以下本発明について図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、本実施例1における光ピックアップ装置の構成を示す概略図である。なお、図1における二重波線のA側、つまり、短波長光学ユニット1、長波長光学ユニット3からコリメータレンズ8までは、光ピックアップ装置を図2におけるZ方向(紙面上方)から見た模式図であり、また、図1における二重波線のB側、つまり、立ち上げミラー9から光ディスク2までは、光ピックアップ装置を図2におけるR方向から見た模式図となっている。なお、光ディスクの径方向をトラッキング方向、光ディスク面に対して垂直な方向をフォーカス方向、対物レンズアクチュエータのトラッキング方向における中心を結んだ線を軸に回転する方向をラジアルチルト方向、トラッキング方向とフォーカス方向に対して垂直な方向をタンジェンシャル方向という。
図1において、1は短波長レーザを出射する短波長光学ユニットである。短波長光学ユニット1から出射される光は400nm〜415nmの波長であり、本実施例1では略405nmの光を出射するように構成した。本実施例1においては、短波長のレーザを出射する光源部1aと、光ディスク2から反射してきた光を受光する信号検出用の受光部1bと、光源部1aから出射された光の光量をモニターするように設けられた受光部1cと、光学部材1dと、それら構成部材を所定の位置関係に保持する保持部材(図示せず)とを含んでいる。光源部1aには、GaNもしくはGaNを主成分とする半導体レーザ素子(図示せず)が設けられており、この半導体レーザ素子から出射された光は光学部材1dに入射され、入射された光の一部は光学部材1dにて反射されモニター用の受光部1cに入る。図示していないが、このモニター用の受光部1cで光を電気信号に変換し、その電気信号を元に光源部1aから出射される光の強さを所望の強度に調整する回路などが設けられている。信号検出用の受光部1bは、光を電気信号に変換し、その電気信号よりRF信号、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号などを生成する。光学部材1d中にはフォーカスエラー信号を得ることができるように光ディスク2からの反射光を分離するホログラム1eが設けられている。
3は長波長のレーザを出射する長波長光学ユニットである。長波長光学ユニット3から出射される光は、640nm〜800nmの波長であり、一種の波長の光を単数出射したり、あるいは複数種の波長の光を複数出射する構成となっている。本実施例1では、略660nmの波長の光束(赤:例えばDVD対応)と略780nmの光束(赤外:例えばCD対応)を出射する構成とした。本実施例1においては、長波長のレーザを出射する光源部3aと、光ディスク2から反射してきた光を受光する信号検出用の受光部3bと、光源部3aから出射された光の光量をモニターするように設けられた受光部3cと、光学部材3dと、それら構成部材を所定の位置関係に保持する保持部材(図示せず)とを含んでいる。光源部3aには、半導体レーザ素子(図示せず)が設けられており、この半導体レーザ素子はモノブロックで構成され(モノリシック構造)、このモノブロックの素子から略660nmの波長の光束(赤)と略780nmの光束(赤外)を出射する。なお、本実施例1では、モノブロックの素子で2つの光束を出射する構成としたが、一つのブロック素子で一つの光束を出射する素子を2つ内蔵した構成としてもよい。この半導体レーザ素子から出射された複数の光束は光学部材3dに入射され、入射された光の一部は光学部材3dにて反射されモニター用の受光部3cに入る。信号検出用の受光部3bは、光を電気信号に変換し、その電気信号よりRF信号、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号などを生成する。なお、光学部材3dには、CD用のフォーカスエラー信号を生成するために光ディスク2からの反射光を複数本に分離して、それぞれ信号検出用の受光部3bの所定の場所に導くホログラム3eが設けられている。
4は短波長光学ユニット1から出射された光と光ディスク2からの反射光とが通過するビーム整形レンズである。ビーム整形レンズ4は、短波長のレーザの非点収差をおよび短波長光学ユニット1から光ディスク2に至る光路中で発生する非点収差を打ち消す目的で設けられている。また、ビーム整形レンズ4の両端にはそれぞれ凸部4a及び凹部4bが設けられており、短波長光学ユニット1から出射された光はまず凸部4aに入射して凹部4bから出射するようにビーム整形レンズ4は配置される。
5は光学部品で、光学部品5は光路上ビーム整形レンズ4の先に配置され、ビーム整形レンズ4の凹部4b側に配置される。すなわち、短波長光学ユニット1から出射された光はビーム整形レンズ4を介して光学部品5に入射されて光ディスク2へと導かれ、光ディスク2から反射してきた光は光学部品5、ビーム整形レンズ4を順に経由して短波長光学ユニット1に入射される。光学部品5にはホログラムなどが設けられており、光ディスク2から反射してきた光を主にトラッキングエラー信号を生成するように所定の光束に分離させる。
6は長波長光学ユニット3から出射された長波長の光が通過するリレーレンズで、リレーレンズ6は樹脂やガラスなどの透明部材にて構成される。リレーレンズ6は長波長光学ユニット3から出射された光を効率よく後方の部材に導くように設けられる。
7は光学部材であるビームスプリッタである。ビームスプリッタ7中には少なくとも2つの透明部材7b、7cが接合して設けられており、透明部材7b、7cの間には一つの波長選択膜が設けられた傾斜面7aが設けられている。短波長光学ユニット1から出射された光が入り込む透明部材7cの傾斜面7aには波長選択膜が直接形成されており、この波長選択膜が形成された透明部材7cの傾斜面7aに樹脂やガラス等の接合材を介して透明部材7bが接合されている構成となっている。
8は移動自在に保持されたコリメータレンズである。コリメータレンズ8はスライダ8bに取り付けられ、スライダ8bは略平行に設けられた1対の支持部材8aに移動可能に取り付けられている。ヘリカル状の溝が設けられたリードスクリュー8cが支持部材8aに対して略平行となるように設けられており、このリードスクリュー8cの溝に入り込む突起がスライダ8bの端部に設けられている。リードスクリュー8cにはギア群8dが結合されており、ギア群8dにはステッピングモータからなる駆動部材8eが設けられている。駆動部材8eの駆動力はギア群8dを介してリードスクリュー8cに伝えられ、しかもその駆動力によってリードスクリュー8cは回転し、その結果スライダ8bは支持部材8aに沿って移動する。この様に、コリメータレンズ8をビームスプリッタ7に近づけたり離したりする構成を採用することで、球面収差の調整を容易に行うことができる。本実施例1では、短波長の光の球面収差の補正を行う構成として駆動部材8eにてコリメータレンズ8を移動させる構成としたが、その他の構成によって、コリメータレンズ8を移動させてもよいし、他の手段を用いて短波長の光の球面収差を調整する構成としてもよい。
9は立ち上げミラーであり、立ち上げミラー9には短波長の光に対して作用する1/4波長部材9aが設けられている。この1/4波長部材9aとしては、二度(往路と復路で)通過した光の偏光方向を略90度回転させる1/4波長板が好適に用いられる。立ち上げミラー9において各ユニット1、3から出射された光が入射する面には波長選択膜9bが設けられており、長波長光学ユニット3から出射された長波長の光をほとんど反射し、短波長光学ユニット1から出射された短波長の光をほとんど透過させる機能を有する。
10は長波長レーザ用の対物レンズで、対物レンズ10は立ち上げミラー9から反射してきた光を光ディスク2に集光させる。本実施例1では対物レンズ10を用いたが、ホログラム等その他の集光部材で構成してもよい。
11は対物レンズ10と立ち上げミラー9の間に設けられた光学部品で、光学部品11はDVD(略660nmの波長の光)及びCD(略780nmの波長の光)の光ディスク2に対応可能な様に必要な開口数を実現するための開口フィルタと、略660nmの波長の光に対して反応する偏光ホログラムと、1/4波長部材(好適には1/4波長板)を具備している。光学部品11は、誘電体多層膜や回折格子開口手段などで構成される。偏光ホログラムは略660nmの光に対して偏光を加える(略660nmの波長の光をトラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号用の光に分離する)。
12は短波長の光をほとんど反射する立ち上げミラーで、立ち上げミラー12には反射膜が設けられている。
13は対物レンズで、対物レンズ13は立ち上げミラー12から反射してきた光を光ディスク2に集光させる。本実施例1では対物レンズ13を用いたが、ホログラム等その他の集光部材で構成してもよい。対物レンズ13はガラスで構成されたり、あるいは樹脂で構成されるが、対物レンズ13を樹脂で構成する場合には好ましくは、耐短波長光樹脂(短波長によって劣化しないあるいは劣化しにくい樹脂)で構成される。
14は対物レンズ13と立ち上げミラー12の間に設けられた色消し回折レンズで、色消し回折レンズ14は色収差を補正するという機能を有する。色消し回折レンズ14は短波長の光が通過する各光学部品などで生じる色収差を打ち消して低減させるように設けられている。
以上のように構成された光学系の具体的な配置について説明する。
図2は実際に、図1で示した光ピックアップ装置の光学構成を具現化した例を示す平面図であり、図1に示す各部材とは多少形状などが異なるが、機能などはほぼ同じである。図3は、本実施例1における光ピックアップ装置の基台15の全体斜視図である。
15は基台で、基台15は上述の各部材が固定あるいは移動可能に取り付けられている。基台15には短波長光を出射し受光する短波長光学ユニット1と、長波長光を出射し受光する長波長光学ユニット3と、対物レンズ10、13を搭載するレンズ保持部としてのレンズホルダ16とが設けられており、シャフト21、22に移動可能に取り付けられている。基台15は、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの金属あるいは金属合金材料で構成され、量産的な面から好ましくはダイカスト製法などを用いて構成されている。
17はサスペンションホルダで、このサスペンションホルダ17は後述するヨーク部材を介して各種接合手法によって基台15に取り付けられており、レンズホルダ16とサスペンションホルダ17は複数本のサスペンション18を介して結合されており、レンズホルダ16は基台15に対して所定の範囲で移動可能なように支持される。レンズホルダ16には対物レンズ10、13および光学部品11、色消し回折レンズ14(図1参照)等が取り付けられており、レンズホルダ16の移動によって、レンズホルダ16とともに、対物レンズ10、13および光学部品11、色消し回折レンズ14も移動する。21、22は、基台を半径方向に移動可能とするシャフトである。25は、光ディスク2を載せるスピンドルモータである。
次に、基台15に取り付けられる対物レンズアクチュエータの構成について説明する。
図4は本実施例1における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの斜視図である。図5(a)は本実施例1における光ピックアップ装置の対物レンズアクチュエータの平面図であり、図5(b)は図5(a)の対物レンズアクチュエータをA方向から見た側面図である。図6(a)は本実施例1における対物レンズアクチュエータにおいて対物レンズ10、13とマグネット41〜44と、トラッキングコイル51、52と、フォーカスコイル61〜64のみの配置を示した斜視図で、図6(b)は図6(a)からマグネット41〜44を除いた斜視図である。図7(a)は図6(a)のB−B矢視図、図7(b)は図6(a)のC−C矢視図である。図8は図6(a)において、トラッキングコイル51、52、フォーカスコイル61〜64がマグネット41〜44の磁場に影響を受ける部分を斜線で表した斜視図である。
なお、対物レンズアクチュエータとは前述した対物レンズ10、13、レンズホルダ16、サスペンションホルダ17、サスペンション18、ヨーク部材32と、後で説明するマグネット41〜44、略四角形の形状をしたトラッキングコイル51、52、略四角形の形状をしたフォーカスコイル61〜64によって構成される対物レンズを駆動するために必要なメカ機構である。
図4、図5(a)、図5(b)に示すようにヨーク部材32には磁路形成部32a、32b、32c、32d、連結部32e、32f、32g、結合部32jが切り起こし加工や折り曲げ加工などによって、主面部32hから略垂直に一体で設けられている。磁路形成部32a、32b、32c、32dはマグネット41~44を固定するとともに、マグネット41〜44から発生する磁束の一部を磁路形成部32a〜32dのマグネット41〜44側でない側を回り込むようにしてマグネット41〜44に戻るようにしている。連結部32e、32f、32gは対物レンズアクチュエータを基台に固定させるために、連結部32e、32fの両脇に設けられたボス部を、また連結部32gは両脇に設けられた突起部を基台15に接着させる。また、主面部32hの一端部には連結部32gが立ち上がっており、他方の端部ではサスペンションホルダ17を保持している。主面部32hの中央にはくぼみが設けられており、立設部32a、32b、32c、32dはそのくぼみの部分から立ち上がっている。結合部32jは、主面部3hの磁路形成部32a、32b側と磁路形成部32c、32d側とをつなぐ。連結部32gから主面部32hにかけては開口部32iが設けられており、この開口部32iからは図1で示した立ち上げミラー9、12が入り込む構成となっている。
41、42、43、44は単極着磁のマグネットであり、ヨーク部材32に接着などの手法によりレンズホルダ16の重心を中心に対称に配置されている。51、52はトラッキングコイルであり、それぞれ略四角形で略同一形状に巻線されている。61、62、63、64はフォーカスコイルであり、それぞれ略四角形で略同一形状に巻線されている。磁路形成部32a〜32dはマグネット41〜44とタンジェンシャル方向に隣り合い、必ずレンズホルダ16の中央に近い側にマグネット41〜44を配置する。また、マグネット41〜44から発生する磁束には、対のマグネット41と42及び43と44の間で直線状の磁場を形成して対物レンズアクチュエータを駆動する磁束と、対のマグネット以外の方向に向かって直線状の磁場を形成しない磁束とがある。その直線状の磁場を形成しない磁束は、磁路形成部32a〜32dのマグネット41〜44側でない側を回り込むようにしてマグネット41〜44に戻る。
トラッキングコイル51、52はレンズホルダ16のタンジェンシャル方向の重心を通る直線上にレンズホルダ16を挟んだ両側に配置される。図7(b)に示すように、本実施例1ではトラッキングコイル51、52の巻回用に仮想中心軸51a、52aがタンジェンシャル方向に対して略平行となるように配置する。
図6〜図8に詳しく示すようにそのトラッキングコイル51、52を挟み込むようにして、フォーカスコイル61〜64が配置される。すなわち、フォーカスコイル61、62でトラッキングコイル51を、またフォーカスコイル63、64でトラッキングコイル52を挟んでいる。すなわち、本実施例1のようにトラッキングコイル51、52の巻回用に仮想中心軸51a、52aがタンジェンシャル方向に対して略平行となるように配置すれば、フォーカスコイル61〜64を、より対物レンズアクチュエータの重心に近い位置に配置することができる。
図6(b)に示すように本実施例1ではフォーカスコイル61〜64の巻回用に仮想中心軸61a、62a、63a、64aがフォーカス方向に対して略平行となるように配置する。本実施例1ではフォーカスコイル61〜64の巻回用に仮想中心軸61a、62a、63a、64aがフォーカス方向に対して略平行となるように配置しているので、フォーカスコイル61〜64の中空部の中にヨーク32の磁路形成部32a、32b、32c、32dとともにマグネット41〜44を配置することができる。その結果、ヨークの磁路形成部32a、32b、32c、32dとマグネット41〜44を対物レンズアクチュエータの重心に近い位置に配置することができる。
本実施例1ではマグネット41のS極の面とマグネット42のN極の面、またマグネット43のN極の面とマグネット44のS極の面は対向している。もちろん本実施例1とは電流を流す向きを逆にして、マグネット41のN極の面とマグネット42のS極の面、またマグネット43のS極の面とマグネット44のN極の面を対向させてもよい。
このように配置することによって図8の矢印で示すように、マグネット41からマグネット42に向かって、またマグネット44からマグネット43に向かって直線状に磁場が発生する。したがって図8の斜線で示されるトラッキングコイル51、52のタンジェンシャル方向に平行でレンズホルダ16により遠い側の辺51b、52bの一部と、フォーカスコイル61〜64のトラッキング方向に平行でマグネット41〜44に挟まれている辺61b、62b、63b、64bの一部がマグネット41〜44によって発生する磁場の領域に位置し、磁場の影響を受ける。すなわち本実施例1の光ピックアップ装置では4つのマグネット41~44によって発生する2つの直線状の磁場のなかに、対物レンズアクチュエータの中央に集中して配置したトラッキングコイルの辺51b、52bの一部とフォーカスコイルの辺の61b、62b、63b、64bの一部が配置されている。したがって、4つの単極着磁のマグネット41~44のみで、対物レンズアクチュエータをトラッキング方向、フォーカス方向、ラジアルチルト方向の全方向に駆動させることができる。
なお、トラッキングコイル51、52は、その中空部にヨークを設けることで仮想中心軸51a、52aがトラッキング方向に対して略平行となるように配置してもよい。また、フォーカスコイル61〜64は、その仮想中心軸61a、62a、63a、64aがタンジェンシャル方向に略平行となるように配置しても良い。その場合、フォーカスコイル61〜64のトラッキング方向に平行な2辺のうち、一方だけがマグネット41〜44による磁場の領域に入るように配置する必要がある。
次に、ヨーク部材32に取り付けられるレンズホルダ16周りの構成についてさらに詳細に説明する。
図5(a)において、サスペンション18はレンズホルダ16を挟むように片方に3本ずつ設けられている。サスペンション18はサスペンションホルダ17とレンズホルダ16とを弾性的に連結しており、少なくともレンズホルダ16は所定の範囲で、サスペンションホルダ17に対して変位可能となっている。サスペンション18の両端部はそれぞれレンズホルダ16とサスペンションホルダ17に接着や半田付けもしくはインサート成型等の各種固定方法で固定されている。なお本実施例1では、片方に3本ずつ、合計6本としたが、それ以上の数(例えば8本)のサスペンション18を設けても、それ以下の数(例えば4本)のサスペンション18を設けてもよい。
サスペンション18は、その断面が略円形状や略楕円形状のワイヤもしくは矩形状などの多角形状のワイヤで構成してもよく、さらには板バネ等の薄板を加工することでサスペンション18としてもよい。トラッキングコイル51、52とフォーカスコイル61〜64のそれぞれの端部とサスペンション18は、例えば半田や鉛フリー半田などの金属系の接合材によって、電気的に接続されている。そしてトラッキングコイル51、52とフォーカスコイル61〜64には、サスペンション18を介して電流が流れる。なお、本実施例1においてはフォーカスコイル61と62に流れる電流とフォーカスコイル63と64に流れる電流とを独立して制御することができ、ラジアルチルト方向にレンズホルダ16を駆動できるようになっている。
次に、トラッキング方向の力を発生させるためのトラッキングコイル51、52に流す電流とマグネット41~44の磁極の向きについて説明する。
図9は、本実施例1におけるマグネット41、44とトラッキングコイル51、52の配置を示す図で、図9(a)は図7(b)から対物レンズ10とフォーカスコイル61、64を除いた正面図、図9(b)は本実施例1におけるマグネット41、44とトラッキングコイル51、52を上から見た平面図である。図9(b)に示されるように、右左のトラッキングコイル51、52の巻回軸を左右それぞれの一対のマグネット41、42および43、44の対面方向と平行に配置し、各対のマグネット41〜44は、異磁極が対向するように配置する。また図8で説明したが、各対のマグネット41〜44の磁場の領域に、トラッキングコイル51、52のタンジェンシャル方向に平行でレンズホルダ16により遠い側の辺51a、52aの一部が位置するようにする。この状態で図示のようにトラッキングコイル51、52に電流Iを流すと、各トラッキングコイル51、52には、それぞれ、フレミングの左手の法則に基づく移動力F01が生じる。その移動力F01はトラッキング方向に作用し、F01=BLnIで表される。ここで、Bは対向するマグネット間の磁束密度、Lは磁界内の導電体の有効長、nはトラッキングコイル51、52のターン数である。また、トラッキングコイル51と52がマグネット41、42および43、44の間にあるとき、図7における辺51b、52bと垂直である2つの辺には、向きの異なる電流Iが流れており、図8に示すようにそれぞれ微小力ΔF0RU、ΔF0RDとΔF0LU、ΔF0LDが生じる。これらの微小力ΔF0RUとΔF0RD、ΔF0LUとΔF0LDは、ΔF0RU≒ΔF0RD、ΔF0LU≒ΔF0LDとみなすことができ、これらの微小力はそれぞれのコイルの内部において相殺するので問題は生じない。さらに、図8における辺51b、52bと平行であるもう1つの辺は、各対のマグネット41~44の磁場の領域に位置しないので電磁力は生じない。このようにして、トラッキングコイル51、52とマグネット41〜44によってトラッキング方向に力が作用し、対物レンズアクチュエータをトラッキング方向に駆動させることができる。
次に、フォーカス方向の力を発生させるためのフォーカスコイル61~64に流す電流とマグネットの磁極の向きについて説明する。
図10は、本実施例1におけるマグネット41〜44とフォーカスコイル61〜64の配置を示すもので、図10(a)はマグネット41〜44とフォーカスコイル61〜64を上から見た正面図、図10(b)はマグネット41〜44とフォーカスコイル61〜64をレンズホルダのタンジェンシャル方向の側面側から見た平面図である。図10に示されるように、各フォーカスコイル61〜64の巻回軸を左右それぞれの一対のマグネット41、42および43、44の対面方向と垂直に配置する。図8で説明したように、各対のマグネット41~44の磁場の領域に、フォーカスコイル61〜64のトラッキング方向に平行であってマグネット41〜44に挟まれている辺61b、62b、63b、64bの一部が位置するようにする。この状態で図示のようにフォーカスコイル61〜64に電流Iを流すと、各フォーカスコイル61〜64には、それぞれフレミングの左手の法則に基づく移動力F02が生じる。その移動力F02はフォーカス方向に作用し、F02=BLnIで表される。また、図8における辺61b〜64bと垂直及び平行である他の3つの辺は、各対のマグネット41~44の磁場の領域に位置しないので電磁力は生じない。このようにして、フォーカスコイル61~64とマグネット41〜44によってフォーカス方向に力が作用し、対物レンズアクチュエータをフォーカス方向に駆動させることができる。
また、本実施例1においてはフォーカスコイル61、62に流れる電流とフォーカスコイル63、64に流れる電流とを独立して制御することができる。例えばフォーカスコイル61、62に流れる電流をフォーカスコイル63、64に流れる電流よりも大きくすると、フォーカスコイル61、62に生じる移動力はフォーカスコイル63、64に生じる移動力よりも大きくなる。この移動力の差により、対物レンズアクチュエータはラジアルチルト方向に駆動する。もちろん、フォーカスコイル63、64に流れる電流をフォーカスコイル61、62に流れる電流よりも大きくすることで、フォーカスコイル63、64に生じる移動力をフォーカスコイル61、62に生じる移動力よりも大きくすることもできる。
このような構成によって対物レンズアクチュエータをラジアルチルト方向に駆動させることで、光ディスクの反りに対応することができる。すなわち、光ディスクにはその半径方向等によって反りがあり、その反りの角度に応じて対物レンズアクチュエータをラジアルチルト方向に傾けることで、レーザ光を光ディスクの記録面に対して垂直に入射させることができる。
なお、新たなフォーカスコイルを加えることでフォーカスコイル61、62に流れる電流とフォーカスコイル63、64に流れる電流とは独立して制御しなくてもラジアルチルト方向に駆動することができる。すなわち、新たなフォーカスコイルをフォーカスコイル61、62側とフォーカスコイル63、64側にそれぞれ設ける。その新たな1対のフォーカスコイルに流れる電流を独立して制御することで、フォーカスコイル61、62側に生じる移動力とフォーカスコイル63、64側に生じる移動力に差が生じる。この移動力の差により、対物レンズアクチュエータはラジアルチルト方向に駆動する。
次に、本発明の光ピックアップ装置における対物レンズアクチュエータではなぜヨーイングが起こらないかを説明する。
まず、対物レンズアクチュエータがトラッキング方向に駆動する場合について説明する。前述したように、従来の光ピックアップ装置ではトラッキングコイルを対物レンズアクチュエータの四隅に1つずつ配置している。対物レンズアクチュエータに設けられるマグネットとトラッキングコイルにおいては、ギャップのばらつきやマグネットの磁束密度のバラツキによってトラッキングコイルに発生する電磁力にバラツキが生じることがある。トラッキングコイルに発生する電磁力にバラツキが生じると、四隅に備えられたトラッキングコイルと磁石からなる複数の電磁駆動手段で発生する複数の電磁力のバランスが崩れる。このとき、例えばトラッキング方向に隣り合う2つのトラッキングコイルで発生する電磁力の和が、他方の2つのトラッキングコイルで発生する電磁力の和よりも一定以上大きくなった状態で対物レンズアクチュエータをトラッキング方向に駆動したとき、対物レンズアクチュエータの中心を軸として水平面上で対物レンズアクチュエータがヨーイングを起こす。このとき、4つのトラッキングコイルが2つずつに分かれてタンジェンシャル方向に対して離れているため、対物レンズアクチュエータの重心とトラッキングコイルとの距離も大きくなることから回転の際のモーメントが大きくなるので、より回転しやすくなる。
しかしながら、本実施例1の光ピックアップ装置に設けられるトラッキングコイル51、52は2つであり、図5(a)に示すようにトラッキングコイル51、52はレンズホルダ16のタンジェンシャル方向の重心を通る直線上で配置されている。したがって、たとえトラッキングコイル51、52に関する電磁力のバランスが崩れたとしても、トラッキング方向に向かって位置がずれるため、通常のトラッキング制御を行うことで正常な位置に修正することができる。
次に、対物レンズアクチュエータがフォーカス方向に駆動する場合について説明する。本実施例1の光ピックアップ装置に設けられるフォーカスコイル61~64は、その中空部がフォーカス方向に向かって貫通するように配置されている。また、マグネット41〜44はフォーカスコイル61〜64の中空部に配置され、マグネット41〜44によって生じる磁界の領域に位置する辺の一部とは図8における61b〜64bの一部のみである。したがって、マグネット41〜44によって発生する直線状の磁場とフォーカスコイル61〜64によって生じる電磁力はフォーカス方向のみであり、対物レンズアクチュエータの水平面上に電磁力は生じないため、ヨーイングが起こることはない。
次に、本発明の光ピックアップ装置ではなぜ2次共振モードの発生を容易に制御することができるのかについて説明する。
従来の対物レンズアクチュエータでは四隅にトラッキングコイルを配置していたが、本実施例1の光ピックアップ装置ではトラッキングコイル51、52をレンズホルダ16のタンジェンシャル方向の重心を通る直線上にレンズホルダ16を挟んだ両側に配置し、トラッキングコイル51、52を挟み込むようにして、フォーカスコイル61〜64が配置される。したがって、対物レンズアクチュエータの重心に非常に近い位置に集中して配置されているため、光ピックアップ装置の四隅における重量物の負担が小さい。そのため2次共振モードの共振周波数が高くなるので、その制御が容易になる。
なお、本実施例1ではトラッキングコイル51、52の巻回用に仮想中心軸51a、52aがタンジェンシャル方向に対して略平行となるように配置することで、フォーカスコイル61〜64を、より対物レンズアクチュエータの重心に近い位置に配置することができるので、2次共振モードの発生を、より容易に制御することができる。また、フォーカスコイル61〜64の巻回用に仮想中心軸61a、62a、63a、64aがフォーカス方向に対して略平行となるように配置しているので、フォーカスコイル61〜64の中空部の中にヨークの磁路形成部32a、32b、32c、32dとともにマグネット41〜44を配置することができる。その結果、ヨークの磁路形成部32a、32b、32c、32dとマグネット41〜44を対物レンズアクチュエータの重心に近い位置に配置することができるので、2次共振モードの発生を、より容易に制御することができる。
さらに、本実施例1の光ピックアップ装置は4つの単極着磁のマグネット41〜44によって発生する2つの直線状の磁場のなかに図8におけるトラッキングコイルの辺51b、52bの一部とフォーカスコイルの辺61b、62b、63b、64bの一部が配置する構造としているため、単極着磁のマグネット4つのみで、対物レンズアクチュエータをトラッキング方向とフォーカス方向の両方向に駆動させることができる。したがって、従来のマグネットを7個や13個も使用した光ピックアップ装置に比べて安価で小型化・減量化した光ピックアップ装置を実現できる。また、多極着磁のマグネットで問題となっていた次のことを解決できる。すなわち、本実施例1の光ピックアップ装置で用いる単極着磁マグネット41〜44は低コストであり、磁力を持たないニュートラルゾーンがないので効率が良い。さらに、対の単極着時のマグネット41〜44の間には直線状の磁場が発生するためトラッキングコイル51、52及びフォーカスコイル61〜64とのギャップの変化に鈍感であり、ギャップのバラツキに強い。
これらのことから本発明の光ピックアップ装置は、従来の対物レンズアクチュエータを駆動させたときに発生するヨーイングを防ぐことでトラッキング制御の精度を向上させるとともに、2次共振モードの共振周波数を高くすることで対物レンズアクチュエータのフォーカス方向の位置を安定化させることができる。さらに、4つの単極着磁のマグネット41~44によって対物レンズアクチュエータの駆動を可能とするので、光ピックアップ装置の軽量化、小型化、低コスト化を実現することができる。
(実施例2)
本実施例2では、実施例1において説明した光ピックアップ装置を用いた光ディスク装置について説明する。
図11は、本実施例2における実施例1において説明した光ピックアップ装置を用いた光ディスク装置を示す斜視図である。図11に示す光ディスク装置301において、302はカバーで、カバー302は上カバー302aと下カバー302bで構成され、カバー302は一方の端部に開口302cを有した袋状の構成となっている。カバー302には、トレイ303が図11に示すX方向に挿抜自在に保持されており、トレイ303は樹脂材料などの軽量な材料で構成されている。トレイ303にはフロント部分にベゼル304が設けられており、このベゼル304はトレイ303をカバー302内に収納した際に開口302cを塞ぐようになっている。ベゼル304にはイジェクトボタン305が表出しており、このイジェクトボタン305を押すことで、図示していない機構によって、カバー302からトレイ303が図11に示すX方向にわずかに飛び出し、トレイ303はカバー302に対してX方向に出し入れ可能となる。
トレイ303には、実施例1において説明した光ピックアップ装置306が取り付けられている。光ピックアップ装置306には光ディスク2を回転駆動させるスピンドルモータ25が設けられており、更には、スピンドルモータ25に対して近づいたり離れたりする基台15が移動自在に設けられている。基台15には、レンズホルダ16が基台15に対して弾性的に移動可能に取り付けられている。レンズホルダ16には、対物レンズ10,13等が取り付けられている。基台15において、スピンドルモータ25に装着される光ディスクの情報記録面と対向する面には、金属板で構成された基台カバー15fが取り付けられており、基台15に取り付けられたフレキシブル基板やレンズホルダ16等の部品の少なくとも一部を覆っている。これにより、基台15に取り付けられた部品が、光ディスクに接触することを防ぐことができ、また逆に、これらの部品を埃や電気的ノイズ等から保護することができる。
307、308は下カバー302bに保持され、しかもトレイ303の両側部に係合されたレールである。レール307、308は、下カバー302bとトレイ303とに対して、トレイ303を挿抜するX方向に所定の範囲で摺動可能に構成されている。
図11に示される光ディスク装置に本発明の実施例1における光ピックアップ装置306を搭載することにより、長波長レーザ用の光ディスクと短波長のブルーレーザ対応の光ディスクに対応した光ディスク装置であっても、対物レンズアクチュエータをフォーカス方向はもちろんトラッキング方向に駆動した場合でもヨーイングを発生させないことでトラッキング制御の精度を向上させる。また、アクチュエータにおける2次共振モードの発生を容易に制御することができるので、光ディスクに対する情報の記録や再生を安定化させることができる。さらに、4つの単極着磁のマグネットで駆動することができるため、光ディスク装置の軽量化、小型化、低コスト化を実現することができる。