JP5077999B2 - 水素貯蔵方法および装置 - Google Patents
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Description
従来、水素吸蔵材料としては、水素吸蔵合金や、炭素材料が提案されている。しかし、水素吸蔵合金では単位重量当りの吸蔵量が小さい、希少金属を含む合金では原料の確保が困難である等の問題があり、資源の豊富な炭素材料そのものに水素を吸蔵させようという試みがある。
カーボンナノチューブを用いる方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法があるが、カーボンナノチューブは生産性が低いために高価であるという問題がある。
活性炭の水素吸蔵メカニズムは、活性炭のミクロ孔への水素を吸着させるものであり、そのために大きな比表面積を必要とする。こうした原理のために吸蔵量そのものに制約があるうえ、水素吸蔵量は十分でなく、さらに大きな比表面積を得るために賦活処理等の工程が必要など、複雑な製造工程を必要とする(特許文献2など)。
(1)アズルミン酸を炭化して得られる窒素含有炭素材料を水素吸蔵材料に用いることを特徴とする水素貯蔵方法、
(2)前記窒素含有炭素材料が、炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)が0.03以上であり、かつ、赤外線吸収スペクトル図において、波数2200〜2280cm−1における吸光度のピークS2の強度Q2と、1550〜1640cm−1における吸光度のピークS1の強度Q1の比(Q2/Q1)が、0.07以下であることを特徴とする(1)に記載の水素貯蔵方法、
(3)(1)または(2)に記載の方法を用いる水素貯蔵装置、
に関する。
また本発明で用いる窒素含有炭素材料は、アクリロニトリル等の基礎化学原料の製造工程において、副生物として製造されている青酸を用い、それを重合して得られるアズルミン酸を原料とし、それを炭化して製造することができるため、生産性が高く省資源、省エネルギーで製造可能な窒素含有炭素材料である。従って、省資源、省エネルギーな水素貯蔵方法、および水素貯蔵装置を提供することができる。
本発明で用いる窒素含有炭素材料を説明する。
アズルミン酸とは、主として青酸を重合して得られる重合物の総称である。
次に、主として青酸を重合して得られるアズルミン酸を炭化して窒素含有炭素材料を製造する方法について説明する。
図1は本発明に用いる窒素含有炭素材料を製造するための工程の例を示す。図1に示すように、本発明に係る製造方法は、工程S10にて青酸を含む原料を重合する工程と、工程S10にて得られたアズルミン酸を炭化する工程(工程S12)とから構成される。以下では各工程を詳述する。
もちろん青化ソーダ等を用いる実験室的な製造方法であってもかまわないが、上記の工業的に製造される青酸を用いるのが好ましい。
またアズルミン酸は、プロピレン等のアンモ酸化工程で副生する青酸の精製工程から回収することによっても製造することができる。
実際には、これらの構造式をベースにして、重合体構造中の、六員環中窒素元素の一部が炭素元素に置換されていたり、逆に一部の六員環中炭素元素の一部が窒素元素に置換されていたり、また上記構造式中には官能基が記載されている。しかし、これらアミノ基、イミノ基、ニトリル基、水酸基、カルボニル基は、お互いに相互置換されていたり、外れていたり、またカルボン酸基、ニトロ基、ニトロソ基、N−オキシド基、アルキル基等、公知の官能基に変換されていると思われる。
またリニアな構造、ラダー構造、ラダー間で縮合した構造に加えて、これらの構造同士で縮合したり、結合を起こした構造があることも推定される。
本発明に係る窒素含有炭素材料における炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)は、0.03〜1.0であり、好ましくは0.05〜0.7、より好ましくは0.08〜0.4であり、特に好ましくは0.15〜0.3である。
(H/C)が大きいと共役系が十分に発達していないために好ましくなく、(H/C)が小さいと、(N/C)が小さくなりがちであるために好ましくない。
(N/C)>0.87×(H/C)−0.06 (I)
(I)式を満たさない窒素含有炭素材料は、(H/C)が大きいか、または(N/C)が小さいということであり、共役系が十分に発達していないか窒素含有量が少ないということであり好ましくない。
(N/C)>0.91×(H/C)−0.045 (II)
特に好ましくは
(N/C)>1.0×(H/C)―0.040 (III)
である。
(N/C)<1.2×(H/C)+0.15 (IV)
(IV)式を満たさない窒素含有炭素材料は、アズルミン酸の製造工程やアズルミン酸の炭化処理工程において多大の設備や資源、エネルギーを消費するために好ましくない。
より好ましくは、
(N/C)<1.2×(H/C)+0.08 (V)
特に好ましくは、
(N/C)<1.2×(H/C)+0.01 (VI)
である。
本発明に係る窒素含有炭素材料は、炭素原子、窒素原子、水素原子以外の元素を含んでよい。その他の元素の含有量は、本発明に係る窒素含有炭素材料100重量%に対して15重量%以下が好ましく、より好ましくは7重量%以下であり、特に好ましくは3重量%以下である。
塩素、臭素等のハロゲン元素の存在は材質の腐食等のため好ましくない。ハロゲン元素の含有率は10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、さらによりに好ましくは1重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下である。
また窒素含有炭素材料は、赤外線吸収スペクトル図において、波数2800〜3000cm−1における吸光度のピークS3の強度Q3と、1550〜1640cm−1における吸光度のピークS1の強度Q1の比(Q3/Q1)が、0.10以下であることが好ましい。より好ましくは0.05以下であり、特に好ましくは0.02以下である。波数2800〜3000cm−1における吸光度のピークは、C−H基由来のピークであり、少ないことが好ましい。
ピークS1の強度Q1は、以下のように定義される。A1を1000〜1200cm−1の最小の吸光度を示す点とし、A2を1700〜1900cm−1の間の最小の吸光度を示す点とする。ベースラインA1A2は、A1、A2を結んだ直線である。
次に、E1はピークS1から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインA1A2の交点である。ピークS1の強度Q1は、前記S1から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインの交点E1までの線分S1E1の長さである。
A3を2100〜2200cm−1の最小の吸光度を示す点とし、A4を2280〜2400cm−1の間の最小の吸光度を示す点とする。ベースラインA3A4は、A3、A4を結んだ直線である。
次に、E2はピークS2から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインA3A4の交点である。ピークS2の強度Q2は、前記S2から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインの交点E2までの線分S2E2の長さである。
次に、E3はピークS3から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインA5A6の交点である。ピークS3の強度Q3は、前記S3から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインの交点E3までの線分S3E3の長さである。
次に、E4はピークS4から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインA7A8の交点である。ピークS4の強度Q4は、前記S4から赤外線吸収スペクトルの波数軸に下ろした垂線とベースラインの交点E4までの線分S4E4の長さである。
本発明に係る窒素含有炭素材料のレーザーラマンスペクトル図において、ピークP1の半値幅としては、200〜400cm−1が好ましく、250〜350cm−1がより好ましく、特に好ましくは270〜320cm−1である。
前述のP1、P2は、レーザーラマンスペクトル図におけるラマンシフトが1340〜1620cm−1の間の主要な2つのピークである。P1は1355〜1385cm−1の間のピークであり、P2は1550〜1620cm−1の間のピークである。
本発明では、ピーク強度は、Arレーザー(波長540nm、2mW)を用い、ビームサイズ5μ、操作範囲1000〜2000cmー1、積算時間5分で測定したときに得られるレーザーラマンスペクトル図から測定される。
図2に示すように、B1は、1000〜1300cm−1の最小の強度値であり、B2は1700〜2000cm−1の間の最小の強度値である。本発明で用いるレーザーラマンスペクトル図におけるベースラインは、B1、B2を結んだ直線である。
次に、図2に示すC1、C2は、それぞれ、ピークP1およびP2からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点である。
Dは、ピークP1およびP2との間における最小の強度値Mからラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点であり、高さLは、前記Mからラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。具体的には、図2に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分MDの長さである。
一方、高さH1は、P1からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図2に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分P1C1の長さが高さH1に相当する。高さH2は、P2からラマンシフト軸に下ろした垂線とベースラインの交点までの長さである。図2に例示するレーザーラマンスペクトル図では線分P2C2の長さが高さH2に相当する。
本発明で用いる水素吸蔵材料を耐圧容器内に充填して水素貯蔵装置が得られる。
水素を吸蔵させる際には、水素を圧入すればよい。水素を放出させる際には圧力を下げればよい。圧力はボンベの耐圧に応じて決めればよいので上限はないが、通常の耐圧ボンベでは15MPa、超高圧ボンベでは150MPa程度まで圧力を上げることができる。水素を吸蔵する際に温度を下げてもよい。また水素を放出する際には加熱してもよいが、実用化を考えると、水素の吸蔵も放出も外気温程度での動作が好ましい。
(CHN分析)
ジェイサイエンスラボ社製MICRO CORDER JM10を用い、2500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行った。試料炉は950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)は850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーン、酸化銅のゾーンからなる)は550℃に設定されている。酸素は15ml/min、Heは150ml/minに設定されている。検出器はTCDである。アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行う。
Varian社製FTS575C/UMA500を用い、透過法、MCT検出、分解能4cm−1の条件で測定した。試料はKBrを用いてスペクトルが測定しやすい濃度まで希釈し(約100倍)、プレス圧200kg/cm2で錠剤成型して試料調製した。
ラマンスペクトルは、試料をメノウ乳鉢で粉砕し、粉末用セルにマウントして下記の条件で測定した。
装置:Reninshaw社製System―3000、光源:Arレーザー(波長
540nm、2mW)、ビームサイズ5μ、操作範囲1000〜2000cm−1、積算時間5分。
X線回折パターンは、試料をメノウ乳鉢で粉砕後、粉末用セルに充填して下記の条件で測定した。
装置:リガク社製Rint2500、
X線源:Cu管球(Cu−Kα線)
管電圧:40kV
管電流:200mA
分光結晶:あり
散乱スリット:1°
発散スリット:1°
受光スリット:0.15mm
スキャン速度:2°/分
サンプリング幅:0.02°
スキャン法:2θ/θ法。
X線回折角(2θ)の補正は、シリコン粉末について得られたX線回折角データを用いて行った。
<アズルミン酸の製造>
水350gに青酸150gを溶解させた水溶液を調製し、攪拌を行いながら、25%アンモニア水溶液120gを10分かけて添加し、得られた混合水溶液を35℃に加熱した。重合が始まり黒褐色の重合物が析出し始め、温度は徐々に上昇し45℃となった。2時間後から30質量%青酸水溶液を200g/hの速度で添加し、4時間添加した。添加中は反応温度50℃保つようにコントロールした。添加終了後、冷却を停止したところ温度は90℃に上昇し、この温度で約1時間とどまったのち、温度は徐々に降下した。その後そのまま100時間反応を行った。得られた黒色沈殿物をろ過によって分離した。このときの収率は97%であった。水洗した後、120℃の乾燥器にて5時間乾燥させてアズルミン酸を得た。
上記製造例で得られたアズルミン酸12gを内径25mmの石英管に充填し、大気圧下、300Ncc/ min.の窒素気流中で50分かけて800℃まで昇温させ、800℃で1時間ホールドして炭化処理をして、4.4gの窒素含有炭素材料を得た。回収率は37%である。用いた窒素ガスの酸素濃度は、微量酸素分析計(306WA型、テレダインアナリティカルインスツルメント社製)を用いて測定した結果、1ppmであった。
(CHN分析結果)
得られた窒素含有炭素材料は、炭素元素:68.6重量%、窒素元素:24.0重量%、水素元素:1.8重量%であった。炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)は0.30である。炭素原子に対する水素原子の原子数比(H/C)は0.31である。
(IRスペクトルの測定結果)
得られた窒素含有炭素材料は、波数1500〜1800cm−1における吸光度のピーク強度の最大値を与える波数が1612cm−1にあり、Q2ピーク、Q3ピークは観測されず、(Q2/Q1)は0.01以下、(Q3/Q1)が、0.01以下であった。(Q4/Q1)は0.50であった。
(レーザーラマンスペクトルの測定結果)
得られた窒素含有炭素材料は、1000〜2000cm−1の間で、1355cm−1付近、1570cm−1付近にピークを有し、(L/H1)は0.85であった。
ガウス関数でピークフィッティングさせた結果、1355cm−1のピークの半値幅は302cm−1であり、1570cm−1のピークの半値幅は137cm−1であった。
(X線回折の測定結果)
得られた窒素含有炭素材料は、5〜50°の間で、25.0°付近に主要なピーク、44.7°付近にもピークを有していた。
水素吸蔵、放出量の測定は、水素量は、JISH7201水素吸蔵合金のPCT特性の測定方法、に準じて以下のように測定した。
得られた窒素含有炭素材料0.5gを用い、300℃で3時間の真空脱気を行い、30℃に戻した後、30℃条件下で測定を行った。平衡圧力を、0MPaから11.5MPaまで変化させて、水素吸蔵量を測定し、0.1MPa以下まで下げて、水素放出量を測定した。
結果を図3に示す。図2の下の曲線が0MPaから11.5MPaまで変化させて水素を吸蔵させたときで、上の曲線が11.5MPaから0.1MPaまで変化させて水素を放出させたときである。水素を吸蔵させたときと放出させたときの曲線が非常に近く、本発明の水素貯蔵方法は、可逆性に優れた水素貯蔵方法であることがわかる。
一方、特許文献2に記載の窒素含有炭素材料(特許文献2の図5、図7参照)は2260cm−1にニトリル基に帰属される強いピークを有し、Q2/Q1は、それぞれ0.31、0.11である。また特許文献2の図9、図11に見られるように水素の吸蔵と放出の可逆性に劣り、水素は吸蔵するものの水素放出量は非常に少ない。
Claims (3)
- アズルミン酸を炭化して得られる窒素含有炭素材料を水素吸蔵材料として用いることを特徴とする水素貯蔵方法。
- 前記窒素含有炭素材料が、炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)が0.03以上であり、かつ、赤外線吸収スペクトル図において、波数2200〜2280cm−1における吸光度のピークS2の強度Q2と、1550〜1640cm−1における吸光度のピークS1の強度Q1の比(Q2/Q1)が、0.07以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵方法。
- 請求項1または2に記載の方法を用いる水素貯蔵装置。
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