JP2009053749A - 室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法 - Google Patents

室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 室内の精密なモデルを作成する室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法を提供する。
【解決手段】 モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンAを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンBを作成するステップと、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンCを作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、室内の温度分布をモデル化し、熱負荷等を検討できる室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法に関する。
従来、室内の温度分布を予測する手段として、数値流体解析が用いられていた。しかしながら、数値流体解析は、計算負荷が大きく、数値的な安定性の問題等から長時間の現象を予測することが難しかった。
そこで、本発明者は、建築物の熱回路網及び換気回路網をモデル化し、熱負荷計算を実行することで、適度な室内環境を実現するものを発表した(非特許文献1参照)。
宇田川,石田,石野等,「熱負荷算法小委員会報告書-大空間の熱負荷計算法-」,1993年3月,空衛学会,空気調和設備委員会,熱負荷算法小委員会
ところで、上記非特許文献1に記載されたものは、計算するモデルを、1室に対して1節点で設定しているため、室内の温度分布に対しては、考慮されていなかった。
本発明は上記課題を解決し、室内の精密なモデルを作成する室内温度分布モデル作成装置及び室内温度分布モデル作成方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するものであって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたことを特徴とする。
また、前記温度境界層領域作成手段は複数の温度境界層ゾーンを作成し、前記熱プルーム領域作成手段は複数の熱プルームゾーンを作成することを特徴とする。
また、前記熱回路網作成手段は、前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化することを特徴とする。
また、前記熱回路網作成手段は、熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化することを特徴とする。
また、前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする。
さらに、本発明は上記課題を解決する方法であって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたことを特徴とする。
また、前記温度境界層領域及び前記熱プルーム領域が、複数のゾーンにより作成されることを特徴とする。
また、前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化することを特徴とする。
また、熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化することを特徴とする。
また、前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めることを特徴とする。
本発明によれば、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成する熱プルーム領域作成手段と、前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、を備えたので、精密なモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。
また、前記温度境界層領域作成手段は複数の温度境界層ゾーンを作成し、前記熱プルーム領域作成手段は複数の熱プルームゾーンを作成するので、加熱高さによる上昇力の違いが表現できて,より精密なモデルができる。
また、前記熱回路網作成手段は、前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化するので、強制対流と自然対流の両状態を同じモデル構造で表現できる。
また、前記熱回路網作成手段は、熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化するので、より精密なモデルができる。
また、前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より精密なモデルができる。
さらに、本発明は上記課題を解決する方法であって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成するステップと、前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、精密なモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。
また、前記温度境界層領域及び前記熱プルーム領域が、複数のゾーンにより作成されるので、より精密なモデルができる。
また、前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化するので、強制対流と自然対流の両状態を同じモデル構造で表現できる。
また、熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化するので、より精密なモデルができる。
また、前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるので、最適なパラメータを求めることができ、より精密なモデルができる。
以下、図面を参照して本発明にかかる実施形態の室内温度分布作成装置1について説明する。
図1は、本実施形態の室内温度分布作成装置1が作成するモデルの概要を示す図である。図1において、Aは温度成層化領域、Bは温度境界層領域、Cは熱プルーム領域を示す。また、換気回路網2では、矢印21は空気の移動を表す換気回路網の流路を示す。さらに、熱回路網3では、節点31は例えば外気温度等の既知の温度を表す与条件温度節点、節点32は温度が未知な未知数温度節点を示し、第1熱コンダクタンス33は伝導・伝達・貫流・放射等の一般化熱コンダクタンス、第2熱コンダクタンス34は移流・対流による一般化熱コンダクタンスを示し、太矢印35は節点への発熱量を示す。なお、一般化コンダクタンスとは、伝導、伝達、放射、貫流、移流等すべての伝熱形態の熱の伝わりやすさを表す。
本実施形態では、温度成層化領域A、温度境界層領域B及び熱プルーム領域Cに区分すると共に、それぞれ上下に層状のゾーンA1,A2・・・C3,C4に分割して、換気回路網2と熱回路網3を構築する。
温度成層化領域Aは、室内の上下温度分布を複数の層に分割し、離散的に表現したものであり、各層内での温度は一様である。温度成層化領域A間の平均的な流れは上向きまたは下向きの押し出し流れであり、こうしたピストン流れとすることが温度成層化を模擬する要件となる。また、自然対流(熱対流のみ)と強制対流(ファン作動時など)の両状態は、温度成層化領域A内の各ゾーン間の混合流の一般化熱コンダクタンス33,34の数値を,小さくまたは大きくすることでモデル化する。
温度境界層領域Bは、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンである。例えば、車両の外気温度が外皮を通じて車内を冷却すると、温度境界層領域Bを冷却し、温度境界層領域B内で下降流が生じ,この下降流が温度成層化領域Aに入り込み、循環流を引き起こす。
熱プルーム領域Cは、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンである。例えば、日射を受けた車室内の物体から発生する上昇流を表現するものであり、熱プルーム領域C全体で煙突状のものを想定し、やはり上下方向を分割することで,発熱体との接触位置が高い場合、低い場合の熱上昇力の違いを考慮できる様にした。
なお、ファンなどで強制対流加熱した場合には,室内は空気的に混合状態になることから,温度成層化領域Aの全てのゾーンに発熱量は均等に分散して与えられる。これでも上下温度分布が生成されるのは押し出し上昇流が生じるからである。また、この強制対流加熱状態では熱プルーム領域C内には加熱源がなく、また熱プルーム流路の断面積が小さいことから熱プルームの流の影響はなくなる。こうして強制対流と自然対流の両状態は同じモデル構造で表現できる。
ここで、換気回路網2と熱回路網3について説明する(詳細については、非特許文献1を参照)。
換気回路網2は、各ゾーン底面の静圧と複数ゾーン間の流量を示すものである。
前提として、各ゾーンでは風量の収支が成り立つとする。また、各ゾーン底面に静圧p(Pa)を持ち、ゾーンの空気密度をρ(kg/m3)とすると、この底面から上方へh(m)上がった点での静圧はp−ρ・h・g(Pa)とする。空気密度はそのゾーンの空気温度の関数である。流路は、圧力損失係数、指数及び流路面積、さらに基準面からの高さの属性を持ち、流路の通過風量は,前後の静圧差と圧力損失係数、指数および流路面積の関数である。そして、ゾーン数分の静圧に関する非線形連立方程式を修正ニュートンラプソン法で解くことで風量が求められる。
熱回路網3は、熱の移動を示すものである。前提として、各節点では、流入熱流から流出熱流を引いたものが、熱容量に温度変化を乗じたものに等しくなるという熱流収支が成り立つものとする。これを完全連結システムの節点方程式とする。また、伝導、表面伝達、長波長放射、移流など全ての伝熱形態の熱の伝わりやすさを一般化熱コンダクタンス33,34という一種類の係数で表現する。従って空気流動による一般化熱コンダクタンス33,34も数式記号上は同じ係数となる。
そして、全節点の温度に関する連立常微分方程式が前述の節点方程式から構成され、連立常微分方程式を後退差分などの時間積分法によって解き、毎時間ステップの温度の解を算出する。
次に、換気回路網2と熱回路網3の連成について説明する。換気回路網2の駆動条件となる各ゾーンの密度は熱回路網3の解の温度によって計算される。熱回路網3の係数となる風量は換気回路網2の解から得られる。非定常の時間ステップ毎に、一方の回路網への条件はもう一方の回路網の前時間ステップでの結果をもとにつくる。こうして両モデルの連成がとられる.
図2は本実施形態の室内温度分布作成装置1を用いたシステム構成図である。
入力手段101は、モデル化する対象のデータを入力するものである。記憶手段102は、演算式等の不変のデータを記憶するものである。入力手段101から入力されたデータ及び記憶手段102に記憶されたデータは、制御手段110に入力される。
室内温度分布作成装置1の制御手段110は、温度成層化領域作成手段111、温度境界層領域作成手段112、熱プルーム領域作成手段113、換気回路網作成手段114及び熱回路網作成手段115、パラメータ演算手段116を有する。
温度成層化領域作成手段111は、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を離散的に表現する温度成層化ゾーンを作成する。温度境界層領域作成手段112は、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、温度境界層ゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。熱プルーム領域作成手段113は、発熱体から発生する熱による上昇流を生じるゾーンを作成する。なお、熱プルームゾーンは、複数のゾーンに分割し作成されてもよい。換気回路網作成手段114は、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する。熱回路網作成手段115は、ゾーン間の熱の移動を求める熱回路網を作成する。パラメータ演算手段116については後述する。
制御手段110により作成されたモデルは、表示装置等の出力手段121に出力される。
図3は、車両50を図1に示す領域に分割する例を示す図である。車両50の車室51内を上下4段の温度成層化領域Aに区分し、温度境界層領域Bとして、屋根温度境界層B1、窓温度境界層B2、ドア温度境界層B3及び床温度境界層B4を設定したものである。
図4は、図3に示す車両50に換気回路網2と熱回路網3を構築しモデル化した図である。この例では、熱プルーム領域CのC3ゾーンに発熱体としてヒーターを設置している。
次に、構造物内部の熱回路網3について説明する。図5は、熱橋52を示す図、図6は車両50の熱橋52をモデル化した図である。熱橋52とは、車室51から外気への熱損失性能が実験値と合うようにするために考慮する板状部材内に存在するリブ等で熱が伝わり易い部分を示す。
熱橋52による熱橋熱コンダクタンス36は、図6の屋根部分に示すように、一般化熱コンダクタンス33と並列の熱流となる経路として構成される。熱橋熱コンダクタンス36をCbとし、一般化熱コンダクタンス33をCsとすると、熱コンダクタンスの合成は、Cs+Cbとなる。
次に、作成するモデルのパラメータについて説明する。作成するモデルは、工学モデルなので、実験的に定めなければならない特性値がある。これらは、熱橋割合Cb/Cs、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスcij及び換気回路網の圧力損失係数ζからなる三種のパラメータである。
これらパラメータをパラメータ演算手段116により最適化する方法について説明する。まず、パラメータを最適化するために評価関数を設定する。実験と予測計算で対応を検討したのは、図7に示す頭部温度θ1と足下温度θ2である。実測と予測は頭部と足元の平均温度が近いほど良いという評価を式(1)で行う。式(1)は、上下の平均温度は、室空気が持つ熱エネルギーに比例するので、一致すべきという観点から導かれる。
Figure 2009053749
・・・(1)
ただし、pθjは頭部又は足元の予測計算温度、
mθjは実測温度、
Tは検討期間
である。
ここにjは成層化ゾーンの上下方向の位置番号を示し,一般に2以上あるものとする.
次に、頭部と足元それぞれで温度が近ければ良いという評価を式(2)で行う。
Figure 2009053749
・・・(2)
これら式(1)と式(2)の両方を平均し、総合的に考慮する式(3)の誤差の評価関数Jを定める。また、誤差は発熱量Hの大きさに比例すると考えられるので、Hで除して正規化する。
Figure 2009053749
・・・(3)
次に、式(3)を最小化する三種のパラメータを探索法により求める。まず、熱橋割合Cb/Csを0とする。次に、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスcijと換気回路網の圧力損失係数ζとをそれぞれ何通りか変化させ、評価関数を計算して、図8に示すような2次元的数表で最小化する組み合わせを求める。さらに、図9に示すように、熱橋割合Cb/Csを3次元方向として変化させ、評価関数を計算し、最適な三種のパラメータを求める。
次に、このような室内温度分布作成装置1により作成したモデルによる計算値と実測値との比較結果について説明する。図10は実測時の外気温と日射量を示すグラフ、図11は室温推移の比較を示すグラフである。
図10において、点線は外気温、正方形を含む実線は水平面全日射量、菱形を含む点線は直達日射量、×を含む実線は拡散日射量である。実測時は晴天で、徐々に温度が上昇する高温の状態であった。
図11において、○を含む実線は頭部付近のモデルによる計算値、菱形を含む実線は頭部付近の実測値、正方形を含む実線は足元付近のモデルによる計算値、×を含む実線は足元付近の実測値である。図10に示すように、頭部と足元で約20度の大きな温度差を有する状態において、モデルによる計算値は、実測値にかなり近い値を算出している。
このように、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、室内を複数のゾーンA1,A2・・・に分割し、上下温度分布を表現する温度成層化領域Aを作成する温度成層化領域作成手段111と、室内外を画成する外皮が外気に接することで外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンBを作成する温度境界層領域作成手段112と、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンCを作成する熱プルーム領域作成手段113とゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成する換気回路網作成手段114と、ゾーン間の熱の移動を表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成する熱回路網作成手段115と、を有するので、精密なモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。
また、温度境界層領域作成手段112は複数の温度境界層ゾーンB1,B2・・・を作成し、前記熱プルーム領域作成手段113は複数の熱プルームゾーンC1,C2・・・を作成するので、加熱高さによる上昇力の違いが表現できて,より精密なモデルができる。
また、熱回路網作成手段115は、一般化熱コンダクタンス33,34の数値を小さくまたは大きくすることで、温度成層化領域A内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化するので、強制対流と自然対流の両状態を同じモデル構造で表現できる。
また、熱回路網作成手段115は、熱橋52による熱橋熱コンダクタンス36を作成し、一般化熱コンダクタンス33,34と並列の熱流となる経路としてモデル化するので、より精密なモデルができる。
また、熱橋52による熱橋熱コンダクタンス36と一般化熱コンダクタンス33,34との比を示す熱橋割合Cb/Csと、温度成層化ゾーンA1,A2・・・間の混合流熱コンダクタンスcijと、換気回路網の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数Jを最小にするように求めるパラメータ演算手段116を有するので、最適なパラメータを求めることができ、より精密なモデルができる。
さらに、本発明は上記課題を解決する方法であって、室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、モデル化する対象のデータを入力するステップと、室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化領域Aを作成するステップと、室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンBを作成するステップと、発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルーム領域Cを作成するステップと、ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網2を作成するステップと、ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンス33,34を求め、熱回路網3を作成するステップと、モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、を備えたので、精密なモデルを作成することができる。そして、精密なモデルにより、冷暖房の定常・非定常の熱負荷の予測ができ、空調機器設定の目安が正確に計算できる。また、部材毎の伝熱量が概算できるので、熱負荷低減アイテムの効果が概算できる。
また、温度境界層領域B及び前記熱プルーム領域Cが、複数のゾーンB1,B2,・・・C1,C2・・・により作成されるので、より精密なモデルができる。
また、一般化熱コンダクタンス33,34の数値を小さくまたは大きくすることで、温度成層化領域A内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化するので、強制対流と自然対流の両状態を同じモデル構造で表現できる。
また、熱橋52による熱橋熱コンダクタンス36を作成し、一般化熱コンダクタンス33,34と並列の熱流となる経路としてモデル化するので、より精密なモデルができる。
また、熱橋52による熱橋熱コンダクタンス36と一般化熱コンダクタンス33,34との比を示す熱橋割合Cb/Csと、温度成層化ゾーンA1,A2・・・間の混合流熱コンダクタンスcijと、換気回路網の流路の圧力損失係数ζとを、予測値と実測値との誤差の評価関数Jを最小にするように求めるので、最適なパラメータを求めることができ、より精密なモデルができる。
なお、本実施形態では、車両50のモデル作成について説明したが、これに限らず、建築物や構造物等の室内に適用してもよい。
本実施形態の室内温度分布作成装置が作成するモデルの概要を示す図である。 本実施形態の装置構成を示す図である。 車両を図1に示す領域に分割する例を示す図である。 図3に示す車両に換気回路網と熱回路網を構築しモデル化した図である。 熱橋を示す図である。 車両の熱橋をモデル化した図である。 車両内の頭部温度と足下温度を示す図である。 2次元的数表で最小化する組み合わせを示す図である。 熱橋割合を3次元方向として変化させることを示す図である。 実測時の外気温と日射量を示すグラフである。 室温推移の比較を示すグラフである。
符号の説明
1…室内温度分布作成装置、2…換気回路網、21…流路、3…熱回路網、31…与条件温度節点、32…未知数温度節点、33…第1熱コンダクタンス、34…第2熱コンダクタンス、35…節点への発熱量、36…熱橋熱コンダクタンス、50…車両、51…車室、52…熱橋、101…入力手段、110…制御手段、111…温度成層化領域作成手段、112…温度境界層領域作成手段、113…熱プルーム領域作成手段、114…換気回路網作成手段、115…熱回路網作成手段、121出力手段

Claims (10)

  1. 室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成装置において、
    室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成する温度成層化領域作成手段と、
    室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成する温度境界層領域作成手段と、
    発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成する熱プルーム領域作成手段と、
    前記ゾーン底面の静圧と前記ゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成する換気回路網作成手段と、
    前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成する熱回路網作成手段と、
    を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成装置。
  2. 前記温度境界層領域作成手段は複数の温度境界層ゾーンを作成し、前記熱プルーム領域作成手段は複数の熱プルームゾーンを作成することを特徴とする請求項1に記載の室内温度分布モデル作成装置。
  3. 前記熱回路網作成手段は、前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の室内温度分布モデル作成装置。
  4. 前記熱回路網作成手段は、熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の室内温度分布モデル作成装置。
  5. 前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めるパラメータ演算手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の室内温度分布モデル作成装置。
  6. 室内の温度分布をモデル化する室内温度分布モデル作成方法において、
    モデル化する対象のデータを入力するステップと、
    室内を複数のゾーンに分割し、上下温度分布を表現する温度成層化ゾーンを作成するステップと、
    室内外を画成する外皮が外気に接することで前記外皮の内表面側に下降流や上昇流を生じる温度境界層ゾーンを作成するステップと、
    発熱体から発生する熱による上昇流を生じる熱プルームゾーンを作成するステップと、
    前記ゾーン底面の静圧とゾーン間の空気移動量を求める換気回路網を作成するステップと、
    前記ゾーン間の熱の伝わりやすさを表す一般化熱コンダクタンスを求め、熱回路網を作成するステップと、
    モデル化した室内の温度分布を出力するステップと、
    を備えたことを特徴とする室内温度分布モデル作成方法。
  7. 前記温度境界層ゾーン及び前記熱プルームゾーンが、複数のゾーンにより作成されることを特徴とする請求項6に記載の室内温度分布モデル作成方法。
  8. 前記一般化熱コンダクタンスの数値を小さくまたは大きくすることで、前記温度成層化領域内の自然対流と強制対流の両状態をモデル化することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の室内温度分布モデル作成方法。
  9. 熱橋による熱橋熱コンダクタンスを作成し、前記一般化熱コンダクタンスと並列の熱流となる経路としてモデル化することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の室内温度分布モデル作成方法。
  10. 前記熱橋による熱橋熱コンダクタンスと前記一般化熱コンダクタンスとの比を示す熱橋割合と、温度成層化ゾーン間の混合流熱コンダクタンスと、換気回路網の流路の圧力損失係数とを、予測値と実測値との誤差の評価関数を最小にするように求めることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の室内温度分布モデル作成方法。
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