本発明は、測定された放射性同位元素の分布状態を補正する核医学データ処理装置等に関する。
核医学では、放射性同位元素(Radioisotope : RI)で標識した化合物またはトレーサと呼ばれる放射性医薬品を被検体内に投与し、放出されたガンマ線(γ線)をガンマカメラにより測定して、RIの分布状態を画像化している(非特許文献1参照)。
図16は、RIを99mTcとした場合におけるガンマカメラで測定される理想的なエネルギースペクトラム特性曲線を示す。図16で縦軸はガンマ線のカウント値、横軸はガンマ線のエネルギー(KeV)である。99mTcは1回壊変する毎に141KeVの固有のエネルギーを放出するため、理想的には図16に示される直線Q(例えば10000カウント)のように測定される筈である。しかし、実際にはガンマ線は被検体内の臓器等に当って散乱し、減衰する。図17は、RIを99mTcとした場合におけるガンマカメラで測定される実際のエネルギースペクトラム特性曲線を示す。図17で縦軸はガンマ線のカウント値、横軸はガンマ線のエネルギー(KeV)である。図17に示されるように、実際のエネルギースペクトラム特性曲線では、141KeVの光電ピークPにおいて例えば500カウントと少なく測定され、残りの9500(=10000−500)カウント分は光電ピークPより低いかまたは高いエネルギー(散乱成分)として測定されることになる。この光電ピークPにおけるカウント数の減少は、核医学におけるRIの分布状態の画像化において感度を低下させる最大の原因とされている。
上述の感度の低下を防ぐために、従来からガンマ線の散乱成分を有効に除去する補正の試みが行なわれてきた。図18は、特許文献1に記載されている補正を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線Gを示す。図18で縦軸はガンマ線のカウント値、横軸はガンマ線のエネルギー(KeV)である。図18に示されるように、光電ピークPを含むエネルギーWLとWUとの間に、この間の特定のエネルギーのみを収集するためのエネルギーウィンドウ(幅WU−WLのメインウィンドウ:以下では、「メインウィンドウ」または「メインエネルギーウィンドウ」とも言うが、同じ意味で用いる。)を設定する。エネルギースペクトラム特性曲線GをエネルギーがWLからWUまで積分すると、メインウィンドウにおける総カウント値(面積Sとする。)が得られる。ここで、メインウィンドウにおける散乱成分を図18に示される台形B(横線部分)の面積と想定すると、総カウント値(面積S)から台形Bの面積を減じることにより、メインウィンドウにおける散乱成分を除去した総カウント値(面積N)を得ることができる。より詳しくは、エネルギーWLとWUとにも小さな幅のエネルギーウィンドウ(サブウィンドウ)を設定し、これら2つのサブウィンドウとメインウィンドウとを合わせた3つのウィンドウを用いている(Triple Energy Window : TEW法)。他にも2つのウィンドウを用いたDEW(Dual Energy Window)法がある。
上述したメインウィンドウの幅は、経験的に光電ピークPを中心とする±10%(合わせて20%)程度の幅とされている。図19は、メインウィンドウの幅を狭める補正を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線を示す。図19で縦軸はガンマ線のカウント値、横軸はガンマ線のエネルギー(KeV)である。図19に示されるように、メインウィンドウの幅を±10%より狭い±W1%とした場合、メインウィドウにおける散乱成分(台形Bの面積)をより少なくすることができるため、より正確なカウント値を得ることができると考えられる。
社団法人日本画像システム工業会編、医用画像・放射線機器ハンドブック、「第4編 核医学システム」、183頁、平成13年9月28日第1刷発行。
特公平7−69428号公報
理想的なカウント値に近づく方が正確なカウント値に近づくことになることは言うまでもない。例えば、上述の99mTcの例では測定された500カウントから理想的な10000カウントへより近づく方が正確なカウント値に近づくことになる。しかし、上述のようにガンマ線の散乱成分を有効に除去する補正を行なうためにTEW法を用いた場合、メインウィンドウにおける総カウント値(面積S)から散乱成分(台形Bの面積)を減じることになる。この結果、総カウント値は却って減少してしまうことになるという問題があった。
上述のように散乱成分を減少させるためにメインウィンドウの幅をより狭める方法を用いた場合、TEW法の場合と同様に総カウント値(面積S)が狭まるため、総カウント値は却って減少してしまうことになるという問題があった。以上の問題を避けるために、被検体へ投与されるRIの量を増加させる方法または測定時間を増加させるという方法もある。しかし、被検体へ投与されるRIの量の増加は被検体への悪影響を及ぼすこととなり、測定時間の増加は全体の処理時間の増加をもたらすことになる。
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、RIを投与された被検体内から放出されたガンマ線をガンマカメラにより測定し、RIの分布状態を画像化する場合、メインウィンドウで測定された総カウント値を減少させることなく、且つRIの量および測定時間を増加させずに、散乱成分を有効に除去する補正を行なうことができる核医学データ処理装置等を提供することにある。
この発明の核医学データ処理装置は、測定された放射性同位元素の分布状態を補正する核医学データ処理装置であって、前記核医学データ処理装置に接続されたガンマカメラに、放射性同位元素に固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、カウント値記録部の該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値として記録するメインエネルギーウィンドウ内収集手段と、前記ガンマカメラに、上記メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、前記カウント値記録部の該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値として記録するメインエネルギーウィンドウ外収集手段と、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ外加算手段と、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ内加算手段と、前記メインエネルギーウィンドウ外加算手段により求められた総和を前記メインエネルギーウィンドウ内加算手段により求められた総和で除した補正係数を求める補正係数取得手段と、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値と該メインエネルギーウィンドウ内カウント値に上記補正係数を乗じた値とを加算した結果を、該要素内に補正後カウント値として記録する補正手段とを備えたことを特徴とする。
ここで、この発明の核医学データ処理装置において、前記カウント値記録部の各要素内に記録された補正後カウント値に基づき、補正後の放射性同位元素の分布状態を所定の形式で表示装置に表示する表示手段をさらに備えることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理装置において、前記表示手段により表示された分布状態に重ねて他の分布状態を表示する重ね表示手段をさらに備えることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理装置において、前記重ね表示手段が表示する他の分布状態は、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値に基づく放射性同位元素の所定の形式の分布状態、同一の被検体について前記ガンマカメラに収集させたガンマ線のカウント値に基づくTEW法又はDEW法に基づく放射性同位元素の所定の形式の分布状態の少なくとも1つを含むことができる。
ここで、この発明の核医学データ処理装置において、前記重ね表示手段が表示する他の分布状態は、異なる複数の所定の幅のエネルギーウィンドウについて得られた前記カウント値記録部の各要素内に記録された補正後カウント値に基づく補正後の放射性同位元素の分布状態であるものとすることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理装置において、前記所定の幅は、放射性同位元素に固有の光電ピークにおけるエネルギーの±2.5%以上±10%以下であるものとすることができる。
この発明の核医学データ処理プログラムは、ガンマカメラにより測定された放射性同位元素の分布状態の補正をコンピュータに実行させるための核医学データ処理プログラムであって、前記ガンマカメラを用いて収集されたカウント値を記録したカウント値記録部を用いるものであり、該カウント値記録部は、前記ガンマカメラに、放射性同位元素に固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値として記録されたものと、前記ガンマカメラに、上記メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値として記録されたものとを含んでおり、コンピュータを、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ外加算手段、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ内加算手段、前記メインエネルギーウィンドウ外加算手段により求められた総和を前記メインエネルギーウィンドウ内加算手段により求められた総和で除した補正係数を求める補正係数取得手段、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値と該メインエネルギーウィンドウ内カウント値に上記補正係数を乗じた値とを加算した結果を、該要素内に補正後カウント値として記録する補正手段として機能させるための核医学データ処理プログラムである。
ここで、この発明の核医学データ処理プログラムにおいて、前記カウント値記録部の各要素内に記録された補正後カウント値に基づき、補正後の放射性同位元素の分布状態を所定の形式で表示装置に表示する表示手段をさらに備えることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理プログラムにおいて、前記表示手段により表示された分布状態に重ねて他の分布状態を表示する重ね表示手段をさらに備えることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理プログラムにおいて、前記重ね表示手段が表示する他の分布状態は、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値に基づく放射性同位元素の所定の形式の分布状態、同一の被検体について前記ガンマカメラに収集させたガンマ線のカウント値に基づくTEW法又はDEW法に基づく放射性同位元素の所定の形式の分布状態の少なくとも1つを含むことができる。
ここで、この発明の核医学データ処理プログラムにおいて、前記重ね表示手段が表示する他の分布状態は、異なる複数の所定の幅のエネルギーウィンドウについて得られた前記カウント値記録部の各要素内に記録された補正後カウント値に基づく補正後の放射性同位元素の分布状態であるものとすることができる。
ここで、この発明の核医学データ処理プログラムにおいて、前記所定の幅は、放射性同位元素に固有の光電ピークにおけるエネルギーの±2.5%以上±10%以下であるものとすることができる。
この発明の記録媒体は、本発明のいずれか又は複数の核医学データ処理プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
この発明の核医学データ処理方法は、ガンマカメラにより測定された放射性同位元素の分布状態を補正する核医学データ処理方法であって、コンピュータを用いて、メインエネルギーウィンドウ内収集手段が、前記ガンマカメラに、放射性同位元素に固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、カウント値記録部の該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値として記録するメインエネルギーウィンドウ内収集ステップと、メインエネルギーウィンドウ外収集手段が、前記ガンマカメラに、上記メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、前記カウント値記録部の該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値として記録するメインエネルギーウィンドウ外収集ステップと、メインエネルギーウィンドウ外加算手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ外加算ステップと、メインエネルギーウィンドウ内加算手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ内加算ステップと、補正係数取得手段が、前記メインエネルギーウィンドウ外加算ステップで求められた総和を前記メインエネルギーウィンドウ内加算ステップで求められた総和で除した補正係数を求める補正係数取得ステップと、補正手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値と該メインエネルギーウィンドウ内カウント値に上記補正係数を乗じた値とを加算した結果を、該要素内に補正後カウント値として記録する補正ステップとを備えたことを特徴とする。
この発明の核医学データ処理方法は、ガンマカメラにより測定された放射性同位元素の分布状態を補正する核医学データ処理方法であって、前記ガンマカメラを用いて収集されたカウント値を記録したカウント値記録部を用いるものであり、該カウント値記録部は、メインエネルギーウィンドウ内収集手段により、前記ガンマカメラに、放射性同位元素に固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値として記録されたものと、メインエネルギーウィンドウ外収集手段により、前記ガンマカメラに、上記メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を該ガンマ線が入射した平面上の位置毎に収集させ、前記カウント値記録部の該位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値として記録されたものとを含んでおり、コンピュータを用いて、メインエネルギーウィンドウ外加算手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ外加算ステップと、メインエネルギーウィンドウ内加算手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値の総和を求めるメインエネルギーウィンドウ内加算ステップと、補正係数取得手段が、前記メインエネルギーウィンドウ外加算ステップで求められた総和を前記メインエネルギーウィンドウ内加算ステップで求められた総和で除した補正係数を求める補正係数取得ステップと、補正手段が、前記カウント値記録部の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値と該メインエネルギーウィンドウ内カウント値に上記補正係数を乗じた値とを加算した結果を、該要素内に補正後カウント値として記録する補正ステップとを備えたことを特徴とする。
本発明の核医学データ処理装置等によれば、ガンマカメラに、RIに固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を、ガンマ線が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DBの上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)として記録する。続いて、ガンマカメラに、メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線のカウント値を、ガンマ線が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DBの上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)として記録する。カウント値記録DBの各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)の総和(SS)を求める。カウント値記録DBの各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)の総和(SM)を求める。総和(SS)を総和(SM)で除した補正係数(SS/SM)を求める。カウント値記録DBの各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)と、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)に補正係数(SS/SM)を乗じた値(CMj×(SS/SM))とを加算した結果(CMj+CMj×(SS/SM))を、上記要素内に補正後カウント値として記録する。以上の結果、本発明の核医学データ処理装置等によれば、従来の技術(TEW法等)のようにメインウィンドウの総カウント値から台形部分の減算等を行なわない。このため、RIを投与された被検体内から放出されたガンマ線をガンマカメラにより測定し、RIの分布状態を画像化する場合、メインウィンドウの総カウント値が減じることなく、且つRIの量および測定時間を増加させずに、散乱成分を有効に除去する補正を行なうことができるという効果がある。従来と同様の画質(カウント値)を得る場合なら、理論的にはガンマカメラによる撮像時間を短縮することができる。このため、例えば従来30分要していた検査時間自体を10分程に短縮することができ、被験者の負担が軽くなるという効果がある。逆に、従来と同様の撮像時間をかけた場合、カウント値が4倍程得られるため、コントラストの上昇につながるという効果がある。
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の原理を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線を示す。図1で縦軸はガンマ線のカウント値、横軸はガンマ線のエネルギー(KeV)である。RIとして例えば99mTcを用いた場合、当該RIを被検体内に投与し、放出されたガンマ線をガンマカメラにより測定すると、図1に示されるようなエネルギースペクトラム特性曲線となる。これは背景技術において説明したようにガンマ線の散乱のためである。図1において、記号Mは光電ピーク141KeVを中心に幅を±10%(合わせて20%)とした場合におけるメインウィンドウの総カウント値、Lは光電ピーク141KeV−10%より小さいエネルギーの散乱成分の総カウント値、Hは光電ピーク141KeV+10%より大きいエネルギーの散乱成分の総カウント値である。総カウント値LはLOWウィンドウにより、総カウント値HはUPPERウィンドウにより、メインウィンドウと同時にデータ収集される。本発明の原理は、メインウィンドウの総カウント値Mに散乱成分の総カウント値LおよびMを加算するというものである。元々は141KeVに集まっている筈のカウント値が散乱により広がってしまった訳であるから、それらの広がってしまったカウント値を加算して元に戻せばよい。従来の技術(TEW法等)のように、メインウィンドウの総カウント値から台形部分の減算等を行なわないため、メインウィンドウの総カウント値が減じることはない。
図2は、本発明の核医学データ処理装置等の使用環境を説明するための概要図を示す。図2において、符号10はガンマカメラ5の検出器、24は検出器10を支える部分であるガントリ(gantry : 架台)、20は患者等の被検体、22は被検体20を乗せたベッド、26は検出器10と接続されたデータ処理装置である核医学データ処理装置、28は核医学データ処理装置26と接続されたパーソナルコンピュータ(PC)である。核医学データ処理装置26およびPC28は、後述するように測定されたRIの分布状態の補正を行なう。核医学データ処理装置26とPC28とは直接的に接続されているか、またはLAN(不図示)、インターネット(不図示)等を介して間接的に接続されていてもよい。あるいは、所望の記録媒体68n(後述)等を用いて必要なデータを送ることもできる。
ガンマカメラ5は広義には検出器10、ガントリ24、ベッド22、核医学データ処理装置26から構成されている。本明細書では、検出器10、ガントリ24およびベッド22等のデータ測定系と、核医学データ処理装置26およびPC28等のデータ処理系とを区別するために、ガンマカメラ5はデータ測定系を指すものとする。図2において、符号7は被検体20から入射するガンマ線、18は検出器10の前面(被検体20側)に取付けられガンマ線7の入射方向を制御するためのコリメータ、16はコリメータ18によりコリメートされたガンマ線7を所定の波長にピークを有する光へ変換する(発光させる)ためのシンチレータ、14はシンチレータ16からの発光を電気信号へ変換するための光電子増倍管(photomultiplier tube : PMT)、12はPMT14からの出力信号に基づきガンマ線7の入射位置(X、Y)を求める位置演算等を行なう電子回路である。電子回路12は、どこのPMT14でガンマ線7が取り込まれたかにより入射位置(X、Y)等の位置情報を取得することができる。PMT14からの出力信号の大きさは入射したガンマ線7のエネルギーに比例するため、電子回路12は波高弁別を行なうことにより、特定のエネルギーウィンドウ(メインウィンドウ、LOWウィンドウ、UPPERウィンドウ)に入ったガンマ線7のみを収集することができる。各エネルギーウィンドウの設定は核医学データ処理装置26等で行なう。
図3は、本発明の実施例1における核医学データ処理装置26の機能ブロック30を示す。以下で説明する各機能は、核医学データ処理装置26のコンピュータにより実行されるものである。図3において、メインエネルギーウィンドウ内収集部(メインエネルギーウィンドウ内収集手段)31は、核医学データ処理装置26に接続されたガンマカメラ5に、RIに固有の光電ピーク(141KeV等)を中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB(DB:データベース。カウント値記録部)39の上記位置に対応する要素(例えば、ピクセル用配列の配列要素)内に、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj。j=1、2、...)として記録する。
メインエネルギーウィンドウ外収集部(メインエネルギーウィンドウ外収集手段)32は、ガンマカメラ5に、メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線7(散乱成分)のカウント値をガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB39の上記位置に対応する要素内に、メインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj。j=1、2、...)として記録する。メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)とメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)とは、例えば同一のピクセル用配列の配列要素内に配列またはリスト構造として記録することができる。あるいは、同一のサイズのピクセル用配列を2つ定義して、対応する配列要素に各々記録しても良い。
メインエネルギーウィンドウ外加算部(メインエネルギーウィンドウ外加算手段)33は、カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)の総和(SS)を求める。
メインエネルギーウィンドウ内加算部(メインエネルギーウィンドウ内加算手段)34は、カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)の総和(SM)を求める。
補正係数取得部(補正係数取得手段)35は、メインエネルギーウィンドウ外加算部33により求められた総和(SS)をメインエネルギーウィンドウ内加算部34により求められた総和(SM)で除した補正係数(SS/SM)を求める。
補正部(補正手段)36は、カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)と、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)に補正係数(SS/SM)を乗じた値(CMj×(SS/SM))とを加算した結果(CMj+CMj×(SS/SM))を、上記要素内に補正後カウント値として記録する。
表示部(表示手段)37は、カウント値記録DB39の各要素内に記録された補正後カウント値に基づき、補正後のRIの分布状態を所定の形式で表示装置64(後述)に表示する。所定の形式としては、例えば脳内のRIの分布状態の場合、横軸を脳の横断面像(アキシャル。axial)における左右方向の位置とし、縦軸を補正後カウント値とする曲線の形式とすることができる。
重ね表示部(重ね表示手段)38は、表示部37により表示された分布状態に重ねて、他の分布状態を表示する。他の分布状態としては、例えばカウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)に基づくRIの所定の形式分布状態と、同一の被検体20についてガンマカメラ5に収集させたガンマ線7のカウント値に基づくTEW法と、同一の被検体20についてガンマカメラ5に収集させたガンマ線7のカウント値に基づくDEW法とに基づくRIの所定の形式の分布状態とすることができる。この場合、重ねて表示される曲線は3つとなるが、少なくとも1つを重ねることができればよい。
上述の他の分布状態として、例えば異なる複数の所定の幅(W1、W2等)のメインエネルギーウィンドウについて得られたカウント値記録DB39の各要素内に記録された補正後カウント値に基づく補正後のRIの分布状態としてもよい。
上述の所定の幅としては、RIに固有の光電ピークにおけるエネルギーの±5%から±10%であることが好適である。
図4は、本発明の実施例1における核医学データ処理装置のコンピュータが実行する核医学データ処理方法の流れをフローチャートで示す。図4に示されるように、まず、ガンマカメラ5に、RIに固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB39の上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)として記録する(メインエネルギーウィンドウ内収集ステップ。ステップS10)。
続いて、ガンマカメラ5に、メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB39の上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)として記録する(メインエネルギーウィンドウ外収集ステップ。ステップS12)。
カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)の総和(SS)を求める(メインエネルギーウィンドウ外加算ステップ。ステップS14)。
カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)の総和(SM)を求める(メインエネルギーウィンドウ内加算ステップ。ステップS16)。
メインエネルギーウィンドウ外加算ステップ(ステップS14)で求められた総和(SS)をメインエネルギーウィンドウ内加算ステップ(ステップS16)で求められた総和(SM)で除した補正係数(SS/SM)を求める(補正係数取得ステップ。ステップS18)。
カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)と、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)に補正係数(SS/SM)を乗じた値(CMj×(SS/SM))とを加算した結果(CMj+CMj×(SS/SM))を、上記要素内に補正後カウント値として記録する(補正ステップ。ステップS20)。表示部37および重ね表示部38に対応する方法については上述した機能と同様に実行するものであるため説明は省略する。
次に、上述した核医学データ処理装置26または方法について具体例を用いて説明する。図5は、カウント値記録DB39の例であるピクセル用配列40を示す。このピクセル用配列40の各要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)等が記録される。
図6(A)ないし(F)は、説明の便宜上、ピクセル用配列40のサイズを3(1次元)とした場合における具体例を示す。図6(A)ないし(F)において、符号41a、42aおよび43aはメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)が記録されたピクセル、41b、42bおよび43bはメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)が記録されたピクセル、41c、42cおよび43cは補正後カウント値が記録されたピクセルを示す。この例では、同一のサイズ(=3)のピクセル用配列を3つ定義して、対応する配列要素(例えば、ピクセル41aと41bと41c)に各々、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)、メインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)、補正後カウント値を記録する。
図6(A)に示されるように、まず、ピクセル41a、42a、43aにメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)として、各々、0、2、0が記録される(メインエネルギーウィンドウ内収集ステップ。ステップS10)。
続いて、図6(B)に示されるように、ピクセル41b、42b、43bにメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)として、各々、1、1、1が記録される(メインエネルギーウィンドウ外収集ステップ。ステップS12)。
図6(C)に示されるように、メインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)の総和(SS=1+1+1=3)を求める(メインエネルギーウィンドウ外加算ステップ。ステップS14)。
図6(D)に示されるように、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)の総和(SM=0+2+0=2)を求める(メインエネルギーウィンドウ内加算ステップ。ステップS16)。
図6(E)に示されるように、メインエネルギーウィンドウ外加算ステップ(ステップS14)で求められた総和(SS=3)をメインエネルギーウィンドウ内加算ステップ(ステップS16)で求められた総和(SM=2)で除した補正係数(3/2)を求める(補正係数取得ステップ。ステップS18)。
図6(F)に示されるように、ピクセル41a、42a、43aに記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)である0、2、0と、これらに補正係数(3/2)を乗じた値(0×(3/2))、(2×(3/2))、(0×(3/2))とを加算した結果(0+0×(3/2))=0、(2+2×(3/2))=5、(0+0×(3/2))=0を、各々ピクセル41c、42c、43cに補正後カウント値として記録する(補正ステップ。ステップS20)。上述した本発明の原理によれば、元々は例えば141KeVに集まっている筈のカウント値5が、散乱によりピクセル41bに1、42bに1、43bに1と広がってしまい、この結果、ピクセル41aが0、42aが2、43aが0となってしまったと考える。そこで、これらの広がってしまったカウント値を加算して(=3)、元に戻せばよい(2+3=5)というものである。補正係数は広がりの程度を示すものと言える。
以上説明したように、本発明の実施例1によれば、まず、ガンマカメラ5に、RIに固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB39の上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)として記録する。続いて、ガンマカメラ5に、メインエネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、カウント値記録DB39の上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)として記録する。カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)の総和(SS)を求める。カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)の総和(SM)を求める。総和(SS)を総和(SM)で除した補正係数(SS/SM)を求める。カウント値記録DB39の各要素内に記録されたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)と、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)に補正係数(SS/SM)を乗じた値(CMj×(SS/SM))とを加算した結果(CMj+CMj×(SS/SM))を、上記要素内に補正後カウント値として記録する。以上の結果、本発明の核医学データ処理装置26および方法によれば、従来の技術(TEW法等)のようにメインウィンドウの総カウント値(=2)から台形部分の減算等を行なわない。このため、RIを投与された被検体20内から放出されたガンマ線7をガンマカメラ5により測定し、RIの分布状態を画像化する場合、メインウィンドウの総カウント値(=2)が減じることなく、且つRIの量および測定時間を増加させずに、散乱成分を有効に除去する補正を行なうことができる。
実施例2では、PC28が実行する核医学データ処理プログラムについて説明する。上述のように、核医学データ処理装置26とPC28とは直接的に接続されているか、またはLAN(不図示)、インターネット(不図示)等を介して間接的に接続されていてもよい。あるいは、所望の記録媒体68n(後述)等を用いて必要なデータを送ることもできる。そこで、核医学データ処理装置26がガンマカメラ5に収集させたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)等を直接的または間接的にPC28へ送り、PC28側のカウント値記録DB39に記録しておく。PC28の核医学データ処理プログラムは、このようにしてカウント値記録DB39に記録されたデータに基づき、実施例1の核医学データ処理装置26と同様の処理を実行する。
図7は、本発明の実施例2におけるPC28が実行する核医学データ処理プログラムの機能ブロック50を示す。図7で図3と同じ符号を付した箇所は同じ機能を示すため説明は省略する。核医学データ処理プログラムの機能と核医学データ処理装置26の機能との相違は、予めカウント値記録DB39内に、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)とメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)とが記録されているということである。すなわち、カウント値記録DB39は、ガンマカメラ5に、RIに固有の光電ピークを中心とする所定の幅のメインエネルギーウィンドウ内のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CSj)として記録されたものと、ガンマカメラ5に、上ネルギーウィンドウ外のエネルギーを有するガンマ線7のカウント値を、ガンマ線7が入射した平面上の位置(X、Y)毎に収集させ、上記位置に対応する要素内にメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)として記録されたものとを予め含んでいる。
図8は、本発明の実施例2におけるPC28のコンピュータが実行する核医学データ処理方法の流れをフローチャートで示す。図8で図4と同じステップS符号を付した処理ブロックは同じ機能を示すため説明は省略する。上述と同様に、PC28側のコンピュータが実行する核医学データ処理方法と核医学データ処理装置26側のコンピュータが実行する核医学データ処理方法との相違は、予めカウント値記録DB39内に、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)とメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)とが記録されているということである。
以上説明したように、本発明の実施例2によれば、核医学データ処理装置26がガンマカメラ5に収集させたメインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)等を直接的または間接的にPC28へ送り、PC28側のカウント記録DB39に記録しておく。PC28の核医学データ処理プログラムは、このようにしてカウント記録DB39に記録されたデータに基づき、実施例1の核医学データ処理装置26と同様の処理を実行することができる。核医学データ処理プログラムの機能と核医学データ処理装置26の機能との相違または、PC28側のコンピュータが実行する核医学データ処理方法と核医学データ処理装置26側のコンピュータが実行する核医学データ処理方法との相違は、予めカウント値記録DB39内に、メインエネルギーウィンドウ内カウント値(CMj)とメインエネルギーウィンドウ外カウント値(CSj)とが記録されているということである。従って、実施例2においても実施例1と同様に、RIを投与された被検体20内から放出されたガンマ線7をガンマカメラ5により測定し、RIの分布状態を画像化する場合、メインウィンドウの総カウント値(=2)が減じることなく、且つRIの量および測定時間を増加させずに、散乱成分を有効に除去する補正を行なうことができる。
図9は、本発明の核医学データ処理プログラムまたは方法を実行するコンピュータ(核医学データ処理装置26またはPC28)の内部回路60を示すブロック図である。図9に示されるように、CPU61、ROM62、RAM63、画像制御部66、コントローラ67、入力制御部70および外部インタフェース(Interface : I/F)部74はバス76に接続されている。図9において、上述の本発明のコンピュータ・プログラムは、ROM62、ディスク68aまたはCD−ROM68n等の記録媒体(脱着可能な記録媒体を含む)に記録されている。ディスク68aにはカウント値記録DB39も記録されている。このコンピュータ・プログラムは、ROM62からバス76を介し、またはディスク68a若しくはCD−ROM68n等の記録媒体からコントローラ67を経由してバス76を介しRAM63へロードされる。画像制御部66はRIの分布状態等を示すデータをVRAM65へ送出し、表示装置64はVRAM65から送出されたRIの分布状態等を示すデータに基づいてRIの分布状態等を表示するディスプレイ等である。VRAM65は表示装置64の一画面分のデータ容量に相当する容量を有している画像メモリである。入力操作部72はコンピュータに入力を行うためのマウス、テンキー等の入力装置であり、入力制御部70は入力操作部72と接続され入力制御等を行う。外部I/F部74は、例えばLANまたはインターネット等の外部の通信網(不図示)と接続する際のインタフェース機能を有している。
内部回路60が核医学データ処理装置26の場合、核医学データ処理装置26のカウント値記録DB39の内容を外部I/F部74およびPC28側の外部I/F部74を介してPC28側へ送信することができる。同様にして、外部I/F部74を介してLANまたはインターネット等の外部の通信網に接続された他のPC等(不図示)へ送信することもできる。カウント値記録DB39の内容をCD−ROM68n等の記録媒体に記録して、PC28側のコントローラ67を介してPC28側へ送ることもできる。
上述のようにCPU61が本発明のコンピュータ・プログラムを実行することにより、本発明の目的を達成することができる。当該コンピュータ・プログラムは上述のようにCD−ROM68n等の記録媒体の形態でコンピュータCPU61に供給することができ、当該コンピュータ・プログラムを記録したCD−ROM68n等の記録媒体も同様に本発明を構成することになる。当該コンピュータ・プログラムを記録した記録媒体としては上述された記録媒体の他に、例えばメモリ・カード、メモリ・スティック、DVD、光ディスク、FD等を用いることができる。
実施例4では、上述した表示部37および重ね表示部38の実例について図10ないし図15を用いて説明する。まず、核医学データ処理装置26が実行する機能またはPC28が実行する核医学データ処理プログラムの機能をシミュレートした結果を示す。以下はシミュレーションの条件である。
実験方法:京都科学社製脳ファントムを用い、99mTc水溶液を注入し、収集時間を50秒としてガンマカメラ5により撮像した。
収集時エネルギーウィンドウの設定:TEWで設定される3ウィンドウ(main windowと上端、下端のsub window)において、mainのみを141KeV±5%、20%の2種類変化させて設定した。本発明の核医学データ処理プログラム等では、mainを141KeV±5%、20%の2種類とし、main以外の領域を散乱成分LOW、UPPERとして設定した。
図10は、シミュレーションに用いた横断面状の脳ファントム模型に99mTc水溶液を注入し、収集時間を50秒としてガンマカメラ5により撮像した結果を示す。図10に示されるように、99mTc水溶液が入った領域81は赤色(薄い部分)になり、99mTc水溶液が入っていない領域82は青色(濃い部分)になる。図10に示される横断面像のライン80(白いライン)について、ガンマカメラ5による測定を行った。
図11は、図10の横断面像のライン80についてガンマカメラ5による測定を行った結果のカウントプロファイルカーブ(カウント値の曲線)を示す。図11で、横軸はライン80における左右方向の位置であり、縦軸はカウント値である。図11に示されるように、ライン80上で99mTc水溶液が入った領域81ではカウント値が高くなり、逆に99mTc水溶液が入っていない領域82ではカウント値が低くなる。
図12(A)は、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±5%、20%の2種類とした場合を重ねて表示した例を示す。重ね表示部38の実行例である。図12(A)で横軸は左右方向の位置であり、縦軸はカウント値である。図12(A)において、緑色の曲線85がメインウィンドウの幅を141KeV±5%とした場合のカウントプロファイルカーブであり、赤色の曲線86がメインウィンドウの幅を141KeV±20%とした場合のカウントプロファイルカーブである。図12(A)の緑色の曲線85により示されるように、メインウィンドウ幅を141KeV±5%と狭めて設定した場合であっても、カウント値は維持されている。図12(B)は本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正においてメインウィンドウの幅を141KeV±2.5%とした場合に再現された収集画像、図12(C)は本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正においてメインウィンドウの幅を141KeV±10%とした場合に再現された収集画像を示す。図12(B)および図12(C)で図10と同じ符号を付した領域は同じ意味を有する領域であるため説明は省略する。図12(B)と図12(C)とを比較すると、図12(B)の方がメインウィンドウの幅が狭く散乱成分がより少ないため、コントラストが向上している。
図13(A)は、参考のためTEW法を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±5%、20%の2種類とした場合を重ねて表示した例を示す。重ね表示部38の実行例である。図13(A)で図12(A)と同じ符号を付した領域は同じ意味を有する領域であるため説明は省略する。図13(A)で横軸は左右方向の位置であり、縦軸はカウント値である。図13(A)の緑色の曲線85により示されるように、メインウィンドウ幅を141KeV±5%と狭めて設定した場合、ほとんどカウント値は得られていない。図13(B)はTEW法を用いた補正においてメインウィンドウの幅を141KeV±2.5%とした場合に再現された収集画像、図13(C)はTEW法を用いた補正においてメインウィンドウの幅を141KeV±10%とした場合に再現された収集画像を示す。図13(C)で図10と同じ符号を付した領域はと同じ意味を有する領域であるため説明は省略する。図13(C)に示されるように、メインウィンドウの幅が141KeV±10%の場合はまだ領域81と82との相違が見える。しかし、図13(B)に示されるように、メインウィンドウの幅が141KeV±2.5%の場合、ほとんどカウント値は得られていないため収集画像の劣化が激しい。
図14は、メインウィンドウの幅を141KeV±10%(合わせて20%)とし、収集時間を50秒とした場合におけるメインウィンドウのカウント値(補正前)、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値、TEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値、DEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値を重ねて表示した例を示す。重ね表示部38の別の実行例である。図14で横軸は左右方向の位置であり、縦軸はカウント値である。図14において、緑色の曲線90が本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウントプロファイルカーブ、水色の曲線91がメインウィンドウのカウントプロファイルカーブ(補正前)、赤色の曲線92がDEW法を用いて補正を行なった結果のカウントプロファイルカーブ、紫色の曲線93がTEW法を用いて補正を行なった結果のカウントプロファイルカーブを示す。
上述のように、DEW法またはTEW法を用いて補正を行なう場合、メインウィンドウにおける総カウント値から散乱成分(台形の面積)を減じている。この結果、図14の赤色の曲線92および紫色の曲線93により示されるように、それらのカウント値は水色の曲線91により示されるメインウィンドウのカウント値(補正前)より減少してしまっている。一方、図14の緑色の曲線90により示されるように、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値は、水色の曲線91により示されるメインウィンドウのカウント値(補正前)よりかなり高くなっている。上述した本発明の原理によれば、元々は141KeVに集まっている筈のカウント値が、散乱により広がってしまったものと考える。そこで、これらの広がってしまったカウント値を加算して、元に戻している。従って、図14の緑色の曲線90により示されるように、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値は、元々のカウント値により近くなっており、補正により劇的にカウント値が改善されていることが明らかに示されている。
図15は、メインウィンドウの幅を141KeV±2.5%(合わせて5%)とし、収集時間を50秒とした場合におけるメインウィンドウのカウント値(補正前)、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値、TEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値、DEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値を重ねて表示した例を示す。重ね表示部38の別の実行例である。図15で図14とおなじ符号を付した曲線は同じ意味を有するため説明は省略する。図15で横軸は左右方向の位置であり、縦軸はカウント値である。図15に示されるように、メインウィンドウの幅が141KeV±2.5%と狭められると、メインウィンドウのカウント値(補正前)、TEW法またはDEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値は激減してしまう。一方、図15の緑色の曲線90により示されるように、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値は、他のカウント値と比較してかなり高いカウント値を示している。図14に示されるメインウィンドウの幅が141KeV±10%の場合と比較してもほとんどカウント値は変化していない。むしろメインウィンドウの幅を狭めた結果、散乱成分が少なくなるため、却って99mTc水溶液が入った領域と入っていない領域との各ピークのコントラストが明瞭になっている。本発明の原理によれば、散乱により広がってしまったカウント値を加算して、元に戻している。従って、メインウィンドウの幅が狭められた場合であっても総カウント値自体には変化はないため、元々のカウント値により近くなっており、補正により劇的にカウント値が改善されていることが明らかに示されている。
本発明の活用例として、ガンマカメラを用いて撮像する単光子放出コンピュータ断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography : SPECT)等に適用することができる。
本発明の原理を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線を示す図である。
本発明の核医学データ処理装置等の使用環境を説明するための概要図である。
本発明の実施例1における核医学データ処理装置26の機能ブロック30を示す図である。
本発明の実施例1における核医学データ処理装置のコンピュータが実行する核医学データ処理方法の流れを示すフローチャートである。
カウント値記録DB39の例であるピクセル用配列40を示す図である。
ピクセル用配列40のサイズを3(1次元)とした場合における具体例を示す図である。
本発明の実施例2におけるPC28が実行する核医学データ処理プログラムの機能ブロック50である。
本発明の実施例2におけるPC28のコンピュータが実行する核医学データ処理方法の流れを示すフローチャートである。
本発明のコンピュータ・プログラムを実行するコンピュータの内部回路60を示すブロック図である。
シミュレーションに用いた横断面状の脳ファントム模型に99mTc水溶液を注入し、収集時間を50秒としてガンマカメラ5により撮像したた結果を示す図である。
図10の横断面像のライン80についてガンマカメラ5による測定を行った結果のカウントプロファイルカーブを示す図である。
本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±5%、20%の2種類とした場合を重ねて表示した例を示す図である。
本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±2.5%とした場合に再現された収集画像を示す図である。
本発明の核医学データ処理プログラム等を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±10%とした場合に再現された収集画像を示す図である。
TEW法を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±5%、20%の2種類とした場合を重ねて表示した例を示す図である。
TEW法を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±2.5%とした場合に再現された収集画像を示す図である。
TEW法を用いた補正において、メインウィンドウの幅を141KeV±10%とした場合に再現された収集画像を示す図である。
メインウィンドウの幅を141KeV±10%(合わせて20%)とし、収集時間を50秒とした場合におけるメインウィンドウのカウント値(補正前)、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値、TEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値、DEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値を重ねて表示した例を示す図である。
メインウィンドウの幅を141KeV±2.5%(合わせて5%)とし、収集時間を50秒とした場合におけるメインウィンドウのカウント値(補正前)、本発明の核医学データ処理プログラム等を用いて補正を行なった結果のカウント値、TEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値、DEW法を用いて補正を行なった結果のカウント値を重ねて表示した例を示す図である。
RIを99mTcとした場合におけるガンマカメラで測定される理想的なエネルギースペクトラム特性曲線を示す図である。
RIを99mTcとした場合におけるガンマカメラで測定される実際のエネルギースペクトラム特性曲線を示す図である。
特許文献1に記載されている補正を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線Gを示す図である。
メインウィンドウの幅を狭める補正を説明するためのエネルギースペクトラム特性曲線を示す図である。
符号の説明
7 ガンマ線、 10 検出器、 12 電子回路、 14 光電子増倍管、 16 シンチレータ、 18 コリメータ、 20 被検体、 22 ベッド、 24 ガントリ、 26 核医学データ処理装置、 28 PC、 30、50 機能ブロック、 31 メインエネルギーウィンドウ内収集部、 32 メインエネルギーウィンドウ外収集部、 33 メインエネルギーウィンドウ外加算部、 34 メインエネルギーウィンドウ内加算部、 35 補正係数取得部、 36 補正部、 37 表示部、 38 重ね表示部、 39 カウント値記録DB、 40 ピクセル用配列、 41a、42a、43a、41b、42b、43b、41c、42c、43c ピクセル、 60 内部回路、 61 CPU、 62 ROM、 63 RAM、 64 表示装置、 65 VRAM、 66 画像制御部、 68a ディスク、 68n CD−ROM、 67 コントローラ、 72 入力操作部、 70 入力制御部、 74 外部I/F部、 76 バス、 80 ライン、 81 99mTc水溶液が入った領域、 82 99mTc水溶液が入っていない領域、 85、85、90、91、92、93 カウントプロファイルカーブ。