JP5539246B2 - 連成解析システム - Google Patents

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本発明は、連成解析方法および連成解析システムに関する。詳しくは、開口で連通する2つの対象空間のうち一方にCFDモデルを適用して解析し、他方に二層ゾーンモデルを適用して、煙流動を解析する連成解析方法および連成解析システムに関する。
従来より、建物内やトンネル内での火災時の煙の流れをシミュレーションして、火災時の居住者や通行者の避難の安全性を評価することが行われている。
この解析手法としては、以下の2通りが知られている。
第1に、二層ゾーンモデルにより解析が知られている。これは、対象空間を煙層と空気層に分割して、煙の流動を解析する。
この手法によれば、各層内では温度などの物理量が均一であると仮定して計算を行うため、短い計算時間で解析結果を得ることができる。
第2に数値流体力学(Computational Fluid Dynamics、以下CFDと呼ぶ)モデルによる解析が知られている。これは、対象空間を非常に微細な空間に分割して、煙の流動を解析するものである。この手法によれば、煙の性状を詳細に解析できる。
しかしながら、二層ゾーンモデルでは、各層内では物理量が均一であるとして扱うため、煙層内での煙の性状を詳細に解析できない。また、煙が空間内に瞬時に拡散するものとして取り扱うため、トンネルや大空間での煙の性状を正確に解析できない。
一方、CFDモデルでは、解析条件の設定に手間がかかるうえに、解析にかかる時間が非常に長くなる。
以上の問題点を解決するため、二層ゾーンモデルとCFDモデルとを組み合わせた連成解析が知られている。(非特許文献1、2参照)。
具体的には、火災が発生した室など、詳細な煙の流れを把握したい空間についてはCFDモデルを適用し、この空間に連通する室や廊下については二層ゾーンモデルを適用する。
Development of a hybrid field and zone model for fire smokepropagation simulation in buildings, Jinsong Hua, Jian Wang, Kurichi Kumar,Fire Safety Journal 40, pp.99-119,2005 Large Eddy Simulationと連成させたネットワークモデルの構築と検証、長峰康雄、文部科学省次世代IT基盤構築のための研究開発「革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発」ワークショップ(第8回)(2007年2月26日開催)の発表資料
しかしながら、以上の連成解析では、各モデル間のパラメータの受け渡し方法が不明であるため、連成解析を実現できない、という問題があった。
本発明は、連成解析を確実に実現できる連成解析方法および連成解析システムを提供することを目的とする。
請求項に記載の連成解析システムは、開口で連通する2つの対象空間のうち一方にCFDモデルを適用して解析し、他方に二層ゾーンモデルを適用して解析する連成解析システムであって、前回求めた前記他方の対象空間の圧力および温度が前記一方の対象空間の境界面における各セルの圧力、温度、および流速に与える影響を算定し、CFDモデル解析により、当該影響を考慮して、前記一方の対象空間の境界面における各セルの圧力、温度、および流速を算定するCFDモデル解析手段と、当該一方の対象空間の境界面における各セルの温度、および、前記他方の対象空間の前回の解析結果に基づいて、前記一方の対象空間の上部層と下部層との境界である層境界高さを算定し、当該一方の対象空間の層境界高さおよび前回求めた前記他方の対象空間の層境界高さに基づいて前記2つの対象空間の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する連成処理手段と、当該分配された質量流量およびエネルギー量に基づいて、二層ゾーンモデル解析により前記他方の対象空間の煙層と空気層との境界である層境界高さ、圧力、および温度を算定する二層ゾーンモデル解析手段と、を備えることを特徴とする。
請求項に記載の連成解析システムは、前記連成処理手段は、噴流プルームによる周辺空気の巻き込み量も考慮して、前記2つの対象空間の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配することを特徴とする。
この発明によれば、一方の対象空間にCFDモデルを適用して解析することで、詳細な性状を把握するとともに、他方の対象空間に二層ゾーンモデルを適用して解析することで、大まかな性状を把握する。このように解析方法を使い分けることにより、計算時間を短縮しつつ十分に詳細な解析結果を得ることができる。
さらに、各解析から得られる物理量を双方向で連成させることで連成解析を実現した。具体的には、二層ゾーンモデル解析から得られる圧力および温度をCFDモデル解析に取り入れるとともに、CFDモデル解析から得られる各セルの圧力、温度、および流速を、質量流量およびエネルギー量の分配を介して二層ゾーンモデル解析に取り入れた。これにより、連成解析を確実に実現できる。
また、2つの対象空間の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する際に、噴流プルームによる周辺空気の巻き込み量も考慮したので、連成解析の精度をより向上できる。
本発明によれば、一方の対象空間にCFDモデルを適用して解析することで、詳細な性状を把握するとともに、他方の対象空間に二層ゾーンモデルを適用して解析することで、大まかな性状を把握する。このように解析方法を使い分けることにより、計算時間を短縮しつつ十分に詳細な解析結果を得ることができる。さらに、各解析から得られる物理量を双方向で連成させることで連成解析を実現した。具体的には、二層ゾーンモデル解析から得られる圧力および温度をCFDモデル解析に取り入れるとともに、CFDモデル解析から得られる各セルの圧力、温度、および流速を、質量流量およびエネルギー量の分配を介して二層ゾーンモデル解析に取り入れた。これにより、連成解析を確実に実現できる。
本発明の一実施形態に係る連成解析システムの構成を示すブロック図である。 前記実施形態に係る対象空間である2つの室をモデル化した概念図である。 前記実施形態に係る連成解析システムの1サイクルの処理のフローチャートである。 前記実施形態に係る連成解析システムにおいて他方の室の物理量が一方の室の境界面のセルの物理量に与える影響を説明するための図である。 前記実施形態に係る連成解析システムにおいて一方の室の境界面のセルを高温セルまたは低温セルに分類する手順を説明するための図である。 前記実施形態に係る連成解析システムにおいて境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する手順を説明するための図である。 前記実施形態に係る連成解析システムにおける噴流プルームの概念図である。 前記実施形態に係る連成解析システムを適用する建物の断面図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る連成解析システム1の構成を示すブロック図である。
連成解析システム1は、CFDモデル解析手段10と、連成処理手段20と、二層ゾーンモデル解析手段30と、を備える。
CFDモデル解析手段10は、対象空間にCFDモデルを適用して解析する手段であり、対象空間を微細なセルに分割して、セル毎に圧力、温度、流速を計算する。
二層ゾーンモデル解析手段30は、対象空間に二層ゾーンモデルを適用して解析する手段であり、対象空間を煙層と空気層とに分割して、煙層および空気層の圧力や温度を計算するものである。
連成処理手段20は、CFDモデル解析手段10で計算されたデータを加工して、二層ゾーンモデル解析手段30に受け渡すデータを生成するものである。
以下、連成解析システム1の動作について説明する。この連成解析システム1は、ここでは、2つの室(Room1、Room2)を対象空間として解析する。
図2は、対象空間である2つの室(Room1、Room2)をモデル化した概念図である。Room1とRoom2とは隣接しており、扉などの開口を介して連通している。この状態で、Room1で火災が発生し、この火災による煙がRoom2に流れ込むとともに、Room2からRoom1に新鮮空気が流れ込む現象を解析する。
Room1についてはCFDモデルを適用し、CFDモデル解析手段10により、Room1を微細なセルに分割して、セル毎に圧力、温度、流速を算定する。
Room2については二層ゾーンモデルを適用し、二層ゾーンモデル解析手段30により、上部の煙層と下部の空気層とに2分割して、層毎に圧力および温度を算定する。
この連成解析システム1では、CFDモデル解析手段10、連成処理手段20、二層ゾーンモデル解析手段30の順に処理を実行するサイクルを繰り返す。
以下、連成解析システム1の1サイクルの処理について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、CFDモデル解析手段10により、前回のサイクルで求めたRoom2の圧力および温度がRoom1の境界面のセルの圧力、温度、および流速に与える影響を算定する。
具体的には、静圧、位置圧、前回のサイクルで求めたRoom1の流速から得られる動圧、およびサブグリッドスケールでの乱流エネルギーをまとめて、Room1における境界面の圧力とする。さらに、前回のサイクルで求めた境界面(図2に示す開口)での流入出の方向に応じて、Room2の温度をRoom1の境界面の温度とする。
ステップS2では、CFDモデル解析手段10により、Room2が与える影響を考慮して、Room1の各セルの圧力を算定する。
ステップS3では、CFDモデル解析手段10により、Room1の各セルの圧力値が収束しているか否かを判定する。この判定がYesである場合には、ステップS4に移り、Noである場合には、ステップS2に戻って再度各セルの圧力を算定する。
ステップS4では、CFDモデル解析手段10により、Room1の各セルの流速および温度を算定する。
ステップS5では、連成処理手段20により、前回のサイクルで求めたRoom2の空気層温度に基づいて、Room1の上部層と下部層との境界である層境界高さを算定する。
ステップS6では、連成処理手段20により、ステップS5で求めたRoom1の層境界高さおよび前回のサイクルで求めたRoom2の層境界高さに基づいて、Room1とRoom2との境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する。
ステップS7では、二層ゾーンモデル解析手段30により、分配された質量流量およびエネルギー量に基づいて、Room2の圧力を算定する。
ステップS8では、二層ゾーンモデル解析手段30により、Room2の圧力値が収束しているか否かを判定する。この判定がYesである場合には、ステップS9に移り、Noである場合には、ステップS7に戻る。
ステップS9では、二層ゾーンモデル解析手段30により、Room2の層境界高さ、煙層および空気層の温度、ならびに圧力を算定する。
次に、ステップS1における処理について説明する。
すなわち、Room2の圧力および温度がRoom1の境界面のセルの圧力、温度、および流速に与える影響を、以下のように算定する。
図4は、CFDモデルが適用されたRoom1と二層ゾーンモデルが適用されたRoom2との境界部分の概念図である。
二層ゾーンモデルが適用されたRoom2がCFDモデルが適用されたRoom1の境界面のセルkに与える圧力をP|interface、流速をU|interface、温度をT|interfaceとする。
セルの圧カP|interfaceは、PRoom2(H)、動圧ΔP、サブグリッドスケールでの乱流エネルギーkSGSを用いて、式(1)で表す。ここで、サブグリッドスケールでの乱流エネルギーkSGSとは、セル内に生じる乱流エネルギーを数値化したものである。
以下、HはRoom2の床面からのセルの中心位置までの高さ、ρはセルの密度、Tは温度、Uは流速、nは流れの方向(Room1からRoom2に向かう流れは+、Room2からRoom1に向かう流れは−とする)、δAはセルの境界面の面積である。また、添え字のkはセルの番号である。
Figure 0005539246
さらに、動圧ΔPについては、以下の式(2)で表される。また、PRoom2(H)については、静圧と位置圧に基づいて、以下の式(3)で表される。
Figure 0005539246
ここで、P0,Room2はRoom2の床面での静圧である。
また、流速U|interfaceについては、以下の式(4)で表される。
Figure 0005539246
また、温度T|interfaceについては、以下の式(5)、式(6)で表される。
Figure 0005539246
次に、ステップS5における処理について説明する。
すなわち、前回のサイクルで求めたRoom2の空気層温度に基づいて、Room1の上部層と下部層との境界である層境界高さを、以下の手順で算定する。
まず、図5に示すように、CFDモデルが適用されたRoom1の境界面のセルを、高温セルまたは低温セルに分類する。
具体的には、境界面のセルを特定の閾値を基準として分類するのではなく、セルの温度がRoom2の空気層の温度以上である場合、このセルを高温セルとし、セルの温度がRoom2の空気層の温度未満である場合、このセルを低温セルとする。
次に、高温セルのみで構成される領域を高温領域、低温セルのみで構成される領域を低温領域、高温セルと低温セルとが混在する領域を温度混在領域とする。
次に、Room1の層境界高さZRoom1を、高温セルの面積と低温セルの面積とで按分して決定する。すなわち、低温領域の最高高さをZ、高温領域の最低高さをZとし、層境界高さZRoom1を以下の式(7)に従って求める。
Figure 0005539246
ここで、low_tempは低温セル、high_tempは高温セルである。
次に、ステップS6における処理について説明する。
すなわち、ステップS5の処理で求めたRoom1の層境界高さおよび前回のサイクルで求めたRoom2の層境界高さに基づいて、境界面における質量流量、エネルギー量を、以下の手順で分配する。
Room1の層境界の高さZRoom1とRoom2の層境界の高さZRoom2によって、図6(A)、(B)の2パターンが考えられる。
図6(A)、(B)に示すように、CFDモデルが適用されたRoom1は上部層および下部層に分割され、二層ゾーンモデルが適用されたRoom2は煙層および空気層に分割される。
そして、表1に示すように、Room1の層境界の高さ、Room2の層境界の高さ、および煙の流れ方向の組合せで場合分けを行って、質量流量M、エネルギー量Uの流入出量を設定する。
以下、Cは定圧比熱である。また、添え字のUはRoom1の上部層またはRoom2の煙層、LはRoom1の下部層またはRoom2の空気層である。また、添え字の−>はRoom1からRoom2への流出を示し、<−はRoom2からRoom1への流出を示す。
Figure 0005539246
表1に示す変数名の質量流量Mおよびエネルギー量Uを、式(8)〜(14)に従って求める。
Figure 0005539246
Figure 0005539246
また、Room1の上部層からRoom2の空気層に流入する(c)の流れは、噴流プルームであるため、この噴流プルームによる周辺空気の巻き込み量を、以下の手順で考慮する。
図7は、噴流プルームの概念図である。
噴流プルームの質量流量MPlumeを以下の式(15)に従って求める。また、噴流プルームのエネルギー量EPlumeを以下の式(16)に従って求める。
以下、Qは開口噴流プルームにおける点火源の発熱速度、Zは点火源からRoom2の煙層下端までの高さ、ZはRoom1の上部層下端からRoom2の煙層下端までの高さである。
Figure 0005539246
さらに、Q、Z、Zは以下の式(17)〜(19)に従って求められる。
Figure 0005539246
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)Room1にCFDモデルを適用して解析することで、詳細な性状を把握する。一方、Room2に二層ゾーンモデルを適用して解析することで、大まかな性状を把握する。このように解析方法を使い分ける連成解析により、計算時間を短縮しつつ十分に詳細な解析結果を得ることができる。
この連成解析では、各解析から得られる物理量を双方向で連成させた。具体的には、二層ゾーンモデル解析から得られる圧力および温度をCFDモデル解析に取り入れ、CFDモデル解析から得られる各セルの圧力、温度、および流速を質量流量およびエネルギー量の分配を介して二層ゾーンモデル解析に取り入れた。よって、連成解析を確実に実現できる。
(2)Room1、Room2の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する際に、噴流プルームによる周辺空気の巻き込み量も考慮したので、連成解析の精度をより向上できる。
(3)例えば、図8に示すような建物40に連成解析システム1を適用する。すなわち、図8は、建物40の断面図である。この建物40は、3層に設けられた居室41と、各居室41に連通する吹き抜け空間であるホール42と、を備える。各居室41とホール42との間には、廊下43が跳ね出している。また、廊下43とホール42との境界は防火区画44となっており、防火シャッタが設けられる。
連成解析システム1により、ホール42にCFDモデルを適用し、各居室41および廊下43に二層ゾーンモデルを適用することで、連成解析により計算時間を短縮しつつ十分に詳細な解析結果を得ることができる。
よって、ホール42内の煙の複雑な性状を把握できるので、防火シャッタなどの防火設備を適切な位置に配置したり居住者の避難経路を詳細に検討したりして、安全性を向上しつつ、施工コストを低減できる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、Room1で火災が発生し、この火災による煙がRoom2に流れ込む現象を解析したが、これに限らず、Room2で火災が発生し、この火災による煙がRoom1に流れ込む現象を解析することも可能である。
また、本実施形態では、Room1、Room2の2室を解析対象としたが、これに限らず、3以上の室を解析対象としてもよい。
1…連成解析システム
10…モデル解析手段
20…連成処理手段
30…二層ゾーンモデル解析手段
40…建物
41…居室
42…ホール
43…廊下

Claims (2)

  1. 開口で連通する2つの対象空間のうち一方にCFDモデルを適用して解析し、他方に二層ゾーンモデルを適用して解析する連成解析システムであって、
    前回求めた前記他方の対象空間の圧力および温度が前記一方の対象空間の境界面における各セル圧力、温度、および流速に与える影響を算定し、CFDモデル解析により、当該影響を考慮して、前記一方の対象空間の境界面における各セルの圧力、温度、および流速を算定するCFDモデル解析手段と、
    当該一方の対象空間の境界面における各セルの温度、および、前記他方の対象空間の前回の解析結果に基づいて、前記一方の対象空間の上部層と下部層との境界である層境界高さを算定し、当該一方の対象空間の層境界高さおよび前回求めた前記他方の対象空間の層境界高さに基づいて前記2つの対象空間の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配する連成処理手段と、
    当該分配された質量流量およびエネルギー量に基づいて、二層ゾーンモデル解析により前記他方の対象空間の煙層と空気層との境界である層境界高さ、圧力、および温度を算定する二層ゾーンモデル解析手段と、を備えることを特徴とする連成解析システム。
  2. 前記連成処理手段は、噴流プルームによる周辺空気の巻き込み量も考慮して、前記2つの対象空間の境界面における質量流量およびエネルギー量を分配することを特徴とする請求項1に記載の連成解析システム。
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