JP5078038B2 - 微量mRNAの増幅方法およびその利用 - Google Patents

微量mRNAの増幅方法およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、微量mRNAの増幅方法およびその利用に関するものであり、より詳細には、cDNAライブラリーの作製、mRNAのセンス鎖の増幅、mRNAのセンス鎖をコードした標識プローブの作製、および段階的サブトラクション等に好適に用いることができる微量mRNAの増幅方法およびその利用に関するものである。
従来、遺伝子の解析手法として、例えば、cDNAライブラリー等を解析する方法が知られている。cDNAライブラリーは、生物の細胞からmRNAを精製し、このmRNAからcDNAを合成することにより作製される。このとき、細胞から精製されるmRNAは、通常、極微量である。生体内に多く存在する細胞種からmRNAを精製する場合には、mRNAの精製に用いる細胞の数を多くすれば、cDNAライブラリーを合成するために必要な十分量のmRNAを得ることができる。しかしながら、生体内に極僅かしか存在しない細胞(例えば、幹細胞、または生殖細胞など)からmRNAを精製する場合などには、cDNAライブラリーを合成するために用いることができるmRNAの量に大きな制限が生じることになる。この場合、cDNAを合成するためには、精製したmRNAを増幅する必要がある。そこで、従来から、極微量のmRNAを増幅する方法が開発されている。
上述したようなmRNAの増幅方法としては、PCRを用いてmRNAを増幅する方法が一般的である。mRNAの具体的な増幅手法は、以下の通りである。まず、mRNAを細胞から精製する。次に、逆転写反応によりcDNAを調製する。次いで、このcDNAを鋳型としてDNAポリメラーゼによって二本鎖DNAを調製する。そして、この二本鎖DNAを、PCRを利用して増幅する。最後に、増幅した二本鎖DNAに対してRNAポリメラーゼを作用させてmRNAを調製し、増幅したmRNAを取得する(例えば、特許文献1参照)。
〔特許文献1〕
特開2002−238575号公報(平成14年8月27日公開)
しかしながら、上記特許文献1に記載のような、PCRを利用してmRNAを増幅する方法では、短いmRNAと長いmRNAとを同じ効率で増幅することができないという問題点を有している。
具体的に説明すると、PCRは、短い塩基配列を効率よく増幅できるが、長い塩基配列を効率よく増幅できないという特性を有している。このため、特許文献1のようなPCRを利用してmRNAの鋳型となる増幅用二本鎖DNAを増幅する手法では、短い塩基配列を有する増幅用二本鎖DNAは効率よく増幅されるが、長い塩基配列を有する増幅用二本鎖DNAは効率よく増幅されない。つまり、mRNAを合成する際の鋳型となる増幅用二本鎖DNAの増幅量が、増幅用二本鎖DNAの塩基配列の長さによって異なることになる。このため、上記PCRにて増幅した増幅用二本鎖DNAを鋳型としてmRNAを増幅する場合、短いmRNAは効率よく増幅できるが、長いmRNAは同じ効率では増幅できないという問題がある。この欠点は、多様性が高いcDNAライブラリーを作製しようとする場合に大きな問題となる。すなわち、上記従来の方法は、cDNAライブラリーとして最も重要なmRNA(cDNA)の量的な分布が増幅後に大きく崩れてしまうという問題点を有している。
それゆえ、塩基配列の長さに影響されずに、短いmRNAも長いmRNAも同じように効率よく増幅できる微量mRNAの増幅方法の開発が強く求められていた。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、塩基配列の長さに影響されることなく、短いmRNAも長いmRNAも同じように効率よく増幅できる微量mRNAの増幅方法およびその利用法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、増幅対象のmRNAが反応液中に極微量しか存在しない場合に、ダミーRNAを反応液に添加して増幅用二本鎖DNAを合成することにより、RNAポリメラーゼの至適基質濃度(ミリモル(mM)程度)にまで増幅用二本鎖DNA量を増加させることができ、これまで基質濃度が低いために反応速度が極めて遅かったRNA合成反応の反応速度を顕著に上昇させることが可能となり、mRNAを効率的に増幅できることを見出した。そして、この技術によれば、PCRを用いて二本鎖DNAを増幅させる工程を経ることがないので、mRNAをその塩基配列の長さに影響を受けずに効率よく増幅できることを実証し、本願発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新規知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
即ち、本発明の微量mRNAの増幅方法は、上記課題を解決するために、微量mRNAを含む溶液にダミーRNAを添加して混合溶液を作製する第1工程と、混合溶液を鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成する第2工程と、合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成する第3工程と、形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結して増幅用二本鎖DNAを作製する第4工程と、RNAポリメラーゼによって、増幅用二本鎖DNAからRNAを増幅する第5工程と、を含むことを特徴としている。
上記構成によれば、微量mRNAにダミーRNAを添加することによって、混合溶液中のRNA量を増加させることができる。その結果、混合溶液中のRNAが微量mRNAのみの場合と比較して、作製される増幅用二本鎖DNAの量が増す。このとき、増幅用二本鎖DNAの量は、RNAポリメラーゼの至適基質濃度に調製される。その結果、RNAポリメラーゼによる転写反応を進行させることができるため、塩基配列の長さに影響されることなく、短いmRNAも長いmRNAも同じように効率よく増幅できる。
つまり、本発明の微量mRNAの増幅方法によれば、初発のRNAの量が少ないために二本鎖DNAの量が少なくなり、転写反応が進行し難いという問題点を、ダミーRNAを用いて初発のRNA濃度を増加させることにより解決し得る点に特徴があるといえる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端側にプロモーター配列を連結したあと、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結されたプロモーター配列のみを切断する第6工程を含むことが好ましい。
上記構成によれば、微量mRNAおよびダミーRNAのセンス鎖のみを選択的に転写することができ、結果としてセンス鎖のみを増幅することができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端にプロモーター配列を連結したとき、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結されたプロモーター配列のみを切断できるように、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に制限酵素サイトが形成されることが好ましい。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記第4工程は、切断されたプロモーター配列およびダミーRNAを除去する第7工程を含むことが好ましい。
上記構成によれば、RNAポリメラーゼによってRNAを増幅するとき、切断されたプロモーター配列にRNAポリメラーゼが結合することがなく、上記二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側に連結されたプロモーター配列からのみ、RNAを転写することができる。したがって、センス鎖の微量mRNAとダミーRNAとを効率よく転写することができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記ダミーRNAの配列が、ポリA配列を含むことが好ましい。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記ダミーRNAの配列が、配列番号4、配列番号6または配列番号16によって示される塩基配列であることが好ましい。
上記構成によれば、微量mRNAとダミーRNAとは、共にポリA配列を有する。従って、微量mRNAとダミーRNAとを逆転写するとき、オリゴdT配列を含む同じプライマーを用いて同時に逆転写することができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、前記ダミーRNAは、ビオチン化されていることが好ましい。
上記構成によれば、ビオチン化されたダミーRNAは、ストレプトアビジンに対して特異的に結合することができる。したがって、ストレプトアビジンカラムなどを用いることによって、反応溶液からダミーRNAのみを特異的に除去することができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記RNAポリメラーゼが、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼであることが好ましい。
上記構成によれば、微量mRNAとダミーRNAとを効率よく転写することができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法では、上記混合溶液中のダミーRNAの濃度が0.5〜10μg/μLであることが好ましい。
上記構成によれば、RNAポリメラーゼの反応に適した濃度の増幅用二本鎖DNAを作製することができる。その結果、本来、転写反応速度が遅いために増幅することができなかった微量mRNAを増幅することができる。
本発明のcDNAライブラリーの作製方法は、上記課題を解決するために、上記微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴としている。
上記構成によれば、初発のmRNA量が微量でも効率的にmRNAを増幅できる。それゆえ、微量mRNAからcDNAライブラリーを作製することができる。
本発明のプローブの作製方法は、上記課題を解決するために、上記微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴としている。
上記構成によれば、初発のmRNA量が微量でも効率的にmRNAを増幅できる。それゆえ、微量mRNAからプローブを作製することができる。
本発明の段階的サブトラクション法は、上記課題を解決するために、上記微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴としている。
上記構成によれば、初発のmRNA量が微量でも効率的にmRNAを増幅できる。それゆえ、微量mRNAから段階的サブトラクション法を実施することができる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
本発明の特徴点を示す図である。 本発明の特徴点を示す図である。 本発明の実施形態を示すものであり、本発明の微量mRNAの増幅方法の各工程を示すフローチャートである。 本発明の実施形態を示すものであり、ダミーRNAの作製方法を示す図である。 本発明の実施形態を示すものであり、本発明のcDNAライブラリーの作製方法の各ステップを示すフローチャートである。 実施例において作製されたダミーRNA作製用ベクターの模式図である。 実施例における、ダミーRNAの最適量を検討した結果を示す電気泳動図である。 実施例における、ダミーRNAの最適量を検討した結果を示すグラフである。 実施例における、増幅可能な微量mRNAの量を示す電気泳動図である。 実施例における、増幅可能な微量mRNAの量を示す電気泳動図である。 実施例における、増幅可能な微量mRNAの量を示す電気泳動図である。 実施例における、cDNAライブラリーのインサートの長さの分布を示すグラフである。 増幅されたmRNAのサイズ分布を示すグラフである。 増幅されたmRNAのサイズ分布を示すグラフである。 増幅されたmRNAのサイズ分布の比較を示すグラフである。 増幅されたmRNAのサイズ分布の比較を示すグラフである。 実施例における、1種類のRNAに対する増幅効果を示す電気泳動図である。 実施例における、異なる塩基配列を有するダミーRNAを用いた場合のmRNAの増幅効果を示す電気泳動図である。 実施例における、蛍光色素交換実験の結果を示すグラフである。 実施例における、cDNAライブラリーの作製工程を示すフローチャートである。
本発明の一実施形態について図1(a)、図1(b)、2および5に基づいて説明すれば、以下の通りである。まず、本願発明の基本原理について、従来技術と比較しながら概説する。
上述したように、従来のRNAを増幅する方法として、RNAポリメラーゼのプロモーター配列が連結された増幅用二本鎖DNAとRNAポリメラーゼとを用いてRNAを増幅する方法が用いられている。しかしながら、上記方法には、増幅用二本鎖DNAの量が多ければRNAを増幅することができるが、増幅用二本鎖DNAの量が少なければRNAを増幅することができないという問題点があった。
このように増幅用二本鎖DNAの量が少ないときにRNAを増幅することができない理由は、ミカエリス−メンテン式から容易に理解することができる。すなわち、cDNAライブラリーの作製に用いられるRNAポリメラーゼなどの酵素の至適基質濃度はミリモル(mM)程度であることが知られている。上記至適基質濃度(Michaelis定数:K値)は、ミカエリス−メンテン式((I)式参照)から得られる。なお、(I)式において、K=(K2+K3)/K1であり、Vmaxは最大反応速度、[S]は基質濃度を示す。
V=Vmax[S]/(K+[S])・・・・・(I)
[S]=Kであるとき、V=Vmax/2である。このとき、Vmaxは、全ての酵素が、基質との複合体を形成したときの反応速度である。上記(I)式から、[S]が極端に少ない場合には、酵素反応がほとんど進まないことが理解できる。なお、上記(I)式における[S]が、増幅用二本鎖DNAの濃度に相当し、上記(I)式にて反応速度が算出される酵素が、RNAポリメラーゼに相当する。
そこで、特許文献1のような従来の方法では、PCRを用いて増幅用二本鎖DNAを増幅し、その後、当該増幅用二本鎖DNAにRNAポリメラーゼを作用させて微量mRNAを増幅することにより上記問題点を解決している。
しかしながら、上記PCRを用いる方法では、短いmRNAと長いmRNAとを同じように効率よく増幅することができない。この点について、図1(a)を参考にして具体的に説明する。図1(a)には、鋳型として3種類の長さを有する増幅用二本鎖DNAを用い、それにDNAポリメラーゼを作用させるPCRが例示されている。このようなPCRでは、所定の時間内に、最も長い鋳型は1回増幅され、次に長い鋳型は3回増幅され、最も短い鋳型は6回増幅されることになる。その結果、上記PCRによって増幅される増幅用二本鎖DNAは、短い二本鎖DNAが多く、かつ長い二本鎖DNAが少ないものになる。このような配列の長さによって量に偏りがあるように増幅された増幅用二本鎖DNAに対してRNAポリメラーゼを作用させてmRNAを調製すると、結果として得られるmRNAも、短いmRNAが多く、かつ長いmRNAが少ないものになってしまうという不利益がある。
一方、本発明では、増幅用二本鎖DNAを調製する際に、予めダミーRNAと増幅対象のmRNAとを混在させている。その結果、増幅対象のmRNAが少ない場合でも逆転写酵素の反応速度を増加させることになり、効果的に増幅用二本鎖DNAを合成できることを特徴としている。より具体的に説明すると、本発明の微量mRNAの増幅方法では、まず、微量mRNAにダミーRNAを加えることによって、全RNAの量を多くすることで、見かけ上の基質濃度(Michaelis定数:K値)を上昇させる。この基質RNAを用いて増幅用二本鎖DNAを作製するので、結果として作製される増幅用二本鎖DNAの量が、RNAポリメラーゼの至適基質濃度に調製され得る。その結果、mRNAの量が少ない場合であっても、本来進まない転写反応を進めることができる。
また、本発明の微量mRNAの増幅方法は、RNAポリメラーゼによってmRNAを増幅する前段階として、PCRを用いる必要性がなくなる。このため、塩基配列の長さによらず、短いmRNAと長いmRNAとを同じように効率よく増幅することができる。この点について、図1(b)を用いて説明する。図1(b)には、RNAポリメラーゼを用いてRNAを増幅する工程が図示されている。本図では、鋳型として3種類の長さを有する増幅用二本鎖DNAを用い、当該増幅用二本鎖DNAにRNAポリメラーゼを作用させてRNAを増幅している。このとき、所定の時間内に、最も長い鋳型は6回増幅され、次に長い鋳型も6回増幅され、最も短い鋳型も6回増幅されることになる。つまり、本発明に係るmRNAの増幅方法では、所定の時間内に増幅する回数は、増幅用二本鎖DNAの長さに依存しない。それゆえ、短いmRNAと長いmRNAとを同じように効率よく増幅することができる。
以上のように、本発明の微量mRNAの増幅方法は、従来のmRNAの増幅方法とは全く異なる原理により、塩基配列の長さに影響されることなく、短いmRNAと長いmRNAとを同じように効率よく増幅できる画期的な手法である。以下に、本発明に係る微量mRNAの増幅方法の各工程について詳細に説明する。
〔微量mRNAの増幅方法〕
本発明の微量mRNAの増幅方法は、微量mRNAを含む溶液にダミーRNAを添加して混合溶液を作製する第1工程と、混合溶液を鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成する第2工程と、合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成する第3工程と、形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結して増幅用二本鎖DNAを作製する第4工程と、RNAポリメラーゼによって、増幅用二本鎖DNAからRNAを増幅する第5工程と、を含む方法であればよく、その他の材料、工程、条件、使用器具等の具体的な構成については特に限定されるものではない。以下に各工程について詳細に説明する。
<第1工程>
上記第1工程は、微量mRNAを含む溶液にダミーRNAを添加して混合溶液を作製する工程である。
本明細書中にて「微量mRNA」の「微量」とは、当該mRNAから増幅用二本鎖DNAを合成した場合、後段の第5工程において、上記増幅用二本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼによる転写反応を行ったときに転写反応速度が極めて遅い程度のmRNAの量を意図する。また、比較的mRNAの量が多くRNAポリメラーゼによる転写反応が進む場合であっても、ダミーRNAを用いることによって、さらに転写反応速度を増すことができることは、本明細書から容易に理解できるであろう。
また、本明細書中にて「ダミーRNA」とは、増幅したいRNAに対して加えることによって、少なくとも逆転写反応時および後段のリガーゼ反応時に、逆転写酵素の基質となるRNAの量、およびリガーゼの基質となるDNAの量を増加させことができるRNAが意図される。
上記mRNAは、動物、植物または微生物などの細胞または組織などから精製されたmRNAであってもよいし、あるいは、合成されたmRNAであってもよく、特に限定されるものではない。また、微量mRNAの精製方法も特に限定されるものではなく、適宜、公知の方法を用いて精製することができる。
ダミーRNAの配列は、特に限定されるものではないが、ポリA配列を含むことが好ましい。ダミーRNAがポリA配列を有することによって、mRNAとダミーRNAとを、同じプライマーを用いて逆転写することができる。例えば、上記プライマーとしては、オリゴdTプライマーを挙げることができる。
また、上記ポリA配列の長さは、オリゴdTプライマーが特異的にアニーリングして逆転写し得る長さであればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記ポリA配列は、少なくとも18個のアデニル酸からなることが好ましい。
さらに具体的には、ダミーRNAの配列は、配列番号4、配列番号6または配列番号16によって示される塩基配列であることが好ましい。以上のようにダミーRNAがポリA配列を有することによって、オリゴdT配列を含む同じプライマーを用いて微量mRNAとダミーRNAとを同時に逆転写することができる。
ダミーRNAの作製方法は、特に限定されるものではなく、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、ダミーRNAは、ダミーRNAの配列を含む二本鎖DNAを組み込んだベクターから、ダミーRNAを発現させることによって作製することができる。ベクターを用いてダミーRNAを作製する方法は、一度ベクターを構築すれば、何度でもダミーRNAを作製することができるので、安価に大量のダミーRNAを作製できるという利点を有する。具体的には、ダミーRNAの塩基配列をコードするセンス鎖DNAとアンチセンス鎖DNAとを合成したあと、アニーリングさせて二本鎖DNAを形成する。その後、当該二本鎖DNAを発現ベクターなどに組み込んで、公知のRNAポリメラーゼによって転写して作製することができる。なお、上記発現ベクターは、特に限定されるものではなく、組み込まれた二本鎖DNAからRNAを転写できるようにRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するものであればよい。
また、ダミーRNAは、公知の方法によって、合成して作製することもできる。合成によってダミーRNAを作製する方法は、ベクターを用いて作製する方法と比較してコストがかかるが、ダミーRNAに対してビオチン化などの様々な化学修飾を施すことができるという利点を有する。例えば、ダミーRNAをビオチン化すれば、当該ダミーRNAは、ストレプトアビジンに対して特異的に結合することができる。つまり、ビオチン・ストレプトアビジン法によって、反応混合液などの中から、上記ダミーRNAのみを特異的に除去することが可能になる。
また、ダミーRNAはビオチン化されていることが好ましい。ダミーRNAがビオチン化されていることによって、例えば反応溶液中からダミーRNAのみを特異的に除去することができる。例えば、ダミーRNAをビオチン化した場合、ビオチン・ストレプトアビジン法によって、ダミーRNAのみを特異的に除去することができる。ダミーRNAをビオチン化する方法は特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。
上記混合溶液中のダミーRNAの濃度は、0.5〜10μg/μLであることが好ましい。また、上記混合溶液中のダミーRNAの濃度は、0.5〜2.5μg/μLであることがより好ましく、1μg/μLであることが最も好ましい。なお、これらの好ましい濃度範囲は、後述する実施例において、発明者らが鋭意検討して独自に決定した濃度範囲である。ダミーRNAの濃度が上記濃度であることによって、混合溶液中の全RNA量をミリモル(mM)程度に調製することができる。その結果、混合溶液から作製される増幅用二本鎖DNAの濃度もミリモル(mM)程度になる。RNAポリメラーゼの至適基質濃度はミリモル(mM)程度であるので、その結果、本来、増幅用二本鎖DNAの量が少ないために進行し難い転写反応をより効率よく進行させることができる。
上記微量mRNAとダミーRNAとを含む混合溶液の溶媒は、後段の逆転写反応を阻害しないものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、水またはTris−HClなど、緩衝液に用いる好適な材料を適宜使用することができる。
<第2工程>
第2工程は、混合溶液を鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成する工程である。
本工程を図2のステップ1に模式的に示す。本工程では、図2のステップ1に示されるように、混合溶液中の微量mRNAとダミーRNAとを鋳型として用いた逆転写反応によって、上記微量mRNAおよび上記ダミーRNAのアンチセンスDNAが合成される。本工程で用いられる逆転写酵素は、特に限定されるものではなく、公知の逆転写酵素を適宜用いればよい。
また、プライマーとしては、微量mRNAとダミーRNAとにアニーリングし得るものであれば良く、特に限定されるものではないが、微量mRNAとダミーRNAとが共にポリA配列を有する場合には、オリゴdTプライマーを用いることが好ましい。オリゴdTプライマーによって両方のRNAを同時に逆転写することができ、その結果、操作の煩雑さや経費を削減することができる。
<第3工程>
第3工程は、第2工程にて合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成する工程である。
本工程を図2のステップ2に模式的に示す。本工程では、図2のステップ2に示されるように、DNAポリメラーゼは、アンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成し得るものであればよく、適宜公知のDNAポリメラーゼを用いることができる。
また、第3工程は、DNAポリメラーゼがセンスDNAを合成する前段階として、RNaseによって、上記第2工程にてアンチセンスDNAを合成するときに鋳型として用いられた微量mRNAとダミーRNAとを分解するステップが含まれていることが好ましい。上記RNaseは、微量mRNAとダミーRNAとを分解することができればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記RNaseとしてRNase Hを用いることができる。
<第4工程>
第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結して増幅用二本鎖DNAを作製する工程である。
上記第4工程は、結果として、第3工程にて形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側のみにRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結する工程であればよく、その方法は、特に限定されるものではない。
例えば、上記第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を含む増幅アダプターを連結したあと、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結された増幅アダプターのみを切断する第6工程を含むことが好ましい。二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結された増幅アダプターのみを切断する方法は、特に限定されるものではないが、制限酵素を用いて切断することが好ましい。制限酵素を用いて切断する場合には、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端にプロモーター配列を連結したとき、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結されたプロモーター配列のみを切断できるように、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に制限酵素サイトが形成されるようにすることが好ましい。このとき上記制限酵素は、二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側に存在しないものであればよく、特に限定されるものではない。また、上記制限酵素サイトはオリゴdTプライマー内に組み込んでおくことが好ましい。
本工程を図2のステップ3に模式的に示す。ステップ3では、まず、ステップ2にて形成された二本鎖DNAの両末端側に、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含む増幅アダプターを連結している。このとき、上記二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に増幅アダプターが連結されたときにのみ、当該3’末端側にNotIサイトが形成されるようにオリゴdTプライマーを作製している。したがって、増幅アダプターが連結された後の二本鎖DNAをNotIにて処理すれば、上記二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結した増幅アダプターのみを切断することができる。また、上記二本鎖DNAの5’末端側に連結された増幅アダプターのみが切断されるようにしてもよい。このように、連結された増幅アダプターの一方を切断することによって、センスRNAのみ、またはアンチセンスRNAのみを選択的に増幅することが可能になる。
また、上記第4工程は、切断された増幅アダプターおよびダミーRNAを除去する第7工程を含むことが好ましい。第7工程にて、切断された増幅アダプターおよびダミーRNAを除去することによって、後段の第5工程においてRNAポリメラーゼによってRNAを増幅するとき、切断された増幅アダプターおよびダミーRNAにRNAポリメラーゼが結合することがなく、上記二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側に連結された増幅アダプターにのみ、RNAポリメラーゼが結合することができる。したがって、微量mRNAとダミーRNAとを効率よく転写することができるとともに、微量mRNAの増幅工程にて発生し易い様々なノイズを減少させることができる。
上記第7工程は、切断された増幅アダプターおよびダミーRNAを除去し得るものであればよく、特に限定されることはない。例えば、上記第7工程としては、ゲル濾過カラムを用いたサイズ分画法を用いることができる。なお、上記ゲル濾過カラムは特に限定されず、分画したいサイズに応じて適宜公知のカラムを用いればよい。上記ゲル濾過カラムを用いたサイズ分画法を用いれば、切断された増幅アダプターおよびダミーRNAの両方を同時に除去することができる。また、ダミーRNAがビオチン化されている場合、上記第7工程には、ビオチン・ストレプトアビジン法などによるダミーRNA除去工程が含まれていても良い。ビオチンは、ストレプトアビジンに対して特異的に結合することが知られている。したがって、反応溶液をストレプトアビジンカラムなどに通せば、ビオチン化されたダミーRNAを特異的に除去することができる。
上記増幅アダプターには、RNAポリメラーゼのプロモーター配列が含まれている。上記プロモーター配列としては、RNAポリメラーゼが結合し、かつ当該プロモーター配列の下流に位置する塩基配列を転写し得るものであればよく、特に限定されるものではない。例えば上記プロモーター配列としては、T7プロモーター配列、T3プロモーター配列またはSP6プロモーター配列を含む塩基配列を挙げることができるが、これらに限定されない。上記各プロモーター配列の具体的な塩基配列を例示すると、
T7プロモーター配列 :5’-TAATACGACTCACTATAGGGAGA-3’(配列番号1)
T3プロモーター配列 :5’-AATTAACCCTCACTAAAGGG-3’ (配列番号2)
SP6プロモーター配列:5’-ATTTAGGTGACACTATAGAATAC-3’(配列番号3)
を挙げることができる。
上記プロモーター配列を二本鎖DNAに連結する場合、上記プロモーター配列を含む配列と当該配列の相補鎖DNAとをアニーリングさせて増幅アダプターを形成させたあと、当該増幅アダプターを二本鎖DNAに連結させることが好ましい。なお、上記プロモーター配列と当該プロモーター配列の相補DNA鎖の作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて合成することができる。
また、上記増幅アダプターを二本鎖DNAに連結させる場合、DNAリガーゼを用いて連結することが好ましい。上記DNAリガーゼとしては、増幅アダプターを二本鎖DNAに連結し得るものであればよく、特に限定されるものではない。
<第5工程>
第5工程は、RNAポリメラーゼによって、増幅用二本鎖DNAからRNAを増幅する工程である。
上記第5工程は、図2のステップ4に示されるように、上記第4工程にて形成された増幅用二本鎖DNAとRNAポリメラーゼとを用いて、微量mRNAとダミーRNAとを増幅する工程である。上記RNAポリメラーゼは、増幅用二本鎖DNAに連結された増幅アダプター中のプロモーター配列に結合し、かつ当該プロモーター配列の下流に位置するDNAからRNAを転写し得るものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記RNAポリメラーゼは、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼであることが好ましい。また、上記プロモーター配列としては、各RNAポリメラーゼによって転写制御を受け得るプロモーター配列を用いることが好ましい。
〔cDNAライブラリーの作製方法〕
本発明のcDNAライブラリーの作製方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むものであればよく、その他の材料、工程、条件、使用器具等の具体的な構成については特に限定されるものではない。
具体的に、本発明のcDNAライブラリーの作製方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法によって得られる増幅されたmRNAから二本鎖DNAを作製し、その後、当該二本鎖DNAをベクターに導入する工程を含むことが好ましい。その作成方法も特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いて作製することができる(例えば、「バイオマニュアルシリーズ2 遺伝子ライブラリーの作成法」(野島博・編)羊土社、1994、または「基礎生化学実験法」(大島泰郎・編)第4巻、核酸・遺伝子実験II、東京化学同人、2000参照)。
本発明のcDNAライブラリーの作成方法の一例を、図4に模式的に示す。なお、本発明は以下の説明に限られるものではないことを念のため付言しておく。
図5のステップ1は、本発明の微量mRNAの増幅方法の第5工程にて増幅されたmRNAを鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成するステップである。その方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法の第2工程に従えばよい。なお、上記第5工程にて増幅されるmRNAには、増幅された微量mRNAと増幅されたダミーRNAとが含まれている。
図5のステップ2は、上記ステップ1にて合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成するステップである。その方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法の第3工程に従えばよい。
図5のステップ3は、上記ステップ2にて形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にDNAリガーゼを用いて連結アダプターを連結するステップである。上記DNAリガーゼとしては、連結アダプターを二本鎖DNAの両末端側に連結し得るものであればよく、特に限定されるものではない。
また、上記連結アダプターは、二本鎖DNAの両末端側に連結し得るものであればよく、特に限定されるものではない。上記オリゴdTプライマーの塩基配列は、連結アダプターが二本鎖DNAの両末端側に連結された場合に、一方の連結アダプターのみが制限酵素によって切断され得るような塩基配列を有するものであることが好ましい。上記制限酵素としては、特に限定されるものではない。例えば、図5のステップ3では、上記制限酵素が、NotIである場合を例示している。また、上記連結アダプターは、二本鎖DNAに連結されない側が、制限酵素サイトであるように作製されていることが好ましい。上記制限酵素サイトとしては、特に限定されるものではない。例えば、図5のステップ3では、上記制限酵素サイトが、BglIIサイトである場合を例示している。この結果、ステップ3にてNotIによって処理された後の二本鎖DNAの両末端には、BglIIサイトおよびNotIサイトが存在するため、容易にベクターに組み込むことができる。
上記ステップ3のあと、切断された連結アダプターと増幅されたダミーRNAとを除去するためにステップ4が含まれていることが好ましい。ステップ4は、切断された連結アダプターと増幅されたダミーRNAとが除去され得るものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、ステップ4として、ゲル濾過カラムを用いたサイズ分画法を用いることができる。なお、上記ゲル濾過カラムは特に限定されず、分画したいサイズに応じて適宜公知のカラムを用いればよい。また、上記ステップ4は、複数回行うことが好ましい。ステップ4を複数回行うことによって、切断された連結アダプターと増幅されたダミーRNAとを、より効率よく除去することができる。
上記ステップ1〜4を経て精製された二本鎖DNAを、DNAリガーゼを用いてベクターに組み込むことにより、cDNAライブラリーを作製することができる。上記ベクターは、特に限定されるものではなく、適宜公知のベクターを用いることができる。例えば、プラスミドベクター、コスミドベクターまたはファージベクターなど公知のベクターを用いることができる。
〔プローブの作製方法〕
本発明のプローブの作製方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むものであればよく、その他の材料、工程、条件、使用器具等の具体的な構成については特に限定されるものではない。
具体的に、本発明のプローブの作製方法は、本発明の微量mRNAの増幅方法によって増幅されたmRNAを用いて、プローブを作製する方法である。本明細書において「プローブ」とはRNAプローブ、およびDNAプローブを指す。mRNAからRNAプローブまたはDNAプローブを作製する方法は特に限定されるものではなく適宜公知の方法(例えば、「バイオマニュアルシリーズ2 遺伝子ライブラリーの作成法」(野島博・編)羊土社、1994、または「基礎生化学実験法」(大島泰郎・編)第4巻、核酸・遺伝子実験II、東京化学同人、2000参照)にしたがって作製することができる。
本願発明のプローブの作製方法は、例えば、cDNAマイクロアレイ用のプローブを作製することができる。
〔段階的サブトラクション法〕
本発明の段階的サブトラクション法(別名:多段差引法)は、本発明の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むものであればよく、その他の材料、工程、条件、使用器具等の具体的な構成については特に限定されるものではない。
具体的に、本発明の段階的サブトラクション法は、本発明の微量mRNAの増幅方法によって増幅されたmRNAを被検対象として用いて行われる段階的サブトラクション法である。上記段階的サブトラクション法は、特に限定されるものではなく適宜公知の方法(例えば、「バイオマニュアルシリーズ2 遺伝子ライブラリーの作成法」(野島博・編)羊土社、1994、または「基礎生化学実験法」(大島泰郎・編)第4巻、核酸・遺伝子実験II、東京化学同人、2000参照)にしたがって行うことができる
〔実施例〕
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
〔1:ダミーRNA作製用ベクターの作製〕
まず、本発明のダミーRNA作製用ベクターの作製方法について、図4を用いて説明する。
まず、ダミーRNAのセンス鎖(Sense)とアンチセンス鎖(Antisense)とがアニーリングしてなるダミーRNAユニットを作製した。ダミーRNAユニットを作製するために、ダミーRNAのセンス鎖(Sense)とアンチセンス鎖(Antisense)とをそれぞれ合成した。なお、上記センス鎖の5’末端は、ベクターへの組み込みのためにリン酸化した。以下に、センス鎖およびアンチセンス鎖の塩基配列を示す。
Sense :5’-AATTCGTCTGGACACGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGC-3’(配列番号4)
Antisense:5’-GGCCGCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTCGTATCCAGACG-3’(配列番号5)
上記センス鎖とアンチセンス鎖とを、それぞれの濃度が等しく、かつセンス鎖とアンチセンス鎖との全量が0.35μg/μLとなるように、アニーリングバッファー(10mM Tris-HCl(pH7.5),1mM EDTA,10mM MgCl2)中に溶解した。その後、65℃にて2分間、37℃にて10分間、および室温にて5分間の条件下において順に保温することによってセンス鎖とアンチセンス鎖とをアニーリングさせ、ダミーRNAユニットを作製した。なお、上記ダミーRNAユニットの両末端には、EcoRIサイトおよびNotIサイトが形成されており、両制限酵素サイトを用いて、発現ベクターに組み込むことができる。
次いで、上記ダミーRNAユニットを組み込むためのベクターを作製した。当該ベクターとしてはpAP3neo(タカラバイオ社製)を用いた。pAP3neoをEcoRIおよびNotIにて切断した後、アガロースゲルに電気泳動し、当該アガロースゲルからpAP3neoを精製した。次いで、上記pAP3neoに、上記ダミーRNAカセットを組み込むことによってダミーRNA作製用ベクター(pDurin−1)を作製した。
〔2:ダミーRNAの調整〕
上記pDurin−1を用いてダミーRNAを作製する方法は、以下の1)〜11)に従った。また、上記pDurin−1を用いてダミーRNAを作製する方法について、図3に模式的に示す。
1)まず10μgのpDurin−1に20μLの10×Not I Buffer(100mM Tris-HCl(pH7.5),1.5M NaCl,70mM MgCl2,10mM DTT,0.1% BSA,0.1% Triton X-100)を加え、更に水を加えて全量を200μLにした。
2)5ユニットのNotIを加え、37℃にて2時間保温した。反応後、pDurin−1が切断されていることを、アガロース電気泳動にて確認した。
3)上記反応液に反応液と等量(210μL)のフェノール・クロロホルム溶液(1:1)を加えて攪拌した。
4)マイクロフュージにて1分間の遠心分離を行った。
5)遠心分離の後、上清を新しいマイクロフュージチューブに移し、上清の約0.08倍量(17μL)の3M 酢酸ナトリウムと上清の約2倍量(420μL)のエタノールとを加え、ドライアイス中で15分間冷却した。
6)マイクロフュージにて15分間遠心し、得られた沈殿を500μLの70%エタノールを用いて軽く洗った後、2秒間遠心を行った。上清を取り除いた後、再び2秒間遠心を行った。マイクロチューブの底に溜まった少量の70%エタノールを取り除いた後、沈殿を乾燥させることなく、湿ったままの状態にて次の操作へ進んだ。
7)NotIにて切断されたpDurin−1を含む上記沈殿物に、20μlの10×T7 Pol Buffer(400mM Tris-HCl(pH8.0),80mM MgCl2,20mM spermidin,50mM DTT)、16μLの25mM NTP mixを加え、更に水を加えて全量を200μLにした。
8)50ユニット(約1〜5μL)のT7RNAポリメラーゼを加え、37℃にて60分間保温した。
9)更に、5ユニット(約1μL)のDNase I(RNase活性の混入のないもの)を加え、37℃にて20分間保温した。
10)上記3)〜6)と同様の操作を行い、沈殿を得た。
11)10)にて得られた沈殿に、100μLのTE(10mM Tris-HCl(pH7.5),0.1mM EDTA)を加え、ダミーRNAの濃度をUVメーターによって測定した。なお、溶液がOD260=1.0であれば、当該溶液中のダミーRNAの濃度は40μg/μLである。ダミーRNAの濃度を測定した後、ダミーRNAの濃度が5μg/μLとなるように、TEを加えた。その後、ダミーRNAをマイクロフュージチューブなどに分注して、−20℃または−80℃にて保存した。以上のようにして、ダミーRNA作製用ベクターを用いてダミーRNAを作製した。
また、上記以外の方法として、化学合成によってダミーRNAを作製した。このとき、ダミーRNAを化学合成するとともに、その3’末端側をビオチン化した。ビオチン化したダミーRNAを、HPLCによって精製した。なお、このようなビオチン化されたダミーRNAは、購入することも可能である。以下に上記ダミーRNAの塩基配列を示す。
ダミーRNA:5’-AATTCGTCTGGACACGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA-3’(配列番号6)
合成されたダミーRNAを、1μg/mLの濃度になるように水に溶かした後、−20℃または−80℃にて保存した。なお、以下の実験には、ビオチン化されたダミーRNAを用いた。
〔3:二本鎖DNAの作製〕
二本鎖DNAの作製方法は、以下の1)〜10)に従った。
1)まず、1ng程度のライブラリー化したい微量mRNA(およそ100個の細胞由来)に、ダミーRNAを0、0.5、1.0、2.5、5.0または10.0μg加え、それぞれ全量が7.5μLとなるように5mM Tris-HCl(pH7.5)を加えた。次いで、65℃にて5分間の加熱処理を行った後、氷冷した。なお、微量mRNAの取得方法は、公知のmRNA取得方法に従った。具体的には、QuickPrep Micro mRNA Purification Kit(Amersham Biosciences社製)を用いて微量mRNAを取得した。なお、具体的な操作は、添付のプロトコールに従った。なお、mRNA抽出の時にダミーRNAを加えておけば、RNaseによるmRNAの分解を最小限に抑えることができる。また、本実施例では、微量mRNAとして、293T細胞由来またはHeLa細胞由来のmRNAを用いた。
2)上記微量mRNAとダミーRNAとの混合物に、2.5μLの10×First Strand Buffer(500mM Tris-HCl(pH8.3),750mM KCl,30mM MgCl2)、2.5μLの0.1M DTT、1.5μLの10×First Strand Mixture(10mM dATP,10mM dGTP,10mM dTTP,5mM 5-methyl-dCTP)、1.0μL(1.6μg)の(T7)Linker Primer、および0.5μL(20ユニット)のRNase Inhibitor(Promega社製)を順次加えた。その後、水を加えて全量を25μLとした。なお、以下に、(T7)Linker Primerの配列を示す。なお、上記(T7)Linker PrimerはHPLCにて精製されたものを用いた。
(T7)Linker Primer:5’-GAGAGAGAGAGAGAGATAATACGACTCACTATAGGGAGGCGGCCGCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3’(配列番号7)
3)室温にて10分間放置することによって、mRNAと(T7)Linker Primerとをアニーリングさせた。
4)1μL(50ユニット)のStrataScript RT(Stratagene社製、Stratagene cDNA Synthesis Kit)と0.5μLのSuperScript III(Invitrogen社製)とを加え、42℃にて45分間反応させた。その後、更に0.5μLのSuperScript IIIを加え、50℃にて30分間反応させた。その後、更に55℃にて30分間反応させた。
5)反応終了後、反応液を氷中に移した。
6)上記反応液を氷中にて冷却した状態で、20μLの10×Second Strand Buffer(188mM Tris-HCl(pH8.3),906mM KCl,46mM MgCl2)、7.5μLの0.1M DTT、および3μLのSecond Strand Nucleotide Mixture(10mM dATP,10mM dGTP,10mM dTTP,25mM dCTP)を加えた。その後、氷冷した水を加えて全量を200μLとした。
7)更に、氷中にて5分間保冷した。
8)1.5μL(2ユニット)のRNase H(タカラバイオ社製)と10μL(50ユニット)のE. coli DNA Polymerase I(タカラバイオ社製)とを加えた。
9)16℃にて150分間反応させた。
10)200μLのフェノール/クロロホルム溶液を加えて良く攪拌した後、遠心分離(15,000rpm,3min,4℃)を行った。上清液を新しいチューブに移してエタノール沈殿(−80℃にて10分以上)を行った後、沈殿物を70%エタノールにて洗浄した。沈殿物は、乾燥させることなく以下の工程に用いた。
〔4:ダミーRNAの最適量に関する検討〕
二本鎖DNAの作製時におけるダミーRNAの量と、二本鎖DNAの作製効率との関係を検討した。
上記沈殿物を85mLの水に溶解し、そのうちの1μLをテンプレートとして用いた。当該テンプレートに対して、1μLの10×Ex Buffer、0.8μLのdNTP mix.、下記のプライマー(hsGAPDH-FおよびhsGAPDH-R)をそれぞれ1μL、0.1μLのEx taq、5.1μLの水を加えて、全量を10μLとした。そして、95℃にて5分間の変性の後、95℃にて30秒間の変性反応、55℃にて30秒間のアニーリング反応および72℃にて1分間間の伸長反応からなるサイクルを30〜50サイクル行うPCR反応を行った。なお、微量mRNAが約1細胞由来である場合には、上記サイクル数は50サイクルであることが好ましく、微量mRNAが約10細胞由来である場合には、上記サイクル数は40サイクルであることが好ましく、微量mRNAが約100細胞由来である場合には、上記サイクル数は、30サイクルであることが好ましい。
hsGAPDH-F:5’-CGAGATCCCTCCAAAATCAA-3’(配列番号8)
hsGAPDH-R:5’-AGGGGTCTACATGGCAACTG-3’(配列番号9)
PCR反応の後、PCR反応産物(5μL)を2%アガロースゲルにて電気泳動した。電気泳動後、各バンドの蛍光強度(intensity)を「Socion Image(NIH Image)」にて測定した。なお、結果については後述する〔結果1〕にて説明する。
〔5:微量mRNA量に関する検討〕
293T細胞またはHeLa細胞から抽出したmRNA(約0.1ng(約10細胞に相当)、または約0.01ng(約1細胞に相当))に1.0μgのダミーRNAを添加したサンプルと、ダミーRNAを添加しないサンプルとを調整した。
当該サンプルを用い、上述した方法にしたがって、2本鎖DNAを作製した。そして、上記〔4:ダミーRNAの最適量に関する検討〕に記載した方法にしたがって、本願発明の増幅方法によって増幅可能な微量mRNAの量について検討した。なお、微量mRNAが0.01ngの場合には、PCR反応のサイクル数を50サイクルとし、微量mRNAが0.1ngの場合には、PCR反応のサイクル数を40サイクルとした。結果については後述する〔結果2〕にて説明する。
〔6:増幅用二本鎖DNAの作製〕
増幅用二本鎖DNAの作製方法は、以下の1)〜13)に従った。
1)増幅アダプターを作製するために、センス鎖とアンチセンス鎖とをそれぞれ合成した。なお、上記センス鎖には、T7ポリメラーゼのプロモーター配列が含まれている。以下に、センス鎖およびアンチセンス鎖の塩基配列を示す。
Sense T7 :5’-CACTAGTACGCGTAATACGACTCACTATAGGGAATTCCCCGGG-3’(配列番号10)
Antisense T7:5’-CCCGGGGAATTCCCTATAGTGAGTCGTATTACGCGTACTAGTGAGCT-3’(配列番号11)
上記Sense T7とAntisense T7とを、それぞれの濃度が等しく、かつSense T7とAntisense T7との全量が0.35μg/μLとなるように、アニーリングバッファー(10mM Tris-HCl(pH7.5),1mM EDTA,10mM MgCl2)中に溶解した。その後、65℃にて2分間、37℃にて10分間、および室温にて5分間の条件下にて順に保温することによってSense T7とAntisense T7とをアニーリングさせ、増幅アダプターを作製した。上記増幅アダプターを、−20℃にて保存した。
2)〔3:二本鎖DNAの作製〕にて精製した沈殿物に、10μLの10×T4 DNA Polymerase Buffer、5μLの2.5mM dNTP mixture、および水を加えて全量を100μLとした。当該溶液に3.5μL(約5ユニット)のT4 DNA Polymeraseを加えて、37℃にて30分間反応させた。次いで、100μLのフェノール/クロロホルム溶液を加えて攪拌した後、遠心分離を行った。その後、上清液を新しいチューブに移してエタノール沈殿(−80℃にて10分以上)を行った後、沈殿物を70%エタノールにて洗浄した。当該工程によって、平滑末端化された二本鎖DNAを得た。
3)上記平滑末端化された二本鎖DNA(沈殿物)に、2μLの10×Ligase Buffer(500mM Tris-HCl(pH7.5),70mM MgCl2,10mM DTT)、2μLの10mM rATP、および1μLの増幅アダプター(0.35μg)を加え、その後、水を加えて全量を18.5μLとした。
4)1.5μL(約4ユニット)のT4 DNA Ligaseを加えた後、8℃にて一晩反応させた。
5)70℃にて30分間の加熱処理を行うことによって、Ligaseを失活させた。次いで、5秒間の遠心分離を行って上清を精製した。
6)このとき、〔3:二本鎖DNAの作製〕にて沈殿として精製された二本鎖DNAの両端には増幅アダプターが接続されている。この場合、当該二本鎖DNAにT7 RNA Polymeraseを作用させれば、微量mRNAのセンス鎖のみならずアンチセンス鎖も転写されてしまう。したがって、NotIによって処理することによって、微量mRNAのアンチセンス鎖の転写を制御する増幅アダプターのみを除去した。まず、上記上清に、27μLのNotI Buffer Supplement(278mM NaCl,8mM MgCl2,1.8mM DTT,0.018% Triton X-100)および3μLのNotIを加え、37℃にて90分間反応させた。反応後、5μLの10×STEおよび2μgのtRNAを加えた。以上のようにして、mRNAを増幅するための増幅用二本鎖DNAを作製した。
7)次いで、制限酵素によって切断された増幅アダプターを除くためにCHROMA SPIN−400(Clontech社製)を用いてサイズ分画を行った。まず、CHROMA SPIN−400を均一に懸濁(カラムを上下して混ぜること)してから上下の蓋を取り除いた。CHROMA SPIN−400を付属のチューブ(または蓋を取り除いた1.5mLマイクロフュージチューブ)にのせ、10分間静置してカラム中に余剰に存在する1×TE(100mM NaCl,10mM Tris-HCl(pH8.0),1mM EDTA)を排出した。更に、上記CHROMA SPIN−400と1.5mLマイクロフュージチューブとを15mLのプラスチックチューブに入れ、その状態にて低速遠心を行った。なお、低速遠心機(BECKMAN J2-21)を用い、1800rpm、3分間の条件(700×g)にて遠心を行った。
8)低速遠心後、1.5mLマイクロフュージチューブに出てきたバッファーを取り除き、再び1800rpmにて3分間の条件にて、遠心を行った。
9)低速遠心後、1.5mLマイクロフュージチューブに出てきたバッファーを取り除いた。
10)上記CHROMA SPIN−400を新しい1.5mLマイクロフュージチューブに差し込み、CHROMA SPIN−400の中心の樹脂上に、6)にて作製した増幅用二本鎖DNAを10μL加えた。新しいマイクロフュージチューブに差し込まれたCHROMA SPIN−400を15mLのプラスチックチューブに入れ、低速遠心機を用い、1800rpm、5分間の条件にて遠心を行った。
11)マイクロフュージチューブに出てきたサンプル(約50μL)に、130μLのTE、20μLの5M NaCl、および等量のフェノール・クロロホルム溶液を加えてよく攪拌した後、2分間遠心した。
12)上層の水層を新しいチューブに移し、400μLの100%エタノールを加えて攪拌した後、−80℃にて10分間、または−20℃にて一晩静置した。
13)上記水層を15000rpm、10分間、4℃の条件にて遠心して沈殿物を回収した。その後、当該沈殿物を70%エタノールによって洗浄した。
以上の工程によって、増幅用二本鎖DNAを作製した。
〔7:ダミーRNAの除去〕
1)上記〔6:増幅用二本鎖DNAの作製〕にて回収した沈殿物を水に溶解した後、ストレプトアビジンを加え、十分に攪拌した後、室温にて5分間静置した。
2)反応溶液にフェノール・クロロホルム溶液を加えて攪拌し、水層を回収した。なお、ダミーRNA/ストレプトアビジン複合体はフェノール・クロロホルム層に移動するので、水層を回収することによって、ダミーRNAを除去することができる。
3)2)にて残ったフェノール・クロロホルム層に、TEを加えて攪拌した後、再び水槽を回収した。
4)上記2)および3)の工程にて回収した水層に対してストレプトアビジンを加え、上記1)〜3)の工程を繰り返し行った。
5)ミニセント−30フィルター(東ソー製)(MINICENT−30(Cat.#08627))を用いて、回収した水層から増幅用二本鎖DNAを精製した。なお、精製方法は、添付のプロトコールに従った。
〔8:cDNAライブラリーの作製〕
cDNAライブラリーの作製工程を図14に示すとともに、その詳細について以下に説明する。
1)作製した増幅用二本鎖DNA(沈殿物)に、1μLのダミーRNA(5μg/μL)、10μLの10×T7 Pol Buffer、8μLの25mM NTP mix、および水を加えて全量を95μL〜99μLとした。
2)上記溶液に50ユニット(約1〜5μL)のT7RNAポリメラーゼを加え、37℃にて60分間保温した。
3)CHROMA SPIN−400を用いて、上述した方法にしたがって、増幅された過剰量のダミーRNAを除去した。なお、ダミーRNAが除去されたあとの増幅されたmRNAは、エタノール沈殿によって沈殿物として回収した。なお、本実施例では、ここで得られたmRNAを用いて、〔3:二本鎖DNAの作製〕〜〔8:cDNAライブラリーの作製〕の3)の工程を合計4回繰り返して増幅したmRNAを、以後の工程に用いた。
4)上記3)にて回収されたmRNAに7.5μLの5mM Tris-HCl(pH7.5)を加え、65℃にて5分間の加熱処理の後、氷冷した。
5)上記溶液に、2.5μLの10×First Strand Buffer、2.5μLの0.1M DTT、1.5μLの10×First Strand Mixture、1.0μL(1.6μg)の(T7)Linker Primer(配列番号7)、および0.5μL(20ユニット)のRNase Inhibitor(Promega社製)を順次加えた。その後、水を加えて全量を25μLとした。
6)上記溶液を室温にて10分間放置することによって、mRNAと(T7)Linker Primerとをアニーリングさせた。
7)上記溶液に1μL(50ユニット)のStrataScript RT(Stratagene社製、Stratagene cDNA Synthesis Kit)と0.5μLのSuperScript III(Invitrogen社製)とを加え、42℃にて45分間反応させた。その後、更に0.5μLのSuperScript IIIを加え、50℃にて30分間反応させた。その後、更に55℃にて30分間反応させた。
8)反応終了後、上記溶液を氷中に移した。
9)上記溶液を氷中にて冷却した状態で、20μLの10×Second Strand Buffer、7.5μLの0.1M DTT、および3μLのSecond Strand Nucleotide Mixtureを加えた。その後、氷冷した水を加えて全量を200μLとした。
10)上記溶液を、更に氷中にて5分間保冷した。
11)上記溶液に、1.5μL(2ユニット)のRNase H(タカラバイオ社製)と10μL(50ユニット)のE. coli DNA Polymerase I(タカラバイオ社製)とを加えた。
12)上記溶液を、16℃にて150分間反応させた。
13)上記溶液に対して200μLのフェノール/クロロホルム溶液を加えて良く攪拌した後、遠心分離(15,000rpm,3min,4℃)を行った。上清液を新しいチューブに移してエタノール沈殿(−80℃にて10分以上)を行った後、沈殿物を70%エタノールにて洗浄した。
14)上記沈殿物に、10μLの10×T4 DNA Polymerase Buffer、5μLの2.5mM dNTP mixture、および水を加えて全量を100μLとした。当該溶液に3.5μL(約5ユニット)のT4 DNA Polymeraseを加えて、37℃にて30分間反応させた。次いで、100μLのフェノール/クロロホルム溶液を加えて攪拌した後、遠心分離を行った。その後、上清液を新しいチューブに移してエタノール沈殿(−80℃にて10分以上)を行った後、沈殿物を70%エタノールにて洗浄した。当該工程によって、平滑末端化された二本鎖DNAを得た。
15)上記平滑末端化された二本鎖DNA(沈殿物)に、2μLの10×Ligase Buffer、2μLの10mM rATP、および2種類のアダプター(全量1μL、0.35μg)を加え、その後、水を加えて全量を20μLとした。なお、上記アダプターの一方は、以下の配列番号12にて示すBamHI(BglII)-SmaI断片が複数連結された配列を有する二本鎖DNAからなるアダプターである。また、上記アダプターの他方は、以下の配列番号13にて示すSmaI断片が複数連結された配列を有する二本鎖鎖DNAからなるアダプターである。
BamHI(BglII)-SmaI断片:5’-GATCCCCGGG-3’(配列番号12)
SmaI断片 :5’-CCCGGG -3’ (配列番号13)
なお、当該アダプターの作製方法は、上述したSense T7とAntisense T7とからなる増幅アダプターの作製方法に従った。
16)上記溶液に1.5μL(約4ユニット)のT4 DNA Ligaseを加えた後、8℃にて一晩反応させた。
17)上記溶液に対して70℃にて30分間の加熱処理を行うことによって、Ligaseを失活させた。次いで、5秒間の遠心分離を行って上清を精製した。
18)上記溶液に、27μLのNotI Buffer Supplementおよび3μLのNotIを加え、37℃にて90分間反応させた。反応後、5μLの10×STEおよび2μgのtRNAを加えた。その後、CHROMA SPIN−400を用いて、上述した方法にしたがって、残存するダミーRNA等を除去した。なお、ダミーRNA等が除去されたあとの二本鎖DNAは、エタノール沈殿によって沈殿物として回収した。
19)上記沈殿物に、3μLの10×Ligase Buffer、3μLの10mM rATP、および1μL(100ng〜300ng)のpAP3neoベクター(NotIおよびBglIIにて切断済み)を加え、その後、水を加えて全量を30μLとした。
20)上記溶液に1μL(4ユニット)のT4 DNA Ligaseを加えた後、12℃にて一晩反応させた。
20)上記溶液を、70℃にて30分間加熱した。
21)加熱後、上記溶液に70μLのTE、および100μLのフェノール/クロロホルム溶液を加えて攪拌後、1分間の遠心分離(15000rpm)を行った。遠心分離後、100μLの上清を回収した。フィルター(ミリポア社製のUFCP3TK50)を用いて、上記上清を無菌化した。
22)上記無菌化した溶液(5μL)を、エレクトロポレーション法にて大腸菌(GIBCO-BRL社製のElectroMAX DH12S Cells)に導入した。なお、エレクトロポレーション法は、2.5kv、129オームの条件下にて行った。電圧を加えた後の大腸菌を、SOC培地中にて、37℃で1時間培養した。
23)上記大腸菌を100mLのLB培地(アンピシリンを50mg/Lの濃度にて含む)に移した。10μLまたは100μLの大腸菌含有LB培地を、それぞれアンピシリンを含有するLB培地(固体培地)上にまき、37℃にて一夜培養して、大腸菌の形質転換効率を算出した。また、残りの大腸菌含有LB培地は、OD600=1.0に達するまで37℃にて数時間、培養した。培養後、大腸菌含有LB培地にDMSOを加え、当該溶液を−80℃にて凍結保存した。
なお、ライブラリーの作製にあたっては、通常のcDNAライブラリー作製プロトコール(例えば、「バイオマニュアルシリーズ2 遺伝子ライブラリーの作成法」(野島博・編)羊土社、1994、または「基礎生化学実験法」(大島泰郎・編)第4巻、核酸・遺伝子実験II、東京化学同人、2000参照)を参考にして作製することも可能である。なお、結果については後述する〔結果3〕にて説明する。
〔結果1〕
図6(a)および図6(b)に、ダミーRNAの最適量を検討した結果を示す。なお、本実施例では、ダミーRNAの効果を検討するにあたって、GAPDHのcDNA化の効率を指標にしている。しかしながら、GAPDHは単なる指標の一例であって、ダミーDNAは、その他の遺伝子のcDNA化についてもGAPDHと同様の効果を有することは当業者であれば容易に理解するであろう。
図6(a)および図6(b)に示すように、約1ngのライブラリー化したい微量mRNA(およそ100個の細胞由来)に、ダミーRNAを0.5、1.0、2.5、5.0または10.0μg加えた場合は、いずれも、ダミーRNAを加えなかった場合と比較して、cDNAが効率よく合成されていることが確認できた。
また、図6(a)および図6(b)に示すように、微量mRNAにダミーRNAを1μg加えた場合が、最も効率よくcDNAを合成することができた。
〔結果2〕
図7(a)、図7(b)および図7(c)に、増幅可能な微量mRNAの量を検討した電気泳動図を示す。
図7(a)および図7(b)に示すように、微量mRNA(293T細胞由来)の量が約0.1ngの場合であっても、微量mRNAの量が約0.01ngであっても、ともにcDNAが効率よく合成されていることが確認できた。
また、図7(c)に示すように、Hela細胞由来の微量mRNA(0.01ng)であっても、cDNAが効率よく合成されていることが確認できた。
〔結果3〕
図8に、cDNAライブラリーのインサートの長さの分布を示す。なお、上記実施例においては、6.6×10cfuのコロニーを得た。当該コロニーについて、インサート挿入率を検討したところ38.3%(23クローン/60クローン)であった。また、23クローンのうち、ヒトの遺伝子が挿入されているものは15クローンであり、当該15クローンのうち、2クローンのみが、同じ遺伝子(表1のサンプル3)を挿入していた。
図8に示すように、本願発明の方法にて作製したcDNAライブラリーには、長いインサートが挿入されていることが確認できた。なお、上記インサートの平均長は、0.75kbであった。
また、cDNAライブラリーのインサートの配列を読んだ結果を表1に示す。
さらに、本願発明の方法にて作製されたcDNAライブラリーの品質と、100万個の293T細胞から抽出したmRNAを用いて従来の方法(Kobori M et al.,Genes Cells,1998;3:459-475)にて作製したcDNAライブラリーの品質とを比較した。
具体的には、任意に選択した28遺伝子について、当該遺伝子が上記ライブラリーに含まれているか否かについてPCT法を用いて検討した。
表2に、本願発明の方法にて作製されたcDNAライブラリー、および従来の方法にて作製されたcDNAライブラリーの両方に含まれていた遺伝子を示す。
表2に示すように、28遺伝子中の25遺伝子は、両方のライブラリーに含まれていた。
また表3に、従来の方法にて作製したcDNAライブラリーにのみ存在した遺伝子を示す。
表1〜表3からも明らかなように、本願発明の方法にて作製したcDNAライブラリーには、多様性に富んだインサートが挿入されていることが確認できた。また、本願発明の方法にて作製したcDNAライブラリーには、細胞内の発現量が低い遺伝子も挿入されていることが確認できた。
つまり、本願発明の方法によって作製されたライブラリーは、多量のmRNAを用いて作製されたライブラリーと比較しても遜色のない複雑度、挿入効率および平均鎖長を有するものであった。
〔結果4〕
ダミーRNAによって増幅されたcDNAプールのサイズの偏り、およびmRNA増幅効率の上昇効果について、微量RNAの正確な分析が可能なアジレント(Agilent)社製のバイオアナライザー(Bioanalyzer2100)を用いて評価した。
具体的には、ダミーRNAを用いて1回目のmRNAの増幅を行い、その後、GAPDHの増幅をPCR法によって確認した。そして、増幅されたmRNAとダミーRNAとを用いて、2回目のmRNAの増幅を行い、その後、ダミーRNAのmRNA増幅効果を調べた。
まず上述したプロトコールにしたがって増幅用二本鎖DNAを作製した後、蛍光色素(Cy5)を用いてラベル化cRNAの増幅を行った。その後、実験結果をエレクトロフェログラム(重ね合わせ)を用いて表示させた。
その結果、図9(a)に示すように、ダミーRNAを用いて増幅を行ったcRNAは、ダミーRNAを加えない増幅に比べて6倍以上の増幅の上昇が観察された。念のため、別の蛍光色素(Cy3)を用いて同様の実験を行った場合でもダミーRNAを用いた場合(青線)において30倍以上の増幅効果が認められた(図9(b)参照)。
緑線はRNAラダーのピークを示しており、ダミーRNAを加えた2本の青線はダミーRNAを加えないものに比べ、4kb以上にわたり効率よく転写増幅されていることがわかる。この結果はダミーRNAを添加することで少数のmRNAに対する逆転写酵素によるcDNA化とT7 RNAポリメラーゼによる転写増幅における酵素反応が、偏ることなく幅広いmRNAに対して満遍なく行われていることが示された。この点は、増幅の偏りが避けられないPCR法に比べてダミーRNAを用いる技術が優れていることを示唆する。
〔結果5〕
ダミーRNAを用いて作製したナノcDNAライブラリーのmRNAの種類について、増幅が偏った遺伝子を含まないかを調べるため、アジレント(Agilent)社のcDNAマイクロアレイ(2色法、Dyeswap法)を用いて検証した。
具体的には、10個のHeLa細胞相当の極微量RNAからダミーRNAを用いて増幅したナノcDNAライブラリー(+dRNA)と、100万個程度のHeLa細胞由来の大量のmRNAを用いて従来の方法にしたがって作製したcDNAライブラリー(−dRNA)とを比較した。
まず、両方のcDNAライブラリー由来のプラスミドDNAを用いてT7 RNAポリメラーゼによってmRNAを転写させ、その後RNaseフリーのDNaseを用いて上記mRNAを処理した。
上記mRNAを試料とし、上述したプロトコールにしたがって増幅用二本鎖DNAを作製した後、蛍光色素(Cy5)を用いてラベル化cRNAの増幅を行った。これらそれぞれのRNA濃度を測定したところナノcDNAライブラリーが0.60mg/ml、通常のナノcDNAライブラリーが0.53mg/mlであった。またそれらのサイズ分布をバイオアナライザー(Bioanalyzer2100)を用いて評価したところ、Cy5標識(図10(a)参照)においても、Cy3標識(図10(b)参照)においても、ともに同程度の取り込み率とサイズ分布を示した。
次に、これらの標識RNAをプローブとして、44,000個のcDNAが搭載されているcDNAマイクロアレイ(Agilent社製の「agilent Hu44K」)を用いて蛍光色素交換実験(DyeSwap)を行った。なお、当該蛍光色素交換実験の実験結果は、(−dRNA/Cy3 vs +dRNA/Cy5)/(+dRNA/Cy3 vs −dRNA/Cy3)にて求めた。具体的には、1枚のアレイ上に、Cy3およびCy5によって各々標識された2種類のサンプルを競合的にハイブリダイズさせて実験結果を求めた。
図13に、蛍光色素交換実験の結果を示す。なお、図13では、同じ蛍光強度を有する遺伝子群は中央領域の黒色にて示し、ダミーRNA(dRNA)を加えた場合にハイブリダイズ強度が増す遺伝子群は、上側の濃い灰色にて示し、ダミーRNAを加えることによってハイブリダイズ強度が減少する遺伝子群は、下側の薄い灰色にて示した。
各々のプローブがハイブリダイズしたcDNAの強度分布を比較したところ、両者はわずかに数個の遺伝子が異なる以外は、パターンが概ね一致した。このことは両方のcDNAライブラリーの品質がほとんど同じcDNA分子種を持つことを示唆する。すなわち、ダミーRNAを用いて、10個のHeLa細胞相当の極微量のRNAを出発点として作製したナノcDNAライブラリーが、高品質であることが明らかになった。
〔結果6〕
上述した例は、細胞から精製したmRNA、つまり様々な種類のmRNAを含むmRNA混合物を増幅した場合について検討したものである。そこで、本願発明の方法が、一種類のmRNAをも効率よく増幅することができるか否かについて検討した。
一種類のmRNAとしては、ヒトGAPDHのmRNAを用いた。ヒトGAPDHのmRNAは、下記のGAPDH SプライマーおよびGAPDH ASプライマーを用いたPCR法によって、HeLa cDNAライブラリーからクローニングした。
GAPDH S :5’-ACAGTCAGCCGCATCTTCTT-3’(配列番号14)
GAPDH AS :5’-TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGTTGAGCACAGGGTACTTTATTG-3’(配列番号15)
ヒトGAPDHの相当するDNA断片(約1300bp)を抽出した後、当該DNA断片をTA−クローニング法によってpT7Blueベクター(invitrogen Corp., Carlsbad, CA, USA)に挿入した。
得られたベクターをBamHI処理によって直鎖状にした後、精製した。精製後、MEGAscript(Ambion社製)を用いてRNAを転写した(37℃にて4時間)。その後、TURBO DNA-free(Ambion社製)を加え、37℃にて1時間のDNase処理を行った。その後、転写されたRNAを精製した。
上記ヒトGAPDHのmRNAを用いて、上述した〔3:二本鎖DNAの作製〕〜〔6:増幅用二本鎖DNAの作製〕にしたがって増幅用二本鎖DNAを作製した。なお、本実施例に用いたヒトGAPDHのmRNAの量は、4.9、0.49、0.049または0.0049fgであった。また、本実施例に使用したダミーRNAは、配列番号6に示すダミーRNAであった。
図11に示すように、本実施例の方法であれば、0.49fg/mLという微量濃度のmRNAをも増幅することができた。なお、図11では、PCR法を用いてヒトGAPDHのmRNAの増幅を確認しており、このときPCR法の増幅回数は40回であった。
〔結果7〕
異なる配列を有するダミーRNAも同様のmRNA増幅効果を有するか否か検討した。
上述した〔3:二本鎖DNAの作製〕〜〔6:増幅用二本鎖DNAの作製〕にしたがって、1μgの配列番号16に示すダミーRNAを用いて、10個の293T細胞から精製したmRNA(約0.1ng)を増幅した。以下に、ダミーRNAの塩基配列を示す。なお、図12中、ダミーRNAは、「NotI-dRNA」にて示す。
ダミーRNA:5’-AATCTGTCGCGGCCGCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA-3’(配列番号16)
図12に示すように、本実施例の方法であれば、異なる配列を有するダミーRNAを用いた場合であっても、mRNAをも増幅することができた。なお、図12では、PCR法を用いてヒトGAPDHのmRNAの増幅を確認しており、このときPCR法の増幅回数は40回であった。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
産業上の利用の可能性
本発明の微量mRNAの増幅方法は、微量mRNAを含む溶液にダミーRNAを添加して混合溶液を作製する第1工程と、混合溶液を鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成する第2工程と、合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成する第3工程と、形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結して増幅用二本鎖DNAを作製する第4工程と、RNAポリメラーゼによって、増幅用二本鎖DNAからRNAを増幅する第5工程と、を含むものである。
上記の方法によれば、二本鎖DNAを増幅させるためにPCRを用いていないため、増幅する微量mRNAの塩基配列の長さに影響を受けることなく、短いmRNAも長いmRNAも同じように効率よく増幅することができるという効果を奏する。それゆえ、cDNAライブラリー、プローブの作製や、段階的サブトラクションの実施等に利用することができる。
以上のように、本発明では、微量mRNAをダミーRNAと共に増幅させるため、微量mRNAを効率よく増幅させることができ、かつ増幅されるmRNAに偏りがない。そのため、本発明は、RT−PCR、cDNAマイクロアレイ、cDNAライブラリーの作製、mRNAの増幅(例えば、SPIAなど)、mRNAを用いた標識プローブの作製、および段階的サブトラクションに利用することができるのみならず、微量mRNAの増幅工程を必要とする分野に広く応用することができる。
また、現在の研究の流れは1細胞から数細胞を対象としたナノレベルの解析に進んでおり、極少量のmRNAからcDNAを効率よく合成できれば、それだけ詳細なデータを得ることができる。したがって、本発明は、少数の細胞しか採取できないために遺伝子レベルの解析が遅れていた幹細胞の研究や、患者の患部組織を用いた病因解析に利用することができる。また、本発明と多段差引法とを組み合わせることによって、1個の細胞で特異的に発現している遺伝子の包括的な単離が可能となる。

Claims (11)

  1. 微量mRNAを含む溶液にダミーRNAを添加して混合溶液を作製する第1工程と、
    混合溶液を鋳型として用いた逆転写反応によって、アンチセンスDNAを合成する第2工程と、
    合成されたアンチセンスDNAに対して相補的なセンスDNAを合成して、センスDNAとアンチセンスDNAとからなる二本鎖DNAを形成する第3工程と、
    形成された二本鎖DNAのセンスDNAの5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を連結して増幅用二本鎖DNAを作製する第4工程と、
    RNAポリメラーゼによって、増幅用二本鎖DNAからRNAを増幅する第5工程と、を含み、
    前記ダミーRNAの配列が、ポリA配列を含み、
    前記第2工程では、プライマーとしてオリゴdTプライマーを用いることを特徴とする微量mRNAの増幅方法。
  2. 前記第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端側にプロモーター配列を連結したあと、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結されたプロモーター配列のみを切断する第6工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の微量mRNAの増幅方法。
  3. 前記第4工程は、第3工程にて形成された二本鎖DNAの両末端にプロモーター配列を連結したとき、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に連結されたプロモーター配列のみを切断できるように、二本鎖DNAのセンスDNAの3’末端側に制限酵素サイトが形成されることを特徴とする請求項2に記載の微量mRNAの増幅方法。
  4. 前記第4工程は、切断されたプロモーター配列およびダミーRNAを除去する第7工程を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の微量mRNAの増幅方法。
  5. 前記ダミーRNAの配列が、配列番号4、配列番号6または配列番号16によって示される塩基配列であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法。
  6. 前記ダミーRNAは、ビオチン化されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法。
  7. 前記RNAポリメラーゼが、T7ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼまたはSP6ポリメラーゼであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法。
  8. 前記混合溶液中の前記ダミーRNAの濃度が0.5〜10μg/μLであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴とするcDNAライブラリーの作製方法。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴とするプローブの作製方法。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の微量mRNAの増幅方法を一工程として含むことを特徴とする段階的サブトラクション法。
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