JP5078073B2 - 3次元構造が形成された樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
なかでも、次世代の医療技術として注目されている再生医療の分野では、高密度な細胞を三次元的に培養するために細胞の足場となる3次元微細構造基材が望まれている。現在までに様々な微細加工技術は開発されてきたが、製造コスト、製造にかかる時間、三次元構造の精度などを考慮すると、細胞培養基材として使用できる微細な三次元構造体はこれまで実現されていない。
「自己組織化によるナノマテリアル(田中賢等)」、特集3−ナノテク/バイオなど次世代注目技術と微細加工機器・システム、「M&E」、工業調査会、(2003年8月号、p.190−195)
[1]3次元構造が形成された樹脂フィルムの製造方法であって、
ハニカム状多孔質樹脂フィルムと、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムとを有する複層フィルムを準備するステップ;および前記複層フィルムに熱、光、赤外線またはマイクロ波を作用させて、前記複層フィルムを収縮させ、ハニカム状多孔質を3次元構造とするステップ、を含む製造方法。
[2]前記3次元構造は、周期的な凹凸を有し、かつ前記凹凸のそれぞれに孔を有する構造である、[1]に記載の製造方法。
[3]前記収縮するフィルムが異方的に収縮する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記収縮するフィルムが等方的に収縮する、[1]または[2]に記載の製造方法。
[5]前記ハニカム状多孔質樹脂フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液を高湿度雰囲気下でキャストする工程、前記キャスト液から、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、を有するステップをさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記ハニカム状多孔質樹脂フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液をキャストする工程、前記キャスト液に高湿度ガスを吹き付けて、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、を有するステップをさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは光学フィルムである、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは細胞培養基材である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは撥水フィルムである、[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
1)ハニカム状多孔質樹脂フィルム、および熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルム(収縮性フィルム)を含む複層フィルムを準備するステップ、ならびに
2)熱、光、赤外線またはマイクロ波によって複層フィルムを収縮させるステップを有する。
ハニカム状多孔質樹脂フィルムは、自己組織化手法によって作製されることが好ましい。フィルム原料となる樹脂の選択肢が多く、かつ簡便かつ安価に製造することができるためである。自己組織化手法によるハニカム状多孔質樹脂フィルムの製造は、例えば、前述の非特許文献1や特開2001−157574の記載を参照して行われうる。自己組織化手法によるハニカム状多孔質樹脂フィルムの製造方法は、溶媒の蒸発過程で発生する散逸構造をフィルムに固定化することを特徴とする。
前記疎水性有機溶液をキャストして形成されたキャスト液の膜に、微小水滴を形成させることができるので、その微少水滴を蒸発させればハニカムパターンが得られる。
前記疎水性有機溶液のキャストは、高湿度雰囲気下で行ってもよい。高湿度雰囲気下とは、例えば相対湿度が50〜95%であることを意味する。
自己組織化手法により得られるハニカム状多孔質樹脂フィルムは、ハニカム状の多孔体である。例えば、微小な孔が規則的にヘキサゴナルに配列したハニカムパターンとなる。孔の直径は、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。孔の直径は、微小液滴の形成の条件を調整することによって制御することができる。
収縮性フィルムとは、熱、光、赤外線、マイクロ波などの作用を受けて収縮するフィルムである。収縮性フィルムの材質の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シクロオレフィン共重合体等のビニル重合樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリカプロラクトンやポリ乳酸等の生体適合性材料などが含まれる。これらの材質からなるフィルムを、一軸または二軸延伸したフィルムを収縮性フィルムとして用いればよい。
本発明において、ハニカム状多孔質樹脂フィルムを収縮させるため、ハニカム状多孔質樹脂フィルムと収縮性フィルムとが互いに積層された複層フィルムを作製する。複層フィルムは、例えば、ハニカム状多孔質樹脂フィルムを収縮性フィルムに接着固定することにより作製される。また別法として、自己組織化手法でハニカム状多孔質樹脂フィルムを作製する際に、基材として収縮性フィルムを用いることで、複層フィルムを作製してもよい。
3次元構造の凹凸構造の凹凸の形状は特に限定されないが、凹凸の周期は0.01〜100μm、凹凸の高さは0.01〜100μmであることが好ましい。また、孔の大きさが0.01〜100μmであることが好ましい。さらに3次元構造の凹凸構造の凹凸の周期は0.01〜10μm、凹凸の高さが0.01〜10μm、孔の大きさが0.01〜10μmであることが好ましい。孔の大きさとは孔の内径を意味するが、最も大きい内径を孔の大きさとする。
細胞を培養するためには、細胞の足場となる基材が必要であり、その基材の化学的性質と微細形状が細胞の成長に大きく影響を及ぼすことが知られている。ハニカム状多孔質樹脂フィルムは、ハニカムパターンが細胞接着面を提供し、多孔質構造が細胞の支持基盤へのアクセスと栄養の供給ルートになることから、細胞培養基材として好ましいことが知られている。
ポリブタジエンと両親媒性高分子(重量比で10:1)を、クロロホルムに溶解した溶液を得た。得られたクロロホルム溶液(5g/L)5mLを、直径9cmのぺトリシャーレにキャストした。その直後に、湿度約60%の空気を吹き付けて、非貫通型のハニカム状多孔質樹脂フィルムを得た。フィルムを形成したシャーレをエタノールに浸漬し、ハニカム状多孔質樹脂フィルムを剥離して、自己支持性ハニカム状多孔質樹脂フィルムを得た。
SEMで垂直方向から観察したところ、長軸6.6μm;短軸3.3μmの四角形状の三次元規則構造が形成されていることを確認した(図2)。
SEMで垂直方向から観察したところ、表面にはμmレベルの凹凸があり、長軸4.7μm、短軸1.0μmの四角形状の三次元規則構造が形成されていることを確認した(図3)。
ポリブタジエンと両親媒性高分子(重量比で10:1)を、クロロホルムに溶解した溶液を得た。得られたクロロホルム溶液(5g/L)3mLをキャストする以外は、実施例1と同様の方法で孔径の長軸4.8μm、短軸3.5μmの楕円状のハニカム状多孔質樹脂フィルム(図6)を得た。得られたハニカム状多孔質樹脂フィルムの裏面(孔が形成されていない面)に、1.5倍に1軸延伸したアペル8008Tフィルムを貼り合わせて複層フィルムを得た。得られた複層フィルムを、75℃のホットステージ上で熱処理することにより収縮させた。
SEMで垂直方向から観察したところ、長軸4.8μm;短軸2.45μmの四角形状の三次元規則構造が形成されていることを確認した(図7)。
本発明の製法により製造される樹脂フィルムは、光拡散フィルム、光取り出しフィルム、回折格子、細胞培養基材、撥水性フィルム、浮遊微粒子補足フィルターなどに適用できる。
Claims (9)
- 周期的な凹凸からなる3次元構造が形成された樹脂フィルムの製造方法であって、
ハニカム状多孔質樹脂フィルムと、熱、光、赤外線またはマイクロ波によって収縮するフィルムとを有する複層フィルムを準備するステップ、および
前記複層フィルムに熱、光、赤外線またはマイクロ波を作用させて、前記複層フィルムを収縮させ、ハニカム状多孔質を3次元構造とするステップ、
を含み、
前記凹凸の周期が、0.01〜10μmであり、前記凹凸の高さが0.01〜10μmである、製造方法。 - 前記3次元構造は、前記凹凸のそれぞれに孔を有する構造である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記収縮するフィルムが異方的に収縮する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記収縮するフィルムが等方的に収縮する、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記ハニカム状多孔質樹脂フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液を高湿度雰囲気下でキャストする工程、
前記キャスト液から、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および
前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、
を有するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記ハニカム状多孔質樹脂フィルムを準備するステップであって、
高分子材料を溶解した疎水性有機溶液をキャストする工程、
前記キャスト液に高湿度ガスを吹き付けて、キャスト液に含まれる有機溶媒を蒸発させると同時に、キャスト液表面で高湿度雰囲気成分を結露させる工程、および
前記結露により生じた微小液滴を蒸発させてキャスト膜を形成する工程、
を有するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。 - 前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは光学フィルムである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは細胞培養基材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記3次元構造が形成された樹脂フィルムは撥水フィルムである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
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