以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、以下、通信機器の一例として携帯電話機について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、PHS(Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等であってもよい。
図1から図3により、携帯電話機1における基本構造を説明する。図1は、携帯電話機1を開いた状態における正面図を示す。また、図2(A)は、携帯電話機1を開いた状態における左側面図を示し、図2(B)は、携帯電話機1を開いた状態における右側面図を示す。また、図3は、携帯電話機1を開いた状態における背面図を示す。
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3とを備える。操作部側筐体2と表示部側筐体3とは2軸ヒンジ機構を備える連結部4を介して連結され、該携帯電話機1を開状態及び閉状態に変形可能とすると共に、開状態及び閉状態それぞれにおいて表示部側筐体3を表状態と裏状態とに切り替えることができる。
ここで、閉状態とは、両筐体が互いに重なるように配置された状態であり、開状態とは、両筐体が互いに重ならないように配置された状態をいう。そして、開状態における表状態とは、後述する表示部側筐体3における表面3aに配置されるディスプレイ30と、操作部側筐体2における表面2aに配置される操作キー群11とが同じ側を向くように配置された状態であり、裏状態とは、表示部側筐体3におけるディスプレイ30と操作部側筐体2における操作キー群11とが反対側を向くように配置された状態をいう。また、閉状態における表状態とは、表示部側筐体3におけるディスプレイ30が操作部側筐体2における操作キー群11に対向するように配置された状態であり、閉状態における裏状態とは、表示部側筐体3におけるディスプレイ30が操作部側筐体2における操作キー群11と対向せずに表出した状態である。
操作部側筐体2は、外面がフロントケース2aとリアケース2bとにより構成される。この操作部側筐体2は、フロントケース2a側に、操作キー群11と、携帯電話機1の使用者が通話時に発した音声が入力される音声入力部12とがそれぞれ露出するように構成される。ここで、操作キー群11は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー13と、電話番号の数字やメール等の文字等を入力するための入力操作キー14と、各種操作における決定や上下左右方向のスクロール等を行う決定操作キー15と、から構成されている。また、音声入力部12は、操作部側筐体2の長手方向における連結部4側とは反対の外端部側に配置される。つまり、音声入力部12は、携帯電話機1が開状態において一方の外端部側に配置される。
操作キー群11を構成する各キーそれぞれには、操作部側筐体2と表示部側筐体3との開閉状態や表裏状態等の変形状態や、起動されているアプリケーションの種類に応じて所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。携帯電話機1において、操作キー群11を構成する各キーが使用者により押圧されることで、各キーに割り当てられている機能に応じた動作が実行される。
操作部側筐体2における一方の側面には、図2(A)に示すように、外部機器(例えば、ホスト装置)とデータの送受信を行うためのインターフェース16と、ヘッドホン/マイク端子17と、着脱可能な外部メモリのインターフェース18と、バッテリーを充電するための充電端子19とが設けられている。なお、インターフェース16、ヘッドホン端子/マイク端子17及びインターフェース18は、不使用時において着脱可能な防塵対策用のキャップで覆われている。
操作部側筐体2における他方の側面には、図2(B)に示すように、一対のサイドキー20と、撮像時に使用される操作キー21と、電波の受信角度を調整可能な放送波受信用のアンテナ22とが配置される。このサイドキー20には、操作部側筐体2と表示部側筐体3との開閉状態や表裏状態等の変形状態や、起動されているアプリケーションの種類に応じて所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。ここで、上述と同様に、サイドキー20が使用者により押圧されることで、携帯電話機1においてサイドキー20に割り当てられている機能に応じた動作が実行される。
操作部側筐体2のリアケース2bには、図3に示すように、被写体を撮像するカメラ部23と、被写体に光を照射するライト部24とが露出して配置される。このカメラ部23とライト部24とは、操作部側筐体2における連結部4側に配置される。また、操作部側筐体2におけるリアケース2bには、詳細は後述するバッテリーの収容部にバッテリーを装着するための開口部が形成されると共に、該開口部を塞ぐようにバッテリーリッド25が配置される。
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、図1から図3に示すように、2軸ヒンジ機構を備える連結部4を介して連結される。連結部4における一方の面(裏面)には、図3に示すように、副操作キー群33が該携帯電話機1の幅方向(短手方向)において一列に並んで配置される。この副操作キー群33を構成する各キーそれぞれには、操作部側筐体2と表示部側筐体3との開閉状態や表裏状態等の変形状態や、起動されているアプリケーションの種類に応じて所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。携帯電話機1において、操作キー群11を構成する各キーが使用者により押圧されることで、各キーに割り当てられている機能に応じた動作が実行される。
また、表示部側筐体3は、外面がフロントケース3aとリアケース3bにより構成される。表示部側筐体3におけるフロントケース3aには、図1に示すように、各種情報を表示するための所定形状のディスプレイ30と、通話の相手側における音声を出力する音声出力部31とが露出するように配置される。ここで、音声出力部31は、表示部側筐体3の長手方向における連結部4とは反対の外端部側に配置される。つまり、音声出力部31は、携帯電話機1が開状態において他方の端部側に配置される。
また、表示部側筐体3のリアケース3bには、図3に示すように、各種情報を表示するためのサブディスプレイ32が露出して配置される。ディスプレイ30及びサブディスプレイ32それぞれは、液晶パネルと、この液晶パネルを駆動する駆動回路と、この液晶パネルの背面側から光を照射するバックライト等の光源部とから構成される。
なお、本実施形態においては、連結部4により折り畳み可能な携帯電話機1の説明をしているが、折り畳み式ではなく、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、操作部側筐体2と表示部側筐体3との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転(リボルバ)式でもよい。
つぎに、図4により、操作部側筐体2の内部構造について説明する。
操作部側筐体2は、図4に示すように、フロントケース2aと、上述した操作キー群11を構成するキーシート40と、キースイッチが配置されるフレキシブルプリント配線基板50と、シールドケース60と、基準電位部72及び携帯電話機用のRF(Radio Frequency)モジュール等の各種電子部品を備える回路基板70と、アンテナ部80(アンテナ)と、ループアンテナ部81と、リアケース2bと、を備える。また、バッテリー90は、リアケース2bの外側から装脱可能に収容される。また、バッテリーリッド25は、リアケース2bの開口部91を塞ぐように配置される。
また、フロントケース2aとリアケース2bとは、互いの凹状の内側面が向き合うように配置されると共に、互いの外周縁が重なり合うようにして結合される。また、フロントケース2aとリアケース2bとの間には、キーシート40と、フレキシブルプリント配線基板50と、シールドケース60と、回路基板70と、アンテナ部80及びループアンテナ部81とが、フロントケース2a側からこの順番で収納配置される。
回路基板70における第1の面71には、詳細は後述する基準電位部72が形成される。また、回路基板70における第2の面73には、詳細は後述する充電端子19等の各種電子部品が配置される。具体的には、第2の面73には、図示しないカメラ部23やライト部24が連結部4側の端部に配置されると共に、図示しない音声入力部12が連結部4側の端部に配置される。なお、カメラ部23やライト部24は、リアケース2bに所定の形状で穿孔されている穿孔部2cを介して外部に露出される。
シールドケース60は、薄型の直方体における一の広い面が開口した形状を有する金属製の部材である。なお、シールドケース60は、金属により形成する以外に、骨格を樹脂により形成し、その表面に導体膜を形成したものでもよい。
また、シールドケース60は、回路基板70における第1の面71に形成される基準電位部72と導通する。これにより、シールドケース60は、基準電位部72と電気的に導通して同じ大きさの電位を有するようになる。また、シールドケース60は、外部からのノイズが回路基板70に配置される各種電子部品に作用するのを防ぐと共に、回路基板70に形成される高周波回路等から放出されるノイズを吸収する。また、シールドケース60は、後述する各種キーの押圧操作に対する剛性確保のための補強部材としても機能する。
フレキシブルプリント配線基板50は、フロントケース2a側の面に複数のキースイッチ51、52、53を有している。フレキシブルプリント配線基板50のキースイッチ51、52、53は、椀状に湾曲して立体的に形成された金属板のメタルドームを有する構造になっている。メタルドームは、その椀状形状の頂点が押圧されると、フレキシブルプリント配線基板50の表面に印刷された不図示の電気回路に形成されるスイッチ端子に接触して電気的に導通する。なお、フレキシブルプリント配線基板50は、複数の絶縁フィルムの間に配線を挟み込んだものである。
キーシート40は、シリコンゴム製のシート41の表面に操作キー群11により構成される機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15が接着剤により貼り付けられて構成される。また、キーシート40における操作キー群11を構成する機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15は、フレキシブルプリント配線基板50におけるキースイッチ51、52、53と対向する位置に配置されると共に、後述するフロントケース2aに形成されるキー孔45から露出するように配置される。
フロントケース2aには、携帯電話機1を折り畳んだ状態で表示部側筐体3のディスプレイ30と対向する内側面に、キー孔45が複数形成される。複数のキー孔45それぞれからは、キーシート40上に形成される機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15の押圧面が露出する。この露出した操作キー群11を構成する機能設定操作キー13、入力操作キー14及び決定操作キー15の押圧面を押し下げるように押圧することで、対応するキースイッチ51、52、53それぞれにおけるメタルドーム(椀状形状)の頂点が押圧され、スイッチ端子に接触して電気的に導通する。
アンテナ部80は、基台上に所定形状のアンテナエレメントが配置されることにより構成さる。アンテナ部80は、携帯電話機1における連結部4側と反対の端部側に配置される。このアンテナ部80のアンテナエレメントは、帯状の板金により形成される。また、アンテナ部80は、不図示の給電端子を介して回路基板70から給電される。これにより、アンテナエレメントは、給電端子を介して回路基板70から給電されると共に、回路基板70のRFモジュール等と接続される。携帯電話機1はアンテナ部80を介して通話や電子メール等の通信を行うことができる。
ループアンテナ部81は、詳細は後述するRFID用のアンテナであり、リアケース2bの内部に形成されているバッテリー90を収容する部分を囲うようにして配置される。携帯電話機1はループアンテナ部81を介して近距離通信、例えば、電子マネーのやりとり等の近距離通信を行うことができる。
バッテリー90は、リアケース2bに形成された開口部91を介してバッテリー収容部92に着脱可能に収容される。バッテリー収容部92は、リアケース2bと回路基板70の一部とにより形成される。そして、バッテリー90が収容された状態において、開口部91を塞ぐようにバッテリーリッド25を配置することで、バッテリー90の脱落を抑制することができる。
図5は、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部との間に設けられた2軸ヒンジ機構を備える連結部4の透視図である。連結部4と表示部側筐体3の下端部との間には、信号線101が配置されており、信号線101の外側にはフェライトシート103が覆われている。また、携帯電話機1は、この信号線101及びフェライトシート10を覆うと共に、連結部4と表示部側筐体3とを連結する第2連結部105(本発明の連結部)を有する。
操作部側筐体2に設けられた回路基板70には信号線101の一端が接続されており、信号線101は第2連結部105及び連結部4内を経由し、表示部側筐体3に設けられた回路基板106には信号線101の他端が接続されている。
また、図5に示すように、操作部側筐体2の内面上部は回路基板70と電気的に接続されたGND面113が設けられている。このGND面113に対向してGND面113と容量結合により電気的に接続されたGND面111が連結部4の下部に設けられ、さらに、GND面111と同じく容量結合により電気的に接続されたGND面109が連結部4の上部に設けられている。
また、図5に示すように、表示部側筐体3の内面下部は回路基板106と電気的に接続されると共にGND面109と容量結合により電気的に接続されるGND面107が設けられている。
また、第2連結部105内を挿通する信号線101の外側には、フェライトシート103が巻着されて高周波的に高インピーダンスとなっている。すなわち、フェライトシート103が信号線101を束ねるように巻着することで高周波電流は遮断される。また、連結部4と表示部側筐体3とのそれぞれの対向面にGND面109,107を配置しているので、表示部側筐体3のGND面107と連結部4のGND面109とが高周波的に結合されるように構成される。
さらに、図6は、本発明に適用可能な第2連結部105の内面をフェライトシート120で覆うと共に、表示部側筐体3の内部に配置されている内面においても信号線101をフェライトシート120で覆うように構成する変形例を示している。
また、図7は、本発明に適用可能な連結部4の内部に配置されている信号線101−1〜101−nの1本1本に対してそれぞれ個別にフェライトビーズ121−1〜121−nで覆うことで高周波電流を遮断するように構成した変形例を示している。なお、この場合、信号線101−1〜101−nの1本1本に対して、高インピーダンスに作用するインダクタや抵抗等の素子を挿入することで、高周波電流を遮断してもよい。
以下、図8を参照して、本実施形態の携帯電話機1の開き状態(表状態、裏状態のいずれの状態も含む)(第1の状態)における特徴的な作用効果について説明する。図8は、本実施形態の携帯電話機1の高周波電流の伝搬の様子を示す透視図である。なお、本説明においては、操作部側筐体部2と連結部4とを含めた一体構成を本発明における第1の筐体とし、表示部側筐体3を第2の筐体とする。またここでは、第2連結部105内を挿通する信号線101の外側にはフェライトシートが巻着されているものとする。
携帯電話通信に用いられる800MHz帯や2GHz帯の高周波電流は、原則としてプリント基板や金属の全体を伝搬する一方で、このような高周波電流は、端面を伝搬し易いという特性があるので、携帯電話機1上の高周波電流の伝搬経路は、図8に示すように主として2系統に分かれることになる。
図8に示すように、到来波Wが携帯電話機1に設けられたアンテナ部80のエレメントに共振され高周波電流が誘起された場合、一方はアンテナ部80の給電端子Q1から高周波電流I11が回路基板70上を左方向に進み、回路基板70の端点P11から回路基板70上の端点P12、端点P12と電気的に接続されたGND面113から容量結合された連結部4のGND面111、連結部4のGND面111から連結部4のGND面109、連結部4のGND面109から容量結合された表示部側筐体3のGND面107、表示部側筐体3のGND面107から回路基板106上の端点P15、端点P15から回路基板106上の端点P16へと伝搬されることで電気的なグランド経路は形成される。
他方、アンテナ部80の給電端子Q2から高周波電流I21が回路基板70上を右方向に進み、回路基板70の端点P21から回路基板70上の端点P22、端点P22と電気的に接続されたGND面113から容量結合された連結部4のGND面111、連結部4のGND面111から連結部4のGND面109、連結部4のGND面109から容量結合された表示部側筐体3のGND面107、表示部側筐体3のGND面107から回路基板106上の端点P25、端点P25から回路基板106上の端点P26へと伝搬されることで電気的なグランド経路は形成される。
このとき、第2連結部105内を挿通する信号線101の外側には、フェライトシート103が巻かれているので、信号線101は高周波的に高インピーダンスになって信号線101上での高周波電流I11およびI21、その他の高周波電流の流れを遮断する。
このようにして、開き状態における2系統の電気的なグランドは、操作部側筐体2、連結部4、表示部側筐体3の全体に伝搬されることとなり、開き状態における携帯電話機1の全体をアンテナとして有効活用でき、もって、開き状態における適正なアンテナ特性を得ることができる。
次に、図9を参照して、本実施形態の携帯電話機1の表示部側筐体3が、連結部と操作部側筐体2に対して直交するように90度回転された状態における開き直交状態(第2の状態)、すなわち開き状態に比べて連結部4のGND面109と表示部側筐体3のGND面107との容量結合(第1の筐体と第2の筐体との容量結合)の程度が低い状態、における特徴的な作用効果について説明する。図9は、本実施形態の携帯電話機1の高周波電流の伝搬の様子を示す透視図である。なおここでは、先に示した理由と同様の理由により、高周波電流の経路を携帯電話機1の両端面の2系統に分けて便宜的に説明する。
図9に示すように、到来波Wが携帯電話機1に設けられたアンテナ部80のエレメントに共振され高周波電流が誘起された場合、一方はアンテナ部80の給電端子Q1から高周波電流I31が回路基板70上を左方向に進み、回路基板70の端点P11から回路基板70上の端点P12、端点P12と電気的に接続されたGND面113へと伝搬される。しかし、先に示した場合と異なり、携帯電話機1の開き直交状態においては、GND面113と連結部4のGND面111とは対向していないため、両者は容量結合により電気的に接続されていない。したがって、GND面113へと伝搬された高周波電流I31は、この経路によっては容量結合により連結部4乃至表示部側筐体3へと伝搬されない。
他方、アンテナ部80の給電端子Q2から高周波電流I41が回路基板70上を右方向に進み、回路基板70の端点P21から回路基板70上の端点P22、端点P22と電気的に接続されたGND面113へと伝搬される。しかし、この場合もI31の高周波電流の場合と同様、携帯電話機1の開き直交状態においては、GND面113と連結部4のGND面111とは対向していないため、両者は容量結合により電気的に接続されていない。したがって、GND面113へと伝搬された高周波電流I41は、この経路によっては容量結合により連結部4乃至表示部側筐体3へと伝搬されない。
また、第2連結部105内を挿通する信号線101の外側には、フェライトシート103が巻かれているので、信号線101は高周波的に高インピーダンスになって信号線101上での高周波電流I31およびI41、その他の高周波電流の流れを遮断する。
その結果、開き直交状態における2系統の電気的なグランドは、連結部4および表示部側筐体3には伝搬されず、操作部側筐体2の内部にのみ伝搬されることとなる。これにより、開き直交状態においてもアンテナ部80を介した通信状態は安定する。すなわち、仮に第2連結部104内を挿通する信号線101の外側をフェライトシート103で巻着して高周波電流を遮断する等の手当てをしなかった場合には、開き直交状態のような、連結部4のGND面109と表示部側筐体3のGND面107との容量結合を確保することができないため、高周波電流は信号線101を介してのみ表示部側筐体3に伝搬されてしまうこととなるがこの場合、高周波電流の経路は信号線101に集中し、アンテナ部80の特性が劣化してしまうという課題が生じてしまう。しかし、本実施形態における携帯電話機1は、第2連結部104内を挿通する信号線101の外側をフェライトシート103で巻着するように構成されているため、信号線101を介して表示部側筐体3に伝搬されようとする高周波電流が、当該フェライトシート103により好適に遮断されることとなるため、そのようなアンテナ部80の特性の劣化を抑制し、もって、開き直交状態においても、アンテナ部80を介した通信状態を安定させることができる。
なお、図10に示すように、例えば携帯電話機1の連結部4内に、カメラレンズの方向(撮影方向)が操作部側筐体2の幅方向側に対向するようにカメラが配設されているような場合には、携帯電話機1の使用者は、例えば自分を撮影するために、携帯電話機1を開き直交状態にしてディスプレイ30の表示面を見ながらカメラレンズを自分に向ける場合が考えられる。本実施形態における携帯電話機1は、このような開き直交状においても、図9に示したようにアンテナ部80の特性が劣化するのを好適に抑制することができるため、アンテナ部80を介した安定した通信状態を確保することができる。つまり、例えば、この状態において、通話や電子メール等の通信が発生した場合にも、安定した通信を確保することが出来る。
また、その他の変形例として、携帯電話機1がアンテナ部80を介して受信される電磁波に基づいてテレビやラジオ等の放送を視聴可能な機能を有している場合には、携帯電話機1の使用者は、開き直交状態においてそのような放送の視聴をする場合が考えられる。本実施形態における携帯電話機1は、この場合においても先に示した同様の理由により、アンテナ部80の安定した利得を確保することができるため、安定した放送の受信を確保することが出来る。
以上のように、本実施形態における携帯電話機1は、第2連結部105内の複数の信号線を、フェライトシートで覆う、または、これら複数の信号線に対して高インピーダンスに作用するインダクタや抵抗等の素子を挿入しさらに、連結部4と表示部側筐体3とには、それぞれの対向面に蒸着等を施したGND面を配置し、GND同士が容量結合されるような構造を取ることで、高周波電流が流れ易くなっている。
すなわち、本実施形態における携帯電話機1は、連結部4と表示部側筐体3間のGNDを高周波的に結合させるのに、連結部4と表示部側筐体3それぞれの対向面に設けたGND面の結合のみで行うよう構成する。
これにより、本実施形態における携帯電話機1は、表示部側筐体3を回転させない開き状態の場合には、連結部4と表示部側筐体3とが容量結合され、表示部側筐体3まで高周波電流を良好に流すことができるので、携帯電話機1の全体をアンテナとして利用でき、開き状態における望ましいアンテナ特性を得ることができる。
また、本実施形態において説明したように表示部側筐体3を回転させた開き直交状態の場合、その他、この開き直交状態からさらに表示部側筐体3を操作部側筐体2の方向に戻した半開き直交状態の場合、すなわち、連結部4と表示部側筐体3と容量結合の程度が低い状態の場合には、表示部側筐体3は連結部4から高周波的に切り離された状態となる。よって信号線101に集中しようとする高周波電流が好適に遮断され、アンテナ性能の劣化を抑えることができ、このような状態においても望ましいアンテナ特性を得ることができる。
本発明は、本実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、第1の状態として開き状態を、そして第2の状態として開き直交状態を例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、第1の金属部と第2の金属部とが容量結合されている状態は全て第1の状態として観念することができ、第1の金属部と第2の金属部とが容量結合されている程度が第1の状態に比べて程度が小さい状態であれば第2の状態として観念することができる。例えば、第2の状態は、連結部と操作部側筐体2に対して直交するように90度回転された状態に限らず、その他の角度で回転された状態であってもよい。
また、本実施形態においては、蒸着等を施したGND面同士の容量結合により連結部4と表示部側筐体3とを電気的に接続していたが、本発明は、このような蒸着に限らず、導電性を有する部材同士の容量結合により連結部4と表示部側筐体3とを電気的に接続するよう構成してもよい。特に、先に示したように、連結部4の内部にカメラ等の電子装置(その他着信音や音楽再生に用いるスピーカーや着信を報知するためのバイブモーター等が考えられる。)が配設され、かつ、その電子装置が金属等の導電部を有しているような場合には、この電子装置の導電部をGND面の代替として活用してもよい。
また、本実施形態における携帯電話機1は、開き状態および開き直交状態のいずれにおいても連結部4と表示部側筐体3とが対向しあう部位、すなわち、具体的には、図9における表示部側筐体3が第2連結部105と対向する部位S1および連結部4が第2連結部105と対向する部位S2にもGND面107およびGND面109が配設される構成となっていたが、本発明においては、これに限らず、このような開き状態および開き直交状態のいずれにおいても連結部4と表示部側筐体3とが対向しあう部位S1およびS2にはGND面を配設しないように構成してもよい。
これにより、携帯電話機1が開き直交状態において、GND面107およびGND面109が容量結合されて、高周波電流がGND面107およびGND面109周辺に集中して、アンテナ特性が劣化してしまうことを好適に抑制することができる。
また、図11は、本発明に適用可能な変形例を示している。連結部4の内部に配置されている信号線101のうち、シグナルGNDに該当する接地線101aには、スイッチ114が設けられ、このスイッチ114により接地線101aは2方向に分岐され、一方に高周波遮断手段としてのフェライトビーズ115が設けられる。また、スイッチ114により分岐される接地線101aは、いずれもGND面109とGND面111に接続するように構成される。なお、図11では便宜上、信号線101のうち、一本の接地線101aのみの構成を示したが、実際には信号線101のうち、シグナルGNDに該当する全ての信号線に上述の構成が設けられている。これにより、信号線101のうち、シグナルGNDに該当する全ての信号線で以下に示す作用効果を得ることができる。
携帯電話機1の開き状態では、携帯電話機1の開き状態が検出されると、図11に示すようにスイッチ114が制御され、接地線101aは、GND面109およびGND面111と接続されるため、上述の図8に示した場合と同様に、開き状態における2系統の電気的なグランドは、操作部側筐体2、連結部4、表示部側筐体3の全体に伝搬されることとなり、開き状態における携帯電話機1の全体をアンテナとして有効活用でき、もって、開き状態における適正なアンテナ特性を得ることができる。
なお、図11に示した構成によれば、携帯電話機1の開き状態において、第2連結部105周辺の高周波電流が遮断されないため、アンテナ部80の特性の維持向上をさらに図ることができる。
一方、携帯電話機1の開き直交状態では、図11に示すスイッチ114が、下側に切り替わるように制御され、接地線101aを介して表示部側筐体3に伝搬されようとする高周波電流が、フェライトビーズ115により好適に遮断されることとなるため、アンテナ部80の特性の劣化を抑制し、もって、開き直交状態においても、アンテナ部80を介した通信状態を安定させることができる。
なお、携帯電話機1の開き状態や開き直交状態を判別するためには、例えば、連結部4と対向する表示部側筐体3の端部に磁石を設け、表示部側筐体3と対向する連結部4の端部に磁気を検出するセンサを設ける。このセンサにより表示部側筐体3と連結部4との位置関係の違いに伴う磁気の強弱を検出し、検出される結果に基づいて、携帯電話機1の開き状態や開き直交状態を判別する。携帯電話機1は、このように判別された携帯電話機1の開き状態や開き直交状態に基づいてスイッチ114の制御を行う。
図12は、本発明に適用可能な操作部側筐体部2の内部で信号線101にローパスフィルタ116を接続して構成する変形例を示している。なお、図12では便宜上、信号線101のうち、一本の信号線のみの構成を示したが、実際には信号線101のシグナルGNDに該当する信号線全てに高周波遮断手段としてのローパスフィルタ116が接続されている。なお、この場合、信号線101のシグナルGNDに該当する全ての信号線に対してそれぞれ個別に高周波遮断手段としてのフェライトビーズを用いて操作部側筐体部2の内部で覆うように構成してもよい。これにより、信号線101のシグナルGNDに該当する信号線全てにローパスフィルタ116を接続した場合と同等の効果が得ることができる。
操作部側筐体部2の内部で信号線101にローパスフィルタ116を接続することで、携帯電話機1の開き状態では、上述の図8に示した場合と同様に、開き状態における2系統の電気的なグランドは、操作部側筐体2、連結部4、表示部側筐体3の全体に伝搬されることとなり、開き状態における携帯電話機1の全体をアンテナとして有効活用でき、もって、開き状態における適正なアンテナ特性を得ることができる。
一方、携帯電話機1の開き直交状態では、表示部側筐体3に伝搬されようとする高周波電流が、ローパスフィルタ116により好適に遮断されることとなるため、上述の図9に示した場合と同様に、アンテナ部80の特性の劣化を抑制し、もって、開き直交状態においても、アンテナ部80を介した通信状態を安定させることができる。
図13は、本発明に適用可能な第2連結部105自体をフェライト素材により構成する変形例を示している。第2連結部105自体をフェライト素材により構成することで高周波電流を遮断することができ、もって、携帯電話機1を構成する部品点数を削減し、製造コストを削減することができる。
2…操作部側筐体、3…表示部側筐体、4…連結部、70…回路基板、80…アンテナ部、101…信号線、103…フェライトシート、106…回路基板、120…フェライトシート、121…フェライトビーズ