以下、図面を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について図1Aから図7Cを用いて説明する。
ここでは、エネルギ処置具(治療用処置具)として、例えば腹壁を通して処置を行うための、リニアタイプの外科用処置具12を例にして説明する。
図1Aに示すように、治療処置システム10は、エネルギ処置具12と、エネルギ源(制御部)14と、フットスイッチ16とを備えている。
エネルギ処置具12は、ハンドル22と、シャフト24と、開閉可能な保持部26とを備えている。ハンドル22は、ケーブル28を介してエネルギ源14に接続されている。エネルギ源14には、フットスイッチ(ハンドスイッチでも良い)16が接続されている。
なお、フットスイッチ16は、ペダル16aを備えている。このため、フットスイッチ16のペダル16aを術者が操作することにより、エネルギ源14から外科用処置具12へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。ペダル16aが押圧されているときには、高周波エネルギを適宜に設定した状態(エネルギ出力量、エネルギ出力タイミングなどを制御した状態)に基づいて出力する。ペダル16aの押圧が解除されると、高周波エネルギの出力を強制的に停止させる。
ハンドル22は、術者が握り易い形状に形成され、例えば略L字状に形成されている。ハンドル22の一端には、シャフト24が配設されている。このシャフト24と同軸上のハンドル22の基端からは、上述したケーブル28が延出されている。
一方、ハンドル22の他端側は、術者に把持される把持部である。ハンドル22は、その他端側に並設されるように、保持部開閉ノブ32を備えている。この保持部開閉ノブ32は、ハンドル22の略中央の部分でシャフト24の後述するシース44(図2Aおよび図2B参照)の基端に連結されている。この保持部開閉ノブ32をハンドル22の他端に対して近接および離隔させると、シース44がその軸方向に沿って移動する。ハンドル22は、さらに、保持部開閉ノブ32に並設された状態で、後述するカッタ54を移動させるためのカッタ駆動ノブ34を備えている。
図2Aおよび図2Bに示すように、シャフト24は、筒体42と、この筒体42の外側に摺動可能に配設されたシース44とを備えている。筒体42は、その基端部でハンドル22に固定されている(図1参照)。シース44は、筒体42の軸方向に沿ってスライド可能である。
筒体42の外側には、その軸方向に沿って凹部46が形成されている。この凹部46には、後述する第1の連続電極(出力部)76に接続される第1の電極用通電ライン76bと、後述する第1の離散電極(出力部)78に接続される第2の電極用通電ライン78bとが配設されている。図示しないが、第1および第2の電極用通電ライン76b,78bは、後述する第1および第2の電極コネクタ76a,78aとケーブル28との間に配設され、第1および第2のコネクタ76a,78aから第1の電極用通電ライン76bおよび第2の電極用通電ライン78bを介してケーブル28にかけて、1つにまとめられていることが好適である。
筒体42の内部には、後述する第2の連続電極(出力部)86に接続される第3の電極用通電ライン86bと、後述する第2の離散電極(出力部)88に接続される第4の電極用通電ライン88bとが挿通されている。図示しないが、第3および第4の電極用通電ライン86b,88bは、後述する第3および第4の電極コネクタコネクタ86a,88aとケーブル28との間に配設され、第3および第4の電極コネクタ86a,88aからケーブル28にかけて、1つにまとめられていることが好適である。
シャフト24の筒体42の内部には、駆動ロッド52がその軸方向に沿って移動可能に配設されている。この駆動ロッド52の先端には、薄板状のカッタ(治療補助具)54が配設されている。このため、カッタ駆動ノブ34を操作すると、駆動ロッド52を介してカッタ54が移動する。
カッタ54は、その先端に刃54aが形成され、基端に駆動ロッド52の先端が固定されている。このカッタ54の先端と基端との間には、長溝54bが形成されている。この長溝54bには、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に延びた移動規制ピン56がシャフト24の筒体42に固定されている。このため、カッタ54の長溝54bが移動規制ピン56に沿って移動する。そうすると、カッタ54は真っ直ぐに移動する。このとき、カッタ54は、後述する第1の保持部材62のカッタ案内溝(流路、流体放出溝)62aおよび第2の保持部材64のカッタ案内溝(流路、流体放出溝)64aに配設される。
なお、カッタ54の長溝54bの一端、他端および一端と他端の間の少なくとも3箇所には、移動規制ピン56を係止し、カッタ54の移動を制御するための係止部54cが形成されている。
図1A、図2Aおよび図2Bに示すように、保持部26は、シャフト24の先端に配設されている。図2Aおよび図2Bに示すように、保持部26は、第1の保持部材(第1のジョー)62と、第2の保持部材(第2のジョー)64とを備えている。
第1の保持部材62および第2の保持部材64自体は、それぞれ全体的に絶縁性を有することが好適である。第1の保持部材62は、第1の保持部材本体(以下、主に本体という)72と、この本体72の基端部に設けられた基部74とを一体的に備えている。第1の保持部材本体72および基部74には、カッタ54を案内するためのカッタ案内溝62aが形成されている。
図2Aから図3Cに示すように、第1の保持部材62の本体72には、複数の凹部72aと、保持面72bとが形成されている。
そして、本体72の複数の凹部72aには、1つの第1の連続電極76および複数の第1の離散電極78が配設されている。すなわち、第1の保持部材62には、出力部材やエネルギ放出部として、第1の連続電極76および第1の離散電極78が配設されている。
第1の連続電極(封止部材、第1の接合部材)76は、切れ目なく連続的に形成されている。第1の連続電極76は、例えば略U字状に、第1の保持部材62の本体72の基端部に2つの端部を有するように連続的に形成されている。第1の連続電極76の2つの端部のうちの少なくとも一方は、その一方の端部に配設された第1の電極コネクタ76aに電気的に接続されている。この第1の電極コネクタ76aは、第1の電極用通電ライン76bを介してハンドル22から延出されたケーブル28に接続されている。そして、第1の連続電極76は、エネルギ源14の後述する第1の高周波エネルギ出力回路104に接続されている。
第1の連続電極76には、その2つの端部間に、第1の保持部材62の本体72および基部74とともにカッタ54を案内するカッタ案内溝(便宜的に第1の保持部材62のカッタ案内溝62aと同じ符号62aを付す)が形成されている。
第1の離散電極(維持部材、第2の接合部材)78は、第1の連続電極76の外側に離散的に配設されている。複数の第1の離散電極78は、略U字型の仮想的な軌跡に沿って、略等間隔に同形状のものが配設されている。第1の離散電極78は、例えば円形状に形成されている。第1の離散電極78同士は、互いに対して略所定の間隔に配設され、かつ、各第1の離散電極78は、第1の連続電極76に対しても適当な距離だけ離間した位置に配設されている。第1の離散電極78の位置は、処置を行ったときに、第2の保持部材64の第2の離散電極88との間の生体組織LTが熱により変性することを許容するが、第1の保持部材62の第1の離散電極78同士の間の生体組織LTが熱により変性することを極力防止するとともに、第1の離散電極78と第1の連続電極76との間の生体組織の熱による変性を極力防止した位置にある。
複数の第1の離散電極78は、図示しないが、本体72の内部で互いに対して電気的に接続されているとともに、第1の電極コネクタ76aに並設された第2の電極コネクタ78aに電気的に接続されている。この第2の電極コネクタ78aは、第2の電極用通電ライン78bを介してハンドル22から延出されたケーブル28に接続されている。そして、第1の離散電極78は、エネルギ源14の後述する第2の高周波エネルギ出力回路106に接続されている。
なお、第1の連続電極76および第1の離散電極78の表面のうちの保持面72bは、高さが一段高く形成されている。保持面72bは、第1の連続電極76および第1の離散電極78の表面よりも、対向する第2の保持部材64の本体82に近接し、対向する第2の保持部材64の本体82の保持面(便宜的に符号82bを付す)に当接する。
図3Dに示すように、第1の保持部材62の本体72には、複数の温度センサ80が埋め込まれている。ここでは、図2Aおよび図2Bに示すように、複数の温度センサ80は、第1の離散電極78の裏面または第1の離散電極78の近傍に配設されている。このため、第1の離散電極78に接触する生体組織LTの概略的な温度Tを測定することができる。なお、各温度センサ80は、第1の連続電極76の第1の電極用通電ライン76bおよび第1の離散電極78の第2の電極用通電ライン78bと同様に、温度センサ用信号線80aを介して後述する温度測定回路108に接続されている。
第2の保持部材64は、第2の保持部材本体82と、この本体82の基端部に設けられた基部84とを一体的に備えている。第2の保持部材本体82および基部84には、カッタ54を案内するためのカッタ案内溝64aが形成されている。
第2の保持部材64の本体82には、凹部(便宜的に符号82aを付す)と、保持面82bとが形成されている。
そして、本体82の凹部82aには、第2の連続電極86および第2の離散電極88が配設されている。すなわち、第2の保持部材64には、出力部材やエネルギ放出部として、第2の連続電極86および第2の離散電極88が配設されている。
第2の連続電極(封止部材、第1の接合部材)86は、第1の保持部材62に配設された第1の連続電極76と対称的に配設されている。このため、第2の連続電極86には、その2つの端部間に、第2の保持部材64の本体82および基部84とともにカッタ54を案内するカッタ案内溝(便宜的に第2の保持部材64のカッタ案内溝64aと同じ符号64aを付す)が形成されている。第2の離散電極88は、第1の保持部材62に配設された第1の離散電極78と対称的に配設されている。このため、第2の連続電極86および第2の離散電極88の詳細な説明を省略する。
なお、第2の連続電極86は、第1の電極コネクタ76aが配設された端部とは反対の端部に対向する端部に配設された第3の電極コネクタ86aと電気的に接続されている。また、第3の電極コネクタ86aは、第3の電極用通電ライン86bを介してハンドル22から延出されたケーブル28に接続されている。そして、第2の連続電極86は、エネルギ源14の後述する第1の高周波エネルギ出力回路104に接続されている。
第2の離散電極88は、第3の電極コネクタ86aに並設された第4の電極コネクタ88aに電気的に接続されている。この第4の電極コネクタ88aは、第4の電極用通電ライン88bを介してハンドル22から延出されたケーブル28に接続されている。そして、第2の離散電極88は、エネルギ源14の後述する第2の高周波エネルギ出力回路106に接続されている。
なお、第1および第2の保持部材62,64のカッタ案内溝62a,64aは互いに対向した状態に形成され、シャフト24の軸方向に沿って形成されている。そして、2つのカッタ案内溝62a,64aで1つのカッタ54を案内することができる。
図2Aおよび図2Bに示すエネルギ処置具12のシャフト24の筒体42およびシース44には、それぞれ後述する蒸気(気体)や液体(組織液)などの流体が放出される流体放出口42a,44aが形成されている。これら流体放出口42a,44aは、シャフト24の基端側に形成されている。
ここでは図示しないが、シース44の流体放出口44aの外周面には、接続口金が設けられていることも好適である。このとき、後述する流体は、カッタ案内溝62a,64a、シャフト24の筒体42の流体放出口42a、シャフト24のシース44の流体放出口44a、および、接続口金を通して排出される。この場合、接続口金内を吸引することによって生体組織LTから放出される蒸気や液体などの流体を流体放出口42a,44aから容易に排出することができる。
なお、流体放出口42a,44aはシャフト24に設けられていることが好適であるが、シャフト24ではなく、ハンドル22に設けられていることも好適である。
第1の保持部材62は、その基部74が、シャフト24の筒体42の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材64は、その基部84が、シャフト24の軸方向に対して直交する方向に配設された支持ピン92によってシャフト24の筒体42の先端部に回動可能に支持されている。第2の保持部材64は、支持ピン92の軸回りに回動することにより第1の保持部材62に対して開閉可能である。この第2の保持部材64は、第1の保持部材62に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材92aにより付勢されている。
これら第1および第2の保持部材62,64の本体72,82の外表面は、滑らかな曲面状に形成されている。同様に、これら第1および第2の保持部材62,64の基部74,84の外表面も、滑らかな曲面状に形成されている。第1の保持部材62に対して第2の保持部材64が閉じた状態では、それぞれの保持部材62,64の本体72,82の断面は、略円形または略楕円状に形成されている。第1の保持部材62に対して第2の保持部材64が閉じた状態では、第1および第2の保持部材62,64の本体72,82の保持面72b,82bが互いに対向し、基部74,84は、円筒状に形成されている。この状態では、第1および第2の保持部材62,64の本体72,82の基端部の径の方が、基部74,84の径よりも大きく形成されている。そして、本体72,82と基部74,84との間には、それぞれ段差94a,94bが形成されている。
ここで、第1の保持部材62および第2の保持部材64は、第2の保持部材64が第1の保持部材62に対して閉じた状態で、その基部74,84を合わせた略円形または略楕円状の外周面が、筒体42の先端部の外周面に対して略面一または僅かに大径に形成されている。このため、シース44を筒体42に対してスライドさせて、シース44の先端で第1の保持部材62および第2の保持部材64の基部74,84を覆うことが可能である。この状態では、図2Aに示すように、弾性部材92aの付勢力に抗して第1の保持部材62および第2の保持部材64が閉じる。一方、シース44の先端で第1の保持部材62および第2の保持部材64の基部74,84を覆った状態からシース44を筒体42の基端側にスライドさせると、図2Bに示すように、弾性部材92aの付勢力によって第1の保持部材62に対して第2の保持部材64が開く。
また、この実施の形態では、第1の連続電極76の基端部同士の間隔、および、第2の連続電極86の基端部同士の間隔は、それぞれ第1の保持部材62および第2の保持部材64のカッタ案内溝62a,64aの幅の大きさ程度に形成されている(図3A参照)が、第1の連続電極76の基端部同士の間隔、および、第2の連続電極86の基端部同士の間隔は、それぞれ適宜に設定可能である。すなわち、第1の保持部材62および第2の保持部材64のカッタ案内溝62a,64aの縁部から離れた位置に第1の連続電極76および第2の連続電極86が設けられていても良い。
図4に示すように、エネルギ源14の内部には、制御部102と、第1の高周波エネルギ出力回路(第1の制御部)104と、第2の高周波エネルギ出力回路(第2の制御部)106と、温度測定回路108と、表示部110と、スピーカ112とが配設されている。制御部102には、第1の高周波エネルギ出力回路104と、第2の高周波エネルギ出力回路106と、温度測定回路108と、表示部110と、スピーカ112とが接続されており、制御部102でこれらが制御される。制御部102には、フットスイッチ16が接続され、フットスイッチ16がONに切り換えられる(ペダル16aが押圧される)とエネルギ処置具12による処置が行われ、OFFに切り換えられる(ペダル16aの押圧が解除される)と処置が停止する。表示部110は、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106の出力量(出力量自体、または、どのような処置を行うか(生体組織同士を接合する目的の処置か、生体組織の開口を封止する目的の処置か等))、温度センサ80で検出した温度の表示やエネルギの出力タイミングを制御部102で制御する際の設定手段(コントローラ)として機能する。表示部110が設定したもの(各種の設定値等)を表示する表示機能を有することはもちろんである。
なお、第1の高周波エネルギ出力回路104は、第1および第2の連続電極76,86を通して高周波エネルギを出力するとともに、第1および第2の連続電極76,86間の生体組織のインピーダンスZを検出可能である。第2の高周波エネルギ出力回路106は、第1および第2の離散電極78,88を通して高周波エネルギを出力するとともに、第1および第2の離散電極78,88間の生体組織のインピーダンスZを検出可能である。すなわち、第1の高周波エネルギ出力回路104と第1および第2の連続電極76,86は、第1および第2の連続電極76,86間の生体組織LTのインピーダンスZを計測するセンサ機能を有する。第2の高周波エネルギ出力回路106と第1および第2の離散電極78,88は、第1および第2の離散電極78,88間の生体組織LTのインピーダンスZを計測するセンサ機能を有する。なお、温度測定回路108と温度センサ80とにより温度を計測するセンサ機能を有する。
次に、この実施の形態に係る治療処置システム10の作用について説明する。
図5には、第1の高周波エネルギ出力回路104と第2の高周波エネルギ出力回路106とによる外科用処置具12の制御フローの一例を示す。図6Aには、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力と時間の関係を示すとともに、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力と時間の関係を示すグラフを示す。図6Bには、図6Aに示すようにエネルギを入力したときに通常計測されるインピーダンスZの時間に対する概略的な変化を示す。
術者は、予めエネルギ源14の表示部110を操作して、治療処置システム10の出力条件を設定しておく(STEP1)。具体的には、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力(設定電力P1set[W],P2set[W])、生体組織LTのインピーダンスZの閾値Z1,Z2、後述する温度Tの閾値T1等を設定しておく。
図2Aに示すように、第1の保持部材62に対して第2の保持部材64を閉じた状態で、例えば、腹壁を通して腹腔内に外科用処置具12の保持部26およびシャフト24を挿入する。外科用処置具12の保持部26を処置対象の生体組織LTに対して対峙させる。
第1の保持部材62および第2の保持部材64で処置対象の生体組織LTを保持するため、ハンドル22の保持部開閉ノブ32を操作する。このとき、筒体42に対してシース44をシャフト24の基端部側に移動させる。弾性部材92aの付勢力によって、基部74,84間を筒状に維持することができなくなり、第1の保持部材62に対して第2の保持部材64が開く。
処置対象の生体組織LTを第1の保持部材62の第1の連続電極76と第2の保持部材64の第2の連続電極86との間、および、第1の保持部材62の第1の離散電極78と第2の保持部材64の第2の離散電極88との間に配置する。この状態で、ハンドル22の把持部開閉ノブ32を操作する。このとき、筒体42に対してシース44をシャフト24の先端部側に移動させる。弾性部材92aの付勢力に抗してシース44によって、基部74,84間を閉じて筒状にする。このため、基部74に一体的に形成された第1の保持部材62の本体72と、基部84に一体的に形成された第2の保持部材64の本体82とが閉じる。すなわち、第1の保持部材62に対して第2の保持部材64が閉じる。このようにして、処置対象の生体組織LTを第1の保持部材62と第2の保持部材64との間で把持する。
このとき、第1の保持部材62の第1の連続電極76と第2の保持部材64の第2の連続電極86との両方に、処置対象の生体組織LTが接触している。第1の保持部材62の第1の離散電極78と第2の保持部材64の第2の離散電極88との両方に、処置対象の生体組織LTが接触している。第1の保持部材62の保持面72bのうちの縁部と第2の保持部材64の保持面82bのうちの縁部(図示せず)との対向する接触面の両方に、処置対象の生体組織LTの周辺組織が密着している。
このように、第1の保持部材62および第2の保持部材64の間に生体組織を把持した状態で、フットスイッチ16のペダル16aを操作する。エネルギ源14の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(STEP2)。
スイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、エネルギ源14の第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織(第1の領域の生体組織)LTに高周波エネルギを供給する(STEP3)。
そして、第1の高周波エネルギ出力回路104は、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86の間に、表示部110で予め設定した設定電力P1set[W]、例えば20[W]〜80[W]程度の電力を供給する。
このため、第1の高周波エネルギ出力回路104は、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86の間の処置対象の生体組織LTに高周波電流を通電する。すなわち、電極76,86間に把持された生体組織LTに高周波エネルギを与える。このため、電極76,86間に把持した生体組織LT内にジュール熱を発生させて生体組織LT自体が加熱される。ジュール熱の作用により電極76,86間に保持された生体組織LT内の細胞膜を破壊して細胞膜内物質を放出し、コラーゲンをはじめとする細胞外成分と均一化する。電極76,86間の生体組織LTには高周波電流が流されているので、このように均一化された組織LTに更なるジュール熱が作用し、例えば生体組織LTの接合面同士、組織の層間同士の接合が行われる。したがって、電極76,86間に高周波電流が通電されると、生体組織LT自体が発熱して脱水されながら生体組織LTの内部が変性(生体組織LTが焼灼)される。このため、第1の連続電極76および第2の連続電極86によって生体組織LTが連続的(略U字状の状態)に変性される。
このとき、把持した生体組織LTのインピーダンスZは、第1の連続電極76および第2の連続電極86を介して高周波エネルギ出力回路104により測定されている。処置を始めたときのインピーダンスZ0は、図6Bに示すように、例えば60[Ω]程度である。そして、生体組織LTに高周波電流が流れて生体組織LTが焼灼されるにつれてインピーダンスZの値が上昇していく。
このように、生体組織LTが焼灼されるにつれて、生体組織LTから流体(例えば液体(血液)および/または気体(水蒸気))が放出される。このとき、第1の保持部材62の保持面72bおよび第2の保持部材64の保持面82bは、第1の連続電極76および第2の連続電極86よりも生体組織LTに密着している。このため、保持面72b,82bは流体が第1の保持部材62および第2の保持部材64の外側に逃げるのを抑制する障壁部(ダム)として機能する。したがって、生体組織LTから放出された流体を、第1の連続電極76の内側のカッタ案内溝62a、第2の連続電極86の内側のカッタ案内溝64aに流入させて、第1の保持部材62および第2の保持部材64からシャフト24に例えば吸引して流す。生体組織LTから流体が放出されている間は、カッタ案内溝62a,64aにその流体を流入させ続ける。このため、生体組織LTから温度が上昇した状態で放出された流体によってサーマルスプレッドが生じることを防止し、処置対象でない部分に影響を与えることを防止することができる。
次に、制御部102は、高周波エネルギ出力回路104からの信号に基づいて演算した高周波エネルギ出力時のインピーダンスZが予め表示部110で設定(STEP1)した閾値Z1(図6Bに示すように、ここでは約1000[Ω])以上となったか判断する(STEP4)。閾値Z1は、例えば、予め分かっているインピーダンスZの値の上昇率が鈍化する位置にある。そして、インピーダンスZが閾値Z1よりも小さいと判断した場合、STEP3に処理を戻す。すなわち、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86の間に把持した生体組織LTに対して処置のための高周波エネルギを与え続ける。
インピーダンスZが閾値Z1よりも大きくなったと判断した場合、制御部102から第1の高周波エネルギ出力回路104に信号が伝達される。そして、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86への出力が停止される(STEP5)。
次に、エネルギ源14の第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織(第2の領域の生体組織)LTにエネルギを供給する(STEP6)。すなわち、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86の生体組織LTにエネルギを供給するのとは、時間的にオフセットした状態(出力タイミングをオフセットした状態)で、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTにエネルギを供給する。
そして、第2の高周波エネルギ出力回路106は、第1の保持部材62の第1の離散電極78および第2の保持部材64の第2の離散電極88の間に、表示部110で予め設定した設定電力P2set[W]、例えば20[W]〜80[W]程度の電力を供給する。なお、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88への出力は、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86への出力よりも大きくても小さくても良い。このような出力の大小は処置の対象や目的等によって処置前に適宜に設定される(STEP1)。
このため、第1の保持部材62および第2の保持部材64間に把持した生体組織LTに高周波電流が流れ、生体組織LTをジュール熱の作用により発熱させて組織の焼灼(組織の変性)を開始する。そうすると、第1の離散電極78および第2の離散電極88によって、これら離散電極78,88間の生体組織LTが離散的に変性される。このとき、把持した生体組織LTのインピーダンスZは、第1の離散電極78および第2の離散電極88を介して第2の高周波エネルギ出力回路106により測定されている。処置を始めたときのインピーダンスZは、生体組織LTが変性されていないので、図6B中の閾値Z1を閾値Z2に置き換えることができ、最初のインピーダンスZは、例えばZ0である。そして、生体組織LTに高周波電流が流れて生体組織LTが焼灼されるにつれてインピーダンスZの値が上昇していく。
さらに、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を開始した後、好ましくは第1の高周波エネルギ出力回路104から出力したときから継続して、第1の保持部材62の本体72に埋め込まれた温度センサ80によって、第1の離散電極78に当接する生体組織LTの近傍の温度Tを測定し続ける。そして、温度Tが所定の温度T1に到達したか否か判断する(STEP7)。温度T1に到達していたら、第2の高周波エネルギ出力回路106への出力を停止させる(STEP8)。第1の離散電極78に当接する生体組織LTの近傍の温度Tが温度T1よりも下がるのを待つ。温度Tが設定温度T1よりも下がったと判断したら(STEP9)、再び第2の高周波エネルギ出力回路106にエネルギを供給する(STEP10)。このように、温度T1を閾値として、第2の高周波エネルギ出力回路106からのエネルギの供給のON/OFFを自動的に切り替える。
そして、生体組織LTが焼灼されるにつれて、生体組織LTから流体(例えば液体(血液)および/または気体(水蒸気))が放出される。このとき、第1の保持部材62の保持面72bおよび第2の保持部材64の保持面82bは、第1の離散電極78および第2の離散電極88よりも生体組織LTへの密着度が高い。このため、保持面72b,82bは流体が第1の保持部材62および第2の保持部材64の外側に逃げるのを抑制する障壁部(ダム)として機能する。したがって、生体組織LTから放出された流体を、第1の離散電極78の内側の第1の連続電極76よりもさらに内側、第2の離散電極88の内側の第2の連続電極86よりもさらに内側のカッタ案内溝62a,64aに流入させて、第1および第2の保持部材62,64からシャフト24に例えば吸引して流す。生体組織LTから流体が放出されている間は、カッタ案内溝62a,64aにその流体を流入させ続ける。このため、生体組織LTから温度が上昇した状態で放出された流体によってサーマルスプレッドが生じることを防止し、処置対象でない部分に影響を与えることを防止することができる。このとき、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力タイミングと第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力タイミングとはオフセットされているので、互いに干渉することを防止した状態で、流体をカッタ案内溝62a,64aに流すことができる。
次に、制御部102は、第2の高周波エネルギ出力回路106からの信号に基づいて演算した高周波エネルギ出力時のインピーダンスZが予め設定した閾値Z2(図6Bに示すように、ここでは約1000[Ω])以上となったか判断する(STEP11)。閾値Z2は、予め分かっているインピーダンスZの値の上昇率が鈍化する位置に設定されていることが好ましい。そして、インピーダンスZが閾値Z2よりも小さいと判断した場合、STEP6に処理を戻す。すなわち、温度T1によるON/OFFの切り換えが行われながら、第1の保持部材62の第1の離散電極78および第2の保持部材64の第2の離散電極88間に把持した生体組織LTに対して処置のための高周波エネルギを与える。
インピーダンスZが閾値Z2よりも大きくなったと判断した場合、制御部102から第2の高周波エネルギ出力回路106に信号が伝達される。そして、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88への出力が停止される(STEP12)。
そして、出力を停止させた後、制御部102はスピーカ112からブザーを発する(STEP13)。このようにして、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88を通して行った生体組織LTへの処置の終了を容易に認識させることができる。
なお、フットスイッチ16のペダル16aを押圧したままで処置は図5に示す「スタート」から「エンド」まで行われるが、「スタート」から「エンド」に至るまでの間にペダル16aの押圧を解除すると、制御部102は、そのペダル16aの押圧を解除した時点で強制的に処置を停止させる。すなわち、ペダル16aの押圧を解除すると、制御部102は、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106のいずれの出力も停止させる。
ここで、このような作用を有する治療処置システム10を用いて、図7Aから図7Cに示すように、例えば小腸の並設させた腸管IC1,IC2同士を接合させ、接合させた腸管IC1,IC2同士をシールする場合について説明する。
エネルギ源14の表示部110を操作して第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を設定しておく。このとき、先に、並設した1対の腸管IC1,IC2同士の接合を行う予定であるので、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を適度に高く設定しておく。
第1の保持部材62の保持面72bおよび第2の保持部材64の保持面82bで、並設させた状態の1対の腸管IC1,IC2を、両腸管IC1,IC2の壁面を挟み込むように保持する。
この状態で、フットスイッチ16のペダル16aを押圧すると、第1の連続電極76と第2の連続電極86との間の生体組織LTにエネルギを供給する。このため、第1の連続電極76および第2の連続電極86により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させる。
そして、第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織LTが所定の閾値Z1に到達したときに第1の高周波エネルギ出力回路104からのエネルギ出力を停止させる。
その後、第1の離散電極78と第2の離散電極88との間の生体組織LTにエネルギを供給する。このため、第1の離散電極78および第2の離散電極88により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させる。
そして、温度Tが所定の温度T1に達したときには、出力を自動的に停止(OFF)し、温度T1よりも下がったときには自動的に出力(ON)し、これら出力のON/OFFを繰り返しながら第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織のインピーダンスZが所定の閾値Z2に到達したときに第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を完全に停止させる。
なお、第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織LTのインピーダンスZが所定の閾値Z1に到達したときは、第1の連続電極76および第2の連続電極86により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させて接合している。第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTのインピーダンスZが所定の閾値Z2に到達したときは、第1の離散電極78および第2の離散電極88により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させて接合されている。このように、腸管IC1,IC2同士は、連続的および離散的に変性されて接合(吻合)される。
そして、第1の保持部材62および第2の保持部材64の間に腸管IC1,IC2同士を把持したままで、図1Aに示すカッタ駆動ノブ34を操作して、図2Aおよび図2Bに示す状態からカッタ案内溝62a,64aに沿ってカッタ54を前進させる。カッタ54が前進するにつれて、その先端の刃54aによって、第1の連続電極76および第2の連続電極86により変性されて接合された部位の内側を切断する。そして、カッタ54は、第1の連続電極76および第2の連続電極86により略U字型に変性された部位の内側を、その先端部近傍まで切断する。このため、図7Aに示すように、腸管IC1,IC2の壁面の略U字状に封止された間の部分が切断され、腸管IC1,IC2の壁面同士が連通する。
この状態でカッタ駆動ノブ34を操作してカッタ54を後退させる。その後、ハンドル22の保持部開閉ノブ32を操作して第1および第2の保持部材62,64を開く。このとき、腸間膜M側の第1の吻合部AN1、腸間膜Mがある側に対して反対側の第2の吻合部AN2が形成されている。例えば図7Bに示すように、第1の吻合部AN1および第2の吻合部AN2の連続的に接合された外側の部分は、離散的に変性されている。
そして、再びエネルギ源14の表示部110を操作して処置対象(腸管IC1,IC2のシール)に合わせて第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力を高く設定しておく。
第1の保持部材62および第2の保持部材64を閉じて腸管IC1,IC2同士の端部を保持する。この状態でフットスイッチ16のペダル16aを押圧して、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86にエネルギを閾値Z1に達するまで与える。このため、腸管IC1,IC2同士の端部を第1の連続電極76および第2の連続電極86で接合してシール部SPを形成する。
このため、図7Cに示すように、腸管IC1,IC2同士の端部が第1の連続電極76および第2の連続電極86により変性されてシールされる。すなわち、腸管IC1,IC2同士の端部には、シール部SPが形成される。このとき、図7C中の7A−7A線に沿う断面は、概略的には、図7Aに示すような状態にある。このため、腸管IC1,IC2同士は、端部がシール部SPで密封された状態で吻合されている。
その後、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88にエネルギを閾値Z2に達するまで与える。このとき、上述したように、温度Tが閾値T1に到達したときには出力を停止(OFF)し、閾値T1よりも低くなったときには出力(ON)し、腸管IC1,IC2同士の端部を第1の離散電極78および第2の離散電極88で接合する。そして、インピーダンスZが閾値Z2に到達した時点で第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を停止させる。
なお、シール部SPの余分な部位は、例えばカッタ54により切断される。このとき、腸管IC1,IC2同士の封止された端部(シール部SP)のうち、連続的に接合された周囲の部分は、図7Bに示すのと同様に、離散的に変性されている。すなわち、腸管IC1,IC2のうち、第1の離散電極78および第2の離散電極88で変性させて接合させた部位の間の生体組織は、変性されていない。このため、第1の離散電極78および第2の離散電極88で生体組織を接合した部分の周囲(近傍)は、変性されていない腸管IC1,IC2同士の生体組織が接触(密着)した状態にある。
したがって、腸間膜M側の第1の吻合部AN1は、腸管IC1,IC2同士が密着する方向に力が働く。そうすると、第1の離散電極78および第2の離散電極88で生体組織を変性させた部位が、より確実に生体組織同士を密着させるように力を発揮する。さらに、腸間膜Mがある側に対して反対側の第2の吻合部AN2は、腸管IC1,IC2同士が開く方向に力F1が働くが、第1の離散電極78および第2の離散電極88で生体組織を変性させた部位が、生体組織同士を密着させるように力を発揮する。したがって、腸管IC1,IC2の変性されていない生体組織同士の相互ネットワークが生じ、生体組織の組織再生力を発揮して、より早期に腸管IC1,IC2の生体組織が再生される。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
第1の連続電極76および第1の離散電極78が第1の保持部材62に別々に配置され、第2の連続電極86および第2の離散電極88が第2の保持部材64に別々に配置されているので、第1の高周波エネルギ出力回路104からの第1の連続電極76および第2の連続電極86への出力と、第2の高周波エネルギ出力回路106からの第1の離散電極78および第2の離散電極88への出力とを別々に設定することができる。そして、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力を停止させた後に第2の高周波エネルギ出力回路106から出力させて生体組織LTに処置を行う。すなわち、出力タイミングをオフセットしているので、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力により第1の連続電極76および第2の連続電極86から生じた流体と、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力により第1の離散電極78および第2の離散電極88から生じた流体とが干渉することを防止することができる。このため、生体組織LTの処置により生じた流体を確実にカッタ案内溝62a,64aに導くことができる。
また、処置ごとに第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106からのそれぞれの出力を設定することができるので、種々の処置に容易に対応することができ、処置の汎用性を広げることができる。すなわち、表示部110を操作してその設定を変更するだけで、外科用処置具12を様々な用途に合わせて最適に設定して処置を行うことができる。
上述したように、第1の保持部材62の保持面72bに第1の連続電極76および第1の離散電極78を配置し、第2の保持部材64の保持面82bに第2の連続電極86および第2の離散電極88を配置した。このため、第1の保持部材62の第1の連続電極76と第2の保持部材64の第2の連続電極86との間の生体組織(例えば腸管IC1,IC2同士)を加熱して変性させて連続的に接合させることができる。したがって、例えば管状などの生体組織同士を接合させる際には、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を大きくし、生体組織同士をシールする際には第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力を大きくするなど、処置を最適な状態で行うことができる。
このとき、例えば図7Bに示すように、生体組織同士を連続的に変性させて接合した部位と、離散的に変性させて接合した部位とは、近接した位置にある。そして、離散的に変性させて接合した部位の周囲の生体組織間は、変性されていない部分が存在する。このため、離散的に変性させて接合した部位の周囲の変性されていない生体組織を、互いに接触(密着)させた状態に維持することができる。すなわち、第1の離散電極78および第2の離散電極88は、例えば離れる方向の力F1が加えられる生体組織同士を密着させた状態に維持するのに大きな役割を果たす。
例えば2つの腸管IC1,IC2同士を吻合させる場合、図7Aおよび図7Cに示す腸間膜Mがある側に対して反対側は、互いの腸管IC1,IC2同士が離れる方向に力F1が働く。しかし、第1の離散電極78および第2の離散電極88により腸管IC1,IC2同士が離散的に接合されているので、腸管IC1,IC2同士を離散的に接合することができる。このため、腸管IC1,IC2同士を、互いに密着させた状態に維持することができる。
したがって、第1の離散電極78および第2の離散電極88により接合した生体組織同士の部位は、生体組織同士を互いに対して引き寄せて密着させた状態を維持する役割を果たす。すなわち、第1の離散電極78および第2の離散電極88により接合した生体組織同士の部位は、生体同士の癒着を維持する役割を果たす。このため、密着(癒着)した生体組織同士の相互ネットワークを生じさせ、生体組織の組織再生力をより発揮し易くして、より早期に生体組織を再生させることができる。
なお、この実施の形態では、第1の保持部材62の第1の離散電極78は、略等間隔に配置され、かつ、それぞれ略同じ面積を有するものとして説明したが、隣接する離散電極78同士の間隔が異なっていたり、離散電極78の面積がそれぞれ異なっていたりすることも好適である。離散電極78で組織を離散的に処置した場合、その離散電極78に接触した部位は変性されるが、その離散電極78と、その離散電極78に隣接する離散電極78との間の生体組織の一部が変性されずに生体組織同士を接触させた状態に維持することができるのであれば、離散電極78は種々の変更が許容される。もちろん、第2の保持部材64の第2の離散電極88も同様である。
また、第1の保持部材62の複数の第1の離散電極78および第2の保持部材64の複数の第2の離散電極88をそれぞれヒータ(発熱要素)に変更したり、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86をヒータ(発熱要素)に変更したりすることも好適である。または、第1の保持部材62の複数の第1の離散電極78および第2の保持部材64の複数の第2の離散電極88と、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86との両者をヒータに変更することも好適である。さらには、ヒータを電極の裏面に配設して、ヒータから電極に熱伝導させて生体組織を処置するように、高周波エネルギと熱エネルギの処置を行うことも可能である。ヒータは、例えば図3Dに示す温度センサ80の代わりに配置される。ヒータを用いる場合、例えばエネルギ源14の第1の高周波エネルギ出力回路104は、ヒータにエネルギを与えるための回路としても用いられる。
また、この実施の形態では、カッタ54を設ける場合について説明したが、カッタ54は治療対象によっては設けられていなくても良い。カッタ54が設けられていない場合、上述したカッタ案内溝62a,64aは、例えば生体組織から生じる蒸気や液体などの流体をエネルギ処置具12のハンドル22側に導く流体放出溝(流路)として機能し得る。
ここでは、図1Bに示すように、第1の保持部材62および第2の保持部材64に電位が異なる電極(第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の電位と、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の電位)を有するバイポーラ型の高周波エネルギ処置を行う外科用処置具12を用いることについて説明したが、図3Eに示すように、モノポーラ型の高周波エネルギ処置を行う外科用処置具を用いることも好適である。この場合、処置される患者Pには、対極板130が装着される。この対極板130は、通電ライン132を介してエネルギ源14に接続されている。さらに、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86との間は、第1の電極用通電ライン76bおよび第3の電極用通電ライン86bが電気的に接続された同電位の状態にある。また、第1の保持部材62の第1の離散電極78および第2の保持部材64の第2の離散電極88との間は、第2の電極用通電ライン78bおよび第4の電極用通電ライン88bが電気的に接続された同電位の状態にある。これらの場合、連続電極76,86および離散電極78,88に接触する生体組織LTの面積はそれぞれ小さいため、電流密度が高いが、対極板130の電流密度は低くなる。このため、第1の保持部材62および第2の保持部材64で把持される生体組織LTは加熱されるのに対して、対極板130に接触した生体組織LTの加熱は無視できる程度に小さい。したがって、第1の保持部材62および第2の保持部材64で把持した部分のうち、連続電極76,86および離散電極78,88に接触した生体組織LTのみ加熱されて変性される。
また、図示しないが、モノポーラ型の外科用処置具を用いる場合、第1の保持部材62および第2の保持部材64のうち、一方の保持部材だけに電極が配設されていることも好適である。
また、この実施形態では、2つの高周波エネルギ出力回路104,106を用いることについて説明したが、2つに限らず、3つや4つなど、処置にあわせて適宜に用いることができる。すなわち、処置の際に、表示部110でより細かく設定することができ、処理の最適化を図ることができる。
この実施の形態では図6Aに示すようにエネルギを出力することとしたが、図6Cに示すように、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力に比べて、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を大きくして、所定の温度T1に到達させる時間を短くしつつ、インピーダンスZを閾値Z2に早く到達させて、処置時間を短くするようにしても良い。
また、図6Dに示すように、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力と、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力とを出力タイミングをオフセットした状態で交互に出力することも好適である。また、インピーダンスZ1、Z2及び、設定電力P1set、P2setを術者が設定する構成の説明を行ったが、あらかじめ適正値をプログラムされても良い。
[第1の実施の形態の第1の変形例]
次に、第1の実施の形態の第1の変形例について図8Aおよび図8Bを用いて説明する。第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材又は同一の作用を奏する部材については説明を省略する。以下、第2の変形例から第4の変形例についても同様である。
図8Aに示すように、第1の連続電極76および第1の離散電極78は、図3Aに示す第1の実施の形態と略同じ位置に配設されている。
図8Aおよび図8Bに示すように、第1の保持部材62の本体72には、第1の連続電極76の外側に、蒸気や高温の液体などの流体の流路として第1の流体放出溝(連続電極用流体放出溝)152が形成されている。第1の流体放出溝152の外側には、第1の連続電極76の作用により放出された蒸気や高温の液体などの流体が第1の流体放出溝152の中に入り込むように連続電極用障壁部(ダム)154が形成されている。図8Bに示すように、障壁部154は、その保持面72bの平面に対して突出されている。
本体72には、第1の離散電極78の外周に、蒸気や高温の液体などの流体の流路として第2の流体放出溝(離散電極用流体放出溝)162が形成されている。第2の流体放出溝162の外周には、第1の離散電極78の作用により放出された蒸気や高温の液体などの流体が第2の流体放出溝162の中に入り込むように離散電極用障壁部164が形成されている。図8Bに示すように、障壁部164は、その保持面72bの平面に対して突出されている。
これら第1の流体放出溝152および第2の流体放出溝162は、連通路170によって連通されている。各連通路170は、管路として形成されている。すなわち、各連通路170は、本体72の内部に形成されている。そして各連通路170は、カッタ案内溝62aに基部74で連通されている。すなわち、第1の流体放出溝152および第2の流体放出溝162は、基部74でカッタ案内溝62aに連通されている。
なお、第2の保持部材64にも同様に、第2の連続電極86の外側に流体放出溝(便宜的に符号172を付す)が形成され、その流体放出溝172の外側に障壁部(便宜的に符号174を付す)が形成されている。また、第2の保持部材64の第2の離散電極88の外周に流体放出溝(便宜的に符号182を付す)が形成され、その流体放出溝182の外周に障壁部(便宜的に符号184を付す)が形成されている。そして、第2の連続電極86の外側の流体放出溝172と、第2の離散電極88の外周の流体放出溝182とは、連通路(便宜的に符号190を付す)によって連通されている。
次に、この変形例に係る治療処置システム10の概略的な作用について説明する。
第1の実施の形態で説明したように、処置対象の生体組織LTを第1の保持部材62と第2の保持部材64との間で保持する。このとき、第1の保持部材62の本体72の障壁部154,164と、第2の保持部材64の本体82の障壁部174,184とが生体組織LTに密着するとともに、生体組織LTが第1の連続電極76および第2の連続電極86と、第1の離散電極78および第2の離散電極88とに接触する。
この状態で、フットスイッチ16のペダル16aを操作する。エネルギ源14から第1の連続電極76および第2の連続電極86にエネルギが供給される。そして、第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織LTが高周波エネルギによって加熱される。このとき、例えば、その生体組織LTの加熱された部分から蒸気や液体などの流体が放出される。
ここで、第1の保持部材62の本体72の第1の流体放出溝152は第1の連続電極76の外側に配設され、第2の流体放出溝162は第1の離散電極78の外周に配設されている。第2の保持部材64の本体82の第1の流体放出溝172は第2の連続電極86の外側に配設され、第2の流体放出溝182は第2の離散電極88の外周に配設されている。
このため、第1および第2の連続電極76,86の作用により放出された流体は、カッタ案内溝62a,64aに流れ込むとともに、第1の流体放出溝152,172の内部に流れ込む。そして、流体は障壁部154,174により外側に流出することが防止されている。このため、生体組織LTから放出された流体は障壁部154,174よりも内側に閉じ込められて、外側に逃げることが防止されている。すなわち、障壁部154,174は、生体組織LTから放出された流体が障壁部154,174よりも外側に漏れ出すことを防止するダムの役割を果たす。
そして、流体は、シャフト24の筒体42の流体放出口42aを通してシース44の流体放出口44aから外科用処置具12の外部に排出される。
第1の連続電極76および第2の連続電極86を用いた処置の後、出力タイミングがオフセットされた状態で第1の離散電極78および第2の離散電極88にエネルギが供給される。
第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTが高周波エネルギによって加熱される。このとき、例えば、その生体組織LTの加熱された部分から蒸気や液体などの流体が放出される。
第1および第2の離散電極78,88の作用により放出された流体は、第2の流体放出溝162,182の内部に流れ込む。そして、流体は障壁部164,184により外側に流出することが防止されている。このため、生体組織LTから放出された流体は障壁部164,184よりも内側に閉じ込められて、外側に逃げることが防止されている。すなわち、障壁部164,184は、生体組織LTから放出された流体が障壁部164,184よりも外側に漏れ出すことを防止するダムの役割を果たす。
第2の流体放出溝162,182に流れ込んだ流体は、連通路170,190を通して第1の流体放出溝152,172に流れ込む。そして、この流体は、第1の保持部材62の基部74および第2の保持部材64の基部84に向かって流れる。さらに、流体は、第1の流体放出溝152,172と例えば基部74,84において連通したカッタ案内溝62a,64aに流れ込む。または、第1の流体放出溝152,172は、図示しないが、シャフト24の筒体42の内部で連通する。
そして、流体は、シャフト24の筒体42の流体放出口42aを通してシース44の流体放出口44aから外科用処置具12の外部に排出される。
以上説明したように、この変形例によれば、以下の効果が得られる。第1の実施の形態で説明した効果と同様の効果については、記述を省略する。
外科用処置具12により、保持部26で保持した処置対象の生体組織LTに高周波電流を与えるときに、障壁部154,164,174,184を密着させることによって、処置対象の生体組織LTから放出される流体が、第1の保持部材62の障壁部154,164および第2の保持部材64の障壁部174,184に向かって流れても、その流体を第1の保持部材62の第1および第2の流体放出溝152,162、第2の保持部材64の第1および第2の流体放出溝172,182、さらには連通路170,190内に導入することができる。
このため、生体組織LTの処置の際に高周波エネルギにより処置された部位から放出される流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、生体組織LTの処置の際に影響を及ぼす位置を、第1の連続電極76と第2の連続電極86との間、および、第1の離散電極78と第2の離散電極88との間に高周波電流を通電した生体組織LTに限定することができる。
そして、第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織LTと、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTとから発生する流体の流出タイミングをずらしているので、流体の流路(第1および第2の流体放出溝152,162,172,182および連通路170,190)内で流体同士が干渉することを防止することができる。
したがって、この変形例によれば、生体組織LTから生じる蒸気や液体(高温の体液)等の流体を外科用処置具12の外側に、例えばシャフト24の基端部側やハンドル22側で排出することによって、処置対象の生体組織LTの周辺の生体組織に蒸気や液体(体液)等の流体により影響を与えることを抑止することができる。
このように、蒸気や液体などの流体を組織と接触しない位置まで導くことは生体組織LTへの熱影響を抑止する上で重要であり、保持部26の周囲を覆うような、保持部26よりも大きい組織に処置を行う場合には熱影響を保持部26の外側に及ぼすことを防止することができる。保持部26に小さいながらも蒸気や液体などの流体が漏れ出す開放部(空間)が形成されてしまった場合はその部位より流体が放出され、保持部26の周囲の生体組織LTに熱影響をもたらすためである。
また、そのような開放部をなくすために電極(エネルギ放出部)76,78,86,88の周囲を障壁部154,164,174,184で覆うことを行なっても、生体組織LTから発生する蒸気圧力等の流体圧力により開放部が形成され、流体が放出される可能性がある。そのため、流体圧力の上昇による不要な流体の放出を抑えるとともに、流体を所定方向に導き、放出する流路(第1および第2の流体放出溝152,162,172,182および連通路170,190)を設けることは有用な手段である。
[第1の実施の形態の第2の変形例]
次に、第1の実施の形態の第2の変形例について図8Cを用いて説明する。
図8Cに示すように、連通路170(以下、第1の連通路とする)は、管路として形成されている。この第1の連通路170には、本体72でカッタ案内溝62aにも連通された管路状の第2の連通路170aが形成されている。
このように、生体組織LTから発生した流体を管路状の第1および第2の連通路170,170aを通すことによって、生体組織LTに例えば高温である可能性がある流体を触れさせることを極力防止することができる。
[第1の実施の形態の第3の変形例]
次に、第1の実施の形態の第3の変形例について図9Aから図12Bを用いて説明する。
図9Bに示すように、第1および第2の流体放出溝152,162の連通路170は、第2の変形例の図8Cに示す状態と同様に、管路として形成されている。さらに、第1の蒸気放出溝152とカッタ案内溝62aとを連通する連通路170aも、管路として形成されている。
図9Aおよび図9Bに示すように、第1の保持部材62の本体72および基部74の縁部には、例えば銅などの良熱伝導性を有する冷却パイプ192が固定されている。この冷却パイプ192には、冷却水(液体)や冷気(気体)などの冷媒が流される。
本体72の保持面72bには、例えば銅板などの良熱伝導性を有する冷却板194が配設されている。この冷却板194は、冷却パイプ192に密着した状態で本体72に固定されている。このため、冷却パイプ192内に冷媒を通すと、冷却パイプ192から冷却板194にその冷媒からの熱が伝導される。すなわち、冷却板194は冷却パイプ192からの伝熱によって冷やされる。
そして、図10に示すように、エネルギ源14には、この変形例では、第1の実施の形態で説明した温度測定回路108の代わりに、冷却出力回路108aが制御部102に接続されている。この冷却出力回路108aは、制御部102からの指示により外科用処置具12の冷却パイプ192に冷媒を流すことができる。
次に、この変形例に係る治療処置システム10の作用について説明する。
図11には、第1の高周波エネルギ出力回路104と第2の高周波エネルギ出力回路106とによる外科用処置具12の制御フローの一例を示す。
術者は、予めエネルギ源14の表示部110を操作して、治療処置システム10の出力条件を設定しておく(STEP101)。具体的には、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力(設定電力P1set[W],P2set[W])、生体組織LTのインピーダンスZの閾値Z1,Z2、第2の高周波エネルギ出力回路106からの1回の出力時間(設定時間t1,t2)等を設定しておく。
処置対象の生体組織LTを第1の保持部材62と第2の保持部材64との間で把持する。このとき、第1の保持部材62の第1の連続電極76と第2の保持部材64の第2の連続電極86との両方に、処置対象の生体組織LTが接触している。第1の保持部材62の第1の離散電極78と第2の保持部材64の第2の離散電極88との両方に、処置対象の生体組織LTが接触している。第1の保持部材62の保持面72bのうちの縁部と第2の保持部材64の保持面82bのうちの縁部(図示せず)との対向する接触面の両方に、処置対象の生体組織LTの周辺組織が密着している。このため、冷却板194には生体組織LTが密着している。
このように、第1の保持部材62および第2の保持部材64の間に生体組織LTを把持した状態で、フットスイッチ16のペダル16aを操作する。エネルギ源14の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(STEP102)。
スイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、エネルギ源14の第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86の間の生体組織(第1の領域の生体組織)LTに高周波エネルギを供給する(STEP103)。
このため、第1の高周波エネルギ出力回路104は、図12Aの上段に示すように、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86の間の処置対象の生体組織LTに高周波電流を通電する。すなわち、電極76,86間に把持された生体組織LTに高周波エネルギを与える。このため、第1の連続電極76および第2の連続電極86によって生体組織LTが連続的(略U字状の状態)に変性される。
次に、制御部102は、高周波エネルギ出力回路104からの信号に基づいて演算した高周波エネルギ出力時のインピーダンスZが予め表示部110で設定(STEP101)した閾値Z1(図6Bに示すように、ここでは約1000[Ω])以上となったか判断する(STEP104)。閾値Z1は、予め分かっているインピーダンスZの値の上昇率が鈍化する位置にある。そして、インピーダンスZが閾値Z1よりも小さいと判断した場合、STEP3に処理を戻す。すなわち、第1の保持部材62の第1の連続電極76および第2の保持部材64の第2の連続電極86の間に把持した生体組織LTに対して処置のための高周波エネルギを与え続ける。
インピーダンスZが閾値Z1よりも大きくなったと判断した場合、制御部102から第1の高周波エネルギ出力回路104に信号が伝達される。そして、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86への出力が停止される(STEP105)。
次に、エネルギ源14の第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織(第2の領域の生体組織)LTにエネルギを供給する(STEP106)。すなわち、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極76および第2の連続電極86の生体組織LTにエネルギを供給するのとは、時間的にオフセットした状態(出力タイミングをオフセットした状態)で、図12Aの中段に示すように、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTに高周波電流を通電する。
このため、第1の保持部材62および第2の保持部材64間に把持した生体組織LTに高周波電流が流れ、生体組織LTをジュール熱の作用により発熱させて組織の焼灼(組織の変性)を開始する。そうすると、第1の離散電極78および第2の離散電極88によって、これら離散電極78,88間の生体組織LTが離散的に変性される。このとき、把持した生体組織LTのインピーダンスZは、第1の離散電極78および第2の離散電極88を介して第2の高周波エネルギ出力回路106により測定されている。そして、生体組織LTに高周波電流が流れて生体組織LTが焼灼されるにつれてインピーダンスZの値が上昇していく。
さらに、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を開始した後、設定時間t1が経過したか否か判断する(STEP107)。設定時間t1が経過したときには第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88への出力を停止する(STEP108)。
その直後、冷却出力回路108aは、図12Aの下段に示すように、冷却パイプ192に冷媒を流す(STEP109)。このため、熱伝導率が高い冷却パイプ192の外周面に密着した冷却板194を介して生体組織LTは冷却されている。したがって、第1の離散電極78と第2の離散電極88との間の処置対象の生体組織LTから広がる熱の影響が、冷却板194に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織LTからのサーマルスプレッドが、処置対象の生体組織LTの周囲の生体組織LTを冷却することによって抑えられる。
そして、冷却パイプ192に冷媒を流し始めてから設定時間t2が経過したか否か判断する(STEP110)。設定時間t2が経過したときには冷却出力回路108aからの冷媒の供給を停止させる(STEP111)。
その直後、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極78および第2の離散電極88にエネルギを供給する(STEP112)。そして、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間のインピーダンスZが閾値Z2に到達したか否か判断する(STEP113)。到達していないと判断した場合、STEP106に戻って再び設定時間t2だけ第2の高周波エネルギ出力回路106から出力する。すなわち、インピーダンスZが閾値Z2に到達するまで生体組織LTの焼灼と冷却を繰り返す。
そして、インピーダンスZが閾値Z2に到達したときには、冷却出力回路108aから冷却パイプ192に冷媒を流して冷却板194を介して生体組織LTを冷却する(STEP114)。設定時間t2だけ冷媒を流したか否か判断する(STEP115)。設定時間t2だけ冷媒を流した後、冷媒の供給を止めて生体組織LTの冷却を停止させる(STEP116)。
このような一連の処置が終了した後、スピーカ112からブザーを発して術者に処置の終了を知らせる(STEP117)。
以上説明したように、この変形例によれば、以下の効果が得られる。
この変形例に係る治療処置システム10のうち、上述した変形例で説明した効果と同じ効果については、その説明を省略する。
外科用処置具12により、第1の保持部材62の第1の離散電極78および第2の保持部材64の第2の離散電極88の間に狭持した処置対象の生体組織LTに第2の高周波エネルギ出力回路106からエネルギを与えた直後に、それぞれ冷却されている第1の保持部材62の冷却板194と第2の保持部材64の冷却板194とを生体組織LTに密着させることができる。このため、冷却板194に密着した生体組織LTを冷却することができる。したがって、処置対象の生体組織LTから周辺の生体組織LTに向かってサーマルスプレッドが生じたときの影響を、冷却板194に接触した部分で抑制することができる。そうすると、生体組織LTの処置の際に高周波通電された処置対象の生体組織LTから広がる熱の影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。
したがって、表面を冷却することが可能な冷却板194を第1の保持部材62および第2の保持部材64に設けることによって、サーマルスプレッドが生じる範囲を第1の保持部材62および第2の保持部材64に接触している部分の内側に確実に収めることができる。
また、高温の流体が第1の保持部材62および第2の保持部材64の外部に抜けようとしても、冷却板194にその流体が触れることによって、その流体を冷却することができる。このため、保持部26で狭持した生体組織LTの周辺の生体組織LTに影響を与えることを防止することができる。
また、生体組織LTの処置の際に高周波通電された部位から生じる流体による影響を他の周辺組織に及ぼすことを防止することができる。すなわち、処置範囲を各障壁部98a,98b内に限定することができ、障壁部98a,98bの周囲の部分の生体組織LTは正常な状態を保つので、より早い治癒に貢献することができる。
さらに、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTへの高周波電流の通電と、冷却パイプ192に冷媒を流すのとをオフセットすることにより、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTへの高周波電流の通電により上昇させたインピーダンスZの上昇を抑制することができる。このため、第1の離散電極78および第2の離散電極88の間の生体組織LTをより確実に接合等の処置をすることができる。
なお、この変形例では、第1の連続電極76と第2の連続電極86との間、および、第1の離散電極78と第2の離散電極88との間の高周波電流の通電、冷却パイプ192への冷媒の供給を図12Aに示すように行った例について説明した。その他、図12Bに示す状態に高周波電流を通電させたり、冷却パイプ192に冷媒を供給したりすることも好ましい。すなわち、第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力およびその停止に対してオフセットした状態で、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力およびその停止と、冷却出力回路108aからの出力およびその停止を同時に行うことも好適である。
また、この変形例では、出力時間t1,t2を設定したが、第1の実施の形態で説明したように温度Tを用いて制御を行うことも好ましい。この場合、出力時間t1,t2の代わりに、温度Tの閾値T1を設定する。または、出力時間t1,t2および温度Tの閾値のいずれか早く到達した方を選択して制御を行うことも好適である。
次に、第3の変形例の変形例について図9Cを用いて説明する。
図9Cに示すように、冷却パイプ192は除去されている。その代わりに、本体72および基部74には、一体的に溝状のダクト192a,192bが形成されている。
本体72の保持面72bには、冷却板194が配設されている。この冷却板194により、ダクト192a,192bは密封されている。このため、ダクト192a,192bに流体を通すと、その流体の熱が冷却板194に伝熱される。
次に、第3の変形例のさらなる変形例について図9Dを用いて説明する。
図9Dに示すように、冷却パイプ192は除去されている。その代わりに、本体72および基部74には、一体的に溝状の第1および第2のダクト192a,192bが形成されている。第1および第2のダクト192a,192bは、第1の保持部材62のカッタ案内溝62aの中心軸に対して対称的にそれぞれ1対形成されている。それぞれ1対の第1および第2のダクト192a,192bのうち、一方が冷却水などの冷媒流入用であり、他方が冷媒流出用である。
なお、第2のダクト192bの下側には、第1の流体放出溝152とカッタ案内溝62aとを連通する連通路170が形成されている。
本体72の保持面72bには、薄く柔軟なシート状部材(放熱用部材)194aが配設されている。このシート状部材194aは、例えばシリコーン材により形成されている。このシート状部材194aにより、ダクト192a,192bは密封されている。このため、ダクト192a,192bに流体を通すと、その流体の熱がシート状部材194aを通して生体組織LTに伝熱される。
[第1の実施の形態の第4の変形例]
次に、第1の実施の形態の第4の変形例について図13Aから図16を用いて説明する。この変形例は、第3の変形例の更なる変形例である。
図13Bおよび図13Cに示すように、第1の保持部材62の本体72および基部74の縁部には、冷却パイプ192が固定されている。そして、第1の保持部材62の本体72の保持面72bには、冷却板194が配設されている。この冷却板194は、冷却パイプ192に密着した状態で本体72に固定されている。
図13Aに示すように、第1の保持部材62の本体72には、第1の連続電極76および第1の離散電極78の代わりに、第1の電極202が形成されている。すなわち、第1の電極202は、第1の連続電極76に対応する第1の連続電極206と第1の離散電極78に対応する第1の枝電極208とを備えている。
図示しないが、第2の保持部材64の本体82にも同様に、第2の連続電極86および第2の離散電極88の代わりに、第2の電極(便宜的に符号212を付す)が形成されている。すなわち、第2の電極212は、第2の連続電極86に対応する第2の連続電極(便宜的に符号216を付す)と第2の離散電極88に対応する第2の枝電極(便宜的に符号218を付す)とを備えている。
なお、図14に示すように、エネルギ源14には、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106の代わりに、高周波エネルギ出力回路105が設けられている。
図13Aに示すように、第1の連続電極206は、略U字状に連続的に形成されている。第1の連続電極206の外側には、第1の連続電極206から枝分かれした複数の第1の枝電極(維持部材、第2の接合部材)208が一体的に形成されている。これら第1の枝電極(branched electrodes)208は、第1の連続電極206の軸方向に対して直交する方向に延出されている。
各第1の枝電極208は、略同じ長さ、略同じ幅に形成されている。すなわち、各第1の枝電極208は、第1の連続電極206からそれぞれ略同じ面積だけ延出されている。第1の枝電極208同士の間隔は略等間隔である。
なお、第1の枝電極208は、その第1の枝電極208に接触する生体組織LTを変性させるが、隣接する第1の枝電極208同士の間の生体組織LTの変性を防止する程度の出力である。このような出力は、高周波エネルギ出力回路105から第1の枝電極208に入力されるエネルギの他、第1の枝電極208同士の間隔や第1の枝電極208自体の幅などに依存する。
なお、各第1の枝電極208の長さや幅(太さ)、更には、第1の枝電極208同士の間隔や数は、適宜に設定される。図13A中では、第1の連続電極206の太さは、第1の枝電極208の太さに比べて太く描かれているが、同じ太さであったり、第1の枝電極208の方が太かったりすることも許容される。
次に、この変形例に係る治療処置システム10の作用について説明する。
図15には、第1の高周波エネルギ出力回路105と冷却出力回路108aとによる外科用処置具12の制御フローの一例を示す。
術者は、予めエネルギ源14の表示部110を操作して、治療処置システム10の出力条件を設定しておく(STEP201)。具体的には、高周波エネルギ出力回路105からの出力(設定電力Pset[W])、生体組織LTのインピーダンスZの閾値Z11、冷却出力回路108aからの1回の出力時間(設定時間t12)、高周波エネルギ出力回路105からの出力開始時間と冷却出力回路108aからの出力開始時間との間のタイム差t11、冷却出力回路108aからの出力停止時間と高周波エネルギ出力回路105からの出力停止時間との間のタイム差t13、高周波エネルギ出力回路105からの出力開始時間と高周波エネルギ出力回路105からの出力停止時間との間のタイム差t14等を設定しておく。
処置対象の生体組織LTを第1の保持部材62と第2の保持部材64との間で把持する。このとき、第1の保持部材62の第1の電極202と第2の保持部材64の第2の電極212との両方に、処置対象の生体組織LTが接触している。すなわち、第1の電極202の第1の連続電極206および第1の枝電極208と、第2の電極212の第2の連続電極216および第2の枝電極218との間に処置対象の生体組織LTが接触している。そして、第1の保持部材62の保持面72bのうちの縁部と第2の保持部材64の保持面82bのうちの縁部(図示せず)との対向する接触面の両方に、処置対象の生体組織LTの周辺組織が密着している。このため、冷却板194には生体組織LTが密着している。
このように、第1の保持部材62および第2の保持部材64の間に生体組織LTを把持した状態で、フットスイッチ16のペダル16aを操作する。エネルギ源14の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(STEP202)。
スイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、高周波エネルギ出力回路105からのモニター電流をON(STEP203)とし、エネルギ源14の高周波エネルギ出力回路105から第1の電極202および第2の電極212の間の生体組織LTに高周波エネルギを供給する(STEP204)。
このため、高周波エネルギ出力回路105は、図16の上段に示すように、第1の保持部材62の第1の電極202および第2の保持部材64の第2の電極212の間の処置対象の生体組織LTに高周波電流を通電する。このため、第1の電極202および第2の電極212によって生体組織LTが連続的(略U字状の状態)に変性されるとともに、所定の間隔ごとに枝状に変性される。
その後、設定時間t11が経過したとき(STEP205)、図16の下段に示すように、冷却出力回路108aから冷却パイプ192に冷媒を供給する(STEP206)。そして、設定時間t12が経過したとき(STEP207)、冷媒の供給を停止させる(STEP208)。なお、これらの間、第1の電極202および第2の電極212の間の生体組織LTに高周波電流が通電され続けている。
そして、冷媒の供給の停止から設定時間t13が経過したとき(STEP209)、モニター電流がONの状態を維持し高周波電流の供給を停止させる(STEP210)とともに、第1の電極202および第2の電極212の間の生体組織LTのインピーダンスZの値を判別する(STEP211)。設定値(閾値)Z11に到達していなかったら、設定時間t14が経過したとき(STEP212)、再びSTEP204に戻って、高周波電流の通電および冷媒の供給を繰り返す。
一方、インピーダンスZが設定値Z11に到達していたら高周波エネルギ出力回路105からのモニター電流をOFF(STEP213)にしてスピーカ112からブザーを発して(STEP214)処置を終了させる。
なお、この変形例では、図13Aに示すような形状の第1の電極202を用いる場合について説明したが、図17Aや図17Bに示すような形状の電極を用いることも好ましい。
第1の電極202の第1の枝電極208の変形例について図17Aを用いて説明する。
図17Aに示すように、第1の保持部材62の本体72の最も先端側(基部74に対して離隔した側)の第1の枝電極(維持部材、第2の接合部材)228は、図13Aに示す第1の保持部材62の本体72の最も先端側の枝電極208に対して変形されている。すなわち、図17Aに示す枝電極228は、図13Aに示す第1の保持部材62の本体72の最も先端側の枝電極208に比べて長く形成されている。
また、図13Aに示す最も先端側の枝電極208は、一方向にのみ(真っ直ぐに)延出されている。これに対して、図17Aに示す枝電極228は、それぞれ、延出された角度が途中で変化(途中で屈曲)している。これは、例えば図7Cに示すように腸管IC1,IC2を吻合したときに、連続電極206で変性させた部位の先端、すなわち、腸管IC1,IC2同士が二股に分かれる部位Biから腸管IC1,IC2同士の吻合を解除するように力F2が働いた場合に、腸管IC1,IC2同士を接合する接合力を増して、その吻合の解除を防止するためである。
図17Aに示す枝電極228は、それぞれ少なくとも2方向に延出されている。これら枝電極228の場合、連続電極206に一体的であり連続電極206の略U字型の仮想的な軌跡に対して直交する方向に延出された第1の部分228aと、第1の部分228aに一体的であり第1の部分228aからさらに延出された第2の部分228bとを備えている。このうち、第2の部分228bは、枝電極208に平行な方向に延出されている。そして、このような構成において、枝電極228に第1の部分228aおよび第2の部分228bを有することで、二股に分かれる部位Biで生じる力F2に対応する接合面積を増加することができる。すなわち、第1の部分228aおよび第2の部分228bは、腸管IC1,IC2同士の接合を剥がれ難くしている。
したがって、腸管IC1,IC2に加えられる力F2に対する耐性を増加させることができるので、腸管IC1,IC2の吻合が解除され難い状態にすることができる。
次に、枝電極208の更なる変形例について図17Bを用いて説明する。
図17Bに示すように、第1の保持部材62の枝電極(維持部材、第2の接合部材)238は、図13Aに示す第1の保持部材62の枝電極208に対して変形されている。枝電極238は、連続電極206の軸方向(略U字型の仮想的な軌跡)に対して直交する方向ではなく、斜めに配設されている。この変形例の場合、各枝電極238は、例えば、基端側に向かって延出されている。
このため、図7Dに示すように、腸管IC1,IC2同士には、連続電極206により接合された部分と、連続電極206により接合された部分の長手方向に対して適当な角度を持って枝電極238により接合された部分とがある。このうち、これら枝電極238は、図13Aに示す枝電極208に比べて長く形成されている。また、枝電極238により接合された部分は、腸管IC1,IC2に加えられるF1の方向に対して斜めである。そのために、枝電極238は、吻合を解除する方向の力F1に対応する接合面積が増加しているので、腸管IC1,IC2の吻合が解除され難い状態にすることができる。したがって、連続電極206に接続された部分の長手方向に対して適当な角度を持つ枝電極238は、腸管IC1,IC2同士を接合する接合力を増すことができる。
なお、図17Bに示すように、第1の保持部材62の最も先端側の枝電極(維持部材、第2の接合部材)248は、図13Aや図17Aに示す第1の保持部材62の最も先端側の枝電極208,228に対して変形されている。すなわち、この変形例におけるこれら枝電極248は、図13Aや図17Aに示す第1の保持部材62の最も先端側の枝電極208,228に比べて長く形成されている。
さらに、図17Bに示す枝電極248は、円弧状に延出されている。このため、枝電極248は、枝電極238とは異なる方向に延出されている。このような第1の保持部材62の先端側に設けられた枝電極248は、腸管IC1,IC2を吻合した場合に図17Bに示すような部位Biに力F2が生じたときに対して耐性を増加させ、腸管IC1,IC2同士を剥がれ難くしている。
これは、例えば腸管IC1,IC2を吻合したときに、連続電極206で変性させた部位の先端、すなわち、腸管IC1,IC2同士が二股に分かれる部位Biから腸管IC1,IC2同士の吻合を解除するように力F2が働いた場合に、腸管IC1,IC2同士を接合する接合力を増して、その吻合の解除を防止するためである。
なお、この変形例では、力F2に対応する接合部の面積を増す場合に、第1の保持部材62の本体72の最も先端側にある枝電極として、第1の部分228aおよび第2の部分228bを有する枝電極228と、枝電極248とについて説明した。しかし、力F2に対応する接合部の面積を増すのであれば、第1の保持部材62の本体72の最も先端側にある枝電極の形状はこれら枝電極228,248に限定されるものではない。
また、第1の実施の形態およびそれの変形例では、腹壁を通して腹腔内(体内)の生体組織LTを処置するための、リニアタイプのエネルギ処置具12(図1A参照)を例にして説明したが、例えば図18に示すように、腹壁を通して体外に処置対象組織を取り出して処置を行うオープン用のリニアタイプのエネルギ処置具(治療用処置具)12aを用いることもできる。
このエネルギ処置具12aは、ハンドル22と、保持部26とを備えている。すなわち、腹壁を通して処置するためのエネルギ処置具12(図1A参照)とは異なり、シャフト24が除去されている。一方、シャフト24と同様の作用を有する部材がハンドル22内に配設されている。このため、図18に示すエネルギ処置具12aは、上述した図1Aに示すエネルギ処置具12と同様に使用することができる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について図19から図21を用いて説明する。この実施の形態は、種々の変形例を含む第1の実施の形態の変形例である。
ここでは、エネルギ処置具として、例えば腹壁を通して、もしくは腹壁外で処置を行うための、サーキュラタイプのバイポーラ型エネルギ処置具(治療用処置具)312を例にして説明する。
図19に示すように、治療処置システム310は、エネルギ処置具312と、エネルギ源14と、フットスイッチ16とを備えている。外科用処置具312は、ハンドル322と、シャフト324と、開閉可能な保持部326とを備えている。ハンドル322には、ケーブル28を介してエネルギ源14が接続されている。
ハンドル322には、保持部開閉ノブ332と、カッタ駆動レバー334が配設されている。保持部開閉ノブ332は、ハンドル322に対して回転可能である。この保持部開閉ノブ332をハンドル322に対して例えば右回りに回転させると、保持部326の後述する離脱側保持部(離脱側把持部)344が本体側保持部(本体側把持部)342に対して離隔し、左回りに回転させると、離脱側保持部344が本体側保持部342に対して近接する。
シャフト324は、円筒状に形成されている。このシャフト324は、生体組織LTへの挿入性を考慮して、適度に湾曲されている。もちろん、シャフト324が真っ直ぐに形成されていることも好適である。
シャフト324の先端には、保持部326が配設されている。図20Aおよび図20Bに示すように、保持部326は、シャフト324の先端に形成された本体側保持部(第1の保持部材、第1のジョー)342と、この本体側保持部342に着脱可能な離脱側保持部(第2の保持部材、第2のジョー)344とを備えている。本体側保持部342に対して離脱側保持部344が閉じた状態では、本体側保持部342および離脱側保持部344の後述する保持面384,388,434,438が互いに対して接触する。
シャフト324および本体側保持部342の外側には、第1の管路346が形成されている。この第1の管路346は、本体側保持部342の先端縁部の外周面を1周した状態で、本体側保持部342からシャフト324の基端側に延出されている。
離脱側保持部344には、第2の管路348が形成されている。この第2の管路348は、離脱側保持部344のヘッド部404の縁部を1周した状態で、離脱側保持部344の後述する通電シャフト324から、本体側保持部342およびシャフト324の内部の後述する第1の通電用パイプ356および流体供給用パイプ360に接続されている。
本体側保持部342は、円筒体352と、フレーム354と、流体回収機能を有する第1の通電用パイプ356と、第2の通電用パイプ358と、流体供給用パイプ360とを備えている。第1の通電用パイプ356は、本体側保持部342、シャフト324、ハンドル322およびケーブル28を介してエネルギ源14の第1の高周波エネルギ出力回路104に接続されている。第2の通電用パイプ358は、第1の通電用パイプ356と同様に、本体側保持部342、シャフト324、ハンドル322およびケーブル28を介してエネルギ源14の第2の高周波エネルギ出力回路106に接続されている。
流体供給用パイプ360は、例えばシリコーン材など絶縁性を有する樹脂材で形成されていることが好ましい。この流体供給用パイプ360は、離脱側保持部344の第2の管路(離脱側冷却パイプ)348に冷媒を供給するために用いられる。第1の通電用パイプ356は、流体供給用パイプ360から第2の管路348に供給した冷媒を回収するために用いられる。
これら円筒体352およびフレーム354は、絶縁性を有する。円筒体352は、シャフト324の先端に連結されている。フレーム354は、円筒体352に対して固定された状態で配設されている。
フレーム354は、その中心軸が開口されている。このフレーム354の開口された中心軸には、第1の通電用パイプ356がフレーム354の中心軸に沿って所定の範囲内で移動可能に配設されている。第1の通電用パイプ356は、保持部開閉ノブ332を回転させると、例えばボールネジ(図示せず)の作用により所定の範囲内を移動可能である。第1の通電用パイプ356には、離脱側保持部344の後述する通電用シャフト402の先端部402aを受けるように、図20Aから図20Cに示す、複数(例えば図20Cに示すように2つや、3つ(図示せず))に分けられて広げられた拡径部356aが形成されている。このような拡径部356aによって、第1の通電用パイプ356の先端にバネ性を持たせて、通電用シャフト402の先端402aが接触した状態を保ちながら柔らかく保持する。
第1の通電用パイプ356の中心軸に沿って、第2の通電用パイプ358が配設されている。第2の通電用パイプ358は、保持部開閉ノブ332を回転させると、例えばボールネジ(図示せず)の作用により第1の通電用パイプ356とともに所定の範囲内を移動可能である。第2の通電用パイプ358の先端側の内周面には、通電用シャフト402のコネクト部402bに係脱可能なように、径方向内方に突出する突起358aが形成されている。
なお、第1の通電用パイプ356と第2の通電用パイプ358とは、互いに対して接触しないように配設されているが、この第1の通電用パイプ356の外周面は、図示しないが、絶縁性を有する素材で覆われている。このため、第1の通電用パイプ356と第2の通電用パイプ358とが接触しても、互いに対して影響を及ぼすことが防止されている。
図20Aおよび図20Bに示すように、円筒体352とフレーム354との間には、カッタ案内溝(第1の流体通路)362が形成されている。このカッタ案内溝362には、円筒状のカッタ364が配設されている。このカッタ364の基端部は、フレーム354の基端側に配設された図示しないカッタ用プッシャの先端部の外周面に接続されている。このカッタ用プッシャの基端部はハンドル322のカッタ駆動レバー334に接続されている。このため、ハンドル322のカッタ駆動レバー334を操作すると、カッタ用プッシャを介してカッタ364が移動する。
このカッタ用プッシャとフレーム354との間には、カッタ案内溝362に連通する図示しない第1の流体通気路(流体通路)が形成されている。そして、シャフト324またはハンドル322には、カッタ案内溝362を通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
図20Aから図20Cに示すように、円筒体352の先端には、出力部材やエネルギ放出部として、第1の連続電極(封止部材、第1の接合部材)372と、複数の第1の離散電極(維持部材、第2の接合部材)374とが配設されている。第1の連続電極372は、切れ目なく連続的な円環状に形成されている。第1の離散電極374は、第1の連続電極372の外側に所定の間隔をおいて離散的に配設されている。
第1の連続電極372には、第1の通電ライン372aの先端が固定されている。第1の通電ライン372aは、本体側保持部342、シャフト324、ハンドル322を介してケーブル28に接続されている。第1の離散電極374同士は、電気的に接続され、1つの第1の離散電極374に第2の通電ライン374aの先端が固定されている。第2の通電ライン374aは、本体側保持部342、シャフト324、ハンドル322を介してケーブル28に接続されている。
第1の連続電極372は、カッタ364が配設されたカッタ案内溝362の縁部と円筒体352の縁部との間に配設されている。第1の連続電極372は、カッタ案内溝362の外側の縁部に近接する側に配設されている。
第1の離散電極374は、略円環状の仮想的な軌跡に沿って、略等間隔に同形状のものが配設されている。第1の離散電極374は、それぞれ例えば円形状に形成されている。第1の離散電極374同士は、互いに対して略所定の間隔に配設され、かつ、各第1の離散電極374は、第1の連続電極372に対しても適当な距離だけ離間した位置に配設されている。第1の離散電極374の位置は、処置を行ったときに、隣接する第1の離散電極374同士の間の生体組織LTが熱により変性されるのを極力防止するとともに、第1の離散電極374と第1の連続電極372との間の生体組織LTの熱による変性を極力防止した位置にある。
第1の連続電極372の外側には、円環状に蒸気放出溝382が形成されている。すなわち、第1の連続電極372と第1の離散電極374との間には、蒸気放出溝382が形成されている。この流体放出溝382は、カッタ364が配設されたカッタ案内溝362に連通されている。この流体放出溝382の外側には、第1の連続電極372の表面よりも高い位置に保持面(組織接触面)384が形成されている。すなわち、本体側保持部342の保持面384は、第1の連続電極372の表面よりも離脱側保持部344の後述するヘッド部404に近接されている。このため、保持面384は、蒸気等の流体が流体放出溝382よりも外側に逃げるのを防止する障壁部(ダム)の役割を果たす。
各第1の離散電極374の外側には、円環状に蒸気放出溝386が形成されている。この流体放出溝386は、第1の連続電極372の外側に配設された流体放出溝382とカッタ案内溝362とに連通されている。この流体放出溝386の外側には、第1の離散電極374の表面よりも高い位置に保持面(組織接触面)388が形成されている。このため、保持面388は、蒸気等の流体が流体放出溝386よりも外側に逃げるのを防止する障壁部(ダム)の役割を果たす。
図20Aから図21に示すように、上述した第1の管路346は、本体側保持部342の円筒体352の最外周に固定された本体側冷却パイプ392を備えている。この冷却パイプ392は、本体側保持部342およびシャフト324の外周面に配設され、シャフト324の基端側まで延出されている。この冷却パイプ392は、例えば銅などの良熱伝導性を有する。この冷却パイプ392には、冷却水(液体)や冷気(気体)などの冷媒が例えば循環するように流されて排出される。なお、図21に示す符号392aで示す側が流体供給用の冷却パイプ392であり、符号392bで示す側が流体回収用の冷却パイプ392である。
本体側保持部342の保持面388には、例えば銅板などの良熱伝導性を有する本体側冷却板394が配設されている。この冷却板394は、冷却パイプ392に密着した状態で円筒体352の先端に固定されている。このため、冷却パイプ392内に冷媒を通すと、冷却パイプ392から冷却板394にその冷媒からの熱が伝導される。すなわち、冷却板394は冷やされる。
そして、エネルギ源14には、この変形例では、第1の実施の形態で説明した温度測定回路108の代わりに、冷却出力回路108aが制御部102に接続されている。この冷却出力回路108aは、制御部102からの指示により外科用処置具312の冷却パイプ392に冷媒を流すことができる。
一方、離脱側保持部344は、通電用シャフト402と、絶縁性を有するヘッド部404とを備えている。通電用シャフト402は、断面が円形状で、一端が先細に形成され、他端はヘッド部404に固定されている。通電用シャフト402は、概略的には3つの筒状部材412,414,416が密着した3層構造である。通電用シャフト402の内側(内層)412は導電性を有する筒状部材であり、中間層414は絶縁性を有する筒状部材であり、外側(外層)416は導電性を有する筒状部材である。
そして、内層412がその先端部(通電用シャフト402の先端402a)で第1の通電用パイプ356の拡径部356aと電気的に接続される。外層416の先端部側の外周面には、第2の通電用パイプ358の突起358aに係合するコネクト部(凹溝部)402bが形成されている。なお、外層416の外周面のうち、コネクト部402b以外の部分はコーティング等により絶縁性を有する素材で覆われていることが好ましい。
ヘッド部404には、本体側保持部342の第1の連続電極372および第1の離散電極374に対向するように、第2の連続電極(封止部材、第1の接合部材)422および第2の離散電極(維持部材、第2の接合部材)424が配設されている。第2の連続電極422には、第3の通電ライン422aの一端が固定されている。この第3の通電ライン422aの他端は、通電用シャフト402の外層416および中間層414を通して内層412に電気的に接続されている。第2の離散電極424には、第4の通電ライン424aの一端が固定されている。この第4の通電ライン424aの他端は、通電用シャフト402の外層416に電気的に接続されている。
ヘッド部404に配設された第2の連続電極372の内側には、カッタ364の刃を受けるように、円環状にカッタ受部426が形成されている。一方、第2の連続電極422の外側には、円環状に流体放出溝432が形成されている。この流体放出溝432の外側には、第2の連続電極422の表面よりも高い位置に保持面(組織接触面)434が形成されている。すなわち、離脱側保持部344の保持面434は、第2の連続電極422の表面よりも本体側保持部342に近接されている。このため、保持面434は、蒸気等の流体が蒸気放出溝432よりも外側に逃げるのを防止する障壁部(ダム)の役割を果たす。
各第2の離散電極424の外側には、円環状に蒸気放出溝436が形成されている。この流体放出溝436は、第2の連続電極422の外側に配設された流体放出溝432に連通されている。この流体放出溝436の外側には、第2の離散電極424の表面よりも高い位置に保持面(組織接触面)438が形成されている。このため、保持面438は、蒸気等の流体が流体放出溝436よりも外側に逃げるのを防止する障壁部(ダム)の役割を果たす。
さらに、流体放出溝432は、ヘッド部404および通電用シャフト402の内層412の内側の流体放出路432aに連通されている。流体放出路432aは、通電用シャフト402の中心軸から外れた位置にあり、本体側保持部342の第1の通電用パイプ356の2つの拡径部356a(図20C参照)の間を通して、第1の通電用パイプ356の外周面と第2の通電用パイプ358の内周面との間に連通している。シャフト324またはハンドル322には、第1の通電用パイプ356の外周面と第2の通電用パイプ358の内周面との間を通した流体を外部に排出する流体放出口(図示せず)が形成されている。
図20Aから図21に示すように、第2の管路348は、通電用シャフト402の下端からヘッド部404の頂点まで達し、その頂点からヘッド部404の外縁部を1周した状態で再び通電用シャフト402の内部を通して通電用シャフト402の下端に挿通されている。第2の管路348の2つの端部は、通電用シャフト402の先端部402aにある。なお、図21中の第2の管路348のうち、符号348aで示す側が流体供給用であり、符号348bで示す側が流体回収用である。第2の管路348は、通電用シャフト402の先端部402aからヘッド部404の頂点まで達し、その頂点からヘッド部404の外縁部を1周した状態で再び通電用シャフト402の内部を通して通電用シャフト402の先端部402aに挿通されている。
そして、第2の管路348の流体供給用の端部が流体供給用パイプ360に接続され、第2の管路348の流体回収用の端部が第1の通電パイプ(流体回収用パイプ)356に接続されている。このため、流体供給用パイプ360および第1の通電パイプ(流体回収用パイプ)356に第2の管路348が接続された状態で、冷却水などを流体供給用パイプ360に流すと、第2の管路348を通して第1の通電パイプ(流体回収用パイプ)356から回収される。すなわち、第2の管路348に冷却水などの流体を循環させることができる。
離脱側保持部344の保持面434,438には、例えば銅板などの良熱伝導性を有する離脱側冷却板444が配設されている。この冷却板444は、第2の管路(冷却パイプ)348に密着した状態でヘッド部404に固定されている。このため、第2の管路348内に冷媒を通すと、第2の管路348から冷却板444にその冷媒からの熱が伝導される。すなわち、冷却板444は冷やされる。
次に、この実施の形態に係る治療処置システム310の作用について図11に示すフローに基づいて説明する。
術者は、予め図10に示すエネルギ源14の表示部110を操作して、治療処置システム310の出力条件を設定しておく(STEP101)。具体的には、第1の高周波エネルギ出力回路104および第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力(設定電力P1set[W],P2set[W])、生体組織LTのインピーダンスZの閾値Z1,Z2、第2の高周波エネルギ出力回路106からの1回の出力時間(設定時間t1,t2)等を設定しておく。
本体側保持部342を離脱側保持部344に対して閉じた状態で例えば腹壁を通して腹腔内に外科用処置具312の保持部326およびシャフト324を挿入する。外科用処置具312の本体側保持部342と、離脱側保持部344とを処置したい生体組織LTに対して対峙させる。
本体側保持部342および離脱側保持部344で処置したい生体組織LTを把持するため、ハンドル322の把持部開閉ノブ332を操作する。このとき、ハンドル322に対して例えば右回りに回動させる。通電用パイプ356をシャフト324のフレーム354に対して先端部側に移動させる。このため、本体側保持部342と離脱側保持部344との間が開き、離脱側保持部344を本体側保持部342から離脱させることができる。
そして、処置したい生体組織LTを本体側保持部342の第1の連続電極372および第1の離散電極374と離脱側保持部344の第2の連続電極422および第2の離散電極424との間に配置する。この状態で、ハンドル322の把持部開閉ノブ332を例えば左回りに回動させる。このため、離脱側保持部344が本体側保持部342に対して閉じる。このようにして、処置対象の生体組織LTを本体側保持部342と離脱側保持部344との間で保持する。
この状態で、フットスイッチ16のペダル16aを操作する。エネルギ源14の制御部102は、術者の操作によってスイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたかを判断する(STEP102)。
スイッチ16のペダル16aが押圧されてONに切り換えられたと判断したとき、エネルギ源14の第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極372および第2の連続電極422の間の生体組織(第1の領域の生体組織)LTに高周波エネルギを供給する(STEP103)。
このため、第1の高周波エネルギ出力回路104は、本体側保持部342の第1の連続電極372および離脱側保持部344の第2の連続電極422の間の処置対象の生体組織LTに高周波電流を通電し、電極372,422間に把持した生体組織LT内にジュール熱を発生させて生体組織LT自体が加熱される。したがって、第1の連続電極372および第2の連続電極422によって生体組織LTが円環状に連続的に変性される。
このとき、把持した生体組織LTのインピーダンスZは、第1の連続電極372、第2の連続電極422および高周波エネルギ出力回路104により測定されている。処置を始めたときのインピーダンスZ0は、図6Bに示すように、例えば60[Ω]程度である。そして、生体組織LTに高周波電流が流れて生体組織LTが焼灼されるにつれてインピーダンスZの値が上昇していく。
このように、生体組織LTが焼灼されるにつれて、生体組織LTから流体(液体(血液)および/または気体(水蒸気))が放出される。このとき、本体側保持部342の保持面384および離脱側保持部344の保持面434は、第1の連続電極372および第2の連続電極422よりも生体組織LTに密着している。このため、保持面384,434は流体が本体側保持部342および離脱側保持部344の外側に逃げるのを抑制する障壁部(ダム)として機能する。
したがって、生体組織LTから放出された流体を、第1の連続電極372の外側の蒸気放出溝382から第1の連続電極372の内側のカッタ案内溝362に、または、カッタ案内溝362に直接流入させて、本体側保持部342からシャフト324に例えば吸引して流す。生体組織LTから流体が放出されている間は、カッタ案内溝362にその流体を流入させ続ける。このため、生体組織LTから温度が上昇した状態で放出された流体によってサーマルスプレッドが生じることを防止し、処置対象でない部分に影響を与えることを防止することができる。
また、生体組織LTから放出された流体を、第2の連続電極422の外側の流体放出溝432に流入させて、ヘッド部404および通電シャフト402内に形成された流体放出路432aを通して第1の通電用パイプ356の内部からシャフト24に例えば吸引して流す。生体組織LTから流体が放出されている間は、流体放出路432aにその流体を流入させ続ける。このため、生体組織LTから温度が上昇した状態で放出された流体によってサーマルスプレッドが生じることを防止し、処置対象でない部分に影響を与えることを防止することができる。
次に、制御部102は、高周波エネルギ出力回路104からの信号に基づいて演算した高周波エネルギ出力時のインピーダンスZが予め表示部110で設定(STEP1)した閾値Z1(図6Bに示すように、ここでは約1000[Ω])以上となったか判断する(STEP104)。閾値Z1は、予め分かっているインピーダンスZの値の上昇率が鈍化する位置にある。そして、インピーダンスZが閾値Z1よりも小さいと判断した場合、STEP103に処理を戻す。すなわち、本体側保持部342の第1の連続電極372および離脱側保持部344の第2の連続電極422の間に把持した生体組織LTに対して処置のための高周波エネルギを与え続ける。
インピーダンスZが閾値Z1よりも大きくなったと判断した場合、制御部102から第1の高周波エネルギ出力回路104に信号が伝達される。そして、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極372および第2の連続電極422への出力が停止される(STEP105)。
次に、エネルギ源14の第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374および第2の離散電極424の間の生体組織(第2の領域の生体組織)LTにエネルギを供給する(STEP106)。すなわち、第1の高周波エネルギ出力回路104から第1の連続電極372および第2の連続電極422の生体組織LTにエネルギを供給するのとは、時間的にオフセットした状態(出力タイミングをオフセットした状態)で、図12Aの中段に示すように、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374および第2の離散電極424の間の生体組織LTに高周波電流を通電する。
このため、本体側保持部342および離脱側保持部344間に把持した生体組織LTに高周波電流が流れ、生体組織LTをジュール熱の作用により発熱させて組織の焼灼(組織の変性)を開始する。そうすると、第1の離散電極374および第2の離散電極424によって、これら離散電極374,424間の生体組織LTが離散的に変性される。このとき、把持した生体組織LTのインピーダンスZは、第1の離散電極374および第2の離散電極424を介して第2の高周波エネルギ出力回路106により測定されている。そして、生体組織LTに高周波電流が流れて生体組織LTが焼灼されるにつれてインピーダンスZの値が上昇していく。
さらに、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を開始した後、設定時間t1が経過したか否か判断する(STEP107)。設定時間t1が経過したときには第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374および第2の離散電極424への出力を停止する(STEP108)。
その直後、冷却出力回路108aは、図12Aの下段に示すように、第1の管路346および第2の管路348に冷媒を流す(STEP109)。このため、熱伝導率が高い第1の管路346および第2の管路348の外周面に密着した冷却板394,444を介して生体組織LTは冷却されている。したがって、第1の離散電極374と第2の離散電極424との間の処置対象の生体組織LTから広がる熱の影響が、冷却板394,444に密着した部分で抑制される。すなわち、処置対象の生体組織LTからのサーマルスプレッドが、処置対象の生体組織LTの周囲の生体組織LTを冷却することによって抑えられる。
そして、第1の管路346および第2の管路348に冷媒を流し始めてから設定時間t2が経過したか否か判断する(STEP110)。設定時間t2が経過したときには冷却出力回路108aからの冷媒の供給を停止させる(STEP111)。
その直後、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374および第2の離散電極424にエネルギを供給する(STEP112)。そして、第1の離散電極374および第2の離散電極424の間のインピーダンスZが閾値Z2に到達したか否か判断する(STEP113)。到達していないと判断した場合、STEP106に戻って再び設定時間t2だけ第2の高周波エネルギ出力回路106から出力する。すなわち、インピーダンスZが閾値Z2に到達するまで生体組織LTの焼灼と冷却を繰り返す。
そして、インピーダンスZが閾値Z2に到達したときには、冷却出力回路108aから第1の管路346および第2の管路348に冷媒を流して冷却板394,444を介して生体組織LTを冷却する(STEP114)。設定時間t2だけ冷媒を流したか否か判断する(STEP115)。設定時間t2だけ冷媒を流した後、冷媒の供給を止めて生体組織LTの冷却を停止させる(STEP116)。
このような一連の処置が終了した後、スピーカ112からブザーを発して術者に処置の終了を知らせる(STEP117)。
ここで、このような作用を有する治療処置システム310を用いて、図22Aから図22Cに示すように、例えば軸方向に並設させた小腸の腸管IC1,IC2同士をシールした状態に接合させる場合について説明する。
エネルギ源14の表示部110を操作して各種の設定を行っておく。
本体側保持部342の保持面384,388および離脱側保持部344の保持面434,438で、軸方向に突き合わせた状態の1対の腸管IC1,IC2を、両腸管IC1,IC2の端部同士の壁面を挟み込むように保持する。
この状態で、フットスイッチ16のペダル16aを押圧すると、第1の連続電極372と第2の連続電極422との間の生体組織LTに高周波エネルギを供給する。このため、第1の連続電極372および第2の連続電極422により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させる。
そして、第1の連続電極372および第2の連続電極422の間の生体組織LTが所定の閾値Z1に到達したときに第1の高周波エネルギ出力回路104からの出力を停止させる。
第1の連続電極372および第2の連続電極422の間の生体組織LTのインピーダンスZが所定の閾値Z1に到達したときは、第1の連続電極372および第2の連続電極422により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させて接合されている。すなわち、第1の連続電極372および第2の連続電極422は、腸管IC1,IC2の端部同士を円環状にシールしている。
その直後、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374と第2の離散電極424との間の生体組織LTにエネルギを供給する。このため、第1の離散電極374および第2の離散電極424により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させる。
そして、設定時間t1の経過後、一旦第2の高周波エネルギ出力回路106を停止させ、冷却出力回路108aから第1の管路346および第2の管路348に所定の設定時間t2だけ冷媒を供給する。
その直後、第2の高周波エネルギ出力回路106から出力し、焼灼を行いつつインピーダンスZを計測する。
そして、第1の離散電極374および第2の離散電極424の間の生体組織LTが所定の閾値Z2に到達したか判断する。到達していないときには再び第2の高周波エネルギ出力回路106から出力および出力停止、冷媒の供給および供給停止を経てインピーダンスZを計測する。一方、到達したときには、第2の高周波エネルギ出力回路106からの出力を停止させ、冷媒の供給および供給停止を経てブザーを発して処置を終了させる。
第1の離散電極374および第2の離散電極424の間の生体組織LTのインピーダンスZが所定の閾値Z2に到達したときは、第1の離散電極374および第2の離散電極424により腸管IC1,IC2同士を加熱して変性させて接合されている。すなわち、第1の離散電極374および第2の離散電極424は、腸管IC1,IC2の端部同士のうち円環状にシールした部分の外側の生体組織同士を密着させるように、離散的に接合している。このように、腸管IC1,IC2同士は、連続的および離散的に変性されて接合(吻合)される。
そして、本体側保持部342および離脱側保持部344の間に腸管IC1,IC2同士を把持したままで、図19に示すカッタ駆動ノブ334を操作して、図20Bに示す状態からカッタ案内溝362に沿ってカッタ364を前進させる。カッタ364が前進するにつれて、その先端の刃によって、第1の連続電極372および第2の連続電極422により変性されて接合された部位の内側を円形状に切断する。このため、図22Cに示すように、腸管IC1,IC2の壁面の略円形状に封止された間の部分が切断され、腸管IC1,IC2同士の円形状の連通状態が確保される。
この状態でカッタ駆動ノブ334を操作してカッタ364を後退させる。その後、ハンドル322の保持部開閉ノブ332を操作して本体側保持部342および離脱側保持部344を開く。このとき、例えば図22Cに示すように、第1の連続電極372および第2の連続電極422により連続的に接合された外側の部分は、離散的に変性されている。そして、上述したように、第2の高周波エネルギ出力回路106から第1の離散電極374および第2の離散電極424に供給する出力を高く設定してあったので、離散的に変性されて接合された部分は、しっかりと接合されているので、耐ピール性を有する。
したがって、第1の離散電極374および第2の離散電極424で生体組織を変性させた部位が、より確実に生体組織同士を密着させるように力を発揮する。腸管IC1,IC2同士の接合が解除される方向に力が働くことがあるが、第1の離散電極374および第2の離散電極424で生体組織を変性させた部位が、生体組織同士を密着させるように力を発揮する。したがって、腸管IC1,IC2の変性されていない生体組織同士の相互ネットワークが生じ、生体組織の組織再生力を発揮して、より早期に腸管IC1,IC2の生体組織が再生される。
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下の効果が得られる。第1の実施の形態で説明した効果については説明を省略する。
本体側保持部342および離脱側保持部344にそれぞれ連続電極372,422および離散電極374,424を配置し、連続電極372,422に入力するエネルギと離散電極374,424に入力するエネルギとをその出力量や出力タイミング等を分離させた。そして、処置対象によって、適宜に出力量や出力タイミング等を設定することによって、処置対象に最適な処置を設定して行うことができる。
特に、離散電極374,424により離散的に生体組織同士を密着させるように処置する際に、生体組織を冷却する工程を入れることにより、処置対象外の生体組織が、離散電極374,424から与えられるエネルギの影響を受けることを防止することができる。
また、この実施の形態では、バイポーラ型外科用処置具312を用いて説明したが、第1の実施の形態で説明した図3Eに示すように、モノポーラ型の高周波処置を行うことも好適である。
これまで、複数の変形例を含むいくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。