JP5070729B2 - キラルスメクチック液晶組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、キラルスメクチック液晶組成物および該組成物を用いた液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、室温を含む広い温度範囲でキラルSmC相を示し、かつ小さな自発分極値と大きなチルト角を持つキラルスメクチック液晶組成物、および該組成物を用いた液晶表示素子に関する。
工業的に実施されている液晶表示素子において、液晶の動作モードによる分類は、TN(Twisted nematic)、STN(Super twisted nematic)、OCB(Optically compensated bend)、IPS(In-plane switching)、VA(Vertical alignment)である。素子の駆動方式による分類は、PM(Passive matrix)、AM(Active matrix)である。AMは、TFT(Thin film transistor)、MIM(Metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(Amorphous silicon)および多結晶シリコン(Polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって、高温型と低温型に分類される。光源による分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
これらの液晶表示素子はいずれも、ネマチック液晶組成物を使用している。そのため、液晶分子の応答時間は数ミリ秒以上である。
近年、キラルスメクチック液晶組成物を用いた、分極遮蔽型液晶表示素子(PSS−LCD)が、液晶の応答時間が1ミリ秒以下といった高速応答性を示すことが報告された(特許文献1)。この高速応答性によって、フィールドシーケンシャル(FS)駆動を利用できるので、輝度が高い液晶表示素子を提供できる。この表示方式は、キラルスメクチック液晶相特に、キラルスメクチックC相(キラルSmC相)を利用するものであり、用いる液晶組成物には次の特性が求められる。
(a)動作温度範囲、つまりキラルSmC相を示す温度範囲が広い。少なくとも、0℃〜75℃である。キラルSmC相の下限温度は低いほど好ましく、具体的には、−10℃、より好ましくは、−20℃以下である。キラルSmC相の上限温度は高いほど好ましく、具体的には、80℃、より好ましくは85℃、更に好ましくは、90℃以上である。
(b)コントラストを高くするために、チルト角が大きい。好ましくは、30°より大きいことである。
(c)TFT駆動をするために、自発分極値が小さい。好ましくは、25nC/cmより小さいことである。
(d)可視光、紫外光や熱に対して安定である。
キラルな化合物Dとピリミジン化合物(化合物Aまたは化合物C)の組み合わせは公知である。特許文献2の実施例22(使用例2)は、この組成物のキラルSmC相の温度範囲が4℃〜65℃であり、チルト角が17°であることを示している。キラルな化合物Eを含む組成物が特許文献3の実施例3、4、および5に開示されているが、シアノビフェニル化合物との混合物、および同属体のみによって構成される組成物が示されているだけである。組成物の相転移温度やチルト角は報告されていない。キラルな化合物Fとピリミジン化合物即ち、化合物AおよびCの組み合わせは公知である。特許文献4の実施例5(使用例1)は、この組成物のキラルSmC相の温度範囲が0℃〜69.2℃であり、チルト角が19°であることを示している。アキラルなピリジン化合物とアキラルなピリミジン化合物の両者を含む組成物が特許文献5の実施例1〜16に開示されている。組成物のチルト角は、25°〜28.5°である。キラルな化合物D、E、およびFとの組み合わせは開示されていない。なお、ここで示した化合物A〜Fは、後述の本発明の組成物の成分である化合物である。
WO2004/063807パンフレット 特開昭64−63571号公報 特開昭61−210056号公報 特開昭63−233966号公報 特開2002−363565公報
本発明の第一の目的は、室温を含む広い温度範囲でキラルSmC相を示しかつ、小さな自発分極値と大きなチルト角を持つキラルスメクチック液晶組成物を提供することであり、第二の目的は、該組成物を用いた液晶表示素子を提供することである。
本発明の第一の目的は、次に示す第(1)項〜第(7)項のいずれかにより達成される。本発明の第二の目的は、第(8)項により達成される。
(1) 式A〜式Fのそれぞれで表される6種類の化合物をそれぞれ1つ以上含む液晶組成物であって、キラルSmC相の温度範囲が0℃〜75℃の温度範囲を含みそれより広く、25℃における自発分極値が25nC/cmより小さく、さらに25℃におけるチルト角が30°以上であるキラルスメクチック液晶組成物:

Figure 0005070729

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ここに、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシを示し、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルを示し、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシを示し、Rは炭素数1〜10の直鎖のアルキルを示し、Rは炭素数2〜10の直鎖のアルキルを示し、Xは水素またはフッ素を示し、*を付したCは不斉炭素原子を示し、そして複数のRはそれぞれ異なる基であってもよく、同一の基であってもよく、複数のRもそれぞれ異なる基であってもよく、同一の基であってもよい。
(2) 組成物全量を基準とする割合が、式Aで表される化合物が5〜25重量%、式Bで表される化合物が15〜40重量%、式Cで表される化合物が20〜60重量%、式Dで表される化合物が2〜8重量%、式Eで表される化合物が2〜10重量%、そして式Fで表される化合物が2〜8重量%である、(1)項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(3) 式A〜式Fのそれぞれで表される6種類の化合物のそれぞれ1つ以上からなる、(1)項または(2)項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(4) (1)項に記載の式AにおいてRおよびRの一方が炭素数6〜9の直鎖のアルキルであって他方が炭素数6〜9の直鎖のアルコキシであり、式BにおいてRが炭素数4〜12の直鎖のアルキルであり、式CにおいてRが炭素数5〜8の直鎖のアルキルであり、式DにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRが炭素数2〜5の直鎖のアルキルであり、式EにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがヘキシルであり、式FにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがエチルである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(5) (1)項に記載の式AにおいてRが炭素数6〜9の直鎖のアルコキシであってRが炭素数6〜9の直鎖のアルキルであり、式BにおいてRが炭素数4〜12の直鎖のアルキルであり、式CにおいてRが炭素数5〜8の直鎖のアルキルであり、式DにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルであってRが炭素数2〜5の直鎖のアルキルであり、式EにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルであってRがヘキシルであり、そして式FにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがエチルである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(6) (1)項に記載のキラルSmC相の上限温度が80℃以上である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(7) (1)項に記載のキラルSmC相の上限温度が90℃以上である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
(8) (1)〜(7)のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物を含有する液晶表示素子。
本発明の液晶組成物は、室温を含む広い温度範囲でキラルSmC相を示し、かつ小さな自発分極値と大きなチルト角を持つ。この組成物を用いることによって工業的に重要かつ実用的な液晶表示素子を提供することが可能である。
以下の説明においては、式Aで表される化合物を化合物Aと表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して表記することがある。なお、本明細書においては、電子天秤の表示データを読み取った値をもって重量と表現する。重量%は、このような値を基準として得られる百分率である。
室温を含む広い温度範囲でキラルSmC相を示しかつ、小さな自発分極値と大きなチルト角を持つキラルスメクチック液晶組成物は、化合物A〜化合物Fの全てをそれぞれ1つ以上用い、これらを適切な混合比で混合することによって得られる。本発明の組成物は、化合物A〜化合物F以外の化合物を含んでもよいが、化合物A〜化合物Fのそれぞれ1つ以上からなることが好ましい。化合物A〜化合物Cは、SmC相を示し、本発明の組成物のベース液晶として優れている。化合物Aおよび化合物Bは、比較的低い温度でSmC相を示す。特に、Xがフッ素である化合物Bは、組成物に混合した場合、低温での結晶化を防ぐ効果があり、低温でSmC相を維持する働きをする。化合物Cは、比較的高い温度領域でSmC相を示す。その主な働きは、相転移系列を損なうことなく、SmC相を高い温度領域に拡張することである。化合物A、化合物B、および化合物Cを組み合わせることで、相転移系列を高温側から等方性液体、ネマチック相、SmA相、SmC相とすることができる。この相系列は、液晶表示素子の中で、液晶分子を均一に配向させる際、都合がよい。更に、2−(4−アルキルフェニル)−5−アルコキシピリミジンである化合物Aは少量の添加でもSmA相を誘起する効果がある。2−(4−アルコキシフェニル)−5−アルキルピリミジンである化合物Aと適宜組み合わせることで、組成物のSmA相の温度範囲を調節できる。また、化合物A〜化合物Cは粘度が低く、組成物の粘性を制御する働きもある。
化合物AのRおよびRは独立して炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであるが、炭素数6〜9の直鎖のアルキルまたは炭素数6〜9の直鎖のアルコキシが好ましい。また、RおよびRの一方がアルキル、他方がアルコキシであるものが好ましい。両末端がアルキルであるものは液晶性が悪く好ましくない。化合物BのRは、炭素数4〜15の直鎖のアルキルであるが、炭素数4〜12の直鎖のアルキルが好ましい。化合物CのRは、炭素数4〜15の直鎖のアルキルであるが、炭素数5〜8の直鎖のアルキルが好ましい。
化合物Dおよび化合物Eはキラル化合物であり、その主な働きは、SmC相を示す組成物に添加して、キラルSmC相を誘起することである。この際、適切な値の自発分極を付与でき、高速応答性をを与え、PSS−LCDに適した組成物を提供できる。化合物DのRは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであり、Rは炭素数1〜10の直鎖のアルキルであるが、Rはいずれものであっても、添加物として同じ効果を持つ。そして、Rは炭素数2〜5の直鎖のアルキルが好ましい。化合物Dは2つの不斉炭素を持つが、それぞれの立体化学が同一であるもの、即ちS,S−体またはR,R−体が好適な相転移系列と転移温度を持ち、高速応答性が優れているので好ましい。化合物EのRは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであり、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルであるが、Rはこれらのうちのどちらの基であっても添加物として同じ効果を示す。また、Rはいずれのアルキルでも同様な効果を示すが、原料である光学活性2−アルカノールの製造のし易さから、ヘキシルが好ましい。
化合物Fは、化合物Dおよび化合物EとはキラルN相の掌性が逆かつ、自発分極の符号が同一であるキラル化合物であり、その働きは、キラルN相からSmA相への相転移点の直上でのキラルN相のピッチを相殺することにある。このことは、液晶表示素子の中で、液晶分子を均一に配向させる際、都合がよい。一方、自発分極値の相殺やチルト角の減少などといった悪影響を及ぼさない。化合物FのRは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであり、Rは炭素数2〜10の直鎖のアルキルであるが、Rはいずれものであっても、添加物として同様の効果を示す。また、Rはいずれのアルキルでも同様な効果を示すが、原料である光学活性2−メチル−1−アルカノールの製造のし易さから、エチルが好ましい。(S)−2−メチルブタン−1−オールは、発酵法によって大量かつ安価に製造できる。
化合物D〜化合物Fの立体化学の組み合わせとして好ましいのは、(i)(S,S)−化合物Dかつ、(S)−化合物Eかつ、(S)−化合物F、または、(ii)(R,R)−化合物Dかつ、(R)−化合物Eかつ、(R)−化合物Fのいずれかであり、それ以外の組み合わせは、自発分極値、相転移系列や相転移温度、チルト角等に不具合を及ぼすことがある。また、製造の容易さから、(i)の組み合わせがより好ましい。
本発明に好適に使用できる具体的な化合物を以下に示す。

Figure 0005070729

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本発明の化合物A、B、C、D、E、およびFの製造方法を説明する。化合物Aは、DE2641724が開示する方法で製造できる。化合物Bは、特開昭223171が開示する方法で製造できる。化合物Cは、特開昭59−39876が開示する方法で製造できる。化合物Dは、特開昭64−63571が製造方法を開示している。化合物Eに製造方法は、特開昭61−210056が開示している。化合物Fの製造方法は、特開昭63−233966が開示している。
本組成物において化合物Aの割合は、組成物全量に対して、5〜25重量%が好ましい。化合物Aの割合が5重量%未満では、相転移系列の維持が困難になることがあり、また、25重量%より多いと相対的に化合物Cの割合が減るため、SmC相の上限温度を75℃以上にすることができないことがある。
化合物Bの割合は15〜40重量%が好ましい。化合物Bの割合が15重量%未満では、融点を低下させる効果が得られなくなることがある。また、40重量%より多いと、相転移系列の維持が困難になることがある。特に高次のスメクチック相が出現する、SmC相の上限温度を75℃以上とすることができなくなることがある。
化合物Cの割合は20〜60重量%が好ましい。含有される化合物Cの割合が20重量%未満では、SmC相の上限温度を75℃以上とすることができないことがある。また、60重量%より多いと、SmC相の低温での安定性が損なわれ、更にSmA相がなくなることがある。
化合物D、化合物E、および化合物Fの割合は、それぞれ、2〜8重量%、2〜10重量%、2〜8重量%が好ましい。割合がこの範囲より多いと、自発分極値が大きくなりすぎて、TFT駆動ができなくなることがある。
化合物Fの目的は、化合物Dおよび化合物Eと混合してピッチを調整することである。従って、化合物Fの添加量は、化合物Dおよび化合物Eによって決定される。化合物D、化合物E、および化合物Fの好ましい組み合わせは、3〜6重量%:6〜8重量%:3〜6重量%である。
なお、本発明の組成物は、その他の化合物を混合して用いることができる。混合する化合物としては、キラルSmC相の温度範囲を拡大するもの、自発分極値、チルト角などを調整する効果があるもの、応答時間を短縮することができるもの、屈折率異方性や誘電率異方性を調整するものがあげられる。
本発明の組成物は、高温側から等方性液体相−キラルN相−SmA相−キラルSmC相の相転移系列を持つ。キラルN相のらせん構造は、SmA相へ転移する直上の温度で無限大となるように調整する。液晶表示素子の中で、液晶分子を均一に配向させる際に都合がよい。通常1−2μm厚のセルを使用するので、この条件でらせん構造をとらないことが好ましい。SmA相は必須ではないが、前述の均一配向性を考慮するとある方が望ましい。ただし、SmA相の温度範囲が狭いほど、SmC相でのチルト角が大きくなる傾向がある。SmA相の温度範囲を制御することで、SmC相のチルト角を調整できる。SmA相の温度範囲は、先に述べたように、化合物Aを最適化することで調整できる。SmC相は室温を含む広い温度範囲で存在することが望ましい。実際の使用条件を考慮した場合、SmC相の上限温度は高い方が良く、75℃以上、好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。SmC相の下限温度は通常融点(または、結晶化温度)であるが、高次のスメクチック相であっても構わない。ただし、SmC相の下限温度は0℃以下、好ましくは−10℃以下、更に好ましくは−20℃以下である。
TFT駆動においては、自発分極値は小さい方が好ましく、25nC/cmより小さい方がよい。PSS−LCDでは、液晶分子がコーンの頂点にある状態が消光位(電界非印加時)であり、電界印加時に液晶分子はコーンの両端に移動し、これが明状態となる。従って、コントラストを高くするために、チルト角はできるだけ大きい方が良く、好ましくは30°以上であり、理想的には45°である。SmC相において、液晶分子は層構造をとるが、液晶分子は層中で傾斜できる。液晶分子は左右2方向に傾斜でき、従って、液晶分子はあたかも円錐表面(コーン上)を移動するようにこの2状態を移動できる。層の法線と一方の傾斜状態にある液晶分子の長軸のなす角度をチルト角と定義する。
等方性液体−キラルN相−SmA相−キラルSmC相といった相系列を示し、キラルSmC相の温度範囲が0℃〜75℃より広く、自発分極値が25nC/cm未満であり、室温でのチルト角が30°以上である液晶組成物は、これまでは知られていなかった。
本発明の液晶表示素子について説明する。液晶表示素子は、導電性膜を透明電極として有する、一対の基板と、同基板の間にある液晶組成物と、前記の電極に選択的に電圧を印加することによって液晶の光軸を切り替える駆動手段と、前記の光軸の切り替えを光学的に識別する手段としての偏光板とからなる。基板としては透光性の基板が良く、通常ガラス基板が使用される。基板間の液晶の配向状態、および透明電極の配置や形状は、目的に応じて最適化される。
透明電極は、基板上にInO、SnO、ITO(Indium−Tin Oxide)等をCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法で、所定のパターンとして形成される。透明電極の厚さは50〜300nmである。この透明電極上に、膜厚50〜200nmで絶縁性膜を形成する。この絶縁性膜には、例えば、SiO、SiN、Al、Ta等の無機系の薄膜、ポリイミド、種々のフォトレジスト樹脂などの有機系薄膜などである。絶縁性膜が無機系の場合には、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、溶液塗布法等によって、これらを形成できる。また、有機系の場合では、有機物質を溶かした溶液またはその前駆体溶液等を用いて、スピナー塗布法、浸漬塗布法、スクリーン印刷法、ロール塗布法などで塗布し、所定の硬化条件(加熱、光照射)で硬化させ形成することができる。または、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、LB(Langmuir−Blodgett)法等で形成することもできる。場合によっては、この絶縁性膜は省略することもできる。
絶縁性膜上には、膜厚10〜100nmの配向制御膜を形成する。絶縁性膜を省略した場合には、導電性膜の上に直接、配向制御膜を形成する。配向制御膜として無機系または有機系の膜を使用することができる。無機系の膜にはSiO等が利用でき、例えば、斜方蒸着法、回転蒸着法などの公知の方法で成膜できる。有機系の配向制御膜には、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリイミド等が使用でき、通常この表面をラビングする。高分子液晶、LB膜を用いる場合には磁場により配向させたり、スペーサーエッジ法などによる配向なども可能である。SiO、SiN等の蒸着法、スパッタリング法、CVD法等によって成膜し、その表面をラビングする方法も用いることができる。最後に2枚の基板をシール剤を介して張りあわせ、液晶組成物を注入して液晶表示素子とする。
以下に実施例により本発明を詳細に説明する。実施例においては、次の方法で物性値を測定した。
(1)自発分極値、チルト角の測定で使用した基板の作製:透明電極を備えたガラス基板にポリビニルアルコール系配向膜を塗布した一組の基板の両面をラビング処理して、お互いに向き合わせ電極間隔を2μmとしたセルに、等方性液体状態で液晶組成物を注入し徐冷してキラルSmC相とした。
(2)相転移温度:組成物をスライドガラス上に置き、カバーガラスで覆ったものを温度制御用のホットステージに乗せ、偏光顕微鏡下で、1℃/minで昇温して観察した。Cr、SmC*、SmA、N*、Iはそれぞれ、結晶、キラルスメクチックC相、スメクチックA相、キラルネマチック相、等方性液体を示す。
(3)融点:示差走査熱量分析(DSC)を用い、5℃/minで昇温および降温して測定した。
(4)自発分極値(Ps):ソーヤ・タウアー法にて、25℃で測定した。
(5)傾き角(θ):セルに臨界電場以上の十分高い電場を印加(15V)し、らせん構造を消滅させ、更に極性を反転させ、直交ニコル下における消光位の移動角(2θに対応)より求めた。25℃で測定した。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 13.3 重量%
化合物(A2) 2.0 重量%
化合物(A3) 4.0 重量%
化合物(B1) 6.3 重量%
化合物(B2) 6.3 重量%
化合物(B3) 12.6 重量%
化合物(B5) 6.3 重量%
化合物(C1) 16.6 重量%
化合物(C4) 15.6 重量%
化合物(D3)(S,S)体 5.0 重量%
化合物(E1)(S)体 7.0 重量%
化合物(F4)(S)体 5.0 重量%
組成物相転移温度は、Cr −26 SmC* 80.0 SmA 85.0 N* 97.0 Iであった。25℃における自発分極値は17nC/cm2、チルト角は30.4°であった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 10.0 重量%
化合物(A2) 1.5 重量%
化合物(A3) 3.0 重量%
化合物(B1) 4.7 重量%
化合物(B2) 4.7 重量%
化合物(B3) 10.0 重量%
化合物(B5) 4.7 重量%
化合物(C1) 22.2 重量%
化合物(C4) 22.2 重量%
化合物(D3)(S,S)体 5.0 重量%
化合物(E1)(S)体 7.0 重量%
化合物(F4)(S)体 5.0 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −25 SmC* 86.2 SmA 88.4 N* 107.5 Iであった。25℃における自発分極値は16nC/cm2、チルト角は33.5°であった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 9.0 重量%
化合物(A2) 3.5 重量%
化合物(A3) 2.8 重量%
化合物(B1) 4.4 重量%
化合物(B2) 4.6 重量%
化合物(B3) 8.6 重量%
化合物(B5) 4.5 重量%
化合物(C1) 13.0 重量%
化合物(C2) 16.7 重量%
化合物(C5) 16.2 重量%
化合物(D3)(S,S)体 4.8 重量%
化合物(E1)(S)体 7.0 重量%
化合物(F4)(S)体 5.0 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −12 SmC* 89.4 SmA 97.5 N* 112.2 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 11.0 重量%
化合物(A2) 1.7 重量%
化合物(A3) 3.3 重量%
化合物(B1) 5.3 重量%
化合物(B2) 5.3 重量%
化合物(B3) 10.5 重量%
化合物(B5) 5.3 重量%
化合物(C1) 13.8 重量%
化合物(C4) 13.0 重量%
化合物(C5) 16.6 重量%
化合物(D3)(S,S)体 4.2 重量%
化合物(E1)(S)体 5.8 重量%
化合物(F4)(S)体 4.2 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −12 SmC* 85.2 SmA 90.8 N* 104.8 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 8.8 重量%
化合物(A2) 1.3 重量%
化合物(A3) 2.7 重量%
化合物(B1) 4.2 重量%
化合物(B2) 4.2 重量%
化合物(B3) 8.4 重量%
化合物(B5) 4.2 重量%
化合物(B8) 7.1 重量%
化合物(B9) 3.3 重量%
化合物(B10) 3.3 重量%
化合物(C1) 11.0 重量%
化合物(C4) 10.4 重量%
化合物(C5) 19.9 重量%
化合物(D3)(S,S)体 3.3 重量%
化合物(E1)(S)体 4.6 重量%
化合物(F4)(S)体 3.3 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −16 SmC* 84.6 SmA 88.0 N* 100.7 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 9.8 重量%
化合物(A2) 1.5 重量%
化合物(A3) 2.9 重量%
化合物(B1) 4.6 重量%
化合物(B2) 4.6 重量%
化合物(B3) 9.3 重量%
化合物(B5) 4.6 重量%
化合物(C1) 12.2 重量%
化合物(C2) 13.1 重量%
化合物(C4) 11.5 重量%
化合物(C5) 13.3 重量%
化合物(D3)(S,S)体 3.7 重量%
化合物(E1)(S)体 5.2 重量%
化合物(F4)(S)体 3.7 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −12 SmC* 90.1 SmA 95.4 N* 112.9 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 6.3 重量%
化合物(B1) 6.3 重量%
化合物(B2) 6.3 重量%
化合物(B3) 6.3 重量%
化合物(B4) 6.3 重量%
化合物(B5) 6.3 重量%
化合物(B7) 5.0 重量%
化合物(B8) 5.0 重量%
化合物(B9) 5.0 重量%
化合物(B10) 5.0 重量%
化合物(C1) 12.6 重量%
化合物(C4) 12.6 重量%
化合物(D3)(S,S)体 5.0 重量%
化合物(E1)(S)体 7.0 重量%
化合物(F4)(S)体 5.0 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −37 SmC* 77.4 SmA 81.3 N* 89.2 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 3.6 重量%
化合物(A4) 3.6 重量%
化合物(B1) 3.6 重量%
化合物(B2) 3.6 重量%
化合物(B3) 3.6 重量%
化合物(B4) 3.3 重量%
化合物(B5) 3.6 重量%
化合物(B7) 3.6 重量%
化合物(B8) 4.5 重量%
化合物(B9) 3.6 重量%
化合物(B10) 3.6 重量%
化合物(C1) 8.8 重量%
化合物(C2) 19.7 重量%
化合物(C5) 19.7 重量%
化合物(D3)(S,S)体 3.3 重量%
化合物(E1)(S)体 5.0 重量%
化合物(F4)(S)体 3.3 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −10 SmC* 91.0 SmA 94.7 N* 113.6 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 11.1 重量%
化合物(A2) 1.7 重量%
化合物(A3) 3.3 重量%
化合物(B1) 5.3 重量%
化合物(B2) 5.3 重量%
化合物(B3) 10.5 重量%
化合物(B5) 5.3 重量%
化合物(C1) 13.8 重量%
化合物(C4) 13.0 重量%
化合物(C5) 16.5 重量%
化合物(D3)(S,S)体 4.2 重量%
化合物(E1)(S)体 5.8 重量%
化合物(F4)(S)体 4.2 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −11.5 SmC* 84.8 SmA 89.8 N* 104.5 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 8.1 重量%
化合物(A2) 4.0 重量%
化合物(A3) 8.0 重量%
化合物(B8) 8.9 重量%
化合物(B9) 7.3 重量%
化合物(B10) 4.0 重量%
化合物(C3) 21.8 重量%
化合物(C5) 21.8 重量%
化合物(D3)(S,S)体 4.8 重量%
化合物(E1)(S)体 6.5 重量%
化合物(F4)(S)体 4.8 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −4.3 SmC* 85.6 SmA 93.0 N* 103.5 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 9.3 重量%
化合物(A2) 2.4 重量%
化合物(A3) 3.6 重量%
化合物(B1) 5.8 重量%
化合物(B2) 6.0 重量%
化合物(B3) 11.6 重量%
化合物(B5) 5.9 重量%
化合物(C3) 18.4 重量%
化合物(C5) 21.1 重量%
化合物(D3)(S,S)体 4.6 重量%
化合物(E1)(S)体 6.7 重量%
化合物(F4)(S)体 4.6 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −9.0 SmC* 85.4 SmA 93.5 N* 102.0 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 9.8 重量%
化合物(A2) 1.5 重量%
化合物(A3) 2.9 重量%
化合物(B1) 4.6 重量%
化合物(B2) 4.6 重量%
化合物(B3) 9.3 重量%
化合物(B5) 4.6 重量%
化合物(C1) 12.2 重量%
化合物(C2) 13.0 重量%
化合物(C4) 11.5 重量%
化合物(C5) 13.3 重量%
化合物(D3)(S,S)体 3.7 重量%
化合物(E1)(S)体 5.3 重量%
化合物(F4)(S)体 3.7 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −12.3 SmC* 90.1 SmA 95.4 N* 112.9 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 7.3 重量%
化合物(A2) 2.9 重量%
化合物(A3) 2.3 重量%
化合物(B1) 3.6 重量%
化合物(B2) 3.7 重量%
化合物(B3) 7.0 重量%
化合物(B4) 19.0 重量%
化合物(B5) 3.5 重量%
化合物(C1) 10.5 重量%
化合物(C2) 13.5 重量%
化合物(C5) 13.1 重量%
化合物(D3)(S,S)体 3.9 重量%
化合物(E1)(S)体 5.8 重量%
化合物(F4)(S)体 3.9 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −10.3 SmC* 85.2 SmA 90.3 N* 102.8 Iであった。
下記の組成の液晶組成物を調製した。
化合物(A1) 4.6 重量%
化合物(A7) 4.0 重量%
化合物(B2) 4.5 重量%
化合物(B3) 4.5 重量%
化合物(B4) 4.6 重量%
化合物(B5) 4.5 重量%
化合物(B7) 4.5 重量%
化合物(B8) 4.5 重量%
化合物(B9) 4.4 重量%
化合物(B10) 4.4 重量%
化合物(C1) 12.1 重量%
化合物(C4) 36.5 重量%
化合物(D3)(S,S)体 2.0 重量%
化合物(E1)(S)体 2.9 重量%
化合物(F4)(S)体 2.0 重量%
組成物の相転移温度は、Cr −15.3 SmC* 88.0 SmA 88.4 N* 106.3 Iであった。
[比較例1]
特開2002−363565公報の実施例9に従い、下記の組成の液晶組成物を調製した。

Figure 0005070729
化合物(R−1)〜化合物(R−9)の混合比はそれぞれ、5重量%、10重量%、10重量%、10重量%、20重量%、20重量%、14重量%、5重量%、6重量%であり、化合物(R−8)および化合物(R−9)の立体化学はそれぞれ、(S,S)体、および(S)体であった。組成物相転移温度は、Cr −28 SmC* 83 SmA 86 N* 99 Iであった。25℃における自発分極値は21nC/cm、チルト角は25.0°であった。
比較例1の組成物の物性値を、実施例1および実施例2の組成物の物性値と比較した結果を表1に示す。
<表1>
Figure 0005070729
本発明の組成物の自発分極値は小さく、チルト角は大きい。

Claims (7)

  1. 式A〜式Fのそれぞれで表される6種類の化合物をそれぞれ1つ以上含む液晶組成物であって、組成物全量を基準とする割合は、式Aで表される化合物が5〜25重量%であり、式Bで表される化合物が15〜40重量%であり、式Cで表される化合物が20〜60重量%であり、式Dで表される化合物が2〜8重量%であり、式Eで表される化合物が2〜10重量%であり、そして式Fで表される化合物が2〜8重量%であり、キラルSmC相の温度範囲が0℃〜75℃の温度範囲を含みそれより広く、25℃における自発分極値が25nC/cmより小さく、さらに25℃におけるチルト角が30°以上であるキラルスメクチック液晶組成物:

    Figure 0005070729

    Figure 0005070729
    ここに、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシを示し、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルを示し、Rは炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシを示し、Rは炭素数1〜10の直鎖のアルキルを示し、Rは炭素数2〜10の直鎖のアルキルを示し、Xは水素またはフッ素を示し、*を付したCは不斉炭素原子を示し、そして複数のRはそれぞれ異なる基であってもよく、同一の基であってもよく、複数のRもそれぞれ異なる基であってもよく、同一の基であってもよい。
  2. 式A〜式Fのそれぞれで表される6種類の化合物のそれぞれ1つ以上からなる、請求項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
  3. 請求項1に記載の式AにおいてRおよびRの一方が炭素数6〜9の直鎖のアルキルであって他方が炭素数6〜9の直鎖のアルコキシであり、式BにおいてRが炭素数4〜12の直鎖のアルキルであり、式CにおいてRが炭素数5〜8の直鎖のアルキルであり、式DにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRが炭素数2〜5の直鎖のアルキルであり、式EにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがヘキシルであり、式FにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルまたは炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがエチルである、請求項1または2のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
  4. 請求項1に記載の式AにおいてRが炭素数6〜9の直鎖のアルコキシであってRが炭素数6〜9の直鎖のアルキルであり、式BにおいてRが炭素数4〜12の直鎖のアルキルであり、式CにおいてRが炭素数5〜8の直鎖のアルキルであり、式DにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルであってRが炭素数2〜5の直鎖のアルキルであり、式EにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルキルであってRがヘキシルであり、そして式FにおいてRが炭素数4〜15の直鎖のアルコキシであってRがエチルである、請求項1または2のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
  5. 請求項1に記載のキラルSmC相の上限温度が80℃以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
  6. 請求項1に記載のキラルSmC相の上限温度が90℃以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のキラルスメクチック液晶組成物を含有する液晶表示素子。
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