JP4437187B2 - 建築内外の熱環境予測方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、3D−CADを用いて屋外熱環境をシミュレーションするツールと建物熱負荷シミュレーションツールを連動させた建築内外の熱環境の予測(評価を含む)を行うための予測方法及び装置並びにプログラムに関する。
世界的に都市環境における問題が顕在化しており、熱の視点から見ると都市部における夏季のヒートアイランド現象の顕在化があり、熱環境に配慮した建築一街区設計や都市開発の必要性が叫ばれている。このためには、設計段階に建物内外の熱環境の予測(及び評価)を正確に行い得ることが重要である。
かかる要請より近年建築環境工学の熱環境分野では、研究レベルのものから汎用化を目指したものまで、数多くのシミュレーション用ソフトが開発されている。従来のシミュレーション用ソフトを概観すると、建築の省エネルギー性能や室内気候などを予測・評価する方向性と、建築が屋外や都市の熱環境形成に及ぼす影響など、外部への熱的な影響を予測・評価する方向性に大別できるが、予測・評価の対象空間は従来建築内又は建築外のいずれかに限定されている。
建物熱負荷シミュレーションツール(例えば財団法人建築環境・省エネルギー機構の住宅用熱負荷計算プログラム“SMASH”)は建物の熱負荷や室内熱環境を解析するものであり、既に実用化されて市販されているが、屋外空間の熱環境評価を行うものではなく、しかも計算の際、屋外空間の影響については非常に簡易に扱われている。図17は従来の建物熱負荷シミュレーションツールの動作例を示すものであり、建物モデルを入力(ステップS1)してから断面構成及び材料を入力し(ステップS2)、気象条件や屋外環境条件を入力(ステップS3)して熱負荷を計算する(ステップS4)。これにより、熱負荷及び室温が得られるようになっている。
また、3D−CADを用いて屋外熱環境をシミュレーションするツール(例えば特開2003−99697:特許文献1)は屋外の熱環境を解析する手法を開示しており、建物や樹木などの屋外の空間形態、構成材料は詳細に再現した解析を行い得るようにはなっているが、屋内空間は与条件としてのみ扱っている。図18は3D−CADを用いた屋外熱環境をシミュレーションするツールの動作例を示しており、3D−CADにより建物、樹木、地面データを入力して街区設計を行い(ステップS10)、座標データを得た(ステップS11)後にメッシュデータ化し(ステップS12)、建物の断面構成及び材料の選択を行う(ステップS13)。その後、気象条件の設定(ステップS14)を行って受熱量を求め(ステップS15)、一次元熱伝導計算・表面温度の計算を行い(ステップS16)、計算された表面温度を3D−CAD上に出力する(ステップS18)と共に、屋外空間における熱的快適性の1つの指標として平均放射温度MRT(Mean Radiant Temperature)、街区からの大気への顕熱負荷としてヒートアイランドポテンシャルHIP(Heat Island Potential)を得る(ステップS19)。
特開2003−99697 萩島理,谷本潤,片山忠久:「改良・建築-都市-土壌連成系モデル(AUSSSM)による都市高温化の構造解析 第1報 モデルの理論構成及び標準解」、日本建築学会計画系論文集、第550号, pp79-86,2001.12 「持続可能な社会における熱・光・空気のデザインと技術−バイオクリマティックデザインの現在−」、日本建築学会環境工学委員会熱環境小委員会、第32回熱シンポジウム資料, 2002.11 山村真司,梅干野晁,浅輪貴史:「建築外部空間デザインの設計支援を目的とした熱放射環境の予測手法の開発」、日本建築学会計画系論文集、第554号, pp.85-92,2002.4 石田健一,宇田川光弘:「換気および壁面相互ふく射を考慮した多数室室温・熱負荷計算法」、日本建築学会計画系論文報告集、第381号,pp.46-55, 1987.11 浅輪貴史,梅干野晁,武澤秀幸,清水敬示:「緑の茂った戸建住宅地の屋外空間に形成される夏季の微気候に関する実測調査 屋外空間の微気候と居住者の開放的な住まい方との関わりに関する研究 その1」、日本建築学会計画系論文集、第563号, pp77-84, 2003.1
上述のように従来の建物熱負荷シミュレーションツールは、屋外空間の影響は隣棟問題として単純なパラメータ(隣棟間隔や隣棟高さ等)で再現されるにとどまるなど比較的簡易に扱われており、樹木等の複雑な空間形態と構成材料の影響を再現するものではないし、屋外熱環境を予測評価することはできない。また、3D−CADを用いて屋外熱環境をシミュレーションするツールは、樹木や建物の複雑な形状を3D−CADにより再現した上で対象地の屋外空間を構成する全ての面において熱収支解析をし、全表面温度を算出するモデルであるが、屋内空間を与条件としてのみ扱っているために、室温や建物熱負荷など室内熱環境の予測・評価は行っていない。
更に、3D−CADを用いた屋外の熱環境をシミュレーションするツールと建物熱負荷シミュレーションツールは別々に構築され別個に利用されており、両シミュレーションツールをいかに実用的にかつ予測精度を向上しつつ連動させるかが課題となっている。
かかる課題を解決する提案として、建物の内外の熱環境を同時に解析するシミュレーション手法としての非特許文献1に記載のものがある。これは一次元の都市キャノピーモデルを前提するなど、モデル化された単純な形態の建物や街区に対して高温化の複雑な要因解析を実施するものであるが、極端に単純な建物形状のみを扱っており、実際の建物の形状は再現しておらず、実用に供するものとはいえない。また、樹木は扱っておらず、不完全なものである。
このため、建築内外の熱環境を同時にかつ正確に予測・評価する手法の出現が望まれている。
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の上記目的は、3D−CADを用いて屋外熱環境をシミュレーションするツールと建物熱負荷シミュレーションツールとを効率的に連動させ、それぞれの解析技術の特徴若しくはメリットを活かしつつ、屋外と屋内の熱環境評価を同時にかつ正確に行い得る建築内外の熱環境予測方法及び装置並びにプログラムを提供することにある。
本発明は建築内外の熱環境予測方法に関し、本発明の上記目的は、3D−CAD部により、対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して街区設計された街区設計データから座標データを取得し、メッシュデータ化部により、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、受熱量計算部により、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、熱負荷・室温計算部により、前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された前記断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、一次元熱伝導・表面温度計算部により、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行い、屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することことにより達成される。
また、本発明は建築内外の熱環境予測装置に関し、本発明の上記目的は、全体の制御及び演算を行うCPUと、3D−CADの街区設計を実行する3D−CAD部と、前記3D−CADからの街区設計データをメッシュ化するメッシュデータ化部と、建築物の断面構成及び材料を選択して前記CPUに入力する断面構成・材料の選択部と、気象条件を設定する気象条件設定部と、面毎に受熱量を平均化すると共に、前記受熱量を計算する受熱量計算部と、一次元熱伝導及び表面温度を計算する一次元熱伝導・表面温度計算部と、建物をモデル化する建物モデル化部と、前記建物の熱負荷及び室温を計算する熱負荷・室温計算部と、境界条件を設定する境界条件設定部とを具備し、前記3D−CADによって対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮した街区設計を行って得られた座標データを、前記メッシュデータ化部でメッシュのデータとし、前記メッシュデータ化部で得られた前記メッシュのそれぞれに前記選択部より前記断面構成及び材料を付与し、前記気象条件設定部により前記気象条件を設定した後、前記受熱量計算部は建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、前記境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、前記選択部により、作成された建物モデルに前記断面構成及び材料を付与し、前記熱負荷・室温計算部により前記外表面側の境界条件と前記断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、前記一次元熱伝導・表面温度計算部は建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行うことにより達成される。
更に、本発明は建築内外の熱環境予測のためのプログラムに関し、本発明の上記目的は、コンピュータに、対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して3D−CADによって街区設計された街区設計データから座標データを取得し、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求める工程と、前記熱収支計算によって求められた受熱量を面毎に平均化し、前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定する工程と、前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された断面構成及び材料とに基づいて熱負荷・室温の計算を行う工程と、前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行う工程とを実行させ、屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することにより達成される。
従来、例えば樹木の形状や日射遮蔽特性など、屋外の空間形態と構成材料を再現して室温と建物熱負荷を算出する技術は出現していないが、本発明によれば、それら屋外空間のデザインの影響を考慮した室温と建物熱負荷の算出が可能である。そのため、建築内外の熱環境の定量的な予測や評価を行うことができると共に、屋外空間のデザインと同時に熱環境を評価できる有用なシステムを構築することができる。また、本発明によれば建物熱負荷を算出することができるため、空調機器の種類や性能が特定できれば、人工排熱も算出することができる。つまり、屋外熱環境の評価の際に、人工排熱の影響を考慮することができる。
戸建住宅地を対象に樹木植栽が室温に及ぼす影響のケーススタディを実行した結果、本発明のシミュレーション手法により、樹木の大きさや配置が室温変動に及ぼす影響を、伝熱プロセスを明確にした上でシミュレーションすることができることが示され、予測手法としての有効性を確認することができた。
また、3D−CADを用いた屋外の熱環境をシミュレーションするツールと建物熱負荷シミュレーションツールの連動方法としては、それぞれの出力結果を互いの入力データとすることで実現しており、プログラム上複雑な連成計算を行っていないため、あらゆる建物熱負荷シミュレーションモデルに対して適用可能である。
多様な立地環境の中に存在する実際の建築環境においては、室内気候も周辺環境の影響を受けて形成される。例えば、人工物や舗装面に囲まれた空間と緑に囲まれた空間とでは、同一の建築計画でも室内気候が大きく異なってくる場合もあり得、建築内外の熱環境悪化や良化が連動しているような状況である。また、立地や気候特性を積極的に活用しようとするバイオクリマティックデザインの観点からは、このような建築内外の相互影響を考慮し、両空間の環境を良化していく対策手法や建築空間創造の重要性が指摘されている(例えば非特許文献2)。建築内外の相互影響を考慮した予測・評価を行う場合、重要な評価項目としては、1)樹木など屋外の空間形態・構成材料が短波長・長波長放射場を調整し、建物外側からの熱貫流と開口部からの日射入射に伴う熱の侵入を抑制することにより、室温や室内熱負荷を調整する効果、2)自然通風利用の観点から、屋外の風環境が開口部や室内の通風に及ぼす影響、3)屋外に形成される気温・湿度分布が室内熱環境に及ぼす影響などが挙げられる。
そこで、本発明では上記1)の問題点を解決するべく、屋内外の空間形態と構成材料を考慮した建築伝熱シミュレーションの手法を提案する。
本発明では、3D−CADを用いた屋外の熱環境をシミュレーションするツールにより、対象とする敷地内の建物や地面等全ての空間構成要素の位置、形状を3D−CADで作成し、解析用メッシュモデルに変換後、伝熱計算上に必要な材料情報を各メッシュに付加して、解析用質点モデルを構築する。その解析用質点モデルにおいて、全表面における熱収支計算により、建物外表面における受熱量を時系列で算出する。
次に、建物熱負荷計算において、その受熱量を建物外表面側の境界条件として熱負荷計算を行い、室温と熱負荷を時系列で求める。再度、その室温を3D−CADを用いた屋外熱環境をシミュレーションするツールにおける建物の室内側の境界条件に設定し、屋外全表面の熱収支計算と一次元熱伝導計算により屋外空間の全表面温度分布を求める。即ち、屋外空間においては表面温度分布を基に熱環境評価を行い、屋内空間においては室温と熱負荷を基に熱環境評価を行う。
以下に本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の構成例を示しており、建築内外の熱環境の予測を行うプログラム1は読取部2で読取られてCPU等で成る演算処理部10に入力され、演算処理部10には入力部3からもデータ等が入力される。演算処理部10での演算は記憶部20と協働して実行され、演算結果等は表示部4に表示され、プリンタ5で印字出力される。
演算処理部10は図2に示すような構成になっており、全体の制御を行うCPU11が設けられており、CPU11には3D−CADのデザインを実行する3D−CAD部10−1と、3D−CADデータをメッシュ化するメッシュデータ化部10−2と、建築物の断面構成及び材料を選択して入力する断面構成・材料の選択部10−3と、気象条件を設定する気象条件設定部10−4と、受熱量を計算すると共に、受熱量を平均化する受熱量計算部10−5と、一次元熱伝導及び表面温度を計算する一次元熱伝導・表面温度計算部10−6とが接続されている。また、CPU11には、建物をモデル化する建物モデル化部10−8と、建物の熱負荷及び室温を計算する建物熱負荷・室温計算部10−9と、人工排熱を計算する人工排熱計算部10−11と、建物の面番号を設定する面番号設定部10−12と、境界条件を設定する境界条件設定部10−13とが接続されている。また、記憶部20は動作プログラム等を格納するROM21と、作業用メモリとなるRAM22とで構成され、いずれもCPU11に接続されている。
図3は本発明の全体的な流れを示しており、3D−CADを用いた屋外の環境シミュレーション部100と、建物熱負荷シミュレーション部200と、屋外の環境シミュレーション部100及び建物熱負荷シミュレーション部200を連動させる連動解析部300とを有している。プログラム1は読取部2で読取られ、演算処理部10内のCPU11に入力され、そのプログラム1を実行することになる。
3D−CADを用いた屋外の熱環境シミュレーション部100では、先ず3D−CAD部10−1で建物地面、樹木などの複雑な3Dの街区設計を3D−CADによって行い(ステップS101)、地面と水平な所定高さ毎に2次元の切断図形を3Dの座標データで取得する(ステップS102)。その際、建物や樹木などの空間構成をメッシュ化して質点系で計算を行うことを前提としているため、これに対応したデータ取得法となる。即ち、屋外空間において、全表面熱収支シミュレーション手法を用いて3次元の幾何形状を再現した建物外表面及び2次元地表面をメッシュデータ化部10−2でメッシュに分割してメッシュデータ化し(ステップS103)、断面構成・材料の選択部10−3で各メッシュ(以下、「質点」とも呼ぶ)に情報(部位番号、断面構成、材料番号、面番号、当該面における水平・鉛直方向の法線ベクトル)を格納し(ステップS104)、気象条件設定部10−4で気象条件の設定を行う(ステップS105)。その後、建物表面と地表面の各質点における受熱日射量I、大気放射量R、長波長放射量Rを時系列で、受熱量計算部10−5における下記数1の演算に従って算出する(ステップS110)。
Figure 0004437187
図4は建物についての全表面熱収支シミュレーションの一例を示す模式図であり、受熱日射量I、大気放射量R、長波長放射量Rを各質点について求める。図5は樹木についての全表面熱収支シミュレーションの一例を示す模式図であり、樹冠部の各メッシュに透過率を設定する。
(1−1)受熱日射量I:
直達日射量はレイトレース法により、また反射日射量はその面における直達日射量から鏡面成分、拡散成分共に計算する。鏡面反射は、鏡面反射面(質点)において直達日射の反射角方向にトレースし、到達地点の質点に反射日射量を与えている。拡散反射は完全拡散条件とし、質点から周辺半球方向への探査線射出を行い、到達地点が拡散反射面の場合にその反射日射量を取得して算出する。天空日射量は、別途計算される天空率と、気象条件として入力する水平面天空日射量との積から算出する。天空率の計算は、質点に対して水平方向に360度を一定の間隔で分割した上、その分割方向に探査線を射出し、到達した地物の高さ方向の仰角から天頂角を求めて算出している。
(1−2)大気放射量R及び長波長放射量R
大気放射量R及び長波長放射量Rは、天空率とBruntの式で求まる放射量との積から算出する。周辺地物からの長波長放射の受熱量Rの算出には、質点から周辺半球方向への探査線射出により周辺地物の表面温度を参照するが、ここでは長波長放射解析と表面温度算出を反復計算により収束させる方法としている。この表面熱収支計算の際、対流熱伝達量算出のための気温、風速値はキャノピー空間内一定とする。ただし、気流数値解析などで空間分布が与えられれば、それを考慮し入力することもできる。対流熱伝達率はユルゲスの式により算出する。室内側境界条件は室温であるが、事前に計算した日変化を規定値として設定する。
各メッシュにおける受熱量計算の際、時間並列的に長波長放射授受の解析を進めると計算量が膨大になるため、本発明では図6に示すようなアルゴリズムを採用している。即ち、先ず周辺地物の建物、樹木等の表面温度を気温と同等と見なして第1次の表面温度の計算を行い、表面温度の近似値の時系列変化を得る(ステップS111)。そして、得られた表面温度の近似値を利用し、各メッシュから周辺に向け探査線を射出し、到達地点の表面温度値を取得し、周辺地物からの長波長放射量の時系列変化を得る(ステップS112)。その結果を受熱量として入力し、再度表面温度を算出する(ステップS113)。表面温度が収束したか否かを判定し(ステップS114)、収束していない場合には上記動作を繰返して表面温度の計算を行う。収束するまで上記動作を繰り返すことにより、周辺地物からの長波長放射量を加味した表面温度の時系列変化の計算結果を収束させる。
(1−3)空間分解能:
空間分解能は空間構成要素の形状の再現性に鑑み、部位を表現できる分解能の均等メッシュサイズを採用する。
(1−4)樹木の扱い:
樹木の形状については、その外形を面の集合体で覆い再現する。樹冠の日射透過率について、非特許文献3のモデルにおいては、樹冠内部の単位メッシュ毎に日射遮蔽率を与える方法を採用し、光線の透過距離により日射透過量が異なるようにしているが、本発明においても同様に扱っても良い。
上述のような熱収支計算により受熱量(q(t, m j)=I+R+R)を求める(ステップS110)。受熱量(q(t, m, j)=I+R+R)が求まると、この受熱量(q(t, m, j)=I+R+R)を連動解析部300へ送信し、受熱量を取得し(ステップS302)、面毎に受熱量を平均化する(ステップS303)。そして、平均化された受熱量を境界条件設定部10−13で外表面側の境界条件に設定し(ステップS304)、その値を建物熱負荷シミュレーション部200に送信する。
一方、3D−CADを用いた屋外の熱環境シミュレーション部100では、受熱量の計算(ステップS110)の後、当該受熱量及び連動解析部300の室内側の境界条件の設定(ステップS305)に基づいて一次元熱伝導・表面温度計算部10−6で一次元熱伝導及び室温の計算を行い(ステップS120)、表面温度を求め(ステップS121)、3D−CADへ出力すると共に(ステップS122)、評価指標HIP、MRTの出力を行う。
ここにおいて、建物熱負荷シミュレーション部200の動作は図7に示す手法で実行され、スタートの後、先ず建物モデル化部10−8で建物モデルを作成し(ステップS201)、断面構成・材料の選択部10−3で建物の断面構成や建物各部の材料を選択して入力する(ステップS202)。建物モデル作成の際には、連動解析部300において設定された建物外表面の面番号(ステップS301)を参照し、建物外表面の面番号は3D−CADを用いた屋外の熱環境シミュレーション部100のメッシュデータ化(ステップS103)においても参照される。建物熱負荷シミュレーション部200ではその後、断面構成及び材料と、連動解析部300からの外側表面の境界条件とに基いて熱負荷・室温計算部10−9で熱負荷及び室温の計算を下記数2に従って計算する(ステップS203)。
Figure 0004437187
ここでの面とは、建物の屋根や壁、窓ガラスといった部位、方位、接する部屋別に分けられた建築外表面をいい、前述の面番号で指定する。熱橋部位を別に質点を設け、面として分離することもできる。これらの面番号と、データを送信する側の建物負荷計算における部位・面との対応が必要になるが、ここでは図8に示す方法による。
全表面熱収支シミュレーションでは、前述のように建築の外表面において部位及び面毎に面番号を与えておくが、負荷計算のモデルでは、部屋毎に構成面(壁、天井、床、窓等)に壁番号を与え、更にその面が隣接する部屋の番号(隣室番号rinsitsu(r,g))と、その隣接する部屋における当該面の壁番号(rinheki(r,g))とを対応させ、データとして格納する。即ち、隣室番号rinsitsu(r,g)はr室g壁側の隣室の部屋番号(隣室番号)を示しており、隣室番号0は屋外を示している。また、壁番号(rinheki(r,g)はr室g壁における壁番号を示しており、隣室番号0の場合は面番号を示している。そして、各部屋の外壁面に対しては隣室番号を0番(屋外)とし、更に隣室(屋外)における壁番号を先の面番号とする。これにより、各面と部屋、内外壁とをそれぞれ対応付けることができる。
次に、面毎に平均され、時系列で算出された受熱量Q(t, m)を外表面における境界条件とし、建物熱負荷・室温計算部10−9で建物の熱負荷(ステップS205)及び室温(ステップS204)を計算する(ステップS203)。外表面における熱収支の算出式を下記数3に示す。
Figure 0004437187
計算された室温を連動解析部300に送信して境界条件設定部10−13で室内側の境界条件を設定する(ステップS305)。室内側の境界条件は3D−CADを用いた屋外の熱環境シミュレーション100の一次元熱伝導計算(ステップS120)に供される。そして、ステップS102以降のプロセスを経ることにより、ステップS204で求められた室温変動を考慮した屋外の全表面が求められる。
ここで、周囲に放出する各面の長波長放射量εσT (t, m)は当該面の表面温度により変化するため、時間ステップ毎に算出される外表面温度から次時間ステップにおける値を算出する。外気温と対流熱伝達率は数1で用いた値と同様である。庇やベランダ等についてはステップS110の全表面熱収支シミュレーション上で再現され、その影響を考慮した受熱量が算出されているため、負荷計算上では日射遮蔽物としては扱わない。上記熱負荷に基づいて人工排熱計算部10−11で人工排熱を計算し(ステップS206)、人工排熱を得る(ステップS207)。
次に、本モデルで用いた建物熱負荷シミュレーションの概要を説明する。なお、本発明はあらゆる建物熱負荷シミュレーションモデルに適用可能である。
(2−1)壁体内伝熱:
本モデルの建物熱負荷計算は、非特許文献4に挙げられているモデルを採用している。壁体内の熱伝導は法線方向一次元として扱い、後退差分により時間ステップ毎に表面温度及び部材内断面温度分布を算出する。このとき、壁体の断面構成を計算上再現し、各構成層より細かな分割幅で一次元方向にメッシュ分割する。熱橋については負荷計算上の一般的な扱いと同様、壁体の熱抵抗値に熱橋係数を乗じることにより考慮することもでき、また熱抵抗値の異なる断面を別々の面として扱い、熱橋の法線方向成分を直接シミュレートすることもできる。
(2−2)室温・熱負荷の算出:
室温と熱負荷の算出は多数室問題のため、室数の次元の連立方程式を立て行列計算をする。計算時間間隔は可変であるが、本発明においては数分間から1時間程度の時間ステップを採用する。室温計算点は空間毎に1つの質点を設定しており、室内の壁面相互放射についても考慮し、Gebhartの放射吸収係数法により計算する。
(2−3)開口部からの入射放射量:
開口部には窓ガラスを設定し、熱収支シミュレーションにおいては開口部における入射日射量と、直達日射の入射角を時系列とで算出する。熱負荷計算においては窓ガラスの入射角依存の日射透過率と吸収率を算出し、そこに開口部の入射日射量を乗じたものをそれぞれ日射透過量、吸収量とする。透過した日射は、室内のいずれかの面に吸収されるものとし、本実施例では全て床面に吸収されるものとしている。また、長波長放射は室内には入射しないものとする。
(2−4)換気量:
換気量は換気回路計算との連成解析を行い、計算モデルは例えば非特許文献4による。ただし、換気量を独立に算出し、入力することも可能である。
以上のプロセスで、建物外表面における熱収支を反映した室温・熱負荷を得る。なお、本発明では、熱収支シミュレーションと建物熱負荷計算を時間並行的に連成させないモデルとしているが、これによりそれぞれで適した計算アルゴリズムを組めば良く、計算負荷の大幅な抑制に繋がることになる。
次に、シミュレーションモデルにおける誤差要因の感度解析を検討する。
(3−1)感度解析方法:
本発明のシミュレーションツールは、従来別々に構築されていたツールの連動解析をベースとしているため、モデルとして確立する上では、一方のツールに存在している誤差要因が、他方のツールにどの程度の感度で影響を及ぼすのかを明らかにしておく必要がある。そこで、屋外空間の全表面熱収支シミュレーションに存在する計算方法や近似・仮定上の誤差が、建物熱負荷計算の外表面における受熱量と開口部からの入射日射量及び室温にどの程度影響を及ぼすのか、といった視点から感度解析を実行する。
(3−2)全表面熱収支シミュレーション上の誤差要因について:
全表面熱収支シミュレーションに存在する誤差要因としては、(a)屋外の空間構成要素を高空間分解能のメッシュに分割して放射伝熱計算を行う際の解析上の誤差、(b)入力条件に用いられる近似等による誤差(Brunt式、対流熱伝達率の設定等)、(c)空間構成要素のモデル化に伴う再現性に関する誤差(樹木等)が挙げられるが、ここでは本シミュレーション手法の解析上の誤差要因で、影響度の大きいと考える以下の3点を取り上げ感度解析を実行する。即ち、1)高空間分解能のメッシュ分割でありながら、なおメッシュサイズ分の空間誤差が存在する点(直達日射量)、2)全質点数が膨大であり、放射解析上、計算負荷低減のために探査線の射出数をできるだけ抑えている点(反射日射量、天空率、長波長放射量)、3)外表面上における対流熱伝達率の分布を直接考慮することが難しく、近似が必要となる点(対流熱伝達量)である。
(3−3)検証用街区モデル:
検証用の街区モデルの例を図9に示す。街区モデルは簡易な形状の建物の整形配列とし、H/L(周辺建物高さ/道路幅)比が“1”(モデル1)と“2”(モデル2)の2通りを基本としている。実際の都市空間においては建物の形状及び配置は多様にあり得るが、ここでは影響分析が明確な基本的な街区モデルとしている。また、屋外の熱収支解析の誤差が大きく現れるよう検証対象に応じて、周辺建物高さの異なるそれぞれの街区モデルを使い分ける。モデル3はモデル2の各開口部に庇が0.2m張り出し、加えて周辺建物の高さも0.2m高いモデルとしている。これは、モデル2との比較により、直達日射の遮蔽量にメッシュサイズ分の誤差が含まれる場合を想定して設定したものである。
また、解析対象建物は2階建て住戸のスケールとしているが、建物内は小屋裏空間を除き一室の空間である。その空間内に1つの質点を設け、室温(非空調時の乾球温度)を算出する。建物構造は木造で、部材の断面構成は表2と同様である。また、熱収支シミュレーションの誤差の影響が室温に感度高く現れるよう、熱的に薄いガラス面の面積割合を多くとっている。街区の日射反射率は建物、地面とも0.2とした。また、気象条件は標準気象データ(空気調和・衛生工学会、空調設備基準委員会作成)の東京のデータより、夏季晴天日である8月5日のものを使用した。
(3−4)各受熱成分の検証方法:
3−4−1.直達日射による受熱量について
メッシュサイズ分の空間誤差が日射受熱量にできるだけ大きく影響するように、H/L=2のモデル2とモデル3(庇+0.2m, 隣棟高さ+0.2m)との比較により、直達日射受熱量の差が対象建物の外表面の受熱量と室温に及ぼす影響を検証する。
3−4−2.天空率について
熱収支シミュレーションにおいて、天空日射量と大気放射量の空間分布は天空率の違いに起因する。ここでは、モデル2において、天空率算出時の探査線の射出数を変化させ、その影響を検証する。
3−4−3.反射日射による受熱量について
本熱収支計算では、本来多重反射現象である日射反射を1次反射のみで打切るという制限を課し、計算負荷の増加を抑えている。しかしながら、屋外空間の構成面の日射反射率が高いと、それが誤差要因となってくる。そこで、モデル1を用い、対象建物以外の日射反射率を0.5と大きくし、完全拡散条件において、日射の反射回数が対象建物の外表面の受熱量と室温に及ぼす影響について調べる。
3−4−4.周辺地物からの長波長放射量について
天空率と同様、長波長放射の射出分割数を変化させた際の影響を調べる。モデル1を使用する。
3−4−5.対流熱伝達率について
本シミュレーションモデルでは、建物外表面側の対流熱伝達率は空間一様として設定している。そこで、その対流熱伝達率算出に用いる建物外表面側の平均風速を0.5m/s, 1.0m/s, 1.5m/sと変化させ、室温に及ぼす影響を調べる。
(3−5)誤差要因の感度解析結果:
表1に誤差要因の感度解析結果を示す。ここで、「比較検討ケース」は誤差の影響を確認する2モデルを示している。そして、両モデル間の建物外表面における受熱量の差と、室温差の最大値を示す。
Figure 0004437187
表1より直達日射の比較結果に大きな室温差がみられ、最大で1.2℃である。これは、メッシュサイズ分(0.2m)の庇の有無が影響した結果である。天空率と長波長放射量については、射出数を増加させても室温には影響を及ぼしていないため、設定した最小の値で十分であることが分かる。反射日射の受熱量に関しては、従来通りの1次反射までを考慮した場合と2次反射までを考慮した場合で比較したが、2次反射まで考慮した場合の方が各壁面、開口部共に受熱量及び入射量が増加し、室温にも最大で0.3℃の誤差が生じている。これは、特に開口部に入射した2次の反射日射成分が室温上昇に寄与したためである。室温差0.3℃という比較的微小な値ではあるが、日射反射率の高い屋外空間において精度高く解析するためには、2次反射まで実行することも考えられる。対流熱伝達量については、建物外表面側の平均風速を0.5m/sから1.5m/sに変化させた場合で、最大1.6℃の室温差が生じている。ただし、建物全体で1.0m/sの平均風速の誤差が生じる設定はかなり厳しい条件である。
以上、直達日射量については開口部への日射遮蔽物におけるメッシュサイズ分の空間誤差により、また対流熱伝達率は外表面側の風速値の設定誤差により、室温に1℃〜1.5℃程度の差を生じさせることが分かった。この点に留意して、モデルの作成と計算条件の設定を行う必要があることが確認できる。
次に、樹木が住宅の室温変動に及ぼす影響に関するケーススタディを行う。本発明のシミュレーションモデルの予測・評価手法としての有効性を確認するため、戸建住宅地を対象にケーススタディを実行する。ここでは、屋外空間設計が室内気候に大きく影響を及ぼすと想定される状況として高木植栽に着目し、その自然室温変動に及ぼす影響について解析する。
(4−1)解析用住宅地モデルの作成:
例えば非特許文献5で実測調査を実施した図10で示すような戸建住宅地を対象とし、住宅地の解析用CADモデルを図11(A)〜(C)に示す。図11(A)は樹木のない状態(CASE1)を示し、図11(B)は現状(CASE2)を示し、図11(C)は高木の大きさと配置を変更した場合(CASE3)を示している。建物と樹木の解析用モデルは、3D-CADで作成した。建物については、部位を屋根、壁、ベランダ、窓、ウッドデッキに分け、それぞれ異なる断面構成、熱物性値を与えた。建物と地面の構成材料と熱物性値を表2に示す。建物熱負荷計算において、空調・室内発熱は設定していない。窓は閉鎖状態であり、換気量については前述の通りである。
Figure 0004437187
樹木については、樹冠を球体や円錐等の簡略化した幾何形状とはせず、樹木形状の再現ソフトウエアである「Tree.Pro」(Onyx Computing, Inc.製)を使用し、当該住宅地の樹木に近い形状となるように外形(エンベロープ)を再現した。樹冠の日射透過率については、対象住宅地の中央通路上のサクラを真下から撮影した魚眼写真より、その天頂部(中央部)の空隙率と工学的厚さから、10mの透過距離に対する日射透過率が10%となるように単位メッシュ当りの透過率を設定した。そして、樹冠内の日射透過率の空間分布が一様で、且つ透過率の異方性はないとの仮定のもと、全メッシュにその値を割り当てた。地表面については起伏は考慮せず、2次元平面とした。周囲境界条件となる周辺の隣接した建物は簡略化して再現している。
(4−2)解析条件の設定:
4−2−1.気象データ
入力条件の気象データは、対象住宅地における2000年6月〜10月の連続測定結果から作成した。要素は、気温、相対湿度、水平面全天日射量、風向・風速、雲量である。
4−2−2.検討ケース
樹木植栽の影響をシミュレートするため、住宅地の現状(CASE2)に対し、樹木を全く無くした場合(CASE1)と高木の大きさや配置を変更した場合(CASE3)を設定した(図8参照)。
(4−3)解析結果:
高木の量・大きさ・配置を変えた3ケースの12時における住宅地の全表面温度分布を図15に示す。図15(A)はCASE1を、図15(B)はCASE2を、図15(C)はCASE3をそれぞれ示している。なお、高木の樹冠の位置を示すため、樹冠形を白線でトレースしてある。また、図13は6月から10月まで解析した結果の中から、晴天日が続いた7月30日から8月1日の室温データを抜粋したものであり、対象室は各住戸の居間である。即ち、図13(A)はA−1棟の結果であり、図13(B)はA−3棟の結果である。同時に、A−1棟の対象室を取り囲む外壁面(図14に示すような外壁南面と屋根面)への入射日射量(直達、天空、周辺からの反射日射)と断面温度分布を算出した結果を図15(A)及び(B)に示し、その入射日射量のヒストグラム例を図16に示す。
室温は日射量が最も安定していた8月1日の日変化に着目し、A−1棟のCASE2ではCASE1に比べ、住棟の南東側に存在する高木により、午前中の屋根面と東側壁面への入射日射量が1/3程度に減少する。その屋根面と壁面に面する居間では、天井からの焼け込みと開口部からの入射日射量が減少し、室温は最大で5℃程度低下する(図13(A))。しかしながら、CASE2では12時の時点で尚も屋根面に530[W/m]程度の日射照射があり、図11及び図12より表面温度も55℃と高温化している。部材内の断面温度も高温で推移し(図15参照)、室温も35℃程度ある。CASE3では、居間の上空に配した高木の樹冠により日射遮蔽され、屋根面と南側壁面の入射日射量が1/3〜1/4程度に減少し(図15、図16参照)、屋根面の表面温度が気温相当にまで低下している(図11、図12参照)。そして、室温は最大でも33.5℃と、CASE2と比べ2℃以上低い値となる。
A−3棟は建物が南北軸に対して45°傾いているため、CASE1においては午前中の南東面と午後の南西面の入射日射量が大きく、そこに面した居間の室温も午前中の上昇が速く、また夕方からの低下も遅い。そして、日中に最大で室温は37℃を越す。CASE2では高木によりその南東面と南西面へ日射遮蔽がされており、入射日射量は午前中の南東面で1/3程度に、また昼頃の南西面では、特に開口部において半分程度に減少している。そして、室温も3℃程度の低下を示す。
本発明は、屋外の空間形態と構成材料を考慮した建築伝熱シミュレーションモデルの解析方法を構築しており、全表面熱収支シミュレーションと建物熱負荷計算を建築外表面を境界に連動解析させることにより、屋外の空間形態と構成材料が建物外表面への受熱量と開口部からの入射日射量に及ぼす影響を解析した上で室温と室内熱負荷を予測可能である。また、全表面熱収支シミュレーションに存在する解析上の誤差要因が、建物熱負荷計算で算出される室温に及ぼす感度を解析した結果、直達日射量はメッシュサイズ分の空間誤差により、また対流熱伝達率は外表面側の風速値の設定誤差により、室温に1℃〜1.5℃程度の差を生じさせることが分かったが、産業上の利用として問題になるものではない。
本発明の構成例を示すブロック図である。 演算処理部の構成例を示すブロック図である。 本発明の全体的な流れを示すフローチャートである。 建物についての全表面熱収支シミュレーションの一例を示す模式図である。 樹木についての全表面熱収支シミュレーションの一例を示す模式図である。 長波長放射量を求める際の動作例を示すフローチャートである。 建物熱負荷計算の例を示す図である。 部屋番号と壁番号の割り当て方法を説明するためのである。 検証用街区モデルの一例を示す図である。 解析対象住宅地の一例を示す外観図である。 住宅地の解析用CADモデルの一例を示す図である。 12時の表面温度分布の一例を示す図である。 各ケースの室温変動を示す図である。 建物の外壁南面と屋根面を示す図である。 外壁南面と屋根面における入射日射量(直達+天空+周辺からの反射)と断面温度分布例を示す図である。 入射日射量のヒストグラム例を示す図である。 従来の建物熱負荷シミュレーションツールの動作例を示すフローチャートである。 従来の3D−CADを用いた屋外の熱環境シミュレーションツールの動作例を示すフローチャートである。
符号の説明
1 プログラム
2 読取部
3 入力部
4 表示部
5 プリンタ
10 演算処理部
10−1 3D−CAD
10−2 メッシュデータ化部
10−3 断面構成・材料の選択部
10−4 気象条件設定部
10−5 受熱量計算部
10−6 一次元熱伝導・表面温度計算部
10−8 建物モデル化部
10−9 建物熱負荷・室温計算部
10−11 人工排熱部
11 CPU
20 記憶部
21 ROM
22 RAM

Claims (3)

  1. 3D−CAD部により、対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して街区設計された街区設計データから座標データを取得し、メッシュデータ化部により、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、受熱量計算部により、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、
    境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、
    熱負荷・室温計算部により、前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、
    前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、一次元熱伝導・表面温度計算部により、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行い、
    屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することを特徴とする建築内外の熱環境予測方法。
  2. 全体の制御及び演算を行うCPUと、3D−CADの街区設計を実行する3D−CAD部と、前記3D−CADからの街区設計データをメッシュ化するメッシュデータ化部と、建築物の断面構成及び材料を選択して前記CPUに入力する断面構成・材料の選択部と、気象条件を設定する気象条件設定部と、面毎に受熱量を平均化すると共に、前記受熱量を計算する受熱量計算部と、一次元熱伝導及び表面温度を計算する一次元熱伝導・表面温度計算部と、建物をモデル化する建物モデル化部と、前記建物の熱負荷及び室温を計算する熱負荷・室温計算部と、境界条件を設定する境界条件設定部とを具備し、
    前記3D−CADによって対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮した街区設計を行って得られた座標データを、前記メッシュデータ化部でメッシュのデータとし、前記メッシュデータ化部で得られた前記メッシュのそれぞれに前記選択部より前記断面構成及び材料を付与し、前記気象条件設定部により前記気象条件を設定した後、前記受熱量計算部は建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求めると共に面毎に平均化し、前記境界条件設定部により前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定し、前記選択部により、作成された建物モデルに前記断面構成及び材料を付与し、前記熱負荷・室温計算部により前記外表面側の境界条件と前記断面構成及び材料に基づいて熱負荷・室温の計算を行い、前記境界条件設定部により前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、前記一次元熱伝導・表面温度計算部は建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行うことを特徴とする建築内外の熱環境予測装置。
  3. コンピュータに、
    対象とする敷地内の建物、地面、樹木等の空間構成要素の位置、形状を考慮して3D−CADによって街区設計された街区設計データから座標データを取得し、前記座標データをメッシュのデータとし、選択部により前記メッシュのそれぞれに付与された断面構成及び材料、気象条件設定部により設定された気象条件から、建物表面と地表面の前記各メッシュにおける受熱量を熱収支計算によって求める工程と、
    前記熱収支計算によって求められた受熱量を面毎に平均化し、前記平均化された受熱量を外表面側の境界条件に設定する工程と、
    前記外表面側の境界条件と、作成された建物モデルに前記選択部より付与された断面構成及び材料とに基づいて熱負荷・室温の計算を行う工程と、
    前記室温を室内側の境界条件に設定し、前記受熱量及び前記境界条件に設定された前記室温に基づいて、建物外表面の一次元熱伝導・表面温度の計算を行う工程と、
    を実行させ、屋外空間の空間形態及び構成材料を考慮して建築内外の熱環境を予測することを特徴とする建築内外の熱環境予測のためのプログラム。
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