以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、以下、通信機器の一例として携帯電話装置について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、PHS(Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等のアンテナを備えた他の通信機器であっても良い。
<第1の実施形態>
図1は、ホスト装置と通信を行う本発明に係る通信機器の一例である携帯電話装置1の外観斜視図を示す。
携帯電話装置1は、表面がフロントパネル2aとフロントケース2bとリアケース2cと図示しないリアパネル2dとにより構成される操作部側筐体部2(第1の筐体)と、表面がフロントパネル3aとフロントケース3bとリアケース3cとリアパネル3dとにより構成される表示部側筐体部3(第2の筐体)と、を備えて構成される。
操作部側筐体部2は、フロントパネル2aの表面に、操作ボタン群11と、携帯電話装置1の使用者が通話時に発した音声が入力される音声入力部12とが露出するように構成される。また、操作ボタン群11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。また、操作部側筐体部2の側面には、外部機器(例えば、ホスト装置)と通信を行うためのインターフェースを覆うキャップが設けられている。
また、表示部側筐体部3は、フロントパネル3aに、各種情報を表示するためのディスプレイ21と、通話の相手側の音声を出力する音声出力部22とが露出するように構成される。
また、操作部側筐体部2の上端部と表示部側筐体部3の下端部とは、図1に示すように、ヒンジ機構4(連結部)を介して連結されている。また、携帯電話装置1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを相対的に動かすことにより、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが折り畳まれた状態(互いに重なり合う第1の状態、折畳み状態)にしたり、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とを互いに開いた状態(重なり合う程度が折畳み状態よりも低い第2の状態、開放状態)にしたりすることができる。なお、本実施形態において、ヒンジ機構4による折り畳み式の携帯電話装置1の説明をしているが、折り畳み式ではなく、両筐体2、3を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式や、両筐体2、3を2軸ヒンジを介して連結したものでも良い。
また、図2は、携帯電話装置1を折畳んだ状態の斜視図を示す図である。操作部側筐体部2は、一方の側面に、所定の機能が割り当てられているサイドキー30と、外部メモリの挿入及び取り出しが行われるインターフェース用のキャップ31と、を備えている。また、表示部側筐体部3は、一方の側面に、詳細は後述するスライドキー32が備えられている。また、表示部側筐体部3のフロントケース3b表面には、被写体を撮像するカメラ33と、被写体に光を照射するライト34と、が露出して形成されている。
また、図3は、操作部側筐体部2に内蔵される部材の分解斜視図である。図3に示すように、操作部側筐体部2は、フロントパネル2aと、フロントケース2bと(本図においてはフロントパネル2aとフロントケース2bとは結合されている)、上述した操作ボタン群11を構成するキーシート40と、フレキシブル配線基板45と、基準電位パターン層及び携帯電話装置1用のRF(Radio Frequency)モジュール等の各種電子部品を備えるプリント基板50(第1の導電部)と、ヒンジ機構4a、4bと、アンテナエレメント55と、近距離通信用アンテナエレメント56と、リアケース2cと、バッテリ60を保護するリアパネル2dとを備える。
また、操作部側筐体部2において、フロントケース2bと、キーシート40と、プリント基板50と、リアケース2cとは、積層的に配置される。また、バッテリ60は、リアパネル2dの外側から挿脱可能に収納される。
図3に示すように、フロントケース2bとリアケース2cとは、互いの凹状の内側面が向き合うように配置され、互いの外周縁が重なり合うようにして結合される。また、フロントケース2bとリアケース2cとの間には、キーシート40と、プリント基板50と、とが挟まれるようにして内蔵される。つまり、プリント基板50の上面にキーシート40が積層配置される。
フレキシブル配線基板45は、フロントパネル2a側の面に複数のキースイッチを有し、それぞれのキースイッチは、椀状に湾曲して立体的に形成された金属板のメタルドームを有する構造になっている。メタルドームは、その椀状形状の頂点が押圧されると、フレキシブル配線基板45の表面に印刷された不図示の電気回路に形成されるスイッチ端子に接触して電気的に導通する。なお、フレキシブル配線基板45は、複数の絶縁フィルムの間に配線を挟み込んだものである。
また、プリント基板50には、不図示の各種電子部品が配置される。各種電子部品は、所定の組み合わせにより複数の回路ブロックを形成する。例えば、無線回路、電源回路、デジタル回路等を含む各種回路ブロックが形成される。
フロントパネル2aには、携帯電話装置1を折り畳んだ状態で表示部側筐体部3のディスプレイ21と対向する内側面に、キー孔が複数形成される。複数のキー孔それぞれからは、キーシート40上に形成される機能設定操作ボタン13、入力操作ボタン14及び決定操作ボタン15の押圧面が露出する。この露出した操作ボタン群11を構成する機能設定操作ボタン13、入力操作ボタン14及び決定操作ボタン15の押圧面を押し下げるように押圧することで、対応するキースイッチそれぞれにおけるメタルドーム(椀状形状)の頂点が押圧され、スイッチ端子に接触して電気的に導通する。
リアケース2cの一端側には、基台に収納されたアンテナエレメント55が配置される。つまり、アンテナエレメント55は、携帯電話装置1における一端側に配置される。具体的には、アンテナエレメント55は、携帯電話装置1におけるヒンジ機構4側と反対の端部側に配置される。また、アンテナエレメント55は、帯状の板金で形成される。
アンテナエレメント55(アンテナ)は、通話や電子メール等に係る電磁波の送受信を行うアンテナであり、不図示の給電端子を介してプリント基板50から給電されて構成される。これにより、アンテナエレメント55は、給電端子を介してプリント基板50から給電されると共に、プリント基板50に設けられたRFモジュール等と接続される。なお、本実施形態においては、アンテナエレメント55の位置をリアケース2cの一端に設けるようにしたが、操作部側筐体部2の内部のいずれの場所に配置しても良い。また、アンテナエレメント55の位置を表示部側筐体部3の内部のいずれの場所に配置しても良い。
図4は、表示部側筐体部3に内蔵される部材の分解斜視図である。図4に示すように、表示部側筐体部3は、フロントパネル3aと、フロントケース3bと、ヒンジ機構4と、スピーカ70a,70bと、モータ75と、ディスプレイ21と、ディスプレイ21が接続されたプリント基板80(第2の導電部)と、リアケース3cと、リアパネル3dとを備える。また、表示部側筐体部3において、フロントパネル3aと、フロントケース3bと、ディスプレイ21と、プリント基板80と、リアケース3cと、リアパネル3dとが積層的に配置される。
図4に示すように、フロントケース3bとリアケース3cとは、互いの凹状の内側面が向き合うように配置され、互いの外周縁が重なり合うようにして結合される。また、フロントケース3bとリアケース3cとの間には、ディスプレイ21と、プリント基板80とが挟まれるようにして内蔵される。また、スピーカ70a,70bと、モータ75とがプリント基板80に接続される。
図5は、ホスト装置と通信を行う本発明に係る通信機器の第1の実施形態である携帯電話装置1の内観斜視図を示す図である。図5に示すように、操作部側筐体部2のリアケース2c上にプリント基板50が配置され、表示部側筐体部3のリアケース3c上にプリント基板80と、ディスプレイ21とが配置されている。
操作部側筐体部2のリアケース2cとプリント基板50との間には、電波を受信するためのアンテナエレメント55が配置され、表示部側筐体部3のリアケース3cとプリント基板80との間には、受話音声を発生するためのレシーバ85が配置されている。また、表示部側筐体部3のレシーバ85とは反対側のリアケース3cとプリント基板80との間には金属等の導電部を有すると共にプリント基板80を電気的に接続されたスピーカ70a,70b(第2の金属部、電子装置)が配置されている。
また、操作部側筐体部2のプリント基板50上にはヒンジ機構4間を挿通すると共に複数の信号線とシールド線とからなる同軸ケーブル90(信号線)の一端がコネクタ95aを介して接続されており、表示部側筐体部3のプリント基板80には同軸ケーブル90の他端がコネクタ95bを介して接続されている。また、操作部側筐体部2に配置されたアンテナエレメント55とは反対側の一端には、図3に示すヒンジ機構4aを構成する金属ヒンジ4c(第1の金属部)がスピーカ70a,70bと対向する部位に配置されており、金属ヒンジ4cはプリント基板50と電気的に接続されている。なお、金属ヒンジ4cは、プラスチックや樹脂等からなる非導電性のヒンジの内側表面に金属蒸着を施した物(擬似的な金属ヒンジ)を用いても良い。
以下、図6及び図7を参照して、本実施形態の携帯電話装置1における特徴的な作用効果について説明する。図6は、図5に示す携帯電話装置1をA−A線により切断したときの断面図である。また、図6は、金属ヒンジ4cとスピーカ70aとの間に、容量結合がなされている様子を示している。
図6に示すように、金属ヒンジ4cとスピーカ70aとの間には容量結合がなされているので、ホスト装置から空中を伝搬して到来する電波の到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起され、電気力線101が形成される。このため、到来波Wにより誘起した高周波電流は、アンテナエレメント55からプリント基板50、金属ヒンジ4c、スピーカ70a、プリント基板80へと伝搬され電気的な高周波グランドが形成される。このときの概略的な様子を図6においては、高周波電流W1、W2、W3、W4、W5として示す。
携帯電話通信に用いられる800MHz帯や2GHz帯の電波は、原則としてプリント基板や金属の全体を伝搬するが、そのうち特にプリント基板や金属の端面を伝搬するという高周波特有の性質があるので、携帯電話装置1上の高周波電流の伝搬経路は、図7に示すように主として2系統に分かれることになる。
図7は、図5に示す携帯電話装置1の内部の要部を示す透視図である。なお、図6においては金属ヒンジ4cとスピーカ70aとがなす間隔をL1としており、図7においては、同軸ケーブル90が高周波電流を伝搬することを示すため、ヒンジ機構4内での同軸ケーブル90の引き回しを展開して便宜的に図示している。よって、図7においては金属ヒンジ4cとスピーカ70aとがなす間隔をL2として説明しているが、実際は、L1=L2である。
図7に示すように、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振された場合、一方は、容量結合された金属ヒンジ4cとスピーカ70aとの間の経路を伝搬し、他方は、同軸ケーブル90を介在した経路を伝搬することで2系統の電気的な高周波グランドが形成される。
すなわち、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、一方は、アンテナエレメント55の給電点P11からプリント基板50の端点P12(一端側の部位)、プリント基板50の端点P13(他端側の部位)、金属ヒンジ4c、金属ヒンジ4cとの間で電気力線101が形成され容量結合されているスピーカ70a、プリント基板80の端点P14、プリント基板80の端点P15、プリント基板80の端点P16へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
同時に、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、他方は、アンテナエレメント55の給電点P21からプリント基板50の端点P22、端点P23、プリント基板50に接続されているコネクタ95a、同軸ケーブル90、プリント基板80に接続されているコネクタ95b、プリント基板80の端点P24、プリント基板80の端点P25、プリント基板80の端点P26へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
このようにして、2系統の電気的な高周波グランドが形成され、さらには両系統の高周波的に見たプリント基板上の伝搬経路の長さ、すなわち、アンテナエレメント55に誘起された高周波電流のグランド側の伝搬経路が、ほぼ同一(筐体幅方向左右対称)になるので、このように操作部側筐体部2と表示部側筐体部3の開放状態においても高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、アンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
すなわち、プリント基板50とプリント基板80との間隔に金属ヒンジ4cとスピーカ70aを設けたため、同軸ケーブル90を介した一方側の端面に形成された電気的な高周波グランドの経路のみならず金属ヒンジ4cとスピーカ70aとの間の金属同士による容量結合を介した他方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路を、確保することができるため、開き状態でも筐体幅方向を左右対称に電気的なグランド形成できるので、高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず同軸ケーブル90を介した一方側の端面にしか電気的な高周波経路が形成されていない場合に比べて良好なアンテナ利得を得ることができる。
また、本実施形態においては、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との連結部となる金属ヒンジ4cと金属で形成された電子装置たるスピーカ70aとが容量結合されるよう構成されているため、従来のように、プリント基板50とプリント基板80とを容量結合が可能な間隔にまで近づける必要がないので、ヒンジ部近傍での設計上の自由度を向上することができる。
<第2の実施形態>
図8は、本発明に係るホスト装置と通信を行う通信機器の第2の実施形態である携帯電話装置151の内観斜視図を示す図である。
図8に示すように、第2の実施形態の携帯電話装置151の特徴は、リアケース3cの内部の一部に対して金属を蒸着した蒸着部153を設け、蒸着部153とプリント基板80とを電気的に接続したことにある。なお、図8に示す携帯電話装置151の各部のうち、第1の実施形態の携帯電話装置1と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
以下、図9及び図10を参照して、本実施形態の携帯電話装置151における特徴的な作用効果について説明する。図9は、図8に示す携帯電話装置151をB−B線により切断したときの断面図である。また、図9は、金属ヒンジ4c(第1の金属部)と蒸着部153(第2の金属部)との間に、容量結合がなされている様子を示している。
図9に示すように、金属ヒンジ4cと蒸着部153との間には容量結合がなされているので、ホスト装置から空中を伝搬して到来する電波の到来波Wが携帯電話装置151に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起され、電気力線155が形成される。このため、到来波Wにより誘起した高周波電流は、アンテナエレメント55からプリント基板50、金属ヒンジ4c、蒸着部153、プリント基板80へと伝搬され電気的なグランドが形成される。このときの様子を図6においては、高周波電流W1、W2、W3、W4、W5として示す。
携帯電話通信に用いられる800MHz帯や2GHz帯の電波は、原則としてプリント基板や金属の全体を伝搬するが、そのうち特にプリント基板や金属の端面を伝搬するという高周波特有の性質があるので、携帯電話装置1上の高周波電流の伝搬経路は、図10に示すように主として2系統に分かれることになる。
図10は、図8に示す携帯電話装置151の内部の要部を示す透視図である。なお、図9においては金属ヒンジ4cと蒸着部153とがなす間隔をL1としており、図10においては、同軸ケーブル90が高周波電流を伝搬することを示すため、ヒンジ機構4内での同軸ケーブル90の引き回しを展開して便宜的に図示している。よって、図10においては金属ヒンジ4cと蒸着部153とがなす間隔をL2として説明しているが、実際は、L1=L2である。
図10に示すように、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振された場合、一方は、容量結合された金属ヒンジ4cと蒸着部153との間の経路を伝搬し、他方は、同軸ケーブル90を介在した経路を伝搬することで2系統の電気的な高周波グランドが形成される。
すなわち、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、一方は、アンテナエレメント55の給電点P11からプリント基板50の端点P12、プリント基板50の端点P13、金属ヒンジ4c、金属ヒンジ4cとの間で電気力線155が形成され容量結合されている蒸着部153、プリント基板80の端点P14、プリント基板80の端点P15、プリント基板80の端点P16へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
同時に、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、他方は、アンテナエレメント55の給電点P21からプリント基板50の端点P22、端点P23、プリント基板50に接続されているコネクタ95a、同軸ケーブル90、プリント基板80に接続されているコネクタ95b、プリント基板80の端点P24、プリント基板80の端点P25、プリント基板80の端点P26へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
このようにして、2系統の電気的な高周波グランドが形成され、さらには両系統の高周波的に見たプリント基板上の伝搬経路の長さ、すなわち、アンテナエレメント55に誘起された高周波電流のグランド側の伝搬経路が、ほぼ同一(筐体幅左右対称)になるので、このように操作部側筐体部2と表示部側筐体部3の開放状態においても高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、アンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
すなわち、プリント基板50とプリント基板80との間隔に金属ヒンジ4cと蒸着部153を設けたため、同軸ケーブル90を介した一方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路のみならず金属ヒンジ4cと蒸着部153との間の金属同士による容量結合を介した他方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路を、確保することができるため、開き状態でも筐体幅方向を左右対称に電気的なグランド形成できるので、高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず同軸ケーブル90を介した一方側の端面にしか電気的な高周波経路が形成されていない場合に比べて良好なアンテナ利得を得ることができる。
また、本実施形態においては、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との連結部となる金属ヒンジ4cと金属で形成された電子装置たる蒸着部153とが容量結合されるよう構成されているため、従来のように、プリント基板50とプリント基板80とを容量結合が可能な間隔にまで近づける必要がないので、ヒンジ部近傍での設計上の自由度を向上することができる。
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係る携帯電話装置201を示す断面図である。図11に示すように、第3の実施形態の携帯電話装置201の特徴は、ヒンジ機構4の内部に金属製のスピーカ203(第1の金属部)を設け、スピーカ203とプリント基板50とを電気的に接続したことにある。
また、図11は、スピーカ203と蒸着部153(第2の金属部)との間に、容量結合がなされている様子を示している。なお、図11に示す携帯電話装置201の各部のうち、第2の実施形態の携帯電話装置151と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
以下、図11及び図12を参照して、本実施形態の携帯電話装置201における特徴的な作用効果について説明する。図11に示すように、スピーカ203と蒸着部153との間には容量結合がなされているので、ホスト装置から空中を伝搬して到来する電波の到来波Wが携帯電話装置151に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起され、電気力線205が形成される。
このため、到来波Wにより誘起した高周波電流は、アンテナエレメント55からプリント基板50、スピーカ203、蒸着部153、プリント基板80へと伝搬され電気的なグランドが形成される。このときの様子を図11においては、高周波電流W1、W2、W3、W4、W5として示す。
携帯電話通信に用いられる800MHz帯や2GHz帯の電波は、原則としてプリント基板や金属の全体を伝搬するが、そのうち特にプリント基板や金属の端面を伝搬するという高周波特有の性質があるので、携帯電話装置201上の高周波電流の伝搬経路は、図12に示すように主として2系統に分かれることになる。
図12は、携帯電話装置201の内部の要部を示す透視図である。なお、図11においてはスピーカ203と蒸着部153とがなす間隔をL1としており、図12においては、同軸ケーブル90が高周波電流を伝搬することを示すため、ヒンジ機構4内での同軸ケーブル90の引き回しを展開して便宜的に図示している。よって、図10においてはスピーカ203と蒸着部153とがなす間隔をL2として説明しているが、実際は、L1=L2である。
図12に示すように、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振された場合、一方は、容量結合されたスピーカ203と蒸着部153との間の経路を伝搬し、他方は、同軸ケーブル90を介在した経路を伝搬することで2系統の電気的な高周波グランドが形成される。
すなわち、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、一方は、アンテナエレメント55の給電点P11からプリント基板50の端点P12、プリント基板50の端点P13、スピーカ203、スピーカ203との間で電気力線205が形成され容量結合されている蒸着部153、プリント基板80の端点P14、プリント基板80の端点P15、プリント基板80の端点P16へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
同時に、到来波Wが携帯電話装置1に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、他方は、アンテナエレメント55の給電点P21からプリント基板50の端点P22、端点P23、プリント基板50に接続されているコネクタ95a、同軸ケーブル90、プリント基板80に接続されているコネクタ95b、プリント基板80の端点P24、プリント基板80の端点P25、プリント基板80の端点P26へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
このようにして、2系統の電気的な高周波グランドが形成され、さらには、両系統の高周波的に見たプリント基板上の伝搬経路の長さ、すなわち、アンテナエレメント55に誘起された高周波電流のグランド側の伝搬経路が、ほぼ同一(筐体幅方向左右対称)になるので、このように操作部側筐体部2と表示部側筐体部3の高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、アンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
すなわち、プリント基板50とプリント基板80との間隔にスピーカ203と蒸着部153を設けたため、同軸ケーブル90を介した一方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路のみならずスピーカ203と蒸着部153との間の金属同士による容量結合を介した他方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路を、確保することができるため、開き状態でも筐体幅方向を左右対称に電気的なグランド形成できるので、高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、同軸ケーブル90を介した一方側の端面にしか電気的な高周波経路が形成されていない場合に比べて良好なアンテナ利得を得ることができる。
また、本実施形態においては、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との連結部となる金属ヒンジ4cと金属で形成された電子装置たるスピーカ70aとが容量結合されるよう構成されているため、従来のように、プリント基板50とプリント基板80とを容量結合が可能な間隔にまで近づける必要がないので、ヒンジ部近傍での設計上の自由度を向上することができる。
<第4の実施形態>
図13は、第4の実施形態に係る携帯電話装置251を示す断面図である。図13に示すように、第4の実施形態の携帯電話装置251の特徴は、ヒンジ機構4の内部に金属製のモータ253を設け、プリント基板50とモータ253とを電気的に接続したことにある。なお、モータ253はバイブレータ機能を有しても良く、またモータ253は携帯電話装置251を閉じ状態から開き状態にするためのアクチュエータ機能を有しても良い。また、モータ253に代わって、ヒンジ機構4の内部に導電性を有するカメラモジュールや、スピーカを用いても良い。
また、図13は、モータ253(第1の金属部、電子装置)と蒸着部153(第2の金属部)との間に、容量結合がなされている様子を示している。なお、図13に示す携帯電話装置251の各部のうち、第1の実施形態の携帯電話装置1と同様の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
以下、図13及び図14を参照して、本実施形態の携帯電話装置251における特徴的な作用効果について説明する。
図13に示すように、モータ253と蒸着部255との間には容量結合がなされているので、ホスト装置から空中を伝搬して到来する電波の到来波Wが携帯電話装置251に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起され、電気力線257が形成される。このため、到来波Wにより誘起した高周波電流は、アンテナエレメント55からプリント基板50、モータ253、蒸着部255、プリント基板80へと伝搬され電気的なグランドが形成される。このときの様子を図13においては、高周波電流W1、W2、W3、W4、W5として示す。
携帯電話通信に用いられる800MHz帯や2GHz帯の電波は、原則としてプリント基板や金属の全体を伝搬するが、そのうち特にプリント基板や金属の端面を伝搬するという高周波特有の性質があるので、携帯電話装置251上の高周波電流の伝搬経路は、図14に示すように主として2系統に分かれることになる。
図14は、携帯電話装置251の内部の要部を示す透視図である。なお、図13においてはモータ253と蒸着部255とがなす間隔をL1としており、図14においては、同軸ケーブル90が高周波電流を伝搬することを示すため、ヒンジ機構4内での同軸ケーブル90の引き回しを展開して便宜的に図示している。よって、図14においてはモータ253と蒸着部255とがなす間隔をL2として説明しているが、実際は、L1=L2である。
図14に示すように、到来波Wが携帯電話装置251に設けられたアンテナエレメント55により共振された場合、一方は、容量結合されたモータ253と蒸着部255との間の経路を伝搬し、他方は、同軸ケーブル90を介在した経路を伝搬することで2系統の電気的な高周波グランドが形成される。
すなわち、到来波Wが携帯電話装置251に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、一方は、アンテナエレメント55の給電点P11からプリント基板50の端点P12、プリント基板50の端点P13、プリント基板50の端点P14、プリント基板50の端点P15、プリント基板50に接続されているコネクタ259aの一端、コネクタ259aの一端から同軸ケーブル90に沿って配置されているペアケーブル258、ヒンジ機構4の内部に配置されたペアケーブル258の端点P16からモータ253、モータ253との間で電気力線257が形成され容量結合されている蒸着部255、プリント基板80の端点P17、プリント基板80の端点P18、プリント基板80の端点P19、プリント基板80の端点P20へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
同時に、到来波Wが携帯電話装置251に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起された場合、他方は、アンテナエレメント55の給電点P21からプリント基板50の端点P22、端点P23、プリント基板50に接続されているコネクタ259a、同軸ケーブル90、プリント基板80に接続されているコネクタ259b、プリント基板80の端点P24、プリント基板80の端点P25、プリント基板80の端点P26へと伝搬されることで電気的な高周波グランドが形成される。
このようにして、2系統の電気的な高周波グランドが形成され、さらには両系統の高周波的に見たプリント基板上の伝搬経路の長さ、すなわち、アンテナエレメント55に誘起された高周波電流のグランド側の伝搬経路が、ほぼ同一(筐体幅方向左右対称)になるので、このように操作部側筐体部2と表示部側筐体部3の高周波電波電流のブランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、アンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
すなわち、プリント基板50とプリント基板80との間隔にモータ253と蒸着部255を設けたため、同軸ケーブル90を介した一方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路のみならずモータ253と蒸着部255との間の金属同士による容量結合を介した他方側の端面に形成された電気的な高周波グランド経路を、確保することができるため、開き状態でも筐体幅方向を左右対称に電気的なグランド形成できるので、高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、同軸ケーブル90を介した一方側の端面にしか電気的な高周波経路が形成されていない場合に比べて良好なアンテナ利得を得ることができる。
また、本実施形態においては、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との連結部となる電子装置たるモータ253と金属で形成された蒸着部255とが容量結合されるよう構成されているため、従来のように、プリント基板50とプリント基板80とを容量結合が可能な間隔にまで近づける必要がないので、ヒンジ部近傍での設計上の自由度を向上することができる。
<第5の実施形態>
図15に示す携帯電話装置1’を用いて第5の実施形態について説明する。なお、携帯電話装置1’は、第1の実施形態の携帯電話装置1と同様の構成を有する通信機器の一例であるが、ここでは便宜のため、以下に説明する各部の構成については改めて新たな符号を付し、その上で第5の実施形態について説明する。
図15に示すように、第5の実施形態の携帯電話装置1’は、表面2a’に配置される操作キー群6’を有する操作部側筐体部2’(第1の筐体)と、表面3a’に配置されるディスプレイ5’を有する表示部側筐体部3’(第2の筐体)とを備え、操作部側筐体部2’と表示部側筐体部3’とは、回転軸Xを有する金属性の第1ヒンジユニット(第1の金属部)と回転軸Yを有する第2ヒンジユニットとからなる2軸ヒンジ機構を備えるヒンジ機構4’(連結部)を介して互いに連結されている。そして、該携帯電話装置1’は、このヒンジ機構4’を介して操作部側筐体部2’と表示部側筐体部3’とが回転軸X方向に開状態及び閉状態に相対移動するよう構成されると共に、操作部側筐体部2’と表示部側筐体部3’とが回転軸Y方向に表状態(第3の状態)及び裏状態(第4の状態)に相対移動するよう構成されている。
ここで、閉状態とは、両筐体2’、3’が互いに重なるように配置された状態であり、開状態とは、両筐体2’、3’が互いに重ならないように配置された状態をいう。そして、開状態における表状態とは、表示部側筐体部3’における表面3a’に配置されるディスプレイ5’と、操作部側筐体部2’における表面2a’に配置される操作キー群6’とが同じ側を向くように配置された状態であり、開状態における裏状態とは、表示部側筐体部3’におけるディスプレイ5’と操作部側筐体部2’における操作キー群6’とが反対側を向くように配置された状態をいう。また、閉状態における表状態とは、表示部側筐体部3’におけるディスプレイ5’が操作部側筐体部2’における操作キー群6’に対向するように配置された状態であり、閉状態における裏状態とは、表示部側筐体部3’におけるディスプレイ5’が操作部側筐体部2’における操作キー群6’と対向せずに表出した状態である。
図16(a)は、開状態における表状態時の携帯電話装置1’の内部の要部を示した透視図を、そして図16(b)は、開状態における裏状態時の携帯電話装置1’の内部の要部を示した透視図をそれぞれ模式的に示している。図16(a)、(b)に示すように、操作部側筐体部2’の内部にはプリント基板7’(第1の導電部)と、プリント基板7’と電気的に接続されたアンテナエレメント8’(アンテナ)とを有しており、表示部側筐体部3’の内部にはプリント基板9’(第2の導電部)と、導電部を有するスピーカ10’(第2の金属部)と同じく導電部を有するスピーカ11’(第4の金属部)とを有して構成される。
そしてスピーカ10’は、プリント基板9’と電気的に接続されると共に、開状態における表状態(図16(a)の状態)においてはヒンジ機構4’と容量結合可能な程度にヒンジ機構4’と対向し、開状態における裏状態(図16(b)の状態)においては当該ヒンジ機構4’との容量結合の程度が低くなるあるいは容量結合自体されなくなるような部位、すなわち、筐体内の幅方向他端側(図16(a)における紙面左側)の部位に配設されている。
また、スピーカ11’は、プリント基板9’と電気的に接続されると共に、開状態における裏状態(図16(b)の状態)においてはヒンジ機構4’と容量結合可能な程度にヒンジ機構4’と対向し、開状態における表状態(図16(a)の状態)においては当該ヒンジ機構4’との容量結合の程度が低くなる、あるいは容量結合自体されなくなるような部位、すなわち、筐体内の幅方向一端側(図16(a)における紙面右側)の部位に配設されている。
このような携帯電話装置1’の構成において、アンテナエレメント8’の共振により誘起される高周波電流がどのように携帯電話装置1’の内部で伝搬されるかについて以下説明する。
まず、図16(a)に示すような携帯電話装置1’の開状態における表状態においては、アンテナエレメント8’の共振により誘起された高周波電流は、プリント基板7’の全体に亘って伝搬されるが、第1の実施例乃至第4の実施例と同様に、主としてプリント基板7’の幅方向両端側に伝搬されることとなる。そして、このうちプリント基板7’の幅方向一端側(図16(a)における紙面右側)において伝搬される高周波電流は、同軸ケーブル12’を介してプリント基板9’の幅方向一端側(図16(a)における紙面右側)に伝搬され、その後、当該伝搬された高周波電流は、プリント基板9’の幅方向一端側を主として伝搬されながら、プリント基板9’の全体に亘って伝搬される。
一方、プリント基板7’の幅方向他端側(図16(a)における紙面左側)において伝搬される高周波電流は、ヒンジ機構4’とスピーカ10’との容量結合を介してプリント基板9’の幅方向他端側(図16(a)における紙面左側)に伝搬され、その後、当該伝搬された高周波電流は、プリント基板9’の幅方向他端側を主として伝搬されながら、プリント基板9’の全体に亘って伝搬される。
これにより、アンテナエレメント8’の共振により誘起されてプリント基板7’の幅方向一端側に伝搬された高周波電流の経路長と、プリント基板7’の幅方向他端側に伝搬された高周波電流の経路長とが、ほぼ同一(幅方向左右対称)になるので、高周波電流の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置1’全体をアンテナとして利用することができ、もってアンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
次に、図16(b)に示すような携帯電話装置1’の開状態における裏状態においては、アンテナエレメント8’の共振により誘起された高周波電流は、上記同様に、主としてプリント基板7’の幅方向両端側に伝搬され、このうちプリント基板7’の幅方向一端側(図16(b)における紙面右側)における高周波電流は、同軸ケーブル12’を介して裏状態におけるプリント基板9’の幅方向他端側(図16(b)における紙面左側)に伝搬され、プリント基板7’の幅方向他端側における高周波電流は、ヒンジ機構4’とスピーカ11’との容量結合を介して裏状態におけるプリント基板9’の幅方向他端側に伝搬されることとなる。
すなわち、開状態における裏状態においては、開状態における表状態に比べるとヒンジ機構4’とスピーカ10’とは離問されるため、ヒンジ機構4’とスピーカ10’との容量結合の程度は低くなる、あるいは容量結合自体されなくなるが、スピーカ10’の代わりにスピーカ11’が開状態における裏状態においてはヒンジ機構4’と容量結合可能な程度に対向することとなるため、開状態における裏状態においても、開状態における表状態においてもプリント基板9’の幅方向他端側における高周波電流の経路を開状態における表状態の場合と同様に確保することができる。
なお、この場合においては、プリント基板7’の幅方向一端側における高周波電流と幅方向他端側における高周波電流とは、共に裏状態におけるプリント基板9’の幅方向他端側に伝搬されることとなるため、両伝搬経路の長さはほぼ同一(幅方向左右対称)とはならないが、プリント基板7’に伝搬された高周波電流が、同軸ケーブル12’を介してのみならず、ヒンジ機構4’とスピーカ11’との容量結合を介してもプリント基板9’に伝搬されるため、高周波電流が同軸ケーブル12’のみを介してプリント基板9’に伝搬される場合に比べると、高周波電流はプリント基板9’に均一に伝搬されることとなる。
したがって、携帯電話装置1’は、開状態における裏状態においても、アンテナエレメント8’の共振により誘起される高周波電流のプリント基板9’への経路を好適に確保することができるため、携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、もってアンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
このように、本実施形態における携帯電話装置1’は、開状態における表状態及び開状態における裏状態のいずれの状態においても、アンテナエレメント8’の共振により誘起される高周波電流のプリント基板9’への経路を好適に確保することができるため、携帯電話装置1’全体をアンテナとして利用することができ、もってアンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
また、本実施形態においては、ヒンジ機構4’と容量結合される部材としてスピーカ10’及びスピーカ11’を用いているが、携帯電話装置1’が、スピーカ10’及びスピーカ11’とで、携帯電話装置1’の着信音等をステレオ出力するような構成である場合には、操作部側筐体部2’の表面2a’側からみた開状態における表状態時のスピーカ10’とスピーカ11’との配置の相対位置と、開状態における裏状態時の使用者からみたスピーカ10’とスピーカ11’との配置の相対位置とはちょうど反転される関係となる。すなわち、操作部側筐体部2’の表面2a’側からのスピーカ10’及びスピーカ11’とからステレオ出力される携帯電話装置1’の着信音等の音の指向性は、開状態における表状態時と、開状態における裏状態時とで変わるところがない。したがって、携帯電話装置1’の使用者は、いずれの状態においてもスピーカ10’及びスピーカ11’からステレオ出力される着信音等のステレオ出力を違和感なく楽しむことができる。
なお、本実施形態においては、ヒンジ機構4’と容量結合される部材としてスピーカ10’及びスピーカ11’を用いているが、本発明はこれに限定されず、その他の導電部を有する蒸着やバイブモーター等の電子装置であっても良い。
また、本実施形態においては、プリント基板7’の幅方向一端側とスピーカ10’又はスピーカ11’との容量結合については言及していないが、プリント基板7’の幅方向一端側とスピーカ10’又はスピーカ11’とが容量結合される程度に両者が近接して配置されるような構成であれば、開状態における表状態及び開状態における裏状態のいずれの状態においても、プリント基板7’の幅方向一端側に伝搬された高周波電流は、必ず当該容量結合によりプリント基板9’に伝搬されることとなるため、さらに開状態における表状態及び開状態における裏状態においても、アンテナエレメント8’の共振により誘起される高周波電流のプリント基板9’への経路を好適に確保することができるため、携帯電話装置1全体をアンテナとして利用することができ、もってアンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
なお、第1の実施形態乃至第5の実施形態に係る携帯電話装置は、ヒンジ機構4の内部に配置される金属部が、ヒンジ機構4を介した操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対的な位置移動に応じて操作部側筐体部2及び表示部側筐体部3に配設され、プリント基板50とプリント基板80とのいずれかに電気的に接続される金属部が対向するヒンジ機構4の内部の領域に形成されるため、ヒンジ機構4により操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対的な位置状態が変化しても、当該変化の過程を含めて常に、表示部側筐体部3に配設されている第2の金属部303(例えば、スピーカ70a,70b、蒸着部153、スピーカ10’)と、操作部側筐体部2の上端部に配設されている第3の金属部302との間において好適に容量結合を行わすことができる。
なお、ヒンジ機構4の内部に配置される金属部は、第1の実施形態におけるヒンジ4c、第2の実施形態におけるヒンジ4c、第3の実施形態におけるスピーカ203、第4の実施形態におけるモータ253、第5の実施形態におけるヒンジ機構4’にそれぞれ対応する。また、ヒンジ機構4を介した操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対的な位置移動に応じて操作部側筐体部2及び表示部側筐体部3に配設され、プリント基板50とプリント基板80とのいずれかに電気的に接続される金属部は、第1の実施形態におけるスピーカ70a、70b、第2の実施形態における蒸着部153、第3の実施形態における蒸着部153、第4の実施形態における蒸着部153、第5の実施形態におけるスピーカ10’にそれぞれ対応する。
ここで、本実施形態の携帯電話装置301における特徴的な作用効果について説明する。図5乃至図16に示すように、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対的な位置状態がどのような状態にあっても、ヒンジ機構4の内部に配設される金属部は、ヒンジ機構4により操作部側筐体部2と表示部側筐体部3とが相対的に回転する軸方向に沿って円柱状に形成されている。したがって、両金属部の間には操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対的な位置状態に依存せずに容量結合が確保されるので、ホスト装置から空中を伝搬して到来する電波の到来波Wが携帯電話装置301に設けられたアンテナエレメント55により共振され高周波電流が誘起され、電気力線304が形成される。
このため、到来波Wにより誘起した高周波電流は、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3との相対位置に関わらず携帯電話装置1全体に伝搬されて電気的なグランドが形成される。
したがって、上述した第1の実施形態乃至第5の実施形態と同様にして、本実施形態に係る携帯電話装置301においても、アンテナエレメント55に誘起された高周波電流のグランド側の伝搬経路が、ほぼ同一(筐体幅左右対称)になるので、操作部側筐体部2と表示部側筐体部3の相対的な位置状態がどのような状態であっても高周波電波電流のグランド側の伝搬経路がいびつにならず携帯電話装置301全体をアンテナとして利用することができ、アンテナ利得が低下するのを好適に抑制することができる。
なお、第1の実施形態乃至第5の実施形態においては、容量結合に寄与する電子装置の例としてスピーカ又はモータを開示したが、本発明においてはこれに限定されず、その他の電子装置、例えばIrDA(Infrared Data Association)に代表される近距離通信用のモジュール等であっても良い。また、近距離通信用モジュールは、他の外部通信端末と通信する必要があるという性質上、筐体の端末部側、すなわち金属部間の容量結合に寄与しやすい位置に配設されやすいため、設計上の自由度を損うことなく本発明における電子装置としての機能を担うことができる。