JP5077517B2 - 貴金属の回収方法および回収貴金属 - Google Patents

Description

本発明は金、白金、パラジウム等の貴金属を含有する廃棄物等から経済的に効率よく貴金属を回収する方法に関する。

自動車の排ガス浄化用触媒として、耐熱性担体にアルミナ質担持層を形成し、その担持層にＰｔ，Ｐｄ，Ｒｈなどの貴金属を担持させたものが広く知られており、電子基板やリードフレーム等の電子機器部品には導電材料として貴金属が広く使用されている。また、石油化学系触媒として金、白金、パラジウム等の貴金属が広く使用されている。

従来、これらの使用済み触媒（触媒廃棄物と云う）から貴金属を回収しており、湿式回収方法および乾式回収方法が知られている。湿式回収方法としては触媒廃棄物を酸に溶解して貴金属を浸出させる方法が知られている（特許文献１）。乾式回収方法としては、白金族金属を含む触媒廃棄物を、銅または酸化銅、フラックス、還元剤と共に加熱して溶融金属銅中に白金族金属を吸収させ、次いで溶融金属銅を部分的に酸化して酸化銅層を形成することによって、白金族金属を金属銅中に濃縮させ、酸化銅を分離して、白金族金属を含有する金属銅を回収する方法が知られている（特許文献２，３，４）。また、金属銅に代えて、触媒廃棄物を鉄または鉛と共に加熱して貴金属を鉄鉛に吸収させる方法も知られている。

従来の湿式回収方法は、酸浸出における貴金属の抽出率が低く、しかも浸出残渣の後処理が面倒である。一方、従来の乾式回収方法において、貴金属の回収手段として金属銅を吸収材として用いているものは、ルテニウムＲｕ等の白金族の一部が銅に対する溶解度が１０％程度と低いため、十分に回収することが難しい。貴金属の吸収材として溶融鉄を用いるものは貴金属の溶解度が低く、また溶融温度が高いと云う問題がある。一方、貴金属の吸収材として溶融鉛を用いるものは、白金族金属の分離回収に必要な高温処理（１２００℃以上）において鉛が激しく揮発し、しかも鉛は環境有害金属であるので取扱いに注意を要し、防塵設備などの大規模な付属設備を必要とするので工業化に適さないと云う問題がある。
特開平０２−１３８４２４号公報 特開平０４−３１７４２３号公報 特開平０４−３１８１２８号公報 特開平０７−２１６４６７号公報

本発明は、従来の乾式回収方法における上記問題を解決したものであり、金属銅や金属鉛などに代えて、金属スズを吸収材として用い、貴金属を溶融金属スズに吸収させることによって経済的に効率よく回収する方法を提供する。なお、本発明の方法において、金、銀および白金族金属を含めて貴金属と云う。

本発明は、以下の構成によって上記課題を解決した貴金属の回収方法に関する。
〔１〕少なくともルテニウムを含有する貴金属含有物について、貴金属吸収材としてスズ含有物を用い、上記貴金属含有物を上記スズ含有物、還元剤、およびフラックスと共に加熱溶融して、金属スズ溶融層を生成させると共に貴金属を溶出させて該貴金属を上記金属スズ溶融層に吸収させ、次いで、生成した酸化物層を分離して貴金属を含有する金属スズを回収することを特徴とする貴金属の回収方法。
〔２〕貴金属含有物が貴金属を含有する触媒廃棄物、電子機器材料廃棄物である上記[１]に記載する貴金属の回収方法。
〔３〕スズ含有物が金属スズ、スズ合金、酸化スズ、またはこれら以外のスズ化合物である上記[１]または上記[２]に記載する貴金属の回収方法。
〔４〕上記[１]〜上記[３]の何れかに記載した方法によって回収した貴金属含有金属スズから貴金属を分離する貴金属の回収方法。

本発明の回収方法は、金属スズを貴金属吸収材として用いる方法であり、金、白金、パラジウム、ルテニウム等の貴金属は何れも金属スズに対して十分な溶解性を有するので、触媒廃棄物をスズ含有物と共に還元剤やフラックスを加えて加熱溶融することにより、溶融した貴金属を十分に金属スズに吸収させて効率よく回収することができる。具体的には、例えば、ルテニウムは銅に対しては１０％程度しか溶解しないが、スズには２０％程度まで溶解するので、ルテニウムを効率よく回収することができる。

本発明の回収方法は、触媒廃棄物や電子機器材料廃棄物など貴金属を含有する材料について広く適用することができる。また、金属スズに限らず、還元剤と共に酸化スズやスズ合金あるはその他のスズ化合物を吸収材として用いることができるので、容易に実施することができ、しかも金属スズや酸化スズ、スズ合金などのスクラップを利用することができるので、経済性に優れる。

以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の回収方法は、少なくともルテニウムを含有する貴金属含有物について、貴金属吸収材としてスズ含有物を用い、上記貴金属含有物を上記スズ含有物、還元剤、およびフラックスと共に加熱溶融して、金属スズ溶融層を生成させると共に貴金属を溶出させて該貴金属を上記金属スズ溶融層に吸収させ、次いで、生成した酸化物層を分離して貴金属を含有する金属スズを回収することを特徴とする貴金属の回収方法である。

少なくともルテニウムを含有する貴金属含有物としては、ルテニウムなどの貴金属を含有する触媒廃棄物、電子機器材料廃棄物などを用いることができる。貴金属を含有する触媒廃棄物には自動車の排ガス浄化用触媒や石油化学触媒がある。例えば、一般に自動車排ガス浄化用触媒には概ねＰｔが１０００ppm、Ｐｄが６００〜７００ppm、Ｒｈが１００〜２００ppm含まれており、石油化学触媒には概ねＰｔが４０００ppm、Ｒｕが２００００ppm含まれている。また、電極やペーストなどの廃棄物にはＰｔ，Ｒｕ，Ｉｒ等が数１０００ppm含まれている。本発明の回収方法は、これらの各種の貴金属含有物に対して広く適用することができる。

スズ含有物としては、金属スズ、スズ合金、酸化スズ、またはこれら以外のスズ化合物を用いることができる。還元剤と共にスズ合金、酸化スズ、またはこれら以外のスズ化合物を加熱溶融すれば、スズ成分が還元されて金属スズの融体が形成されるので、金属スズに限らずにスズ合金、酸化スズなどを用いることができる。

貴金属含有物をスズ含有物と共に還元剤を加えて溶融炉に入れ加熱溶融し、好ましくは還元剤と共にフラックスを加えて加熱溶融する。貴金属含有物とスズ含有物の量は溶融した貴金属が溶融金属スズに十分に吸収される量であればよい。また、還元剤としてはコークスなどの炭素材料を用いればよい。フラックスとしては珪砂、炭酸カルシウム、酸化鉄などを用いればよい。加熱温度は貴金属含有物およびスズ含有物が溶融する温度である。

加熱処理によって金属スズ溶融層が生成し、さらに触媒廃棄物等の貴金属含有物を還元剤と共に加熱溶融することによって、触媒廃棄物等に含有されている貴金属が還元されて溶出し、生成した溶融金属スズに吸収される。一方、酸化スズやその他の酸化物（スラグ層）は金属融体より比重が小さく、溶融金属スズ層の上に生成する。溶出した貴金属はスラグ層には殆ど移行せず、下層の溶融金属スズ層に移行して吸収されるので、溶融炉を傾けて上側のスラグ層を流し出し、あるいは溶融炉を設置したままスラグ層を湯面から掻き出し、溶融金属スズ層から分離する。

溶融金属スズ層上側のスラグ層を分離除去した後に、溶融金属スズ層に空気を吹き込み、あるいは酸化剤を加えて酸化スズ層を形成し、この酸化スズ層を分離除去することによって、溶融金属スズ層の容量を減じ、溶融金属スズ層に含まれている貴金属の濃度を相対的に高めることができる。また、溶融金属スズの酸化処理を行うことによって、溶融金属スズに含まれている卑成分がスラグ化して除去される。除去したスラグ層は加熱溶融工程に戻して再利用することができる。スラグの再利用によって、不可避的にスラグに随伴した貴金属を溶融金属スズに吸収させて回収率を高めることができる。

スラグ層を分離除去した後に溶融金属スズ層を回収する。この溶融金属スズには触媒廃棄物等から溶出した貴金属が吸収されている。回収し冷却した貴金属含有金属スズは、金属スズ結晶の間に貴金属結晶が点在した組織、あるいは貴金属とスズが合金化した結晶から構成される組織を有している。この含有されている貴金属は電解精製または酸溶解などの方法によって金属スズから分離することができる。

〔実施例１〕
化学工業用触媒廃棄物１０００kgを、金属スズ１００kgと共に溶融炉に装入し、還元剤（コークス）５０kg、およびフラックス（珪砂９５５kg、炭酸カルシウム１３４０kg、酸化鉄５６５kg）を加え、１４００℃で、４時間加熱して装入物の全量を溶融した。次いで、生成したスラグ層を除去した後に、溶融金属層に空気を吹き込んで酸化スズのスラグ層を形成し、これを除去した後に、溶融金属層１２５kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

〔実施例２〕
金属スズに代えて酸化スズ１１４kgを用いた他は表１に示す条件に従い、実施例１と同様にして溶融金属層１２５kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

〔実施例３〕
金属スズに代えてスズ合金（スズ９０wt％、鉄１０wt％）１１２kgを用いた他は表１に示す条件に従い、実施例１と同様にして溶融金属層１３７kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

〔参考例〕
自動車排ガス浄化用触媒廃棄物に代えて電子機器材料廃棄物１０００kgを用いた他は表１に示す条件に従い、実施例１と同様にして溶融金属層１２５kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

〔比較例１〕
金属スズに代えて金属銅１００kgを用いた他は表１に示す条件に従い、実施例１と同様にして溶融金属層１１０kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

〔比較例２〕
金属スズに代えて金属鉛１００kgを用いた他は表１に示す条件に従い、実施例１と同様にして溶融金属層１２５kgを回収した。回収した金属層の成分を表１に示した。

表１に示すように、本発明の実施例１〜４では、回収した金属スズに含まれている白金族金属の濃度が高く、特にルテニウム(Ｒｕ)濃度は２０wt％と高く、効率良く白金族金属を回収することができる。
一方、比較例１の回収金属銅中のルテニウム(Ｒｕ)濃度は１０wt％であり、本発明の実施例に比較して大幅に低い。また、比較例２の回収金属鉛中の白金族金属濃度は２０％であるが鉛の揮発が激しく、煙道および電気集塵機がダストで閉塞した。

Claims (4)

1. 少なくともルテニウムを含有する貴金属含有物について、貴金属吸収材としてスズ含有物を用い、上記貴金属含有物を上記スズ含有物、還元剤、およびフラックスと共に加熱溶融して、金属スズ溶融層を生成させると共に貴金属を溶出させて該貴金属を上記金属スズ溶融層に吸収させ、次いで、生成した酸化物層を分離して貴金属を含有する金属スズを回収することを特徴とする貴金属の回収方法。
2. 貴金属含有物が貴金属を含有する触媒廃棄物、電子機器材料廃棄物である請求項１に記載する貴金属の回収方法。
3. スズ含有物が金属スズ、スズ合金、酸化スズ、またはこれら以外のスズ化合物である請求項１または請求項２に記載する貴金属の回収方法。
4. 請求項１〜請求項３の何れかに記載した方法によって回収した貴金属含有金属スズから貴金属を分離する貴金属の回収方法。