JP4437187B2 - 建築内外の熱環境予測方法及び装置 - Google Patents
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(1−1)受熱日射量I:
直達日射量はレイトレース法により、また反射日射量はその面における直達日射量から鏡面成分、拡散成分共に計算する。鏡面反射は、鏡面反射面(質点)において直達日射の反射角方向にトレースし、到達地点の質点に反射日射量を与えている。拡散反射は完全拡散条件とし、質点から周辺半球方向への探査線射出を行い、到達地点が拡散反射面の場合にその反射日射量を取得して算出する。天空日射量は、別途計算される天空率と、気象条件として入力する水平面天空日射量との積から算出する。天空率の計算は、質点に対して水平方向に360度を一定の間隔で分割した上、その分割方向に探査線を射出し、到達した地物の高さ方向の仰角から天頂角を求めて算出している。
(1−2)大気放射量R0及び長波長放射量R1:
大気放射量R0及び長波長放射量R1は、天空率とBruntの式で求まる放射量との積から算出する。周辺地物からの長波長放射の受熱量R1の算出には、質点から周辺半球方向への探査線射出により周辺地物の表面温度を参照するが、ここでは長波長放射解析と表面温度算出を反復計算により収束させる方法としている。この表面熱収支計算の際、対流熱伝達量算出のための気温、風速値はキャノピー空間内一定とする。ただし、気流数値解析などで空間分布が与えられれば、それを考慮し入力することもできる。対流熱伝達率はユルゲスの式により算出する。室内側境界条件は室温であるが、事前に計算した日変化を規定値として設定する。
(1−3)空間分解能:
空間分解能は空間構成要素の形状の再現性に鑑み、部位を表現できる分解能の均等メッシュサイズを採用する。
(1−4)樹木の扱い:
樹木の形状については、その外形を面の集合体で覆い再現する。樹冠の日射透過率について、非特許文献3のモデルにおいては、樹冠内部の単位メッシュ毎に日射遮蔽率を与える方法を採用し、光線の透過距離により日射透過量が異なるようにしているが、本発明においても同様に扱っても良い。
(2−1)壁体内伝熱:
本モデルの建物熱負荷計算は、非特許文献4に挙げられているモデルを採用している。壁体内の熱伝導は法線方向一次元として扱い、後退差分により時間ステップ毎に表面温度及び部材内断面温度分布を算出する。このとき、壁体の断面構成を計算上再現し、各構成層より細かな分割幅で一次元方向にメッシュ分割する。熱橋については負荷計算上の一般的な扱いと同様、壁体の熱抵抗値に熱橋係数を乗じることにより考慮することもでき、また熱抵抗値の異なる断面を別々の面として扱い、熱橋の法線方向成分を直接シミュレートすることもできる。
(2−2)室温・熱負荷の算出:
室温と熱負荷の算出は多数室問題のため、室数の次元の連立方程式を立て行列計算をする。計算時間間隔は可変であるが、本発明においては数分間から1時間程度の時間ステップを採用する。室温計算点は空間毎に1つの質点を設定しており、室内の壁面相互放射についても考慮し、Gebhartの放射吸収係数法により計算する。
(2−3)開口部からの入射放射量:
開口部には窓ガラスを設定し、熱収支シミュレーションにおいては開口部における入射日射量と、直達日射の入射角を時系列とで算出する。熱負荷計算においては窓ガラスの入射角依存の日射透過率と吸収率を算出し、そこに開口部の入射日射量を乗じたものをそれぞれ日射透過量、吸収量とする。透過した日射は、室内のいずれかの面に吸収されるものとし、本実施例では全て床面に吸収されるものとしている。また、長波長放射は室内には入射しないものとする。
(2−4)換気量:
換気量は換気回路計算との連成解析を行い、計算モデルは例えば非特許文献4による。ただし、換気量を独立に算出し、入力することも可能である。
(3−1)感度解析方法:
本発明のシミュレーションツールは、従来別々に構築されていたツールの連動解析をベースとしているため、モデルとして確立する上では、一方のツールに存在している誤差要因が、他方のツールにどの程度の感度で影響を及ぼすのかを明らかにしておく必要がある。そこで、屋外空間の全表面熱収支シミュレーションに存在する計算方法や近似・仮定上の誤差が、建物熱負荷計算の外表面における受熱量と開口部からの入射日射量及び室温にどの程度影響を及ぼすのか、といった視点から感度解析を実行する。
(3−2)全表面熱収支シミュレーション上の誤差要因について:
全表面熱収支シミュレーションに存在する誤差要因としては、(a)屋外の空間構成要素を高空間分解能のメッシュに分割して放射伝熱計算を行う際の解析上の誤差、(b)入力条件に用いられる近似等による誤差(Brunt式、対流熱伝達率の設定等)、(c)空間構成要素のモデル化に伴う再現性に関する誤差(樹木等)が挙げられるが、ここでは本シミュレーション手法の解析上の誤差要因で、影響度の大きいと考える以下の3点を取り上げ感度解析を実行する。即ち、1)高空間分解能のメッシュ分割でありながら、なおメッシュサイズ分の空間誤差が存在する点(直達日射量)、2)全質点数が膨大であり、放射解析上、計算負荷低減のために探査線の射出数をできるだけ抑えている点(反射日射量、天空率、長波長放射量)、3)外表面上における対流熱伝達率の分布を直接考慮することが難しく、近似が必要となる点(対流熱伝達量)である。
(3−3)検証用街区モデル:
検証用の街区モデルの例を図9に示す。街区モデルは簡易な形状の建物の整形配列とし、H/L(周辺建物高さ/道路幅)比が“1”(モデル1)と“2”(モデル2)の2通りを基本としている。実際の都市空間においては建物の形状及び配置は多様にあり得るが、ここでは影響分析が明確な基本的な街区モデルとしている。また、屋外の熱収支解析の誤差が大きく現れるよう検証対象に応じて、周辺建物高さの異なるそれぞれの街区モデルを使い分ける。モデル3はモデル2の各開口部に庇が0.2m張り出し、加えて周辺建物の高さも0.2m高いモデルとしている。これは、モデル2との比較により、直達日射の遮蔽量にメッシュサイズ分の誤差が含まれる場合を想定して設定したものである。
(3−4)各受熱成分の検証方法:
3−4−1.直達日射による受熱量について
メッシュサイズ分の空間誤差が日射受熱量にできるだけ大きく影響するように、H/L=2のモデル2とモデル3(庇+0.2m, 隣棟高さ+0.2m)との比較により、直達日射受熱量の差が対象建物の外表面の受熱量と室温に及ぼす影響を検証する。
3−4−2.天空率について
熱収支シミュレーションにおいて、天空日射量と大気放射量の空間分布は天空率の違いに起因する。ここでは、モデル2において、天空率算出時の探査線の射出数を変化させ、その影響を検証する。
3−4−3.反射日射による受熱量について
本熱収支計算では、本来多重反射現象である日射反射を1次反射のみで打切るという制限を課し、計算負荷の増加を抑えている。しかしながら、屋外空間の構成面の日射反射率が高いと、それが誤差要因となってくる。そこで、モデル1を用い、対象建物以外の日射反射率を0.5と大きくし、完全拡散条件において、日射の反射回数が対象建物の外表面の受熱量と室温に及ぼす影響について調べる。
3−4−4.周辺地物からの長波長放射量について
天空率と同様、長波長放射の射出分割数を変化させた際の影響を調べる。モデル1を使用する。
3−4−5.対流熱伝達率について
本シミュレーションモデルでは、建物外表面側の対流熱伝達率は空間一様として設定している。そこで、その対流熱伝達率算出に用いる建物外表面側の平均風速を0.5m/s, 1.0m/s, 1.5m/sと変化させ、室温に及ぼす影響を調べる。
(3−5)誤差要因の感度解析結果:
表1に誤差要因の感度解析結果を示す。ここで、「比較検討ケース」は誤差の影響を確認する2モデルを示している。そして、両モデル間の建物外表面における受熱量の差と、室温差の最大値を示す。
(4−1)解析用住宅地モデルの作成:
例えば非特許文献5で実測調査を実施した図10で示すような戸建住宅地を対象とし、住宅地の解析用CADモデルを図11(A)〜(C)に示す。図11(A)は樹木のない状態(CASE1)を示し、図11(B)は現状(CASE2)を示し、図11(C)は高木の大きさと配置を変更した場合(CASE3)を示している。建物と樹木の解析用モデルは、3D-CADで作成した。建物については、部位を屋根、壁、ベランダ、窓、ウッドデッキに分け、それぞれ異なる断面構成、熱物性値を与えた。建物と地面の構成材料と熱物性値を表2に示す。建物熱負荷計算において、空調・室内発熱は設定していない。窓は閉鎖状態であり、換気量については前述の通りである。
(4−2)解析条件の設定:
4−2−1.気象データ
入力条件の気象データは、対象住宅地における2000年6月〜10月の連続測定結果から作成した。要素は、気温、相対湿度、水平面全天日射量、風向・風速、雲量である。
4−2−2.検討ケース
樹木植栽の影響をシミュレートするため、住宅地の現状(CASE2)に対し、樹木を全く無くした場合(CASE1)と高木の大きさや配置を変更した場合(CASE3)を設定した(図8参照)。
(4−3)解析結果:
高木の量・大きさ・配置を変えた3ケースの12時における住宅地の全表面温度分布を図15に示す。図15(A)はCASE1を、図15(B)はCASE2を、図15(C)はCASE3をそれぞれ示している。なお、高木の樹冠の位置を示すため、樹冠形を白線でトレースしてある。また、図13は6月から10月まで解析した結果の中から、晴天日が続いた7月30日から8月1日の室温データを抜粋したものであり、対象室は各住戸の居間である。即ち、図13(A)はA−1棟の結果であり、図13(B)はA−3棟の結果である。同時に、A−1棟の対象室を取り囲む外壁面(図14に示すような外壁南面と屋根面)への入射日射量(直達、天空、周辺からの反射日射)と断面温度分布を算出した結果を図15(A)及び(B)に示し、その入射日射量のヒストグラム例を図16に示す。
2 読取部
3 入力部
4 表示部
5 プリンタ
10 演算処理部
10−1 3D−CAD
10−2 メッシュデータ化部
10−3 断面構成・材料の選択部
10−4 気象条件設定部
10−5 受熱量計算部
10−6 一次元熱伝導・表面温度計算部
10−8 建物モデル化部
10−9 建物熱負荷・室温計算部
10−11 人工排熱部
11 CPU
20 記憶部
21 ROM
22 RAM
Claims (3)
- 3D−CAD部により、対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して街区設計された街区設計データから座標データを取得し、メッシュデータ化部により、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、受熱量計算部により、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、
境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、
熱負荷・室温計算部により、前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、
前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、一次元熱伝導・表面温度計算部により、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行い、
屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することを特徴とする建築内外の熱環境予測方法。 - 全体の制御及び演算を行うCPUと、3D−CADの街区設計を実行する3D−CAD部と、前記3D−CADからの街区設計データをメッシュ化するメッシュデータ化部と、建築物の断面構成及び材料を選択して前記CPUに入力する断面構成・材料の選択部と、気象条件を設定する気象条件設定部と、面毎に受熱量を平均化すると共に、前記受熱量を計算する受熱量計算部と、一次元熱伝導及び表面温度を計算する一次元熱伝導・表面温度計算部と、建物をモデル化する建物モデル化部と、前記建物の熱負荷及び室温を計算する熱負荷・室温計算部と、境界条件を設定する境界条件設定部とを具備し、
前記3D−CAD部によって対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮した街区設計を行って得られた座標データを、前記メッシュデータ化部でメッシュのデータとし、前記メッシュデータ化部で得られた前記メッシュのそれぞれに前記選択部より前記断面構成及び材料を付与し、前記気象条件設定部により前記気象条件を設定した後、前記受熱量計算部は建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、前記境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、前記選択部により、作成された建物モデルに前記断面構成及び材料を付与し、前記熱負荷・室温計算部により前記外表面側の境界条件と前記断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、前記一次元熱伝導・表面温度計算部は建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行うことを特徴とする建築内外の熱環境予測装置。 - コンピュータに、
対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して3D−CADによって街区設計された街区設計データから座標データを取得し、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求める工程と、
前記熱収支計算によって求められた受熱量を面毎に平均化し、前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定する工程と、
前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された断面構成及び材料とに基づいて熱負荷・室温の計算を行う工程と、
前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行う工程と、
を実行させ、屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することを特徴とする建築内外の熱環境予測のためのプログラム。
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