以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
<本発明における外部光源の設定>
本発明の最も好適な実施形態では、建物の室内の明るさの評価に使用する建物外部の光源(外部光源)について、建物(または建物の開口部)を中心とした天球を設定し、該天球から天空光に相当する光量が放射されて建物に到達するものとみなし、これをコンピュータにより演算処理できるものとしている。
ここで、天球とは、地球から見える全ての天体がその球面上を見かけ上移動するとみなした、仮想の球面のことを示し、本発明では、開口部に到達する光量を算出するに際し、当該開口部を有する建物または当該開口部ごとに設定されるものである。
また、天空光とは、直射日光を除いた天空からの光のことをいい、天球から開口部に到達する光として天空光を採用することとしているのは、以下に示す通り、昼光で得られる最低限の光量を見積もることが可能となるからである。
一般に、昼光は非常に明るく、演色性の良い光源であり、建物内の採光の光源として、もっともふさわしいものである。しかし、昼光の放射する光量は、天候、時刻等、光を受け取る場所(方位)により大きく変動する。
ここで、昼光は、直射日光、天空光および地物反射光の3つに大別できる。
直射日光は、建物に当たる場合には、開口部に与えられる光量は大きなものとなり、建物内の明るさを十分確保できるものであるが、方位や時刻に大きく依存しており、建物の採光上、安定な光源とは言い難い。
これに対し、天空光は、太陽光は大気層を透過する時に塵や雲などにより散乱するが、その散乱光のうちで地表面に到達するもの言う。天空光は、天候に依存するものの、方位や時刻には影響を受けずに建物の採光上、安定的な光源となる。
他方、地物反射光は、直射日光や天空光が、周囲の建造物に反射した、いわゆる照り返しの光であり、直射日光や天空光に加算される付加的な光量である、と評価することができる。
このため、本発明では、建物の最低限確保すべき明るさを評価することを目的として、天空光を光量の初期値として使用している。
ただし、本発明は、光源として天空光に限るものではなく、直射光や地物反射光を加味したものを採用することも可能である。
条件全天空照度(1x)
特に明るい日(薄曇、雲の多い晴天)50,000
明るい日30,000
普通の日15,000
暗い日5,000
非常に暗い日(雷雲、降雪中)2,000
快晴の晴天100,000
本発明の実施形態では、上記条件及び全天空照度のうち、一般に降雨などはないものの全天が雲で覆われた様な暗い日の昼光を想定して全天空照度を5,000lx(単位:ルックス)に相当する天球面に輝度が分布していると設定し、この輝度に基づく天空光の光量(単位:ルックス)があると想定し、建物に対する外部光源とした。しかし、いずれの全天空照度を採用してもよい。なお、全天空照度は、何も遮るものがなく、全天空から放射されるものである。
<分割天球面と単位開口部面の設定>
本発明では、天球面を所定の方法で分割し、分割天球面を使用する。分割天球面は、天球面を方位角θからθ+Δθまで、高度hからh+Δhまで、で囲まれた領域を1つの単位として分割したものである。すなわち、分割天球面は、Δθ×Δhの大きさの球面を切り取った領域である。分割天球面は、共通する方位角、および高度(角度)を1つの単位として天球面を分割したものである。
なお、Δの値が小さいほど、建物の開口部に光が到達する状況を詳細に予測することができる。
また、本発明においては、建物に設置される開口部(単位開口部面)ごとに、全天球の分割天球面のうち、どの分割天球面からの光が入射されるのかを検索して抽出する演算処理機能を有する。いわば、建物の室内に存する人が開口部から天球を臨んで視認することができる天球面領域の範囲を抽出することを擬似的に行ったものである。以下に演算処理の詳細を説明する。
<分割天球面の天球座標の設定>
本発明では、建物に設置される開口部(または単位開口部面)ごとに天球座標系に準じた座標系を設定して外部光源の天球上の位置を特定し、その外部光源が開口部(または単位開口部面)に与えられる光量を算出する演算処理が行われる。
外部光源の光は、建物(各開口部)を中心とした天球面の全体から当該建物に向けて放射されるものとみなし、天球面全体を面要素(分割天球面)に分割している。
天球座標系とは、天球面における位置を特定するために用いられる座標系をいう。天球座標では地球表面の測地系(経緯度)と同様の座標格子を用いる。
天球座標系のうち地平座標系は、一般に、基準面を地平線とし、天球の両極を天頂/天底として方位角(θ)と高度(h)とで表現するものである。
方位角(θ)は、真南を0度として真西を90度、真北を180度、真東を270度と表す。
高度(h)は、地平線上を0度として天頂を90度として表す。地平線下にある天体についても、高度をマイナスとして表す。
本発明では、この考え方に準じて、開口部の代表座標を中心点とした天球を設定して、天球面の面要素を座標値(方位角(θ)とΔ高度(h))に応じて分割している。
また、本発明では、建物開口部から仮想の光線(これを仮想天球光線という)を設定し、建物開口部の代表座標点から直接に結ばれる分割天球面を特定する。
より詳しく説明すると、開口部は、単位寸法でその幅や高さを格子状に分割した単位開口部面ごとに上記演算を行うと好ましく、仮想天球光線は、開口部(単位開口部面)の代表座標点からを分割天球面の代表座標点を直結するものである。
分割天球面の座標値は、各仮想天球光線の属性を表す方向データとして、仮想天球光線に格納する。
<開口部に光を到達させる分割天球面の検出>
図1−1、図1−2は、開口部19に対する天球面Sの設定、天球座標の説明のための模式図である。本発明に係るプログラム、該プログラムを用いる装置またはシステムは、開口部19(単位開口部面の代表座標)から天球面Sの全領域を対象として仮想天球光線Lを走査し、開口部19にその光が到達し得る分割天球面sを検索して抽出する。
なお、開口部19は建物の形状データに含まれており、開口部19の座標は、3次元座標軸に基づき、表現されるものである。
仮想天球光線Lは、本発明に係るプログラム、該プログラムを用いる装置またはシステムの演算処理の過程で使用され、開口部の光量値の算出途上で用いられる便宜上のデータであり、上述の通り単位開口部面の代表座標と分割天球面sの代表座標とを結ぶ仮想の線分である。
仮想天球光線Lを設定するのは、後述するように、各単位開口部面20aの分割天球面sから開口部(単位開口部面20a)に到達する光が当該開口部19に到達する間に減衰する程度(遮蔽物やガラスへの進入角度による反射による到達光量の減衰)を評価するためである。
例えば、図1−1において、建物の外壁に設置される通常の窓(開口部19)は地平線に対して垂直になっている。このため、仮想天球光線Lにより当該単位開口部面20aの天球面Sに直結される分割天球面sは、開口部面20の基準点(代表座標値)から法線を立てた方向(地平線に平行方向)を基準(0度)とし、方位角(θ)は、該開口部19の面から建物外部を臨む地平線の左右方向−90度から+90度まで、高度(h)は、地平線の垂直方向に0度から90度の天球面S領域の範囲に属する。
また、図1−2において、建物の屋根に設置される天窓が開口部19である場合は、開口部19は地平線に対して平行になっており、方位角(θ)と高度(h)の基準は、単位開口部面20aの方向そのものとなる。よって、当該単位開口部面20aが該仮想天球光線Lにより直結される分割天球面sは、開口部19の開口部面20を基準として、方位角(θ)が、0度から360度まで、高度(h)が0度から90度までの天球面S領域の範囲に属するものである。
<分割天球面の光量値と仮想天球光線>
そして、上記分割天球面sから単位開口部面20aに到達する光量は、これら単位開口部面20aと分割天球面sを直結する仮想天球光線Lに対応づけて算出するように演算処理される。すなわち、仮想天球光線Lには、単位開口部面20aの代表座標値、仮想天球光線Lの方向を特定するための分割天球面sの代表座標(高度(h)と方位角(θ))、及び各分割天球面sに割り振られた光量値が仮想天球光線Lデータとして格納される。
<太陽高度>
さらに、天空光のみを光源と想定した場合、その光量値は、方位や時刻には依存しないものの、太陽高度には依存性が認められる。すなわち、太陽の位置を地平線近くとする場合には天球面Sの分割天球面sの領域形状は正方形に近いが、太陽の位置を天頂付近とすると分割天球面sの領域はより小さくなり、三角形に近い形状となることに応じて、分割天球面sが放射する光量に差異が生じるという現象がある。
そこで、分割天球面sの座標値である高度に応じて減衰係数を乗じて光量値を算出するのが望ましい。
その場合は、天球座標値の高度の値を使用して光量値を調整する。
上記太陽高度を定義すべく、図2は、太陽高度と減衰係数の関係を示す図である。本発明では、下記の(式1)とで表される光量値の調整をしている。
[数a]
P(h)=Ptop(1+2sinh)/3・・・(1)
但し、h:太陽高度
Ptop:天頂部分での光量
すなわち、仮想天球光線Lに格納する光量値は、初期の光量値にこの減衰係数を乗じたものとして仮定される。
<開口部の光量値>
上記の通り各単位開口面と分割天球面sの間に設定される仮想天球光線Lが保持する光量値のデータを積算することにより、当該単位開口部面20aに到達する光量値を算出することができる。その開口部19を構成する各単位開口部面20aについての仮想天球光線Lの光量値のデータをすべて積算したうえで、これらすべての単位開口部面20aの光量値のデータを合算することにより、天球面から開口部19に到達する光の総量を算出することができる。
<周辺建造物等の影響(遮蔽要素による光量値の減衰)>
図3は、仮想天球光線Lが周辺建物等などに遮られるか否かを示す図であって、周辺等が光の遮蔽要素Bになった場合の建物の開口部19との概略の関係を説明する図である。
当該開口部19に対する遮蔽要素Bとは、開口部19から建物外部空間を臨む際に直接に天球面Sを見通せない様に位置するもので、代表的なものは隣接する他の建造物(隣家の他に倉庫、車庫、高さの異なる地盤)等の周辺建物がある。
また、建物の構成によっては当該建物の庇の部分や上階のベランダ部分、張出し壁等も光の遮蔽要素Bとなり得る。
本発明には、周辺建造物等についてもその形状データと同様にCAD入力手段にて入力して、開口部19から天球面Sに対して放射された仮想天球光線Lと周辺建造物等がデータ上で交差するか否かを検出することにより、当該仮想天球光線Lの開口部19から分割天球面sに向けての進行が遮蔽されているか否かを判定する演算処理手段を有する。
遮蔽物(遮蔽要素)Bとなり得る周辺建造物等の形状データは、本発明に係るシミュレーションの対象となる建物の形状データと共通の3次元座標軸を使用し、各位置座標、屋根面や外壁面の領域の座標を特定している。この形状データは、単位となる面要素データとして保持されている。
よって、演算処理手段は、建物の開口部19と遮蔽物(遮蔽要素)Bとの相対的な位置関係(水平距離、高さ)を演算可能となっており、当該遮蔽要素Bが仮想天球光線Lに交差するか否かを判定することが可能である。
また、当該演算処理手段は、遮蔽要素Bが仮想天球光線Lに交差する場合は、遮蔽物
(遮蔽要素)Bの面要素データを参照し、該面要素データが含む光の透過率や反射率に基づく到達光量の減衰率を読み出して、仮想天球光線Lが遮蔽物と交差しない場合の光量値にその減衰率を乗じた光量値に置き換え、当該仮想天球光線Lに保持させる演算処理を行うことができる。
この仮想天球光線Lは、太陽光が完全拡散光であると想定して設定するものであるが、当該完全拡散光が遮蔽要素Bにより遮蔽されるというよりも遮蔽要素Bの表面で反射され、減衰された光量が開口部19に与えられると想定したものである。
図3の場合、仮想天球光線αと仮想天球光線βは隣接建物に遮られることはないが、仮想天球光線γは遮られている。この場合、仮想天球光線γの光量値は、隣接建物表面で反射された光量が開口部19に与えられるように減衰係数を設定している。
<開口部への光の進入角度による光量値の減衰>
図4は、単位開口部面20aに対しての仮想天球光線Lの入射角度を示す図である。
ここで、入射角度とは、開口部19の表面に対する光の進入角度であって、仮想天球光線Lと単位開口部面20aに対する法線で挟まれる角度をいう。
単位開口部面20aとなるガラスの面の法線方向に対して大きな入射角度を有する光は、その光量値が大きく減衰する。ガラス表面での反射による減衰があるからである。そこで、減衰係数を開口部19への入射角度により特定する。入射角度は、同一の単位開口部面20aでは、仮想天球光線Lの方向は、すべて異なるものになるので、各仮想天球光線Lの光量の減衰定数は当然に仮想天球光線Lごとに変化する。
図4(2)は、光の入射角度φと光量値の減衰係数の関係をグラフにしたものである。
図から明らかな通り、減衰定数の特徴としては、開口部19に対して垂直に光線が照射する場合の角度を0°とし、開口部19に対し平行に光線が照射する場合を90°とした場合について、角度が60°未満の場合には殆ど減衰が見られないものの、角度が60°を越えると、角度が90°に至るまで急速に減衰する。
なお、図4(2)は、下記に示す式(2)及び式(3)に基づくものである。
[数b]
入射角度φ:減衰係数
0°≦φ≦60°:1.0・・・(2)
60°≦φ≦90°:cos(3(φ−60°))・・・(3)
<天球面Sの開口部19への投影による減衰>
天空からの光が開口部19に到達する際には、投影による影響が現れる。開口部19に対して正対する天球部分からの光はほぼ100%到達するが、高度が高い場合や水平角が大きい場合には、開口部19に対して斜めからの入射することになるから、見掛け上減衰したかの様な状況となる。よって、本発明では、光の入射角度を変数として、投影による減衰を考慮するように設定されている。
<ガラスの透過率による減衰>
開口部19のガラス種に応じて光の透過量が変化する。一般に、ガラスは入射する光の80%程度透過する。正確には光源波長に応じて減衰・吸収程度は異なるが、代表的な可視光領域を対象にして減衰程度を与えることになる。よって、本発明では、開口部19のガラス種に応じた光の透過率を変数として光量値を算出している。すなわち、光の透過率に応じて減衰係数を設定して、これを光量値に乗じる処理をしている。
以下、光量値の減衰係数の分布状況についてまとめた。
図5は、天球面Sに対応する高度と方位角を二次元軸の地平線に対する垂直面(単位開口部面20aの左半分(右半分))に見やすくするために展開した有様を説明した図である。ここでは、対称性と通常の開口部設定位置では最大でも天空の半分しか望めないことから1/4の天空を対象としている、
図6〜図9は、図5に基づいて、高度と方位角を二次元軸の地平線に対する垂直面に展開して光量値の減衰係数の分布を見た図である。
図6は、光量値の減衰係数を高度と方位角を二次元軸の地平線に対する垂直面に展開して説明した図である。
図7は、開口部19への入射角による光量の減衰係数を高度と方位角を二次元軸の地平線に対する垂直面に展開して説明した図である。(1)は、光が入射角により反射することを考慮した場合であり、(2)は、光が入射角による投影を考慮した場合である。
図8は、周辺建造物等が隣接して存在し、遮蔽要素Bとなる場合の光量の減衰係数を高度と方位角をそれぞれ縦軸と横軸とする二次元軸の地平線に対する垂直面に展開して説明した図である。
図9(1)は、ガラスの光透過度による減衰係数を表示した図である。
図9(2)は、図6〜図9(1)の各減衰係数を合成して重ね合わせた状況を説明する図である。
<演算処理フローの説明>
図10−1、図10−2は、本発明の請求項1から8に係る光環境解析用プログラムの例を示す演算処理フローチャートである。
開口部19が建物の外部から受ける光量の算出のプロセスを、図のフローチャートを参照して説明する。
まず、SS1においては、建物形状データ、および周辺建造物等形状データの取得をする演算処理のステップである。本発明の係るシミュレーションを行う対象となる建物の形状データ、および周辺建造物等の後述する建物に入射する光の遮る可能性がある形状データ等はいわゆるCADデータである。
SS2においては、CADデータのうち、建物形状データから開口部19である窓(サッシ)、天窓(トップライト)の属性を有する面要素データを検索し、抽出する。或いは、これに加えて建物形状データの屋根面、壁面等の面要素データを検索・抽出する。
そして、SS2にてすべての開口部19、および周辺建造物等の面要素データを検出した後、SS3において、建物形状データの開口部19を単位面要素(単位開口部面20aという)に分割する。単位開口部面20aは、本演算処理フロー後の建物の室内空間の光量計算の演算処理において使用される建物室内空間を構成する単位立方体や単位直方体の面要素と一致させた単位にするのが好ましい。これにより開口部19を後述の光環境解析用プログラム又は装置に用いられる1次光源面として直接的に認識させて、その後の演算処理を円滑に実行することができる。
そして、SS4において、単位開口部面20aに対して、天球面Sを設定する。この天球面Sは、単位開口部面20aの代表座標を中心とした球体である。その半径は、無限大の距離があるもとして捨象されている。
次に、SS5において、天球面Sを分割天球面sに分割する。分割天球面sは、天球面Sの中心を基準にし、方位角Δθが1から5度、高度Δhが1から5度程度に対応する天球面Sを切り取った領域である。
そして、SS6において、単位開口部面20aに対して、仮想天球光線Lが直結可能な分割天球面sをすべて検索・抽出する。この単位開口部面20aから臨むことができる分割天球面sのみが天空光による光(光線)が到達するものと見立てて検出する趣旨である。
なお、単位開口部面20aに対して分割天球面sは、1対多対応の関係となる。
そして、SS6にてすべての開口部19、および周辺建造物等の面要素データを検出し、その単位開口部面20aについての仮想天球光線Lが直結可能な分割天球面sをすべて検出した後、SS7において、SS6で検出した分割天球面sについて仮想天球光線Lをデータとして生成する。すなわち、単位開口部面20aが外向き方向を認識して、その単位開口部面20aの代表座標点(面要素の下辺の中心点)から分割天球面sの代表座標点(面要素の頂点の1つ)に対して直線(これを光線という。)を結んで、仮想天球光線データとして、コンピュータメモリ上に記憶する(これを光線の走査という)。
なお、単位開口部面20aに対する分割天球面sは、1対多対応であるから、単位開口部面20aに対する光線データも1対多対応である。他方、分割天球面sに対する光線データは、1対1対応である。
そして、SS8において、分割天球面sの座標値(方位角と高度)、および当該分割天球面sに割り振られた光量値を初期値として算出し、1次的に各仮想天球光線Lに格納(仮格納)しておく。
SS9〜SS13は、各仮想天球光線Lに仮格納した初期値に光の減衰要素の係数を乗じて光量値の値を減衰する一連の処理(光量値減衰処理)である。なお、SS9〜SS13の順番には制約はなく、本実施例に限られるものではない。
SS9においては、分割天球面sの初期の光量値に高度に応じた減衰係数を乗じる処理を行う。
SS10においては、分割天球面sの光量値に開口部19表面への入射角度による減衰係数を乗じる処理を行う。
なお、入射係数は、開口部面20に対する光の反射や投影の割合を反映したものである。
SS11においては、その単位開口部面20aに対する周辺建造物等の遮蔽物Bが存在するかのチェックのために行うものであり、仮想天球光線Lの途中に交差する周辺建造物等の面要素の存在を検出する処理、なお、交差する面要素がないと判定された仮想天球光線Lは、次のSS12をスキップして、SS13に移る。
SS12においては、交差すると判定された仮想天球光線Lについて、その面要素データに格納されている遮蔽に関する減衰係数を読み出して、分割天球面sの光量値に遮蔽による減衰係数を乗じる処理を行う。
SS13において、分割天球面sの光量値に開口部19の光透過材料に応じた係数を乗じる処理を行う。
これら一連の光量値減衰処理が終了すると、SS14において、各仮想天球光線Lに仮格納された初期光量値について、光量値減衰処理後の光量値に置換して格納する処理を行う。
そして、SS15において、単位開口部面20aから分割天球面sに走査された全仮想天球光線Lの光量値を積算して、天球面Sから当該単位開口部面20aに対して到達する全ての光量値として、その値を単位開口部面20aに格納する。
SS16は、1つの開口部を構成する単位開口部面20aのすべてが、上記SS4〜SS15の処理を終えているかをチェックする処理、SS17は、そのシミュレーションの対象になっている建物の開口部19すべてがSS3〜SS15の処理を終えているかどうかをチェックする処理である。
本例では、SS9〜13の光量値減衰処理を含めて、開口部19に外部光源から到達する光量を格納したが、例えば、開口部19の到達光量値は、各減衰係数とともに初期値のまま格納しておき、室内処理のプロセスで、すなわち、開口部19を1次光源として室内側の1次到達面に到達させる処理において、減衰係数を乗じる処理をすることも可能であり、このような場合も本発明に係る技術的思想の範囲内である。
本実施形態の光環境解析用プログラムの構成は以上であって、次に、図11〜図17により、上述の如き光環境解析用プログラムを用いて当該開口部19からの光による室内の光環境を予測する光環境解析用コンピュータシステムである光環境解析システムの実施形態を具体的に説明する。
図11は本発明に係る光環境解析用プログラムを実行する光環境解析システムのハードウェアの一例を示す図である。
図12は本発明に係る光環境解析用プログラムを搭載した光環境解析システムの制御系の構成を説明するブロック図である。
図13(a),(b)は評価対象の建物の間取りの一例をCAD図面により表現する斜視図及び平面図である。
図14−1、図14−2は本発明に係る請求項9〜11の光環境解析用プログラムによる演算処理の一例を示すフローチャートである。
図15は、図14−1、図14−2の演算処理に本発明の請求項1から8に係る光環境解析用プログラムを組み合わせた場合の例を示すである。
図16は解析対象となる建物の形状データの一例を示す図である。
図17は評価対象の建物の解析空間のイメージ図である。
図18は評価対象の建物の内部空間を構成する単位立方体と面要素との関係を示す図である。
図19は光源面要素と光線到達候補面との座標軸上の大小関係から可視判断を行う様子を示す図である。
図20は光源面要素から放射された光線が到達面要素に到達する様子と、途中に他の面要素で遮られる様子を示す図である。
図21(a)〜(c)は光源面要素から放射された光線が到達面要素に到達するか否かを判断する原理を説明する概念説明図である。
図22は光源面要素が座標軸のX軸方向壁要素で到達面候補もX軸方向壁要素の場合で形態係数の求め方を説明する概念説明図である。
図23は光源面から複数の到達面に放射光線が到達し、光量値が与えられる様子を示す図である。
図24は、複数の光源面からの放射光線が同じ到達面に到達し、光量値が加算される様子を示す図である。
図25は、面要素に到達した光線が放射することで再度他の到達面に光線が到達する様子を示す図である。
図11及び図12において、1はパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)により構成される制御装置(CPU)であり、2は表示手段となるディスプレイ、3は入力手段となるキーボード、4は入力手段となるマウス、25は出力手段となるプリンタである。5は建物情報取得手段となる建物情報取得部であり、建物形状情報記憶手段となる建物形状情報データベース(以下、「建物形状情報DB」)7に記憶して格納された各種の建物の形状データから評価対象の建物の形状データを取得する。建物形状データとしては、屋根、外壁27、ベランダ、天井、間仕切壁26、床28、開口部19、建具29、および洗面台、キッチンセット、ユニットバス、家具、または家庭電化製品等の器物30の種々の形状データが格納されている。
なお、本実施形態には、本発明の請求項1から8に係る光環境解析用プログラムが搭載され、5は建物情報取得手段となる建物情報取得部は、建物周辺情報を取得する機能を担う部分である。また、建物形状情報記憶手段となる建物形状情報DB7には、周辺建造物等の形状情報を含んでいる(なお、図12では、周辺建造物等情報取得部51として、建物周辺情報に関する建物情報取得手段を建物情報取得手段5と区別して表記し、また、周辺建造物等情報DB71として、建物周辺情報に関する形状情報記憶手段を建物形状情報DB7と区別して表記しているが、本発明に係る請求項4の発明はこのような場合も含む。)。
6は面要素データ構成手段となる面要素データ構成部であり、建物情報取得部5により取得した建物の形状データに基づいて、該建物の形状データで構成される内部空間を単位空間に対応する単位立方体または単位直方体に分割し、該単位立方体または単位直方体の各面要素を建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面2 0と、該開口部19以外の部位に対応する面要素である開口部以外面と、に区分して、座標及び属性データを付与して面要素データに格納する。
なお、本実施形態には、本発明の請求項1から8に係る光環境解析用プログラムが搭載され、面要素データ構成部6は、開口部検出手段の機能を担う部分である(なお、図12では、開口部検出手段を開口部検出部61として別途表記した。)。
8は光源面光量値設定手段となる光源面光量値設定部であり、建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面20を光源の面要素となる1次光源面として認識すると共に、その開口部19以外の面を1次光源面から光線が到達し得る面要素である1次到達面として認識して、建物外部から該第1次光源面に到達する光量値を該1次光源面に係る面要素データに格納する。
なお、本実施形態には、本発明の請求項1から8に係る光環境解析用プログラムが搭載され、光源面光量値設定部8は、開口部光量値設定手段の機能を担う部分である(なお、図12では、開口部光量値設定手段を開口部光量値設定部81として別途表記した。)。
9は仮想光線ベクトル設定手段となる仮想光線ベクトル設定部であり、1次光源面から1次到達面に対して光線ベクトル22を設定する。
10は光線到達可否判定手段となる光線到達可否判定部であり、仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が通過する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のみを判定対象として、該仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22を辿る途中において、該光線ベクトル22が1次光源面及び1次到達面以外の他の面要素に交差するか否かを探索することにより、該1次光源面から目的の1次到達面に光線ベクトル22が到達可能か否かを判定する。
11は到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部であり、光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が1次光源面から目的の1次到達面に到達可能であると判定された場合に、該1次到達面について、光源面光量値設定部8により設定された建物外部から1次光源面に到達した光量値に該1次光源面の開口部透過率を乗じた光量値を該1次光源面の初期放射光量値として、光線ベクトル22が交差する該1次光源面及び該1次到達面以外の他の面要素の透過率を考慮して該1次光源面から該1次到達面に到達する光量値を算出し、該光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が該1次光源面から目的の1次到達面に到達不可能であると判定された場合に、該1次光源面から次候補の1次到達面に対して、仮想光線ベクトル設定部9による前述の処理、及び光線到達可否判定部10による前述の処理を順次実行して、該光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が該1次光源面から目的の1次到達面に到達可能であると判定された該1次到達面について、光源面光量値設定部8により1次光源面に付与された光量値を該1次光源面の初期放射光量値として、光線ベクトルが交差する該1次光源面及び該1次到達面以外の他の面要素の透過率を考慮して該1次光源面から該1次到達面に到達する光量値を算出する。
12は到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部であり、到達面光量値算出部11により、前述の処理で算出された1次光源面から1次到達面に到達する光量値を該1次到達面に係る面要素データに格納する。
また、到達面光量値格納部12は、1次到達面に係る面要素データの光量値に、次候補の1次光源面から付与された光量値を加算し、該1次到達面に係る面要素データを更新して格納する。
また、到達面光量値格納部12は、前述の処理で探索された1次光源面から次候補の1次到達面に対して、仮想光線ベクトル設定部9による前述の処理、光線到達可否判定部10による前述の処理、及び到達面光量値算出部11による前述の処理を順次実行して、候補となる全ての1次到達面に対して、前述の処理で算出された1次光源面から候補となる全ての1次到達面に到達する光量値を、該候補となる全ての1次到達面に係る面要素データに格納する。
また、到達面光量値格納部12は、候補となる全ての1次到達面に係る面要素データの光量値に、次候補の1次光源面から付与された光量値を加算し、該候補となる全ての1次到達面に係る面要素データを更新して格納する。
また、建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面20を光源の面要素となる1次光源面とし、該1次光源面から目的の1次到達面に光線が到達した後、該1次到達面に光線が反射する場合に該1次到達面を2次光源面とし、該2次光源面から他の目的の2次到達面に光線が到達した後、該2次到達面に光線が反射する場合に該2次到達面を3次光源面として順次設定したn(n=1,2,3,・・・)次光源面から目的のn(n=1,2,3,・・・)次到達面に光線が到達した後、該n次到達面からそのn次到達面以外の到達面に向かって光線が反射する場合において、前述の処理では光源面光量値設定部8により、n次到達面を(n+1)次光源面として認識すると共に、該n次到達面以外の到達面を(n+1)次光源面から光線が到達し得る(n+1)次到達面として認識して、該n次到達面に係る面要素データが格納する光量値を(n+1)次光源面の光量値として設定し、前述の処理では仮想光線ベクトル設定部9により、(n+1)次光源面から(n+1)次到達面に対して光線ベクトル22を設定し、前述の処理では光線到達可否判定部10により、仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が通過する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のみを判定対象として、仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22を辿る途中において、該光線ベクトル22が(n+1)次光源面及び(n+1)次到達面以外の他の面要素に交差するか否かを探索することにより、(n+1)次光源面から目的の(n+1)次到達面に到達可能か否かを判定し、前述の処理では到達面光量値算出部11により、光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が(n+1)次光源面から目的の(n+1)次到達面に到達可能であると判定された該(n+1)次到達面について、n次光源面からn次到達面に到達した光量値に該n次到達面の拡散放射率を乗じた光量値を(n+1)次光源面の初期放射光量値として、光線ベクトル22が交差する該(n+1)次光源面及び該(n+1)次到達面以外の他の面要素の透過率を考慮して該(n+1)次光源面から該(n+1)次到達面に到達する光量値を算出し、前述の処理では到達面光量値格納部12により、(n+1)次到達面または候補となる全ての(n+1)次到達面に係る面要素データの光量値に、次候補の(n+1)次光源面から付与された光量値を加算し、該(n+1)次到達面または候補となる全ての(n+1)次到達面に係る面要素データを更新して格納する。
13は最終的光量値格納手段となる最終的光量値算出部であり、前述の光源面光量値設定部8による前記処理、仮想光線ベクトル設定部9による前記処理、光線到達可否判定部10による前記処理、到達面光量値算出部11による前記処理、及び到達面光量値格納部12による前記処理を順次実行して、(n+1)次光源面から(n+1)次到達面に加算される光量値が所定の基準に達した場合の光量値を該面要素の最終的光量値として面要素データに格納する。
光線到達可否判定部10による前述の処理では、n(n=1,2,3,・・・)次光源面からn(n=1,2,3,・・・)次到達面への光線到達可否を判定する際に該n次光源面と、該n次到達面とが、互いに座標軸上の大小関係から可視出来るか否かを判定する演算処理を含む。
本実施形態の場合、面要素データ構成部6により作成される建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体は、建物の設計モジュール寸法に基づく単位立方体または単位直方体で構成される。
14は光量値表示手段となる光量値表示部であり、評価対象の建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の各面要素の面要素データに格納された最終的到達光量値に基づいて、該建物の内部空間の単位空間毎の最終的到達光量値をディスプレイ2上に表示する。
また、光量値表示部14は、評価対象の建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を基にして格子状に分割した領域の各々に対して該建物の内部空間の単位空間毎の最終的到達光量値をディスプレイ2上に表示する。
15は測定用面要素設定手段となる測定用面要素設定部であり、評価対象の建物の形状データの座標軸上の所定の位置に測定用面要素を設定する。
16は明るさ演算手段となる明るさ演算部であり、最終的光量値格納部13により格納された全ての面要素の最終的光量値と、建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面20を光源の面要素となる1次光源面に係る面要素データに格納された光量値とを光源として、測定用面要素設定部15により設定された測定用面要素上の明るさを演算する。
17は明るさ表示手段となる明るさ表示部であり、明るさ演算部16により演算された測定用面要素上の明るさを表示する。
測定用面要素設定部15により設定された測定用面要素は、評価対象の建物の形状データで構成される床28面から一定の高さの水平面上に設定される。
以下、図14−1、図14−2及び図15に示すフローチャートに沿って、本発明に係る光環境解析システム及びそれに搭載された光環境解析用プログラムの処理動作について説明する。
先ず、図14−1のステップS1において、建物情報取得手段となる建物情報取得部5により建物形状情報DB7に格納された評価対象の建物の形状データを取得する。ここで、建物の形状データとは、建物の間取りに基づく、天井、壁、床28、器物30、建具29要素及び開口部19要素等の各部位をいう。器物30とは冷蔵庫等の家庭電化製品や家具をいう。
入力手段となるキーボード3やマウス4により入力して、建物形状情報DB7に記憶された特定の建物CAD(ComputerAidedDesign;コンピュータによる支援設計製図)データを読み出し、評価に必要な建物の間取りに基づく部位の形状データのみを抽出することが出来る。
また、入力手段となるキーボード3やマウス4により入力し、記憶手段となるメモリ18に一時記憶したCADデータから建物情報取得部5により一時記憶した建物の形状データのみを抽出することも可能である。
図13(a)は、建物のCADデータを表示したものである。これらのデータから図13(b)に示すように建物の形状データとして、屋根、外壁27、開口部19、天井面、間仕切壁26、床28面、建具29、家具等を抽出する。
次に図14−1のステップS2において、建物の形状データで構成された評価対象の建物内部空間を、図17に示すように、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体に分割する。次にステップS3において、建物の形状データを単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の建物の形状に対応付けて、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を構成している面要素の集合として再構成する。
次にステップS4において、図16及び図17に示す建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面20と、該開口部以外の部位に対応する面要素である開口部以外面と、を区分して面要素を開口部面20を光源の面要素となる1次光源面と、開口部以外面を1次光源面から光線が到達し得る面要素である1次到達面とに区分する。
ステップS4から図15のS41からS49の演算処理フローに分岐する。図15は、図14−1、図14−2の光環境解析システム及びそれに搭載された光環境解析用プログラムの演算処理フローであり、先述した図10−1のSS1から図10−2のSS17の演算処理フローの応用形である。開口部19が外部光源から光量をいかに取得するかの演算処理フローが示されている。
ステップS4の開口部面と開口部以外面との区別に基づいて、開口部面が存在するか(ステップS41)を確認する。開口部面が存在すれば、単位開口部面である開口部面の面要素から天球面Sを設定し、該天球面Sを分割天球面sに分割する。(ステップS42)、次に各仮想天球光線を設定する(ステップS43)。
ここで、仮想天球光線を網羅したかどうか。すなわち、その単位開口部面からその単位開口部面が臨むことができる天球面の領域に属する分割天球面のすべてに仮想天球光線を設定したかどうかを確認して、未処理のものがあれば、さらに仮想天球光線を設定する(ステップS44)。次に一連の減衰処理を行う。仮想天球光線の高度に応じた係数を乗じる(ステップS45)。仮想天球光線の開口部19の表面への入射角度に応じた減衰係数を乗じる(ステップS46)。
仮想天球光線が自身の建物及び周辺建物に遮られるか否かに応じた減衰係数を乗じる(ステップS47)。開口部の光透過材料に応じた減衰係数を乗じる(ステップS48)。
そして、単位開口部面である開口部面の面要素に仮想天球光線の光量を積算する(S49)。
さらにステップS44に戻り、仮想天球光線を網羅したかどうかさらに確認する。
以上のような繰り返し、単位開口部面の光量値をデータとして格納していく。
次にステップS5において、各面要素ごとに面要素光量値情報記憶手段となる面要素光量値情報データベース(以下、「面要素光量値情報DB」という)21に面要素データを格納する。
上記ステップS1〜S5は、面要素データ構成手段となる面要素データ構成部6の演算処理により実行される。
ここで、面要素データ構成手段となる面要素データ構成部6は、図17に示すように、建物の形状データで構成される内部空間を単位空間に対応する単位立方体または単位直方体に分割し、該単位立方体または単位直方体の各面要素を、図16に示す建物の形状データの開口部19に対応する面要素である開口部面20と、開口部19以外の部位に対応する面要素である開口部以外面とに区分して、座標及び属性データを付与して面要素光量値情報DB21に記憶された図29(a)に示す各面要素データに格納する。
本実施形態では、建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体は、建物の設計モジュール寸法に基づく単位立方体または単位直方体に再構成したものである。
図16及び図17は、面要素データ構成部6により建物の形状データで構成される内部空間を単位空間に対応する単位立方体または単位直方体に再構成した一例である。即ち、建物内部空間の光環境を解析する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を再定義するために、例えば、建物の内部空間を図7の様に同一の単位立方体の組合せとして再構成する(図14−1のステップS3)。
更に単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を構成する各面要素について建物の形状データのうち、天井、床28、壁(外壁27、間仕切壁26)、開口部19、建具29表面、およびキッチンセット、洗面台、ユニットバス、家具、または家庭電化製品等の器物30その他の光線の通過を遮る要素と、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を構成する各面要素の位置座標の重なりを検査して、天井、壁、床28等の開口部19以外に対応する面要素(以下、「開口部以外面」という)と、開口部19に対応する面要素(以下、「開口部面20」という)とに区分してそれぞれの属性データを与える(図14−1のステップS4)。
本実施形態では、座標軸上の平面軸(X軸、Y軸)及び鉛直軸(Z軸)の3方向の座標を建物の平面モジュール寸法を基準にしてその内部空間を単位空間に対応する単位立方体または単位立方体に分割する。ここで、モジュール寸法は、建物の設計において基準として用いる単位寸法をいい、建物の柱間等の各部の寸法は、この単位寸法の倍数で統一して設計される。
従って、建物の内部空間を単位空間である単位立方体または単位直方体に分割する場合には、建物の平面モジュール寸法に合わせて行うのが好ましい。例えば、モジュール寸法が305mmの場合は、座標軸上のX軸、Y軸及びZ軸方向について一辺が305mmの立方体を単位空間に対応する単位立方体として分割することが出来る。モジュール寸法が500mmの場合は、座標軸上のX軸、Y軸及びZ軸方向について一辺が500mmの立方体を単位空間に対応する単位立方体として分割することが出来る。
また、上記単位空間に対応する単位立方体に分割した場合は、天井高によっては、全て平面モジュール寸法を適用しても、Z軸方向が整数値に割り切れない場合もある。この場合は、単位立方体の代わりに鉛直軸(Z軸)方向について平面モジュール寸法以外の別の単位に分割して均等な容積の立体(単位直方体)に分割しても良い。
図18は、建物の設計に用いられる平面モジュール寸法を基準寸法にして、座標軸上のX軸、Y軸、Z軸方向(3次元方向)に格子状の基準線を引き、これら基準線同士により形成されるグリッドに対応した建物の内部空間の単位空間である単位直方体を示したものである。
このようにして構成された単位立方体または単位直方体の位置は該単位立方体または単位直方体の各頂点のうちで空間軸に関して最も大きな座標値を持つ点を代表点とし、この代表点の位置を単位立方体または単位直方体の位置として認識する。具体的には、図18に示されるように原点から一番遠い位置にある単位直方体の頂点を代表点(i,j,k)とする。
また、単位立方体または単位直方体は6つの面を有している。即ち、単位立方体または単位直方体は、座標軸上のX軸、Y軸、Z軸方向の3つの空間軸に垂直な面をそれぞれ2面ずつ、全体で6面を有している。
そして、X軸、Y軸、Z軸方向の何れか同じ空間軸についての2面のうち、空間軸に対して外側(正方向)になる面要素のみを認識することにより、その位置を単位立方体の位置指定整数値で指定する。
即ち、図18に示されるように、1つの単位空間に対応する単位立方体または単位直方体について、X軸方向面要素、Y軸方向面要素、及びZ軸方向面要素の3つの面要素の位置座標を特定する。これにより、単位立方体または単位直方体は6面全てのデータを持つ必要がなく、演算処理の手順を削減することが出来、高速処理に寄与する。
次に、単位立方体または単位直方体のX軸方向面要素、Y軸方向面要素、Z軸方向面要素について、建物の形状データとの位置座標の重なりから開口部面20と、開口部以外面とに区分して、それぞれの建物の形状データを引用して属性データを与える。
具体的には、(1)開口部19に重なる面要素である場合、(2)天井、壁(外壁27、間仕切壁26)、床28等の開口部19以外の部位に重なる面要素である場合、(3)何も形状データがない場合(nullデータ)、以上の3つの属性の何れであるかを判別して属性データ(部位属性)を付与する。このとき、各部位は光の透過率である部位透過率も属性データとして付与する。特に開口部19についてはガラスの透過率(開口部透過率)が付与される。
また、X軸方向面要素、Y軸方向面要素、及びZ軸方向面要素は、それぞれX,Y,Zの各方向の空間軸に対して表側(座標軸の正方向側)と裏側(座標軸の負方向側)の2面が存在するところ、2面をそれぞれ別個の面として扱う必要があるために、(1)表、(2)裏、の何れであるかを判別して属性データ(面属性)が付与される。後述するように、各面要素同士が互いに座標軸上の大小関係から可視出来る位置関係にあるか否かを判定するために格納される面要素データである。
更に解析のための演算処理や後述する表示のため演算処理において各面要素ごとに光量値データを持つことが必要である。このため、光源面光量値設定手段となる光源面光量値設定部8によりX軸方向面要素、Y軸方向面要素、Z軸方向面要素の各面要素に対して、代表する1つの光量値データが格納される。即ち、各面要素ごとに代表座標に対する代表光量値、または代表到達光量値のデータが対応している。
以上をまとめると、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の各面要素データは、図29(a)に示すように、[部位属性(床F、壁W、天井C、その他建具、器物等の開口部以外、開口部19等の開口Wi),部位透過率,面要素方向(X、Y、Z),代表点座標値(X座標値,Y座標値,Z座標値(例えば図18のi,j,k)),面属性(表、裏),光量値(光源光量値、到達光量値)] というデータ構造を構成する。
こうした手順を経て、評価解析の対象となる建物の内部空間を独自のデータ構造を有する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の面要素で再構成し、図29(a)に示すデータ構造からなる面要素データを使用して、各面要素の位置、各面要素がどの方向に面しているかを直角座標系と整数座標値で表現出来る。
これにより後述する仮想光線ベクトル22が面要素で遮られるか否かを判定する際に面要素の位置に整数座標値を使用するために曖昧な比較・判断が発生せず、信頼性が高く計算手順を簡便なものにすることが出来る。
次に、図14−1のステップS6において、開口部面20を光源の面要素となる1次光源面とし、開口部19以外面を該1次光源面から光線が到達し得る面要素である1次到達面として、該1次光源面から1次到達面に到達する到達光量値を演算する。
即ち、図14−2のステップS7に進んで、1次光源面から光線が到達する候補となる1次到達面を探す。先ず前処理として光源面光量値設定手段となる光源面光量値設定部8により、図17に示す開口部面20を、光源の面要素となる1次光源面として認識すると共に、図16に示す開口部19以外の面を1次光源面から光線が到達し得る面要素である1次到達面として認識して、建物外部から該第1次光源面に到達する光量値を該1次光源面に係る面要素データに格納する。
具体的には、図16に示す開口部19の属性である面要素は、図17に示す開口部面20として抽出されて1次光源面として認識される。本実施形態では、全天空照度5000ルックスに相当する光量値を建物の開口部19に到達する光量値とみなし、該開口部19を構成する各面要素の光量値として、面要素データに格納する演算処理が行われる。(図15参照)この光量値は、1次光源面は、建物内部空間の各1次到達面に対して、放射する光量値の初期値であるから、外部から到達した値そのものではなく、開口部透過率(主にガラスの透過率に相当する)を乗じた値が用いられる。
開口部19に到達する光量値の設定方法としては、例えば特開2000−8476号公報に示された様な方法で光量値を設定する方策も想定出来、また、本発明に係る第一から第八の外部g光量値算出プログラムを用いることができる。尚、全天空照度とは、何も遮るものがなく、全天空を望める水平面を受照面とする天空光照度である。また、天空光照度とは、天空光による照度であり、天空光とは、太陽以外の天空からの光である。全天空照度5000ルックスに対応する天空光の状況は直射日光がなく、昼間のかなり薄暗い曇天に対応する。
また、開口部19以外の床28、壁(外壁27、間仕切壁26)、天井等の面要素は、開口部以外面として抽出されて1次到達面として認識される。また、部位が何もない(nullデータ)である場合は、到達面の候補から除外される。
次にステップS8において、光線到達可否判定部10による演算処理が、1次光源面から1次到達面への光線到達可否を判定する際に該1次光源面と、該1次到達面とが、互いに可視出来るか否かを判定し、可視出来なければ前記ステップS7に戻って次候補の1次到達面を抽出する。これにより、光源面から光線が到達することが当然ありえない面要素を光量計算から事前に排除することが出来、計算時間の短縮が出来る。
ここで、光線到達可否判定部10は、n(n=1,2,3,・・・)次光源面からn(n=1,2,3,・・・)次到達面への光線到達可否を判定する際に該n次光源面と、該n次到達面とが、互いに座標軸上の大小関係から可視出来るか否かを判定する。
具体的には図19に1次光源面と1次到達面となる各面要素の関係の一例を示す。図19において、1次光源面と1次到達面の相互の位置関係は各面要素の座標値(単位立方体の代表点座標値)と各面要素のデータの面属性(表、裏)を参照して判定する。
これにより、相互に可視出来る関係にあるか否か(可視性)を単純な座標値の大小関係で判断することが出来、且つ座標値の比較が整数値で行うことが出来るために曖昧な判断を伴わずに信頼性に高い判定が出来る。
例えば、図19の「光源面α」のデータ構造は、[開口部,透過率100%,X,a,b,c,表,光量値]である。即ち、この光源面αの部位属性は開口部19であり、面要素方向はXであり、代表点の座標値は、X軸方向はa、Y軸方向はb、Z軸方向はcであり、面属性は表(座標軸上の正方向側)である。
これに対して「到達面A」のデータ構造は、部位属性は壁であり、面要素方向はYであり、代表点の座標値は、X軸方向はd、Y軸方向はe、Z軸方向はfであり、面属性は表(座標軸上の正方向側)である。
この場合のX、Y、Z座標値の関係は、X軸方向では、到達面Aの座標値d>光源面αの座標値a、Y軸方向では、到達面Aの座標値e<光源面αの座標値b、Z軸方向では、到達面Aの座標値cと光源面αの座標値fとは任意である。X軸方向について到達面dが光源面αよりも座標値が大であるから「光源面α」から「到達面A」は座標軸上の大小関係から「可視出来る」と判定される。
また図19に「他の面要素B」として示している他の到達面として想定した面要素は、部位属性はnull、代表点の座標値は、X軸方向はg、Y軸方向はh、Z軸方向はiであり、面属性は表(座標軸上の正方向側)である。
この場合の座標値の関係はX軸方向について、想定した到達面Bの座標値g<光源面α座標値aとなっており、「光源面αから「他の面要素B」は座標軸上の大小関係から「可視出来ない」と判定し、光源面から光線が到達することが当然ありえない面要素として認識する。
このようにして、前記ステップS8で光源面から到達候補面を可視出来ると判定された場合にはステップS9に進む。また、前記ステップS8で光源面から到達候補面を可視出来ないと判定された場合には前記ステップS7に戻り次の到達面候補に関して、上述と同様に可視出来るか否かの判定を行う。
次にステップS9では、仮想光線ベクトル設定手段となる仮想光線ベクトル設定部9により、1次光源面から1次到達面に対して光線ベクトル22を設定する。
そして、ステップS10〜S12では、光線到達可否判定手段となる光線到達可否判定部10により、仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が通過する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のみを判定対象として該光線ベクトル22を辿る途中において該光線ベクトル22が1次光源面及び1次到達面以外の他の面要素に交差するか否かを探索する探索処理を行う。
図20は1次光源面と1次到達面との関係のうち、両方の面要素の中心点同士を直線で結んだ仮想の光線ベクトル22を設定して、1次光源面から目的の1次到達面に光線ベクトル22が到達可能か否かを判定する一例を示す。図20では、1次光源面αから放射される光線ベクトル22の始点から終点を辿る途中において他の面要素によって遮られる面要素Aの場合と、遮られない面要素Bの場合の関係を示す。
1次光源面αから面要素Aへ向かった光線ベクトル22は、その始点から終点を辿る途中において他の面要素で構成された障害物23で遮られており、光線ベクトル22が面要素Aに到達出来ない。
ここで、障害物23は、天井、間仕切壁26、建具29、または家具若しくは家庭電化製品等の器物30の建物の形状データにより部位属性(開口部以外)が付与された面要素である。
一方、1次光源面αから1次到達面となる面要素Bへ向かった光線ベクトル22は途中他の面要素で遮られることもなく到達することが出来る。
図21は、光線到達可否判定部10により、仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が通過する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のみを判定対象として該光線ベクトル22を辿る途中において該光線ベクトル22が1次光源面及び1次到達面以外の他の面要素に交差するか否かを探索する探索処理を説明する図である。図11により面要素同士に設定した仮想の光線ベクトル22の始点から終点を辿る途中において該光線ベクトル22を遮断するか否かの判定について詳細に説明する。
或る1次光源面の探索処理は、X軸方向面要素、Y軸方向要素面、Z軸方向面要素の3方向について処理を行うが、ここでは、便宜上、1次光源面、1次到達面、及び途中に光線ベクトル22を遮断する他の面要素について、全てX軸方向面要素である場合について説明する。
先ず、探索処理の前処理として探索対象となる単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を抽出する。具体的には、光線ベクトル22が通過する単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のみを抽出する。これにより、光線ベクトル22が通過しない単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の探索処理を省略することが出来、演算処理速度の高速化に寄与する。
次に、探索処理の本処理を行う。その光線ベクトル22を辿る途中には、以下の数1式で示される増分で表現される座標値に対応するX軸方向面要素が存在する可能性がある。ここで、以下の数1式における(xs,ys,zs)は探索の始点である光源面の座標値(代表点座標値)であり、(xt,yt,zt)は探索の終点である到達面の候補となる面要素の座標値(代表点座標値)、ΔX,ΔY,ΔZはそれぞれX軸,Y軸,Z軸での座標値の増分である。また、Int(数式)は()の中の数式の結果を整数値に変化させる関数である。
〔数1〕
ΔX=1
ΔY=Int(ΔX×(yt−ys)/(xt−xs))
ΔZ=Int(ΔX×(zt−zs)/(xt−xs))
尚、本実施形態では単位立方体は建物の設計モジュール寸法に合わせているので、X軸方向の面要素を演算処理するためにX軸方向の座標値増分トXに単位は1モジュール(305mm)と定義する。
そうすると、探索処理におけるX軸方向面要素の座標値(X,Y,Z)は以下の様に変化してゆく。即ち、図21(a)に示すように、探索処理の最初に通過する単位立方体のX軸方向面要素の座標値は以下の数2式で表される。ここで、到達面の座標値は、X=xt、Y=yt、Z=ztとする。
〔数2〕
X=xs+1
Y=ys+Int(1×(yt−ys)/(xt−xs))
Z=zs+Int(1×(zt−zs)/(xt−xs))
また、図21(b)に示すように、次に通過する単位立方体のX軸方向面要素の座標値は以下の数3式で表される。
〔数3〕
X=xs+2
Y=ys+Int(2×(yt−ys)/(xt−xs))
Z=zs+Int(2×(zt−zs)/(xt−xs))
また、図21(c)に示すように、その次に通過する単位立方体のX軸方向面要素の座標値は以下の数4式で表される。
〔数4〕
X=xs+3
Y=ys+Int(3×(yt−ys)/(xt−xs))
Z=zs+Int(3×(zt−zs)/(xt−xs))
このように、到達面に至るまで、1モジュールずつ探索処理を行う。ΔX,ΔY,ΔZで逐次増加する座標値を持つX軸方向面要素が存在すれば、光線ベクトル22の透過の障害となる面要素が存在すると判定する。
そして、図14−2のステップS11において、光線ベクトル22の透過の障害となる面要素が存在すると判定した場合には、ステップS12の判定に移る。即ち、当該面要素の部位属性を参照して、当該面要素が一部または全部透過(0%<透過率τ≦100%)するか、光線ベクトル22を完全に遮断する(透過率τ=O%)かを検討する。
例えば、面要素の部位属性がガラス入りの建具(透過率τ=80%)の場合、前記ステップS10に戻り、同じ光線ベクトル22の探索処理を継続する。この場合、面要素データから引用した光量値に透過率80%を掛けて光量値を減じる処理がなされる。このような演算処理により光線ベクトル22の始点から終点まで探索処理を終えると、次候補の到達面に対する光線ベクトル22の探索処理を行う。
また、面要素の部位属性が壁である場合、光線ベクトル22を完全に遮断する(透過率τ=0%)ので、前記ステップS7に戻って、次の光線ベクトル22(同一の1次光源面から次候補の1次到達面へ)の探索処理を行う。
このような探索処理においても面要素データの座標値は整数値で表現されるために判定に特段の処理は不要で曖昧な判定とはならない。
このステップS7〜S12は一つの1次光源面からの光線が到達する可能性のある全ての1次到達面に対して実行される。更に、一つの1次光源面の検討が終了すると、ステップS7に移り、次候補の光源面について逐次演算処理を行い、全ての1次光源面要素について演算処理を行う。
また、床、壁等の開口部以外の面要素であっても、到達面に光が到達した後、該到達面は、光を一部吸収して、光量値が減衰するものの再び放射する(本発明ではこれを「反射」という)光量値を持つ。即ち、その放射光量値を有する光源面として認識される。
このように、ステップS7〜S12に示す探索処理を順次行い、到達面に至った場合には、即ち光線が遮られることが無いと判定され、演算処理は、次のステップS13以降に進む。
この手順であれば、前述した従来例のような光源面要素からの放射を模擬した多量の光線の設定する演算処理が不要であり、安定な計算が実現出来る。
次に光量値を算出するステップS13〜S15に移行する。ここで、到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部11は、光線到達可否判定手段となる光線到達可否判定部10によって、光源面光量値設定部8により設定した光線ベクトル22が1次光源面から目的の1次到達面に到達可能であると判定された場合に、該1次到達面について、光源面光量値設定部8により設定された建物外部から1次光源面に到達した光量値に該1次光源面の開口部透過率を乗じた光量値を該1次光源面の初期放射光量値として、光線ベクトル22が交差する該1次光源面及び1次到達面以外の他の面要素の透過率を考慮して1次光源面から1次到達面に到達する光量値を算出し、光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が1次光源面から目的の1次到達面に到達不可能であると判定された場合に、1次光源面から次候補の1次到達面に対して、仮想光線ベクトル設定部9による前述の処理、光線到達可否判定部10による前述の処理を順次実行して到達面光量値算出部11により、光線到達可否判定部10により仮想光線ベクトル設定部9により設定した光線ベクトル22が1次光源面から目的の1次到達面に到達可能であると判定された該1次到達面について、光源面光量値設定部8により1次光源面に付与された光量値を該1次光源面の初期放射光量値として、光線ベクトル22が交差する該1次光源面及び1次到達面以外の他の面要素の透過率を考慮して該1次光源面から該1次到達面に到達する光量値を算出する。
ステップS13では、到達面への到達光量値を求める際には、光源となる面要素と、到達する候補となる面要素との幾何学的な関係から以下の数5式により形態係数Fを求める。図22は形態係数Fの求め方の一例を示し、以下の数5式で、Lは光線ベクトル22の長さ、角度αは光線ベクトル22の始点を含み、且つX軸とY軸を含む平面に平行な平面にZ軸方向から投影したときの該光線ベクトル22の始点を含む平面と光線ベクトル22とが成す角度、角度βは光線ベクトル22の終点を含み、且つX軸とZ軸を含む平面に平行な平面にY軸方向から投影したときの該光線ベクトル22の終点を含む平面と光線ベクトル22とが成す角度、Aは面要素の面積である。光源面要素がX軸方向の壁要素で到達する面要素もX軸方向の壁要素の場合である。形態係数Fは無次元の量となる。
〔数5〕
F=cosα×cosβ×A/L2/πcosβ=|Xs−Xt|/L
cosβ=|Xs−Xt|/L
L={(Xs−Xt)2+(Ys−Yt)2+(Zs−Zt)2}1/2
次にステップS14において、前記数5式により求めた形態係数Fに光源面からの放射光量値を乗じた量が到達する面要素に達する光量値を以下の数6式により算出する。以下の数6式で、光量初期値LViは、n(n=1,2,3,・・・)次光源面の光量値の初期値である。
〔数6〕
到達面光量値=光量初期値LVi×形態係数F
そして、ステップS15において、到達面光量値算出部11により算出された到達光量値を、到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部12により1次到達面に係る面要素データに格納することにより光量値算出処理を終了する。
ここで、到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部12は、前述の処理で探索された1次光源面から次候補の1次到達面に対して、仮想光線ベクトル設定部9による前述の処理、光線到達可否判定部10による前述の処理、及び到達面光量値算出部11による前述の処理を順次実行して、候補となる全ての1次到達面に対して前述の処理で算出された該1次光源面から候補となる全ての1次到達面に到達する光量値を、候補となる全ての1次到達面に係る面要素データに格納する。
そして、到達面光量値格納部12により、候補となる全ての1次到達面に係る面要素データの光量値に、次候補の1次光源面から付与された光量値を加算し、候補となる全ての1次到達面に係る面要素データを更新して格納する。これにより一つの光源面に対する一つの到達面の光量値算出の演算処理が終了したことになる。
次にステップS16において、同一の光源面について到達する候補の有無を判定する。ステップS16において、まだ、到達面の候補があれば、前記ステップS7に戻り、同一の光源面について候補となる全ての到達面要素についてステップS7〜S16の処理を行う。前記ステップS15では前述した到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部12により、1次到達面に係る面要素データに、次候補の1次光源面から付与された光量値を加算して面要素データを更新して格納する。
図23に一つの光源面αに着目した場合の光源面αら候補となる複数の到達面A,B,Cに光線ベクトル22が到達し光量値が与えられる演算処理の状況を示す。この状況は、一つの光源面から全方向に対して光線が「放射」されている状況をコンピュータ上で行う演算処理のために模擬的に現したものである。この手順であれば光源面の面要素から各到達面への光線の放射(全方向に拡散する)を模擬して、不必要に多数の光線の設定を行う演算処理が発生せず、安定な計算が実現出来る。
図14−2のステップS7〜S16において、同一の1次光源面から次候補の1次到達面に対して、仮想光線ベクトル設定手段となる仮想光線ベクトル設定部9、光線到達可否判定手段となる光線到達可否判定部10、到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部11によるそれぞれの演算処理を順次実行して、候補となる全ての1次到達面に対して光量値を面要素データに格納した後、ステップS17では、次の演算処理すべき1次光源面が有るか否かをチェックする。
図24は複数の光源面α、光源面β、光源面γから一つの到達面Aに光線ベクトル22が到達して光量値が与えられる演算処理の状況を示す図である。
更にステップS17において、次候補の1次光源面が有る場合は、上述と同じ演算処理(図14−2のステップS7〜S17)を行う。そして、全ての1次光源面についての演算処理が終了すれば、図14−1のステップS6の処理を終了する。
次に図14−1のステップS18において、到達面に到達した光量値を与えられた面要素が光を放射する段階となる。ステップS18では、いわゆる開口部19等の光源面(以下、「1次光源面」という)から該到達面(以下、「1次到達面」という)が受ける光量値を更に該到達面が反射した光により他の到達面に放射する場合の演算処理をする。
ここで、「反射した光」とは、或る到達面に到達した光線の光量値にその到達面の拡散放射率を乗じた光量値をその到達面以外の到達面に放射する光をいう。即ち、本発明に係る光環境解析用プログラム及び光環境解析システムでは、その到達面の到達光量値の一部がその到達面に吸収され、残りがその到達面を光源面と認識して放射することになる。
ステップS18では、本発明の光環境解析用プログラムによる演算処理を行う。いわば、1次到達面から反射する光量値を2次光源面として2次到達面への放射光量値を演算処理するものである。到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部11により、前記到達手段で求められた1次光源面からの到達した光量値に1次到達面の拡散放射率を乗じて、1次到達面が2次光源として発する光量値の初期値とする。
前述したように1次光源面から受けた光を反射する1次到達面は、当然に1次光源面とはならないので、全てが2次光源面の候補となる。2次光源面から2次到達面に到達する到達光量値の演算処理は、上述の図14−2に示したステップS7〜S17と同じ手順が採用されるのでここでは詳しい説明を省略する。
図14−2は、ステップS18,S7〜S17の処理の一例を示している。この例では先ず1次光源面αの面要素データの座標値(a,b,c)からの光量を1次到達面Aの面要素データの座標値(d,e,f)が受けて、この1次到達面A(d,e,f)が2次光源面となり、他の面要素である2次到達面Bに対して放射している例である。
このようにして算出された2次到達面の光量値は、前述したステップS6から流れたステップS15の到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部12により同到達面に加算されて面要素データに更新データとして格納される。更に、2次到達面の光量値を基にして3次光源面としてステップS18,S7〜S17の演算処理を行う。
図14−1のステップS19では、このように光源面からの光線の放射と、到達面への到達光量値の算出及び加算を繰り返して到達面への到達光量値を求めて行く。即ち、光源面光量値設定手段となる光源面光量値設定部8、仮想光線ベクトル設定手段となる仮想光線ベクトル設定部9、光線到達可否判定手段となる光線到達可否判定部10、到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部11、及び到達面光量値格納手段となる到達面光量値格納部12によるそれぞれの演算処理を順次実行して、到達面への到達光量値を加算し、その面要素データを更新してゆく。
そして、最終的光量値格納手段となる最終的光量値格納部13により、(n+1)次光源面から(n+1)次到達面に加算される光量値が所定の基準に達した場合の光量値を該面要素の最終的光量値として面要素データに格納する。
この際の光線放射量は到達面への吸収・放射を繰り返して行くうちに急激に減衰し、数回手順を繰り返すことでほぼ積算された到達光量値は飽和値に達する。即ち、ステップS15の到達面光量値算出手段となる到達面光量値算出部11において算出された光量値の加算前と加算後とを比較して予め定めた変化量を超えない状態になれば計算を終了する(図14−1のステップS19)。
ところで、輝度分布は光量の存在分布とみなすことが出来、建物の内部空間の明るさ分布をみるためには単位空間ごとの光量値の分布を表示することが重要である。
そこで、本発明に係る光環境解析システムは、評価対象の建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の各面要素の面要素データに格納された最終的到達光量値に基づいて、該建物の内部空間の単位空間毎の最終的到達光量値を表示する光量値表示手段となる光量値表示部14を備えている。ここで、建物の内部空間とは、床28面、壁(外壁27、間仕切壁26)面、天井面で形成される立方体や直方体を含む3次元の立体をいう。
また、光量値表示部14は、評価対象の建物の形状データで構成される内部空間の単位空間に対応する単位立方体または単位直方体を基にして格子状に分割した領域の各々に対して建物の内部空間の単位空間毎の最終的到達光量値を表示する。
光量値表示部14は、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の各面要素データに格納された最終的到達光量値データを使用する。
例えば、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の各面要素データに格納された最終的到達光量値データをそのまま表示用光量値として引用する。
即ち、床28面の表示用光量値は、座標軸上のZ軸方向面要素の最終的到達光量値データを引用し、壁面の表示用光量値は、X軸方向面要素またはY軸方向面要素の最終的到達光量値データを引用する。
また、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体のX軸、Y軸、Z軸の各方向の面要素の面要素データに最終的到達光量値データを加算して該単位立方体または単位直方体を代表する1つの表示用データとしても良い。
光量値表示部14は、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の表示用参照データを引用して、該表示用参照データと照合して、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体毎に、表示する光量値を決定し、表示要素を画面に表示する。また、プリンタ25等の印刷機能により紙等に印刷することも可能である。
以下、図を使用して、本発明の表示手段である光量値表示部14について、説明する。図26は、階段前近くに開口部が設定されていない建物の一階部分の明るさ分布を表示した一例を示す図である。図27は、階段前近くに開口部が設定されている建物の一階部分の明るさ分布を表示した一例を示す図である。図28は、測定用面要素設定手段の設定のための入力画面を示す図である。図29(a)〜(c)は、面要素データの一例を示す図である。
図29は表示用参照データである。表示用参照データは、光量値(または光量値の範囲)と表示要素の対応表である。表示要素は、例えば、色(RGBの階調の組み合わせ)、記号、図形、文字等の値が定義されている。
即ち、図29(a)に示して前述した面画素データに応じて、図29(b)では該面画素データの光量値が予め設定された閾値の範囲内に含まれる場合に色に応じた所定の数値が付与される。例えば、図29(a)の#1面画素の光量値データが「1.8」であり、該光量値が「1.8」は、図29(b)に示された閾値「1.0<1.8≦2.0」の範囲内にあるためR(赤)G(緑)B(青)値の組み合わせとして「R=0」「G=0」「B=42850」が色表現として選択され、図29(c)のごとく表された面要素表示の色表現として作成され、その色が図26及び図27に示すごとく表示される。尚、図26及び図27は、実際にはカラー表示である。
また、光量値表示部14は、単位空間に対応する単位立方体または単位直方体毎に表示することが出来るから、平面図、立断面図等で表示された建物の間取りをその単位空間に対応する単位立方体または単位直方体(建物の設計モジュール寸法を基準としたグリッドに合致したもの)に合わせて、格子状に分割した領域(グリッド)の各々に表示要素を割り付けて明るさ分布を表示することが出来る。
図26は、明るさ表示部17による明るさ分布の表示例である。図26に示す平面間取り図に面要素を格子状に区分して、そこに光量値を与えて表示することで建物の階単位で建物内部を俯瞰(ふかん;鳥の視線のような高い所から見下ろし眺める)出来る様な表示が可能となる。
図26の例では階段部24の近くの壁には開口部19の設定がなく、階段部24の前周辺は全体的に暗いことが表示出来る。
図27では図の左上部に示された階段部24の近くの壁に開口部19が設定されているために階段部24の前周辺は全体的に若干の明るさが生じている。
尚、図26及び図27における表示は建物の一階部分の水平断面図であり、この図面だけでは解らないが、階段部24の2階部分には図示しない開口部19が設定されており、この効果のために階段部24周辺は若干の明るさが認められる。階全体を俯瞰的に表示することと、建物全体を解析対象とすることで初めてこうした結果を得ることが出来、開口部19による間取りでの明るさ分布が説明出来る。
本発明に係る光環境解析システムでは、評価対象の建物の形状データの座標軸上の所定の位置に測定用面要素を設定する測定用面要素設定手段となる測定用面要素設定部15と、最終的光量値格納手段となる最終的光量値格納部13により算出された全ての面要素の最終的光量値と、開口部面20を光源の面要素となる1次光源面に係る面要素データに格納された光量値とを光源として、測定用面要素設定部15により設定された測定用面要素上の明るさを演算する明るさ演算手段となる明るさ演算部16と、該明るさ演算部16により演算された測定用面要素上の明るさを表示する明るさ表示手段となる明るさ表示部17とを備え、測定用面要素設定部15により設定された測定用面要素は、評価対象の建物の形状データで構成される床28面から一定の高さの水平面上に設定される。
図28は、測定用面要素設定部15の入力画面の一例である。図28では建物の内部空間の2階の床28面から1200mmの高さの明るさが表示されるように設定している。このように測定指標の水平方向を選ぶことにより明るさ演算部16で演算された明るさ分布を、床28面から一定の高さでの仮想面での水平面光量値として示すことが出来る。なお、階段共有空間は、階段昇り口の在る階(1階)を表示するか、階段降り口の在る階(2階)を表示するかの選択である。
図26及び図27における表示に使用される光量値は、建物の形状データで構成される内部空間を単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の面要素データに格納された最終的光量値を使用するのではなく、床28面から一定の高さで仮想の面要素を設定して、その面要素に最終的に到達する光量を個別に演算する。
この場合に光量値の演算処理には、前述のごとく算出したn(n=1,2,3,・・・)光源面から測定用面要素設定部15により設定した仮想の面要素に到達する到達光量値を使用する。
一方で、例えば玄関での明るさを認識する場合には玄関全体を眺めた時の明るさ分布で明るさを判断していることが想像される。同様に階段部24周辺でも階段部24の周辺全体を見て明るい或いは暗いと判断しているものと推定出来る。
そうすると適当な高さの水平面照度の表現では不十分で、広がりを含めた、鉛直面での照度をも取り込んだ表現が必要なことが推定される。
図28は測定用面要素設定部15となる表示高さ設定手段の画面の例である。図28において、2階の床28面から1200mmの高さを表示を設定し、測定指標を水平方向或いは水平方向・鉛直方向を選ぶことにより床28面から一定の高さでの仮想面での水平面光量値、或いは同じ高さでの水平面光量値と鉛直面光量値とを合成した値を表示することが出来る。
この場合も表示に使用される光量値は、上述してきた単位空間に対応する単位立方体または単位直方体の面要素データに格納された最終的到達光量値データを使用するのではなく、床28面から一定の高さで仮想の面要素を設定して、その面要素に最終的に到達する光量値を個別に演算する。
また、光量値の演算処理には、請求項1〜5に記載した何れかの光環境解析用プログラムを使用し、算出したn(n=1,2,3,・・・)次光源面から前記仮想の面要素に到達する到達光量値を使用する。