以下、図面を参照しつつ本発明に係る視認性評価システム、視認性評価方法、及び視認性評価プログラムについて詳細に説明する。なお、本発明に係る視認性評価は、様々な目的に応じた視認性を評価することができる。例えば、建物の開口部から侵入者が侵入することを防止するために、通行人が侵入者を認識するのに必要とされる視認性の評価や、建物内に住人が在宅していることを外部から認識するのに必要とされる視認性の評価や、ランドマーク、標識、看板などに対する複数個所からの視認性の評価を行うことができる。
図1は、本発明の実施形態に係る視認性評価方法を実行する視認性評価システム1及び視認性評価プログラムによる機能構成を示すブロック図である。図2は、視認性評価において用いられる3次元モデルの一例を示す図である。以下に説明する視認性評価システム1において、構成要素たる各部は実際にはコンピュータ上で動作するプログラムとして実現される。プログラムは予めコンピュータにインストールされていてもよく、記憶媒体に記憶させて配布されてもよく、ネットワークを介して配布されてもよい。図1に示すように、視認性評価システム1は、情報入力部10、空間モデリング部20、視対象配置部30、視線起点配置部40、視認性阻害オブジェクト設定部50、評価部60、グラデーション作成部70、出力部80、情報記憶部90を備えている。
情報入力部10は、視認性評価に必要な各種情報が外部より入力される機能を有している。情報入力部10に対する情報入力は、記憶媒体やネットワークを通じてデータ(ファイル)を取り込んでもよく、キーボードなどの入力装置から入力してもよい。または、情報記憶部90に記憶されている情報が入力されてもよい。情報入力部10に入力される情報には、評価対象となる対象建物に関する空間情報が含まれている。この空間情報は、少なくとも建物情報、敷地情報、接道情報、外構情報を含んでいる。
建物情報は、防犯性能の評価対象となる建物の形状や構造に関する情報を含んでいる。形状としては外形(サーフェス)があればよい。建物情報には、少なくとも、建物200の外壁201の形状、開口部202の形状及び位置データが含まれていることが好ましい。また、開口部202に関する情報としては、種別(勝手口、窓など)、形式(引違い、縦辷り、横辷りなど)、高さ(掃き出し窓、腰窓、高窓など)等の情報も含まれている場合、評価精度を向上させることができる。評価の対象たる建物200のデータは必須であるが、隣家が隣接している場合には、隣家の建物のデータも入力されることが好ましい。隣家の建物情報には開口部に関する情報が不要であるため、簡略なものとしてもよい。例えば、近隣の地図データ(平面図)から、建物の平面輪郭に基づいて、例えば二階建ての高さに挿引して3次元データとすることができる。
敷地情報は、建物200周囲の敷地300の形状に関する情報を含んでいる。建物200の建っている部分に関する情報は必須ではない。敷地情報には、敷地300の外周形状(輪郭の形状)のみならず、道路400からの高さも含まれる。なお、道路400からの高さについては、接道情報において敷地300からの低さ(高さ)として入力されてもよい。
接道情報は、敷地300に接する道路400の形状及び通行量に関する情報を含んでいる。道路400の形状としては、幅および傾斜が含まれる。通行量としては、季節、天候、時間帯別の通行量の分布を考慮してから予めデータベース化したものを採用することができる。通行量を測定することが困難な場合、その道路400を使用している住宅の数や、その道路400が行き止まりであるか、通り抜けできるかなどの通行量と関係の深い他の特徴を用いることもできる。
外構情報は、外構350の形状及び種別に関する情報を含んでいる。外構350は、敷地300の外周に設けられており、道路400と敷地300との間に設けられるものと、隣家の境界に設置されるものの両方を含む。また、敷地300内に視界を遮るような木立や柵などの構造物がある場合には、外構情報に含めることができる。外構350の種別としては、塀、柵、生け垣、樹木、フェンスなどが想定される。形状としては、例えば生け垣やフェンスなどであっても詳細な形状データとはせず、ブロック塀に似た矩形モデルとして入力してよい。また、外構情報には、外構350の透過率に関する情報も含まれている。ここで、透過率とは、塀、柵、生け垣、樹木、フェンスなどに正対したときに、それらの奥を見通せる割合を示す。塀や柵の場合は、塀や柵の全平面面積に対する空隙の割合を示す。また、塀や柵の空隙に相当する部分に半透明のガラス板や樹脂板が用いられている場合は、それらの材料の特性値である可視光透過率を空隙面積に乗じて、空隙面積として考慮してもよい。生け垣、樹木の場合も、基本的には、それらに正対した時の奥を見通せる空隙割合であるが、季節や植栽形状によって、影響を受けるので、概算値として設定してもよい。さらに、縦桟フェンスのような場合は、見る角度によって、空隙面積割合が異なってくるので、桟のピッチや幅、及び奥行きから正対したときの空隙面積に対し、角度依存の補正を行うことができる。
空間モデリング部20は、情報入力部10で入力された各種情報に基づいて3次元モデルを構築する機能を有している。すなわち、空間情報に含まれる建物情報、敷地情報、接道情報、外構情報に基づいて、建物200、敷地300、外構350、道路400の3次元モデルを構築(モデリング)することができる。なお、ここでの3次元モデルとは、物理的な立体模型ではなく、計算上の3次元オブジェクトである。この3次元オブジェクトは、PC画面上に構築される。
図2に示す3次元モデルの例では、建物200は複数の開口部202を有する二階建ての家である。後の説明のために、複数の開口部202のうち道路400に面した窓を開口部202Aとし、道路400と垂直をなす壁に設けられている窓を開口部202Bとする。また、建物200の玄関前を真っ直ぐな道路400が延びているものとする。また、道路400に沿って柵350A、柵350Bが設けられており、柵350Aと柵350Bとの間の玄関前における部分は構造物が設けられていない開放部分350Cとされている。また、道路400と垂直をなす一方の外構350として視界を遮るような高い塀350Dが設けられており、他方の外構350として視界を遮らない低い生け垣350Eが設けられている。
視対象配置部30は、3次元モデル中に視対象を配置する機能を有している。視対象は、本実施形態に係る視認性評価システム1及び視認性評価方法によって視認性を評価すべき対象となる部分である。視対象は、3次元モデル中の任意の位置に配置される。視対象は、3次元モデル中に一つだけ配置されてもよく、複数配置されてもよい。また、視対象配置部30は、建物情報及び敷地情報に基づいて3次元モデル中に構築される建物200に対して、視対象の位置を特定する視対象位置特定部31を有している。
視対象の配置の一例として、図2(a)の示すように、3次元モデル中にメッシュを設定し当該メッシュにおけるグリッドを視対象212とすることができる。具体的には、敷地300内の任意の位置にメッシュで切られた評価演算面210が設置されており、当該メッシュに設定されたグリッドが視対象212とされる。グリッドは、メッシュの交点に設定されていてもよく、メッシュの中央に設定されていてもよい。グリッドの高さは所定の値に固定されるものではなく、高さを変えて自由に設定することができる。グリッドの間隔は、システムにおいて予め設定することができ、またオペレータ(本システムの使用者)が設定を変更できるようにすることが好ましい。特に、建物200の軸組位置を原点として、建物200の設計モジュール寸法によりグリッドを構成することが好ましい。また、評価演算面210は、図2(a)のように水平面であってもよく、立面であってもよく、その両方であってもよい。評価演算面210の位置や大きさは、オペレータがマウスなどの入力デバイスを操作して指定することができる。例えば評価演算面210を小さな面積にて設定し、グリッドを細かく設定することにより、特に評価したい箇所(侵入経路となりうる箇所)を詳細に演算できるようにしてもよい。開口部202の周辺のみのメッシュを細かく設定することもできる。図2(a)では、後の説明のために、開口部202Aの手前におけるグリッドの一つを視対象212Aとし、開口部202Bの手間におけるグリッドの一つを視対象212Bとする。視対象212A,212Bは、開口部202A,202Bから侵入する場合における、侵入者の立ち位置と仮定することができるものとする。図2(b)においては評価演算面210のメッシュ及びグリッドは省略され、視対象212A,212Bのみが示されている。
また、視対象配置部30は、他の方法によって3次元モデル中に視対象を配置してもよい。例えば、敷地300の空中に平面状の格子を設定し、各格子点に立体モデルとして球体、円筒、立方体などの任意の形状のモデルを配置し、一または複数の立体モデルを視対象としてもよい。また、一つの水平面内に格子を設定する必要はなく、傾斜した平面に格子を設定してもよく、部分的に異なる高さに視対象となる立体モデルを配置してもよい。また、等間隔に立体モデルを配置する必要はなく、より詳しく評価したい部分に多くの立体モデルを配置してもよい。すなわち、敷地300上空間の任意の位置に視対象となる立体モデルを配置することができる。例えば、評価したい開口部202の手前に一つの視対象のみを配置してもよい。例えば、図2(b)の212A、212Bに示す位置のみに視対象となる立体モデルを配置してもよい。
視線起点配置部40は、3次元モデルに、視対象212を視認する視線の起点となる視線起点450を配置する機能を有している。また、視線起点配置部40は、接道情報に基づいて3次元モデル中に構築される道路400に配置される視線起点450の位置及び数を特定する機能を有する視線起点位置特定部41を有している。視線起点450は、道路400から評価すべき視対象212へ向かう視線の起点、すなわち道路400を通過する通行人の目を模擬したものである。本実施形態では、視線起点配置部40は、3次元モデルにおいて道路400上に通行人の視線を模擬した仮想的な光源を視線起点450として1つ、あるいは複数配置する。視線とは人間などの目が向いている方向をいう観念であり、実際には目が光を受けるものである。本実施形態では、人間の目を点光源に置き換えることによって、視線という観念を点光源から特定の角度領域に向けて放射状に発散する光に置き換えて具現化している。点光源を配置するとは、具体例として、3次元モデルの中に点光源の属性を有する光源オブジェクトを配置することである。なお、点光源に代えて面光源等を用いてもよい。複数配置するとは、通行人の移動の軌跡を表すように、原則として一定間隔で配置することである。通行人を模擬する光源の配置を考えたとき、最も望ましいのは連続的に配置することである。しかし、通行人は必ずしも沿道の建物200を見ながら歩いているわけではないことを考慮すると、自然監視性はそもそも確率論であるため、視線起点450は所定間隔で配置されていれば充分であり、また、これによって演算負荷を飛躍的に軽減することができる。配置の一例として、道路400の端から0.5mの位置に、0.5m間隔で配置することができる。視線起点450の高さは、一般的な人の視線高さを模擬するため、例えば1.5mに設定することができる。
図3は、道路400上での視線起点450の配置を説明する図である。視線起点450は、図3(a)に示すように道路400の中央に配置されてもよく、図3(b)に示すようにいずれか一方に寄せて配置されてもよい。接道情報に歩道の存在があれば、路肩から数十cmの位置に寄せて配置されてもよい。ただし、建物200の大きさに対して道路400には無視できない幅があり、道路400の右肩を歩くか左肩を歩くかによって視線起点450による視認性は変動する。そこで、図3(c)に示すように、道路400の両側の沿道に交互に視線起点450を配置してもよい(いわゆる千鳥状に配置する)。これによって、最小限の光源数で効率よく適切に視線を再現することができる。
視認性阻害オブジェクト設定部50は、3次元モデル中において、視対象212と視線起点450との間で視認性を阻害する視認性阻害オブジェクトを設定する機能を有している。また、視認性阻害オブジェクト設定部50は、外構情報に基づいて3次元モデル中に構築される敷地300と道路400との間の視認性阻害オブジェクトの種類を特定する視認性阻害オブジェクト特定部51を備える。本実施形態では、上述の外構、すなわち視対象212と視線起点450との間に配置されている塀、柵、生け垣、樹木、フェンスなどを、視認性を阻害する視認性阻害オブジェクトとして設定することができる。視認性阻害オブジェクト特定部51は、3次元モデル中において視認性阻害オブジェクトとして設定したものが、塀、柵、生け垣、樹木、フェンスなどのうち何れであるのかを特定することができると共に、どのようなタイプのものであるのか(例えばフェンスの場合、横桟であるか、縦桟であるか、あるいはその組み合わせであるかなど)を特定することができる。視認性阻害オブジェクトは、特定された種類に応じて所定の透過率が設定されている。
図2に示す例では、道路400と敷地300との間に設けられている柵350A及び柵350Bが、視認性阻害オブジェクトとして設定される。柵350A及び柵350Bは、視対象212に対する視線起点450からの視認性を減衰させる。また、道路400からの視認性を完全に阻害する塀350Dも、視認性阻害オブジェクトとして設定してもよい。この場合、塀350Dは、透過率0%の視認性阻害オブジェクトとして設定される。なお、視線起点450からの視認性を阻害しない開放部分350Cや生け垣350Eは、視認性阻害オブジェクトとして設定されなくてもよい。ただし、後の演算のための便宜上、透過率100%の視認性阻害オブジェクトとして設定してもよい。
評価部60は、3次元モデル中における視対象212の視認性を視線評価値として数値化する機能を有している。図2に示すように、3次元モデル中に視対象212が複数配置されている場合、評価部60は、全ての視対象212についての視認性を数値化することができる。評価部60は、視線到達量演算部61、視認性数値化処理部65を備えている。
視線到達量演算部61は、3次元モデル中において、所定の視線起点450から所定の視対象212へ到達する視線到達量を、実測データに基づいて演算する機能を有している。視線到達量演算部61は、視認性阻害オブジェクトを介することによって視認性が減衰した視線の視線到達量を演算することができる。また、視線到達量演算部61は、視認性阻害オブジェクトを介さない視線(例えば図2の開放部分350Cや生け垣350Eを通る視線)の視線到達量も演算することができ、この場合は視距離によって視線が減衰し、あるいは建物200によって視線が遮られるか否かで(遮られる場合は視線到達量は0%となる)視線到達量を演算することができる。なお、視認性阻害オブジェクト設定部50が、視認性を阻害するものが何も存在しない部分(例えば図2の開放部分350Cや生け垣350E)も透過率100%の視認性阻害オブジェクトとして設定した場合、視線到達量演算部61は、視線起点450から視対象212へ到達する視線は、全て視認性阻害オブジェクトを介するものとして演算することができる。
視線到達量演算部61は、3次元モデル中に複数の視対象212が配置されている場合は、所定の一の視線起点450から全ての視対象212に対しての視線到達量を演算することができる。また、3次元モデル中に複数の視線起点450が配置されている場合は、全ての視線起点450から所定の一の視対象212へ向かう視線の視線到達量を演算することができる。演算の順番は特に限定されず、例えば、一つの視対象212に対して全ての視線起点450からの視線到達量が順次演算された後に、他の視対象212についての演算が行われてもよく、一つの視線起点450から全ての視対象212に対しての視線到達量が順次演算された後に、他の視線起点450からの演算が行われてもよい。
視線到達量演算部61は、視線起点450と視対象212との間の視距離を測定する視距離測定部62と、視認性阻害オブジェクトの種別に応じて、視認性阻害オブジェクトの透過率を設定する透過率設定部63と、視距離及び視認性阻害オブジェクトの透過率に基づいて視線到達量を演算する演算部64と、を備えている。視距離とは、演算の対象となっている視線起点450と視対象212との間の距離であり、例えば図2に示す視線起点450Aと視対象212Bとの間の距離である。透過率設定部63は、演算の対象となっている視線起点450と視対象212との間に存在する視認性阻害オブジェクトの透過率を設定することができる。例えば、図2に示す例では、視線起点450Aと視対象212Bとの間に配置されている柵350Aについて、外構情報に基づいて透過率を設定することができる。なお、視認性阻害オブジェクトの透過率が視線の角度によって変動するタイプのものであった場合、演算の対象となっている視線起点450及び視対象212の位置関係から、角度に基づいた透過率を設定してもよい。演算部64は、実測データに基づいて設定されている評価関数を用いて演算を行い、当該評価関数は、視距離及び透過率に基づいて視線到達量を導出可能な関数である。具体的に、評価関数は、以下の式(1)〜式(2)によって定義される。この評価関数は、情報記憶部90に予め格納しておくことができ、必要に応じて読み出すことができる。
(i)0≦T≦T1のとき
z=z0×(kD×log2D+kT×log2T+CA)/100 …式(1)
(ii)T1<T≦100のとき
z=z0×(kD×log2D+CB)/100 …式(2)
ただし、 z:視線到達量
z0:視線起点での視線量強度
D:視距離(m)
T:前記視認性阻害オブジェクトの透過率(%)
kD:視距離Dに関する比例定数
kT:透過率Tに関する比例定数
CA,CB:所定の定数
T1:視線到達量が透過率及び視距離の影響を受ける範囲における
透過率の上限値
ここで、図4〜図8を参照して、実測データに基づいて設定されている評価関数である式(1)〜式(2)の設定方法の一例について、実測データの測定方法を踏まえて説明する。ただし、測定のためのモデルや測定方法、及び実測データから評価関数を設定する方法は、以下に示すものに限定されない。また、防犯を目的とした視認性評価を前提として実験を行っているが、その他の目的に係る視認性評価を前提とした実験を行うことで評価関数を設定してもよい。
図4は、実測データ収集のための実験モデル(3次元モデルではなく、実物のモデルである)を示す図である。図4(a)は、実験モデルに係る外構及び建物を道路側から見た図である。図4(b)は、実験モデルにおける通行人、侵入者、外構、建物の位置関係を示す図であり、図4(b)におけるZ1の部分は実験モデルの平面図を示し、Z2の部分は外構を基準として通行人あるいは侵入者までの距離を示し、Z3の部分は通行人から侵入者までの視距離を示し、Z4の部分は実験モデルの立面図を示している。
図4に示すように、建物STは、道路から見て垂直に並ぶ三つの開口部を有しており、外構として壁W1,W2,W3及びフェンスFで囲まれている。三つの開口部のいずれかの位置に、それぞれ侵入者BP1,BP2,BP3を配置することができる。フェンスFは建物STの三つの開口部に対応する位置のみに設けられており、その他の部分は完全に視界を遮る(透過率T=0%)壁W1,W2,W3が配置されているため、通行人はフェンスFのみから建物STの敷地の様子を視認することができる。当該外構における視認区間VE、すなわちフェンスFの幅は、フェンスFの透過率Tに角度依存の影響を考慮しなくてよい範囲である0〜2mに設定される。このフェンスFとして、透過率Tが10%、22%、39%、56%、93%(小数点以下の値まで示すと、透過率T=9.8%、21.7%、38.9%、56.2%、92.8%であり、図6及び図7のプロット及び回帰直線を設定する際は、解析を正確に行うために小数点以下を考慮したが、図5や明細書中の説明では、小数点以下を四捨五入した値で説明する)のものを用意した。フェンスFから侵入者までの距離をB2とした場合、侵入者BP1の場合はB2=12mであり、侵入者BP2の場合はB2=8mであり、侵入者BP3の場合はB2=4mである。
このような建物STに対して、被験者となる通行人P1〜P4を外構前の歩道を一定歩行速度で、合計58人歩かせた。通行人P1〜P4は、ラインL1,L2,L3上を歩いた。フェンスFと通行人との間の距離をB1とした場合、ラインL1の場合はB1=1mであり、ラインL2の場合はB1=9mであり、ラインL3の場合はB1=26mである。本実験では、通行人P1〜P4と侵入者の立ち位置を調整することで、視距離Dを5m、9m、13m、21m、38mの五つの条件で実験を行った。視認性の評価としては、視対象として建物STの開口部前に存在する人間自体を設定した場合と、視対象として当該人間が手に持っている工具を設定した場合について、それらの視対象の見え方について「1:はっきり見えた」、「2:まあまあ見えた」、「3:どちらともいえない」、「4:あまり見えない」、「5:全く見えない」の五段階で回答させた。
実施した実験条件と実験結果を図5に示す。本実験では、同じ実験条件にて2回の測定(「実験1」と「実験2」)を行った。実験結果を示す「1比率」とは、所定の実験条件において、被験者たる通行人の回答のうち、「1:はっきり見えた」と回答した人数を当該実験に参加した人数(58人)で除した値を100分率で表したものである。図5に示す実験結果のうち、以下の検討においては、工具の視認性に対する1比率を用いる。敷地内に人間が存在しているだけでは、当該人間が侵入者であるか否かの認識ができず(例えば、住人である可能性や、業者である可能性もあるため)、侵入用の工具を視認することができて初めて防犯のための視認性の評価ができるからである。
図5の結果に基づいて、視距離Dを底=2とする対数をとった値を横軸に設定すると共に、視対象を工具に設定した場合の1比率を縦軸に設定し、実験1及び実験2におけるフェンスFの透過率T=93%、39%、22%、10%についての結果をプロットした場合、図6(a)に示すようになった。また、フェンスFの透過率Tを底=2とする対数をとった値を横軸に設定すると共に、視対象を工具に設定した場合の1比率を縦軸に設定し、実験1及び実験2における視距離=5m、9m、13m、21m、38mについての結果をプロットした場合、図6(b)に示すようになった。なお、図6及び図7において「E」で示したプロットについては、定性的な視認性の特徴から著しく外れているため、以下の説明において回帰分析上、除外した。図6(a)に対して回帰分析を行った結果、回帰直線DL1、DL2、DL3、DL4を設定することができた。回帰直線DL1、DL2、DL3、DL4の傾きはほぼ同一傾向を示し、それらの傾きの平均は−26.4となった。
ここで、本発明者らは、図6(b)の結果を解析することで、ある程度透過率Tが大きくなると視認性(工具に対する1比率)の向上が見られないことを見出した。すなわち、ある透過率T1を超えたら、視距離が一定である限り視認性は変わらないことを見出した。図6(b)では、T1=50%であると解析し、透過率56%及び93%における視認性は透過率50%における視認性と同じ値であるとし、透過率56%及び93%における結果を透過率50%の位置にプロットし直した。このようにプロットし直したグラフを図7に示す。図7に示すグラフに対して回帰分析を行った結果、回帰直線CL1、CL2、CL3、CL4、CL5を設定することができた。回帰直線CL1、CL2、CL3、CL4、CL5の傾きはほぼ同一傾向を示し、それらの傾きの平均は15.5となった。
図6及び図7の解析の結果より、フェンスFの透過率TがT1を超える領域では、視認性(工具に対する1比率)は、ほとんど透過率Tに影響せず、視距離Dに影響していることが理解される。一方、フェンスFの透過率TがT1以下の領域では、視認性(工具に対する1比率)は、視距離Dが一定であれば、フェンスFの透過率Tの対数に一次近似することができ(このとき、傾き≒15.5と近似できる)、透過率Tが一定であれば、視距離Dの対数に一次近似できることが分かった(ことのき、傾き≒―26.4と近似できる)。また、通行人とフェンスFの距離及びフェンスFと侵入者の距離によって、視距離Dが同じであってもフェンスFが通行人の近くに配置される場合と通行人から離れて配置される場合があるが、このような位置関係は視認性にはほぼ影響を与えず、視距離Dと透過率Tの関係によって視認性が決まることを本発明者らは見出した。以上のことを数式として表すと、以下のように示される。また、T1は、「視線到達量が透過率及び視距離の影響を受ける範囲における透過率の上限値」と定義できる。ここでは、T1=50%と設定することができる。
[0 ≦ 透過率T(%) ≦ T1(=50%) のとき]
工具に対する1比率をZ(%)、視距離をD(m)、フェンスFの透過率をT(%)とした場合、工具に対する1比率は式(3)のように表され、式(4)から式(5)が導き出され、式(6)から式(7)が導き出される。従って、式(5)及び式(7)から式(8)が導き出される。
Z=f(D,T) …式(3)
∂Z/∂log2D= kD …式(4)
Z(T一定)=kD×log2D+C1 …式(5)
∂Z/∂log2T=kT …式(6)
Z(D一定)=kT×log2T+C2 …式(7)
Z=kD×log2D+kT×log2T+C3 …式(8)
一方、図6(a)よりkD≒−26.4とすることができ、図7よりkT≒15.5とすることができるため、当該値を式(8)に与えると、式(9)を得ることができる。ここで、C3を導き出すための基準点を設定する。図5より、「視距離D=13m、透過率T=56%」においてZ=45%、87%という結果が得られ、「視距離D=13m、透過率T=93%」においてZ=57%、61%という結果が得られており、これらの4つのZの値の平均値は62.5%となる。上述のように透過率T=56%、93%の視認性はT=50%と同等とみなしているため、「視距離D=13m、透過率T=56%、93%」の条件は「視距離D=13m、透過率=50%」に置き換えて演算することができる。従って、C3を演算するための基準点として「視距離D=13m、透過率T=50%のときに、Z=62.5%」を設定することができる。この基準点の値を式(9)に代入すると、C3=73となり、式(10)を得ることができる。百分率で表される式(10)のZを、視線起点での視線量強度z0を用いて視認性を示す量で定義される値(すなわち視線到達量z)を求めるための式で表すと、最終的な評価関数として式(11)を得ることができる。この式(11)が上述の式(1)に対応する。この視線量強度z0は、任意の値を設定することができる。
Z=−26.4×log2D+15.5×log2T+C3 …式(9)
Z=−26.4×log2D+15.5×log2T+73 …式(10)
z=z0×(−26.4×log2D+15.5×log2T+73)/100 …式(11)
[T1(=50%) < 透過率T(%) ≦100 のとき]
この場合、工具に対する1比率Z(%)は、透過率Tにはよらず、視距離Dのみの関数となるため、上述の式(5)のような式で表される。ここで、透過率T=T1(=50%)における境界部分においては式(10)で導き出されるZと同じ値となるため、式(10)においてT=50%とされたZを式(5)に代入することで、C1=160が導き出され、式(12)が得られる。百分率で表される式(12)のZを、視線起点での視線量強度z0を用いて視認性を示す量で定義される値(すなわち視線到達量z)を求めるための式で表すと、最終的な評価関数として式(13)を得ることができる。この式(13)が上述の式(2)に対応する。この視線量強度z0は、任意の値を設定することができる。
Z=−25×log2D+160 …式(12)
z=z0×(−25×log2D+160)/100 …式(13)
なお、上述の式(11)及び式(13)に係る評価関数を用いた場合、視線到達量zが0より小さい値となる場合もあるが、実情に合わせ、その場合は視線到達量z=0として演算する。
上述のように導き出された評価関数である式(11)及び式(13)と、実測に係る実験結果との比較を行う。式(11)または式(13)の評価関数を用いて演算された視線到達量を横軸に設定し、図5に示す工具に対する1比率を縦軸に設定した場合、図8に示す結果となった。なお、式(11)及び式(13)では、比較のために便宜上、視線量強度z0=100として演算を行った。図8において傾き=1の直線VLが示されているが、プロットされた点が当該直線VLに近いほど評価関数による結果が実験結果に近いことを示し、プロットされた点が直線VL上に位置するときは評価関数による結果が実験結果と一致していることを示す。図8から理解されるように、ほとんどの点が直線VL付近にプロットされており、演算結果と実験結果の相関性が良く、評価関数が実測データに即した関係式であることが確認される。
なお、式(3)〜式(13)では、式(1)及び式(2)におけるT1、kD、kT、CA、CBの一例として、所定の実測データから導き出された具体的な数値を例示したが、これらの数値に限定されるものではない。評価関数を導き出すために用いる実測データ、及びその解析結果によって、適宜変更されてもよい。また、図8では比較のために便宜上、視線量強度z0=100としたが、この値に限られない。
図1及び図2に戻り、再び視認性評価システム1の構成の説明を行う。視認性数値化処理部65は、視線到達量演算部61で演算した視視線到達量に基づいて、視認性の数値化を行う機能を有している。具体的に、視認性数値化処理部65は、積算視線到達量演算部66、充分視線到達量認定部67、視線評価値演算部68を備えている。
積算視線到達量演算部66は、視線到達量演算部61が演算した視線到達量に基づいて、1または複数の視線起点450から一つの視対象212へ到達する視線の積算量を示す積算視線到達量を演算する機能を有している。積算視線到達量演算部66は、演算対象となる視対象212を一つ設定し、当該視対象212に対する全ての視線起点450からの視線の視線到達量を取得し、全ての視線起点450に係る視線到達量の総和を積算視線到達量とすることができる。また、3次元モデル中に複数の視対象212が設定されている場合、積算視線到達量演算部66は、全ての視対象212についての積算視線到達量を演算することができる。図2(b)に示す例において、視対象212A及び視対象212Bについての積算視線到達量の演算方法について説明する。まず、視対象212Bは道路400と垂直な壁面に設けられた開口部202Bに対応する位置に配置されているため、視線起点450A及び視線起点450Bからの視線は柵350Aを介して視対象212Bへ到達するが、視線起点450Cからの視線(更に視線起点450Dよりも紙面下方における各視線起点からの視線)は塀350Dによって完全に阻害されてしまう。また、視線起点450Dからの視線(更に視線起点450Dよりも紙面上方における各視線起点からの視線)は建物200の壁面によって完全に阻害されてしまう。従って、視線起点450Aからの視線の視線到達量及び視線起点450Bからの視線の視線到達量は所定の値となるが、その他の視線起点450からの視線の視線到達量は全て0となる。従って、例えば、視線起点450Aの視線到達量を20とし、視線起点450Bの視線到達量を22とした場合、視対象212Bにおける積算視線到達量は42と演算することができる。一方、視対象212Aは道路400に面した開口部202Aに対応する位置に配置されている上、手前に配置されている柵350Bが一定の透過率を有しているため、多くの視線起点450からの視線が視対象212Aへ到達することができ、更に、角度によっては視線を阻害しない開放部分350Cや生け垣350Eを通過する視線も視対象212Aに到達することができる。すなわち、図2(b)に示す範囲では(柵350A,350Bの透過率にもよるが)ほぼ全ての視線起点450からの視線の視線到達量は所定の値を持つことができる。これによって、視対象212Aにおける積算視線到達量は、視対象212Bに比して大幅に大きな値となる。
なお、積算視線到達量演算部66は、各視線起点450からの視線到達量をそのまま足し合わせることによって積算視線到達量を演算したが、これに限定されない。例えば、評価関数を用いて導き出された視線到達量を評価し易い値に変換し、当該値を積算してもよい。更に、状況に応じて重み付けしたものを足し合わせることによって積算視線到達量を演算してもよい。例えば、階段や車止めなどのように歩行者の注意がそれる個所については重み付けを小さくすることができる。
充分視線到達量認定部67は、視対象212に対する積算視線到達量として充分であると判定される基準値として充分視線到達量を認定する機能を有している。例えば、開口部からの侵入を防止する防犯上の目的で視認性の評価を行う場合、防犯上の安全性を充分に確保するのに必要とされる積算視線到達量を実験やシミュレーションなどによって予め決定しておき、充分視線到達量として情報記憶部90に格納しておくことができる。この充分視線到達量は、視認性評価の目的に応じた値をそれぞれ格納しておくことができる。なお、視線起点配置部40が、視線起点450の配列におけるピッチ(隣り合う視線起点450同士の間の距離)を複数の値に変化させることができる場合、それぞれのピッチに応じた充分視線到達量を用意しておくことが好ましい。視線起点450のピッチの変化により、積算視線到達量演算部66の演算値が変化するからである。また、視線起点配置部40が、視線起点450の配列におけるパターンを変化させることができる場合(例えば、図3(b)のような直線配列パターンから、図3(c)のような千鳥配列パターンに変化させる)、それぞれのパターンに応じた充分視線到達量を用意しておくことが好ましい。視線起点450の配列パターンの変化により、積算視線到達量演算部66の演算値が変化するからである。
視線評価値演算部68は、積算視線到達量及び充分視線到達量に基づいて視認性を数値化して表した視線評価値を演算する機能を有している。この視線評価値を演算するための式の一例として、式(14)に示すものを用い、視線評価値を百分率で表すことができる。このように視認性に係る視線評価値を演算することによって、評価対象となっている視対象212が、評価目的に対してどの程度の視認性を満たしているのかを数値で表すことができる。例えば、開口部からの侵入防止のための充分視線到達量が50と設定されている場合、積算視線到達量が50以上であれば視線評価値は100%以上となり、充分な視認性が確保されていることを評価できる。一方、積算視線到達量が50未満であれば、評価対象となっている視対象212が必要量に対してどの程度の割合の視認性を満たしているのかを評価できる。なお、視線評価値の演算方法は、式(14)に示すものに限定されず、視認性の評価を行うことができる方法であればどのような式を用いてもよい。また、3次元モデル中に複数の視対象212が設定されている場合、視線評価値演算部68は、全ての視対象212についての視線評価値を演算することができる。
視線評価値(%) = (積算視線到達量)/(充分視線到達量) × 100 …式(14)
グラデーション作成部70は、評価部60によって得られた視対象212に対する視線評価値に基づいて、3次元モデル中に明暗または色彩を変化させたグラデーションを作成する機能を有している。すなわち、視線評価値が高く視認性がよいと評価できる視対象212の位置(及びその周辺の領域)は明るくしたり薄い色を設定し、視線評価値が低くなるに従って暗くしたり濃い色を設定することで、グラデーションを作成することができる。グラデーションは、色の明るさを段階的に変化させることで表すことができ、あるいは色の濃さや色調を段階的に変化させることで表すことができる。例えば、視対象配置部30が3次元モデル中にメッシュを切って、各メッシュの中心部分の位置に視対象212を配置した場合、グラデーション作成部70は、配置されている視対象212の視線評価値に対応した色となるように各メッシュの色を設定することができる。
また、グラデーション作成部70は、視線評価値が一定以上となることで充分に視認性が確保されていると評価できる視対象212に対しては、視線評価値の大小に関わらず、同一の色に設定する。上述の式(13)を用いた場合は、視線評価値が100%以上となっている視対象212の位置(及びその周辺の領域)に対しては、100%、200%、300%、あるいはそれ以上と、視線評価値が異なっているとしても、同一の明るい色(たとえば、真っ白にすることができる)を設定する。一方、視線評価値が100%未満の視対象212の位置(及びその周辺の領域)に対しては、視線評価値の変化に応じて多段階に細かく色を変化させて設定することができる。
出力部80は、視認性評価システム1による評価結果を使用者に出力する機能を有している。出力部80は、3次元モデルと共にグラデーション作成部70で作成したグラデーションをパソコンのディスプレイやプリントアウトした紙面に表示することができる。このとき、使用者は、出力部80によってディスプレイに表示された評価結果を参照しながら、視認性阻害オブジェクトの配置や構成や透過率を変更し、再度の演算によって新たな評価結果を出力させることもできる。
次に、図9〜図11を参照して本実施形態に係る視認性評価方法を実行する視認性評価システム1の処理内容について説明する。図9は、本実施形態に係る視認性評価システム1の処理内容を示すフローチャートである。図10は、本実施形態に係る視認性評価システム1における視線到達量演算処理の処理内容を示すフローチャートである。図11は、本実施形態に係る視認性評価システム1における視認性数値化処理の処理内容を示すフローチャートである。ここでは、図2に示すような3次元モデルを用いて、建物の開口部から侵入者が侵入することに対する防犯性を目的とした視認性についての評価を行う例について説明する。
まず、情報入力部10において、視認性評価に必要な各種情報の入力が行われる(ステップS10:情報入力ステップ)。このとき、情報入力部10は、建物情報、敷地情報、接道情報、外構情報を取得する。次に、空間モデリング部20は、S10で入力された各種情報に基づいて3次元モデルを構築する(ステップS20:3次元モデリングステップ)。これによって、図2に示すような、建物200、敷地300、外構350、道路400の3次元モデルが構築される。また、視対象配置部30は、S20で構築した3次元モデルに対して視対象212を配置する(ステップS30:視対象配置ステップ)。このとき、視対象位置特定部31は、配置した視対象212の3次元モデルにおける位置を特定する。これによって、図2に示すように、敷地300内にメッシュのグリッドによって規定される複数の視対象212が配置されると共に、当該視対象212の位置が特定される。
次に、視線起点配置部40は、S30で配置された視対象212を視認する視線の起点となる視線起点450を3次元モデル中に配置する(ステップS40:視線起点配置ステップ)。視線起点配置部40は、3次元モデルの道路400に対し、定められたパターン及びピッチにて、複数の視線起点450を配置する。このとき、視線起点位置特定部41は、3次元モデル中の道路400に配置される視線起点450の位置及び数を特定する。これによって、図2に示すように、道路400の建物200側の歩道に所定のピッチにて一列に視線起点450が配列され、その位置及び数が特定される。
また、視認性阻害オブジェクト設定部50は、3次元モデル中において、視対象212と視線起点450との間で視認性を阻害する視認性阻害オブジェクトを設定する(ステップS50:視認性阻害オブジェクト設定ステップ)。このとき、視認性阻害オブジェクト特定部51は、3次元モデル中に構築される敷地300と道路400との間の視認性阻害オブジェクトの種類を特定する。図2では、柵350A、柵350B、塀350Dが視認性阻害オブジェクトとして設定される(開放部分350C、生け垣350Bが視認性阻害オブジェクトとして設定されてもよい)。また、それらの視認性オブジェクトの種類やタイプが特定される。
次に、評価部60の視線到達量演算部61にて、視線到達量演算処理が実行される(ステップS60:視線到達量演算ステップ)。S60の処理は、一つの視線起点450から一つの視対象212へ向かう視線について実行される。図10に示すように、視線到達量演算処理においては、視距離測定部62が、演算の対象となる視線起点450と視対象212との間の視距離を測定する処理から開始される(ステップS200:視距離測定ステップ)。また、透過率設定部63は、演算の対象となる視線起点450と視対象212との間で設定されている視認性阻害オブジェクトの透過率を設定する(ステップS210:透過率設定ステップ)。図2においては、例えば、視線起点450Aと視対象212Bとの間の視距離が測定され、視認性阻害オブジェクトとして設定されている柵350Aの透過率が設定される。
S210の処理の後、演算部64は、情報記憶部90より視線到達量を演算するための式(1)及び式(2)に示すような評価関数を読み出す(ステップS220:評価関数読み出しステップ)。式(1)及び式(2)における具体的な係数や定数は式(11)や式(13)のように予め設定されている。S220で評価関数を読み出した後、演算部64は、S200で測定した視距離及びS210で設定した透過率を評価関数に代入することによって、視線到達量を演算する(ステップS230:演算ステップ)。このとき、演算の対象となっている視線起点450に設定されている視線量強度z0の値も評価関数に代入する。視線量強度z0は、配置した全ての視線起点450に対して同じ値を設定してもよく、あるいは配置や状況に応じて視線起点450ごとに異なる値を設定してもよい。S230で、演算の対象となっている視線起点450から視対象212へ向かう視線の視線到達量が演算された後、図9における判定処理へ移行する(ステップS70)。
図9に示すように、評価部60は、演算の対象となっている一つの視対象212に対し、全ての視線起点450からの視線についての視線到達量の演算が完了したか否かの判定を行う(ステップS70)。S70において、演算が完了していないと判定された場合、視線到達量演算部61は、演算が完了していない視線起点450を演算対象として設定し、再び図10に示す処理を実行することによって、当該視線起点450からの視線到達量を演算する。視線起点450の演算の順番としては、例えば、道路400に配列されている複数の視線起点450のうち、一端から他端へ向かって一つずつ演算することができる。
S70において、全ての視線起点450についての視線到達量の演算が完了したと判定されると、視認性数値化処理部65によって、演算の対象となっている視対象212についての視認性を数値化する視認性数値化処理が実行される(ステップS80:視認性数値化ステップ)。図11の処理は、演算の対象となっている一つの視対象212について演算が行われる。図11に示すように、視認性数値化処理では、視認性数値化処理部65における積算視線到達量演算部66による積算視線到達量の演算から処理が開始される(ステップS300:積算視線到達量演算ステップ)。積算視線到達量演算部66は、S60及びS70の処理によって演算された全ての視線起点についての視線到達量に基づいて、演算対象となっている一つの視対象212についての積算視線到達量を演算する。次に、視認性数値化処理部65における充分視線到達量認定部67は、演算の対象となっている視対象212に対する積算視線到達量として充分で有ると判定される基準値として充分視線到達量を認定する(ステップS310:充分視線到達量認定ステップ)。また、視認性数値化処理部65における視線評価値演算部68は、S300で演算した積算視線到達量及びS310で認定した充分視線到達量に基づいて、演算の対象となっている視対象212についての視線評価値を演算する(ステップS320:視線評価値演算ステップ)。このとき、視線評価値演算部68は、式(14)を用いて視線評価値を演算することができる。S320において視線評価値が演算された後、図9における判定処理へ移行する(ステップS90)。
図9に示すように、評価部60は、S30で設定された全ての視対象212についての視線評価値の演算が完了したか否かの判定を行う(ステップS90)。S90において、演算が完了していないと判定された場合、評価部60は、演算が完了していない視対象212を演算対象として設定し、S60〜S90の処理を実行することによって、当該視対象212に対する視線評価値を演算する。一方、S90において、全ての視対象212について視線評価値の演算が完了したと判定されると、グラデーション作成部70は、S60〜S90の処理によって演算された視線評価値に基づいて3次元モデル中にグラデーションを作成する(ステップS100:グラデーション作成ステップ)。また、出力部80は、S100で作成されたグラデーションを3次元モデルと共に出力する(ステップS110:出力ステップ)。S110が終了すると、図9に示す処理が終了し、再度視認性評価を行うタイミングで再びS10から処理が開始される。
次に、本発明の実施形態に係る視認性評価システム1、視認性評価方法、視認性評価プログラムの作用・効果について説明する。
本実施形態に係る視認性評価システム1によれば、空間モデリング部20で構築された3次元モデルに対し、視対象配置部30によって視対象212を配置すると共に視線起点配置部40によって視線起点450を配置することができる。これによって、3次元モデルにおいて評価すべき視対象212に対し、歩行者を視線起点450としてモデル化することができる。また、視認性阻害オブジェクト設定部50が視認性阻害オブジェクトを設定することによって、3次元モデル中において視線起点450から視対象212へ向けられる視線を阻害するもの(例えば、柵や植え込み等)を設定し、視線到達量演算部61は、当該視認性阻害オブジェクトを考慮した視線到達量を演算することができる。視線到達量は、視線起点450から視認性阻害オブジェクトを介して視対象212へ到達する視線の割合を示すものであるため、当該視線到達量に基づいて視認性の評価を行うことが可能となる。ここで、本実施形態において、視線到達量演算部61は、実測データに基づいて視線到達量を演算することができる。このように、実測データに基づいた視線到達量を演算することによって、3次元モデル中での情報のみに基づいて演算する場合に比して、一層実際の視認性に即した視線到達量を演算することができる。また、実測データに基づいて一義的に視線到達量を演算することができるため、簡単な演算にて効率よく評価を行うことができる。以上によって、本実施形態に係る視認性評価システム1によれば、視認性を効率よく評価できると共に評価精度を向上させることができる。
また、実施形態に係る視認性評価システム1において、視線到達量演算部61は、視線起点450と視対象212との間の視距離を測定する視距離測定部62と、視認性阻害オブジェクトの種別に応じて、視認性阻害オブジェクトの透過率を設定する透過率設定部63と、を備えると共に、実測データに基づいて設定されている評価関数を用いて演算を行い、評価関数は、視距離及び透過率に基づいて視線到達量を導出可能である。視線到達量演算部61は、視距離と視認性阻害オブジェクトの透過率に基づいて視線到達量を導出可能な評価関数を用いることができる。従って、視距離測定部62によって3次元モデル中での視線起点450と視対象212との間の視距離を測定すると共に、透過率設定部63によって視認性阻害オブジェクトの種別に応じた透過率を設定し、これらの視距離及び透過率に基づいて、一義的に視線到達量を導出することが可能となる。この結果、当該評価関数は視距離と透過率に基づいて視線到達量を導出するものであるため、視距離や視認性阻害オブジェクトの透過率の変更にも即時に対応し(例えば、図2において、開口部202B付近の視認性を向上させるため、柵350Aの透過率を上げたモデルにて再度演算を行う際、即座に演算可能である)、一義的に視線到達量を演算することができる。従って、視距離及び透過率に係るパラメータを操作した上での視認性の評価が行い易くなる。
また、本実施形態に係る視認性評価システム1において、評価関数は、前述の式(1)及び式(2)によって定義される。このような評価関数を用いることによって、一層実情に即した視認性評価を行うことが可能となる。
また、本実施形態に係る視認性評価システム1において、空間情報は、評価対象となる建物200の形状に関する情報を含む建物情報と、当該建物200の敷地300の形状に関する情報を含む敷地情報と、当該敷地300に接する道路400の形状及び通行量に関する情報を含む接道情報と、敷地300と道路400との間、または敷地300内に設けられる外構350の形状及び種別に関する情報を含む外構情報と、を含み、視対象配置部30は、建物情報及び敷地情報に基づいて3次元モデル中に構築される建物200に対して、視対象212の位置を特定する視対象位置特定部31を備え、視線起点配置部40は、接道情報に基づいて3次元モデル中に構築される道路400に配置される視線起点450の位置及び数を特定する視線起点位置特定部41を備え、視認性阻害オブジェクト設定部50は、外構情報に基づいて3次元モデル中に構築される敷地300と道路400との間の視認性阻害オブジェクトの種類を特定する視認性阻害オブジェクト特定部51を備えている。これによって、建物に沿った道路400を通行する歩行者が、当該建物200の外構350を介して敷地300内の視対象212を視認する場合における視認性を評価することが可能となる。
また、本実施形態に係る視認性評価システム1においては、積算視線到達量演算部66によって、1または複数の視線起点450から視対象212へ到達する視線の積算量を示す積算視線到達量を演算すると共に、充分視線到達量認定部67によって、視対象212に対する積算視線到達量として充分であると判定される基準値として充分視線到達量が認定される。更に、これらの積算視線到達量及び充分視線到達量に基づいて、視対象212の視認性を数値化した視線評価値が演算される。このように、視対象212の視認性を評価する場合において、その視認目的に応じて、充分に視認できるとされる基準値としての充分視線到達量を予め定めておき、当該充分視線到達量に対する積算視線到達量の大小に基づいて視線評価値を演算することができる。このように、視認目的に応じた一定の基準値に基づいた視線評価値を用いて評価することができるため、評価対象となるモデルが異なる場合であっても、同一の基準値に基づいた視線評価値での比較ができるため、モデル間の比較が行い易い。更に、各視線起点からの視線到達量を積算することで演算された積算視線到達量と、予め定められている充分視線到達量を用いるだけで視線評価値を演算することができ、複雑な演算を行うことなく効率的に評価を行うことができる。また、一定の基準値である充分視線到達量に基づいて、視認性を具体的な視線評価値として数値化することが可能であるため、評価精度も向上させることができる。以上によって、本実施形態に係る視認性評価システム1によれば、視対象212の視認性を評価する際に、効率よく評価できると共に評価精度を向上させることができ、評価対象となるモデルが異なる場合にモデル間の比較を行い易くすることができる。
また、本実施形態に係る視認性評価システム1において、視対象配置部30は、複数の視対象212を配置し、視線評価値演算部68は、複数の視対象212のそれぞれについての視線評価値を演算する。また、視認性評価システム1は、3次元モデル中に、視線評価値に基づいて明暗または色彩を変化させたグラデーションを作成するグラデーション作成部70を更に備えている。3次元モデル中に複数の視対象212が配置されている場合に、各視対象212の視線評価値に基づくグラデーションを作成することによって、モデル内で視認性が低い部分を視覚的に評価することができる。また、視対象に対する視線評価値は、視認目的に応じた一定の基準値である充分視線到達量に基づくものであるため、評価対象となるモデルが異なる場合に、モデル間の比較を視覚的に容易に行うことができる。
また、本発明に係る視認性評価方法及び視認性評価プログラムも、上述のような視認性評価システム1と同様な作用・効果を得ることができる。
ここで、図12を参照して、具体的な例と共に本発明の効果を説明する。図12は、様々なモデルについての視認性の評価結果を示すグラデーションを表示した図である。ここでは、開口部からの侵入防止という目的に係る視認性評価を行う。図12の例では、敷地内にメッシュを切ることによって多数の視対象(不図示)を配置して演算を行っている。また、説明のために5段階で色の濃さが変化するグラデーションを表しているが、更に多段階で色の濃さを変化させてもよく、視線評価値に応じた色の濃さを設定して無段階で変化するグラデーションを作成してもよい。図12では、積算視線到達量が充分視線到達量以上となる部分、すなわち式(14)を用いたときに視線評価値が100%以上となる部分については真っ白に表示し、積算視線到達量が充分視線到達量を下回るに従って、A、B、C、Dの順で濃い色で表示している。なお、各領域の形状も説明のために簡略化して表示しているが、実際のシミュレーションではより複雑な形状となる。
図12(a)に示す建物ST1は、三方が完全に視線を遮断する壁W1、W2、W3で囲まれ、道路RD1に沿った外構部分に柵F1、F2が配置されている。また、開口部WD1の手前は開放部分とされている。視線起点450は、道路RD1における建物ST1側の路肩で等ピッチで配置されている。このようなモデルでは、WD1の手前の開放部分に近い部分や、柵F1、F2と近い領域では、充分に視線が届く(積算視線到達量が充分視線到達量以上となる)ことによって視線評価値が高くなり、真っ白に表示される。ここで、充分視線到達量を満たす部分の中でも視認性に差はあるが(例えば、視認性100%の部分もあれば200%の部分もある)、充分視線到達量を満たしている部分については、それ以上視線評価値が高くなっても視認性防止という観点からは防犯性に変化はない。すなわち、防犯上問題とならない部分については視線評価値の大小によらず同一の色で表示することによって、評価の必要がある視認性の低い部分に注目して評価を行うことができる。一方、建物ST1と壁W1で挟まれた部分については柵F1の手前の数箇所の視線起点450からの視線しか届かず、また、建物ST1と壁W3で挟まれた部分については柵F2の手前の数箇所の視線起点からしか視線が届かない。従って、柵F1,F2の透過率及び視距離に従って、A、B、Cとグラデーションが形成される。このとき、開口部WD3付近については道路RD1に近いため充分視線到達量を満たしているが、開口部WD2付近についてはBで示されており充分視線到達量を満たすだけの積算視線到達量が得られていないことが理解される。このように、評価対象となるモデルにおいて、どこの開口部についてどの程度の視認性が不足しているかを明確に理解することができる。
図12(a)のような評価結果を取得することによって、改善案として、図12(b)に示すように、柵F1に代えて透過率の高い柵F3を設定したモデルにて、直ちに再評価を行うことができる。図12(b)に示すように、柵F3とすることによって、開口部WD2付近の視認性が充分に確保できていることが理解される。ここで、視認性は視線評価値として数値化されているため、視線評価値に基づいて柵F3の透過率をどの程度高くすればよいかを容易に演算できる。従来の評価方法では、必要以上に透過率の高い柵F3に変更したり、必要以上にコストのかかる対策を行うような提案がなされる場合があったが、本発明によれば、問題となる開口部付近の視認性を確保するために、コストや手間を考慮しつつ、最適な改善案を直ちに検討することができる。
また、視線起点450のピッチと配置パタンを一定としておけば、視線起点450の個数が変化したとしても、図12(a)のようなモデルでは、評価結果に影響を及ぼさない。例えば、道路RD1に沿って(紙面上下方向に)更に多くの視線起点450を配置した場合、開口部WD1の手前のように道路RD1からよく見える部分については視線起点450の増加に伴って積算視線到達量が増加するが、上述のように充分視線到達量を満たす部分については視線評価値の増加によらず一律に真っ白に表示されるので、結果表示には影響がない。一方、評価上注目すべきA〜Cの領域については、視線起点450を増やしたとしても壁W1、W3で完全に遮られ(つまり、追加された視線起点450に係る視線到達量は全て0となる)、積算視線到達量に変化がなく、結果表示に影響がない。図12(a)のモデルでは、道路RD2が追加されることによって視線起点450が増加しても、同様に結果表示に影響はない。このように、3次元モデルに設定する視線起点450の数に影響されることなく、評価を行うことができる。なお、視線起点450のピッチと配置パターンを変更する場合は、当該変更に伴った新たな充分視線到達量を基準値として用いる。
従来、光源投射法により視認性を評価する場合に、コンピュータ上で、視線光源から視対象へのレンダリング処理によって、投影された画像データの輝度分布として評価が行われる方法がある。ところが、このように複数の視線光源を用いて所定の視対象の視認性を評価する場合、設定する視線光源の数が多くなればなる程、同一視対象に届く視線光源数が増えることになる。しかしながら、人間の感覚量としての視認性は、ある一定以上の視認性が確保できれば、充分に視対象は視認できると判断されるため、視線光源数の増大に影響されない領域(本発明では、充分視線到達量を満たす領域)が発生するが、従来の方法では、その点が考慮されていない。一方、上述のように、本実施形態に係る視認性評価システム1では、所定の視対象に届く視線光源(視線起点)が増加しても、一定量を超えれば同じ色で表示されるため、出力される評価には影響を及ぼさず、人間の感覚量に沿った評価を行うことができる。
また、図12(c)や図12(d)に示すように、異なるモデルについて評価する場合であっても、モデル間の比較を容易に行うことができる。図12(c)に示す建物ST2は、開口部WD2よりも道路RD1側が凹むことで開口部WD2付近に視線が届き易くなっている。これによって、図12(a)に比べて開口部WD2付近の積算視線到達量が多くなりAで示される領域となる。このように、モデルが異なっているにも関わらず、図12(a)の開口部WD2付近の領域は、図12(c)の開口部WD2付近の領域よりも視認性が低いことが評価でき、更に、具体的な視線評価値やグラデーションの色を参照することで、どの程度視認性が低いかまで把握することができる。更に、図12(c)のモデルでは、道路RD1沿いの外構が視線を遮断する壁W4とされており、建物ST2と壁W3との間の視認性が低くなっているが、当該領域付近には開口部が存在していないため、防犯性の評価上の問題とはならない。このように、異なるモデルである図12(a)と図12(c)を比較した場合に、図12(c)の方が防犯性が高いと推定することも可能である。
また、図12(d)の建物ST3のモデルでは、図12(a)に示すモデルと、建物の大きさと外構の構成と道路の形状が異なっている。図12(d)の建物ST3は、壁W1の一部が柵F4となっており、当該壁W1及び柵F4に沿って道路RD2が延びている。一方、道路RD1に沿った外溝は柵に代えて壁W4、W5が配置されている。図12(d)のようなモデルにおいては、開口部WD2付近は柵F4を介して道路RD2から充分な視認性が確保されていることが理解される。一方、開口部WD3付近は、壁W3,W4の影響により、非常に視認性が低くなっていることを評価できる。すなわち、開口部WD2については図12(a)のモデルより図12(d)のモデルのほうが評価が高く、開口部WD3については図12(d)のモデルより図12(a)のモデルのほうが評価が高いことが理解される。このように、外構や道路の構成が異なるモデルであっても、比較することができる。
図13は、実際のシミュレーションに係る3次元モデル及び評価結果を示す図である。図13(a)は、実際のシミュレーションに用いた3次元モデルを示す。図13(b)は、当該3次元モデルについての評価結果を示す。この例においては、視対象を設定するための1.5m間隔のグリッド水平面を配置すると共に、道路に0.5mピッチで千鳥配置で視線起点を設定している。図13(b)に示されているグラデーションは、視対象における視線評価値に応じて各グリッドの色の濃さを変化させることによって、作成されている。建物の外壁部分で枠で囲まれている部分は、一階の開口部分位置を示している。図13(a)に示すように、評価に係る3次元モデルにおいては、道路に沿って配置される視認性阻害オブジェクトとして、塀、入り口用の柵、植栽が存在している。図13(b)に示すように、入り口用の柵の周辺では、真っ白に表されており十分な視認性が確保されている一方、塀や植栽で視線が遮られる個所では色が濃く表示されており、視認性が低くなっている。このような評価結果に基づいて、植栽を伐採することや、塀の高さを低くすることや、塀を見通しのよいフェンスに変更することなどを提案することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、説明に用いたモデルに限定されず、どのようなモデルであっても評価を行うことができる。また、評価関数も上述で説明した式以外のものを用いてもよい。また、本発明においては、少なくとも実測データに基づく視線到達量を演算できればよく、積算視線到達量や充分視線到達量を用いた視線評価値を演算しなくてもよい。
また、上述の実施形態では、建物の外における視対象について評価を行う例について説明したが、本発明を用いて建物内における視対象についての評価を行うこともできる。このように、建物内における視対象についての評価をすることにより、プライバシーの保護という点についての評価を行えるという効果を得ることができる。