との間に配置されている。トラッキングコイル134および135とそれぞれのトラッキングマグネットとは、タンジェンシャル方向に沿って配置されている。このように、フォーカスコイル130,131,132,133とトラッキングコイル134,135という6つのコイルをレンズホルダー16において上に述べたような分散した配置、つまり、レンズホルダー16が、輪状の独立したフォーカスコイル130,131,132,133とトラッキングコイル134,135とを有し、トラッキングコイル134は、フォーカスコイル130とフォーカスコイル132との間に配置され、トラッキングコイル135は、フォーカスコイル131とフォーカスコイル133との間に配置され、フォーカスコイル130,131,132,133の軸とトラッキングコイル134,135の軸が略平行に配置されたことにより、フォーカスコイルによる駆動点とトラッキングコイルによる駆動点とレンズホルダー16の重心を容易に一致させることができ、光ピックアップ装置の可動部を正確に駆動することが可能となる。
また、図13に示すように、レンズホルダー16にマスバランサ146,147を接着などの手法により設けることにより、コイルの駆動点とレンズホルダー16の重心をより一層容易に一致させることが可能となる。
また、コイルに電流を流すと発熱するが、コイルをレンズホルダー16において上述したような配置としたことにより、レンズホルダー16上の温度分布には大きな偏りが生じにくく、対物レンズ10,13は熱せられても、大きな歪みを生じることがない。
本実施の形態の光ピックアップ装置の可動部として考慮される主な構成としては、対物レンズ10,13と光学部品11とレンズホルダー16と1/4波長板19と図15に示されるようにサスペンション18a,18b,18c,18d,18e,18fの(長手部分を除いた)それぞれ一部とフォーカスコイル130,131,132,133とトラッキングコイル134,135とマスバランサ146,147とがあり、この他にもサスペンション18とコイルとを接続する半田や、レンズホルダー16と各部品とを固定する接着剤が考慮されることもある。本実施の形態の光ピックアップ装置は、可動部の重心とコイルの駆動点を一致させられるので、光ピックアップ装置の可動部を正確に駆動することが可能となる。
図16は、図15に示した光ピックアップ装置の可動部から、レンズホルダー16とサスペンション18とマスバランサ146,147とを省略した図であり、図17はこの図16のA−A矢視図である。図18は、図8〜図11で説明した光ピックアップ装置においてコイルとマグネットのみを示し、その他の部材を省略した図であり、図19は、図18のA−A矢視図、図20は、図18のB−B矢視図である。
図16,図17に示されるように、本実施の形態の光ピックアップ装置は4つの光学部品(対物レンズ10,13と、光学部品11と、1/4波長板19)が搭載されている。
図18,図19に示されるように、本実施の形態の光ピックアップ装置において、フォーカスマグネット136,137,138,139はそれぞれ多極着磁されている。フォーカスマグネット136,137,138,139のそれぞれに対向するフォーカスコイル130,131,132,133は、それぞれの上下2辺ずつに電磁力を受け、フォーカス方向に効率よく駆動されることになる。このため、それぞれのフォーカスコイルの巻数を少なくすることができ、フォーカスコイル自体をそして光ピックアップ装置の可動部を軽く構成することが可能となる。
また、本実施の形態の光ピックアップ装置において、トラッキングコイル134,135は、フォーカスコイルよりも巻数が多く、1つあたりの重量もフォーカスコイルの約2倍となっている。しかしこのトラッキングコイル134,135がレンズホルダー16の中央部に設けられ、軽量なフォーカスコイル130,131,132,133がレンズホルダー16の外端部に設けられたことにより、レンズホルダー16の高次共振周波数(二次共振周波数)が高くなる。
また、フォーカスコイル130,131,132,133、トラッキングコイル134,135のそれぞれに対して、専用のマグネット136〜143が設けられたことにより、光ピックアップ装置の可動部を高推力で駆動することができる。
ここで、光ディスク2に凹凸や反りがなく平坦であれば、光ピックアップ装置上の対物レンズ10,13から出射したレーザ光は光ディスク2の記録面でに反射し、再び対物レンズ10,13に返っていく。このとき、2対のフォーカスコイル130〜133には等しい電流が流され、また1対のトラッキングコイル134,135にも等しい電流が流されることにより、光ピックアップ装置はトラッキング方向、フォーカス方向に沿って平行移動させられる。しかし、実際には光ディスクには凹凸や反りがあるため、光ピックアップ装置上の対物レンズ10,13から出射したレーザ光は光ディスク2の記録面に垂直に入射せず、反射光の光軸がずれて、対物レンズ10,13に真っ直ぐには返ってこない。そこで、対物レンズ10,13の光軸が光ディスク2の反りに対して法線方向を指向するように、2対のフォーカスコイル130〜133に流す電流の大きさを異ならせ、光ピックアップ装置を傾かせる制御を行う。これにより対物レンズ10,13からの出射光は光ディスク2の記録面に垂直に入射し、その反射光が再び対物レンズ10,13に入射するようになるため、正確な記録再生が可能となる。これが、「本来のラジアルチルト」の動作である。
次に、本発明の特徴とする、トラッキングコイル134,135の配置と、このトラッキングコイル134,135に流す電流によってトラッキング方向の力を生じさせるトラッキングマグネット136〜139の磁極の向きによる作用について、図21〜図24を用いて説明する。
図21は、マグネットとコイルによって電磁力を発生させる一般的な配置を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。同図に示されるように、右左のトラッキングコイル134Xおよび135Xの巻回軸を左右それぞれの一対のトラッキングマグネット140Xと141Xおよび142Xと143Xの対面方向と平行に配置し、各対のトラッキングマグネットは、異磁極が対向するように配置する。各対のトラッキングマグネットの相対領域に、トラッキングコイル134Xと135Xの平行2辺の1辺が位置するようにする。この状態で図示のようにトラッキングコイル134Xと135Xに電流Iを流すと、各トラッキングコイル134Xと135Xには、それぞれ、フレミングの左手の法則に基づく移動力F01が生じる。その移動力F01は、F01=BLnIで表される。ここで、Bは対向するトラッキングマグネット間の磁束密度、Lは磁界内の導電体の有効長、nはトラッキングコイルのターン数である。トラッキングコイル134Xと135Xがトラッキングマグネット140Xと141Xおよび142Xと143Xの間にあるとき、各コイルの上部と下部には、向きの異なる電流Iが流れており、それぞれ微小力ΔF0RU,ΔF0RDとΔF0LU,ΔF0LDが生じているが、上下の電流に作用する磁束密度が同程度であれば、ΔF0RU≒ΔF0RD、ΔF0LU≒ΔF0LDとみなすことができ、これらの微小力はそれぞれのコイルの内部において相殺するので問題は生じない。
しかし、ブルーレーザ対応の光ディスクの記録再生を行う場合、DVDやCDなどに使用する長波長レーザに比べてレーザの波長が短いため、対物レンズ13における光源からのレーザ光の屈折率がより高くなる。なおかつ、高密度記録のために対物レンズのNA(開口数)を大きくしている場合は、対物レンズにおけるレーザ光の屈折率がさらに高くなる。したがって、ブルーレーザ対応の光ディスクの記録再生を行う場合は、長波長レーザを用いるDVDやCDよりもさらに対物レンズ13を光ディスクの記録面に接近させる必要があるため、光ピックアップ装置全体がフォーカス方向に上昇した位置で記録再生が行われる。その状態を図22に示す。この状態では、トラッキングコイル134Xと135Xは、図21の位置に比べ、トラッキング方向に上昇した位置にある。そうすると、図21の位置関係では相殺されていた微小力のΔF0RU,およびΔF0LUが生じていたコイル部分はトラッキングマグネット140Xと141Xおよび142Xの相対領域から上部に逸脱し、磁束密度が小さくなる。そうすると、それらのコイル上部の微小力ΔF1RU,およびΔF1LUは小さくなる。一方、コイル下部のΔF1RDとΔF1LDは図21の場合とほとんど変わらない大きさであり、かつ力の向きが逆であるため、回転モーメントが働き、トラッキングコイル134Xと135Xが取り付けられているレンズホルダー16を、その幅方向の中心を軸として回転させる。この偏位を、「不要なラジアルチルト」という。
この不要なラジアルチルトが生じると、長波長レーザ用の光ディスクではさほど問題にならなかったトラッキング性の悪化が、短波長のブルーレーザ用の光ディスクでは大きな問題となる。すなわち、本来の光ディスクの反りに対応しない、不要なラジアルチルトが発生し、対物レンズにより集光される光線が光ディスクに対する法線方向からずれてしまうので、光ディスクからの反射光が正確に対物レンズに入射せず、正確な記録再生が困難となる。
これに対し、本発明ではトラッキングコイル134,135を、その巻回用の仮想中心軸がトラッキング方向と略平行になるように配置し、このトラッキングコイルに磁界を与える1対のトラッキングマグネット140と141および142と143を、トラッキングコイル134,135を挟んで相対向させるとともに、その対向面が同じ磁極を有するようにしている。その電磁作用を、図23,図24により説明する。
図23は、本発明のトラッキングコイルとトラッキングマグネットの位置関係および発生する電磁力を示す正面図、図24は、トラッキングコイルがフォーカス方向に上昇した位置および発生する電磁力を示す正面図であり、いずれも図12、図15および図18における方向Cより見た図である。なお、図23および図24は、図12等におけるトラッキングコイル134について説明しているが、トラッキングコイル135およびトラッキングマグネット142,143についても、図12等における方向Cとは反対側より見ることにより、トラッキングコイル134およびトラッキングマグネット140,141と同様に説明することができる。但し、方向Cとは反対側より見たトラッキングコイル135に流れる電流の向きは逆(対称)であり、トラッキングマグネット142,143による磁力線の向きは同じであるので、トラッキングコイル135とトラッキングマグネット142,143により発生する電磁力はトラッキングコイル135から見れば逆向きとなる。しかし、ホルダー16全体からすれば、トラッキングコイル134により発生する電磁力とトラッキングコイル135により発生する電磁力は同じ方向となり、両トラッキングコイル134,135によりホルダー16を同じトラッキング方向に移動させることになる。
図23において、トラッキングコイル134は、同磁極が相対して配置されたトラッキングマグネット140と141の間に配置されており、図示のように電流を流すと、フレミングの左手の法則に基づき、トラッキングコイル134の左側の辺に流れる上向きの電流Iにより、紙面に向かう電磁力F02が発生する。また、トラッキングコイル134の右側の辺に流れる下向きの電流Iにより同じく紙面に向かう電磁力F02が発生する。したがって、トラッキングコイル134には全体として紙面に向かう2F02の力が発生する。トラッキングコイル135についてもトラッキングコイル134と同様の力が発生するため、図12および図15におけるレンズホルダー16は方向Cへ水平移動する。
ここで、図23におけるトラッキングコイル134の2つのタンジェンシャル方向の辺、すなわち上部aの部分の電流と下部bの部分の電流による電磁力は、理想的には0である。これは、電流Iの向きとトラッキングマグネット140および141がそれぞれ形成している磁界の向きが理想的には平行なためである。トラッキングマグネット140とトラッキングコイル141は互いに同じ磁極(本実施例においてはいずれもN極)を相手側に向けているので、これらが形成する磁界は互いに反発し、トラッキングコイル134付近では、実際には例えば図23に示すような磁界となる。従ってこのような場合には、トラッキングコイル134の2つのタンジェンシャル方向の辺、すなわち上部aの部分の電流と下部bの部分にも電磁力が働くことになる。しかしながら、もしこれらの場所に電磁力が発生したとしても、それは紙面に対して手前側に向かう力である。しかもトラッキングコイル134のタンジェンシャル方向の辺の長さはフォーカス方向の辺の長さよりも短く、トラッキングマグネット140および141からも離れており、そこにかかるトラッキングマグネット140および141からの磁力もフォーカス方向の辺にかかるそれより弱いと考えられる。したがって、前述の移動力F=BLnIの関係より、トラッキングコイル134のタンジェンシャル方向の辺にかかる紙面に対して手前側に向かう電磁力よりも、フォーカス方向の辺にかかる紙面に向かう電磁力F02のほうが支配的となるので、結果的にトラッキングコイル134は、紙面に向かう方向へ移動する。
以上の図23を主とする説明は、図12、図15および図18に示すトラッキングコイル135とトラッキングマグネット142および143を方向Cとは反対側から見た場合においても同様(対称)であり、トラッキングコイル135もトラッキングコイル134と同様に、方向Cへ移動する。従って、図12および図15におけるレンズホルダー16も方向Cへ水平移動する。この場合においてはトラッキングコイル134および135において異なる方向の電磁力が発生することが無く、レンズホルダー16をトラッキング方向に傾かせる力も発生しないため、不要なラジアルチルトは発生しない。
次に、ブルーレーザ対応の光ディスクの記録再生を行うために、図24に示すようにトラッキングコイル134を上昇させた位置でトラッキング方向の制御を行う場合、トラッキングコイル134に流す電流Iにより、図23と同様に全体として紙面に向かう2F12の力が発生するほか、上部aの部分で紙面から向かってくる力FUが生じる可能性があるが、その力FUは、トッキングコイル134の上部aの部分が長辺の部分より短くまたトラッキングマグネット140,141から離れて磁束密度が低くなっているためにトラッキングコイル134の長辺部分で発生する力F12よりも小さく、対向するトラッキングコイル135についても同様の向きの力が発生するために、レンズホルダー16を回転させる力としては作用しない。トラッキングコイル134の下部bの部分は、磁力線の向きと電流の向きが平行であるので電磁力は発生しないし、角部の内部で打ち消し合う。また、トラッキングコイル134の下端に流れる電流により力が発生してレンズホルダー16を回転させるモーメントが発生しても、互いの距離が近いので、モーメントとしては効かないし、タンジェンシャル方向のモーメントに対しては、サスペンション18でレンズホルダー16が支持されているため回転させる力とはならない。以上の動作は、トラッキングコイル134とトラッキングマグネット140,141についての説明であるが、トラッキングコイル135とトラッキングマグネット142,143についても同様(対称)であるため、説明を省略する。
このように、本発明のトラッキングコイルとトラッキングマグネットの配置により、不要なラジアルチルトは発生しにくくなる。そのため、トラッキングコイル134,135を、トラッキングマグネット140〜143より高く、対物レンズ13が光ディスクに接近する上限位置までの寸法及び配置に設計でき、トラッキングコイル134,135に流す電流の電磁力への変換効率を高めることができる。なお、トラッキングマグネット140〜143を同極で対向させると反発磁界であるため、磁束密度は異極を向き合わせるより小さくなるが、一つのトラッキングコイルの2辺に流れる異なる向きの電流を同じ向きの力に変換できるので、磁束密度の低下を補うことができる。