JP5072767B2 - 蒸気タービン用蒸気弁 - Google Patents
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Description
従来、蒸気タービン発電プラントの高温部にはその大半に製造性や経済性に優れたフェライト系耐熱鋼が使用されている。しかし近年は、環境保全を背景とした火力発電設備の高効率化が積極的に進められ、600℃級程度の高温蒸気を利用した蒸気タービンが運転されており、このような蒸気タービンにおいてはフェライト系耐熱鋼の諸特性では要求を満足できない部品が少なからずあるため、より高温特性に優れた耐熱合金や耐熱合金鋼が使用されている場合もある。
よって、蒸気タービン発電プラントを起動させると、前記蒸気弁には起動前の温度が低下した状態と比較してかなりの高温且つ高圧の蒸気が供給されることになり、蒸気弁の蒸気室(弁室)が急激に加熱され、蒸気室を形成するケーシングの内面と外面の大きな温度差により熱応力が発生してしまい、ケーシングのひび割れなどの損傷が生じる可能性がある。
また、外側ケーシングの蓋体をボルト締めして取り付けるときに、前記蓋体とブッシュとの間に隙間ができ、ケーシングと弁軸の設計における偏りが生じてしまう。この隙間を塞ぐために例えば特許文献1ではパッキンを用いているがパッキンは消耗してしまうのでより信頼性のあるシール構造が望ましい。一方、内外のケーシングを形成する材質を蒸気条件によって選択して肉厚を薄くするとともに、熱応力を低減することも求められている。
前記第1のケーシングと第2のケーシングとが異なる耐熱合金で形成されるとともに、
前記弁体を駆動する弁軸は、第1ブッシュを介して前記第1のケーシングの蓋体に摺動自在に支持されるとともに、前記第1ブッシュとは前記弁軸の軸方向に隙間を空けて設けられる第2ブッシュを介して前記第2のケーシングの蓋体に摺動自在に支持されており、
前記第1ブッシュと前記第2ブッシュとの間の前記隙間は、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとの間に形成される前記蒸気流路内に位置していることを特徴とする。
このように、蒸気条件によって耐熱合金を選択した蒸気弁を形成することによりコストを低減することができるとともに、本発明における蒸気弁はケーシングにかかる熱応力を抑制してタービン停止過程の強制急冷、若しくは起動前のウォーミング時に第1のケーシングの内面を急激な温度変化から保護することが可能となる。
このように、前記第1、第2のケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成することにより、ケーシングと弁軸の設計における偏りを防止することができる。また、蒸気条件によってケーシングとボンネットを形成する耐熱合金の選定の自由度が増し、直接高温高圧の蒸気に曝される部分にのみ限定して耐熱合金を使用することができる。
これにより、高価なインコネルのようなNi基合金の使用を極力減らし、冷却蒸気が流れる第2のケーシングについては従来のCr鋼のような耐熱材の使用を可能とすることができるため、低コスト化を実現することができる。
従来より用いられている黒鉛渦巻きガスケットは、高温高圧の蒸気条件において使用困難であるが、かかる発明における前記自封ガスケットを用いることにより、700℃級の蒸気条件下でもシールの温度劣化を低減することができる。
これにより、蒸気の温度差や圧力差により、前記第1のケーシングと第2のケーシングに変形が生じても、前記第1と第2のケーシングの同心を保つことができるので、前記第1の蓋体と第2の蓋体に分割されて配置されたブッシュの同心を保つことができる。
また、前記第1、第2のケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成することにより、ケーシングと弁軸の設計における偏りを防止することができる。また、蒸気条件によってケーシングとボンネットを形成する耐熱合金の選定の自由度が増し、直接高温高圧の蒸気に曝される部分にのみ限定して耐熱合金を使用することができ、高温高圧の蒸気条件で熱応力を抑制するとともに安価な蒸気弁を提供することができる。
さらに、前記自封ガスケットを用いることにより、700℃級の蒸気条件下でもシールの温度劣化を低減することができる。
また、前記第1と第2のケーシングの間に半径方向に摺動可能な位置決め機構が配置することにより、前記第1の蓋体と第2の蓋体に分割されて配置されたブッシュの同心を保つことができる。
また、外側ケーシング6と接合される主流蒸気入口管12及び蒸気出口管14、内側ケーシング8と接合される弁体18には、シール機構がそれぞれ設けられており、36a,36bはグランドパッキン、38a,38bはシールリングを示す。
本実施形態では、内側蒸気室20と外側蒸気室30とで蒸気室を2重構造とし、外側蒸気室にある程度の圧力及び温度を持った冷却蒸気(暖気用蒸気)を流すことにより、内側ケーシング8の肉厚を薄くすることが可能になり、低コスト化が図れる。また、前記冷却蒸気は起動前に予め流すことが可能であるので、起動時の内側ケーシング8の内面と外面の温度差を極力減少させることができ、起動時の熱応力を低減することができる。
さらに、上記構成により冷却蒸気の蒸気条件をもとにケーシングとボンネットを設計することができる。即ち、蒸気条件によってケーシングとボンネットを形成する耐熱合金の選定することができ、例えば、内側は主流蒸気の700℃に対応できるインコネルとし、外側は500℃〜600℃に対応できるCr鋼とすることができる。
ブッシュを分割することにより、内側蒸気室20から蒸気がリークしても矢印Dのようにリーク蒸気は前記空隙から外側蒸気室30へ排出され大気に排出されない。また、ブッシュ26,28は内側ケーシング8、外側ケーシング6にそれぞれ設けられているので、シール機構が不要になる。
なお、ブッシュ26,28はボンネットと同様に、蒸気条件によって耐熱合金の選定をすることができ、特に外側に位置するブッシュ28に関してはNi基合金ではなくCr鋼を用いることができるので、コストを低減することができる。
符号10で示される蒸気弁は、ケーシングとケーシングに設けられる蓋体との間に自封式のガスケット40a,40dを介在させている。そのうち、破線Xで囲まれるガスケット40aの拡大図を図3に示した。
このような自封式ガスケットは、ガスケットを取付けるための強度計算において、ガスケット係数及び最小設計締付圧力がゼロであり、シールするためにボルトなどの強度をあまり必要としないものである。
図5は図1のY−Y断面を示す図であり、本実施形態に係る位置決め機構の構成例を示している。また、図1で示されているものと同一の構成については、同一符号を付している。
図5に示されるように、外側ケーシング6の内側に内側ケーシング8が配置され、内側ケーシング8は位置決め機構32によって位置決められている。また、位置決め機構32は内側ケーシング8の外周側に取り付けられた突起部32aと外側ケーシング6の内周側に取り付けられた保持部32b,32cからなり、突起部32aが保持部32b,32cによって挟まれ、円周方向の移動を制限しつつ、半径方向には摺動可能になっている。
位置決め機構32は、外側ケーシング6と内側ケーシング8の間の円周方向に少なくとも3箇所配置されている。これにより、外側ケーシング6や内側ケーシング8に蒸気の温度差や圧力差による変形が生じても、外側ケーシング6や内側ケーシング8の同心を保つことができるとともに、図1で示したブッシュ28とブッシュ26の同心を保つことができる。
なお、前述した位置決め機構32において、突起部32aが外側ケーシング6の内周側に取り付けられ、保持部32b,32cが内側ケーシング8の外周側に取り付けられていてもよく、特に限定されるものではない。
4 内側ボンネット(第1ボンネット)
6 外側ケーシング(第2ケーシング)
8 内側ケーシング(第1ケーシング)
10 蒸気弁
12 主流蒸気入口管
14 蒸気出口管
16 冷却蒸気入口管
18 弁体
20 内側蒸気室
24 弁軸
26、28 ブッシュ
30 外側蒸気室
32 位置決め機構
32a 突起部
32b、c 保持部
40a、40d ガスケット
Claims (7)
- 主流蒸気入口部及び蒸気出口部を有し、主流蒸気通路間に弁体を内包する第1のケーシングと、該第1のケーシングを内包する第2のケーシングを備え、前記第1のケーシングと第2のケーシングの間に空隙を設けて蒸気流路を形成し、該空隙に冷却蒸気を流通せしめる手段を設けた蒸気タービンに供給される駆動用蒸気を制御する蒸気タービン用蒸気弁において、
前記第1のケーシングと第2のケーシングとが異なる耐熱合金で形成されるとともに、
前記弁体を駆動する弁軸は、第1ブッシュを介して前記第1のケーシングの蓋体に摺動自在に支持されるとともに、前記第1ブッシュとは前記弁軸の軸方向に隙間を空けて設けられる第2ブッシュを介して前記第2のケーシングの蓋体に摺動自在に支持されており、
前記第1ブッシュと前記第2ブッシュとの間の前記隙間は、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとの間に形成される前記蒸気流路内に位置していることを特徴とする蒸気タービン用蒸気弁。 - 前記第1ブッシュの内周面と前記弁軸の外周面との隙間を介した前記主流蒸気通路からのリーク蒸気は、前記第1ブッシュと前記第2ブッシュとの間の前記隙間を介して前記第1ケーシング及び前記第2ケーシング間の前記蒸気流路に導かれることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン用蒸気弁。
- 前記第1、第2のケーシングの蓋体が夫々のケーシングと別体に形成されるとともに、前記蓋体を形成する耐熱合金が前記ケーシングと同一若しくは異なる種類の耐熱合金であることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン用蒸気弁。
- 前記第1のケーシング及びその蓋体がNi基合金で形成され、該第1のケーシングの外側に位置する前記第2のケーシング及びその蓋体がCrを含む耐熱合金で形成されることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン用蒸気弁。
- 前記第1、第2のケーシングと、該ケーシングに設けられる各蓋体との間に、蒸気の圧力により密閉性を確保するセルフシール機能を備えた自封式ガスケットを介在させたことを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン用蒸気弁。
- 前記第1と第2のケーシングの間の少なくとも3箇所に、半径方向に摺動可能な位置決め機構が配置されることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン用蒸気弁。
- 前記冷却蒸気は、主流蒸気とは別系統から供給されることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン用蒸気弁。
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