JP5082272B2 - 容器用樹脂被覆鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、環境負荷が少ない容器用樹脂被覆鋼板およびその製造方法に関する。
樹脂を表面に被覆した金属板は、耐食性や意匠性に優れており、容器や建材の材料として広く用いられている。ところで、従来使用されていた樹脂被覆金属板とは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を被覆した金属板である。これらについては特許文献1〜3等に記載がある。
特開平7−241956号公報 特開平5−212799号公報 特開2002−120324号公報
上記の樹脂は、石油や石炭等の化石資源を原料とする。したがって、資源の枯渇が問題である。また、樹脂被覆金属板をスクラップとして回収して電気炉などで溶解させ、精錬、鋳造、圧延等の処理を行って再び金属製品としてリサイクルする過程で、被覆樹脂が燃焼して炭酸ガスが排出され、地球温暖化が進行するという問題もある。
本発明は、化石資源の枯渇を抑制でき、樹脂被覆金属板をリサイクルする場合もその工程で地球環境中への炭酸ガス増加を防止できるような容器用樹脂被覆鋼板を提供することを目的とする。
本発明は鋼板の少なくとも一方の表面に接着剤を用いずに熱圧着したポリ乳酸系樹脂フィルムを有することを特徴とする容器用樹脂被覆鋼板であり、また、鋼板とポリ乳酸系樹脂フィルムとを接着剤を用いずに220〜350℃の温度範囲で熱圧着することを特徴とする容器用樹脂被覆鋼板の製造方法である。
以下本発明を詳しく説明する。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂とは、トウモロコシなどの穀物でんぷんを原料とする樹脂であり、でんぷんの乳酸発酵物、L−乳酸発酵物、D−乳酸発酵物をモノマーとする重合体である。一般にそのダイマーであるラクタイドの開環重合法、および直接重合法により製造される。ポリ乳酸系樹脂は、植物を原料としており、焼却時に発生する二酸化炭素は植物が生長過程で吸収したものであるから、焼却しても地球環境の炭酸ガス増加にはつながらない。
よって、本発明のポリ乳酸系樹脂被覆板を再び金属製品としてリサイクルしても、地球温暖化を促進することにはならない。また、ポリ乳酸系樹脂を被覆した金属板は、被覆樹脂が化石資源から製造されたものではないため、資源枯渇の問題とは無縁である。さらに、ポリ乳酸系樹脂は自然界に存在する微生物によって二酸化炭素と水とに分解されるため、本発明の樹脂被覆板を廃棄物として埋め立て処分した場合も、環境負荷がきわめて少ないという利点もある。
板に被覆するポリ乳酸系樹脂は、少なくとも1方向に延伸したフィルム、無延伸フィルム、重合度や延伸倍率(無延伸も含む)の異なるフィルムを2層以上積層したフィルム等が好ましい。これらの中でも、2軸延伸したフィルムや、2軸延伸したフィルムを少なくとも1層含んだ多層フィルムを被覆することが、接着性、耐食性等の点で好ましい。
本発明の樹脂被覆板においては、ポリ乳酸系樹脂に石油や石炭等の化石資源を用いて作られる樹脂を1種類以上混合して用いてもよい。このような化石資源を原料とした樹脂を混合することで、二酸化炭素増加の抑制と、化石資源を原料とした樹脂が有しているさまざまな特徴、例えば耐熱性、強度、耐溶剤性、成形性、耐加水分解性、ガスバリア性、透湿性、透明性、耐摩耗性等を両立させることが可能となるので好ましい。
ポリ乳酸系樹脂に混合して用いることができる樹脂は、特に制限されないが、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン等のポリエチレン類、ホモポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ランダム共重合ポリプロピレン等のポリプロピレン類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、6ナイロン、6,6−ナイロン、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム、水素化スチレンブタジエンゴム、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体、ポリイミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等をあげることができる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸系樹脂と比較的均一な混合物ができ、耐熱性も向上するので好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂被覆板では、被覆樹脂として化石資源を原料としたフィルムとポリ乳酸系樹脂フィルムとを多層構造にしたフィルムを被覆することもできる。このような多層構造にすると、ポリ乳酸系樹脂のフィルムのみを被覆した場合に比べてガスバリア性、透湿性、耐溶剤性等が向上するので好ましい。
次に、ポリ乳酸系樹脂フィルムを板に被覆する方法について説明する。本発明者らは、ポリ乳酸系樹脂フィルムを金属板に被覆する方法について鋭意研究を重ねた結果、特定の温度において圧着させると、接着剤を用いなくても、ポリ乳酸系樹脂フィルムと金属板とがきわめて強固に密着することを見出した。熱圧着のやり方としては、金属板を予め加熱しておきこの金属板にポリ乳酸系樹脂フィルムを圧着させるのが好ましい。熱圧着させる金属板の温度は120〜350℃であり、より好ましくは140〜280℃、最も好ましくは150〜270℃である。この温度より低いと密着性が悪くなり、また、この温度よりも高いと樹脂の熱分解が進行しやすくなるので好ましくない。
本発明のポリ乳酸系樹脂被覆板は、板を前記の温度に加熱し、ポリ乳酸系樹脂フィルムとともにホットプレス等で熱圧着させた後、冷却プレスで急冷する方法、板のコイルとポリ乳酸系樹脂フィルムのロールから、予熱した板とフィルムとを連続的に圧着ロールに導入して熱圧着させた後、冷却ロールや水等で急冷する方法等で製造することができる。これらの中でもポリ乳酸系樹脂フィルムを予熱した板に連続的に圧着する方法が、より好ましい。その理由は、これらの方法によれば板とポリ乳酸系樹脂被覆層との間に気泡が発生しにくいからである。
本発明において用いられるポリ乳酸系樹脂フィルムは、密着性をさらに向上させる目的で、予めコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
本発明において用いられる板は、特に限定しない。このような板としては、ステンレス鋼板、錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板に電解クロム処理を施し、クロム水和酸化物あるいは、下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物からなる二層被膜を生成させた表面処理鋼板(いわゆるティンフリースチール)、亜鉛めっき鋼板などが好適である。これらの中でもティンフリースチール、錫めっき鋼板、亜鉛めっき鋼板等がポリ乳酸系樹脂との密着性が優れるので好ましい。
本発明において使用される板の厚みにも特に制限はない。目的に応じて適当な厚みを選択すればよい。例えば缶などの容器の材料として用いる場合は100〜500μm、好ましくは200〜400μmとすればよい。
本発明における樹脂層の厚みにも特に限定はない。目的に応じて適当な厚みを選択すればよいが、例えば缶などの容器の材料として用いる場合は10〜200μm、好ましくは20〜150μmとすればよい。
本発明のポリ乳酸系樹脂被覆板は、飲料缶や、18リッター缶、ペール缶等の容器の材料や、内装材、ユニットバス等の建材、さらには家電製品の筐体や部品、自動車の外板や部品等の材料として有用である。
そして本発明のポリ乳酸系樹脂被覆板は、化石資源の枯渇を抑制し、また、この板を再び金属製品としてリサイクルする場合も、その工程で、被覆樹脂の燃焼による地球環境中の二酸化炭素の増加をさせないという、すぐれた効果を奏する。
本発明のポリ乳酸系樹脂被覆鋼板は、鋼板とポリ乳酸系樹脂フィルムを220〜350℃で熱圧着させることにより好ましく製造することができる。
参考例1)
5cm角に切断したティンフリースチール(JFEスチール(株)製、厚み0.32mm)と、6cm角に切断した2軸延伸ポリ乳酸フィルム(東セロ(株)製、パルグリーンLC、厚み25μm)を重ね、10cm角の2枚のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの間に挟んだ。この積層物を120℃に加熱したホットプレスを用いて、加圧力0.4MPaで1分間熱圧着させた。熱圧着終了後、直ちにこの積層物を冷却プレス(室温、およそ25℃)を用いて1分間加圧(0.4MPa)し、冷却した。積層物を冷却プレスから取り出し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを剥がしてポリ乳酸系樹脂被覆金属板を得た。得られた樹脂被覆金属板は、樹脂面にカッタで5mm幅に「#」形状の切れ目を入れ、この切れ目が凸となるようにエリクセン押出機で5mmの押出加工を行った。凸部頂点からピンセットで被覆樹脂層を強制剥離させ、下記基準により被覆樹脂と金属板との密着性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
◎:凸部頂点付近で被覆樹脂層が破損した場合。金属板と被覆樹脂との密着性はきわめて良好。
○:凸部スロープ付近で被覆樹脂層が破損した場合。金属板と被覆樹脂との密着性は良好。
△:平面部で被覆樹脂層が破損した場合。金属板と被覆樹脂との密着性は劣る。
×:押出加工前から被覆樹脂層が破損した場合。金属板と被覆樹脂との密着性はきわめて劣る。
(実施例2)
ホットプレスの温度を350℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(実施例3)
ホットプレスの温度を220℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(実施例4)
ポリ乳酸系樹脂フィルムとして無延伸ポリ乳酸フィルム(東セロ(株)製、パルシールGEP、厚み25μm)を使用した以外は、実施例3と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(実施例5)
ポリ乳酸系樹脂フィルムとして無延伸ポリ乳酸2層フィルム(東セロ(株)製、パルシールMP、厚み25μm)を使用した以外は、実施例3と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(参考例6および実施例7,8)
金属板としてアルミニウム板(厚み0.5mm)、亜鉛めっき鋼板(厚み0.5mm)、錫めっき鋼板(厚み0.35mm)を使用した以外は、実施例3と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
参考例9)
ホットプレスの温度を90℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
参考例10)
ホットプレスの温度を400℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(比較例1)
ポリ乳酸系樹脂フィルムの代わりに酸変性ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製、QE060、厚み30μm)を使用し、加熱温度を220℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(比較例2)
ポリ乳酸系樹脂フィルムの代わりに2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製、HC−OP、厚み25μm)を使用し、加熱温度を220℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
(比較例3)
ポリ乳酸系樹脂フィルムの代わりに2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東セロ(株)製、SP−PET、厚み20μm)を使用し、加熱温度を220℃とした以外は、参考例1と同様の実験を行い、密着性を評価した。結果は同じく表1に示した。
Figure 0005082272

Claims (2)

  1. 鋼板の少なくとも一方の表面に接着剤を用いずに熱圧着したポリ乳酸系樹脂フィルムを有することを特徴とする容器用樹脂被覆鋼板。
  2. 鋼板とポリ乳酸系樹脂フィルムとを接着剤を用いずに220〜350℃の温度範囲で熱圧着することを特徴とする容器用樹脂被覆鋼板の製造方法。
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