JP5076554B2 - 包接水和物を生成する性質を有する水溶液、包接水和物及びそのスラリー、包接水和物スラリーの製造方法並びに潜熱蓄熱剤 - Google Patents

包接水和物を生成する性質を有する水溶液、包接水和物及びそのスラリー、包接水和物スラリーの製造方法並びに潜熱蓄熱剤 Download PDF

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Description

本発明は、金属腐食性が低く、経済性に優れた包接水和物、より詳しくは、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物及びその包接水和物に関連する技術(例えば、その包接水和物を生成する水溶液、その包接水和物のスラリー及びその製造方法、その包接水和物を含む蓄熱剤)に関する。
なお、本発明において、次に掲げる用語は、別段の説明がなされる場合を除き、以下のとおり解釈されるものとする。
(1) 「包接水和物」には、準包接水和物が含まれる。
(2) 「包接水和物」は「水和物」と略称される場合がある。
(3) 「ゲスト化合物」は「ゲスト」と略称される場合がある。
(4) 「スラリー」とは、液体中に固体粒子が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいう。沈降しがちな固体粒子を浮遊状態とするために界面活性剤を添加したり、機械的に攪拌したりすることもあるが、液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、「スラリー」という。液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、その分散又は懸濁が不均一なものであっても、「スラリー」という。
(5) 包接水和物を生成する性質を有する水溶液を「原料水溶液」という場合がある。包接水和物のゲスト化合物とは別の微量物質が添加されていても、また、包接水和物が分散又は懸濁していても、包接水和物を生成する性質を有する水溶液である限り、「原料水溶液」に該当する。
(6) 「水和物生成温度」とは、原料水溶液を冷却したとき、包接水和物が生成するべき平衡温度をいう。原料水溶液のゲスト化合物の濃度などにより包接化合物が生成する温度が変動する場合であっても、これを「水和物生成温度」という。なお、簡便のため、「水和物生成温度」を「融点」という場合がある。
(7) 「第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物」は「第四級アンモニウム塩の水和物」と略称される場合がある。
(8) 「冷熱」とは、0℃よりも高温で、30℃よりも低温の範囲の温度を与える又は当該温度に対応する熱エネルギーをいう。「冷熱範囲」とは、0℃よりも高温で、30℃よりも低温の温度範囲をいう。
(9) 「蓄冷」とは、冷熱相当の温度範囲に水和物生成温度を有する包接水和物による熱エネルギーの蓄積をいう。
(10) 「蓄熱性」とは、熱エネルギーを蓄積することができる性質をいう。なお、潜熱相当の熱エネルギーを蓄積することができる性質を「潜熱蓄熱性」という場合がある。冷熱を蓄積する性質を「蓄冷性」という場合がある。
(11) 「蓄熱剤」とは、液体、固体、スラリー等の性状、形態等の如何を問わず、また熱エネルギーの貯蔵や輸送その他の使用の目的や態様、利用分野等の如何を問わず、蓄熱性を有する物質をいう。
蓄冷性を有する物質を「蓄冷剤」という場合がある。また、潜熱蓄熱性を有する物質を「潜熱蓄熱剤」という場合がある。
蓄熱性を有する包接水和物は、「蓄熱剤」、「潜熱蓄熱剤」及び「蓄冷剤」の各構成成分となり得る。
(12) 「蓄熱材」とは、液体、固体、スラリー等の性状、形態等の如何を問わず、また熱エネルギーの貯蔵や輸送その他の使用の目的や態様、利用分野等の如何を問わず、蓄熱性を有する部材をいう。
なお、蓄冷性を有する部材を「蓄冷材」という場合がある。潜熱蓄熱性を有する部材を「潜熱蓄熱材」という場合がある。
蓄熱剤、潜熱蓄熱剤及び蓄冷剤はいずれも、「蓄熱材」、「潜熱蓄熱材」及び「蓄冷材」の各構成要素となり得る。
(13) 「調和融点」とは、包接水和物のゲスト化合物の水溶液の液相から当該包接水和物が生成する際、その生成の前後において当該液相の組成が変わらない場合の温度をいう。
なお、包接水和物のゲスト化合物の水溶液における当該ゲスト化合物の濃度を横軸とし、その包接水和物の水和物生成温度を縦軸とする状態図では極大点が「調和融点」となる。
包接水和物は、包接水和物のゲスト化合物を含む水溶液を水和物生成温度以下まで冷却することにより生成し、かくして生成される包接水和物の結晶には潜熱相当の熱エネルギーが蓄積されることから、潜熱蓄熱剤又はその成分として使用される。
上記の包接水和物の一例として非気体をゲストとするもの、即ち非気体包接水和物が知られており(非特許文献1)、その非気体包接水和物の代表例として、第四級アンモニウム塩をゲストとするものが知られている(特許文献1)。
多くの第四級アンモニウム塩の水和物は、常圧で生成し、水和物を生成する際の潜熱が大きく比較的蓄熱量が大きく、またパラフィンのように可燃性ではないため取り扱いも容易である。
また、多くの第四級アンモニウム塩の水和物は、調和融点又は水和物生成温度が氷の融点(常圧下で0℃)よりも高いため、蓄熱剤を冷却して水和物を生成する際の冷媒の温度が高くてよく、冷媒を冷却する冷凍機の成績係数(COP)が高くなり省エネルギーが図れるという利点もある。
更に、第四級アンモニウム塩の水和物は水や水溶液に分散又は懸濁し易く、概して分散状態が均一で凝集性が低く、相分離も顕著でなく、流動抵抗もかなり低いので、スラリーとして製造してやれば(特許文献2、特許文献3)、蓄熱材又は蓄熱剤や熱輸送媒体をスラリーとして構成でき、取り扱うことができる(特許文献4、特許文献5)。
それ故、第四級アンモニウム塩の水和物は、蓄熱材若しくは蓄熱剤又はその構成要素若しくは構成成分として有望であるといえる。なお、第四級アンモニウム塩の水和物の具体例は、テトラnブチルアンモニウム塩やトリnブチルnペンチルアンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物である(特許文献6、特許文献7)。
川崎成武他1名、"気体水和物の冷熱蓄熱材への応用"、ケミカル・エンジニアリング、株式会社化学工業社、昭和57年8月1日、Vol.27、No.8、p.603、表1 特公昭57−35224号公報 特開2004−3718号公報 特開2002−263470号公報 特開平10−259978号公報 特開2001−301884号公報 特開2001−280875号公報 WO 2006/132322 A1 特開2004−331935号公報
ところで、第四級アンモニウム塩の包接水和物が蓄熱剤として使用される場合、スラリー状態で使用されると否とに拘らず、また蓄熱材の状態で使用されると否とに拘らず、包接水和物が金属材料と接触する機会が増え、ゲスト化合物を構成するハロゲンのアニオンがその金属材料の腐食を促進させるという問題があった。
この問題を解決するために、従来、腐食抑制剤の投入が検討されていた(特許文献8)。
しかし、腐食抑制剤は、その効果が生じる条件の範囲内で、しかも蓄熱剤として望まれる性質が維持される範囲内で投入されるに止まる。
また、腐食抑制剤の投入は、蓄熱剤の組成、延いてはその保守管理を複雑にし、保守管理コストの増加の遠因となる。
それ故、腐食抑制剤に極力頼らないより根本的な解決、即ち腐食性の低い包接水和物の出現が望まれていた。
また、第四級アンモニウム塩は高価であり、その使用量は蓄冷材のコストに直接関わってくるため、同じ蓄熱密度を得るための第四級アンモニウム塩の使用量を極力減らすことができる技術が望まれていた。
本発明の以上の背景に基づきなされたものであり、金属腐食の問題が著しく改善され、経済性に優れた包接水和物及びその包接水和物に関連する技術(例えば、その包接水和物を生成する水溶液、その包接水和物のスラリー及びその製造方法、その包接水和物を含む蓄熱剤)を実現することを目的する。
発明者らは、一般に腐食性の高いといわれるハロゲンイオンを含むゲスト化合物の採用を避け、第一リン酸イオン(HPO )、第二リン酸イオン(HPO 2−)及び第三リン酸イオン(PO 3−)といったリン酸系イオンをアニオン種とする第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物について検討を行った。
その結果、これらの包接水和物が容易に水に分散又は懸濁してスラリーの性状を呈すること、当該包接水和物及びそのスラリーは潜熱蓄熱効果を有すると同時に低い金属腐食性を示し、その金属腐食性と蓄熱特性(特に生成する包接水和物の融点や蓄熱密度といった特性)には顕著なpH依存性があることを見出した。
しかも発明者らは、前記リン酸系イオンをアニオンとする第四級アンモニウム塩の包接水和物およびそのスラリーの蓄熱密度が、無機リン酸塩又はリン酸を添加することにより格段に向上することを見出した。このことは、無機リン酸塩又はリン酸を添加することにより、同じ蓄熱密度を有する包接水和物およびそのスラリーを得るために必要な第四級アンモニウム塩の量を相対的に減少させることができることを意味している。
しかして、上記知見に基づきなされた上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係る水溶液は、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液であって、前記第四級アンモニウム塩と、無機リン酸塩又はリン酸とを含むことを特徴とするものである。
本発明の第2の形態に係る水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、pH調整剤が添加されていることを特徴とするものである。
本発明の第3の形態に係る包接水和物は、第1又は第2の形態に係る水溶液を冷却することにより生成し、その生成の際潜熱相当の熱エネルギーを蓄積することを特徴とするものである。
本発明の第4の形態に係る包接水和物のスラリーは、第3の形態に係る包接水和物が水溶媒中に分散又は懸濁してなることを特徴とするものである。
本発明に係る第5の形態に係る包接水和物のスラリーは、第1又は第2の形態に係る水溶液中に分散又は懸濁してなることを特徴とするものである。
本発明の第6の形態に係る包接水和物のスラリーの製造方法は、第1の形態に係る水溶液をそのpHを調整した後に冷却する工程を有することを特徴とするものである。
本発明の第7の形態に係る潜熱蓄熱剤は、第3の形態に係る包接水和物を成分として含むことを特徴とするものである。
本発明の第8の形態に係る潜熱蓄熱剤は、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物と、無機リン酸塩又はリン酸とを含むことを特徴するものである。
本発明の第9の形態に係る潜熱蓄熱剤は、第8の形態に係る潜熱蓄熱剤であって、pH調整剤が添加されていることを特徴とするものである。
本発明の第10の形態に係る包接水和物又はそのスラリーの潜熱蓄熱特性を調整する方法は、第1の形態に係る水溶液をそのpHを調整した後に冷却する工程を有することを特徴とするものである。
本発明の第11の形態に係る包接水和物の融点を調整する方法は、第1の形態に係る水溶液をそのpHを調整した後に冷却する工程を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、潜熱蓄熱性を有する包接水和物及びそのスラリー並びに当該包接水和物を含むその他の潜熱蓄熱剤の金属腐食性を著しく低減させることができる。
そのため、当該包接水和物又はそのスラリーを熱輸送や蓄熱などの熱利用の分野において潜熱蓄熱剤として使用する際、腐食抑制剤の投入量を著しく低減させることができ、使用環境によっては腐食抑制剤の投入が不要になり、腐食抑制剤の効果がある条件に合うように潜熱蓄熱剤の使途や適用範囲等が制限されることもなくなるとともに、保守管理の負荷、従ってそれに要するコストの増加も回避又は防止することができる。
また、本発明によれば、安価な無機リン酸塩又はリン酸を添加することにより、同じ蓄熱密度を有する包接水和物及びそのスラリー並びに当該包接水和物を含むその他の潜熱蓄熱剤を得るために必要な、高価な第四級アンモニウム塩の量を相対的に減少させることができる。
それ故、同じ蓄熱密度を有する包接水和物及びそのスラリー並びに当該包接水和物を含むその他の潜熱蓄熱剤をより安価に実現することができ、これらの物質を使用する技術の経済性を向上させることができる。
本発明の各形態が奏する作用効果は、以下のとおりである。
本発明の第1の形態によれば、経済性に優れ、金属腐食性が低い蓄熱性を有する包接水和物の原料水溶液を実現することができる。
アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液のpHを変えると、そこから生成する包接水和物の潜熱蓄熱特性(特に当該包接水和物の融点や蓄熱密度といった特性)が変わる。これは、pHにより、当該水溶液から生成する包接水和物やその存在比率が変わるためと推察される。
それ故、本発明の第2の形態によれば、pH調整剤が当該水和溶液に添加されているので、その添加により調整されたpHに対応した潜熱蓄熱特性又は使途、適用範囲等が異なる包接水和物を生成することができる原料水溶液を実現することができる。
本発明の第3の形態によれば、金属腐食性が低く、相対的に安価又は経済的な、蓄熱性を有する包接水和物を実現することができる。
本発明の第4の形態によれば、金属腐食性が低く、相対的に安価又は経済的な、蓄熱性を有する包接水和物のスラリーを実現することができる。
アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液を冷却することで生成する包接水和物は分散性が高く、凝集性が低いので、当該水溶液に分散又は懸濁し易い。
それ故、本発明の第5の形態によれば、原料水溶液を冷却するだけで、金属腐食性が低く、相対的に安価又は経済的な、蓄熱性を有する包接水和物のスラリーを実現することができる。
アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液のpHを変えると、そこから生成する包接水和物の潜熱蓄熱特性が変わる。
それ故、本発明の第6の形態によれば、原料水溶液の冷却の前においてそのpHを調整することにより、調整されたpHに対応した潜熱蓄熱特性又は使途、適用範囲等が異なる包接水和物のスラリーを製造することができる。
本発明の第7の形態によれば、経済性に優れ、金属腐食性が低い蓄熱性を有する包接水和物を成分として含む潜熱蓄熱剤を実現することができる。
本発明の第8の形態によれば、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物と、無機リン酸塩又はリン酸とを含む新規の潜熱蓄熱剤を実現することができる。この潜熱蓄熱剤は、経済性に優れ、金属腐食性が低い。
本発明の第9の形態によれば、pH調整剤が当該水和溶液に添加されているので、その添加により調整されたpHに対応した潜熱蓄熱特性が異なる包接水和物を構成成分とする潜熱蓄熱剤を実現することができる。
なお、無機リン酸塩及びリン酸もpH調整機能があるので、第2及び第9の各形態におけるpH調整剤を無機リン酸塩及びリン酸を含めて定義してよい。
本発明の第10の形態によれば、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液をそのpHを調整した後に冷却するので、調整されたpHに応じて包接水和物又はそのスラリーの潜熱蓄熱特性を調整することができる。
本発明の第11の形態によれば、アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液をそのpHを調整した後に冷却するので、調整されたpHに応じて包接水和物の融点を調整することができる。
本発明における、第四級アンモニウム化合物のカチオンは、その第四級アンモニウム化合物が包接化合物を生成する性質を有すればいかなる構造であっても良いが、代表的にはテトラnブチルアンモニウム、テトラisoアミルアンモニウム、トリnブチルnペンチルアンモニウム、トリnブチルisoペンチルアンモニウムなどが挙げられるが、これに限るものではない。
また、無機リン酸塩については、水に溶解し、金属腐食性を著しく高めるものでなければ種類は問わない。たとえば、アルカリ金属のリン酸塩や、NH のリン酸塩が挙げられるが、これに限るものではない。また、第一リン酸イオンの塩、第二リン酸イオンの塩及び第三リン酸塩イオンの塩のうちのいずれか一つ又は二つ以上の混合物であっても良い。
アルカリ金属のリン酸塩の典型例として、ナトリウムのリン酸塩、カリウムのリン酸塩が挙げられ、具体的にはリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムであり、その混合物であっても良い。
また、無機リン酸塩の代わりにリン酸であっても良い。つまり、水に溶けてリン酸イオンを生成するものであれば良い。
本発明の潜熱蓄熱物質および水溶液のpHは、5から12の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、金属に対する低腐食性の観点で最も優れているからである。
また、pHにより、潜熱蓄熱物質や包接水和物、スラリーの蓄熱特性が変化するが、pHが高い方が、包接水和物の生成、融解の温度帯(潜熱蓄熱を利用できる温度帯)が高くなり、pHが低い方が同温度帯が低くなるため、用途に応じてpHを調整して使うことが好ましい。
特に、スラリーとして使う場合は低腐食性が発現されている範囲でなるべく高いpHに調整して使う方が好ましい。そうすることで、同じ蓄熱密度を得るに必要な第四級アンモニウム塩の量を減らすことができ、経済的であるためである。
また、添加する無機リン酸塩、あるいはリン酸は、場合によっては前記のpHの調整の役割も併せ持つことは言うまでも無い。
(1)リン酸テトラnブチルアンモニウム水溶液の調製 (ベース液の調製)
水酸化テトラnブチルアンモニウム水溶液とリン酸を中和反応させることにより、テトラnブチルアンモニウムのリン酸塩(下記のようにTBA-HPO、TBA-HPO、TBA-POの3種類がある)の水溶液を調製した。
第1リン酸テトラnブチルアンモニウム TBA-HPO
第2リン酸テトラnブチルアンモニウム TBA-HPO
第3リン酸テトラnブチルアンモニウム TBA-PO
TBA-HPOの場合は、水酸化テトラnブチルアンモニウムとリン酸とのモル比が1:1となるように原料を調整した。
また、TBA-HPOの場合は、水酸化テトラnブチルアンモニウムとリン酸とのモル比が2:1となるように原料を調整した。
さらに、TBA-POの場合は、水酸化テトラnブチルアンモニウムとリン酸とのモル比が3:1となるように原料を調整した。
また、水分濃度については、生成する水溶液中のテトラnブチルアンモニウム1モルに対して水が30モルとなるように調整した。
水酸化テトラnブチルアンモニウム水溶液とリン酸の混合割合により、生成する水溶液のpHは変化した。TBA-HPOの場合は、pHは5であった。また、TBA-HPOの場合は、pHは10であった。さらに、TBA-POの場合は、pHは13であった。
上記で調製したTBA-HPOの水溶液を水で希釈して、TBA-HPOの濃度が15.6wt%の水溶液を得た。更に水酸化カリウムを加えてpHを10.5に調整した。この溶液をベース液1とした。
(2)リン酸塩を添加したリン酸テトラnブチルアンモニウム水溶液(サンプル溶液の調製)
ベース液1にリン酸水素二カリウムを数種類の添加濃度で溶かし、更にごく微量の水酸化カリウムの添加によりpHを10.5に調整した。調製したサンプル溶液1〜5とベース液1の組成を表1に記す。リン酸水素二カリウムの添加濃度を高くすると、相対的にTBA-HPOの濃度は低くなる。
Figure 0005076554
(3)示差走査熱量計(DSC)による熱分析
ベース液及び各サンプル溶液を冷却して包接水和物を生成し、加熱して融解する際の温度と熱量の関係を、DSCを用いて分析し、その結果を図1に示した。図1は横軸が温度を示し、縦軸が熱量を示している。
リン酸水素二カリウムを添加することにより、温度−熱量関係曲線の最大値(融点)が高くなる。そして、リン酸水素二カリウム添加濃度が高くなるにつれて包接水和物の融点が高くなり、融解熱量が高くなり潜熱蓄熱量が高くなることが判明した(図1参照)。
また、ベース液及び各サンプル溶液について熱密度を評価したが、熱密度を求める温度範囲は冷房空調用の好適な蓄熱材または熱輸送材として使われる温度範囲が7〜13℃の温度範囲であるので、この温度範囲の熱密度を求め、その結果を表2に示した。この温度範囲の熱密度が高いほど、冷房空調用の蓄熱材または熱輸送材として優れた蓄熱特性を有することになる。
Figure 0005076554
ここで示されたように、リン酸水素二カリウムの添加により、TBA-HPOのみの場合に比べて熱密度は増加し、さらにリン酸水素二カリウムの添加濃度が高くなるにつれて熱密度が増加することが判明した。リン酸水素二カリウムの添加濃度を高くすると、相対的にTBA-HPOの濃度は低くなるが、熱密度は向上することが分かった。条件によっては、リン酸水素二カリウムの添加により、添加しない場合に比べて熱密度は3倍近くになることが分かった。
以上のことから、リン酸水素二カリウムを添加することにより、TBA-HPOの濃度を低くしても同じ熱密度を得ることができる。これによりTBA-HPOの使用量を低減でき、リン酸水素二カリウムの価格は、TBA-HPOの価格の数十分の一以下であるので、同じ熱密度を得るための材料コストを大幅に下げることができる。
(リン酸添加)
実施例1において添加したリン酸水素二カリウムの代わりに、リン酸をリン酸水素二カリウムと同じモル数に相当するように添加して、その後、水酸化カリウムでpHを10.5に調整したサンプルについて同様の実験を行ったところ、これらのサンプルについても実施例1と同様の結果が得られた。
すなわち、リン酸添加濃度が高くなるにつれて包接水和物の融点が高くなり、融解熱量が高くなり潜熱蓄熱量が高くなることが判明した。
また、リン酸の添加により、TBA-HPOのみの場合に比べて熱密度は増加し、さらにリン酸の添加濃度が高くなるにつれて熱密度が増加することが判明した。リン酸の添加濃度を高くすると、相対的にTBA-HPOの濃度は低くなるが、熱密度は向上することが分かった。
以上のように、リン酸を添加することにより、TBA-HPOの濃度を低くしても同じ熱密度を得ることができる。これによりTBA-HPOの使用量を低減でき、リン酸の価格は、TBA-HPOの価格の数十分の一以下であるので、同じ熱密度を得るための材料コストを大幅に下げることができる。
実施例1において、ベース液1として調製したTBA-HPOの水溶液の代わりに、原料のモル比を変えて調製したTBA-HPOの水溶液あるいはTBA-POの水溶液をベース液として、リン酸水素二カリウムおよびリン酸のそれぞれの添加による包接水和物の潜熱蓄熱特性の変化を調べた。
TBA-HPOの水溶液はpHが10であるが、リン酸水素二カリウムを実施例1と同様に数種類変えて添加し、その後にpH調整剤としてリン酸を添加してpHを5に調整したサンプルを得た。そのサンプルをDSCにて分析したところ、リン酸水素二カリウム添加濃度が高くなるにつれて包接水和物の融点が高くなり、融解熱量が高くなり潜熱蓄熱量が高くなることが判明した。
また、リン酸水素二カリウムの添加により、TBA-HPOのみの場合に比べて熱密度は増加し、さらにリン酸水素二カリウムの添加濃度が高くなるにつれて熱密度が増加する。リン酸水素二カリウムの添加濃度を高くすると、相対的にTBA-HPOの濃度は低くなるが、熱密度は向上することが分かった。
リン酸の添加によっても同様の結果が得られた。
TBA-POの水溶液はpHが13であるが、リン酸水素二カリウムを実施例1と同様に数種類変えて添加し、その後にpH調整剤として硫酸を添加してpHを10に調整したサンプルを得た。そのサンプルをDSCにて分析したところ、リン酸水素二カリウム添加濃度が高くなるにつれて包接水和物の融点が高くなり、融解熱量が高くなり潜熱蓄熱量が高くなることが判明した。
また、リン酸水素二カリウムの添加により、TBA-POのみの場合に比べて熱密度は増加し、さらにリン酸水素二カリウムの添加濃度が高くなるにつれて熱密度が増加する。リン酸水素二カリウムの添加濃度を高くすると、相対的にTBA-POの濃度は低くなるが、熱密度は向上することが分かった。
リン酸の添加によっても同様の結果が得られた。
このようにリン酸水素二カリウム又はリン酸の添加により、第四級アンモニウム塩の濃度を低くしても有効な熱密度を向上できることが分かった。
<pH調整によりテトラnブチルアンモニウムリン酸塩の存在比率を調整>
実施例1(1)で調整した3種類のテトラnブチルアンモニウムリン酸塩のうちいずれかの水溶液をテトラnブチルアンモニウム1モルに対して水が30モルとなるようにして調製した。それぞれの水溶液(下記のように呼び、pHを示す)に、リン酸水素二カリウムを2〜15wt%添加し、さらにpH調整剤を加えてpHを調整して、IR分析によりテトラnブチルアンモニウムリン酸塩の変化を調べた。pH調整剤には、水酸化カリウムまたはリン酸を用いた。
水溶液1(TBA-HPO)pH5
水溶液2(TBA-HPO)pH10
水溶液3(TBA-PO) pH13
(1)水溶液1、水溶液2をベース液とする水溶液のpHを高くする調整
TBA-HPOが存在している水溶液1はpHが5であるが、リン酸水素二カリウムを添加し、さらにpH調整剤を加えてpHを13に調整して水溶液1Aとした。
また、TBA-HPOが存在している水溶液2はpHが10であるが、リン酸水素二カリウムを添加し、さらにpH調整剤を加えてpHを13に調整して水溶液2Aとした。
水溶液1Aと水溶液2Aのそれぞれを激しく攪拌しながら冷却し、包接水和物を生成させ、その包接水和物を液相と分離し、更に包接水和物を融解して水溶液にし、水分を蒸発させ粉末を得た。得られた粉末をIR分析したところIRスペクトルは、TBA-POのIRスペクトルと類似であった。
これらのことから、TBA-HPOが存在している水溶液1にリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを13に調整したり、TBA-HPOが存在している水溶液2にリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを13に調整したりすることにより、TBA-POの水和物が生成する性質を持つ水溶液が生成することがわかる。
さらに、水溶液1AのpHを13から5に戻して上記と同様の操作により得られた粉末をIR分析したところ、TBA-HPOの水和物が生成する性質を持つ水溶液となっていることがわかった。また、水溶液2AのpHを13から10に戻して上記と同様の操作により得られた粉末をIR分析したところ、TBA-HPOの水和物が生成する性質を持つ水溶液となっていることがわかった。
(2)水溶液2、水溶液3をベース液とする水溶液のpHを低くする調整
TBA-HPOが存在している水溶液2はpHが10であるが、リン酸水素二カリウムを添加し、さらにpH調整剤を加えてpHを5に調整して水溶液2Bとした。
また、TBA-POが存在している水溶液3はpHが13であるが、リン酸水素二カリウムを添加し、さらにpH調整剤を加えてpHを5に調整して水溶液3Bとした。
水溶液2Bと水溶液3Bのそれぞれを激しく攪拌しながら冷却し、包接水和物を生成させ、その包接水和物を液相と分離し、更に包接水和物を融解して水溶液にし、水分を蒸発させ粉末を得た。得られた粉末をIR分析したところIRスペクトルは、TBA-HPOのIRスペクトルと類似であった。
これらのことから、TBA-HPOが存在している水溶液2にリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを5に調整したり、TBA-POが存在している水溶液3にリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを5に調整したりすることにより、TBA-HPOの水和物が生成する性質を持つ水溶液が生成することがわかる。
さらに、水溶液2BのpHを5から10に戻して上記と同様の操作により得られた粉末をIR分析したところ、TBA-HPOの水和物が生成する性質を持つ水溶液となっていることがわかった。また、水溶液3BのpHを5から13に戻して上記と同様の操作により得られた粉末をIR分析したところ、TBA-POの水和物が生成する性質を持つ水溶液となっていることがわかった。
上記のpHの調整により得られた水溶液1A,2A,2Bおよび3Bを、水で2.5倍に希釈し、攪拌しながら冷却したところ、いずれの水溶液でも包接水和物が水溶液中に分散または懸濁した包接水和物のスラリーが得られた。
以上のことから、テトラnブチルアンモニウムリン酸塩を含みリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを調整することにより、存在するテトラnブチルアンモニウムリン酸塩の種類が可逆的に変化し、生成する包接水和物の種類が可逆的に変化することがわかる。(下式参照)
このことにより、テトラnブチルアンモニウムリン酸塩を含みリン酸水素二カリウムを添加した水溶液のpHを調整することにより特定種のテトラnブチルアンモニウムリン酸塩の存在比率を高めるまたは変動させることができ、pHを調整することにより生成する水和物種類を制御できること、さらに潜熱蓄熱特性の異なる又は使途、適用範囲等が異なる包接水和物のスラリーを製造することができることが判明した。
TBA-HPO⇔ TBA-HPO ⇔ TBA-PO
pH 5 10 13
<腐食試験>
実施例1(2)で調製したTBA-HPO水溶液にリン酸水素二カリウムを添加したサンプル溶液および実施例2で調製したTBA-HPO水溶液にリン酸を添加したサンプル溶液を使って、金属材の腐食試験を実施した。銅、炭素鋼もしくはステンレス鋼SUS304をサンプル水溶液に浸漬させ、大気開放下、50℃で1週間保持した。結果として、銅、炭素鋼、ステンレス鋼SUS304の腐食はほとんど肉眼で観察されなかった。
また、重量減少を測定することで腐食減肉量を求めたが、いずれの場合も、腐食速度は0.01mm/年以下であり、防食操作を施す必要がなく、実用上全く問題ないレベルであることが分かった。
<腐食試験>
実施例1(1)で調製したTBA-HPO水溶液(pH5)にリン酸水素二カリウム又はリン酸を添加し、さらに水酸化カリウムを添加してpHを5〜13の範囲に調整した水溶液について、実施例5と同様に金属材の腐食試験を実施した。結果を表3に示す。pHが6〜11の範囲では、銅、炭素鋼およびステンレス鋼SUS304の腐食はほとんど肉眼で観察されなかった。また、重量減少を測定することで腐食減肉量を求めたが、いずれの場合も、腐食速度は0.01mm/年以下であり、防食操作を施す必要がなく、実用上全く問題ないレベルであることが分かった。
Figure 0005076554
本発明の実施例1に示したベース液および各サンプル溶液の熱分析結果を示すグラフである。

Claims (9)

  1. アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩を含み、前記第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物を生成する性質を有する水溶液であって、前記水溶液にアルカリ金属のリン酸塩又はリン酸が添加されていることにより前記包接水和物の蓄熱密度が増加されていることを特徴とする水溶液。
  2. pH調整剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の水溶液。
  3. 請求項1又は2に記載の水溶液を冷却することにより生成し、その生成の際潜熱相当の熱エネルギーを蓄積することを特徴とする包接水和物。
  4. 請求項3に記載の包接水和物が水溶媒中に分散又は懸濁してなることを特徴とする包接水和物のスラリー。
  5. 請求項3に記載の包接水和物が請求項1又は2に記載の水溶液中に分散又は懸濁してなることを特徴とする包接水和物のスラリー。
  6. 請求項1に記載の水溶液をそのpHを調整した後に冷却する工程を有することを特徴とする包接水和物のスラリーの製造方法。
  7. 請求項3に記載の包接水和物を成分として含むことを特徴とする潜熱蓄熱剤。
  8. アニオンがリン酸イオンである第四級アンモニウム塩をゲスト化合物とする包接水和物と、アルカリ金属のリン酸塩又はリン酸とを含み、アルカリ金属のリン酸塩又はリン酸が含まれていることにより前記包接水和物の蓄熱密度が増加されていることを特徴する潜熱蓄熱剤。
  9. pH調整剤が添加されていることを特徴とする請求項8に記載の潜熱蓄熱剤。
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