JP5067571B2 - ダイヤモンド単結晶基板とその製造方法 - Google Patents

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本発明は、半導体へ利用可能なダイヤモンド単結晶基板に関し、表面が高品質となる単結晶ダイヤモンド及びその製造方法に関する。
ダイヤモンドは高熱伝導率、高い電子・正孔移動度、高い絶縁破壊電界強度、低誘電損失、そして広いバンドギャップといった半導体材料他、電子デバイスへの利用が可能となる優れた特性を数多く備えている。例えば、広いバンドギャップを活かした紫外発光素子や、優れた高周波特性を持つ電界効果トランジスタなどが開発されつつある。
ダイヤモンドを半導体としての利用可能性を考えた場合には、高品質の単結晶基板が必要となる。現在、ダイヤモンド単結晶は主に高温高圧合成法を用いて作製している。これは結晶性に優れ、物性上は半導体基板として利用可能であるが、得られる単結晶のサイズは10mm程度が限界となっており十分ではない。
そこで、気相合成法によってダイヤモンド単結晶をエピタキシャル成長させることが検討されており、さらには大面積の単結晶を製造する方法が検討されている。
これまでのところ、ダイヤモンドをヘテロエピタキシャル成長により大面積の単結晶を得る方法が試みられているが、結晶欠陥が多く、光学用や半導体基板としては充分な品質ではない。
例えば、特許文献1には複数の単結晶ダイヤモンドの方位を揃えて並べ、これの上にダイヤモンドを気相合成法により成長させることによりダイヤモンド単結晶を製造する方法が述べられている。
特許文献2では、一又は複数の層に窒素、ホウ素などの不純物を含有させて、成膜速度を落とすことなく特性を向上させたダイヤモンド単結晶を製造する方法が述べられている。また特許文献3では、窒素を含有させることで成膜速度を向上させられることが示されている。また特許文献4では窒素原子含有量が異なる層を積み重ねた構造が示されている。
特開平3−75298号公報 特表2004−538230号公報 特表2005−508279号公報 特開平06−234595号公報
特許文献1のような従来技術で得られたダイヤモンド単結晶を半導体等へ利用可能とするためには、大量の高圧高温合成ダイヤモンド単結晶基板が必要とされる。大量のダイヤモンド単結晶基板を高温高圧合成で用意するには、コストと時間がかかる。
また、特許文献2の製造方法では成膜開始直後に成膜条件の制御、特に基板温度の制御が困難であり、多結晶が成長してしまうことがある。
特許文献3では、成膜速度を向上することができるが、窒素不純物量が多く、半導体へ利用可能な基板にすることはできない。
特許文献4の製造方法では、ダイヤモンド作成に時間がかかるために、製造コストが高くなってしまう。
また接触する2層間の窒素含有量の差が大きいと格子不整合が大きくなり、割れなどの
原因となる等の問題があった。
そこで本発明は、半導体用途に利用できる高品質な単結晶ダイヤモンドを提供することを目的とする。
さらに、半導体への利用可能なダイヤモンド単結晶基板を、従来よりも短時間で作製し、かつコストを低廉化させるダイヤモンド単結晶基板の製造方法を提供する。
本発明者らは、従来技術における上記の問題点を検討した結果、窒素の導入量を増やすことで、基板温度が変化する時でも高品質な単結晶成長を行うことが可能となり、多結晶ダイヤモンドの生成を抑制することが可能となることを見出した。
また窒素の導入量を調整することによってダイヤモンド単結晶を高速で作製することも可能となり作製コストの低減が可能であることを見出した。さらに含有窒素濃度基板内で急激に変化することで発生する格子不整合を小さくし、歪を低減することも可能であることを見出し、以下の発明を創作した。
(1)ダイヤモンド単結晶基板であって窒素原子含有量の異なる少なくとも二以上の層から形成されており、基板上に最初に形成された窒素原子を含有した第一層と、前記第一層の上に形成された、該第一層に比較して窒素原子の含有量が低い第二層と、を有し、これらの層が気相合成法によって形成されたものであり、前記第一層における窒素含有量が5ppm以上10ppm以下であり、前記第二層の窒素含有量が5ppm未満であり、半導体特性の評価として、試料を水素プラズマ処理し、ホール測定によって水素化表面伝導層の常温における正孔移動度が、2100〜2400cm /V・secであることを特徴とするダイヤモンド単結晶基板。
但し、前記試料とは前記基板から切り離された状態の第一層と第二層とを含むダイヤモンド層をいう。
ダイヤモンド単結晶基板であって窒素原子含有量の異なる少なくとも二以上の層から形成されており、基板上に最初に形成された窒素原子を含有した第一層と、前記第一層の上に形成された、該第一層に比較して窒素原子の含有量が低い第二層と、を有し、これらの層が気相合成法によって形成されたものであり、前記第一層における窒素含有量が20ppm以上100ppm以下であり、前記第二層の窒素含有量が5ppm以上20ppm未満であり、半導体特性の評価として、試料を水素プラズマ処理し、ホール測定によって水素化表面伝導層の常温における正孔移動度が、1100〜1450cm /V・secであることを特徴とするダイヤモンド単結晶基板。
但し、前記試料とは前記基板から切り離された状態の第一層と第二層とを含むダイヤモンド層をいう。
少なくとも、気相合成法における窒素原子を含む導入ガスの導入量を調整することにより窒素原子含有量の異なる二以上のダイヤモンド単結晶層を形成する工程を有するダイヤモンド単結晶基板の製造方法であって、前記ダイヤモンド単結晶層を形成する工程が、炭素原子に対する窒素原子含有量5ppm以上10ppm以下のダイヤモンド層を成膜する工程と、これに続く5ppm未満のダイヤモンド層を成膜する工程と、を有することを特徴とする上記()に記載されたダイヤモンド単結晶基板の製造方法。
少なくとも、気相合成法における窒素原子を含む導入ガスの導入量を調整することにより窒素原子含有量の異なる二以上のダイヤモンド単結晶層を形成する工程を有するダイヤモンド単結晶基板の製造方法であって、前記ダイヤモンド単結晶層を形成する工程が、炭素原子に対する窒素原子含有量20ppm以上100ppm以下のダイヤモンド層を成膜する工程と、これに続く5ppm以上20ppm未満のダイヤモンド層を成膜する工程と、を有することを特徴とする上記()に記載されたダイヤモンド単結晶基板の製造方法。
本発明は、半導体用途にも使用できる高品質なダイヤモンド単結晶基板を提供するという効果を奏する。
さらに本発明は、従来よりも短時間でコストを低廉化できるダイヤモンド単結晶基板の製造方法を提供するという効果を奏する。
以下、本発明を実施形態の一例に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るダイヤモンド単結晶基板は、窒素含有量の異なる層を少なくともニ以上有する。例えば、以下の実施形態が挙げられる。
実施形態1
本発明に係る実施形態であるダイヤモンド単結晶基板は、窒素含有量が5ppm未満の層と5ppm以上10ppm以下である層の両方を少なくとも有し、それらの層が気相合成法によって作製されることを特徴とする。
以下に発明者らが創作したダイヤモンド単結晶基板を比較的容易に入手できる方法の一例を示す。
高温高圧合成、もしくは気相合成法で作製した単結晶基板を用意し、この基板上に気相合成法によりダイヤモンド単結晶を成長させる。成膜開始時には、窒素含有量が5ppm以上10ppm以下となる層を作製する。この場合の層とは種基板の面積を持ち10μm以上の厚みを持つ部分を指す。また同一層の製作時に導入する炭素原子に対する窒素原子を含んだガス量は±10%以内とする。そして、窒素を添加することで成膜速度を向上させることができ、製造スピードが上がるとともに、コストも低減することができる。
成膜開始時は、成長条件が変わりやすく、特に基板温度が不安定となる。ダイヤモンド成膜時の基板温度が、ダイヤモンド単結晶成長条件に比べ、低くなる若しくは高くなることによって多結晶化してしまう。ここで窒素添加量を増やすことで、多結晶化しない基板温度範囲を広げられることを見出した。
これにより、初期層は5ppm以上10ppm以下となる層が好ましい。窒素含有量が5ppmより小さい場合では多結晶化しやすく、10ppmより大きい場合では不純物量が多くなりすぎ、作製したものの用途が限定されてしまう、また100ppmより大きいといった様に、あまりに含有量が大きくなると新たな多結晶化の原因となってしまう。気相合成で作製したものと、その他の製法によるものとの判別は、水素原子の含有量の差で見ることができる。
更にその上に、窒素原子含有量を減らした5ppm未満となる層を形成することで、低コストで半導体用途にも使用可能な基板を得ることができる。窒素原子含有量が5ppm以上になると高純度ダイヤモンドが求められる例えば半導体用途への利用ができなくなる。
また、接触する2層間の窒素含有量の差を小さくすることで、2層間の格子不整合を小さくし、割れを引き起こすような歪を低減することも可能である。厚みをもった気相合成基板を作製することで、一枚の高温高圧単結晶基板から、複数の基板を作製することが可能となる。
実施形態2
本発明に係る他の実施形態であるダイヤモンド単結晶基板は、窒素含有量の異なる少なくとも二以上の層を有する。例えば、窒素含有量が5ppm以上20ppm未満の層と20ppm以上100ppm以下である層の両方を有し、これらの層が気相合成法で作られることを特徴とする。
前記実施形態1に記載した方法と同様であるが、成膜開始時には、窒素含有量が20ppm以上100ppm以下となる層を作製する点で異なる。この場合は前記よりも高速に作製が可能であり、より作製コストの低減となる。しかし不純物量が大きくなり電子デバイスなどへの用途が限定されるため、前記方法との使い別けが可能である。更にその上に5ppm以上20ppm未満の層を成長させる。この場合5ppmより小さいと初期に成長させた層との格子不整合が大きくなり、割れなどをひきおこす歪が発生してしまう。また20ppm以上になると電子デバイスへの利用ができなくなり、大きくなりすぎると多結晶発生の原因となる。
6mm×5mm、厚さ0.7mmの高温高圧合成で作製した複数の単結晶{100}基
板を用意して、各基板に対してマイクロ波プラズマCVDによるエピタキシャル成長を行った。基板温度は1050℃、圧力100torrの条件で行った。導入したガスはメタン150sccm(standard cubiccm)、水素1000sccmとした。
添加する窒素ガス量は夫々について表1に示す通りとした。全ての基板に対して2種類の添加窒素量となるように成長を行なった。第一層目は20時間成長、第二層目は40時間成長を行なった。各層に対してSIMS(secondary ion mass spectrometry:2次イオン質量分析法)による炭素原子に対する窒素原子含有量の計測を行った。
上記高温高圧合成で作製した複数の単結晶基板に接していた部分から垂直方向上20μmの位置(第一層目)と、更に成長後表面から垂直方向下50μmの位置(第二層目)で測定を行なった。完成品については、第一層目及び第二層目を合わせた厚みを測定し、平均成膜速度を計算した。また全てについて、単結晶基板からの切り離しを行い、半導体特性の評価として試料を水素プラズマ処理し、ホール測定によって水素化表面伝導層の常温における正孔移動度を評価した。その結果を表1に示す。


*:参考例
No.1及び15は初期に成膜した層で窒素含有量が5ppm以下であり、成長速度が遅くなった。No.2−4については完成した基板についてもホール測定で十分に大きい値となっており、半導体としての利用も可能である。No.5,6及び14では完成品でのホール測定の値は小さく、No.5では偏光顕微鏡による位相差の測定では、位相差が大きくなり歪が大きいと考えられる。
No.7はNo.8−13に比べて成長速度が遅かった。No.8−10ではNo.2−4に比べれば、ホール測定の値は小さいが、成長速度は速く、完全な単結晶ができていることが確認された。No.11は多結晶化が起こり、No.12では割れが起こった。No.13は、No.8−10に比べてホール測定の値が小さくなった。

Claims (4)

  1. ダイヤモンド単結晶基板であって窒素原子含有量の異なる少なくとも二以上の層から形成されており、基板上に最初に形成された窒素原子を含有した第一層と、前記第一層の上に形成された、該第一層に比較して窒素原子の含有量が低い第二層と、を有し、これらの層が気相合成法によって形成されたものであり、前記第一層における窒素含有量が5ppm以上10ppm以下であり、前記第二層の窒素含有量が5ppm未満であり、半導体特性の評価として、試料を水素プラズマ処理し、ホール測定によって水素化表面伝導層の常温における正孔移動度が、2100〜2400cm /V・secであることを特徴とするダイヤモンド単結晶基板。
    但し、前記試料とは前記基板から切り離された状態の第一層と第二層とを含むダイヤモンド層をいう。
  2. ダイヤモンド単結晶基板であって窒素原子含有量の異なる少なくとも二以上の層から形成されており、基板上に最初に形成された窒素原子を含有した第一層と、前記第一層の上に形成された、該第一層に比較して窒素原子の含有量が低い第二層と、を有し、これらの層が気相合成法によって形成されたものであり、前記第一層における窒素含有量が20ppm以上100ppm以下であり、前記第二層の窒素含有量が5ppm以上20ppm未満であり、半導体特性の評価として、試料を水素プラズマ処理し、ホール測定によって水素化表面伝導層の常温における正孔移動度が、1100〜1450cm /V・secであることを特徴とするダイヤモンド単結晶基板。
    但し、前記試料とは前記基板から切り離された状態の第一層と第二層とを含むダイヤモンド層をいう。
  3. 少なくとも、気相合成法における窒素原子を含む導入ガスの導入量を調整することにより窒素原子含有量の異なる二以上のダイヤモンド単結晶層を形成する工程を有するダイヤモンド単結晶基板の製造方法であって、前記ダイヤモンド単結晶層を形成する工程が、炭素原子に対する窒素原子含有量5ppm以上10ppm以下のダイヤモンド層を成膜する工程と、これに続く5ppm未満のダイヤモンド層を成膜する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド単結晶基板の製造方法。
  4. 少なくとも、気相合成法における窒素原子を含む導入ガスの導入量を調整することにより窒素原子含有量の異なる二以上のダイヤモンド単結晶層を形成する工程を有するダイヤモンド単結晶基板の製造方法であって、前記ダイヤモンド単結晶層を形成する工程が、炭素原子に対する窒素原子含有量20ppm以上100ppm以下のダイヤモンド層を成膜する工程と、これに続く5ppm以上20ppm未満のダイヤモンド層を成膜する工程と、を有することを特徴とする請求項2に記載のダイヤモンド単結晶基板の製造方法。
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