JP5060253B2 - アルミニウム圧延板およびその製造方法 - Google Patents
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仕上げ圧延完了時の板厚を2mm未満にすると、コイル状に巻き取ることが困難になる。また、板厚が10mmを超えても巻き取りにくくなる。したがって、仕上げ圧延後の板厚は2〜10mmとする。
図1に示すように、本発明における結晶粒径は圧延方向に平行な向きの最大長さと定義する。これは、再結晶粒が圧延方向に沿って伸長して、この方向に最も長くなるからである。再結晶粒は小さいほど外観に優れた表面となる。平均結晶粒径が100μmを超えると、成形加工後の肌荒れや、粗面化処理された表面の凹凸の大きさが不均一になる原因になる。したがって、平均結晶粒径は圧延方向で100μm以下とし、好ましくは70μm以下である。
本発明における<111>//ND再結晶集合組織は、圧延面法線方向(ND)の結晶方位が<111>である結晶粒の集まりをいう。この<111>//ND再結晶集合組織が25%未満では、結晶粒の粗大な<001>//ND再結晶集合組織の発達を抑制できない。したがって、<111>//ND再結晶集合組織の占める割合は25%以上とし、好ましくは40%以上である。なお、本発明における結晶方位は、±15°以内のずれは同一の結晶方位に属するものと定義する。
本発明における表面性状は、本発明に係るアルミニウム圧延板をさらに冷間圧延した後の表面性状を含む。このような表面性状の評価は、この冷間圧延板の表面を王水にてエッチングして形成されるストリーク(筋模様)の大きさで判定する。板厚0.2mmに冷間圧延したアルミニウム圧延板に20℃の王水で30秒間エッチングして形成されたストリークの圧延方向の平均長さが1cm以上であると、このようなアルミニウム圧延板は、冷間圧延、成形加工等を施した際にリジングマーク等の外観不良が発生したり、粗面化処理を施すと粗面化面が不均一になる虞がある。したがって、20℃の王水で30秒間エッチングして形成されたストリークの圧延方向長さは平均で1cm未満とする。好ましくは、平均0.5cm未満である。ここで、平均1cm未満とは、最も長いものから最も短いものを含めた平均が1cm未満であることを意味する。
アルミニウム鋳塊からアルミニウム圧延板を圧延により製造する場合に、この鋳塊を圧延する前に、所定温度で均熱処理することが必要である。均熱処理を施すことによって、鋳造時に晶出した金属間化合物を拡散固溶させてミクロ偏析を軽減する。均熱処理温度が460℃未満では、アルミニウム鋳塊の均質化が不十分であるため、<111>//ND再結晶集合組織が十分に発達しない。また、2時間未満では、アルミニウム鋳塊の均質化が完了しない虞がある。一方、均熱処理温度がアルミニウム鋳塊の溶融温度(640〜660℃)に達すると溶融する。したがって、均熱処理は460℃以上、溶融温度未満で2時間以上行う。
仕上げ圧延は、通常、3〜4基の圧延スタンドが連なったタンデム圧延機で行われ、その最後の圧延スタンドによる熱間圧延、すなわち最終パスにおいて、圧下率60〜80%、先進率5.5〜10.0%、終了温度320〜360℃で行う。
熱間仕上げ圧延の圧下率が増加すると、圧延板の蓄積ひずみが増加することにより再結晶核形成サイトが増加するため、再結晶粒が微細化する。また、圧下率が増加すると、ロールと圧延板との摩擦が増加するため、圧延板にせん断変形が生じる。圧下率が60%未満では蓄積ひずみが不足して、再結晶粒が粗大化する。また、ロールとの摩擦が小さくて、せん断変形が不十分となる。一方、圧下率が80%を超えても、せん断変形が小さくなって<111>//ND再結晶集合組織が形成されない。したがって、熱間仕上げ圧延の最終パスの圧下率は60〜80%とする。
先進率とはロール周速度と圧延出側の板速度との比であり、この値が大きいとロールと圧延板との摩擦における摩擦係数が大きくなる。従来、1〜2%程度としている熱間仕上げ圧延の先進率を、5.5〜10.0%に制御し、かつ圧下率を60〜80%に制御することにより、ロールと圧延板との摩擦を大きくすることができる。そして、この摩擦によりせん断変形が生じて、圧延板の表面から板厚方向に500μmまでの表面近傍領域の25%以上を<111>//ND再結晶集合組織とすることができる。先進率が5.5%未満では、せん断変形が小さくて<111>//ND再結晶集合組織が十分に形成されず、<001>//ND再結晶集合組織が多く発達して結晶粒が粗大化し易くなる。特に、表面から板厚方向へ離れる(深くなる)ほどせん断変形は小さくなるので、表面から500μm離れた領域にまで<111>//ND再結晶集合組織が十分に形成されない。一方、先進率が10.0%を超えると、圧延板の表面に焼き付きが発生して外観が悪くなる。したがって、熱間仕上げ圧延の最終パスの先進率は5.5〜10.0%とする。なお、先進率は圧延時の潤滑性を調整することにより制御する。例えば、クーラントに潤滑成分が入っている場合はクーラント量を調整する。
熱間仕上げ圧延の終了時で圧延板の温度が320℃未満では、熱間仕上げ圧延の最終パスにおいて再結晶の進行が不十分で、<111>//ND再結晶集合組織が十分に発達しない。一方、360℃を超えていると、結晶粒界の移動速度が増加して再結晶粒が粗大化する。また、熱間仕上げ圧延の最終パスにおいて、温度が高いとせん断変形しやすい一方で、回復も進みやすい。すなわち、圧延終了時で360℃を超えていると、圧延終了後にせん断変形から回復してしまい、<111>//ND再結晶集合組織が減少する。したがって、熱間仕上げ圧延の終了温度は320〜360℃とする。
なお、熱間仕上げ圧延の開始温度は、再結晶が生じ、かつ圧延板が溶融しない350〜600℃の範囲が好ましく、さらに、圧延(最終パス)終了時に前記終了温度の範囲となるように設定する。
表1に示す組成を有する鋳塊を表1に示す温度で2時間均熱処理し、450℃で粗圧延を施した。さらに表1に示す条件で仕上げ圧延を施して供試材とした。なお、仕上げ圧延の終了温度は、仕上げ圧延が完了してコイル状に巻き取られた直後の圧延板の端面で測定したものである。
供試材の圧延面を板厚方向に約0.05〜0.1mmまで機械研磨した後、電解研磨を施して、元の表面から500μm以上の位置の面を露出させた。この面でSEM−EBSP法により圧延面法線方向の結晶方位を測定した。測定結果から、TSL社のOIM(SEM−EBSP)専用解析ソフト「TSL OIM Analysis4.5」を使用して、圧延面法線方位が<111>である再結晶集合組織の面積率を求めた。なお、±15°以内の結晶方位のずれは同一の結晶方位に属するものと定義した。<111>//ND再結晶集合組織の面積率を表1に示す。
供試材の圧延面を板厚方向に約0.05〜0.1mmまで機械研磨した後、電解エッチングを施して、元の表面から500μm以上の位置の面を露出させた。この面を、偏向光学顕微鏡を用いて観察し、切片法にて圧延方向の結晶粒径を測定した。測定結果を表1に示す。
供試材をさらに板厚0.2mmまで冷間圧延し、その表面性状をストリーク評価により評価した。冷間圧延は、供試材の元の板厚に応じて1〜複数回行った。この冷間圧延後の供試材から、15cm(圧延方向)×10cm(圧延方向に直交する方向)の試験片を切り出し、この試験片の表面を20℃の王水で30秒間化学エッチングした後、表面に形成された圧延方向の筋模様(ストリーク)の長さを測定した。ストリークの平均長さが0.5cm未満のものを優良として「◎」、0.5cm以上1cm未満のものを良好として「○」、1cm以上のものを不良として「×」で評価した。評価結果を表1に示す。
Claims (2)
- 純度99%以上の工業用純アルミニウムからなる板厚2〜10mmのアルミニウム圧延板であって、
前記アルミニウム圧延板の表面から板厚方向に500μmまでの表面近傍領域において、圧延方向の平均結晶粒径が100μm以下であり、
前記表面近傍領域の25%以上が<111>//ND再結晶集合組織であり、
板厚0.2mmに冷間圧延した後、20℃の王水にて前記表面を30秒間エッチングして形成されたストリークが、前記圧延方向長さ平均1cm未満であることを特徴とするアルミニウム圧延板。 - 純度99%以上の工業用純アルミニウムからなる鋳塊を460℃以上で2時間以上の均熱処理を行う均熱処理工程と、前記均熱処理を施した鋳塊に熱間圧延を施して板厚2〜10mmのアルミニウム圧延板とする仕上げ圧延工程と、を含み、
前記仕上げ圧延工程は、その最終パスにおいて、圧下率60〜80%、先進率5.5〜10.0%、終了温度320〜360℃で行うことを特徴とするアルミニウム圧延板の製造方法。
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