以下、本発明に係る一実施形態を図面を参照して説明する。図1は、実施形態に係る羽根駆動装置の分解斜視図である。本実施例に係る羽根駆動装置は、図面上側を被写体側、下面を結像面側としたとき、被写体側から順に羽根押さえ板10、羽根20a〜20c、第1歯車である弾性歯車30、第2歯車である駆動リング40、電磁アクチュエータ50、シャッタ基板60、フレキシブルプリント基板70などから構成される。
羽根20a〜20c、弾性歯車30、駆動リング40、電磁アクチュエータ50は、羽根押さえ板10及びシャッタ基板60の両者間に収納される。羽根押さえ板10、シャッタ基板60は、それぞれ光路を画定するための開口11、61が中央部に形成されている。電磁アクチュエータ50は、駆動リング40、弾性歯車30を介して、羽根20a〜20cにその動力を伝達する。駆動リング40はリング状に形成されおり、電磁アクチュエータ50からの動力が伝達される、第2歯部である歯列部43が、その外周の一部に形成されており、シャッタ基板60に対して摺動回転可能に支持されている。詳細には、摺動縁45と、内縁部65とが摺接する。
また、駆動リング40には、複数の駆動ピン44a〜44cが摺動縁45に沿って等間隔に形成されている。駆動ピン44a〜44cは、それぞれ、弾性歯車30に形成された係合孔34a〜34cと係合する。弾性歯車30は、駆動リング40に対して回転中心軸方向、すなわち光軸方向に略重なるように固定される。また、歯列部43と光軸方向に略重なるように、弾性歯車30にもその外周の一部に、第1歯部である歯列部33が形成されている。また、歯列部33と歯列部33の回転中心との間に変形容易部である孔状の円弧溝32が形成されている。詳細には、歯列部33に沿うように伸長して変形容易部である孔状の円弧溝32が形成されている。弾性歯車30にも、その中央部に光路を画定するための開口31が形成されている。弾性歯車30は、駆動リング40よりも薄肉に形成されている。従って、弾性歯車30は、駆動リング40よりも弾性変形が容易に形成されている。また、円弧溝32によって、弾性歯車30の径方向への弾性変形が容易化されている。尚、開口11、31、61のなかで、開口31の径が最も小さく形成されている。
羽根20a〜20cは、弾性歯車30よりも被写体側に配置される。羽根20a〜20cは、それぞれ端部に軸孔22a〜22cが形成されており、軸孔22a〜22cは、それぞれシャッタ基板60に形成された支軸62a〜62cと係合している。これにより、羽根20a〜20cは、シャッタ基板60に対して揺動可能に支持されている。また、羽根20a〜20cのそれぞれには、カム溝24a〜24cが形成されており、カム溝24a〜24cはそれぞれ駆動ピン44a〜44cと係合する。これにより、駆動リング40が回転することにより、駆動ピン44a〜44cは、それぞれカム溝24a〜24c内を移動し、羽根20a〜20cは、それぞれ、軸孔22a〜22cを中心として揺動する。これにより、開口11、31、61の開口面積を調整することができる。従って、駆動リング40は、電磁アクチュエータ50からの動力を羽根20a〜20cに伝達する駆動部材として機能する。
また、羽根押さえ板10には、開口11の周辺に、それぞれ駆動ピン44a〜44cを逃がすための逃げ孔14a〜14cが形成されている。また、詳しくは後述するが、電磁アクチュエータ50のロータ軸54を支持する軸孔15が形成されている。羽根押さえ板10及びシャッタ基板60は、羽根押さえ板10の縁部に形成された係止爪191と、シャッタ基板60の外縁部66に形成された係止部691とが係合し、また、羽根押さえ板10に形成された嵌合孔192と、シャッタ基板60の外縁部66に形成された突起部692とが嵌合することにより固定されている。
プリント基板であるフレキシブルプリント基板(以下、FPCと称する)70は可撓性を有しており、シャッタ基板60の電磁アクチュエータ50が収納されるアクチュエータ室ACの、結像面側の外壁面に固定される。FPC70は、電磁アクチュエータ50と電気的に接続され、電磁アクチュエータ50に対する電力の供給を確保する。
図2は、シャッタ基板60に対して、電磁アクチュエータ50を組み付けた状態での、羽根駆動装置の正面図である。図1、図2に示すように、シャッタ基板60には、羽根20a〜20cを収納するための羽根室SCと、電磁アクチュエータ50を収納するためのアクチュエータ室ACとが形成されている。アクチュエータ室ACは、羽根室SCよりも光軸方向の結像面側に突出して凹部状に形成されている。電磁アクチュエータ50は、図2に示すように、ロータ51、ステータ52、コイル53a、53b、ロータカナ55などから構成される。ロータ51は、周方向に極性の異なる磁極に着磁されており、ロータ51およびロータカナ55はロータ軸54に一体回転可能に支持されている。
また、ロータカナ55は、詳しくは後述するが、図2においては符号が示されていないロータ軸54と一体に形成されている。また、ロータ軸54、ロータカナ55は、ロータ51とのインサート成形によって形成されている。これにより、ロータ軸54、ロータカナ55、ロータ51は一体に形成される。ステータ52は、コ字状に形成され、その両腕部にそれぞれ、コイル53a、53bが巻回されている。コイル53a、53bのそれぞれの端部は、FPC70に通電可能に接続され、コイル53a、53bへの通電により、ステータ52が励磁され、ステータ52とロータ51との間に発生する磁力によって、ロータ51が所定量回転する。
また、アクチュエータ室ACには、ボス部63が5つ設けられており、電磁アクチュエータ50を位置決めする機能を有している。また、アクチュエータ室ACの周辺には、コイル53a、53bの端部を、それぞれアクチュエータ室AC内部から外部へと逃がすための、逃がし孔671が4箇所に形成されている。逃がし孔671は、開口61に近い側に2箇所、外周側に2箇所形成されている。コイル53a、53bの端部は、逃がし孔671から外部へ逃がし、プリント基板であるFPC70の半田ランド部へ接続されることにより電気的に接続されている。詳しくは後述する。
図3は、シャッタ基板60に更に駆動リング40を組み付けた状態での、羽根駆動装置の正面図である。図3に示すように、被駆動部材である駆動リング40は、歯列部43とロータカナ55とが噛合するように組みつけられている。
図4は、シャッタ基板60に、更に弾性歯車30、羽根20a〜20cを組み付けた状態での、全開状態での羽根駆動装置の正面図である。図5は、シャッタ基板60に、更に弾性歯車30、羽根20a〜20cを組み付けた状態での、絞り状態での羽根駆動装置の正面図である。図4に示すように、羽根駆動装置は、羽根20a〜20cが、開口31、61から退避した退避位置に位置付けられることにより、全開状態となる。また、図5に示すように、羽根20a〜20cが、開口31、61に臨む位置に位置付けられることにより、開口31、61の開口面積を小さくする絞り状態となる。
図4に示した状態から、ロータカナ55が時計方向に回転することにより、駆動リング40は、反時計方向に回転し、羽根20a〜20cは、時計方向に揺動して、図5に示した状態へと移行する。
図6は、羽根駆動装置の背面図である。FPC70は、シャッタ基板60のアクチュエータ室ACの結像面側の外壁に両面テープなどで固定されている。
図7は、全開状態での羽根駆動装置の一部の構成を示した図である。図7においては、理解を容易にするために弾性歯車30、駆動リング40、羽根20a、ロータ51、ロータカナ55のみを示している。弾性歯車30は、駆動リング40よりも被写体側に配置されている。全開状態においては、羽根20aの外縁がロータカナ55に当接する。詳しくは後述する。また、弾性歯車30、駆動リング40は、歯列部33と歯列部43とが、僅かにずれるように互いに固定されている。また、弾性歯車30は、駆動リング40よりも薄肉に形成されており、具体的には、弾性歯車30は、駆動リング40の1/6程度の厚さとなっている。また、弾性歯車30は、例えばポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂等の合成樹脂によりフィルム状に形成されている。このため弾性歯車30は、一般的な歯車の成型材料であるポリアセタールやナイロン樹脂等で形成された駆動リング40よりも弾性変形が容易な材料により形成されている。上記に弾性歯車30の材料の例を挙げたが、駆動リング40よりも弾性変形が容易な材料であればこれに限定されない。
次に、歯列部33及び歯列部43と、ロータカナ55との噛合について説明する。図8は、歯列部33及び歯列部43と、ロータカナ55との噛合の説明図である。図8(A)は、歯列部33及び歯列部43と、ロータカナ55との噛合い後での図である。図8(B)は、ロータカナ55と噛合う前の歯列部33及び歯列部43の状態を示した図であり、図8(C)は、その一部分の拡大図である。尚、図8(A)、図8(B)、図8(C)は、理解を容易にするために、ロータカナ55についても図示している。
図8(A)に示すように、歯列部33は、複数の歯部33a、33b…から構成され、歯列部43も同様に、複数の歯部43a、43b…から構成される。図8(A)に示すように、歯部33aの歯先331aは、歯部43aの歯先431aよりも径方向外側に突出している。また、歯部33aの一方の歯面332aは、歯部43aの一方の歯面432aよりも周方向に突出している。また、歯部33aの他方の歯面333aと、歯部43aの他方の歯面433aとは、ほぼ重なっている。この点に関しては、隣接する歯部33b、43bも同様に構成されている。また、ロータカナ55は、複数の歯部55a…から構成され、歯部55aの一方の歯面552aは、歯面332bと当接し、歯部55aの他方の歯面553aは、歯面333a、433aの双方と当接する。
また、弾性歯車30には、図7などで示したように、歯列部33に沿うよう周方向に伸長して円弧溝32が形成されている。円弧溝32が形成されていることにより、簡単な構成で弾性歯車30の弾性変形、特に径方向への弾性変形が容易となる。従って、円弧溝32は、弾性歯車30の弾性変形を容易にする変形容易部として機能する。また、弾性歯車30と駆動リング40とは、係合孔34a〜34cと、駆動ピン44a〜44cとの嵌合により軸方向に重ねて固定されているので、弾性歯車30及び駆動リング40は、一対の歯車として機能する。また、ロータカナ55は、一対の歯車と噛合する相手歯車として機能する。
以上のように、歯列部33は、歯列部43よりも外側に突出しているので、ロータカナ55が、歯列部33、43と噛合うときは、歯列部33が歯列部43よりも優先してロータカナ55に噛合う。また、弾性歯車30は、円弧溝32が形成されていることにより、歯列部33の径方向の弾性変形が周方向にわたって容易であるため、歯列部43よりもより密着させて、歯列部33とロータカナ55と噛合わすことができる。これにより、ロータカナ55と、一対の歯車として機能する弾性歯車30及び駆動リング40との間のバックラッシュを抑制することができる。すなわち、ロータカナ55と弾性歯車30及び駆動リング40との軸間が遠くなる方向に常にガタ寄せされるのでこれにより特に、ロータ軸54と羽根押さえ板10に設けられた軸孔15間やシャッタ基板60に設けられた軸孔64間、駆動リング40とシャッタ基板60に設けられた内縁部65間における軸間方向バックラッシュに起因する作動音を低減できる。
また、歯面432aからの歯面332aの周方向への突出量と、歯面433aからの歯面333aの突出量とは相違している。即ち、歯面552aは歯面332bと当接するのに対し、歯面553aは、歯面333a及び歯面433aの双方と当接する。駆動リング40は、弾性歯車30と異なり、弾性変形を容易化するような構成は採用されていない。従って、ロータカナ55の回転方向に応じて、弾性歯車30の弾性変形の度合が変化することになる。即ち、ロータカナ55が反時計方向に回転した場合には、ロータカナ55からの動力が伝達される動力伝達面は、歯面332bであるのに対して、ロータカナ55が時計方向に回転する場合には、ロータカナ55からの動力が伝達される動力伝達面は、歯面333a及び歯面433aになる。従って、ロータカナ55が反時計方向に回転した場合には、歯面332bは弾性変形が容易であるため歯面552aと歯面332bとが常に当接するようにしてロータカナ55からの動力が伝達されるので主に、ロータカナ55と駆動リング40の法線方向のバックラッシュが抑制され、そのバックラッシュに起因する作動音を低減することができる。またロータカナ55が時計方向に回転した場合には、歯面433aと歯面553aとの当接により、主に、回転動力の伝達精度が向上する。
また、ロータカナ55が時計方向に回転する場合には、羽根20a〜20cは、開口11、31、61の開口面積を絞る方向に揺動する。このため、歯面433a、433bは、開口面積を小さくする際に、ロータカナ55から動力が伝達される歯面となる。これにより、開口面積を小さくする際に、弾性変形を容易化するような構成が採用されていない駆動リング40の歯列部43に対して動力が伝達されるので、絞りの精度を維持することができる。
次に、ロータカナ55と噛合う前の歯列部33、43の状態について説明する。図8(B)、図8(C)に示すように、歯面333aは、歯面433aから僅かに周方向外側に突出している。この噛合う前の状態でも、歯面432aからの歯面332aの周方向への突出量と、歯面433aからの歯面333aの突出量とは相違している。歯面333b、433bについても同様である。ロータカナ55と、弾性歯車30及び駆動リング40との軸間距離を設定する場合には、歯面433aからの歯面333aの突出量を考慮する必要がある。即ち、弾性歯車30に対するロータカナ55からの押し付け力によって、歯面433aからの歯面333aの突出量がゼロとなり、歯面433aと歯面333aとが略一致するように、ロータカナ55と、弾性歯車30及び駆動リング40との軸間距離を設定する必要がある。これにより、バックラッシュを抑制しつつ、回転動力の伝達精度が向上する。
次に、弾性歯車30について詳しく説明する。図1、図7に示したように、円弧溝32は、弾性歯車30の外縁の一部に形成された歯列部33に沿うように、歯列部33と歯列部33の回転中心との間において、周方向に伸長して形成されている。この構成により、弾性歯車30の径方向の弾性変形を、周方向に亘って容易にすることができる。
また、弾性歯車30と駆動リング40とは、それぞれ駆動ピン44a〜44cと、係合孔34a〜34cとが係合することにより、両者が固定されている。従って、駆動ピン44a〜44cと、係合孔34a〜34cは、係合により両者を固定する係合手段として機能する。このように、簡易な構造によって両者を固定することができるので、組立作業性が向上する。
また、係合孔34a〜34cは、円弧溝32よりも径方向内側に設けられている。この理由は、弾性歯車30と駆動リング40とを固定する手段が、円弧溝32よりも径方向外側に設けられている場合には、円弧溝32の位置とロータカナ55の位置との間の位置で、弾性歯車30は駆動リング40に対して固定されることになる。この場合、弾性歯車30に対するロータカナ55からの押し付け力が、円弧溝32にまで伝達することが困難となり、円弧溝32によってロータカナ55からの押し付け力を吸収することができずに、弾性歯車30の径方向の弾性変形が抑制される恐れがあるからである。
また、駆動ピン44a〜44cは、それぞれカム溝24a〜24cと係合する。この係合により、駆動リング40の動力は羽根20a〜20cへと伝達される。このように、電磁アクチュエータ50からの動力を羽根20a〜20cへと伝達する構造を、駆動リング40に設けた理由は、弾性歯車30に設けた場合、弾性歯車30は弾性変形が容易に形成されているため、動力を安定して伝達することができない恐れがあるからである。
また、上述したように、駆動ピン44a〜44cは、電磁アクチュエータ50からの動力を羽根20a〜20cに伝達する機能を有していると共に、弾性歯車30を駆動リング40に対して固定する機能をも有している。このため、固定機能を伝達機能とは別に設ける必要がないので部品点数の削減が図られている。また、この部品点数が削減された構成により羽根駆動装置内のスペースを有効に利用でき、組立作業性も向上する。
また、図1、図4、図5に示すように、ロータカナ55、歯列部43、歯列部33は、電磁アクチュエータ50からの動力を羽根20a〜20cへと伝達する歯車機構として機能するが、この歯車機構は、ロータ51に一体に形成されたロータカナ55と、一対の歯車として機能する弾性歯車30及び駆動リング40とのみから構成される。このため、多くの歯車を介して動力を伝達する構造を採用した場合と比較し、部品点数を削減でき、これにより歯車どうしの噛合地点が減りその分作動音も低減することができる。
次に、羽根20aとロータカナ55との当接についての説明をする。図9は、羽根20aとロータカナ55との当接についての説明図である。図9は、図7のロータカナ55周辺の拡大図である。尚、図9においてその他の部材については図示を省略している。図4に示すように、開口面積を全開状態とした場合には、羽根20aは、ロータカナ55に当接するように構成されている。この当接により、ロータカナ55の回転は停止される。従って、羽根20aは、ロータカナ55に対して接離可能に形成されていると共に、ロータカナ55との当接によりロータカナ55の回転を停止させる停止手段として機能する。これにより、弾性歯車30、駆動リング40の回転が停止され、羽根20a〜20cは、退避位置に位置付けられる。
また、ロータカナ55は、電磁アクチュエータ50から羽根20a〜20cへと動力が伝達される伝達経路上において、駆動リング40よりも電磁アクチュエータ50の近く配置されている。従って、このロータカナ55を直接停止させることにより、電磁アクチュエータ50からの動力が羽根20a〜20cまでに伝達される過程において動力のトルクが大きくなる前に、その動力の伝達を遮断することができる。従って、従来のように、シャッタ基板60に突起状のストッパを設けて、このストッパと駆動リング40との当接により、駆動リング40の駆動を停止させる場合と比較し、当接による衝撃音を低減できる。
また、このような停止手段を、羽根20aとは個別に設けてもよいが、羽根20aを停止手段として採用することにより、部品点数の削減を図ることができる。
また、羽根20aは、退避位置でロータカナ55と当接する。これにより、羽根20aとロータカナ55との当接した際の衝撃などにより、羽根20aが振動した場合であっても、開口面積に与える影響を少なくすることができる。
また、ロータカナ55、ロータ軸54及びロータ51は、前述したようにインサート成形によって一体に形成されているため、これらは一体に回転する。即ち、ロータカナ55は、ロータ51と一体に回転する。従って、ロータカナ55は、駆動源である電磁アクチュエータ50に最も近い歯車といえる。例えば、従来の羽根駆動装置のように、電磁アクチュエータ50の回転を減速するために中間車を含む複数の歯車を介して動力を伝達する場合に、中間車に当接することにより中間車の回転を停止させた場合には、次のような問題が起こる恐れがある。このような中間車は、一般的に、駆動源に近い側に配置された歯車よりも回転が減速され、トルクが大きなものとなる。このため、中間車に当接する事により、作動音が大きくなる恐れがある。しかしながら、本実施例のように、駆動源に最も近いといえる、ロータカナ55に当接することによって回転を停止させることにより、ロータカナ55の回転を容易に停止させることができ、またその際の衝突音が低減される。
また、図9に示すように、羽根20aには、ロータカナ55との当接箇所に、切欠部25aが形成されている。切欠部25aは、羽根20aの外縁に、比較的小さな円弧を描くように形成されている。この切欠部25aの円弧径は、ロータカナ55の中心から歯先までの最大径と対応させている。また、図9に示すように、ロータカナ55の2つの歯部55a、55bと同時に当接するように、切欠部25aの長さ、及び、羽根20aが退避位置に位置付けられた際のロータカナ55の回転位置が設定されている。これにより、切欠部25aは、歯部55a、55bの歯先の2箇所で当接するので、羽根20aとロータカナ55との当接面積を増やすことができ、ロータカナ55の回転の停止が助長される。即ち、切欠部25aは、羽根20aとロータカナ55との当接によるロータカナ55の回転の停止を助長する係止構造として機能する。
また、2箇所で当接するので、衝撃が緩和される。また、羽根20a〜20cは、それぞれ弾性変形が容易に薄肉に形成されている。これによっても更に、羽根20aとロータカナ55との当接による衝撃を緩和できる。また、図7および図9に示したように、切欠部25a付近に、カム溝24aが形成されている。このカム溝24aにより、羽根20aはより駆動方向への弾性変形が容易となる。このカム溝24aは、上記当接による衝撃を吸収し得るように、当接箇所近傍に形成されている。また、カム溝24aは、扇状に形成された羽根20aの円弧状の縁に沿うように伸長して形成されているので、羽根20aに対するカム溝24aの大きさを大きくすることができ、羽根20aの駆動方向への弾性変形を容易にすることができる。
次に、カム溝24aと駆動ピン44aとの係合について説明する。図10は、カム溝24aの端部に駆動ピン44aが位置する場合での、駆動ピン44a周辺の拡大図である。図10(A)は、全開状態での駆動ピン44a周辺を示している。図10(B)は、最小の絞り状態である小絞り状態での駆動ピン44a周辺を示している。駆動ピン44aは、図10(A)に示すように、全開状態においては、カム溝24aの一端部241aに当接しない。一方、駆動ピン44aは、図10(B)に示すように、小絞り状態においては、カム溝24aの他端部242aと当接する。駆動ピン44b、44cと、カム溝24b、24cについても同様に構成される。
従って、絞り状態においては、駆動ピン44a〜44cのそれぞれが、カム溝24a〜24cの端部に当接することによって駆動リング40が停止され、羽根20a〜20cが開口に臨む位置に位置付けられる。前述したように、羽根20a〜20cは、弾性変形が容易に薄肉に形成されている。このため、従来の羽根駆動装置のように、シャッタ基板60にストッパを設け、このストッパと駆動リング40との当接により駆動を停止させる場合と比較し、衝撃音を低減することができる。また、シャッタ基板60にストッパを設ける必要がないので、構造の簡素化を図ることができる。また、駆動ピン44a〜44cが、略同時に、それぞれカム溝24a〜24cの端部に当接するので、各部材への衝撃を分散することができる。
また、全開状態においては、前述したように羽根20aがロータカナ55に当接することにより、駆動リング40の駆動が停止されることになるが、例えば、ロータカナ55に当接する際に羽根20aが光軸方向に撓んでしまい、羽根20aがロータカナ55の一部に乗り上げたような場合には、駆動ピン44aが一端部241aに当接して、駆動リング40の駆動が停止される。
尚、図10(A)に示したように、全開状態においては、駆動ピン44aは、一端部241aに当接しないが、当接するように構成してもよい。この際に、羽根20aとロータカナ55との当接と略同時に当接することにより、更に各部材への衝撃を分散することができると共に作動音を低減することができる。
次に、電磁アクチュエータ50について詳細に説明する。図11は、電磁アクチュエータ50周辺の断面図である。図11(A)は、図6のA−A断面図であり、図11(B)は、その一部分の拡大図である。図11(A)に示すように、二つの基板である、シャッタ基板60と羽根押さえ板10との両者間に駆動源室として形成されたアクチュエータ室AC内に、ロータ51、ステータ52、ロータ軸54などが収納されている。また、ロータ軸54の、結像面側の一端部541は、シャッタ基板60に形成された軸孔64と摺動可能に支持されており、ロータ軸54の、被写体側の他端部542は、羽根押さえ板10に形成された軸孔15に摺動可能に支持されている。これにより、ロータ軸54は、羽根押さえ板10とシャッタ基板60との間で、回転可能に支持されている。従って、シャッタ基板60は、電磁アクチュエータ50を収納すると共にロータ軸54を回転可能に支持する筐体として機能する。
図11(B)に示すように、軸孔64には、一端部541と軸孔64との間を潤滑する潤滑剤Lが充填されている。ここで軸孔64は、シャッタ基板60の内側から外側にかけて縮径している。すなわち軸孔64は、ロータ軸54の一端部541よりも径が若干大きく形成され、一端部541から離れるに従って一端部541よりも径が小さくなるように縮径するように円錐状に形成され、アクチュエータ室ACの内外を貫通する。軸孔64の外側には、FPC70が固定されている。潤滑剤Lは、一端部541と軸孔64とFPC70とによって画定される空間に充填されている。潤滑剤Lは、例えばグリースである。このように、潤滑剤Lを充填することにより、簡易な構造でロータ軸54の回転に伴う作動音を低減することができる。また、このように簡易な構造とすることにより、製造コストも抑制される。
次に、軸孔64に対するロータ軸54の組み付け順について説明する。まず、シャッタ基板60の外壁面、即ち、アクチュエータ室ACの結像面側裏面にFPC70を両面テープで固定する。この際に、軸孔64を塞ぐようにして固定される。次に、単体のシャッタ基板60に対して、アクチュエータ室AC側から軸孔64に潤滑剤Lを充填する。軸孔64は、前述したように、アクチュエータ室ACの内側から外側にかけて縮径しており、またFPC70により塞がれている。このため、ある程度粘度の高い潤滑剤Lを充填した場合には、軸孔64から外側に潤滑剤Lが漏れ出す恐れは少ない。
次に、アクチュエータ室ACに、コイル53a、53bを巻回したステータ52を、ボス部63と係合した状態で圧入する。次に、ロータカナ55、ロータ軸54、ロータ51が一体化された部品の、ロータカナ55が形成されていない側の一端部541を、軸孔64に挿入する。この際に、軸孔64内の潤滑剤Lは、アクチュエータ室ACの内側から外側に向けて押されるが、軸孔64の形状は、図11(B)に示すように、一端部541の径よりも小さくなるようにして縮径している。またさらに軸孔64はFPC70により塞がれている。このため、一端部541は、軸孔64の途中位置までしか押し込むことができず、潤滑剤Lが、一端部541に押されて軸孔64から外側に漏れることを抑制できる。また、軸孔64がシャッタ基板60の内外を貫通しているため、一端部541を軸孔64に挿入した際であっても、潤滑剤Lに入り込んだ空気を外部へと逃がすことができる。
また前述したように、FPC70はアクチュエータ室ACの外側から軸孔64を塞ぐようにシャッタ基板60に固定されている。これにより、羽根駆動装置の稼動中に、軸孔64から潤滑剤Lが漏れ出すことを防止できる。また、FPC70によって、潤滑剤Lの漏れ出し防止用部材を別に設ける必要がないため、部品点数の削減を図ることができる。このようにして、軸孔64に対してロータ軸54が組み付けられる。
また、軸孔64の形状は、一端部541の径よりも小さくなるようにして縮径しているため、羽根駆動装置の組み立て完了後に、ロータ軸54の軸方向のガタつきによって、潤滑剤Lが充填された充填空間が押しつぶされることを防止できる。また、ロータ軸54の一端部541は、羽根20a〜20cから離れた側に位置し、他端部542は、羽根20a〜20cに近い側に位置している。軸孔64は、この羽根20a〜20cから離れた側の一端部541を支持するので、組立て終了後に潤滑剤Lが軸孔64からアクチュエータ室AC内に漏れ出して、羽根20a〜20cにまで漏れ出して付着する恐れを抑制できる。また、組立て中であっても、羽根20a〜20cに近い側よりも離れた側の方が、羽根駆動装置の構造が比較的簡素であるため、潤滑剤Lを充填するための作業も容易化する。
次に、アクチュエータ室AC周辺の構造について説明する。図12は、図1のアクチュエータ室AC周辺の拡大図である。図12に示すように、アクチュエータ室ACと羽根室SCとは、連続するように形成されている。即ち、アクチュエータ室ACと羽根室SCとは、羽根押さえ板10とシャッタ基板60との両者間に形成されている。従来の羽根駆動装置のように、駆動源であるアクチュエータをユニット化した場合には、シャッタ基板60の厚みと、ユニット化したアクチュエータのカバーの厚みとによって、羽根駆動装置の光軸方向の厚みが増す要因となっていた。しかしながら、本実施例のように構成することにより、光軸方向への厚みを薄くすることができる。さらに図11に示すようにロータ51とロータ軸54とロータカナ55は一体に形成されており各部品の隙間がなくロータ軸方向に最小限のスペースで構成されている。したがってロータ軸方向に効率良く部品を構成することができるので光軸方向の厚みを抑えることができると同時に部品数を削減でき製造コストが抑制できる。尚、アクチュエータ室ACには、図12に示すように、コイル53a、53bの光軸方向の厚みを逃がすためのコイル逃がし孔68が形成されている。
次に、電磁アクチュエータ50のコイル53a、53bの配線作業を容易化するための構造について説明する。FPC70は、アクチュエータ室ACの裏面の外壁面に配置されている。このため、コイル53a、53bを、FPC70まで引き回す距離を短くでき、コイル53a、53bの素線を容易にFPC70へと接続することができる。これにより、コイル53a、53bの配線作業を容易にすることができる。また、製造コストを低減することができる。
また、シャッタ基板60のアクチュエータ室AC周辺には、図12に示すように、4箇所にわたって逃がし孔671が形成されている。逃がし孔671は、スリット状に形成されている。また、逃がし孔671と連続するように、光軸方向に案内溝672が伸長して形成されている。ここで逃がし孔671及び案内溝672は、駆動室源であるアクチュエータ室ACからコイル53a、53bの素線を外部に逃がすための開口を形成している。案内溝672は、シャッタ基板60の、FPC70が固定される面に向けて伸長している。案内溝672は、それぞれ逃がし孔671と対応するように4箇所にわたって形成されている。コイルの配線作業は、例えば、アクチュエータ室ACの結像面側裏面の外壁面にFPC70を固定した後に電磁アクチュエータ50をアクチュエータ室AC室内に組み付け、次に、コイル53aの素線の一端部を、それぞれ近傍の逃がし孔671を介して外部へと引き出す。次に、コイル53aの素線を案内溝672に沿って、FPC70に向けて引き出して、FPC70の半田ランド部に接続する。以上の作業を、コイル53aの他端部、及び53bについても同様に行う。このように、逃がし孔671は、アクチュエータ室ACから外部へとコイル53a、53bの素線を逃がすための機能を有し、また、案内溝672は、コイル53a、53bの素線をFPC70まで案内する機能を有する。これにより、コイル53a、53bの配線作業を容易にすることができる。
次に、羽根駆動装置の変形例について説明する。図13は、第1変形例に係る羽根駆動装置の一部の構成を示した図である。尚、変形例に係る羽根駆動装置についても、前述した羽駆動装置と同様に、3枚の羽根を備えている。尚、前述した羽根駆動装置と類似する構成については、類似する符号を付することによりその説明を省略する。図13(A)は、第1変形例に係る羽根駆動装置の一部の構成を示した図である。図13(A)には、駆動リング40Aと、羽根20aAと、ロータカナ55Aと、歯車群80Aとを示している。図13(A)は、羽根20aAが、開口から退避した退避位置に位置付けられた状態を示している。
ロータカナ55Aは、図示はしないがロータ軸に圧入されている。ロータカナ55Aが回転することにより、その動力が歯車群80Aに伝達され、駆動リング40Aの外周の一部に形成された歯列部43Aと噛合う。これにより、歯列部43Aが回転して、羽根20aAは、軸孔22aAを中心として揺動する。図13(B)は、ロータカナ55Aを拡大した斜視図である。図13(B)に示すように、ロータカナ55Aは、複数の歯部から構成された下段歯部551Aと、2つの歯部から構成された上段歯部552Aとの2段が重なるように構成されている。ロータカナ55Aは、合成樹脂により形成され、下段歯部551Aと、上段歯部552Aとは一体に形成されている。歯車群80Aには、下段歯部551Aを介してその動力が伝達される。
図14は、図13(A)の、ロータカナ55A周辺を拡大した図である。図14に示すように、羽根20aAの外周側面には切欠部25aAが形成されている。羽根20aAが退避位置に位置付けられる際には、切欠部25aAが、上段歯部552Aに当接する。また、下段歯部551Aは、羽根20aAの背面側に位置している。上段歯部552Aは、径方向に突出した突起部として形成されているので、切欠部25aAとの当接の際には、上段歯部552Aと切欠部25aAとが係合して、ロータカナ55Aの回転が容易に停止される。即ち、上段歯部552Aは、ロータカナ55Aと羽根20aAとの当接によるロータカナ55Aの回転の停止を助長する係止構造として機能する。このような構成によっても、簡単な構造でロータカナ55Aの回転を容易に停止させることができる。
図15は、第2変形例に係る羽根駆動装置の一部の構成を示した図であり、図15(A)は、全開状態での第2の変形例に係る羽根駆動装置の正面図、図15(B)は、全閉状態での第2の変形例に係る羽根駆動装置の正面図である。図15(A)、図15(B)に示すように、第2の変形例に係る羽根駆動装置は、羽根20a〜20c以外に板状の停止板20dを備えている。停止板20dは、支軸62aに、羽根20aと共に揺動可能に支持されており、停止板20dは、羽根20aよりも被写体側に配置されている。また、停止板20dには、円弧状のカム溝24dが形成されている。カム溝24dは、駆動ピン44aに係合している。図15(A)の場合、すなわち開口面積を全開状態とした場合には、停止板20dがロータカナ55に当接しその回転を停止させる。従って、停止板20dは、ロータカナ55との当接によりロータカナ55の回転を停止させる停止手段として機能する。
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
上記実施例では羽根押さえ板10を被写体側に配置してあるが、シャッタ基板60を被写体側に、羽根押さえ板10を結像面側に配置して羽根駆動装置を構成してもよい。
ロータカナ55と、歯列部33、43との間に、中間車を設けて、この中間車に羽根20aを当接させて駆動リング40の駆動を停止させるようにしてもよい。
弾性歯車30及び駆動リング40は、一対の歯車として機能するが、このような構成に限定されず、例えば、このような一対の歯車を中間車として採用してもよい。
また、一対の歯車を中間車として採用した場合に、変形容易部が形成されていない第2歯車の第2歯部の他方の歯面が、この中間車に噛合い、中間車の回転動力が伝達される相手歯車に動力を伝達する歯面としてもよい。
上記実施例では弾性歯車30を合成樹脂により成型された例を示したが、ポリエチレンテレフタレートやアクリル樹脂製のシート部材や、一般的な光反射防止用フィルムや遮光フィルム、例えばソマブラックフィルム(ソマール社製)フィルム等をプレス加工で成形したものを用いてもよい。
上記実施例では羽根20a〜20cは、それぞれ弾性変形が容易に薄肉に形成されている例を示したが、その加工方法は問わず成型品でもプレス加工品であってもよい。
上記実施例ではロータカナ55、ロータ軸54、ロータ51がインサート成形によって一体に形成されている例を示したが、ロータカナ55とロータ軸54のみが一体に形成されていてもよい。
上記実施例ではFPC70をフレキシブルプリント基板で構成した例を示したが、エポキシ樹脂等の剛性を有する素材で構成されたハード基板であってもよい。
上記実施例ではシャッタ基板60に逃がし孔671、案内溝672が形成された例を示したが、羽根押さえ板10に形成してもよい。