《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1000の概略構成が示されている。
このプリンタ1000は、光走査装置1010、感光体ドラム1030、帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034、クリーニングブレード1035、トナーカートリッジ1036、給紙コロ1037、給紙トレイ1038、レジストローラ対1039、定着ローラ1041、排紙ローラ1042、及び排紙トレイ1043などを備えている。
感光体ドラム1030の表面には、感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム1030の表面が被走査面である。ここでは、感光体ドラム1030は、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転するようになっている。
帯電チャージャ1031、現像ローラ1032、転写チャージャ1033、除電ユニット1034及びクリーニングブレード1035は、それぞれ感光体ドラム1030の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム1030の回転方向に関して、帯電チャージャ1031→現像ローラ1032→転写チャージャ1033→除電ユニット1034→クリーニングブレード1035の順に配置されている。
帯電チャージャ1031は、感光体ドラム1030の表面を均一に帯電させる。
光走査装置1010は、帯電チャージャ1031で帯電された感光体ドラム1030の表面に、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光を照射する。これにより、感光体ドラム1030の表面では、画像情報に対応した潜像が感光体ドラム1030の表面に形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム1030の回転に伴って現像ローラ1032の方向に移動する。なお、この光走査装置1010の構成については後述する。
トナーカートリッジ1036にはトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ1032に供給される。
現像ローラ1032は、感光体ドラム1030の表面に形成された潜像にトナーカートリッジ1036から供給されたトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像(以下では、便宜上「トナー像」ともいう)は、感光体ドラム1030の回転に伴って転写チャージャ1033の方向に移動する。
給紙トレイ1038には記録紙1040が格納されている。この給紙トレイ1038の近傍には給紙コロ1037が配置されており、該給紙コロ1037は、記録紙1040を給紙トレイ1038から1枚づつ取り出し、レジストローラ対1039に搬送する。該レジストローラ対1039は、転写ローラ911の近傍に配置され、給紙コロ1037によって取り出された記録紙1040を一旦保持するとともに、該記録紙1040を感光体ドラム1030の回転に合わせて感光体ドラム1030と転写チャージャ1033との間隙に向けて送り出す。
転写チャージャ1033には、感光体ドラム1030の表面上のトナーを電気的に記録紙1040に引きつけるために、トナーとは逆極性の電圧が印加されている。この電圧により、感光体ドラム1030の表面のトナー像が記録紙1040に転写される。ここで転写された記録紙1040は、定着ローラ1041に送られる。
この定着ローラ1041では、熱と圧力とが記録紙1040に加えられ、これによってトナーが記録紙1040上に定着される。ここで定着された記録紙1040は、排紙ローラ1042を介して排紙トレイ1043に送られ、排紙トレイ1043上に順次スタックされる。
除電ユニット1034は、感光体ドラム1030の表面を除電する。
クリーニングブレード1035は、感光体ドラム1030の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラム1030の表面は、再度帯電チャージャ1031の位置に戻る。
次に、前記光走査装置1010の構成について図2を用いて説明する。
この光走査装置1010は、光源14、カップリングレンズ15、開口板23、シリンドリカルレンズ17、反射ミラー18、ポリゴンミラー13、偏向器側走査レンズ11a、像面側走査レンズ11b、結像レンズ24、及びフォトダイオード25などを備えている。なお、本明細書では、主走査方向をY軸方向、副走査方向をZ軸方向、これらに直交する方向をX軸方向として説明する。
光源14は、図3に示されるように、一例として40個の発光部101が1つの基板上に形成された2次元アレイ100を有している。この2次元アレイ100は、主走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「M方向」ともいう)から副走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「S方向」ともいう)に向かって傾斜角αをなす方向(以下では、便宜上「T方向」という)に沿って4個の発光部が等間隔に配置された発光部列を10列有している。そして、これら10列の発光部列は、S方向に等間隔に配置されている。すなわち、40個の発光部は、T方向とS方向とにそれぞれ沿って2次元的に配列されている。なお、本明細書では、「発光部間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいうものとする。
ここでは、一例として、M方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔は90μm、S方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔は216μmである。
各発光部は、780nm帯のVCSELであり、一例として図4に示されるように、n―GaAs基板111上に、下部反射鏡112、スペーサー層113、活性層114、スペーサー層115、上部反射鏡117、及びpコンタクト層118などの半導体層が、順次積層されている。なお、以下では、これら複数の半導体層が積層されているものを、便宜上「積層体」ともいう。また、活性層114近傍の拡大図が図5に示されている。
下部反射鏡112は、n−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層(低屈折率層112aとする)とn−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層(高屈折率層112bとする)とをペアとして、40.5ペア有している。各屈折率層はいずれも、発振波長をλとするとλ/4の光学厚さとなるように設定されている。なお、低屈折率層112aと高屈折率層112bとの間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。
スペーサー層113は、Al0.6Ga0.4Asからなる層である。
活性層114は、図5に示されるように、Al0.12Ga0.88Asからなる量子井戸層114aとAl0.3Ga0.7Asからなる障壁層114bを有している。
スペーサー層115は、Al0.6Ga0.4Asからなる層である。
スペーサー層113と活性層114とスペーサー層115とからなる部分は、共振器構造体とも呼ばれており、その厚さが1波長(ここでは、波長λ=780nm)の光学厚さとなるように設定されている(図5参照)。
上部反射鏡117は、p−Al0.9Ga0.1Asからなる低屈折率層(低屈折率層117aとする)とp−Al0.3Ga0.7Asからなる高屈折率層(高屈折率層117bとする)とをペアとして、24ペア有している。各屈折率層はいずれも、λ/4の光学厚さとなるように設定されている。なお、低屈折率層117aと高屈折率層117bとの間には、電気抵抗を低減するため、一方の組成から他方の組成へ向かって組成を徐々に変化させた組成傾斜層(図示省略)が設けられている。
上部反射鏡117における共振器構造体からλ/4離れた位置には、AlAsからなる被選択酸化層116が設けられている。
次に、上記2次元アレイ100の製造方法について簡単に説明する。
(1)上記積層体を有機金属気相成長法(MOCVD法)あるいは分子線結晶成長法(MBE法)を用いた結晶成長によって作成する。
(2)それぞれが発光部となる複数の領域の各周囲にドライエッチング法により溝を形成し、いわゆるメサ部を形成する。ここでは、エッチング底面は下部反射鏡112中に達するように設定されている。なお、エッチング底面は少なくとも被選択酸化層116を超えたところにあれば良い。これにより、被選択酸化層116が溝の側壁に現れることとなる。また、メサ部の大きさ(直径)は、10μm以上であることが好ましい。あまり小さいと素子動作時に熱がこもり、発光特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。さらに、溝の幅は5μm以上であることが好ましい。溝の幅があまり狭いとエッチングの制御が難しくなるからである。
(3)溝が形成された積層体を水蒸気中で熱処理し、選択的にメサ部における被選択酸化層116の一部を酸化してAlxOyの絶縁物層に変える。このとき、メサ部の中央部には、被選択酸化層116における酸化されていないAlAs領域が残留する。これにより、発光部の駆動電流の経路をメサ部の中央部分だけに制限する、いわゆる電流狭窄構造が形成される。
(4)各メサ部の上部電極103が形成される領域及び光出射部102を除いて、例えば厚さ150nmのSiO2保護層120を設け、さらに各溝にポリイミド119を埋め込んで平坦化する。
(5)各メサ部におけるpコンタクト層118上の光出射部102を除いた領域に上部電極103をそれぞれ形成し、積層体の周辺に各ボンディングパッド(不図示)を形成する。そして、各上部電極103とそれぞれに対応するボンディングパッドとを繋ぐ各配線(不図示)を形成する。
(6)積層体裏面に下部電極(n側共通電極)110を形成する。
(7)積層体を複数のチップに切断する。
図2に戻り、カップリングレンズ15は、光源14から射出された光を略平行光とする。
開口板23は、カップリングレンズ15とシリンドリカルレンズ17との間の光路上に配置され、カップリングレンズ15を介した光の少なくとも副走査方向のビーム径を規定する開口部を有する。この開口板23は、開口部の周囲で反射された光をモニタ用として利用するため、光源14からポリゴンミラー13に向かう光の進行方向に垂直な仮想面に対して傾斜して配置されている。また、これにより、開口部の周囲で反射された光が光源14に戻るのを防止できる。更に、ポリゴンミラー13から光源14に向かう光を遮光することができる。
シリンドリカルレンズ17は、開口板23と反射ミラー18との間の光路上に配置され、開口板23の開口部を通過した光を、反射ミラー18を介してポリゴンミラー13の偏向反射面近傍に副走査方向に関して結像する。
さらに、シリンドリカルレンズ17とポリゴンミラー13との間、及びポリゴンミラー13と偏向器側走査レンズ11aとの間には、防音ガラス21が配置されている。
光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置される光学系は、カップリング光学系とも呼ばれている。本第1の実施形態では、カップリング光学系は、カップリングレンズ15と開口板23とシリンドリカルレンズ17と反射ミラー18とから構成されている。
ポリゴンミラー13は、4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。このポリゴンミラー13は、副走査方向に平行な回転軸の周りに等速回転する。
偏向器側走査レンズ11aは、ポリゴンミラー13で偏向された光の光路上に配置されている。
像面側走査レンズ11bは、偏向器側走査レンズ11aを介した光の光路上に配置されている。
ポリゴンミラー13と感光体ドラム1030との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本第1の実施形態では、走査光学系は、偏向器側走査レンズ11aと像面側走査レンズ11bとから構成されている。なお、この走査光学系には、面発光レーザに対応し、主走査方向に関して、副走査方向の横倍率が変化しない光学系が用いられている。
また、一例として図6に示されるように、カップリングレンズ15及びシリンドリカルレンズ17の光軸は、副走査方向に関して、ポリゴンミラー13の偏向反射面の法線方向に対して傾斜して配置されている。すなわち、カップリング光学系は、いわゆる斜入射光学系である。なお、図6では、分かりやすくするため、便宜的に反射ミラー18からポリゴンミラー13に向かう光路を回転してX軸方向に一致させている。
これにより、光源14からの光は、副走査方向に関して、偏向反射面の法線方向に対して傾斜して偏向反射面に入射(斜入射)する。この場合には、偏向反射面で反射された光が、光源側に戻ることを抑制することができる。なお、カップリングレンズ15及びシリンドリカルレンズ17の光軸が、偏向反射面の法線方向と一致して配置されている場合には、光源14から射出された光は、偏向反射面の法線方向に平行に入射し、偏向反射面で反射された光が光源側に戻るおそれがある。
ここでは、カップリング光学系による斜入射の角度(偏向反射面の法線方向に対する傾斜角)は、0.5度〜1.0度の範囲内に設定されている。このように、斜入射角は小さいので、波面収差によるビームスポット径の劣化、及び走査線曲がりの発生は少ない。また、本出願人が提案した走査レンズに特殊面を用いて光学性能の劣化を補正する場合(特開2006−72288号参照)においても有利となる。
ところで、複数の発光部を有する光源(マルチビーム光源)、斜入射光学系及びポリゴンミラーを用い、同一の被走査面を複数の光で同時に走査する場合には、同一像高に向かう光であっても、発光部の位置によってポリゴンミラーの回転角が異なることとなる。このため、いわゆる光学的なサグの影響を受けて、被走査面上における副走査方向に関する互いに隣接する2本の走査線の間隔(副走査ビームピッチ)の像高間での偏差(以下、「副走査ビームピッチ偏差」という)を生じることがある。
これについて、前記2次元アレイ100においてM方向に関して互いに離れている2つの発光部(発光部v1、発光部v2とする(図7参照))からの光を用いて説明する。発光部v1からの光と発光部v2からの光は、副走査方向に直交する平面内において互いに異なる方向から偏向反射面に入射する。そこで、発光部v1からの光及び発光部v2からの光を同一像高に偏向するには、ポリゴンミラーの回転角を異ならせる必要がある。このとき、ポリゴンミラーの回転軸(回転中心)は、偏向反射面上にないため、光学的なサグが発生する。
一例として図8(A)には、発光部v1からの光及び発光部v2からの光が、−150mmの像高に向かうときの偏向反射面のサグが示され、一例として図8(B)には、発光部v1からの光及び発光部v2からの光が、+150mmの像高に向かうときの偏向反射面のサグが示されている。いずれのときも、発光部v1からの光と発光部v2からの光とでは、サグ量が異なっている。そして、像高が−150mmの位置での副走査ビームピッチと像高が+150mmの位置での副走査ビームピッチは、互いに異なっている。
また、図9に示されるように、サグの影響により同一像高に向かう各光が主走査方向にシフトすることにより、各光が偏向器側走査レンズ11aを通過する位置に違いを生じる。斜入射光学系においては、偏向反射面から偏向器側走査レンズ11aまでの光路長の違いにより、走査光は副走査方向に湾曲して入射するため、主走査方向に光がシフトすると副走査方向に受ける屈折力が変化し、被走査面上での副走査方向の光スポットの位置が変動し、マルチビームにおいては副走査ビームピッチは像高間で異なる、つまり偏差(副走査ビームピッチ偏差)を持つこととなる。
しかしながら、本第1の実施形態では、複数の発光部は、2次元的に配列され、副走査方向に対応する方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔よりも、主走査方向に対応する方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔のほうが小さいため、副走査ビームピッチ偏差を低減させることができる。
図2に戻り、結像レンズ24は、開口板23で反射された光を集光する。そして、この集光位置近傍にフォトダイオード25が配置されており、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。フォトダイオード25の出力信号は、光源14から射出される光の光量をモニタするのに用いられ、そのモニタ結果に基づいて、各発光部の駆動電流が補正される。
本第1の実施形態に係る光走査装置1010では、開口板23と結像レンズ24とによってモニタ光学系が構成されている。
ここでは、例えば各発光部を順次点灯させて、各発光部の発光光量を個別に検出する時分割検知法や、少なくとも2個の発光部を組とし、種々の組み合わせからなる複数の組を、組毎に順次点灯させて、各組の発光光量を検出し、その結果から各発光部の発光光量をそれぞれ算出する方法をとることができる。
このように、本第1の実施形態では、1つのモニタ光学系で複数の発光部の発光光量を個別に知ることができるので、光学系の簡略化、及び部品点数の減少が可能となり、その結果、低コスト化、小型化を実現することが可能となる。
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光走査装置1010によると、複数の発光部を有する光源14と、光源14からの光を偏向するポリゴンミラー13と、光源14とポリゴンミラー13との間の光路上に配置され、光源14からの光をポリゴンミラー13に導くカップリング光学系と、ポリゴンミラー13で偏向された光を感光体ドラム1030に導く走査光学系と、光源14から射出される光の光量をモニタするモニタ光学系とを備えている。そして、カップリング光学系は、光源14からの光が、副走査方向に関して、偏向反射面の法線方向に対して傾斜して入射するように配置されている。これにより、偏向反射面で反射された光が、光源側に戻ることを抑制できる。従って、光源14から射出される光の光量を精度良くモニタすることができる。
また、本第1の実施形態では、光源14がVCSELの2次元アレイを有しているため、高速化及び高密度化を実現することができる。
また、本第1の実施形態では、複数の発光部が、副走査方向に対応する方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔よりも、主走査方向に対応する方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔のほうが小さくなるように、2次元的に配列されているため、斜入射光学系特有のマルチビーム化による副走査ビームピッチ偏差を低減することができる。
従って、その結果、光により感光体ドラム1030上を安定して走査することが可能となる。
また、本第1の実施形態に係るプリンタ1000によると、光により感光体ドラム1030上を安定して走査することができる光走査装置1010を備えているため、結果として高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
なお、上記第1の実施形態において、モニタ光学系が、図10に示されるように、開口板23と反射鏡27と結像レンズ24とによって構成されても良い。この場合は、開口板23は、光源14からの光が開口部の周囲で−Y方向に反射されるように配置され、反射鏡27は、開口板23からの反射光を−X方向に反射するように配置されている。これにより、光源14とフォトダイオード25とを同一の基板26上に実装することが可能となり、小型化を図ることができる。
また、モニタ光学系が、図11に示されるように、開口部を有する曲面ミラー28と結像レンズ24とによって構成されても良い。曲面ミラー28は、正のパワーを持つ曲面ミラーである。この場合には、光源14とフォトダイオード25とを同一の基板26上に実装することが可能となるとともに、モニタ用の光の反射回数を1回のみとすることができる。これにより、フォトダイオード25における光スポット位置の誤差が低減でき、フォトダイオード25をより小さいものとすることが可能となる。従って、更なる低コスト化及び小型化を図ることができる。また、上記反射鏡27が不要であり、部品点数を低減することができる。さらに、この場合には、カップリングレンズ15と結像レンズ24を一体化することができる。その際、カップリングレンズ15と結像レンズ24を1個の樹脂成形品としても良い。
また、上記第1の実施形態では、偏向器としてポリゴンミラーを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば、偏向器として振動ミラーを用いても良い。振動ミラーとは、例えばマイクロマシン技術を用いた共振構造の正弦振動を行うマイクロミラーである。これにより、小型化とともに、振動によるバンディング、温度上昇、騒音、消費電力等を大幅に低減することが可能となる。
なお、偏向器として振動ミラーを用いる場合には、光を偏向する際に生じる光学的なサグをポリゴンミラーよりも低減することができる。これは、振動ミラーの回転中心が、ほぼ偏向反射面上に位置するためであり、偏向角が変化してもサグは発生しないかあるいは非常に小さくなる。これにより、偏向反射面上での各光の副走査方向の間隔の変化を、全像高に亘って大幅に低減することが可能となり、その結果、感光体ドラム上における副走査ビームピッチ偏差を更に低減することができる。
ところで、振動ミラーの偏向反射面は非常に小さいが、上記第1の実施形態では、2次元アレイ100において、主走査方向に対応する方向に関して両端に位置する2つの発光部の間隔が小さいため、対応可能である。また、副走査方向については、シリンドリカルレンズなどで光は絞られ、更に感光体ドラム上で所望の副走査ビームピッチを得るために各光の間隔が十分小さい間隔となるように設定されるため、対応可能である。
また、上記第1の実施形態において、一例として図12〜図14に示されるように、前記2次元アレイ100に代えて、2次元アレイ100の前記複数の半導体層のうちの一部の半導体層の材料を変更した2次元アレイ(2次元アレイ100Aとする)を用いても良い。この2次元アレイ100Aは、前記2次元アレイ100における前記スペーサー層113をスペーサー層213に変更し、前記活性層114を活性層214に変更し、前記スペーサー層115をスペーサー層215に変更したものである。
スペーサー層213は、ワイドバンドギャップである(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる層である。
活性層214は、図13に示されるように、圧縮歪が残留する組成であってバンドギャップ波長が780nmとなる3層のGaInPAs量子井戸層214aと格子整合する4層の引張歪みを有するGa0.6In0.4P障壁層214bとを有している。
スペーサー層215は、ワイドバンドギャップである(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる層である。
スペーサー層213と活性層214とスペーサー層215とからなる部分は、共振器構造体と呼ばれており、その厚さは1波長光学厚さとなるように設定されている(図13参照)。
この2次元アレイ100Aは、スペーサー層にAlGaInP系の材料が用いられているため、上記実施形態における前記2次元アレイ100に比べて、スペーサー層と活性層とのバンドギャップ差を極めて大きく取ることができる。
図14には、スペーサー層/量子井戸層の材料がAlGaAs/AlGaAs系で、波長が780nm帯のVCSEL(以下では、便宜上、「VCSEL_A」という)、スペーサー層/量子井戸層の材料がAlGaInP/GaInPAs系で、波長が780nm帯のVCSEL(以下では、便宜上、「VCSEL_B」という)、及びスペーサー層/量子井戸層の材料がAlGaAs/GaAs系で、波長が850nm帯のVCSEL(以下では、便宜上、「VCSEL_C」という)について、典型的な材料組成でのスペーサー層と量子井戸層のバンドギャップ差、及び障壁層と量子井戸層のバンドギャップ差が示されている。なお、VCSEL_Aは、前記2次元アレイ100のVCSEL101に対応し、x=0.7のVCSEL_Bは、2次元アレイ100AにおけるVCSEL(VCSEL101Aという)に対応している。
これによれば、VCSEL_Bは、VCSEL_Aはもとより、VCSEL_Cよりもバンドギャップ差を大きく取れることが判る。具体的には、VCSEL_Bでのスペーサー層と量子井戸層とのバンドギャップ差は767.3meVであり、VCSEL_Aの465.9meVに比べて極めて大きい。また、障壁層と量子井戸層とのバンドギャップ差も同様に、VCSEL_Bに優位性があり、更に良好なキャリア閉じ込めが可能となる。
また、VCSEL101Aは、量子井戸層が圧縮歪を有しているので、ヘビーホールとライトホールのバンド分離により利得の増加が大きくなり、高利得となるため、低閾値で高出力が可能となる。そして、このために、光取り出し側の反射鏡(ここでは上部反射鏡117)の反射率低減が可能となり、更なる高出力化を図ることができる。さらに、高利得化が可能であることから、温度上昇による光出力低下を抑えることができ、2次元アレイにおける各VCSELの間隔をより狭くすることが可能である。
また、VCSEL101Aは、量子井戸層214a及び障壁層214bがいずれも、アルミニウム(Al)を含まない材料から構成されているので、活性層214への酸素の取り込みが低減される。その結果、非発光再結合センターの形成を抑えることができ、更なる長寿命化を図ることが可能となる。
ところで、例えば、いわゆる書込み光学ユニットにVCSELの2次元アレイを用いる場合に、VCSELの寿命が短いときには、書込み光学ユニットは使い捨てになる。しかしながら、VCSEL101Aは、前述したように長寿命であるため、2次元アレイ100Aを用いた書込み光学ユニットは、再利用が可能となる。従って、資源保護の促進及び環境負荷の低減を図ることができる。なお、このことは、VCSELの2次元アレイを用いている他の装置にも同様である。
なお、上記第1の実施形態では、各発光部から射出されるレーザ光の波長が780nm帯の場合について説明したが、これに限らず、感光体ドラム1030の感度特性に応じた波長であれば良い。なお、この場合には、各発光部を構成する材料の少なくとも一部、あるいは各発光部の構成の少なくとも一部が、発振波長に応じて変更される。
なお、上記第1の実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ1000の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、光走査装置1010を備えた画像形成装置であれば、結果として高品質の画像を高速で形成することが可能となる。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図15〜図18に基づいて説明する。図15には、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1000Aの概略構成が示されている。
このプリンタ1000Aは、4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせてフルカラーの画像を形成するタンデム方式の多色カラープリンタであり、光走査装置1010A、4個の感光体ドラム(30a、30b、30c、30d)、4個の帯電チャージャ(32a、32b、32c、32d)、4個の現像ローラ(33a、33b、33c、33d)、4個のトナーカートリッジ(34a、34b、34c、34d)、4個のクリーニングケース(31a、31b、31c、31d)、転写ベルト40、給紙トレイ60、給紙コロ54、レジストローラ対56、定着ローラ50、排紙トレイ70、排紙ローラ58、上記各部を統括的に制御する不図示の制御装置などを備えている。
光走査装置1010Aは、一例として図16に示されるように、2個の光源ユニット(200a、200b)、2個の開口板(201a、201b)、2個の光分割プリズム(202a、202b)、4個のシリンドリカルレンズ(204a、204b、204c、204d)、ポリゴンミラー104、4個のfθレンズ(105a、105b、105c、105d)、8個の折り返しミラー(106a、106b、106c、106d、108a、108b、108c、108d)、4個のトロイダルレンズ(107a、107b、107c、107d)、2個の収束レンズ(156a、156b)、及び2個の受光素子(157a、157b)などを備えている。
各光源ユニットのそれぞれは、上記2次元アレイ100あるいは2次元アレイ100Aを有する光源、及び該光源からの光を略平行光とするカップリングレンズを備えている。
開口板201aは、開口部を有し、光源ユニット200aからの光のビーム径を規定する。開口板201bは、開口部を有し、光源ユニット200bからの光のビーム径を規定する。各開口板はいずれも、開口部の周囲で反射された光をモニタ用として利用するため、対応する光源ユニットに対して傾斜して配置されている。また、これにより、開口部の周囲で反射された光が光源ユニットに戻るのを防止できる。
光分割プリズム202aは、開口板201aの開口部を通過した光をZ軸方向に所定間隔をもって互いに平行な2つの光に分割する。光分割プリズム202bは、開口板201bの開口部を通過した光をZ軸方向に所定間隔をもって互いに平行な2つの光に分割する。
シリンダレンズ204aは、光分割プリズム202aからの2つの光のうち−Z側の光(以下、便宜上「ブラック光」ともいう)の光路上に配置され、該ブラック光をポリゴンミラー104の偏向反射面近傍で副走査方向に関して収束する。
シリンダレンズ204bは、光分割プリズム202aからの2つの光のうち+Z側の光(以下、便宜上「シアン光」ともいう)の光路上に配置され、該シアン光をポリゴンミラー104の偏向反射面近傍で副走査方向に関して収束する。
シリンダレンズ204cは、光分割プリズム202bからの2つの光のうち+Z側の光(以下、便宜上「マゼンダ光」ともいう)の光路上に配置され、該マゼンダ光をポリゴンミラー104の偏向反射面近傍で副走査方向に関して収束する。
シリンダレンズ204dは、光分割プリズム202bからの2つの光のうち−Z側の光(以下、便宜上「イエロー光」ともいう)の光路上に配置され、該イエロー光をポリゴンミラー104の偏向反射面近傍で副走査方向に関して収束する。
ポリゴンミラー104は、2段構造の4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面となる。そして、1段目(下段)の偏向反射面ではシリンダレンズ204aからの光及びシリンダレンズ204dからの光がそれぞれ偏向され、2段目(上段)の偏向反射面ではシリンダレンズ204bからの光及びシリンダレンズ204cからの光がそれぞれ偏向されるように配置されている。また、1段目の偏向反射面及び2段目の偏向反射面は、互いに位相が45°ずれて回転し、光の走査は1段目と2段目とで交互に行われる。
fθレンズ105a及びfθレンズ105bは、ポリゴンミラー104の−X側に配置され、fθレンズ105c及びfθレンズ105dは、ポリゴンミラー104の+X側に配置されている。すなわち、いわゆる対向走査方式を採用している。
そして、fθレンズ105aとfθレンズ105bはZ軸方向に積層され、fθレンズ105aは1段目の偏向反射面に対向し、fθレンズ105bは2段目の偏向反射面に対向している。また、fθレンズ105cとfθレンズ105dはZ軸方向に積層され、fθレンズ105cは2段目の偏向反射面に対向し、fθレンズ105dは1段目の偏向反射面に対向している。
そこで、ポリゴンミラー104で偏向されたブラック光はfθレンズ105aに入射し、イエロー光はfθレンズ105dに入射し、たシアン光はfθレンズ105bに入射し、マゼンダ光はfθレンズ105cに入射する。
この光走査装置1010Aでは、一例として図17(A)に示されるように、シリンダレンズ204aからの光Bk及びシリンダレンズ204bからの光Bcは、いずれもポリゴンミラー104の偏向反射面の法線方向RHに対して−Z側に傾斜してポリゴンミラー104に入射するように設定されている。また、シリンダレンズ204cからの光Bm及びシリンダレンズ204dからの光Byは、いずれもポリゴンミラー104の偏向反射面の法線方向RHに対して+Z側に傾斜してポリゴンミラー104に入射するように設定されている。すなわち、ポリゴンミラー104の−X側に入射する光及び+X側に入射する光は、少なくとも副走査方向に関して、ポリゴンミラー104の法線方向に対して互いに反対側に傾斜している。
また、シリンダレンズ204aからの光Bkの傾斜角とシリンダレンズ204bからの光Bcの傾斜角は、互いに等しく、シリンダレンズ204cからの光Bmの傾斜角とシリンダレンズ204dからの光Byの傾斜角は、互いに等しい。
さらに、シリンダレンズ204aからの光Bk及びシリンダレンズ204bからの光Bcの傾斜角の大きさと、シリンダレンズ204cからの光Bm及びシリンダレンズ204dからの光Byの傾斜角の大きさは、互いに等しい。ここでは、一例として、傾斜角は0.5度〜1.0度の範囲内に設定している。
fθレンズ105aを透過したブラック光は、折り返しミラー106a、トロイダルレンズ107a、及び折返しミラー108aを介して、感光体ドラム30a上にスポット状に結像する(図18参照)。
fθレンズ105bを透過したシアン光は、折り返しミラー106b、トロイダルレンズ107b、及び折返しミラー108bを介して、感光体ドラム30b上にスポット状に結像する(図18参照)。
fθレンズ105cを透過したマゼンダ光は、折り返しミラー106c、トロイダルレンズ107c、及び折返しミラー108cを介して、感光体ドラム30c上にスポット状に結像する(図18参照)。
fθレンズ105dを透過したイエロー光は、折り返しミラー106d、トロイダルレンズ107d、及び折返しミラー108dを介して、感光体ドラム30d上にスポット状に結像する(図18参照)。
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光走査装置1010Aによると、2つの光源のそれぞれが前記2次元アレイ100あるいは2次元アレイ100Aを有し、2つの光源からの光が、副走査方向に関して、偏向反射面の法線方向に対して傾斜して入射するように設定されている。従って、前記光走査装置1010と同様な効果を得ることができる。
また、本第2の実施形態に係るプリンタ1000Aは、光走査装置1010Aを備えているため、結果として高品質の多色のカラー画像を高速で形成することが可能となる。
なお、上記第2の実施形態では、光走査装置1010Aが、対向走査方式の光走査装置の場合について説明したが、一例として図19に示されるように、いわゆる片側走査方式の光走査装置であっても良い。
図19における符号105はfθレンズであり、符号108c1及び108c2はいずれも折り返しミラーである。
この場合には、シリンダレンズ204aからの光Bk、シリンダレンズ204bからの光Bc、シリンダレンズ204cからの光Bm、及びシリンダレンズ204dからの光Byは、いずれもポリゴンミラー104の一側(図19では+X側)に入射する。このときには、各光は、副走査方向に関して偏向反射面のほぼ同じ位置に入射し、各光の傾斜角は互いに異なっている。
そして、この場合においても、上記光走査装置1010Aと同様な効果を得ることができる。
また、この場合には、上記光走査装置1010Aに比べて、ポリゴンミラーの偏向反射面を一段で、かつ、副走査方向の厚みを低減することができるため、回転体としてのイナーシャが小さくなり、起動時間を短くすることが可能となる。これにより、低消費電力で低コストな光走査装置が実現可能となる。さらに、ポリゴンミラーに対し片側にのみ走査光学系があるため、ゴースト光の影響を考慮する必要がない。
また、この場合に、偏向反射面の副走査方向の厚みを大きくすることが可能であれば、一例として図20に示されるように、各光を、副走査方向に関して偏向反射面の互いに異なる位置に入射しても良い。このときには、各光の傾斜角を同じとすることができる。
また、上記第2の実施形態において、前記ポリゴンミラー104に代えて前記振動ミラーを用いても良い。
11a…偏向器側走査レンズ(走査光学系の一部)、11b…像面側走査レンズ(走査光学系の一部)、13…ポリゴンミラー(偏向器)、14…光源、18…反射ミラー(走査光学系の一部)、23…開口板(モニタ光学系の一部)、24…結像レンズ(モニタ光学系の一部)、30a〜30d…感光体ドラム(像担持体)、101…発光部、101A…発光部、104…ポリゴンミラー(偏向器)、105a〜105d…fθレンズ(走査光学系の一部)、106a〜106d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、107a〜107d…トロイダルレンズ(走査光学系の一部)、108a〜108d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、156a、156b…収束レンズ(モニタ光学系の一部)、200a…光源ユニット(光源)、200b…光源ユニット(光源)、201a、201b…開口板(モニタ光学系の一部)、1000…プリンタ(画像形成装置)、1000A…プリンタ(画像形成装置)、1010…光走査装置、1010A…光走査装置、1030…感光体ドラム(像担持体)。