JP5071614B2 - 電子レンジ用紙カップ - Google Patents

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Description

本発明は、電子レンジで使用する紙カップに関するものであり、さらに詳しくは、電子レンジで使用するときに、紙カップの胴部の貼り合せ部に生じる発泡現象を防止する紙カップに関するものである。
従来より、自動販売機などで熱い飲料用、即席食品用などに紙カップが広く使用されている。また、一般的ではないものの、飲料、スープ、惣菜等の入った紙カップを直接電子レンジを利用し、加熱調理することも行なわれている。
しかしながら、一般形状の紙カップに内容物を入れて電子レンジで加熱調理した場合、紙カップの底部の糸じりの部分に焦げを生じる場合があり、様々な研究がなされている。例えば、胴部材と底部材とからなる紙カップであって、胴部材下端部を内側に屈曲し、底部材外周辺部と接合し、形成されていることを特徴とする電子レンジ用紙カップが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の例のように糸じりの部分をなくすことにより、紙カップの底部の糸じりの部分の焦げの発生は解消できた。しかしながら、より高温で加熱調理される場合には、紙カップの胴部の貼り合せ部において、内側のヒートシール性樹脂層面に発泡が生じる場合がある。このように発泡を生じると外観が悪くなるばかりでなく、付着した内容物が焦げて固化するという問題がある。この原因は、つぎのように考えられる。紙の材料のパルプのセルロースは基本的には電子レンジのマイクロ波を吸収する。従って、紙の重なる部分では、紙厚が増し発熱量が増す。一方、表面積は変わらないため熱の放出量が同じで、発生した熱を蓄積することになり、温度が上昇し、紙中の水分が蒸発する際に加熱軟化したヒートシール性樹脂層が発泡するものと考えられる。
特開平11−11541号公報
そこで本発明は、紙カップの中に、飲料、スープ、惣菜等の内容物をいれ、電子レンジで加熱調理した時に、胴部の貼り合せ部に発泡を発生させることのない紙カップを提供することである。
本発明は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明は、紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部の下端部を内側に屈曲して屈曲部を形成した胴部材と、紙層の片面又は両面にヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる底部ブランクから形成される底部材からなり、前記胴部材の下端部に前記底部材を嵌合して外周辺部を接合して形成した紙カップであって、前記胴部ブランクの少なくとも一方の側端部の内面にヒートシール性樹脂層を貫通するスリット部を形成し、他方の側端部の外面の貼り合せ部で接着していることを特徴とするものである。
また、請求項2記載の本発明は、紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部材の下端部を内側に屈曲して折り返し部を形成した胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部を設けた底部材からなり、該底屈曲部を前記胴部の下端部と前記折り返し部とで挟んで接合した糸じり部を形成した紙カップであって、前記胴部ブランクの少なくとも一方の側端部の内面にヒートシール性樹脂層を貫通するスリット部を形成し、他方の側端部の外面の貼り合せ部で接着していることを特徴とするものである。
また、請求項3記載の本発明は、前記紙カップの前記胴部材の下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部を有する胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部を設けた底部材からなり、該底屈曲部を前記胴部の下端部と前記折り返し部とで挟んで接合した糸じり部を形成し、該糸じり部を遮蔽する領域に少なくとも金属層を有する金属テープを貼着したことを特徴とするものである。
また、請求項4記載の本発明は、前記紙カップの前記胴部材の下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部を有する胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部を設けた底部材からなり、該底屈曲部を前記胴部の下端部と前記折り返し部とで挟んで接合した糸じり部を形成し、該糸じり部を内側に折り込んで形成したことを特徴とするものである。
また、請求項5記載の本発明は、紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部の下端部を内側に屈曲し折り返し部を形成した胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部と底面部を形成した底部材からなり、前記胴部の下端部と前記折り返し部との間に前記底屈曲部が挟み込まれて互いに接合され、前記底面部を凹状としたことを特徴とするものである。
また、請求項6記載の本発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の電子レンジ用紙カップにおいて、前記紙カップの前記胴部材の外周に外筒を設けることを特徴とするものである。
本発明は、胴部ブランクの少なくとも一方の側端部にヒートシール性樹脂層を貫通するスリットを施すことにより、紙カップの中に、飲料、スープ、惣菜等の内容物をいれ、電子レンジによる加熱調理を行っても胴部ブランクをヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を接着することにより形成された胴部の貼り合せ部に発泡を発生させることのない紙カップを提供することができるという優れた効果を奏するものである。
本発明は、胴部ブランクの少なくとも一方の側端部にヒートシール性樹脂層を貫通するスリットを施すことにより、胴部の貼り合せ部の発泡防止ができる効果があり、胴部の貼り合せ部を有する構造の紙カップに適用でき、請求項1〜6記載のいずれの電子レンジ用紙カップにおいても胴部の貼り合せ部の発泡防止ができるという効果を奏するものであり、紙カップの形状に限定されないという特徴を有するものである。
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる紙カップの胴部ブランク及び底部ブランクを示す展開図、図2は本発明にかかる第一実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図、図3は図1で示す胴部ブランクのA−A線の断面図及び図1で示すスリット部の部分拡大図、図4は図2のB−B線の断面図、図5は図2の紙カップに外筒を設けた紙カップを示す半分を断面とした側面図、図6は本発明にかかる第二実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図、図7は図6の紙カップに外筒を設けた紙カップを示す半分を断面とした側面図、図8は本発明にかかる第三実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図、図9は本発明にかかる第四実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図、図10は本発明にかかる第五実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図、図11は本発明にかかる第六実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。
図1〜図5を用いて本発明の第一実施形態を説明する。
(第一実施形態)
最初に図1、図2を用いて、本発明の第一実施形態の紙カップaを説明する。本発明の第一実施形態の紙カップaは図1に示すように胴部ブランク1と底部ブランク10とからなっている。胴部ブランク1は、一方の側端部2のヒートシール性樹脂層3の面に設けられた貼り合せ部4をヒートシール性樹脂層3を内側に巻回して他方の側端部5の紙層6(図4参照)の面に設けられた貼り合せ部7に重ねて重ね部21で筒状に貼り合わされた胴部22と該胴部22の上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23と、該胴部22の下端部を内側に屈曲し形成した屈曲部24とを有する胴部材20と、紙層の片面にヒートシール性樹脂層が積層された略円形の底部ブランク10から形成される底部材30からなり、屈曲部24に底部材30の紙層が接するように嵌合して外周辺部を加熱圧着して接合した逆円錐台形の本発明の紙カップaが形成されている。
次に、図1、図3を用いて本発明にかかる紙カップの要部について説明する。図1の(イ)に示すように胴部ブランク1の側端部5に設けられた貼り合せ部7の反対面のヒートシール性樹脂層3の面に貼り合せ部7に相当する部分にスリット部8が設けられている。このスリット部8は、図3の(イ)に示すように、ヒートシール性樹脂層3を貫通し、紙層6に達するスリット9がミシン目で側端部5の端縁に対し斜線状に設けられている。スリット9はヒートシール性樹脂層3を貫通し、紙層6に達する深さを有することが好ましい。これにより、電子レンジによる加熱で紙中の水分が蒸発し、スリット9を通り大気中へ逸散し、スリット部8の発泡が防止されるものである。尚、スリットが紙中に深く入らないことが好ましい。図3の(ロ)には斜線状に施したミシン目のスリットパターンを例示したが、スリットパターンは、これに限定されるものではなく、スリットの方向及び形状は任意に設けることができる。また、スリットは連続、不連続、又はそれらの混在のいずれでもよい。また、微細な孔や傷の群で設けてもよい。一つのスリットを入れることにより、少なくともスリットより1.0mmの範囲の発泡防止が可能である。したがって、スリット間隔は2.0mm程度でよい。また、ドットによる孔でもよく、一つの孔を入れることにより孔より0.5mmの範囲の発泡防止効果があり、1.0mm程度の間隔で孔を設ければよい。スリット部8は側端部5から1mm程度余白を設けて施してもよい。これは、該余白部分で蒸発した水分は側端部5の紙層6の端面から蒸発逸散するためである。また、スリット部8は胴部ブランク上端より液面予定位置までに設けて、接液部は省略することもできる。これは、電子レンジによる加熱を行っても、接液部分は内容物により発泡が抑制されるためと考えられる。さらに、スリット部は側端部2の貼り合せ部4のヒートシール性樹脂層3の面にのみ設けることもできる。もしくは、側端部2の貼り合せ部4及び側端部5の貼り合せ部7の反対面のヒートシール性樹脂層3の面の両方に設けてもよい。
次に、スリットによる発泡現象の防止作用を図2、図4を参照しながら説明する。図4は本発明の紙カップaのB−B線の断面図を示しており、胴部材20の貼り合せ部4、7で貼り合わされた状態の断面図である。本発明の紙カップaを電子レンジで加熱すると紙中の水分が蒸発する。胴部22の重ね部21においては、図4に示すように重ね部21では側端部5の紙層6は側端部2のヒートシール性樹脂層3と側端部5のヒートシール性樹脂層3でサンドイッチされており、蒸発した水分は加熱軟化した側端部5のヒートシール性樹脂層3を圧力で持ち上げようとするが、スリット部8が設けられているために、スリット9(図3参照)を通して蒸発した水分が逸散(図4中の矢印で示す)するために発泡が防止できるものである。尚、側端部2の貼り合せ部4のヒートシール性樹脂層3の面にスリット部を設けた場合には側端部5の紙層6より蒸発した水分は側端部2に設けられたスリット部を通り、さらに紙層6を通り、大気に逸散するものである。
次に、使用できる材料について説明する。まず、胴部ブランク1に使用する紙層6には100g/m2 〜400g/m2 の坪量の原紙が好ましい。また、カップ成形の面から適性のよいカップ原紙が好ましい。ヒートシール性樹脂層3はヒートシールによる胴部の貼り合せ及び胴部と底部とのヒートシールによる接着性、さらに、電子レンジ適性のある熱接着性樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。厚みは15mμ〜60mμの範囲が好ましく、熱溶融押出しラミネーション及び接着剤を使用したドライラミネーションやウエットラミネーション等により紙層6に積層される。底部ブランク10も前記と同じ材料が使用できる。構成は、紙層/ヒートシール性樹脂層又はヒートシール性樹脂層/紙層/ヒートシール性樹脂層が使用できる。
本発明の紙カップaは、逆円錐台形を例示したが、これに限定されるものではなく、水平断面が例えば四隅にアール形状を有する四角形のような角型でもよい。また、図5に示すように、本発明の紙カップaの外周に外筒60を設けることもできる。外筒60は、ブランクの一方の側端部を巻回して他方の側端部に重ねて筒状に貼り合せ(図示しない)、下端を内側にカールしてカール部61を設けた形状としており、紙カップaの外周に嵌合し固定することによって紙カップaと外筒60との間に空間を設け、断熱効果を付与したものである。このカール部61は、カール形状以外に外筒60の下端部を折り返しただけの形状でもよい。また、カール部61などを設けずに、外筒60自体に断熱性を有する材料を使用してもよい。外筒60の材料には板紙、発泡層を有する紙あるいは板紙、段ボール(片段ボールも含む)、エンボス紙などを使用できる。また、紙カップaの外周に直接接触して巻き付けた形状とすることもできる。尚、外筒60の貼り合せ部において、少なくともいずれかの側端部の内面にスリット部8と同様のスリットを設けてもよい。
次に、第二実施形態〜第六実施形態について説明する。図6から図11に用いた符号は第一実施形態の部位に相当する部位は同じ数字をつけ、末尾にアルファベットを付して示した。まず、図6を用いて本発明の第二実施形態を説明する。
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態の紙カップbは、底部の形状が第一実施形態と異なり、それ以外は第一実施形態と同じであり、異なる部分を説明し、重複する部分は説明を省略する。図6に示すように胴部22bの上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23bと胴部22bの下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部25bを有する胴部材20bと、底部ブランクの外周縁部を紙層を下面にして下方へ屈曲して底屈曲部31bを設けた底部材30bからなり、底屈曲部31bを胴部22bの下端部と折り返し部25bとで挟んで加熱圧着して接合した糸じり部40bが形成され、本発明の紙カップbが形成されている。また、図7に示すように、第一実施形態と同様に外筒60bの下端に内向きのカール部61bを設け、紙カップbに嵌合し固定して断熱効果を付与することもできる。
図8を用いて本発明の第三実施形態を説明する。
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態の紙カップcは、胴部22cの上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23cと、下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部25cとを有する胴部材20cと、底部ブランクの外周縁部を紙層を下面にして下方へ屈曲して底屈曲部31cを設けた底部材30cからなり、底屈曲部31cを胴部22cの下端部と折り返し部25cとで挟んで加熱圧着して接合した糸じり部40cが形成され、糸じり部40cを遮蔽する領域に少なくとも金属層を有する金属テープ70cを貼着して、形成されている。
また、金属テープ70cは、少なくとも1層に金属層を含んでおり、アルミニウム、鉄、クロム、金、銀、白金、銅、亜鉛等の金属箔を使用することができる。この金属層の厚さは5μm以上であることが好ましい。例えば、金属層にアルミニウム箔を用いる場合には、6μm、7μm、9μm、15μm、50μmの厚さの既製品のアルミニウム箔があり、これらの厚さのアルミニウム箔を用いることができる。また、金属テープ70cの最内層には、紙カップcの糸じり部40cと貼着するために粘着剤層あるいはポリエチレン樹脂などのヒートシール性のあるヒートシール層を設ける。構成例を示すと、例えば、アルミニウム箔を用いる場合には、アルミニウム層/粘着剤層(またはヒートシール層)の構成やアルミニウム箔にピンホールが発生することを防止するためにアルミニウム箔の表面をラミネート加工した構成、例えば、延伸ポリプロピレン層/アルミニウム層/ポリエチレン層、ポリエチレンテレフタレート層/アルミニウム層/粘着剤層などが挙げられる。これらの形態において、この金属テープ70cを、糸じり部40cを遮蔽するように、胴部22cの下端部に貼着する。金属テープ70cは、電子レンジ用断熱紙カップを電子レンジ内に置いた状態で、横方向からのマイクロ波が糸じり部40cを照射しないように遮蔽し、糸じり部40cの部分の焦げ発生を防ぐものであり、糸じり部40cを遮蔽する部分だけでもよいが、糸じり部40cを遮蔽する部分より広い範囲で胴部22cの下端部に金属テープ70cを貼着してもよい。その他は、第一実施形態と同様であり説明を省略する。
図9を用いて本発明の第四実施形態を説明する。
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態の紙カップdは、胴部22dの上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23dと、下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部25dとを有する胴部材20dと、底部ブランクの外周縁部を紙層を下面にして下方へ屈曲して底屈曲部31dを設けた底部材30dからなり、底屈曲部31dを胴部22dの下端部と折り返し部25dとで挟んで加熱圧着して接合した糸じり部40dを形成してなる紙カップ本体50と、紙カップ本体50の外周に設けられた外筒60dからなり、外筒60dの糸じり部40dを遮蔽する領域に少なくとも金属層を有する金属テープ70dを貼着した電子レンジ用断熱カップである本発明の紙カップdが形成されている。外筒60dは、第一実施形態と同様に下端を内側にカールしてカール部61dを設けた形状としており、紙カップ本体50の外周に嵌合し固定することによって紙カップ本体50と外筒60dとの間に空間を設け、断熱効果を付与したものである。金属テープ70dについては、第三実施形態と同様であり詳細な説明を省略する。
図10を用いて本発明の第五実施形態を説明する。
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態の紙カップeは、図10に示すように胴部22eの上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23eと胴部22eの下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部25eとを有する胴部材20eと、底部ブランクの外周縁部を紙層を下面にして下方へ屈曲して底屈曲部31e、壁面部32eおよび底面部33eを形成した底部材30eからなり、胴部22eの下端部と折り返し部25eとの間に底屈曲部31eが挟み込まれて加熱圧着して互いに接合され、底面部33eを凹状とした電子レンジ対応紙カップである本発明の紙カップeが形成されている。底面部33eは、内面側から下方に凹状に変形したU字形状をしているが、好ましくは、図10に示すように、底面部33eと壁面部32eとからなるトレー形状であり、底面部33eは平面状とし、壁面部32eは胴部材20eの折り返し部25eに近づけることが好ましい。また、底面部33eの最大深さは、胴部材20eの折り返し部25eの上端から折り返し部25eの幅の70%以上が望ましい。70%以上にすることによって、電子レンジ内で糸じり部40eの底部材30eの壁面部32eの近傍する側からのマイクロ波の照射を遮ることができ、糸じり部40eの焦げの発生を防ぐことができる。70%未満の場合には、糸じり部40eが焦げる場合がある。底部の形状以外は、第一実施形態と同じであり、説明を省略する。また、図示しないが、紙カップeの外周に第一実施形態、第二実施形態と同様に外筒を設けて断熱効果を付与することもできる。
図11を用いて本発明の第六実施形態を説明する。
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態の紙カップfは、底部の形状が第一実施形態と異なり、それ以外は同じであり、異なる部分を説明し、重複する部分は説明を省略する。図11に示すように胴部22fの上端部を外向きに折り曲げて形成したトップカール部23fと、胴部22f下端部を内側に屈曲し形成した折り返し部25fとを有する胴部材20fと、底部ブランクの外周縁部を紙層を下面にして下方へ屈曲して設けた底屈曲部31fと底面部33fを有する底部材30fからなり、底屈曲部31fを胴部22fの下端部と折り返し部25fとで挟んで加熱圧着して接合した糸じり部40fを形成し、糸じり部40fを内側に折り込んで形成した電子レンジ用紙カップである本発明の紙カップfが形成されている。糸じり部40fは、図11に示すように、内側に折り込み、底部材30fの底面部33fに接する形状としている。また、内側に折り込まれた糸じり部40fは元へ戻ろうとする力が働くため、平面上での安定が悪くなることを防ぐために、糸じり部40fを内側へ折り込むと同時に、糸じり部40fの内面を底部材30fの底面部33fの下面に接着剤あるいは熱接着で貼り合せて固定することもできる。また、底部の形状は、底部材30fの底面部33fをトップカール部23fで形成された開口縁側に向かって凸状にし、糸じり部40fを、内側に折り込み、底部材30fの底面部33fに接する形状(図示しない)としてもよい。そうすることにより、糸じり部40fを折り込む角度が90度以上となり、折り込んだ際に生じるシワを吸収し少なくすることができ、さらに、平面上での安定性がよくなる。また、図示しないが、紙カップfの外周に第一実施形態、第二実施形態と同様に外筒を設けて断熱効果を付与することもできる。
次に、実施例をあげて、説明する。
カップ原紙280g/m2 に低密度ポリエチレン40μmを熱溶融押出しラミネーションした積層体を胴部の材料とし、カップ原紙220g/m2 の片面に低密度ポリエチレンを30μmをさらに反対面に低密度ポリエチレンを30μmを熱溶融押出しラミネーションした積層体を底部の材料として用いた。胴部の材料を打ち抜き工程で、図1(イ)に示すように側端部5に設けられた貼り合せ部7の反対面の低密度ポリエチレンの面に貼り合せ部7に相当する部分に図3(ロ)に示すような長さ1mmのスリット9を1mm間隔で側端部5の端縁に対して斜線状のミシン目としてピッチ1mmで繰返すスリットパターンを設けスリット部8を形成した。スリット9は低密度ポリエチレン40μmを貫通しカップ原紙に達するようにスリット部8を形成しながら打ち抜き、胴部ブランク1を作製した。胴部ブランク1は一般的な紙カップ成形機で低密度ポリエチレンを内側にしてマンドレルに巻き付けて、一方の側端部2の低密度ポリエチレン面を他方の側端部5のカップ原紙面に重ねて重ね部21で筒状に貼り合わせて筒状の胴部22を形成した。次に、胴部22の下方から予め打ち抜き作製された底部ブランク10から形成された底部材30を嵌合し、接着部分を熱風で加熱し、胴部22の下端を内側にカールさせ屈曲し形成した屈曲部24に、平らなプレスで圧着し底部を形成した。つづいて、胴部22の上端を外側にカールしトップカール部23を形成し、300ml用の紙カップaを作製した。
実施例1と同じ材料で同じ方法で胴部ブランク1のスリット部8の形成位置のみ変更して紙カップaを作製した。すなわち、胴部の材料を打ち抜き工程で、胴部ブランク1の側端部2に設けられた貼り合せ部4の低密度ポリエチレンの面に低密度ポリエチレン40μmを貫通しカップ原紙に達するスリット9を実施例1と同じスリットパターンでスリット部を形成しながら打ち抜き、胴部ブランク1を作製した。その他は実施例1と同じであり、説明を省略する。
実施例1と同じ構成の材料を用いて一般的な紙カップと同様の製造工程で公知の一般的な紙カップ成形機を使用して300ml用の第二実施形態の紙カップbを作製した。
実施例1と同じ構成の材料を用いて一般的な紙カップと同様の製造工程で公知の一般的な紙カップ成形機を使用して300ml用の第二実施形態の紙カップbを作製した。つぎに、材料として、坪量が230g/m2 の板紙を使用して外筒60bを作製し、外筒60bの下端に内向きのカール部61bを設け、紙カップbに嵌合し固定した。
胴部材20dおよび底部材30dに実施例1と同じ構成の材料を用いて、まず、一般的な紙カップと同様の製造工程で紙カップ本体50を作製した。つぎに、材料として、坪量が230g/m2 の板紙を使用して外筒60dを作製し、外筒60dの下端に内向きのカール部61dを設け、紙カップ本体50に嵌合し固定した。つづいて、材料構成が外面から二軸延伸ポリプロピレン樹脂層25μm/ポリエチレン樹脂層15μm/アルミニウム層7μm/ポリエチレン樹脂層30μmの金属テープ70dを外筒60dの紙カップ本体50の糸じり部40dを遮蔽する領域にヒートシールで貼着し、300ml用の第四実施形態の紙カップdを作製した。
胴部材20eおよび底部材30eに実施例1と同じ構成の材料を用いて、まず、一般的な紙カップと同様の製造工程で紙カップを作製した。次の工程で作製した紙カップの底面部33eを下方にトレー状に変形して壁面部32eと底面部33eとして300ml用の第五実施形態の紙カップeを作製した。
胴部材20fおよび底部材30fに実施例1と同じ構成の材料を用いて、まず、一般的な紙カップと同様の製造工程で糸じり部40fを有する紙カップを作製した。つづいて、次の工程で、糸じり部40fを内側に折り込み、熱プレス加工(加工条件:温度が120℃、圧力が600KPa、時間が5秒)で糸じり部40fを押しつぶして溶融固化して平面状とし300ml用の第六実施形態の紙カップfを作製した。
[比較例1]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例1と同じ材料、同じ方法で紙カップaを作製した。
[比較例2]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例3と同じ材料、同じ方法で紙カップbを作製した。
[比較例3]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例4と同じ材料、同じ方法で紙カップbを作製し外筒60bを紙カップbに嵌合して固定した。
[比較例4]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例5と同じ材料、同じ方法で紙カップdを作製した。
[比較例5]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例6と同じ材料、同じ方法で紙カップeを作製した。
[比較例6]
胴部ブランク1にスリットを施さずに、実施例7と同じ材料、同じ方法で紙カップfを作製した。
上記で作製した実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例6の紙カップについて下記の方法で電子レンジ適性を評価した。
作製した紙カップに水200mlを入れ、電子レンジ(NEC社製、電子レンジMC−E2家庭用高周波出力:500W)にて加熱調理を行った。その結果、実施例1〜実施例7のいずれにおいても紙カップのどの部分にも発泡の発生は見られなかった。一方、比較例1〜比較例6のいずれにおいても、加熱調理2分後に重ね部において、水と非接触となっている上部に発泡の傾向が見られ、5分後には著しい発泡を発生した。
以上のように、胴部ブランクの少なくとも一方の貼り合せ部のヒートシール性樹脂層面にスリットを施すことにより、電子レンジで加熱調理しても、重ね部に発泡現象が発生しない紙カップを得ることができた。
本発明にかかる紙カップの胴部ブランク及び底部ブランクを示す展開図である。 本発明にかかる第一実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 図1で示す胴部ブランクのA−A線の断面図及び図1で示すスリット部の部分拡大図である。 図2のB−B線の断面図である。 図2の紙カップに外筒を設けた紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 本発明にかかる第二実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 図6の紙カップに外筒を設けた紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 本発明にかかる第三実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 本発明にかかる第四実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 本発明にかかる第五実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。 本発明にかかる第六実施形態の紙カップを示す半分を断面とした側面図である。
符号の説明
a 第一実施形態の紙カップ
b 第二実施形態の紙カップ
c 第三実施形態の紙カップ
d 第四実施形態の紙カップ
e 第五実施形態の紙カップ
f 第六実施形態の紙カップ
1 胴部ブランク
2、5 側端部
3 ヒートシール性樹脂層
4、7 貼り合せ部
6 紙層
8 スリット部
9 スリット
10 底部ブランク
20、20b、20c、20d、20e、20f 胴部材
21 重ね部
22、22b、22c、22d、22e、22f 胴部
23、23b、23c、23d、23e、23f トップカール部
24 屈曲部
25b、25c、25d、25e、25f 折り返し部
30、30b、30c、30d、30e、30f 底部材
31b、31c、31d、31e、31f 底屈曲部
32e 壁面部
33e、33f 底面部
40b、40c、40d、40e、40f 糸じり部
50 紙カップ本体
60、60b、60d 外筒
61、61b、61d カール部
70c、70d 金属テープ

Claims (6)

  1. 紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部の下端部を内側に屈曲して屈曲部を形成した胴部材と、紙層の片面又は両面にヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる底部ブランクから形成される底部材からなり、前記胴部材の下端部に前記底部材を嵌合して外周辺部を接合して形成した紙カップであって、前記胴部ブランクの少なくとも一方の側端部の内面にヒートシール性樹脂層を貫通するスリット部を形成し、他方の側端部の外面の貼り合せ部で接着していることを特徴とする電子レンジ用紙カップ。
  2. 紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部材の下端部を内側に屈曲して折り返し部を形成した胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部を設けた底部材からなり、該底屈曲部を前記胴部の下端部と前記折り返し部とで挟んで接合した糸じり部を形成した紙カップであって、前記胴部ブランクの少なくとも一方の側端部の内面にヒートシール性樹脂層を貫通するスリット部を形成し、他方の側端部の外面の貼り合せ部で接着していることを特徴とする電子レンジ用紙カップ。
  3. 前記糸じり部を遮蔽する領域に少なくとも金属層を有する金属テープを貼着したことを特徴とする請求項2記載の電子レンジ用紙カップ。
  4. 前記糸じり部を内側に折り込んで形成したことを特徴とする請求項2又は3記載の電子レンジ用紙カップ。
  5. 紙層とヒートシール性樹脂層が積層された積層物からなる胴部ブランクを、前記ヒートシール性樹脂層を内側に巻回して一方の側端部のヒートシール性樹脂層と他方の側端部の紙層を貼り合せ部で接着することにより胴部を形成し、該胴部の上端部を外向きに折り曲げてトップカール部を形成し、前記胴部の下端部を内側に屈曲し折り返し部を形成した胴部材と、前記底部ブランクの外周縁部を下方へ屈曲して底屈曲部と底面部を形成した底部材からなり、前記胴部の下端部と前記折り返し部との間に前記底屈曲部が挟み込まれて互いに接合され、前記底面部を凹状とした紙カップであって、前記胴部ブランクの少なくとも一方の側端部の内面にヒートシール性樹脂層を貫通するスリット部を形成し、他方の側端部の外面の貼り合せ部で接着していることを特徴とする電子レンジ用紙カップ。
  6. 前記紙カップの前記胴部材の外周に外筒を設けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子レンジ用紙カップ。
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