JP5067093B2 - 組合せ食品の製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、加速度を与えることで多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させてなる、独特の食感及び風味を有する組合せ食品及びその製造法に関するものである
従来より、焼き菓子とチョコレートといった組み合わせに代表される、多孔性食品素材と流動性食品素材の組合せ食品、中でも多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させたタイプの組合せ食品は市場にて人気の商品であった。
しかしながら、単に流動性食品素材中に多孔性食品素材を浸漬させるだけで含浸がなるようなケースは流動性食品素材の粘度が小さく、また多孔性食品素材の細孔径が十分に大きいような場合に限られる。粘度が大きい粘稠な流動性食品素材は現実的には多孔性食品素材はもとより表面の凹凸にすら満遍なく行き渡らないし、細孔径が微細な場合は流動性食品素材の粘度が低くても含浸しては行かない。現実的には含浸タイプ組合せ食品(以降、含浸食品と称する)を製造するには様々な技術が必要とされる。
含浸食品を製造する技術は大別して減圧法と遠心法の2種類が知られている。そのうち減圧法は、融液状の油脂性菓子に含気泡食材を埋没させ、密閉系内の気圧が10mmHg超660mmHg以下で含気泡食材(本願でいうところの「流動性食品素材」に相当する)を脱気し、しかる後に常圧に戻すことにより含気泡食材に油脂性菓子を含浸させることを特徴とする複合油脂性菓子の製造方法(特許文献1)や、脱気状態の含気泡性食材を液状の浸透性食材中に浸漬し、次いで常圧に戻すことにより、浸透性食材を含気泡性食材に含浸させることを特徴とする菓子の製造方法(特許文献2)、他にも、含水率が0〜40重量%である多孔質構造の空隙を有する基食材を、10〜50,000Paに減圧処理し、減圧状態に保ちながら溶融状態のチョコレートと接触し、次いで0.11〜0.8MPaまで昇圧して、基食材の空隙内部に溶融状態のチョコレートを含浸させる含浸処理工程と、冷却により基食材中のチョコレートを固化させる冷却工程とを有することを特徴とするチョコレート含有食品の製造方法(特許文献3)などが考案されている。また一般的には減圧法は細孔径の小さい食材に対しても含浸させることができるため、細孔径の大小広い範囲の含気泡食材(本願でいうところの「多孔性食品素材」)に用いることができる。また、上記減圧法を用いることで含気泡食材の芯にまで油性菓子を密に含浸させることも可能である。
しかしながら製造工程上に減圧等の操作を行う為に別途付加的な装置が必要であり、操作が煩雑になりがちである。また減圧により含気泡食品中の空気の圧力と外気圧差により含浸する為、如何に減圧をしてもその外気圧差は760mmHg程度以上にはならず、より粘稠な油性菓子や細孔径が極めて小さいものには含浸しにくい傾向があった。
一方、遠心法としては室温での粘度が1〜7,000センチポイズである液体を食品(本願でいうところの「流動性食品素材」の相当する)に接触させた状態で、遠心力を該食品に作用させることにより、液体を該食品に含浸させることを特徴とする食品の含浸処理方法(特許文献4)などが考案されている。
該発明は液体を食品に掛けた上で遠心力をかけ、洗濯機の脱水槽が遠心力により水分を振り切るのと同じように、液体が遠心力により食品組織の中を外へ外へと移動することにより、食品の中に液体を行き渡らせているのだが、該発明は食品の形態保持の観点から遠心力に上限が設けられている点でも判る通り、脆い食品に強遠心力を与えることが出来ないため、必然的に細孔径が小さい、または粘度が高い粘稠な液体を含浸させるには遠心力をむやみと上昇させることは出来ず、含浸できる食品の形状への制限が大きい。
さらに、含浸方法が「振り切り」であるという性格上、チョコレートは振り切られる為、食品の内部構造の表面部に付着するが、チョコレートが振り切られたあとに流入する空気がその大半の空間を占めることになり、食品の中の空気の殆どを液体に置き換えたタイプの含浸食品素材には不向きである。その上、「振り切られて」分離したチョコレートは回収・再利用も可能とあるが、回収の手間は工程上煩雑であり、また食品が遠心力等で破損することで発生する細かい屑が液体に混入したり、表面積が大きくなることで吸湿しやすくなるなどの問題があった。
他にも含浸食品素材の製造を目的とする発明はあったが、平易な方法にて、汎用性に富む製造方法をしめした発明はなく、市場からの該技術への要求は強いものがあった。
WO97/47207号公報 特開2004−105069号広報 特開2004−254529号広報 特開2002−209530号広報
本発明は、平易な方法で、汎用性に富む含浸食品素材の製造法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、
(1)としては、多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事を特徴とする組合せ食品の製造法であり、(2)としては、含浸工程の作業温度において、粘度が50000cp(センチポイズ)以下である流動性食品素材を用いる事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(3)としては、含浸工程の作業温度が−30℃〜80℃である(2)記載の組合せ食品の製造法であり、(4)としては、加速度が5G以上の状態を10秒以上持続させる事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(5)としては、多孔性食品素材がクラッカー、ラスク、ハードビスケット、クッキー、ウエハース、パイ、米菓、パン、スポンジケーキ、パフ菓子の群から 選ばれる少なくとも一種以上である(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(6)としては、多孔性食品素材を流動性食品素材中にあらかじめ埋没せしめた後に加速度のかかる含浸工程に供する事を特徴とする(1)記載の組合せ食品の製造法であり、(7)としては、(1)乃至(6)の何れか1項に記載の方法にて製造された組合せ食品である。
本発明によって、多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事により、より平易な方法で、汎用性に富む含浸食品を製造することが可能である。
本発明における多孔性食品素材とは内部に空隙を持ち、且つその空隙の一端が表面に細孔や隙間となって現れている食品を指す。上記条件を満たせば食品の形状・原料は限定されない。
従来の遠心法による含浸においては、細孔の大小については大きい方が、細孔の数については多い方が含浸しやすいし、その形状・構造の強度については遠心力にある程度抗することが可能な程度に堅牢である必要があった。
しかしながら本願発明に関していえば、接触させた状態にて加速度を与え、しかも加速度を5G未満にしてから多孔性食品素材と、多孔性食品素材に含浸されなかった残余流動性食品素材を分離するため、含浸をさせる工程、すなわち5Gを超える加速度に相当する遠心力がかかっている時点では多孔性食品素材は流動性食品素材にほぼ没した状態であり、粘稠な流動体中にある物体は外部からの衝撃や加速度に対し強く、したがって従来の多孔性食品素材に比してより強い加速度に耐えることが可能となり、自由度が高いものとなる。
そのため多孔性食品素材としては、上記条件を満たせば食品の形状・原料は限定されないが、一例としては菓子類、ベーカリー類、層状食品類などが挙げられる。さらに具体的には、菓子類の具体的な例としては、クラッカー、ラスク、ハードビスケット、クッキー、ウエハース、米菓等が、また、コーンパフ、ライスパフなどのパフ菓子が、ベーカリー類の具体例としてはパンやスポンジケーキ等が、また一般に言うところの多孔性食品素材のイメージからは外れるようにも見えるが、内部に空隙をもちその一端が表面に現れている層状食品類、例えばパイやデニッシュ等が挙げられる。
さらには上記条件を満たせばパンや菓子に限らず、乾燥麸、組織状大豆蛋白、フリーズドライされた果実(イチゴなど)などの食品素材なども用いることができる。
本願における流動性食品素材についても、含浸作業時に流動性を有してさえいれば特に限定はされないが、一例を挙げると、チョコレート様食品やキャラメル、ショートニング、ナッツペーストなどに代表される油性食品、クリームやマーガリン、水あめなど含水食品などが挙げられる。
油性食品は喫食に供される温度域にてシャープな融解特性を有する油脂を用いることが望ましい。喫食に供される温度域とは、喫食直前の状態から口中での温度までの温度域でのことであり、その範囲でシャープな融解特性を有する油脂は、具体的には喫食直前の状態が固体であるが口中で速やかに溶けるものであって、好ましくは10℃位の温度上昇で固体脂含量(SFC)が40程度以上低下する性質を有する油脂である。
一例としては常温で流通する食品の場合、ココアバター、及びこれに類似した融解特性を示す各種のハードバター、冷菓の場合、アイスコーティング用チョコレートに用いられる油脂であることができる。よって油性食品としては、通常のチョコレート類、或いは通常のチョコレート類において使用されるカカオマスのかわりに他の何らかの呈味性固形分、例えばチーズ粉末、粉乳、発酵乳粉末、豆乳粉末、果汁粉末、ナッツペーストなどを置き換えた食品が好適に使用できる。
本発明において言うところの流動性食品素材については含浸作業時に流動性を有しさえすれば特に限定はされない。ただ、強い加速度を与えるにも設備的・コスト的な制限があるため、含浸作業時に粘度が50000cp(センチポイズ)以下、望ましくは30000cp、さらに望ましくは10000cpで実施することが好ましい。
含浸作業時の温度も流動性食品素材が流動性を有すれば特に限定はされず、最終的な含浸食品素材の目標品質によって適宜選択される。すなわち融点の高い流動性食品素材の場合は流動性が発現する温度まで加熱・保温された状態で含浸作業をすればよいし、融点の低い流動性食品素材の場合においては含浸するに足る流動性が発現してさえどのような温度帯での作業でもかまわない。下限としては特に限定はされないものの、−30℃以上、望ましくは0℃以上、更に望ましくは10℃以上であることが好ましい。
アイスコーティングチョコレートなど0℃以下で流動性を有し、上記粘度条件を満たすものは存在するが、多孔性食品素材がその含浸作業時に構造を保持できれば特段低い温度で作業をする必要はなく、逆に吸湿などによる品質の低下、付加的な設備の必要によりコストが上昇しかねない。
一方、上限についても特に限定はされないが、80℃以下、望ましくは60℃以下、更に望ましくは40℃以下であることが好ましい。
これも油脂などの劣化に伴う品質の劣化、付加的な設備の必要によりコストが上昇しかねない。
また上記説明にある含浸作業時の粘度はこの含浸作業時の温度範囲での粘度を指す。
多孔性食品素材と流動性食品素材の双方を接触させた状態にて加速度を与えることで多孔性食品素材に流動性食品素材が含浸される。
ただし、含浸工程を終えて、多孔性食品素材と多孔性食品素材に含浸されずに残余した流動性食品素材を分離する工程は、加速度を5G未満にしてから行う必要がある。また接触の多少についても望ましくは多孔性食品素材が流動性食品素材中に没している状態が好ましい。
本願含浸方法を既存の従来型遠心法とあわせて説明する。
従来型の遠心法は背景技術において記載の通り、特許文献4に代表される方法であり、液体が遠心力により食品組織の中を外へ外へと移動することにより、食品の中に液体を行き渡らせているのが特徴だが、液体が移動する先、すなわち振り切る先に空間があることで移動が可能になると考えられてきた。 (図1参照)
一方、本願発明では多孔性食品素材と流動性食品素材の双方を接触、望ましくは多孔性食品素材が流動性食品素材中に没している状態にて加速度を与えることになるが、これだと従来の考え方では液体が移動する先はおろか、望ましいとされる大半が埋没した状態では多孔性食品素材の周りに流動性食品素材が満たされており、液体の移動先がすでに液体で満たされているとそれ以上移動できないと考えられてきた。
しかしながら実際には多孔性食品素材中の空気は浮力がかかる。(図2)
この場合流体中の物体の浮力Fは
F = ρVg (ただし、ρ:流体の密度、V:物体の体積、g:重力加速度)
で表される。(ここでは物体は「空気」であり、流体は「流動性食品素材中」にあたる。)
通常重力の加速度下では図3(a−1)のように多孔性食品素材中に含まれる空気にかかる浮力は「1Gの重力加速度での空気と同体積の流動性食品素材の重量」に相当する力であり、図3(a−2)に示されるようにその浮力では粘稠な流動性食品素材の表面張力を打ち破ることが出来ず多孔性食品素材表面から脱出することが出来ない。
しかし、遠心力などで強い加速度をかけた場合、空気には図3(b−1)のように「強加速度での空気と同体積の流動性食品素材の重量」相当する強い浮力が発生し、図3(b−2)示されるように粘稠な流動性食品素材の表面張力を打ち破り、多孔性食品素材表面から加速度とは逆の方向へと脱出することが出来る。
含浸工程は多孔性食品素材を流動性食品素材中にあらかじめ埋没せしめた後に、5Gを以上、好ましくは10Gを以上、より好ましくは20Gを以上、最も好ましくは40Gを以上の加速度をあたえ含浸工程に供する。(なお、この加速度は遠心力により発生した加速度(重力に対して垂直)と重力加速度とのベクトルの和を指す)
加速度を与える方法は特に限定はされない。しかし直線的な加速運動による加速度は原理的には可能であるが、設備が長大になるため、回転運動による遠心力にて加速度を得る方法が一般的である。
一般に遠心力(RCF)は以下の式によって求められる。
RCF(G)=1118×半径(cm)×(回転数(rpm))×10−8
上記規定の加速度を得ることができれば特にその方法は限定されないが、半径20cmの場合は回転数が150rpm以上、半径30cmの場合は回転数が123rpm以上の回転運動で5Gを上回る加速度を得ることが可能である。
これは市販の遠心分離器で十分に得られる加速度であり、特にその機種などは限定されない。
また、ここで言うところの「埋没」とは多孔性食品素材の体積にして80%以上の部分が流動性食品素材中の液面下にある事をさし、望ましくはすべて液面下にある状態が好ましい。多孔性食品素材が流動性食品素材中に没した状態だと強い加速度や衝撃に対して破損しにくくなる。逆に強い加速度がかかった状態で多孔性食品素材が流動性食品素材の液面の上に出ている場合は破損を受けやすい。そのため多孔性食品素材に含浸されて流動性食品素材が目減りしていく分を考慮に入れて、含浸工程が終わる時まで多孔性食品素材の大半が流動性食品素材に没している程度に流動性食品素材を加えておく必要がある。
また、含浸工程中において加速度のかかる系外に多孔性食品素材と流動性食品素材が脱出しない事が望ましい。
多孔性食品素材が流動性食品素材に十分に埋没していることでより効果的に含浸が進むため含浸による流動性食品素材の目減りも、加速度がかかる系外への散逸も望ましくない点では同じであるが、加えて、振り切られた流動性食品素材は回収工程が必要となり煩雑である。なお、多孔性食品素材は内部に空気を持っているので、それ自体に浮力が働くため、流動性食品素材中に入れると表面に浮き上がりかねない。まして、遠心力が強くなると浮力も大きくなる。望ましい条件である多孔性食品素材が流動性食品素材に埋没している状態を含浸作業中に維持する為には、流動状食品素材の液面上から浮かび上がらないようにする必要がある。特にその方法は限定されないが、流動性食品素材を通し、かつ多孔性食品素材は通さない程度の目の大きさである、一例としてはザルのような固定器具で多孔性食品素材を流動性食品素材中に埋没させるようにすると、より効率的に含浸作業を行うことができる。
多孔性食品素材と流動性食品素材の比率は特に限定はされないものの、上記説明の通り多孔性食品素材は流動性食品素材に埋没している方が望ましい。また、多孔性食品素材中に流動性食品素材が含浸していくため、流動性食品素材含浸されずに多孔性食品素材周りに存在している流動性食品素材は含浸が進むにつれ減少していくため、最大限含浸がなされた際にも多孔性食品素材が流動性食品素材に十分に没している程度に流動性素材が入っている事が望ましく、具体的には含浸作業を行う容器に多孔性食品素材のみをいれた場合における多孔性食品素材の最上位の位置に、容器内に何も入っていない状態で流動性食品素材が達する量以上の流動性食品素材を用いることで好適に作業が可能である。
含浸工程における加速度が5G以上である時間は特に限定はされないし、多孔性食品素材の大きさや細孔の大きさ、流動性食品素材の粘度にもよるが、短すぎると十分な含浸がなされない(食感とのバランスで多孔性食品素材全体に密に入っていない品質を持って目標品質とするケースもあるので一概には言えないものの)。
一般的に遠心力で加速度を与えた場合は、回転数を急激に上げたり下げたりすることは機械的にもコスト的にも好ましくないので、厳密に5G以上である加速度を集中的に与え、また急に5G未満に下げるということはありえないが、工程の中で5G以上である加速度下にさらされている時間は10秒以上、望ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、最も好ましくは1分以上であることが望ましい。
一方、上限は上記加速度下にさらされている時間が長いほど含浸は進むものの、多孔性食品素材全体に含浸が進んだ場合は、それ以上の含浸操作は意味を成さず、コストがかさむばかりであるが、特に特定の時間以下でなくてはならないというものはない。
目的とする含浸量にあわせ適宜含浸工程を行った後、加速度を5G未満にしてから多孔性食品素材と、多孔性食品素材に含浸・表面に付着したもの以外の流動性食品素材(以降残余流動性食品素材と称する)を分離する。(なお、この加速度も遠心力により発生した加速度(重力に対して垂直)と重力加速度とのベクトルの和を指す。)
最終的な目的品質が芯まで含浸されているもので表面にもたっぷりと流動性食品素材が付着した状態(チョコレートではコーティングと呼ばれる)が望ましい場合は1G(遠心力の場合は回転が停止し、通常の重力だけになった状態)で余分な流動性食品素材と多孔性食品素材を分離(具体的には流動性食品素材を多孔性食品素材から引き上げる)すればいいし、最終的な目的品質がラスクのような細孔径の大きな多孔性食品素材の芯部に流動性食品素材が内部構造の表面と外部表面に満遍なく薄く付着してはいるが空間もやや残っている程度であれば、5G未満で残余流動性食品素材を加速度のかかっている系から除くなどして分離すれば、残余流動性食品素材は効率的に分離が可能である。
ただし、残余流動性素材は5G以上の加速度で残余流動性食品素材と、流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を分離すると、流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材が残余流動性食品素材に埋没している状態でなくなるため、多孔性食品素材単独で大きな加速度にさらされることとなり、破損を受けやすい。
残余流動性食品素材から分離された多孔性食品素材は従来の流動性食品素材の処理に準じた工程に供される。一例を挙げれば、流動性食品素材がチョコレートの場合は冷却工程に供される。ただし、冷却時に特殊な温度調節が必要なテンパリング型のチョコレートの場合は含浸工程の前にテンパリング操作あるいはシードテンパリング(安定なシードを分散させておくこと)工程を施しておく必要があり、通常テンパリングが取られたチョコレートは粘度が上昇しやすく、本願が比較的高粘度の流動性食品素材に対して効果が高いとはいっても、粘度上昇は最終製品が均一な品質にならないといった問題があるため、比較的高温でもシードが機能を維持できるBOB(1,3ジベヘニル、2−オレオイルグリセリン)によるシードテンパリングが望ましい。
この発明を実施することにより、平易な方法で、従来の方法では破損しやすい含気泡性食品素材や、含浸しにくい形状の含気泡性食品素材、含浸しにくい粘稠な流動性食品素材に対し、含浸操作を短時間で実施することが可能となった。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
<実施例1>
60℃に調温した市販の油分33%のミルクチョコレート(商品名:フジサニーミルクチョコレート、不二製油株式会社製)400重量部とテンパリング型ハードバター(商品名:NEW−SS7、不二製油株式会社製)100重量部を混合した上で品温を31℃に調製した。そこにシード剤(商品名:「チョコシードA」、不二製油株式会社製)をチョコレートとハードバターに全量に対し0.2%加えてテンパリング処理をし、流動性食品素材を得た。なお、該流動性食品素材は31℃にて3200cpであった。
これを遠心分離器用の容器に移し、多孔性食品素材として市販のソフトビスケット(商品名:たまごパン、株式会社初雪製)を10個(1個あたり重量8g、計80g)を流動性食品素材に埋没するように沈め、流動性食品素材の表面に浮き上がらないように金属製のザルにて流動性食品素材中に押し込んだ状態で遠心分離機(株式会社佐久間製作所 MODEL 90−4S)にセットし、同じく遠心分離器用の容器に水を同重量になるように入れ、対角上にセットし、遠心分離機を作動させた回転させ遠心力を与えた。
遠心分離機の回転軸から容器の底までは27cmであり、1000rpmの回転数(想定される加速度は302G)で1分間加速度を与える含浸操作を行った。
含浸操作が終わったあと、回転数を落として完全に停止させて容器を取り出し、1Gの通常重力下で多孔性食品素材の表皮に付着した流動性食品素材を滴り落ちる分だけを取り除いた。ついでトレーに移し、5℃冷蔵庫で30分間冷却固化し、流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
<比較例1・実施例2・実施例3・実施例4・実施例5>
遠心分離機の回転数を比較例1・実施例2・実施例3・実施例4・実施例5の順に120・170・250・600・1500(rpm)に変える以外は実施例1と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表1に示した。
<表1> 加速度と含浸・破損の評価
※1 加速度
遠心力により発生した加速度(重力に対して垂直)と重力加速度とのベクトルの和
※2 含浸の評価
○:多孔性食品素材に流動性食品素材が芯まで含浸している。
△:含浸はしているが、一部含浸していない部分が残る。
×:表面に付着したのみで内部への含浸はほとんど無い。
※3 破損の評価
○:多孔性食品素材の破損は見られない。
△:1割(10個中1個)の多孔性食品素材に割れ・砕けといった破損が見られる。
×:2割(10個中2個)以上に破損が見られる。
遠心力による加速度が4.3Gであった比較例1は図4に示したように、ソフトビスケット表面は一様にチョコレートが付着しているが、断面はもとの多孔性食品素材のままであった。これは遠心力を用いずに単にソフトビスケットをチョコレートに漬け込んだ後に引き上げ、剰余のチョコレートを除いたものとなんら変わるところがなかった。
一方、それ以上の加速度がかけられたものは、加速度が8.7である実施例2は図5に示したように、その断面には一部ソフトビスケットの芯にチョコレートが含浸していない部分が残りはしたものの、上記の単に漬け込んで引き上げただけのものに比べ食感が優れ、十分に市場性のあるものであったし、それ以上の加速度をかけられた実施例3、実施例1(図6参照)、実施例4、実施例5は断面の芯までチョコレートが含浸し、優れた食感を発揮し、商品価値の高いものであった。
<実施例6>
多孔性食品素材として市販のラスク(商品名:コパン(バタートースト味)、明治製菓株式会社製)を10個(1個あたり重量4g、計40g)用いる以外は実施例4と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
また、多孔性食品素材と残余流動性食品素材の分離は実施例1の説明通り、含浸操作が終わったあと、回転数を落として完全に停止させて容器を取り出しているため、1Gの通常重力下で多孔性食品素材の表皮に付着した流動性食品素材を滴り落ちる分だけを取り除いた。
<比較例2>
図4のような形状の容器、すなわち、ザル状の容器を元からある容器の内側にザル状容器の底部と元の容器の底部との間に隙間があるように設置した2重構造にしたものを用い、かつ流動性食品素材を多孔性食品素材に塗布する以外は実施例6と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。

なお、塗布した流動性食品素材は遠心力をかけられることでザル状容器底部と元の容器の底部との間に隙間に溜まるが、ザル状容器底部を上回ることはなかった。
これにより、多孔性食品素材と残余流動性食品素材の分離は5Gを越える加速度にて行われていることになる。
注:本来の従来法による製造方法は振り切ったチョコレートが遠心分離機の内壁に当たるのだが、実験室的なスケールの遠心分離機はバランスが取れていないと危険であり、チョコレートを振り切るとバランスが崩れ危険である為、上記のような方法にて実験を実施した。
<実施例6・比較例3>
実施例6・比較例3はそれぞれ、回転数を3000rpmまで上げる以外は実施例5・比較例2と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表2に示した。
<表2> 加速度と含浸・破損の評価
※4 含浸の評価
(○):多孔性食品素材に流動性食品素材が芯まで含浸しているものの流動性食品素材が振り切られており、空隙が占める状態。
他は表1と同じ評価基準。
※5 屑の混入の評価
○:流動性食品素材中に多孔性食品素材が目視できる程度には殆ど混入していない。
△:多孔性食品素材が微細な屑の状態で混入し、目視できる。
×:多孔性食品素材が砕け、破片と流動性食品素材が混在した状態になる。
実施例6ではラスクの芯までチョコレートが密にしみ込み、また分離されたチョコレートには目で見る限りは目立ったラスクの屑は混入していなかった。
比較例2ではラスクの空隙構造の表面にチョコレートが満遍なく行き渡っているが空隙自体には大半空気が満たされており、出来上がったチョコレート含浸ラスクは既存の振り切り型含浸法で作製したものと同じであった。また屑の混入は実施例6より明らかに多く、再度含浸に用いるためリサイクルする回数が増えるにつれ屑の混入は多くなり、含浸しにくくなった。その傾向は回転数を3000まで上げた実施例7と比較例3でより明確になりザル状容器を用いた比較例3はラスク自体がザル状容器との接触点に大きな力がかかるため破損が進み、ラスクの粉体状の屑が目に見える量チョコレートに混入し、リサイクルが困難となった。
<実施例7>
ミルクチョコレートの配合を市販の油分33%のミルクチョコレート250重量部にハードバターを加えずに品温を31℃に調製し、そこにシード剤をチョコレートに対し0.2%加えてテンパリング処理をした流動性食品素材を用いる以外は実施例6と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
なお、該流動性食品素材は31℃にて34500cp、含浸工程における回転数は1000rpm、それに伴う加速度は302Gであった。
<実施例8>
含浸作業温度を28℃にて行う以外は実施例7と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。テンパリング工程のあとミルクチョコレートは増粘傾向にあり、温度が低下するとその傾向は顕著である。含浸作業直前に測定した該ミルクチョコレートは47500cpであった。それぞれの実施例・比較例の流動性食品素材の配合と含浸工程の回転数と加速度、それに評価を表3に示した。
<表3> 粘度と含浸の評価
実施例6ではラスクの芯までチョコレートが密にしみ込んでいたが実施例7では芯まで含浸していない部分が残ったラスクが全体の1割程度発生した。実施例8では芯まで含浸していない部分が残ったものが大半となったものの、単にラスクをチョコレートに漬け込んだ後に引き上げ、剰余のチョコレートを除いたものに比べるとしみ込んだ部分は大きく、市場性のあるものであった。
<実施例9>
遠心分離機の回転数を150rpmに、そしてその150rpmを10秒持続させた後速やかに回転数を落とす以外は実施例1と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
なお、150rpmは6.8Gの加速度に相当するものであった。
<実施例10>
150rpmを1秒持続させた後速やかに回転数を落とす以外は実施例9と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
<比較例4>
遠心分離機にかけ加速度をかける工程をまったく行わない、すなわち流動性食品素材に多孔性食品素材を沈めるだけにする以外は実施例9と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。それぞれの実施例・比較例の含浸工程の回転数と加速度、その加速度の持続していた時間、それに評価を表4に示した。
<表4> 加速度・持続時間と含浸の評価
実施例9ではラスクの芯までチョコレートが密にしみ込んでいた。実施例10においても芯の一部に含浸していない部分が残ったラスクが半数程度発生したが、まったく遠心操作に供していない比較例4は、外見こそ満遍なくチョコレートがコーティングされているものの、中には殆ど含浸しなかった。
<実施例11・実施例12>
多孔性食品素材として実施例11は市販の食パン(商品名:超芳醇6枚切り、山崎製パン株式会社製)の耳を切り、3cm角に切り分けたものを10枚(1枚あたり重量7g、計70g)を、実施例12は米菓(商品名:ピケエイト、株式会社マスヤ製)を10個(1個あたり重量2g、計20g)にする以外は実施例4と同様の配合・手順にて作成し流動性食品素材が含浸した多孔性食品素材を得た。
参考の為、多孔性食品素材が異なる以外の配合や工程が同じ実施例4・実施例6とあわせて表4に多孔性食品素材の種類と評価をまとめた。
<表5> 多孔性食品素材の種類と評価
実施例11では食パンの芯までチョコレートが密にしみ込んでいた。実施例12の米価はやや表面が平滑で内部の多孔性の構造が露出していないものの芯まで含浸した。
本発明によって、多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事により、より平易な方法で、汎用性に富む含浸食品素材を製造することが可能である。
従来型遠心法の模式図。 本願方式による遠心法の模式図。 本願方式による遠心力と浮力の関係を示す模式図。 比較例1による含浸食品素材の外見と断面を示す図面代用写真。 実施例2による含浸食品素材の外見と断面を示す図面代用写真。 実施例1による含浸食品素材の外見と断面を示す図面代用写真。 比較例2で用いた熱凝固性生地の配置を示す模式図。

Claims (6)

  1. 多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸させた組合せ食品の製造において、多孔性食品素材を流動性食品素材中にあらかじめ埋没せしめた後に加速度のかかる含浸工程に供し、双方の食品素材を接触させた状態にて5G以上の加速度にて多孔性食品素材に流動性食品素材を含浸せしめ、加速度を5G未満にて多孔性食品素材と残余流動性食品素材を分離する事を特徴とする組合せ食品の製造法。
  2. 含浸工程の作業温度において、粘度が50000cp(センチポイズ)以下である流動性食品素材を用いる事を特徴とする請求項1記載の組合せ食品の製造法。
  3. 含浸工程の作業温度が−30℃〜80℃である請求項2記載の組合せ食品の製造法。
  4. 加速度が5G以上の状態を10秒以上持続させる事を特徴とする請求項1記載の組合せ食品の製造法。
  5. 多孔性食品素材がクラッカー、ラスク、ハードビスケット、クッキー、ウエハース、パイ、米菓、パン、スポンジケーキ、パフ菓子の群から 選ばれる少なくとも一種以上である請求項1記載の組合せ食品の製造法。
  6. 請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の方法にて製造された組合せ食品。
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