JP5080017B2 - 帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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内部添加型のポリカーボネート樹脂の帯電防止方法としては、従来、スルホン酸のアルカリ金属塩やスルホン酸のホスホニウム塩といったイオン性界面活性剤を利用する方法が帯電防止効果や経済性に優れるために一般的に広く採用されてきた(例えば特許文献1,2参照)。しかし、こうした低分子量の界面活性剤を利用する方法では、かかる界面活性剤が樹脂表面に浸み出すために、帯電防止効果は高いものの、その持続性に乏しく、拭いたり、水洗いしたりすると効果が低下するという問題点がある。特に、電子部品搬送体として使用した場合には、ブリードアウトした界面活性剤が、収納された電子部品を汚染し、電子部品の接点の腐食や製造工程の汚染の原因となるという問題もある。
で表される繰り返し単位(A2)よりなり、単位(A1)と単位(A2)との合計を100モル%として、単位(A1)が5モル%以上15モル%以下の範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部(A成分)、及び(B1)スルホン酸塩基を持たない芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、(B2)下記一般式[3]
本発明において用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂を形成するためのジヒドロキシ成分は、前述したとおり(A1)フルオレン系ビスフェノール、及び(A2)その他のジヒドロキシ成分から主としてなる。
本発明において用いられるポリエーテルエステルは、(B1)スルホン酸塩基を持たない芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、(B2)上記式[3]で表されるスルホン酸塩基を含有する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、(B3)炭素数2〜10のグリコール、および(B4)数平均分子量2×102〜5×104のポリ(アルキレンオキシド)グリコールから主としてなる。
これらのイオンの中で金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオン、亜鉛イオンがより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、押出、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために、リン系熱安定剤を使用することができる。かかる熱安定剤としては、燐酸誘導体である燐酸エステル、亜燐酸の誘導体である亜燐酸エステルに加え、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、染料、顔料等の着色剤を添加する事により着色する事ができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は上記(A成分)、(B成分)及びその他の添加剤を任意の配合方法により配合することにより製造することができる。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られるポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品にすることができる。なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の混和性を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出において二軸押出機を使用するのが好ましい。更に無機充填材を配合する場合には直接押出機ホッパー口あるいは押出機途中から投入する方法、ポリカーボネート樹脂と予め混合する方法、一部のポリカーボネート樹脂と予め混合してマスターを作成し投入する方法、かかるマスターを押出機途中から投入する方法のいずれの方法も取ることができる。
(1)ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)
ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mLに溶解し20℃で測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入し、ビスフェノールAより得られるポリカーボネート樹脂の極限粘度に換算して求めた。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c
[η]=1.23×10−4M0.83
(但し[η]は極限粘度、c=0.7)
(2)ポリエーテルエステルの還元粘度
フェノール/テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒中において、濃度1.2(g/dl)、30℃にて測定した。
(3)ガラス転移点(Tg)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定した。
(4)全カーボネート繰り返し単位に占めるフルオレン成分の比率
日本電子(株)社製 JNM−AL400型NMRを使用してポリカーボネート樹脂組成物の1H−NMRスペクトルを測定し、積分強度から計算して求めた。
(5)表面固有抵抗
長さ50mm×幅50mm×厚さ2.0mmの平滑平板状試験片を、23℃、相対湿度50%の雰囲気下の環境で24時間放置した後、超絶縁計(東亜電波工業株式会社製SM−8210)を用いて、印加電圧500Vにて測定した。
(6)水洗後表面固有抵抗
表面固有抵抗を測定した試験片を、30℃のイオン交換水の流水にて2時間水洗し、表面の水分を拭取り、23℃、相対湿度50%の雰囲気下の室内で24時間放置した後、超絶縁計(東亜電波工業株式会社製SM−8210)を用いて、印加電圧500Vにて測定した。
(7)荷重たわみ温度(HDT)
ISO75−1および2に準拠し、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて、荷重1.8MPa、フラットワイズにて測定した。
(8)ヘーズ
長さ50mm×幅50mm×厚さ2.0mmの平滑平板状試験片を、23℃、相対湿度50%の雰囲気下の環境で24時間放置した後、日本電色工業製ヘーズメーターNDH−2000を用い、JIS K7136に準拠して、D光源にて測定した。ヘーズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
(9)汚染性
長さ50mm×幅50mm×厚さ2.0mmの平滑平板状試験片表面を23℃、相対湿度50%の雰囲気下の環境で24時間放置した後、透明粘着テープを貼った後すぐに剥離し、粘着テープに付着物があるかどうかを目視で判定した。粘着テープに付着物がある場合には、電子部品が汚染される可能性がある。なお、評価基準は下記の通りである。
○:付着物無し、×:付着物有り
[製造例1]
イオン交換水22100部、48%水酸化ナトリウム水溶液43000部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)300部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールA”と略称することがある)3450部およびハイドロサルファイト13部を溶解した後、塩化メチレン15670部を加えた後撹拌下15〜25℃で上記ホスゲン1940部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール105部を塩化メチレン340部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液633部を加え、乳化後、トリエチルアミン5部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にし、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで水洗した。次に塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去してビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で5:95であるポリマーを得た。このポリマーを100℃の熱風乾燥機で1日乾燥し、さらに120℃の熱風乾燥機で1日乾燥した(ポリマー収率97%)。このポリカーボネートをPC−1とする。ガラス転移温度(Tg)は155℃、粘度平均分子量(Mv)は15,500であった。
実施例1のビスクレゾールフルオレンの使用量を720部、ビスフェノールAの使用量を3900部とする以外は製造1と同様にしてビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAの比がモル比で10:90であるポリマーを得た。(ポリマー収率97%)。このポリカーボネートをPC−2とする。Tgは160℃、Mvは18,000であった。
実施例1のビスクレゾールフルオレンの使用量を1160部、ビスフェノールAの使用量を2800部とする以外は製造例1と同様にしてビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAの比がモル比で20:80であるポリマーを得た。(ポリマー収率97%)。このポリカーボネートをPC−3とする。Tgは172℃、Mvは16,500であった。
実施例1のビスクレゾールフルオレンの使用量を2460部、ビスフェノールAの使用量を2230部とする以外は製造例1と同様にしてビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAの比がモル比で40:60であるポリマーを得た。(ポリマー収率97%)。このポリカーボネートをPC−4とする。Tgは185℃、Mvは16,500であった。
[製造例5]
1508部の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(酸成分全体の88モル%)、249部の5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(酸成分全体の12モル%)、479部のエチレングリコール、746部の1,6−ヘキサンジオール、898部のポリエチレングリコール(数平均分子量2×103、生成ポリエーテルエステル全体の30重量%)、及び1.4部のテトラブチルチタネートを精留塔及び攪拌装置を備えた反応器に入れ、容器内を窒素置換した後、攪拌しながら常圧下200℃まで昇温した。反応により生成するメタノールを留去しながら6時間で200℃から230℃まで徐々に昇温していき、反応を完結させた。その後、反応物を攪拌装置を備えた真空留出系を有する反応器に移送し、温度230℃にて攪拌しながら、60分後に6.7×102Pa、100分後に1.3×102Pa、120分後には0.67×102Paと系内を徐々に減圧にしていき、反応留出物を留去しながら重合反応せしめることにより、ポリエーテルエステルを得た。このポリエーテルエステルをPEEs−1とする。還元粘度は1.34であった。
1074部の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(酸成分全体の80モル%)、381部の4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(酸成分全体の20モル%)、910部の1,6−ヘキサメチレングリコール、750部のポリエチレングリコール(数平均分子量2×103、生成ポリエーテルエステル全体の30重量%)、および1.3部のテトラブチルチタネートを用いたこと以外は製造例4と同様にしてポリエーテルエステルを得た。このポリエーテルエステルをPEEs−2とする。還元粘度は1.40であった。
表1記載の各成分を混合し、(株)テクノベル製15mmφベント付き二軸押出機(KZW−15)を用いて、シリンダー温度250〜300℃、10〜60Torrの減圧下で押出しペレット化した。得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、(株)日本製鋼所製射出成形機(J75EIII)を用いて、シリンダー温度240〜310℃及び金型温度50〜100℃の条件で各試験片及び厚さ4mmの電子部品搬送体を成形した。また、得られた試験片を用いて、帯電防止性、耐熱性、汚染性の評価を行った。
PC−5:ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法で合成した粘度平均分子量22,400の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂
IRGAPHOS−168:リン系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
S−100A:飽和脂肪酸エステル系離型剤(理研ビタミン(株)製)
DBSNa:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(竹本油脂製)
CF:炭素繊維((株)東邦テナックス製、ベスファイトHTA−C6−U)
Claims (12)
- 下記式[4]で表される繰り返し単位(A1)及び下記式[5]で表される繰り返し単位(A2)よりなり、単位(A1)と単位(A2)との合計を100モル%として、単位(A1)が5モル%以上15モル%以下の範囲である芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部(A成分)、及び(B1)スルホン酸塩基を持たない芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、(B2)下記一般式[3]
- (B1)スルホン酸塩基を持たない芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステルが、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、及びそれらのエステルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B2)一般式[3]で表されるスルホン酸塩基を含有する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステルが、Arがベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、もしくは炭素数が1〜9のアルキル、フェニル、炭素数1〜9のアルコキシ又はハロゲンで置換されたこれらの環である請求項1または2のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- (B3)炭素数2〜10のグリコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- B成分のポリエーテルエステルが、(B1)スルホン酸塩基を持たない芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステルが95〜50モル%と(B2)一般式[3]で表される芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステルが5〜50モル%からなる酸成分を用いて形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- B成分のポリエーテルエステルが、全ポリエーテルエステルを100重量%として、10〜50重量%の(B4)数平均分子量2×102〜5×104のポリ(アルキレンオキシド)グリコールを用いて形成されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 荷重1.8MPaの荷重たわみ温度が115℃以上である請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 温度23℃、相対湿度50%の雰囲気において測定された表面固有抵抗が1×109〜1×1012Ωの範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 2mm厚さの成形品におけるヘーズ値が90%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 2mm厚さの成形品におけるヘーズ値が80%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の帯電防止耐熱性ポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
- 上記成形品は電子部品搬送体、もしくは、電気・電子機器などの筐体・部品材料である請求項11に記載の成形品。
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