JP5067093B2 - 組合せ食品の製造法 - Google Patents
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Description
しかしながら製造工程上に減圧等の操作を行う為に別途付加的な装置が必要であり、操作が煩雑になりがちである。また減圧により含気泡食品中の空気の圧力と外気圧差により含浸する為、如何に減圧をしてもその外気圧差は760mmHg程度以上にはならず、より粘稠な油性菓子や細孔径が極めて小さいものには含浸しにくい傾向があった。
該発明は液体を食品に掛けた上で遠心力をかけ、洗濯機の脱水槽が遠心力により水分を振り切るのと同じように、液体が遠心力により食品組織の中を外へ外へと移動することにより、食品の中に液体を行き渡らせているのだが、該発明は食品の形態保持の観点から遠心力に上限が設けられている点でも判る通り、脆い食品に強遠心力を与えることが出来ないため、必然的に細孔径が小さい、または粘度が高い粘稠な液体を含浸させるには遠心力をむやみと上昇させることは出来ず、含浸できる食品の形状への制限が大きい。
他にも含浸食品素材の製造を目的とする発明はあったが、平易な方法にて、汎用性に富む製造方法をしめした発明はなく、市場からの該技術への要求は強いものがあった。
(1)としては、多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事を特徴とする組合せ食品の製造法であり、(2)としては、含浸工程の作業温度において、粘度が50000cp(センチポイズ)以下である流動性食品素材を用いる事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(3)としては、含浸工程の作業温度が−30℃〜80℃である(2)記載の組合せ食品の製造法であり、(4)としては、加速度が5G以上の状態を10秒以上持続させる事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(5)としては、多孔性食品素材がクラッカー、ラスク、ハードビスケット、クッキー、ウエハース、パイ、米菓、パン、スポンジケーキ、パフ菓子の群から 選ばれる少なくとも一種以上である(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(6)としては、多孔性食品素材を流動性食品素材中にあらかじめ埋没せしめた後に加速度のかかる含浸工程に供する事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(7)としては、(1)乃至(6)の何れか1項に記載の方法にて製造された組合せ食品である。
従来の遠心法による含浸においては、細孔の大小については大きい方が、細孔の数については多い方が含浸しやすいし、その形状・構造の強度については遠心力にある程度抗することが可能な程度に堅牢である必要があった。
さらには上記条件を満たせばパンや菓子に限らず、乾燥麸、組織状大豆蛋白、フリーズドライされた果実(イチゴなど)などの食品素材なども用いることができる。
油性食品は喫食に供される温度域にてシャープな融解特性を有する油脂を用いることが望ましい。喫食に供される温度域とは、喫食直前の状態から口中での温度までの温度域でのことであり、その範囲でシャープな融解特性を有する油脂は、具体的には喫食直前の状態が固体であるが口中で速やかに溶けるものであって、好ましくは10℃位の温度上昇で固体脂含量(SFC)が40程度以上低下する性質を有する油脂である。
一例としては常温で流通する食品の場合、ココアバター、及びこれに類似した融解特性を示す各種のハードバター、冷菓の場合、アイスコーティング用チョコレートに用いられる油脂であることができる。よって油性食品としては、通常のチョコレート類、或いは通常のチョコレート類において使用されるカカオマスのかわりに他の何らかの呈味性固形分、例えばチーズ粉末、粉乳、発酵乳粉末、豆乳粉末、果汁粉末、ナッツペーストなどを置き換えた食品が好適に使用できる。
アイスコーティングチョコレートなど0℃以下で流動性を有し、上記粘度条件を満たすものは存在するが、多孔性食品素材がその含浸作業時に構造を保持できれば特段低い温度で作業をする必要はなく、逆に吸湿などによる品質の低下、付加的な設備の必要によりコストが上昇しかねない。
一方、上限についても特に限定はされないが、80℃以下、望ましくは60℃以下、更に望ましくは40℃以下であることが好ましい。
これも油脂などの劣化に伴う品質の劣化、付加的な設備の必要によりコストが上昇しかねない。
また上記説明にある含浸作業時の粘度はこの含浸作業時の温度範囲での粘度を指す。
ただし、含浸工程を終えて、多孔性食品素材と多孔性食品素材に含浸されずに残余した流動性食品素材を分離する工程は、加速度を5G未満にしてから行う必要がある。また接触の多少についても望ましくは多孔性食品素材が流動性食品素材中に没している状態が好ましい。
従来型の遠心法は背景技術において記載の通り、特許文献4に代表される方法であり、液体が遠心力により食品組織の中を外へ外へと移動することにより、食品の中に液体を行き渡らせているのが特徴だが、液体が移動する先、すなわち振り切る先に空間があることで移動が可能になると考えられてきた。 (図1参照)
しかしながら実際には多孔性食品素材中の空気は浮力がかかる。(図2)
F = ρVg (ただし、ρ:流体の密度、V:物体の体積、g:重力加速度)
で表される。(ここでは物体は「空気」であり、流体は「流動性食品素材中」にあたる。)
しかし、遠心力などで強い加速度をかけた場合、空気には図3(b−1)のように「強加速度での空気と同体積の流動性食品素材の重量」相当する強い浮力が発生し、図3(b−2)示されるように粘稠な流動性食品素材の表面張力を打ち破り、多孔性食品素材表面から加速度とは逆の方向へと脱出することが出来る。
一般に遠心力(RCF)は以下の式によって求められる。
RCF(G)=1118×半径(cm)×(回転数(rpm))2×10−8
上記規定の加速度を得ることができれば特にその方法は限定されないが、半径20cmの場合は回転数が150rpm以上、半径30cmの場合は回転数が123rpm以上の回転運動で5Gを上回る加速度を得ることが可能である。
これは市販の遠心分離器で十分に得られる加速度であり、特にその機種などは限定されない。
多孔性食品素材が流動性食品素材に十分に埋没していることでより効果的に含浸が進むため含浸による流動性食品素材の目減りも、加速度がかかる系外への散逸も望ましくない点では同じであるが、加えて、振り切られた流動性食品素材は回収工程が必要となり煩雑である。なお、多孔性食品素材は内部に空気を持っているので、それ自体に浮力が働くため、流動性食品素材中に入れると表面に浮き上がりかねない。まして、遠心力が強くなると浮力も大きくなる。望ましい条件である多孔性食品素材が流動性食品素材に埋没している状態を含浸作業中に維持する為には、流動状食品素材の液面上から浮かび上がらないようにする必要がある。特にその方法は限定されないが、流動性食品素材を通し、かつ多孔性食品素材は通さない程度の目の大きさである、一例としてはザルのような固定器具で多孔性食品素材を流動性食品素材中に埋没させるようにすると、より効率的に含浸作業を行うことができる。
一般的に遠心力で加速度を与えた場合は、回転数を急激に上げたり下げたりすることは機械的にもコスト的にも好ましくないので、厳密に5G以上である加速度を集中的に与え、また急に5G未満に下げるということはありえないが、工程の中で5G以上である加速度下にさらされている時間は10秒以上、望ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、最も好ましくは1分以上であることが望ましい。
一方、上限は上記加速度下にさらされている時間が長いほど含浸は進むものの、多孔性食品素材全体に含浸が進んだ場合は、それ以上の含浸操作は意味を成さず、コストがかさむばかりであるが、特に特定の時間以下でなくてはならないというものはない。
最終的な目的品質が芯まで含浸されているもので表面にもたっぷりと流動性食品素材が付着した状態(チョコレートではコーティングと呼ばれる)が望ましい場合は1G(遠心力の場合は回転が停止し、通常の重力だけになった状態)で余分な流動性食品素材と多孔性食品素材を分離(具体的には流動性食品素材を多孔性食品素材から引き上げる)すればいいし、最終的な目的品質がラスクのような細孔径の大きな多孔性食品素材の芯部に流動性食品素材が内部構造の表面と外部表面に満遍なく薄く付着してはいるが空間もやや残っている程度であれば、5G未満で残余流動性食品素材を加速度のかかっている系から除くなどして分離すれば、残余流動性食品素材は効率的に分離が可能である。
60℃に調温した市販の油分33%のミルクチョコレート(商品名:フジサニーミルクチョコレート、不二製油株式会社製)400重量部とテンパリング型ハードバター(商品名:NEW−SS7、不二製油株式会社製)100重量部を混合した上で品温を31℃に調製した。そこにシード剤(商品名:「チョコシードA」、不二製油株式会社製)をチョコレートとハードバターに全量に対し0.2%加えてテンパリング処理をし、流動性食品素材を得た。なお、該流動性食品素材は31℃にて3200cpであった。
含浸操作が終わったあと、回転数を落として完全に停止させて容器を取り出し、1Gの通常重力下で多孔性食品素材の表皮に付着した流動性食品素材を滴り落ちる分だけを取り除いた。ついでトレーに移し、5℃冷蔵庫で30分間冷却固化し、流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
遠心分離機の回転数を比較例1・実施例2・実施例3・実施例4・実施例5の順に120・170・250・600・1500(rpm)に変える以外は実施例1と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表1に示した。
※1 加速度
遠心力により発生した加速度(重力に対して垂直)と重力加速度とのベクトルの和
※2 含浸の評価
○:多孔性食品素材に流動性食品素材が芯まで含浸している。
△:含浸はしているが、一部含浸していない部分が残る。
×:表面に付着したのみで内部への含浸はほとんど無い。
※3 破損の評価
○:多孔性食品素材の破損は見られない。
△:1割(10個中1個)の多孔性食品素材に割れ・砕けといった破損が見られる。
×:2割(10個中2個)以上に破損が見られる。
一方、それ以上の加速度がかけられたものは、加速度が8.7である実施例2は図5に示したように、その断面には一部ソフトビスケットの芯にチョコレートが含浸していない部分が残りはしたものの、上記の単に漬け込んで引き上げただけのものに比べ食感が優れ、十分に市場性のあるものであったし、それ以上の加速度をかけられた実施例3、実施例1(図6参照)、実施例4、実施例5は断面の芯までチョコレートが含浸し、優れた食感を発揮し、商品価値の高いものであった。
多孔性食品素材として市販のラスク(商品名:コパン(バタートースト味)、明治製菓株式会社製)を10個(1個あたり重量4g、計40g)用いる以外は実施例4と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
また、多孔性食品素材と残余流動性食品素材の分離は実施例1の説明通り、含浸操作が終わったあと、回転数を落として完全に停止させて容器を取り出しているため、1Gの通常重力下で多孔性食品素材の表皮に付着した流動性食品素材を滴り落ちる分だけを取り除いた。
図4のような形状の容器、すなわち、ザル状の容器を元からある容器の内側にザル状容器の底部と元の容器の底部との間に隙間があるように設置した2重構造にしたものを用い、かつ流動性食品素材を多孔性食品素材に塗布する以外は実施例6と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
なお、塗布した流動性食品素材は遠心力をかけられることでザル状容器底部と元の容器の底部との間に隙間に溜まるが、ザル状容器底部を上回ることはなかった。
これにより、多孔性食品素材と残余流動性食品素材の分離は5Gを越える加速度にて行われていることになる。
注:本来の従来法による製造方法は振り切ったチョコレートが遠心分離機の内壁に当たるのだが、実験室的なスケールの遠心分離機はバランスが取れていないと危険であり、チョコレートを振り切るとバランスが崩れ危険である為、上記のような方法にて実験を実施した。
実施例6・比較例3はそれぞれ、回転数を3000rpmまで上げる以外は実施例5・比較例2と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表2に示した。
※4 含浸の評価
(○):多孔性食品素材に流動性食品素材が芯まで含浸しているものの流動性食品素材が振り切られており、空隙が占める状態。
他は表1と同じ評価基準。
※5 屑の混入の評価
○:流動性食品素材中に多孔性食品素材が目視できる程度には殆ど混入していない。
△:多孔性食品素材が微細な屑の状態で混入し、目視できる。
×:多孔性食品素材が砕け、破片と流動性食品素材が混在した状態になる。
比較例2ではラスクの空隙構造の表面にチョコレートが満遍なく行き渡っているが空隙自体には大半空気が満たされており、出来上がったチョコレート含浸ラスクは既存の振り切り型含浸法で作製したものと同じであった。また屑の混入は実施例6より明らかに多く、再度含浸に用いるためリサイクルする回数が増えるにつれ屑の混入は多くなり、含浸しにくくなった。その傾向は回転数を3000まで上げた実施例7と比較例3でより明確になりザル状容器を用いた比較例3はラスク自体がザル状容器との接触点に大きな力がかかるため破損が進み、ラスクの粉体状の屑が目に見える量チョコレートに混入し、リサイクルが困難となった。
ミルクチョコレートの配合を市販の油分33%のミルクチョコレート250重量部にハードバターを加えずに品温を31℃に調製し、そこにシード剤をチョコレートに対し0.2%加えてテンパリング処理をした流動性食品素材を用いる以外は実施例6と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
なお、該流動性食品素材は31℃にて34500cp、含浸工程における回転数は1000rpm、それに伴う加速度は302Gであった。
含浸作業温度を28℃にて行う以外は実施例7と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。テンパリング工程のあとミルクチョコレートは増粘傾向にあり、温度が低下するとその傾向は顕著である。含浸作業直前に測定した該ミルクチョコレートは47500cpであった。それぞれの実施例・比較例の流動性食品素材の配合と含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表3に示した。
遠心分離機の回転数を150rpmに、そしてその150rpmを10秒持続させた後速やかに回転数を落とす以外は実施例1と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
なお、150rpmは6.8Gの加速度に相当するものであった。
150rpmを1秒持続させた後速やかに回転数を落とす以外は実施例9と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
遠心分離機にかけ加速度をかける工程をまったく行わない、すなわち流動性食品素材に多孔性食品素材を沈めるだけにする以外は実施例9と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、その加速度の持続していた時間、それに評価を表4に示した。
多孔性食品素材として実施例11は市販の食パン(商品名:超芳醇6枚切り、山崎製パン株式会社製)の耳を切り、3cm角に切り分けたものを10枚(1枚あたり重量7g、計70g)を、実施例12は米菓(商品名:ピケエイト、株式会社マスヤ製)を10個(1個あたり重量2g、計20g)にする以外は実施例4と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
参考の為、多孔性食品素材が異なる以外の配合や工程が同じ実施例4・実施例6とあわせて表4に多孔性食品素材の種類と評価をまとめた。
Claims (6)
- 多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、多孔性食品素材を流動性食品素材中にあらかじめ埋没せしめた後に加速度のかかる含浸工程に供し、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事を特徴とする組合せ食品の製造法。
- 含浸工程の作業温度において、粘度が50000cp(センチポイズ)以下である流動性食品素材を用いる事を特徴とする請求項1記載の組合せ食品の製造法。
- 含浸工程の作業温度が−30℃〜80℃である請求項2記載の組合せ食品の製造法。
- 加速度が5G以上の状態を10秒以上持続させる事を特徴とする請求項1記載の組合せ食品の製造法。
- 多孔性食品素材がクラッカー、ラスク、ハードビスケット、クッキー、ウエハース、パイ、米菓、パン、スポンジケーキ、パフ菓子の群から 選ばれる少なくとも一種以上である請求項1記載の組合せ食品の製造法。
- 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の方法にて製造された組合せ食品。
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