JP5058561B2 - 光走査装置、画像形成装置、光束分割用回折光学素子、並びに回折光学素子の作成方法 - Google Patents

光走査装置、画像形成装置、光束分割用回折光学素子、並びに回折光学素子の作成方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザプリンタ、デジタル複写機、普通紙ファックス等に用いられる光走査装置、画像形成装置、光束分割用回折光学素子、並びに回折光学素子の作成方法に関するものである。
近年、レーザプリンタ、デジタル複写機、普通紙ファックス等で用いられる電子写真画像形成装置において、カラー化、高速化が進み、複数(通常は4つ)の感光体を有するタンデム方式の画像形成装置が普及してきている(たとえば、特許文献1,2参照)。
カラーの電子写真画像形成装置としては、感光体を1つのみ有し、色の数だけ感光体を回転するという方式もあるが(4色,1ドラムだと4回転する必要がある)、タンデム方式に比べて生産性に劣る。
ところが、タンデム方式の場合、どうしても光源の数が増えてしまうため、部品点数が増加してコストアップとなり、また、複数の光源間の波長差に起因する色ずれが生じてしまう。また、書込ユニットの故障の原因として半導体レーザの劣化が挙げられるが、光源の数が多くなると、故障の確率が増え、リサイクル性が劣化する。
そこで、これまでにも、以下の目的を達成するために、「共通の光源からのビームを分割し、異なる段の反射鏡にビームを入射させ、異なる被走査面を走査する」という方式が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
(A)光源数を減らしながらも、高速な画像出力を可能にする光走査装置を提供する。
(B)(A)に伴い、部品点数の低減、低コスト化を実現する。
(C)(A)に伴い、ユニット全体の故障率を減少させて、リサイクル性を向上させる。
前述の方式においては、共通の光源からのビームを分割するための手段を備えていて、特許文献3では、以下の方式で光束を分割している。
(a)ハーフミラープリズムを用いる方式。
(b)ハーフミラーとミラーを組み合わせる方式。
(c)複数の開口部を設けることで、出射したビームを空間的に分割する方式。
しかしながら、(a)(b)の両方式とも、分離手段にミラーを用いているため、ミラーの面精度ばらつきの影響、及び、配置誤差の影響により、ビームスポット径の劣化が発生し易い。また、(a)のハーフミラープリズムは非常に高価であり、コストアップとなる。
(b)のハーフミラーとミラーを組み合わせる方式は、レイアウトが困難であり、なおかつ、偏向回転面内で、開き角を有するため、ビームスポット径等の光学特性が劣化する。
(c)の複数の開口部で光束を分割する方式は、光源からのビームの周辺部を用いるため、光量不足、及び、ビームスポット径太りを生じる。
特開2002−23085号公報 特開2001−83452号公報 特開2005−92129号公報
本発明は、「共通の光源からのビームを分割し、異なる段の反射鏡にビームを入射させ、異なる被走査面を走査する」という方式を前提とすることで、(1)光源の数を減らしながらも高速な画像出力を可能にする、(2)部品点数の低減、低コスト化を実現する、(3)ユニット全体の故障率が減少してリサイクル性が向上する、というメリットを維持しつつ、なおかつ、前述の従来の問題点を解決することができる光走査装置と、この光走査装置を用いた多色対応の画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の光走査装置は、光源と、複数の偏向反射面を副走査方向に備えた光偏向器と、光源からの光束を複数の偏向反射面のそれぞれに入射する複数の光束に分割する光束分割用回折光学素子と、光偏向器により偏向される光束を被走査面上に集光する走査光学系とを備え、光偏向器に入射する複数の光束がそれぞれ異なる被走査面上を走査する光走査装置において、光束分割用回折光学素子は、光源からの光束を第1の分割光束および第2の分割光束に分割し、第1の分割光束が当該光束分割用回折光学素子で副走査方向の一の方向に偏向され、第2の分割光束が当該光束分割用回折光学素子で副走査方向の他の方向に偏向され、第1の分割光束を、副走査方向の他の方向に偏向する第1の回折光学素子と、第2の分割光束を、副走査方向の一の方向に偏向する第2の回折光学素子と、備えることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子の格子ピッチと回折光学素子の格子ピッチは同一であることを特徴とする。
本発明の光走査装置において、光源から射出される光束は、直線偏光であり、かつ、副走査方向または主走査方向に振動する偏光面を持つことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光源からの光束は光束分割用回折光学素子により2つの光束に分離され、分離される2つの光束はそれぞれ副走査方向について互いに逆方向に偏向されることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は第1分割用回折光学素子と第2分割用回折光学素子が入射光軸方向に積層配置されて構成され、第1分割用回折光学素子と第2分割用回折光学素子は互いに直交する偏光を回折し、この回折されたそれぞれの光束は副走査方向について逆方向に偏向されることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は単一の回折光学素子から成り、±n次回折光(n:自然数)として回折される光束のうち等しい次数nの2つの光束が副走査方向において逆方向に偏向されることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、回折次数n=1である±1次回折光として回折される光束が副走査方向において逆方向に偏向されることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は矩形凹凸型の回折格子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子に入射する光束は直線偏光であり、その振動方向が偏向反射面の回転軸方向に略一致していることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子で分離された2つの光束のうち、一方の光束を偏向する第1回折光学素子と他方の光束を偏向する第2回折光学素子を備え、第1回折光学素子と第2回折光学素子のそれぞれは光束分割用回折光学素子からの光束を光束分割用回折光学素子で偏向される方向に対し副走査方向において逆方向に偏向することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、偏向された各々の光束は再度、レンズ作用のある回折光学素子により偏向されて、互いに主光線が平行な光束として異なる段の反射鏡に入射することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、レンズ作用のある回折光学素子は、副走査方向にのみ集光作用のあるシリンドリカルレンズ機能を持った回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置において、第1回折光学素子と第2回折光学素子は、少なくとも主走査方向と副走査方向のいずれかの方向に光学的温度補正機能を有することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光源からの光束を平行光束にする軸対称回折型コリメートレンズと、副走査方向に集光パワーを持ちシリンドリカルレンズ作用を持つ回折光学素子と、を備え、軸対称回折型コリメートレンズにより平行化されて光束分割用回折光学素子により分割される光束は、回折光学素子の作用を受けてから各々別の多面鏡に集束、入射することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、主走査方向の光学的温度補正を軸対称回折型コリメートレンズで行い、副走査方向の光学的温度補正を軸対称回折型コリメートレンズとシリンドリカルレンズ作用を持つ回折光学素子の協働で行うことを特徴とする。
本発明の光走査装置において、光束分割用回折光学素子により偏向された光束は、その後偏向されることなく光偏向器の偏向反射面に入射することを特徴とする。
本発明の光走査装置において、光源から射出される光束は直線偏光であり、直線偏光を光軸方向を中心に回転させる波長板を光源と光束分割用回折光学素子との光路上に備えたことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、 光束分割用回折光学素子は体積位相型回折光学素子であり、光束分割を行うための回折光がブラッグ回折を利用していることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子には、少なくとも誘電異方性を有する非重合性液晶と重合性モノマーあるいはプレポリマーと光重合開始剤とからなる組成物を一対の透明基板間に保持し、組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散液晶型の回折格子を用いたことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子には、偏光依存性を有しないフォトポリマー材料を用いたことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、レンズ作用のある回折格子から構成されることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子のレンズ作用は、光源と光束分割用回折光学素子の間に配置されたカップリングレンズと組合わさって、光源からの出射光束をコリメートして平行光化するものであることを特徴とする。
本発明の光走査装置において、光束分割用回折光学素子は、少なくとも主走査方向または副走査方向のいずれかの方向に光学的温度補正機能を有することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子のレンズ作用で主走査方向の光学的温度補正を行い、光束分割用回折光学素子のレンズ作用と再度光束を偏向する回折光学素子のレンズ作用とが協働して副走査方向の光学的温度補正を行うことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光源を複数備え、光束分割用回折光学素子へは複数の光源からの光束が同時に入射し、各被走査面上を複数の光束で同時に走査することを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、入射光束数と等しい数の領域に分割されていて、各領域は入射する光束に対してレンズ作用が個別に最適化されていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光源とカップリングレンズと光束分割用回折光学素子は、光源からの光束がカップリングレンズと光束分割用回折光学素子を経て平行光束となるように、予め光走査装置の外部でコリメート調整して配設されていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、少なくとも誘電異方性を有する光重合性液晶の配向方向が周期的に異なる周期構造を持つ光重合性液晶回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光重合性液晶回折光学素子は、光重合性液晶の配向方向が周期的に異なる周期構造の境界面が基板面に対し垂直であり、かつ格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、格子周期配列方向にブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、格子周期配列方向に階段状ブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、同じ形状を持つ格子単位が複数配列された周期的構造から成り、各格子単位内において更に微細な周期構造をもち、その微細周期配列方向の断面に矩形状の複数の凹凸が配列され、その矩形形状のDuty factorが格子単位内で漸増していく周期構造を持った回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、矩形凹凸状の第1媒質を屈折率が異なる第2媒質で充填した構造をもつ回折格子であって、矩形凹凸形状が斜傾した矩形形状であり、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、矩形凹凸状の第1媒質を屈折率が異なる第2媒質で充填した構造をもつ回折格子であって、格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、第1媒質として配向フィルムを用いたことを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、1周期の凹凸形状が偶関数となる表面凹凸型周期構造を持つ回折格子であって、凹凸の深さが格子ピッチより大きく、かつ格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子であることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、2枚の回折光学素子が光源からの入射光に対し共に傾いて配置されていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のないホログラムで構成されていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、偏光依存性のないホログラムには、体積位相型のホログラムが用いられていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、体積位相型ホログラムには、フォトポリマー材料が用いられていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のない第1回折光学素子と第2回折光学素子とから構成され、光源からの光束の入射側には+1次回折光と0次透過光を略同一強度で生じさせる第1回折光学素子が配置され、光束の出射側には第1回折光学素子の+1次回折光を再び回折させて0次透過光と略平行に出射させる第2回折光学素子が配置されていることを特徴とする。
本発明の光走査装置は、光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のない第1回折光学素子、第2回折光学素子、第3回折光学素子、第4回折光学素子から構成され、第1回折光学素子は、光源からの光束が入射して+1次回折光と0次透過光とを略同一強度で生じさせ、第2回折光学素子は、第1回折光学素子により生じた+1次回折光を直進透過させると共に、第1回折光学素子により生じた0次透過光を−1次回折光として回折し、第3回折光学素子は、第1回折光学素子からの+1次回折光を再回折し、第4回折光学素子は、第2回折光学素子からの−1次回折光を再回折し、第3回折光学素子から出射する再回折光と第4回折光学素子から出射する再回折光とは互いに略平行であることを特徴とする。
本発明によれば、光源からの光束の分離手段として回折光学素子を用いることで、分離手段にミラーを用いた場合に比べて、ビームスポット径の劣化を低減することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明にかかる光走査装置、画像形成装置、光束分割用回折光学素子、並びに回折光学素子の作成方法の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、光走査装置が被走査面上を光走査する方向を主走査方向とし、主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。
図1は、従来の光走査装置の実施の形態を示す光学配置図である。図1において、符号1,1´は光源としての半導体レーザ、2は半導体レーザ1,1´を保持するベース、3,3´はカップリングレンズ、4はハーフミラープリズム、5a,5bはシリンドリカルレンズ、7はポリゴンミラーを有してなる光偏向器(回転多面鏡)、をそれぞれ示している。符号6は、光偏向器7の図示しない防音ハウジングの窓に設けられた防音ガラスを示している。
半導体レーザ1,1´は、画像信号に基づき変調駆動され、それぞれ1本の発散光ビームを射出する。半導体レーザ1,1´から出射された各光ビームは、カップリングレンズ3,3´により以降の光学系に適したビーム形態(平行光束あるいは弱い発散性もしくは弱い収束性の光束)にカップリングされる。
カップリングレンズ3,3´を通過した各光ビームは、光ビーム幅を規制するアパーチャ12の開口部を通過してビーム整形されたのちにハーフミラープリズム4に入射し、各光ビームはハーフミラープリズム4の作用により副走査方向に2分割される。
このように、半導体レーザ1からの1本の光ビームがハーフミラープリズム4で分割されて2本の光ビームとなり、同様に、半導体レーザ1´から射出された1本の光ビームがハーフミラープリズム4で分割されて2本の光ビームとなる。
ハーフミラープリズム4を通過した4本の光ビームは、シリンドリカルレンズ5a,5bに入射し、シリンドリカルレンズ5a,5bの作用により副走査方向に集光され、光偏向器7の偏向反射面上または偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像として結像する。
なお、ハーフミラープリズム4を通過した光ビームは、防音ガラス6を介して、光偏向器7に入射する。
光偏向器7を構成するポリゴンミラー7a,7bは、副走査方向に上下2段に重ねて配置されていて、駆動モータ(図示省略)によって一定速度で回転駆動されている。上段ポリゴンミラー7aには、半導体レーザ1から射出されてハーフミラープリズム4で分割された2本の光ビームが入射する。下段ポリゴンミラー7bには、半導体レーザ1´から射出されてハーフミラープリズム4で分割された2本の光ビームが入射する。
ここで、上段ポリゴンミラー7aと下段ポリゴンミラー7bは、共に4面の偏向反射面を持つ同一形状のものであるが、下段ポリゴンミラー7bの偏向反射面は、上段ポリゴンミラー7aの偏向反射面に対して、回転方向へ所定角:θ(=45°)ずれている。なお、上段ポリゴンミラー7aと下段ポリゴンミラー7bは、一体的に形成してもよいし、別体として組み付けても良い。
符号8a、8bは第1走査レンズ、10a,10bは第2走査レンズ、9a,9bは光路折り曲げミラー、11a,11bは感光体を示している。
第1走査レンズ8a、第2走査レンズ10a、光路折り曲げミラー9aは、1組の走査結像光学系を構成し、上段ポリゴンミラー7aにより偏向される2本の光ビームを、対応する光走査位置である感光体11a上に導光し、副走査方向に分離した2つの光ビームスポットを形成する。
第1走査レンズ8b、第2走査レンズ10b、光路折り曲げミラー9bは、1組の走査結像光学系を構成し、下段ポリゴンミラー7bにより偏向される2本の光ビームを、対応する光走査位置である感光体11b上に導光し、副走査方向に分離した2つの光ビームスポットを形成する。
半導体レーザ1,1´から射出された光ビームは、光偏向器7の回転軸方向からみて、偏向反射面位置の近傍において主光線が交差するように光学配置が定められている。したがって、偏向反射面に入射してくる対をなす2本の光ビーム相互は、開き角、すなわち、偏向反射面の側から光源の側を見たとき、2本の光ビームの回転軸に直交する面への射影がなす角を有する。この開き角により、感光体11a,11bのそれぞれに形成される2つの光ビームスポットは主走査方向にも分離している。このため、各感光体を光走査する2本の光ビームを個別的に検出し、光ビームごとに光走査開始の同期を取ることができる。
このように、光偏向器7の上段ポリゴンミラー7aにより偏向される2本の光ビームにより、感光体11aが2本の光ビームによりマルチビーム走査される。また、光偏向器7の下段ポリゴンミラー7bにより偏向される2本の光ビームにより、感光体11bが2本の光ビームによりマルチビーム走査される。
光偏向器7の上段ポリゴンミラー7aと下段ポリゴンミラー7bの偏向反射面は、互いに回転方向に45度ずれている。そのため、上段ポリゴンミラー7aによる偏向光ビームが感光体11aの光走査を行うとき、下段ポリゴンミラー7bによる偏向光ビームは、感光体11bには導光されない。また、上段ポリゴンミラー7bによる偏向光ビームが感光体11bの光走査を行うとき、下段ポリゴンミラー7aによる偏向光ビームは、感光体11aには導光されない。すなわち、感光体11a、11bの光走査は、「時間的にずれて交互」に行われる。
図15は、この状況を説明する図であって、上下段のポリゴンミラーによる光走査の時間的ずれの説明図である。光偏向器7に入射する光ビームは、実際には4本であるが、1本の入射光として描かれており、上下段のポリゴンミラーによって偏向される光ビームをそれぞれ偏向光a、偏向光bとして示している。
図15(a)は、入射光が光偏向器7に入射し、上段ポリゴンミラー7aで反射されて偏向された偏向光aが光走査位置へ導光されるときの状況を示している。このとき、下段ポリゴンミラー7bによる偏向光bは、光走査位置には向かわない。
図15(b)は、入射光が光偏向器7に入射し、下段ポリゴンミラー7bで反射されて偏向された偏向光bが光走査位置へ導光されるときの状況を示している。このとき、上段ポリゴンミラー7aによる偏向光aは、光走査位置には向かわない。
なお、一方のポリゴンミラーによる偏向光が光走査位置へ導光されている間に、他方のポリゴンミラーによる偏向光がゴースト光として作用しないように、図15に示すように適宜の位置に遮光手段SDを配置し、光走査位置へ導光されない偏向光を遮光手段SDで遮光するように構成するとよい。
また、光源の変調駆動のタイミングを、上段と下段でずらし、上段に対応する感光体11aを走査するときは、上段に対応する色(例えばブラック)の画像情報に基づき、光源の変調駆動を行い、下段に対応する感光体11bを走査するときは下段に対応する色(例えばマゼンダ)の画像情報に基づき、光源の変調駆動を行うとよい。
図16は、共通の光源、たとえば、図1に示した半導体レーザ1,1´によりブラック画像とマゼンダ画像を書き込み、それぞれの静電潜像を形成する場合において、有効走査領域において全点灯する場合のタイムチャートを示している(図中、実線はブラック画像の書き込みに相当する部分、破線はマゼンダ画像の書き込みに相当する部分を示す)。ブラック画像、マゼンダ画像の書き出しの主走査タイミングは、有効走査領域外に配備されている周知の同期検知手段(図1には図示を省略している。通常はフォトダイオードが用いられる。)で光走査位置へ向かう光ビームを検知することにより決定される。
なお、図16では、ブラック画像とマゼンダ画像を書き込む時間領域での光源の発光強度を同じに設定しているが、実際には、光源から感光体11a,11bに至る各光路において、光学素子の透過率や反射率に相対的な差異が存在する場合には、各感光体に到達する光ビームの光量が異なる。そこで、図17に示すように、各色に対応する各々の感光体面を走査するときに、光源における発光強度(発光光量)を異ならせることで、異なる感光体面上に到達する光量を等しくすることができる。
ここで、前述したように、光束分割素子にハーフミラーを用いると、ミラーの面精度ばらつき、および、配置誤差により、ビームスポット径劣化が発生し易い。
そこで、本発明にかかる光走査装置では、図1に示すハーフミラープリズム4に代えて、図2に示すような光束分割手段を用いて、前述の不具合を解消している。
図2は、本発明にかかる光束分割回析光学素子の要部を示す、2段回転多面鏡(光偏向器7)以前の光学系の副走査断面図である。半導体レーザなどの光源からの出射光は、コリメートレンズKLにより平行ビームとなり、光束分割用回折光学素子KBに入射して、入射光と同じ方向に進む0次光と、図中紙面内の下方に回折する1次回折光(ここでは「+1次回折光」とする)が生じる。0次光は、上段ポリゴンミラー7aの偏向反射面に入射する。一方、+1次回折光は、回折光学素子KKに入射して、この回折光学素子KKで再回折され、下段ポリゴンミラー7bに入射する。光束分割用回折光学素子KB、回折光学素子KKと回転多面鏡7の間には、開口を規定するアパーチャ12およびシリンドリカルレンズ5a,5bが配置されている。
下段に入射する光ビームは、回折光学素子KKで再回折後、光束分割用回折光学素子KBで偏向される方向に対し副走査方向について逆方向に偏向されるようにする。こうすることで、半導体レーザの波長変化が生じた場合の回転多面鏡7への入射角変化を低減することができるので、異なる被走査線に向かう光ビームの副走査方向のビームスポット位置変動を低減でき、なおかつ、走査線曲がり変動を低減することができる。
また、更に望ましくは、下段に入射する光ビームが光束分割用回折光学素子KBへの入射光と平行になるようにするとよい。このときは、上下段とも回転多面鏡7への副走査方向入射角が同一になり、好ましくは、回転多面鏡7の回転軸に対し垂直に入射するようにする。これにより、光学素子半導体レーザの波長変化が生じた場合の、回転多面鏡7への入射角変化を0にすることができ、異なる被走査線に向かうビームの副走査方向のビームスポット位置変動を低減でき、なおかつ、走査線曲がり変動を低減することができる。このようにするには、入射側の光束分割用回折光学素子KBと出射側の回折光学素子KKの格子ピッチが等しくなるように設定する。
図2において光束分割後の上段と下段の光強度を等しくするには、2つの方法がある。
「1つ目の方法」は、平行ビーム入射側の光束分割用回折光学素子KBに垂直(P)または水平(S)直線偏光を入射させ、光束分割用回折光学素子KBからは直進する0次透過光と偏光する+1次回折光に分け、偏光した+1次回折光が回折光学素子KKで再回折後のビーム強度と、直進0次光強度が略等しくなるように、光束分割用回折光学素子KBの入射偏光に対する、0次光、+1次光回折効率を設定する方法である。これは、光束分割用回折光学素子KBの回折格子屈折率変調量と格子厚の積が適切な値になるように設定することで実施することができる。
「2つめの方法」は、光束分割用回折光学素子KBとして、垂直(P)または水平(S)直線偏光に対して、入射光は0次光よりも+1次回折光の回折効率が高い回折格子とし、この光束分割用回折光学素子KBに斜め方向に振動する直線偏光を入射させる方法である。この斜めの程度を適当な値に設定することで、光束分割用回折光学素子KBからは直進する0次透過光と偏向する+1次回折光が両方生じ、偏向した+1次回折光が回折光学素子KKで再回折後のビーム強度と、直進0次光強度が略等しくするようにできる。
図2において、回転多面鏡7の上下段への入射光強度を略等しくさせるための前述の「1つ目の方法」を実施するときには、半導体レーザからの出射光をコリメートレンズで平行ビームとした後に光束分割用回折光学素子KBに入射するビームは副走査方向に振動面を持つP偏光、または主走査方向に振動面を持つS偏光として入射させるようにする。
なお、このときは、光束分割用回折光学素子KBは、P偏光またはS偏光に対して、格子の屈折率変化と格子厚の積を上下段のビーム強度が略等しくなるように適切な値に設定されたものを使うことが必要である。
図3は、本発明にかかる光束分割用回析光学素子の別の例を示す、2段回転多面鏡(光偏向器7)以前の光学系の副走査断面図である。
光束分割用回折光学素子は、第1分割用回折光学素子KB1と第2分割用回折光学素子KB2の2枚の回折光学素子が入射光軸方向に積層配置されて構成されている。
半導体レーザなどの光源からの出射光は、コリメートレンズで平行ビームになり、光束分割用回折光学素子に入射する。このとき光束分割用回折光学素子へは、直線偏光で斜め45°に振動面を持つ光ビーム、あるいは、円偏光が入射するようにする。第1分割用回折光学素子KB1は、入射光のうちS偏光成分を紙面内上方に回折する。また第2分割用回折光学素子KB2は、P偏光成分を紙面内下方に回折する。つまり、光束分割用回折光学素子により、S偏光とP偏光は(紙面内)副走査方向に関して互いに反対方向に回折、偏向される。
第1分割用回折光学素子KB1で副走査方向、紙面上方に回折されたS偏光成分は、回折光学素子1(第1回折光学素子)で再回折され、2段回転多面鏡の上段に入射する。また、第2分割用回折光学素子KB2で副走査方向、紙面下方に回折されたP偏光成分は、回折光学素子2(第2回折光学素子)で再回折され、2段回転多面鏡の下段に入射する。上下段ビームとも回折光学素子と回転多面鏡の間には、開口を規定するアパーチャ12およびシリンドリカルレンズ5a,5bが配置されている。ここで、シリンドリカルレンズ5a,5bは、光束分割後に2つ配備しているが、本構成では、光束分割後の光偏向器7までの光路長を略等しくできるので、光束分割手段の前に副走査方向にパワーを有するシリンドリカルレンズを配備することができる。これにより、異なるステーションに向かうビームの光学特性の差(ビームスポット径,マルチビーム時の副走査ビームピッチ等)を少なくすることができ、また、部品点数の低減も実現することができる。
上段および下段に入射する光ビームは、回折光学素子1,2で再回折後、光束分割用回折光学素子で偏向される方向に対し副走査方向について逆方向に偏向されるようにする。こうすることで、半導体レーザの波長変化が生じた場合の、回転多面鏡7への入射角変化を低減することができるので、異なる被走査面に向かう光ビームの副走査方向のビームスポット位置変動を低減することができ、なおかつ、走査線曲がり変動を低減することができる。
また、更に望ましくは、上段および下段に入射する光ビームが光束分割用回折光学素子への入射光と平行になるようにすると良い。このとき、上下段とも回転多面鏡7への副走査方向入射角が同一になり、好ましくは、回転多面鏡7の回転軸に対して垂直に入射するようにする。これにより、半導体レーザの波長変化が生じた場合の、回転多面鏡7への入射角変化を0にすることができ、異なる被走査面に向かう光ビームの副走査方向のビームスポット位置変動を低減することができ、なおかつ、走査線曲がり変動を低減することができる。
なお、このようにするには、入射側の第1分割用回折光学素子KB1と出射側の回折光学素子1の格子ピッチを等しくし、第2分割用回折光学素子KB2と出射側の回折光学素子2の格子ピッチも等しく設定する。第1分割用回折光学素子KB1と第2分割用回折光学素子KB2の格子ピッチは、同一に設定することが好ましいが、必ずしも同一でなくても良い。
また、回転多面鏡の上下段への入射光ビーム強度を略等しくするためには、光束分割用回折光学素子へは、直線偏光で斜め45°に振動面を持つ光ビーム、あるいは円偏光を持つ光ビームが入射するようにする。
図5は、図3中の光束分割用回折光学素子の部分を取り出して示した図である。
第1分割用回折光学素子KB1は、S偏光を+1次回折光として回折させ、P偏光は透過させる偏光選択性を持った格子である。第2分割用回折光学素子KB2は、P偏光を+1次回折光として回折させ、S偏光は透過させる偏光選択性を持った格子である。
このような2枚が積層された光束分割用回折光学素子にP偏光とS偏光成分の両方を持った光ビームを入射させると、S偏光成分は第1分割用回折光学素子KB1でほとんど+1次回折光として回折され、回折光は第2分割用回折光学素子KB2ではそのまま透過して上方へ偏向される。一方、P偏光成分は、第1分割用回折光学素子KB1では0次光として透過し、第2分割用回折光学素子KB2でほとんど+1次回折光として回折されて下方へ偏向される。
ところで、通常、走査光学系におけるレンズには、低コスト化、および、非球面や自由曲面などの複雑な形状の作成容易性から、射出成形によるプラスチックレンズが多用される。プラスチックレンズを高精細走査光学系に用いるときには、光学特性の温度依存性の問題が生じる。すなわち、プラスチックレンズ材料の屈折率の温度依存性は、ガラス材料に比べて一桁大きく、また、熱膨張係数もガラス材料より大きいため、図10に示すように、温度が高くなると、プラスチックレンズの焦点位置は、伸びる方向に動く。その結果、走査光学系の高精細化が進み、走査面の集光ビーム径が小さくなってくると、焦点深度が浅くなり、周囲温度の上昇により集光ビームの集光点が走査面からずれて集光ビーム径が大きく変化してしまう。
一方、回折レンズは、波長による光学特性の変化が大きいレンズである。半導体レーザを光源に用いたとき周囲温度が上昇すると、半導体レーザの発振波長は、長波長にずれてくる(赤色半導体レーザの場合、温度による発振波長の長波長へのずれは、およそ0.2nm/℃である)。図11に示すように、回折レンズへの入射光が周囲温度の上昇により長波長化したとき、回折レンズの焦点位置は、縮む方向に動く。これは、温度上昇によるプラスチックレンズの焦点位置の動きと逆の特性である。
そこで、図12に示すように、プラスチックレンズと回折レンズを適切に組み合わせた光学系にすることで、周囲温度が上昇しても焦点位置がほとんど動かない光学系を実現することができる。このことを利用して、図13において半導体レーザからの平行ビームを上下に偏向する光束分割用回折光学素子にプラスチックレンズの光学特性の温度依存性を逆補償するような位相分布を持たせるようにする。このとき光束分割用回折光学素子は、等ピッチの回折格子ではなく、変調ピッチで格子線も任意形状に曲がっている回折格子になる。このような任意形状格子は、電子線描画によるフォトリソグラフィー法による作成、あるいは電子線描画により格子マスターを作成し、これを記録材料に密着して可干渉光で露光し、格子マスターからの0次回折光と+1次回折光の干渉縞を記録材料に転写する方法などで実現することができる。
また、光束分割用回折光学素子に温度依存性逆補償の位相分布を持たせる場合、入射ビーム主光線に対する格子ピッチと再回折させる回折光学素子の格子ピッチを等しく設定することが望ましい。
図13において光束分割用回折光学素子で反対方向に偏向した光ビームを、それぞれ再回折して水平方向に偏向する回折光学素子1,2にプラスチックレンズの光学特性の温度依存性を逆補償するような位相分布を持たせることもできる。
また、第1、2分割用回折光学素子および回折光学素子1,2の両方に協働してプラスチックレンズの光学特性の温度依存性を逆補償するような位相分布を持たせることもできる。
ここで、再回折させる回折光学素子に温度依存性逆補償の位相分布を持たせる場合、回折光学素子への入射ビーム主光線に対する格子ピッチと入力側の光束分割用回折光学素子の格子ピッチを等しく設定することが望ましい。
図14は、本発明にかかる光走査装置の光偏向器以前の光学系の別の例を示す図である。
図14(a)に示す光束分割用回折光学素子は、図2に示した光束分割回折素子と同じであり、0次光と1次光に光束を分割する。しかし、ここでは、光束分割回折素子で分割した複数ビームを偏向せずに、直接、偏向手段(光偏向器)に導くように構成されている。したがって、図2に示した光学系では必要であった回折光学素子は、図14に示す例においては不要であるため、更なる低コスト化を実現することができ、なおかつ、回折光学素子の加工誤差による光学特性劣化も低減することができる。また、このとき、2光束の偏向手段までの光路長を略等しくすることができるため、光偏向器前の副走査方向にパワーを有するシリンドリカルレンズを2光束に共通に使用することができる。
また、図14(b)に示すように、図3に示した光束分割回折素子と同じものを用いて、図14(a)と同様に、光束分割用回折光学素子で分割した光ビームを、偏向することなく、直接、光偏向器に導くように構成してもよい。
直線偏光で斜め45°に振動面を持つ光ビーム、あるいは、円偏光を光束分割用回折光学素子に入射させるには、図4に示すように、コリメートレンズと光束分割回析光学素子との光路上に1/2波長板を配置し、これを光軸方向を回転軸にした回転面内で回転させて直線偏光が斜め45°の振動面となるようにする。
また、図2において、回転多面鏡上下段への入射光強度を略等しくさせるための前述の「2番目の方法」を実施するときにも、コリメートレンズと光束分割回析光学素子との光路上に1/2波長板を配置し、これを光軸方向を回転軸にして面内で回転させて上下段の光強度が略等しくなるように設定する。
ところで、上段の反射鏡で被走査面を走査しているときに、下段での反射光が光源にもどってしまうと、もどり光がレーザの共振器に入射して干渉を起こし、濃淡むらが大きくなるという画像不良の問題が発生する。しかし、波長板をコリメートレンズと光束分割回析光学素子との光路上に挿入して、もどり光の偏光振動面を出射光の偏光振動面と異ならせることで、上記もどり光による画像不良の問題を解決することができる。
本発明で用いられている光束分割素子は、入射光に対して、0次光と+1次回折光しか生ぜず、他の回折光は発生しない回折格子が適している。このような回折を行うことができる回折格子は、体積位相型回折格子によりブラッグ回折を生じさせたときに実現することができる。体積位相型回折格子は、回折格子層内の厚さ方向全域にわたって屈折率の周期的変調構造ができている回折格子であり、層内の屈折率が一定である格子面に対して、入射光と回折光が反射の法則を満たすような入射角のときに、回折効率は最大となる。この特定の入射角をブラッグ角といい、ブラッグ角で入射させたときの回折をブラッグ回折という。このような回折格子を本願の光束分割素子に用いることで、前述の光束分割素子を実現することができる。
次に、これまで説明した光束分割用回折光学素子および回折光学素子として用いる素子の材料と作製法について説明する。
作製の出発点となる素子の断面を図6に示す。非重合性液晶分子と重合性モノマーあるいはプレポリマーと図示しない光重合開始剤とを均一に混合した組成物を2枚の透明基板間に挟む。組成物の厚みは、基板間隔を制御する図示しないスペーサー部材によって制御することができる。この組成物は、感光性を有するため、素子作製工程において感度を有する波長域の光を遮断した環境下で取り扱うことが好ましい。
非重合性液晶としては、屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用することができる。液晶材料を選択するときは、あるオーダーパラメーターの配向状態において、重合性モノマーあるいはプレポリマーの硬化層の屈折率と等しい屈折率となる液晶材料を選択してもよく、また、液晶材料を選択してから、その液晶のあるオーダーパラメーターの配向状態での屈折率と同じ屈折率になるように重合性モノマーあるいはプレポリマーを選択してもよい。
また、重合性モノマーまたはそのプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、光重合開始剤の添加量が少なすぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が起こり難くなり、必要な露光時間が長くなってしまう。逆に、光重合開始剤が多すぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が不十分な状態で硬化してしまうため、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が小さくなるという問題がある。
スペーサー部材としては、液晶表示装置に用いられるような球形スペーサー、ファイバースペーサ、フィルムなどを用いることが出来る。また、フォトリソグラフィーとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状を加工しても良い。スペーサー部材は、ホログラムの有効領域外に形成することが好ましい。スペーサー部材の高さは、数μmから数十μm範囲が好ましく、回折光の波長とポリマー部と液晶部の屈折率差に応じて所望の回折格子層厚みとなるように適宜設定される。
透明基板としては、液晶表示装置に用いられるようなガラス、プラスチックなどを用いることが出来る。
次に、相分離による回折格子形成過程について、図7,8を用いて説明する。
図7において、図示しない所望の波長のレーザ光源による二光束干渉露光系を用いて、組成物中に露光を行うと、図8に示すように干渉縞の明部において重合性モノマーあるいはプレポリマーの光重合反応が始まる。この時、硬化収縮が起こって密度差が生じ、隣接する重合性モノマーあるいはプレポリマーが明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に、明部に存在していた非重合性液晶が暗部に向かって追い出されることで相分離が起きる。このとき、液晶分子が移動して行く際にモノマーやポリマー鎖との相互作用で液晶分子長軸を移動方向に配向させようとする力、すなわち、相分離過程において干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働くと考えられる。
最終的には図9に示すように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と非重合性液晶層の周期構造が形成され、液晶層部の配向ベクトルが干渉縞の間隔方向を向いた状態が得られると考えられる。この干渉露光および相分離過程において、試料を適当な温度に加熱保持しておくことが好ましい。温度によって相分離の速度が変化し、液晶分子の配向性に影響を及ぼすと考えられる。最適な加熱温度は使用する材料によって異なるが40℃から100℃程度が好ましい。
本実施の形態では、液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npがほぼ一致するように液晶の種類とポリマーの種類の組合せを適宜設定することで、S偏光の入射光に対しては液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npの差を感じないため回折せず、P偏光の入射光に対しては液晶部全体の異常光屈折率neとポリマー部の屈折差を感じて回折するような偏光性回折格子が得られる。
ここで、体積型回折格子の回折効率は、屈折率変調量Δnと厚みdの積Δn・dに依存するので、屈折率差Δnを大きく出来ると回折格子の厚みdを薄く出来る。体積型回折格子の厚みを薄くすると、回折効率の角度依存性が小さくなり、入射角変動に対する光利用効率低下が改善する。したがって、偏光選択性が大きく入射角度依存性が比較的少ない高効率な偏光性回折格子が得られる。
また、本材料、方法による偏光性回折格子は、格子層内の厚さ方向全面に周期的屈折率変調構造が形成されているので、体積型格子となり、ブラッグ回折を行わせるのに適したものとなる。
体積型のブラッグ格子は、90%以上の高回折効率と角度選択性を持っているので、本願の光束分割用回折光学素子として適している。
また、光束分割用回折光学素子の後段の回折光学素子として、90%以上の1次光回折効率で回折させることが望ましく、ここにも本材料、方法による偏光性回折格子を用いた体積型位相格子を用いることが適している。
本発明にかかる光束分割用回折光学素子として、体積位相型回折格子によるブラッグ回折を生じる回折格子が適しているが、このような回折格子として、フォトポリマーを用いた体積型回折格子が適した回折格子として挙げられる。体積型位相格子とすることで、0次光と+1次光のみが発生し、他の次数の回折光は生じない光束分割素子を実現することができる。
また、光束分割用回折光学素子の後段の回折光学素子として、S偏光、P偏光ともに90%以上の1次光回折効率で回折させることが望ましく、ここにもフォトポリマーを用いた体積型位相格子を用いることができる。
以上説明した実施の形態においては、光束分割用回折光学素子に対応する半導体レーザの数は1個であったが、半導体レーザの個数はこれに限定されず、複数の半導体レーザからの出射光が光束分割用回折光学素子に同時に入射し、走査面を複数ビームで走査するように構成された走査光学系にも同様に適用することができる。
次に、本発明にかかる光走査装置の別の実施の形態について、これまでに説明した実施の形態と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態では、レンズ作用を備えた回折光学素子を用いる。
図19は、図3に示した回折光学素子1および回折光学素子2に代えて、レンズ作用を備えた回折光学素子21,22を用いた例を示す図である。レンズ作用を備えた回折光学素子21,22は、図3に示した等ピッチの直線状回折格子とは異なって非等ピッチであり、曲線状の回折格子となる。回折光学素子21、22で回折されたビームが互いに平行となり、また、光束分割用回折光学素子への入射光とも平行にすることで、回転多面鏡には回転軸と垂直に入射させることができる。その結果、走査線曲がりを抑えることができる。
図20に、レンズ作用としてシリンドリカルレンズ作用を持たせた実施例を示す。
光源である半導体レーザからの出射光は、コリメートレンズKLで平行ビームとされる。直交する偏光成分はそれぞれ、等ピッチ直線状回折格子で構成される第1回折光学素子KB1と第2回折光学素子KB2で回折、偏向されて各々シリンドリカルレンズ作用回折光学素子21a,22aで再回折された後に、多面鏡反射面7a,7bに副走査方向が集束状態で入射する。
図20に示した構成では、回折光学素子がシリンドリカルレンズ機能を持っているので、多面鏡前に配置するシリンドリカルレンズは不要となる。
また、この構成において、第1回折光学素子KB1の格子ピッチとシリンドリカルレンズ作用回折光学素子21aのレンズ光軸に相当する格子ピッチを同一にしておくと、半導体レーザの波長変動に対しても多面鏡での集光位置は変動せず、波長変動に対して安定した光学系を形成することができる。同様に、第2回折光学素子KB2とシリンドリカルレンズ作用回折光学素子22aについても格子ピッチを同一にしておく。
以上説明したレンズ作用回折光学素子は、透過回折型の回折光学素子であるが、本願はこれに限定されず、反射回折型の回折光学素子でもよい。
図21に、光束分割用回折光学素子にレンズ作用を持たせた実施例を示す。
光束分割用回折光学素子は、2枚の回折光学素子が入射光軸方向に積層され、各々レンズ作用を持つ第1回折光学素子KB21と第2回折光学素子KB22が配置されている。レンズ作用第1回折光学素子KB21は、S偏光を回折すると共にP偏光を透過する。半導体レーザからの出射光は、カップリングレンズKLおよびレンズ作用第1回折光学素子KB21でコリメートされてシリンドリカルレンズ作用回折光学素子21aに入射する。また、レンズ作用第2回折光学素子KB22は、P偏光を回折すると共にS偏光を透過する。半導体レーザからの出射光は、カップリングレンズKLおよびレンズ作用第2回折光学素子KB22でコリメートされてシリンドリカルレンズ作用回折光学素子22aに入射する。入射コリメート光は、シリンドリカルレンズ作用回折光学素子21a,22aで副走査方向に収束され、多面鏡面7a,7bに線像を集光する。
ここで、レンズ作用を備えた光束分割用回折光学素子の光学的温度補正機能について説明する。
先に説明したとおり、プラスチックレンズを用いた走査光学系は、周囲温度変化に伴う走査面焦点移動が生じる。焦点移動の数値例を以下に示す。
[プラスチックレンズ走査光学系の諸元例]
ポリゴン前 コリメートレンズ焦点距離 : 15mm
シリンドリカルレンズ焦点距離 : 100mm
ポリゴン後 fθレンズ焦点距離 : 240mm
副走査方向 fθ+倒れ補正光学系の[ポリゴン面-走査面] 結像倍率:−1.0
[温度上昇(例:25℃→45℃)のときのプラスチックレンズ走査系の走査面焦点移動量]
主走査方向 : 約+1mm
副走査方向 : 約+1.5mm
ただし、実際には、コリメートレンズの鏡筒の熱膨張による伸びにより焦点移動量は補正方向に動くため、トータルの走査面焦点移動量は以下のとおりである。
主走査方向 : 約+0.5mm
副走査方向 : あまり変わらず約+1.5mm
このプラスチックレンズを用いたときの走査面焦点移動を、回折光学素子のレンズ作用で補正する。ここで、回折レンズの波長変化dλによる焦点距離f’は、基準室温時の焦点距離をfとして、近軸近似として次式で示すことができる。
f’=f(1−dλ/λ) (1)
また、赤色LDの波長変化温度係数は、dλ=0.2nm/℃であり、20℃の温度上昇によりdλ=4nm長波長化する。
20℃上昇して4nm長波長化したときの焦点距離変化は、(1)式から基準波長655nmのとき、相対−0.611%変化することになる。この特性を利用して上記プラスチックレンズによる走査光学系の温度特性補正の実施例を以下に示す。
図22は、補正光学系の展開図であり、光源から2ビームに分割した一方の光路を展開したもので、回折による光軸の曲がりを直線状に展開したものである。(a)が副走査方向、(b)が主走査方向の展開図である。
[ホログラムレンズによる補正光学系の配置実施例]
以下、近軸結像計算から求めた補正光学系の光学配置を示す。
カップリングレンズ焦点距離 : 20.0mm
第1回折光学素子焦点距離 :630.5mm (光軸対称回折レンズ)
上記2枚による合成コリメートレンズ
焦点距離 : 19.51mm
第2回折光学素子焦点距離
副走査方向焦点距離
f副= 165.0mm (シリンドリカル回折レンズ)
主走査方向焦点距離
f主= ∞ (屈折作用なし)
レンズ間距離

a: 19.381mm
b: 4.0mm
c: 10.0mm
d:165.0mm
e: 65.0mm
g:240.0mm
[上記補正光学系による焦点移動補正結果]
(温度上昇時のカップリングレンズの鏡筒熱膨張による伸びを考慮済み)
25℃→45℃ 走査面焦点移動量
主走査方向:補正前 約+0.5mm→補正後 −0.08mm
副走査方向:補正前 約+1.5mm→補正後 −0.009mm
上記補正光学系の実施例では、温度上昇による主走査方向の焦点移動+0.5mmは、第1回折光学素子(焦点距離630.5mm)の波長の長波長化による焦点短縮効果により補正している。また、副走査方向の焦点移動+1.5mmは、第1回折光学素子と第2回折光学素子の協働による焦点短縮効果により補正している。
以上説明した実施例は、走査光学系の副走査方向について、走査レンズ1と走査レンズ2の合成光学系のポリゴン面-走査面間の結像倍率がほぼ等倍の場合の実施例である。
通常、走査光学系は等倍系のほかに、ポリゴン面-走査面間の結像倍率が小さい縮小系の場合もある。このときの温度上昇に伴う走査面集光位置のずれは、等倍系とは逆に主走査方向の焦点移動量が副走査方向の移動量より大きくなる。
このような縮小系の走査光学系において、回折光学素子により焦点移動を逆補正する場合は、主走査方向の補正量が大きいので、図22におけるカップリングレンズとレンズ作用光束分割用回折光学素子の組合せにおいて、上記実施例よりカップリングレンズの集光パワーを弱く(焦点距離を長く)し、光束分割用回折光学素子のレンズ作用の集光パワーを強く(焦点距離を短く)することが必要である。
主走査方向は、光源と走査面間が拡大結像系になっているので、コリメート系の焦点距離変化が走査面の集光位置変化に大きく影響する。このことにより、長波長化したときの主走査方向の回折光学素子による主走査方向の焦点短縮効果で、走査面の集光点を多面鏡よりに大きく引き戻す。
一方、副走査方向についてはシリンドリカル回折光学素子の焦点距離を短くして長波長化による多面鏡面での集光位置移動量を上述の実施例より小さくする。副走査方向は、コリメート系とシリンドリカル回折光学素子の組合せで光源と多面鏡面が結像関係になっているので、シリンドリカル系の焦点距離を短くすることで、結像倍率を低下させて多面鏡面での集光位置移動量を小さくさせることになる。
このように、縮小系の走査光学系についても回折光学素子の組合せにより、温度変化に伴う走査面での焦点移動を補正することができる。
なお、図21に示した2ビーム分割において、一方の分割ビームに関する光学配置例を図22に示したが、もう一方の分割ビームについても、等価的には図22に示した光学配置を適用することができる。ただし、光束分割用回折光学素子を構成するレンズ作用第1回折光学素子KB21およびレンズ作用第2回折光学素子KB22は積層されていて、分割のための回折面が積層間隔だけ離れているので、レンズ作用第2回折光学素子KB22の焦点距離および面間隔b、c等は、他方のビームとは微小量異なってくる。
また、上記実施例では、光束分割用回折光学素子およびビーム再偏向回折光学素子を適用した走査光学系の基本配置例を示した。各回折光学素子のレンズ作用は1次元、2次元の球面レンズ作用を発生させるものでもよいが、より波面収差を低減させるためには、非球面レンズ作用を発生する回折光学素子が好ましい。
以上説明した回折光学素子の作成方法を図23を参照しながら説明する。
まず、レンズ作用のある回折光学素子と等価な波面を発生させる原版を作成しておく。原版の作成には、必要な波面を発生させる位相関数を求め、この位相関数の2π毎の等位相線を引いて回折格子パターンを求める。この回折格子パターンを電子ビーム描画あるいはフォトリソグラフィーで基板上にパターンを形成して原版とする。この原版を、図23に示すように、光を露光すると屈折率が変化するホログラム記録材料に密着して原版側から露光のための照射光を入射させる。原版から0次光と+1次回折光が発生し、この2光束が干渉して原版直後に干渉縞を形成する。この干渉縞がホログラム記録材料に露光され、所望の位相格子パターンが形成される。この密着露光のときの照射光は、図21における光束分割用回折光学素子から回折される平行光と等価あるいは共役である平行光を用いることが好ましい。
なお、原版の別の作成方法としては、レーザ光を用いてレンズ系により所望の波面を持つ2光束を形成してこれら2光束を干渉させ、その干渉縞をホログラム記録材料に露光、作成する方法も用いることができる。
以上説明してきた実施例は、1つの光源からの1ビームを光束分割して2ビームにする場合であったが、本願はこれに限定されず、複数の光源からの複数のビームを光束分割してビーム数を2倍にする場合にも適用することができる。
図24には、2つの光源を用いた場合の例を示す。
半導体レーザ1、2は、出射するビームの出射方向が互いに平行な方向からそれぞれ1〜2°内向きに設定されて、両ビームは多面鏡反射面で交差する。なお、半導体レーザから出射されたビームはカップリングレンズに入射するが、図24にはカップリングレンズの図示を省略してある。また、半導体レーザからの出射光の偏光方向を変換する波長板も図示を省略してある。
半導体レーザ1,2からの出射光はそれぞれ、積層された光束分割回折光学素子1,2に入射する。光束分割回折光学素子1で回折、コリメートされたS偏光成分のビームは、後段に配置された回折光学素子1に入射し、光束分割回折光学素子2で回折、コリメートされP偏光成分のビームは、後段に配置された回折光学素子2に入射する。回折光学素子1に入射した2ビームは回折され、副走査方向に集束して上段の多面鏡に交差して入射する。一方、回折光学素子2に入射した2ビームは回折され、副走査方向に集束して下段の多面鏡に交差して入射する。上段、下段でそれぞれ反射偏向された交差2ビームは、各多面鏡に対応した走査光学系により別個の走査面(感光体)を2ビームで同時に走査する。
この2ビームの分割光学系において、図24に示すように、半導体レーザ1からの出射ビームのうちS偏光成分は、光束分割回折光学素子1のA面の領域に入射して回折された後に、回折光学素子1のA面の領域に入射して回折される。一方、半導体レーザ2からの出射ビームのうちS偏光成分は、光束分割回折光学素子1のB面の領域に入射して回折された後に、回折光学素子1のB面の領域に入射して回折される。
各半導体レーザのP偏光成分についても同様に、半導体レーザ1からのビームは、各回折光学素子のA面を使い、半導体レーザ2からのビームはB面を使う。
ここで、光束分割回折光学素子および回折光学素子のA面は、半導体レーザ1の波長と入射方向に対してレンズ作用が最適化され、B面は半導体レーザ2の波長と入射方向に対してレンズ作用が最適化されている。
以上、2ビームの光束分割の例を説明したが、本願はこれに限定されず3ビーム以上を同時に走査する光分割にも適用することができる。
ここで、光源からの出射光のコリメート調整の方法について説明する。
光走査装置を構成する光源からの出射光のコリメート調整は、予め光走査装置の外部で行う。
半導体レーザからの出射光は、カップリングレンズで発散状態を減少させ、波長板(図示せず)で偏光方向を変換させた後、S偏光成分はレンズ作用第1回折光学素子で回折、コリメートされ、P偏光成分はレンズ作用第2回折光学素子で回折、コリメートされる。
このとき、図25に示すように各コリメート光の調整は、コリメート外部調整用レンズを用いて集光し、各調整用レンズの背後の基準面に集光点が来るように、半導体レーザとカップリングレンズ間距離および/またはカップリングレンズとレンズ作用回折光学素子間距離を調整する。なお、調整は、S偏光またはP偏光の一方のビームだけを用いてコリメート調整して完了させる方法と、両偏光に対してコリメート調整する方法とがある。
このように、走査光学系の外部でコリメート調整をした後に、光源とカップリングレンズ、光束分割回折光学素子が一体となったユニットを光走査装置本体に配置、固定する。
次に、本発明にかかる光走査装置の別の実施の形態について、先に説明した実施の形態と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態では、図26に示すように、第1回折光学素子と第2回折光学素子を積層して構成された光束分割用回折光学素子が1枚の等ピッチ回折光学素子で構成されている。光束分割用回折光学素子の光路後段の回折光学素子1,2は共に等ピッチで、回折後のビームが互いに平行となり、また、光束分割用回折光学素子への入射光とも平行にすることで、多面鏡には回転軸と垂直に入射させることができる。その結果、走査線曲がりを抑えることができる。
1枚の光束分割用回折光学素子が半導体レーザからコリメートレンズで平行化した入射光を±n次回折光(n:自然数)として回折し、回折次数nが等しい2つのビームが副走査方向について互いに逆方向に回折されたものを回折光学素子1,2で再回折させ、シリンドリカルレンズ1,2により副走査方向に集束されて各多面鏡に入射させる。
回折次数nが等しい2つのビームを用いる場合、各ビームを再回折させる回折光学素子1,2は、光束分割用回折光学素子と同一格子ピッチであり、光束分割用回折光学素子の+n次回折光を再回折させる回折光学素子1は、+n次回折に対して高回折効率なブラッグ格子、-n次回折光を再回折させる回折光学素子2は、-n次回折光に対して高回折効率なブラッグ格子であることが光利用効率の観点から望ましい。
この構成によれば、光束分割用回折光学素子が1枚で済むため、組立が簡易で、低コスト化を図ることができる。
±n次光を用いて入射光を2ビームに分割する場合、通常、光利用効率の観点からn=1である±1次回折光を用いることが好ましい。これは±1次回折光を高効率化することが最も容易だからである。
図27には、光束分割用回折光学素子として矩形凹凸型の回折格子を用いた例を示す。矩形凹凸型の回折格子の格子部の屈折率をng、格子深さをdとすると、
(ng−1)d=λ/2
のときに、0次光は発生せず、±1次光の回折効率は最大の40.5%となる。無損失時の光束分割の効率は理想的には最大50%であるから、矩形凹凸型の回折格子はこれの8割の効率で光分割でき、実用上有用な光束分割素子となる。
光束分割用回折光学素子に入射する偏光は、限定はされないが、実用的には図26に示したように直線偏光でP偏光が入射することが好ましい。再回折させるための回折光学素子1,2をP偏光に対して高効率な格子にしておくと、多面鏡面には回転軸方向に振動面を持つ偏光が高効率に入射することになり、多面鏡の回転に伴う反射率の変化が生ずることはなく、走査光にシェーディングの生じない均一な光走査が可能となる。
先に説明したように、プラスチックレンズを用いた走査光学系は、周囲温度変化に伴う走査面焦点移動が生じる。この走査面焦点移動を補正するために、図29,30に示すように、回折型レンズと回折光学素子を組み合わせて構成する。
ここで、図28に、回折型レンズとしての軸対称回折型コリメートレンズを示す。このレンズは、球面あるいは非球面レンズの表面に光軸対称の不等間隔同心円の輪帯を刻んだ回折格子付きのレンズである。この回折格子には球面、非球面のレンズ作用を持たせることができる。また、このレンズ作用の温度特性は、プラスチックレンズの温度特性とは逆に温度上昇に伴い焦点距離は短くなる。この特性を利用してプラスチックレンズの温度特性を補償するのである。この軸対称回折型コリメートレンズはプラスチックの射出成型で作成することができる。
図29に戻る。
半導体レーザからの出射ビームは、軸対称回折型コリメートレンズにより平行ビームとなり波長板(λ/2板)で斜め45°方向の直線偏光に変換されて光束分割用回折光学素子に入射する。光束分割用回折光学素子は、等ピッチのS偏光回折光学素子とP偏光回折光学素子が入射光軸方向に積層されて構成されている。S偏光回折光学素子は、入射S偏光のみを回折してP偏光は透過する。一方、P偏光回折光学素子は、P偏光のみを回折してS偏光は透過する。光束分割用回折光学素子への入射S偏光成分は、等ピッチS偏光回折光学素子により図の上方に回折され、シリンドリカルレンズ作用を持った回折光学素子1により再回折され副走査方向に集束されて上段の多面鏡面7aに線像を形成する。一方、入射P偏光成分は、等ピッチP偏光回折光学素子で図の下方に回折され、シリンドリカルレンズ作用を持った回折光学素子2により再回折され副走査方向に集束されて下段の多面鏡面7bに線像を形成する。
なお、上段の光路中には波長板(λ/2板)を配置してS偏光をP偏光に変換し、多面鏡には回転軸方向に振動する偏光として入射させ、走査シェーディングのない光走査を行うようにしてもよい。
図29において、プラスチックレンズを用いた走査光学系の温度特性を補償するため、主走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用を用いる。また、副走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズの回折格子とシリンドリカルレンズ作用回折光学素子の回折格子の合成された逆補正作用で補償する。これは、プラスチックレンズ走査光学系の温度変化に伴う走査面集光点の移動量が、主走査方向と副走査方向で異なるからである。
多面鏡以後の走査光学系の副走査方向の結像がほぼ等倍に近い場合は、主走査方向の焦点移動量より副走査方向の移動量が大きくなる。また、副走査方向の結像が縮小系の場合は、逆に副走査方向の焦点移動量より主走査方向の移動量が大きくなる。この縮小系の場合は、等倍系の場合より回折光学素子1,2のシリンドリカルレンズ作用の焦点距離を短くして、副走査方向における回折格子による焦点補正効果を小さくするとよい。
図30に示す軸対称回折型コリメートレンズを用いた別の実施例の基本原理は、図29に示した例と同じだが、光束分割用回折光学素子が1枚の等ピッチ回折光学素子から成り、±1次回折光を副走査方向に上下に振り分ける。振り分けられたビームはそれぞれ、シリンドリカルレンズ作用回折光学素子1および2により再回折され副走査方向に集束されて、上、下段の多面鏡面7a,7bに線像を形成する。
このときのプラスチックレンズ走査光学系の温度補償は、図29に示した例と同様に、主走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用で補償する。また、副走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズの回折格子とシリンドリカルレンズ作用回折光学素子の回折格子の合成された逆補正作用で補償する。
次に、回折レンズとして、楕円回折型コリメートレンズおよび/またはシリンドリカルレンズを用いた例について説明する。
楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズは、図31に示すように、直交する方向で屈折面による集束パワーが異なり、かつ、装荷される回折レンズも直交する方向で集束パワーが異なるレンズである。楕円型とは、回折格子形状が同心の楕円形状をしていることを指す。楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズは、プラスチックの射出成型で作成することができる。
図32,33には、楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズを用いた例を示す。
図32において、半導体レーザからの出射光は、楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズで主走査方向にはコリメートし、副走査方向には集束して光束分割用回折光学素子に入射する。入射光は、波長板で斜め45°方向の直線偏光に変換している。入射光のうち、S偏光成分は、等ピッチS偏光回折光学素子で図の上方に回折され、等ピッチ回折光学素子1により再回折され上段の多面鏡面7aに線像を形成する。また、P偏光成分は、等ピッチP偏光回折光学素子で図の下方に回折され、等ピッチ回折光学素子2により再回折され下段の多面鏡面7bに線像を形成する。ここでの波長板は、必ずしも共に必須でなくてもよいことは図29に示した例と同様である。
ここで、プラスチックレンズを用いた走査光学系の温度特性を補償するため、主走査方向については、楕円回折型コリメート/シリンドリカルレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用を用いる。また、副走査方向についても同様に、楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズの回折格子の逆補正作用で補償する。
一般に、主走査方向と副走査方向の逆補正量が異なるが、異なる逆補正量の発生は楕円回折格子により、主走査方向と副走査方向で回折パワーが異なるため、異なる逆補正が可能となる。
図33に示す楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズを用いた別の実施例の基本原理は、図32に示した例と同じであるが、光束分割用回折光学素子が1枚の等ピッチ回折光学素子から成り、±1次回折光を副走査方向に上下に振り分ける。振り分けられたビームはそれぞれ、等ピッチ回折光学素子1,2により再回折され副走査方向に集束されて、上、下段の多面鏡面7a,7bに線像を形成する。
図33に示した例においても、プラスチックレンズを用いた走査光学系の温度特性を補償するため、主走査方向については、楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用を用いる。また、副走査方向についても同様に、楕円回折型コリメートレンズ/シリンドリカルレンズの回折格子の逆補正作用で補償する。
一般に、主走査方向と副走査方向の逆補正量が異なるが、異なる逆補正量の発生は楕円回折格子により、主走査方向と副走査方向で回折パワーが異なるため、異なる逆補正が可能となる。
次に、回折レンズとして、直線状回折型シリンドリカルレンズを用いた例について説明する。
直線状回折型シリンドリカルレンズは、図34に示すように、平面あるいは円柱面(凸状、凹状円柱面)、あるいは1次元非球面(凸状、凹状)形状を持ったレンズ(平面板も含む)の表面に1次元方向に不等間隔に直線状の回折格子を刻んだレンズである。この回折格子にも円柱面あるいは1次元非球面のレンズ作用を持たせることができる。また、このレンズ作用の温度特性は、プラスチックレンズの温度特性とは逆に温度上昇に伴い焦点距離は短くなる。この特性を利用してプラスチックレンズの温度特性を1次元方向に補償することができる。この軸対称回折型コリメートレンズはプラスチックの射出成型で作成することができる。
図35に直線状回折型シリンドリカルレンズを用いた例を示す。
半導体レーザからの出射ビームは、軸対称回折型コリメートレンズにより平行ビームとなり、波長板(λ/2板)で斜め45°方向の直線偏光に変換されて光束分割用回折光学素子に入射する。光束分割用回折光学素子は、等ピッチのS偏光回折光学素子とP偏光回折光学素子が積層されて構成されている。S偏光回折光学素子は、入射S偏光のみを回折し、P偏光は透過する。一方、P偏光回折光学素子は、入射P偏光のみを回折し、S偏光は透過する。光束分割用回折光学素子への入射S偏光成分は、等ピッチS偏光回折光学素子で図の上方に回折され、等ピッチの回折光学素子1により再回折され副走査方向に前記入射平行ビームと平行になった後、直線状回折型シリンドリカルレンズによって副走査方向に集束され上段の多面鏡面7aに線像を形成する。一方、入射P偏光成分は、等ピッチP偏光回折光学素子で図の下方に回折され、等ピッチの回折光学素子2により再回折され副走査方向に前記入射平行ビームと平行になった後、直線状回折型シリンドリカルレンズによって副走査方向に集束されて下段の多面鏡面7bに線像を形成する。
なお、上段の光路中には波長板(λ/2板)を配置してS偏光をP偏光に変換し、多面鏡には回転軸方向に振動する偏光として入射させ、走査シェーディングのない光走査を行うようにしてもよい。
図35において、プラスチックレンズを用いた走査光学系の温度特性を補償するため、主走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用で補償する。また、副走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズの回折格子と直線状回折型シリンドリカルレンズの回折格子の合成された逆補正作用で補償する。
なお、図35において、光束を分割する等ピッチS偏光回折光学素子とそれを再回折させる等ピッチ回折光学素子1の格子ピッチ同士は等しく、また、等ピッチP偏光回折光学素子とそれを再回折させる等ピッチ回折光学素子2の格子ピッチ同士も等しくすることが望ましい。これにより、光源である半導体レーザに波長変動が生じても、等しいピッチであれば分割/再回折後のビームの出射方向は変化せず、出射位置がわずかに副走査方向にシフトするだけとなる。出射位置がシフトして、出射方向が変わらない場合、その後のシリンドリカルレンズの集光作用で多面鏡面への集光位置は、シリンドリカルレンズ光軸上の一定位置に常に結像され、波長変化による走査線シフトは生じない。
また、等ピッチS偏光回折光学素子とP偏光回折光学素子とでは、光軸上の回折位置が異なる。よって、等ピッチS偏光回折光学素子とそれを再回折させる等ピッチ回折光学素子1の格子ピッチと、等ピッチP偏光回折光学素子とそれを再回折させる等ピッチ回折光学素子2の格子ピッチを同一にせず、積層した後段のP偏光回折光学素子の格子ピッチをS偏光回折光学素子よりわずかに小さくして回折角をわずかに大きくさせる。この構成により、光束分割された2光束の分割後の直線状回折型シリンドリカルレンズまでの光路長を等しくすることが好ましい。
図36に示す直線状回折型シリンドリカルレンズを用いた別の実施例の基本原理は、図35に示した例と同じであるが、光束分割用回折光学素子が1枚の等ピッチ回折光学素子から成り、±1次回折光を副走査方向に上下に振り分ける。振り分けられたビームはそれぞれ、等ピッチ回折光学素子1,2により再回折され、軸対称回折型コリメートレンズによる平行ビームと平行となって直線状回折型シリンドリカルレンズ1および2に入射し、各々副走査方向に集束されて、上、下段の多面鏡面7a,7bに線像を形成する。
このときのプラスチックレンズ走査光学系の温度補償は、図35の場合と同じく、主走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズに刻まれた回折格子の逆補正作用で補償する。また、副走査方向については、軸対称回折型コリメートレンズの回折格子と直線状回折型シリンドリカルレンズの回折格子の合成された逆補正作用で補償する。
なお、図36に示す実施例において、光束を分割する等ピッチ回折光学素子と分割光を再回折する等ピッチ回折光学素子1,2の格子ピッチは等しいことが望ましい。等ピッチ回折光学素子1,2の格子ピッチが等しければ、光源である半導体レーザに波長変動が生じたとしても、分割/再回折後のビームの出射方向は変化せず、出射位置がわずかに副走査方向にシフトするだけとなる。出射位置がシフトして、出射方向が変わらない場合、その後のシリンドリカルレンズの集光作用で多面鏡面への集光位置は、シリンドリカルレンズ光軸上の一定位置に常に結像され、波長変化による走査線シフトは生じない。
また、等ピッチ回折光学素子と分割後の各ビームを再回折させる等ピッチ回折光学素子1,2の格子ピッチを等しくすることで、光束分割された2光束の分割後の直線状回折型シリンドリカルレンズまでの光路長を等しくすることができる。
以上説明した図29,30,32,33,35,36に示した例では、多面鏡以前の光学系を1枚のレンズで済ませている。こうしたレンズの1枚化により、光束分割用回折光学素子により分割された後の各多面鏡面までの光学パスを等しく設定することができる。
次に、これまで説明した光束分割用回折光学素子および回折光学素子として用いる素子の材料と作製法の別の例について、先に説明した例と異なる点を中心に説明する。
作製の出発点となる素子の断面を図37に示す。光重合性液晶と光重合開始剤とを均一に混合した組成物を、表面に一様な透明電極を形成した二枚の透明基板間に挟む。このとき、必須ではないが透明電極の表面にポリイミドなどをラビング処理した配向膜を介して挟むようにする。この配向膜により、光重合性液晶は一方向に配向する。図37は、基板と平行に配向している状態を示す。
組成物の厚みは、基板間隔を制御する図示しないスペーサー部材によって制御することができる。この組成物は感光性を有するため、素子作製工程は、感度を有する波長域の光を遮断した環境下で取り扱うことが好ましい。
光重合性液晶としては、単官能の液晶アクリレートモノマー、液晶メタアクリレートモノマー、二官能の液晶ジアクリレートモノマー、液晶ジメタアクリレートモノマーなどを用いることができる。これらの材料は、官能基であるアクリロイルオキシ基と液晶骨格の間にメチレン鎖を有していても良い。具体例としては、大日本インキ化学製の液晶アクリレートモノマーUCL001などを用いることができる。
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α-アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどがある。光重合開始剤の添加量は、照射する光の波長に対する各材料の吸光度によっても異なるが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。具体例としては、青色光で露光する場合には、メタロセン系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア784)を0.5重両部程度添加することができる。
スペーサー部材としては、液晶表示装置に用いられるような球形スペーサー、ファイバースペーサー、フィルムなどを用いることができる。また、フォトリソグラフィーとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状を加工しても良い。スペーサー部材は、ホログラムの有効領域外に形成することが好ましい。スペーサー部材の高さは、数μmから数十μm範囲が好ましく、回折光の波長とポリマー部と液晶部の屈折率差に応じて所望の回折格子層厚みとなるように適宜設定される。
透明基板としては、液晶表示装置に用いられるようなガラス、プラスチックなどを用いることができる。
次に、干渉露光による回折格子形成過程について図37,38を用いて説明する。
図37において図示しない所望の波長のレーザ光源による二光束干渉露光系により組成物中に露光を行うと、図38に示すように干渉縞の明部において光重合性液晶の光重合反応が始まり、干渉縞の明部では基板と平行方向に配向した状態で光重合性液晶が固化する。一方、干渉縞の暗部では露光が行われないので、光重合性液晶は未硬化のままである。次に、基板全面をレーザ光あるいはランプ光などで全面露光しながら、両基板間に交流または直流電圧を印加する。この電圧により、基板間と垂直方向に電界が発生し光重合性液晶の誘電率異方性が正の場合は、干渉縞暗部の液晶分子が基板と垂直方向に配向する。このとき同時に全面露光が行われているので、干渉縞暗部の光重合性液晶は光重合反応により基板と垂直に配向したまま硬化する。最終的には、図38に示すように干渉縞の明暗のピッチに対応して液晶分子配向が基板と平行、垂直の周期構造が形成される。
前記配向膜のラビング方向が干渉縞の周期方向の場合、以上のようにして形成した周期構造は、液晶分子が基板と平行および垂直方向に配向しており、格子周期方向に振動する光に対して干渉縞明部に相当する基板と平行配向では液晶の異常光屈折率neを、干渉縞暗部に相当する基板と垂直配向では常光屈折率noを感じ、周期構造としては液晶分子の異方性dnが屈折率変調量となる。実際はこのような理想的な配向分布ではないので、周期構造による回折格子の屈折率変調量としては分子の異方性そのものよりは小さくなる。
本実施の形態では、基板面内で格子周期構造に垂直なs偏光の入射光に対しては、周期構造の液晶部分はほぼ常光屈折率noとなり屈折率差を感じないため回折せず、p偏光の入射光に対しては、屈折差を感じて回折するような偏光性回折格子を得ることができる。
また、前記配向膜のラビング方向が干渉縞の周期方向と垂直の場合は、上記とは逆にS偏光が回折され、P偏光は回折しない回折格子となる。
ここで、体積型回折格子の回折効率は屈折率変調量dnと厚みdの積dn・dに依存するので、屈折率差dnを大きくすることができれば、回折格子の厚みdを薄くすることができる。体積型回折格子の厚みを薄くすると回折効率の角度依存性が小さくなり、入射角変動に対する光利用効率低下が改善する。したがって、偏光選択性が大きく入射角度依存性が比較的少ない高効率な偏光性回折格子が得られる(図38参照)。
また、本材料、方法による偏光性回折格子は、格子層内の厚さ方向全面に周期的屈折率変調構造が形成されているので、体積型格子となりブラッグ回折を行わせるのに適したものとなる。
体積型のブラッグ格子は90%以上の高回折効率と角度選択性を持っているので、本願の光束分割のための回折光学素子として適している。また、光束分割素子の後段の回折光学素子として、90%以上の1次光回折効率で回折させることが望ましく、ここにも本材料、方法による偏光性回折格子を用いた体積型位相格子を用いることが適している。
作成方法の別の例として、負の誘電率異方性を持つ重合性液晶を用いる場合は、配向膜として垂直配向膜を用いて光重合性液晶を基板間に挟み込んだときに液晶分子が基板と垂直に配向するようにする。これに干渉縞を露光することにより、干渉縞の明部は基板と垂直に配向した状態で硬化する。次に、両基板の透明電極間に交流または直流の電界を印加しながら全面露光をおこなう。このとき、干渉縞暗部の液晶は負の誘電率異方性のため、電界に誘導され基板と平行方向に配向しながら硬化する。このときは、干渉縞暗部は基板と平行方向であるが、基板面内の方向はランダム配向となる。これを干渉縞の周期方向あるいは周期と垂直方向に揃えるには、前記垂直配向膜を所望の方向にラビングするとよい。この方法によっても液晶の配向方向が基板と平行および略垂直の周期構造を持った体積型回折格子を作成することができる。
また、別の作成方法として、液晶が正の誘電率異方性を持つもので図37に示す干渉縞露光と同時に透明電極間に電界を印加しながら露光する。このようにすると、干渉縞の明部は液晶分子が基板と垂直方向に配向したまま硬化する。次に、印加電界をかけずに全面露光をおこなう。これにより干渉縞暗部は基板と平行方向に配向して硬化する。この方法によっても液晶の配向方向が基板と平行および略垂直の周期構造を持った体積型回折格子を作成することができる。
また、液晶が負の誘電率異方性を持つ場合は、液晶の配向方向が逆になるが、やはり液晶の配向方向が基板と平行および略垂直の周期構造を持った体積型回折格子を作成することができる。
以上説明した実施例では、干渉露光の場合に露光のため入射する二光束の入射角を等しくしないようにすれば、周期構造の境界は図38に示したように基板に対し斜めに形成することができ、例えば、基板に対して垂直入射の場合でもブラッグ回折により高回折効率となる回折格子を作成することができる。このことから光走査用の光束分割用回折光学素子への入射光や出射光に対して、回折光学素子を垂直に設定することができるので、スペース効率の良いコンパクトな光束分割用回折光学素子を構成することができる。
また、この実施例による回折光学素子は回折格子の形成が干渉露光と全面露光のみにより実施することができるので、予め記録しておいた回折格子原版をマスターにして、原版と光重合性液晶による記録素子を略密着させて露光するだけで大量複製が可能である。このことにより、高効率の回折光学素子が低コストで大量に作製可能となる。
なお、以上説明した実施例は、周期パターンの露光に干渉縞を露光する方法であったが、この他に例えば、周期パターンを記録したフォトマスクを原版に重合性液晶を用いた記録媒体に周期パターンを露光する方法もある。この方法では、基板に垂直方向にパターン露光が行われるので、周期構造は基板に垂直な方向が周期の境界面となるように形成される。この場合、ブラッグ回折による高回折効率は基板に対して斜入射光の場合に生じる。このため、光束分割用回折光学素子に用いるときは入射光に対し基板を斜めにして配置する。
図39,40に回折光学素子の別の作製方法の例を示す。
光重合性液晶と光重合開始剤を混合した材料を基板間に挟み込むのは、先の実施例と同じであるが、基板表面に形成する透明電極が図39に示すように周期的なパターン電極となっており、上下基板で周期パターンの位置が合っている構造である。このような透明電極の表面に一様に配向膜を形成して、光重合性液晶と光重合開始剤を挟み込む。図39は挟み込んだ光重合性液晶が基板と平行な方向に配向している場合を示す。
格子の作成には、図40に示すように周期的なパターン電極間に交流または直流の電界をかけながら素子を全面露光する。光重合性液晶が正の誘電率異方性を持っている場合は、電界印加により電極がある部分では液晶が基板と垂直に配向し、電極がない部分では基板と平行方向のままである。この状態が全面露光により液晶が硬化して固定され図40に示す周期構造ができる。
光重合性液晶が負の誘電率異方性を持つときは、図39の光重合性液晶を基板間に挟み込むときに基板に対して垂直に配向させ、電極間に電界印加しながら全面露光した場合は図40の場合と液晶の配向方向が逆になる。
図40の場合も周期構造の境界が基板に垂直な面となっているので、ブラッグ回折による高回折効率は基板に対して斜入射光の場合に生じる。周期構造の境界が基板面に垂直の場合、回折のブラッグ条件を満たすには「入射角=回折角」となるような配置となる。このため、光束分割素子に用いるときは、図41に示すように入射光に対し基板を斜めにして配置する。
図48は、図41に示した回折光学素子を光走査用の光束分割用素子に適用したときの、光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。
半導体レーザからの出射光は、コリメートレンズで平行光となった後、光束分割用回折光学素子を構成する2枚の回折光学素子のうち、光路の前段の回折光学素子に入射する。回折光学素子は、図41に示した方法で作成したもので、入射角=回折角となるように入射光に対し基板が斜めに配置されている。前段の回折光学素子は、透過光と回折光がおよそ等量生じるように格子膜厚を設定してある。前段の回折光学素子の透過光は、シリンドリカルレンズで副走査方向に収束され、2段配置回転多面鏡の上段のポリゴンミラー7aに入射する。
一方、前段の回折光学素子により回折された回折光は、後段の回折光学素子に入射する。後段の回折光学素子も、入射角=回折角となるように、前段の回折光学素子と基板が平行になるように配置されている。後段の回折光学素子は、1次回折光の回折効率が最大になるように格子膜厚を設定してあり、入射した光はほぼ回折光となり、上段ビームと平行方向に出射してやはり下段のシリンドリカルレンズで副走査方向に収束され、2段配置回転多面鏡の下段のポリゴンミラー7bに入射する。
この配置により周期構造の境界が基板に垂直な回折光学素子においても光走査用の光束分割素子として高効率の光束分割が可能となる。
また、本実施例による回折光学素子は、回折格子の形成が全面露光のみにより実施できるので、露光するだけで大量複製が可能である。このことにより、高効率の回折光学素子が低コストで大量に作製可能である。
次に、別の回折光学素子の例を説明する。
図42に、回折光学素子としてブレーズ(鋸歯)状の表面形状を持つ回折格子を示す。
この回折光学素子は、ブレーズ(鋸歯)状の表面形状を持つ回折格子である。
鋸歯の頂部の高さhは、「h=(n-1)λ (n:格子媒体屈折率 λ:使用波長)」とすることにより理論的には100%の回折効率となる。実際には、ある程度格子ピッチが大きければ、無反射コートなしで85%を越える回折効率が得られる。ただし、格子ピッチが使用波長の4倍以下になってくると理論的にも回折効率は低下してくる。したがって、ブレーズ格子は、ある程度格子ピッチの大きい場合に高効率な格子となり有用となる。
ブレーズ格子の作成は、電子ビーム描画、あるいはレーザビーム描画等によりレジスト上にブレーズ格子形状を作成し、これを母型としてニッケル電鋳により金型を作成する。この金型を用いて、射出成形あるいはフォトポリマー法による素子転写作成を行う。
金型の作成には、上記リソグラフィ法だけでなく、ダイヤモンドバイトによる精密切削により格子金型を直接加工して、この金型から射出成形法あるいはフォトポリマー法による素子転写により行うこともできる。
このように、金型によるプラスチック成型で素子ができるので、大量生産、低コスト化など、大きなメリットを得ることができる。
次に、格子周期配列方向にブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折光学素子の実施例を、図43を参照しながら説明する。
図42に示したブレーズ格子は、表面形状が連続的な部分(斜面の部分)があり、作成が容易とはいえない。そこで、図43に示すように連続的ブレーズ形状を階段状に近似して格子を形成する。N段の階段状では、2k=Nとなるk回のマスク露光、ドライエッチングで階段状ブレーズ格子母型を作成することができる。図43に示す4段の階段状は、2回の露光、エッチングで形成することができる。格子ピッチが十分に大きいとき、回折効率は、理論上4ステップで81%。8ステップで95%となり高効率である。
階段状ブレーズ格子の作成は、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィによりSi、あるいはガラスをドライエッチングして階段上ブレーズ格子形状を作成し、これを母型としてニッケル電鋳により金型を作成する。この金型を用い、射出成形あるいはフォトポリマー法による素子転写作成を行う。
このように、金型によるプラスチック成型で素子ができるので、大量生産、低コスト化など、大きなメリットを得ることができる。
次に、透明媒体の深さが一定で、矩形凹凸型の格子形状をした回折光学素子の実施例を、図44を参照しながら説明する。周期構造は、複数の同一の格子単位が周期的に配列された構造である。この格子単位の中は、更に微細周期dを持つ矩形格子となっており、この格子単位の中で矩形格子のDuty factorが、小から大へ、リニアに漸増していく構造になっている。この周期構造の透明媒体の屈折率をn、光の波長をλとするとき、微細構造周期dは、「d≦λ/n」のとき、このdの周期を持つ微細構造による回折波は生じなく、格子単位の大きな周期構造による回折が生じる。各格子単位内の矩形格子がリニアに変化するDuty factorとなっているので、この構造による有効屈折率分布は鋸歯状の屈折率分布を示し、あたかもブレーズ格子による回折と等価な回折を示す。
格子の作成は、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィ、あるいは電子線リソグラフィによりSi,あるいはガラスをドライエッチングして微細格子形状を作成し、これを母型としてフォトポリマー法による素子転写作成を行う、いわゆるナノインプリント法により、格子を大量作成することができる。
このように金型によるプラスチック成型で素子ができるので、大量生産、低コスト化など、大きなメリットを得ることができる。
次に、以上説明した回折光学素子の光束分割用回折光学素子への適用例について、図45を参照しながら説明する。
図中、符号7は回折光学素子である。ガラス、プラスチックなどの透光性の基板1上に屈折率の異なる媒質1と媒質2が交互に周期的に配列され、かつ両媒質の境界は基板1に対し斜めに傾いている。形状としては傾斜した矩形形状であることが特徴である。この傾斜矩形構造にすることで、垂直入射したときの+1次回折効率を高めることができる。
傾斜した周期構造の上側は、保護のための透光性基板1’が装荷されている。基板1’は必須ではないが、格子面の保護と透過光の波面を劣化させないためにはあった方が好ましい。
媒質1および2は、屈折率が異なる媒質でともに複屈折性をもっていても良いが、一方の媒質が複屈折性を示し、他方の媒質が等方性媒質であっても良いし、また両方の媒質とも等方性媒質で屈折率が異なる組合せでも良い。
格子の作製法は、透明性の基板1上に媒質1を形成する。形成法は、媒質1の膜を基板に貼り付ける、あるいは媒質1をスピンコートなどで塗布する、あるいは真空蒸着、スパッタリングなどの物理製膜法で形成する。
次に、媒質2の上にフォトレジスト層をスピンコートなどにより形成する。フォトレジストに格子パターンを露光して現像を行うと、媒質1上に回折格子のパターンが形成される。この上にAl,Crなどの金属層を真空蒸着、スパッタリング法などにより形成する。
次に、リフトオフ法により、フォトレジストパターンとその上の金属層を取り除く。その結果残った金属パターンが以後のドライエッチングのマスクとなる。
次に、イオンビームエッチング、反応性イオン(ビーム)エッチングあるいはプラズマエッチングなどのドライエッチング装置に入れて金属パターンをマスクにエッチングする。このとき、基板はイオン(ビーム)、プラズマ等を形成するエッチング装置の対向電極に対して傾けて設置してエッチングすることが大きな特徴である。基板をエッチングの電極に対して傾けて設置することにより、エッチングは電極面に垂直方向に進行することになる。その結果、基板に対して斜めに傾斜した凹凸形状の矩形格子が媒質1に形成される。エッチング後の格子は、媒質1の凹凸部を等方性の媒質2で充填し、その上に透明性基板1’がかぶせられる。
以上のとおり、矩形格子が基板に対して斜めに形成されているので、基板に垂直に入射する光に対しブラッグ回折させることができる。その結果、光走査用の光束分割用回折光学素子への入射光、出射光に対して回折光学素子を垂直に設定することができるので、スペース効率の良いコンパクトな光束分割用回折光学素子を構成することができる。
図46に別の実施例を示す。
図中、符号7が回折光学素子である。ガラス、プラスチックなどの透光性の基板1上に屈折率の異なる媒質1と媒質2が交互に周期的に配列され、かつ両媒質の境界は基板1に対し垂直となっている。形状としては矩形形状である。
周期構造の上側は、保護のための透光性基板1’が装荷されている。基板1’は必須ではないが、格子面の保護と透過光の波面を劣化させないためにあった方が好ましい。
媒質1および2は、屈折率が異なる媒質でともに複屈折性をもっていても良いが、一方の媒質が複屈折性を示し、他方の媒質が等方性媒質であっても良いし、また両方の媒質とも等方性媒質で屈折率が異なる組合せでも良い。
回折光学素子7は、周期構造の境界面が基板面に垂直なので、高回折効率となるブラッグ回折は、入射光および回折角が「入射角=回折角」のときに生じる。このため、図46に示すように入射光に対して回折光学素子の格子面を斜めにして用いることにより、高回折効率となるブラッグ回折とすることができる。
図46の回折光学素子を光走査光学系の光束分割素子として用いる場合は、図48に示したように回折光学素子2枚を斜めに配置した構成となる。
図46に示す回折光学素子は、図45に示した例と同様の方法でも作製することができるが、以下、これとは別の作製方法について説明する。
Si、ガラス等の基板に垂直矩形形状の母型をドライエッチング等で形成し、透明基板に光硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を塗布し、上記母型を押し当てながら光照射するか加熱することにより樹脂を硬化させ、母型を離形させて母型形状を樹脂に転写する。転写形成された格子は、媒質1の凹凸部を等方性の媒質2で充填し、その上に透明性基板1’がかぶせられる。
このように母型によるプラスチック成型で素子ができるので、大量生産、低コスト化など、大きなメリットを得ることができる。
図46に示した回折光学素子において、格子を構成する媒質1として配向フィルムを用いる。配向フィルムは、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムを一方向に延伸させ、フィルム面内に屈折率の異方性を形成したフィルムである。この配向フィルムを透明性の基板1上に貼り付ける。配向フィルムをフォトリソグラフィ、ドライエッチングにより垂直矩形形状の回折格子を形成する。この格子の凹凸部を等方性の媒質2で充填し、その上に透明性基板1’がかぶせられる。このとき、等方性媒質2の屈折率は、延伸した配向フィルムの複屈折に起因する延伸方向とそれに直交する方向の2つの屈折率のどちらかに略等しくする。このように等方性媒質2の屈折率を設定することにより、2つの媒体間で屈折率の等しい方向に振動する偏光に対しては回折が起きず、これと面直交する方向に振動する偏光に対しては回折する偏光性回折光学素子を実現することができる。
本実施例の回折光学素子を光走査光学系の光束分割素子として用いる場合は、図46に示した回折光学素子2枚を斜めに配置した構成となる。また、光束分割用回折光学素子に入射するレーザ光の偏光方向を水平面からおよそ45°方向の斜め偏光にして回折光学素子で発生する分割光である0次光と1次回折光の光強度のバランスを適当なものにする。
本実施例によれば、偏光選択性を持つ回折光学素子が安価な延伸フィルムを用いて実現でき、低コストの光束分割用回折光学素子を実現することができる。
次に、別の回折光学素子の実施例について、図47を参照しながら説明する。
この回折光学素子は、透明基板上に擬似正弦状の凹凸形状を持った回折格子である。凹凸の深さは、格子ピッチより深くなっている。このような格子は、斜入射光について「入射角=回折角」でかつ格子深さが適正な値のときに高回折効率を示す(理論値は、正弦状格子深さが格子ピッチの1.75倍のとき、回折効率が95.9%)。
このような格子の作製は、透明基板上にフォトレジストを塗布して、これに二光束干渉による干渉縞を露光して現像する。露光量を制御することにより、適正な格子深さをもつ擬似正弦状回折格子を作製することができる。このフォトレジスト格子を最終的な光束分割素子として使用して良いが、別の方法でフォトレジスト格子からNi電鋳により金型を作成し、フォトポリマーによる形状転写で回折格子を大量に複製する方法もある。
また、上記正弦状の格子形状だけでなく、1周期の格子形状が三角波状(二等辺三角形状)その他任意の中心対称な偶関数形状の格子が「入射角=回折角」でかつ格子深さが適正な値のときに80〜90%以上の高回折効率を示す。
また、図47に示す回折光学素子を光走査光学系の光束分割用回折光学素子として用いる場合は、図48に示した回折光学素子2枚を斜めに配置した構成となる。
この格子の作成は、二光束干渉露光、電子ビーム描画、あるいはレーザビーム描画等によりレジスト上に偶関数格子形状を作成し、これを母型としてニッケル電鋳により金型を作成する。この金型を用いて、射出成形あるいはフォトポリマー法による素子転写作成を行う。
このように金型によるプラスチック成型で素子ができるので、大量生産、低コスト化など、大きなメリットを得ることができる。
次に、本発明にかかる光走査装置の別の実施の形態について、先に説明した実施の形態と異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、光束分割用回折光学素子として偏光依存性のないホログラムを用いる。
図49は、本発明にかかる光走査装置の走査光学系のうち、光偏向器(回転多面鏡)以前の光学系の副走査断面図である。
回転多面鏡は、分割ビームで交互走査するために、回転方向に反射面がずれて設定されている。
光源である半導体レーザからの出射ビームは、コリメートレンズで平行光となり、第1回折光学素子に入射する。第1回折光学素子は、入射光がそのまま直進する0次透過光と図の下方に回折する+1次回折光がおよそ等強度で生じるようにする。実際には、+1次回折光強度の方がわずかに大きいことが望ましい。0次透過光は、直進し、+1次回折光は、第1回折光学素子と等格子ピッチを持つ第2回折光学素子に入射して再回折された後に、0次透過光と平行なビームとなって出射する。これら2つのビームは、各々シリンドリカルレンズで副走査方向に集光されて、0次透過光は上段の多面鏡7aに、+1次回折/再回折光は下段の多面鏡7bに入射する。第2回折光学素子は、入射する+1次回折光をほとんど全光量再回折させることが望ましく、その結果、分割された2つのビームは、損失が少なくかつ光強度をほぼ等しくさせることができる。
このとき、第1回折光学素子と第2回折光学素子は、偏光依存性のないホログラムであることが好ましい。ここで、偏光依存性のあるホログラムとは、回折光の回折効率が入射光の偏光方向により大きく変わるものを指し、通常、直交するP,S偏光に対しての回折効率の比が少なくとも10:1以上あるホログラムをいう。これに対して、P,S偏光に対する回折効率の比が10:1以下1:1までのものを実質的に偏光依存性のないホログラムということができる。
このような実質的に偏光依存性のないホログラムを光束分割素子に用いた場合、入射光の偏光方向が所定の方向からずれて入射した場合でも回折効率の変動が少なくなり、入射光の偏光方向の設定誤差に影響されにくい光束分割用回折光学素子を得ることができる。特に、P,S偏光に対する回折効率の比が1:1である完全な偏光無依存のホログラムを用いると、分割効率が入射光の偏光方向の設定誤差に全く影響されなくなる。
光源である半導体レーザの偏光方向はレーザ活性層と平行な方向に振動しているが、光源を設置するときの設置誤差から偏光方向が所定の方向からずれてしまうことがある。
ここで、第1回折光学素子と第2回折光学素子に偏光依存性があると、光束分割後の2つの出射ビームの強度が等しくなくなってしまう。しかし、第1回折光学素子と第2回折光学素子に偏光依存性がないと、光源の偏光方向が所定の方向からずれていても出射する2つのビームの光強度は変化せず、光源の設置誤差に影響されない光束分割素子とすることができる。
また、偏光依存性のないホログラムとして、体積位相型のホログラムを用いることが好ましい。体積位相型ホログラムを用いることで、第1回折光学素子が0次透過光と+1次回折光のみを発生し、他の回折光が生じないようにして光利用効率を高めることができること、および、第2回折光学素子において入射する+1次回折光をほとんど90〜100%近くの効率で再回折させ得ることが可能となるからである。
以上説明したように、偏光依存性がない体積型位相ホログラムが光束分割用回折光学素子に用いられることが好ましい。
偏光依存性のない体積位相型ホログラムを実現させる材料として、フォトポリマーがある。フォトポリマーは、材料中に比較的屈折率の高いモノマーと屈折率の低いバインダー樹脂が分散されている。これに干渉縞を露光することで、干渉縞の明部ではモノマーが光重合し始め、干渉縞の暗部のモノマーも明部に移動してきて重合を続け、結果として干渉縞の明部は、モノマーが重合した屈折率の高いポリマー、暗部は屈折率の低いバインダー樹脂が中心となって分布する。その結果、屈折率の周期的変調構造が形成されて体積位相型のホログラムとなる。また、屈折率の高いポリマーおよびバインダー樹脂は、光学的に等方性なので、できたホログラムに偏光依存性は生じない。
図50,51に、使用したフォトポリマーの回折特性を示す。
図50は、第1回折光学素子に用いられるホログラムの特性で、Kogelnikの結合波理論から計算した+1次回折光の入射角−回折効率特性である。この例は、回折角(空気中)41.9°、格子ピッチ0.98μm、格子の屈折率変調全幅0.03、格子膜厚10.5μmであるフォトポリマーホログラムに波長655nmの光を垂直入射を中心に入射角を±20°変化させたときの+1次回折光の回折効率特性である。図より垂直入射のとき+1次光は51%の回折効率となり、このときの0次透過光は49%である。
図51は、第2回折光学素子に用いられるホログラムの特性である。この例では回折角(空気中)41.9°、格子ピッチ0.98μm、格子の屈折率変調全幅0.03、格子膜厚20μmであるフォトポリマーホログラムに波長655nmの光を垂直入射を中心に入射角を±20°変化させたときの−1次回折光の回折効率特性である。図より垂直入射のとき−1次光は99.7%の回折効率となり、第1回折光学素子の+1次回折光をほとんど再回折させることができる。
図52は、図51に示したホログラムの回折効率の波長依存性を示す図であり、0.65μm(655nm)を基準波長としたとき、波長変化が±0.1μm(100nm)生じたときの−1次回折光の回折効率である。図より半導体レーザで生じ得る±0.01μm(10nm)の波長変化に対する回折効率の変化は小さく、実用上十分な波長特性を持っている。
また、本実施例による回折光学素子は、回折格子構造の形成が干渉露光と全面露光のみにより実施できるので、予め記録しておいた回折格子原版をマスターにして、原版とフォトポリマーによる記録素子を略密着させて露光するだけで大量複製が可能である。したがって、高効率の回折光学素子が低コストで大量に作製可能である。
次に、偏向依存性のない回折光学素子を用いた別の例について、図53を参照しながら説明する。
光源である半導体レーザからの出射ビームはコリメートレンズで平行光となり、第1回折光学素子に入射する。図54は、第1回折光学素子と第2回折光学素子の拡大図である。第1回折光学素子は、入射光がそのまま直進する0次透過光と図面の下方に回折する+1次回折光がおよそ等強度で生じるようにする。0次透過光は直進し、+1次回折光は角度を持って第2回折光学素子に入射する。第2回折光学素子に入射した第1回折光学素子の0次透過光は、ブラッグ回折され、図面の上方に偏向される。
一方、第1回折光学素子の+1次回折光は、第2回折光学素子では回折を受けずにそのまま直進する。この直進光は、第1と等格子ピッチを持つ第3回折光学素子に入射し、再回折されてコリメートレンズ出射光と平行な方向に出射される。また、第2回折光学素子で図面の上方に回折された光は、第2回折光学素子と等格子ピッチを持つ第4回折光学素子に入射して再回折され、コリメートレンズ出射光と平行な方向に出射される。これら2つのビームは、各々シリンドリカルレンズで副走査方向に集光されて、第4回折光学素子からの出射光は上段の多面鏡7aに、第3回折光学素子からの出射光は下段の多面鏡7bに入射する。
第3回折光学素子および第4回折光学素子は、入射する光をほとんど全光量再回折させることが望ましく、その結果、分割された2つのビームは損失が少なくかつ光強度をほぼ等しくさせることができる。
図55は、図53,54に示した第1回折光学素子の光学特性の例を示す図であり、使用したフォトポリマーの回折特性で、第1回折光学素子に用いられるホログラムの特性をKogelnikの結合波理論から計算した+1次回折光の入射角−回折効率特性である。この例は、回折角(空気中)20°、格子ピッチ1.92μm、格子の屈折率変調全幅0.024、格子膜厚13μmであるフォトポリマーホログラムに波長655nmの光を垂直入射を中心に入射角を±40°変化させたときの+1次回折光の回折効率特性である。図より垂直入射のとき+1次光は48%の回折効率となり、このときの0次透過光は52%である。
図56は、第2回折光学素子に用いられるホログラムの光学特性の例を示す図であり、回折角(空気中)20°、格子ピッチ1.92μm、格子の屈折率変調全幅0.024、格子膜厚25μmであるフォトポリマーホログラムに波長655nmの光を垂直入射を中心に入射角を±40°変化させたときの−1次回折光の回折効率特性である。図より垂直入射のとき−1次光は99%の回折効率となり、第1回折光学素子の+1次回折光をほとんど再回折させることができる。
また、図56より、第2回折光学素子への入射角が20°のとき、−1次回折光の回折効率はほとんど0である。体積位相型ホログラムの角度選択性により、垂直入射から大きく離れた入射角20°ではほとんど回折光は生じなく、入射光はほとんど直進透過する。この特性によれば、第1回折光学素子から20°の回折角で回折された+1次回折光は第2回折光学素子に入射するとほとんど損失なく、直進透過して第3回折光学素子へ入射することになる。
このように体積位相型のホログラムの効率角度特性を利用して、損失のない効率的な光束分割が可能となる。
図57は、図56に示したホログラムの回折効率の波長依存性を示す図であり、0.65μm(655nm)を基準波長としたとき波長変化が±0.1μm(100nm)生じたときの−1次回折光の回折効率である。図より半導体レーザで生じ得る±0.01μm(10nm)の波長変化に対する回折効率の変化は非常に小さく、実用上十分な波長特性を持っている。
図53に示した構成によるメリットとして、光束分割用回折光学素子は、光束分割後の多面鏡までの光路長を上段、下段とも等しく設定することができる。このことにより、多面鏡以前の光学系が上段、下段とも同じにすることができ、上段、下段とも集光特性の揃った走査ビームを得ることができる。
以上説明した実施例は、1つの光源からの1ビームを光束分割して2ビームにする場合であったが、本願はこれに限定されず、図58に示すように、複数の光源からの複数のビームを光束分割してビーム数を2倍にする場合にも適用できる。
図58は、2つの光源を用いた場合の例を示していて、A図は側面図(副走査断面図)、B図は平面図(主走査断面図)である。半導体レーザ1、2は、その出射方向が互いに平行な方向からそれぞれ1〜2°内向きに設定されて、多面鏡反射面7a,7bで両ビームが交差するように出射する。各半導体レーザ出射後にコリメートレンズが配置され、半導体レーザ1にはコリメートレンズ1が対応して配置され、半導体レーザ2にはコリメートレンズ2が対応して配置される。
半導体レーザ1および2の出射光は、それぞれ積層された第1回折光学素子および第2回折光学素子に入射する。
第1回折光学素子で回折されたビームは、光路の後段に配置された第3回折光学素子に入射し、第2回折光学素子で回折されたビームは、光路の後段に配置された第4回折光学素子に入射する。
第3回折光学素子に入射した2ビームは再回折され、シリンドリカルレンズ1により副走査方向に集束して下段の多面鏡7bに交差して入射する。一方、第4回折光学素子に入射した2ビームは、再回折され、シリンドリカルレンズ2により副走査方向に集束して上段の多面鏡7aに交差して入射する。
上段、下段でそれぞれ反射偏向された交差2ビームは、各多面鏡に対応した走査光学系により別個の走査面(感光体)を2ビーム同時走査する。
以上、2ビームを例として光束分割について説明したが、ビーム数はこれに限定されず、3ビーム以上を同時走査する光分割にも本願を適用することができる。
このように複数ビームを光束分割することで、感光体の1走査を2ビーム以上で同時に走査できるので、高速の光走査記録が可能となる。
なお、図58に示した構成で半導体レーザ1と2を設置するときに、組付け誤差によりレーザの活性層が平行にならずに、結果として出射ビームの偏光方向が完全に平行でない場合が発生する。このように、2つの半導体レーザの偏光方向が互いに平行でない場合、半導体レーザからのビームが偏光依存性のあるホログラムで構成される光束分割用回折光学素子に入射すると、半導体レーザ1と2の光束分割効率が異なってしまう。
これに対して、光束分割用回折光学素子に偏光依存性のないホログラムを適用すると、例え組付け誤差により2つの半導体レーザの偏光方向が平行でなくても半導体レーザ1と2の光束分割効率は変わらず、安定した光束分割を実現することができる。
次に、本発明にかかる光走査装置の別の実施の形態について、先に説明した実施の形態と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態にかかる光走査装置は、光源と光束分割用光学素子との光路上に、光源からの光束の偏光状態を変換するλ/4板を配置して、光源からの光束の偏光面回転ずれ(光源設置ずれ)による影響を受けにくくしたものである。
図59は、LD光源111と、λ/4板113と、2段からなる多面反射鏡114を有してなる本実施の形態にかかる光走査装置の光学配置を示す図である。図60は、λ/4板113に入射した光源111からの光束の偏光状態を示す図である。なお、図59には、光束分割用光学素子と多面反射鏡114以降の光学素子は図示を省略してある。
LD光源111からの出射光束112aが入射されるλ/4板113は、図59に示すように、その遅相軸が多面反射鏡114により光が偏向される平面に対して45°傾けて配置されている。光束112aの振動面が、ポリゴンによる偏向面(主走査方向)113aに平行な場合または垂直な場合にのみ、λ/4板113を透過した光束の偏向状態は円偏向となる。この場合、偏光面113aに平行な偏光成分と垂直な偏光成分は等しく、偏光面の回転ずれによる問題は生じない。
一方、LD光源111からの光束の偏光振動面が傾いた場合、図60に示すようにλ/4板113を通過した光の振動状態は、楕円偏光となり、しかも、その長軸は、波長板の遅相軸に平行となる。このため、主走査方向113bに平行な偏光(電界振幅)成分の最大値122と、副走査方向113cの偏光(電界振幅)成分の最大値123は等しい値であり、両成分の強度比は1となる。
LD光源111からの光束の偏向面がどのような角度であっても、楕円偏光の長軸は主走査方向113bに対して45°(もしくは−45°)となり、必ず主走査方向と副走査方向の電界振幅(の最大値)は同じ値となる。
図61は、光走査装置の多面反射鏡以前の光学系の副走査断面図である。ここで、符号133a、133bは、シリンドリカルレンズを示す。
LD光源111からの発散光をコリメートレンズ131で平行光束とし、λ/4板113に入射させる。λ/4板113は、図59,60に示した通りの配置とする。
したがって、λ/4板113を透過した光ビーム112bは、図61の紙面奥行き方向(主走査方向)の電界振幅最大値と紙面に平行な方向(副走査方向)の電界振幅最大値が同じ値となる。
光束分割用回折光学素子は、第1回折光学素子132aと第2回折光学素子132bからなる。第1回折光学素子132aは、偏光依存性を有し、その回折効率はほぼ100%となる回折格子(ホログラム)を使用する。また、第2回折光学素子132bは、偏光依存性は無いが回折効率がほぼ100%となる回折格子を使用する。光ビーム112bの主走査方向と副走査方向の電界振幅最大値が同じであるため、両方向の光強度成分も同じとなる。したがって、第1回折光学素子132aを透過した光112cと回折光112dの強度はほぼ等しくなる。さらに、第2回折光学素子132bの回折効率もほぼ100%であるため、光112cと第2回折光学素子132bで回折された光112eの光強度もほぼ同じとなる。
ここで、回折光学素子は、記録材料としてフォトポリマーやフォトレジストなどを用いて構成することができる。また、表面レリーフホログラムであっても、回折光112dの回折角次第では回折効率を90%、もしくはこれ以上程度の高い効率を得ることも可能である。さらには、液晶層とポリマー層で構成される高分子分散型液晶グラム(HPDLC)を用いても構成することができる。
第1回折光学素子132aおよび第2回折光学素子132bの回折効率をそれぞれη1、η2とする(η1<100%、η2<100%)。第1回折光学素子132aは、主走査方向(紙面垂直方向)に振動面を有する偏光に対してη1の効率で回折する。
なお、第1回折光学素子と第2回折光学素子での光の吸収は無視できるものとする。また、紙面に平行な偏光は、第1回折光学素子を100%の透過率で透過するものとする。
λ/4板113によって紙面に垂直な光強度成分をIm、紙面に平行な成分をIsとすると、第1回折光学素子132aで回折された光112dの強度はIm×η1であり、第2回折光学素子132bで回折された光112eの強度はIm×η1×η2となる。一方、第1回折光学素子132aで透過される光の強度は、Is+Im(1−η1)。
したがって、光112c,112eが同じ強度となるには、
Im×η1×η2=Is+Im(1−η1)
の関係が成立する必要があり、
Is/Im=η1×η2+η1−1
となる。ここで、η1=η2=80%とすると、Is/Im=0.44となる。
以下、Is/Im=0.44を達成する具体的な構成について述べる。
LD光の波長を650nmとし、偏光面は主走査方向に平行な直線偏光で光強度を1とする。λ/4板113は、この波長において4分の1の位相差がある。λ/4板113の遅相軸を図59に示した角度のとり方に従って64°にする。このときλ/4板113を透過した光の偏光状態の軌跡は、図63に示すようになる。図63の紙面横方向は主走査方向に対応しており、主走査方向(図63の紙面横方向)の電界振幅は0.796、副走査方向(図63の紙面縦方向)の電界振幅は0.529である。強度比は、
Is/Im=(Es/Em)2=(0.529/0.796)2=0.44
とすることができる。
ポリゴンミラー上段に到達する光の光強度は、
5292+0.7962(1−0.8)=0.407
である。一方、下段のポリゴンミラーに到達するパワーは、
0.7962×0.8×0.8=0.406
である。したがって、回折効率が100%でない回折光学素子を用いたとしても、λ/4板113の回転調整により、光束分割された2つの光束の強度比を1:1にすることが可能である。
次に、図64,65を参照しながら、光走査装置の別の実施例について説明する。ここで、図64は多面反射鏡以前の光学系の斜視図であり、図65は多面反射鏡以前の副走査断面図である。
光源は、2つのLD161a、161bからなるLDユニット161であり、両LDのレーザ出射光は所定の角度で交差するように配置されている。λ/4板113、第1回折光学素子132a、第2回折光学素子132b、シリンドリカルレンズ162a,162b、2段のポリゴンミラー114の順に配置されている。なお、図64には図示されていないが、図65に示すようにLDユニット161とλ/4板113の光路中にコリメートレンズ131が配置されている。
LD161a、161bからの出射光の偏光方向が副走査方向(図65で紙面内上下方向)もしくは主走査方向の場合にはλ/4板113によって円偏光となり、主走査方向と副走査方向の両成分の強度比が1:1となるビーム(全2本)が第1回折光学素子132aに入射される。したがって、第1回折光学素子および第2回折光学素子を用いる場合には、前述の通り2段ポリゴンミラー114に入射する分割された光束の強度比は、1:1になる。また、LD161a、161bからの出射光のいずれも同じ量だけ偏光面が回転ずれを起こしていると、前述のとおりλ/4板113の回転調整によって2段ポリゴンミラー114に入射する分割された光束の強度比は、1:1になる。
一般的には、図64に示す2つのLD161a,161bからの光の振動面は、非平行であり、かつ、どちらの振動面も主走査方向(または副走査方向)に一致しないことは、十分に考えられる。いま、LD161a,161bの偏光面がそれぞれ副走査方向からθa、θb傾いているものとする。
LD161aからの出射光のうち、上段および下段のポリゴンミラー114に到達する光強度をそれぞれIau、Ialとし、同様にLD161bからの出射光で上段及び下段ポリゴンミラー114に到達する光強度をIbu、Iblとする。なお、回折効率η1=η2=100%とし、λ/4板の遅相軸は45°で固定とする。
表1は、θ1,θ2を5通りに変化させたときの2段ポリゴンミラー114に到達する4つのビーム強度を数値計算した結果である。θa=5deg,θb=−5degであっても、4ビームのうち光強度比は、最大1.02と2%程度の強度差に抑えることができることを示している。
次に、回折効率が100%以外の具体例について、以下に示す。なお、前述の具体例と同様、η1=η2=80%とする。
θa=5deg,θb=−5degの場合、4つのビームのうち、最も強度比が1から外れた値は、0.517/0.309=1.67である。
この構成では、これら強度比の補正をすることができないため、装置の組付け完了後にこの強度比が1:1となるように、LD161a,161bの注入電流値に逆補正した量とすることで、4つのビーム比を1:1:1:1にすることが可能である。
次に、光走査装置の別の実施例について、図66を参照しながら説明する。
図66において、λ/4板113の遅相軸は、主走査方向から45°(もしくは−45°)の方位に設置される。また、第1回折光学素子132aからの透過光路中に光強度調整素子としてNDフィルタを配置する。
前述の表1に示したように、λ/4板113の遅相軸を45°に設定すれば、波長板に入射されるLD光の偏光方位に関わらず分割された2つの光束の強度比は1となる。この遅相軸をそのままにして、回折効率が100%未満の第1回折光学素子と第2回折光学素子を用いると、強度比が1以外の値になる。しかし、この値はLD光の偏光方位に関わらず一定の値となる。また、下段のポリゴンミラーに導かれる光束は、2つの回折光学素子を経るため、上段用の光束に比べて光強度が下がる。
したがって、第1回折光学素子132aからの透過光路中に光強度を減衰させる素子を追加することにより、対応する上下の光束強度比をほぼ1にすることが可能になる。
なお、たとえば、光強度調整素子を偏光板とすることで、偏光板の回転調整により容易に所望の強度比に収めることが可能となる。
図67は、これまで説明した多面反射鏡以前の実施例に対して、多面反射鏡以降に結像光学系を配置した光走査装置の実施の形態を示す光学配置図である。
光走査装置は、2つのLDからなるLDユニット、λ/4板、第1回折光学素子と第2回折光学素子とから構成される光束分割用回折光学素子と、2段のポリゴンミラーと、結像光学系で構成される。
ここで、結像光学系には、少なくともfθレンズが含まれる。なお、図67は、結像光学系として、fθレンズのほかに補正用レンズとしての折り返しミラーが配置されていることを示している。
2段のポリゴンミラーは、上段と下段の偏光反射面が互いに回転方向に45°ずれているため、LDユニットからの2つのビームは、ある時間帯は光走査1のライン、残りの時間帯は光走査2のラインの光書込みを行うことができる。
λ/4板、第1回折光学素子と第2回折光学素子は、これまでに説明した配置例のいずれかの組合せを採用する。このような構成により、LD光の偏光面が主走査方向(もしくは副走査方向)から回転ずれを起こしたとしても、2段のポリゴンミラーに光束分割された全4ビームの強度比を、ほぼ1にすることができる。
なお、これまで説明したように、光走査装置は、2段ポリゴンミラー前の前段の光学系と、前段の光学系に対応する2段ポリゴンミラー以降の後段の光学系とから構成されていて、前段の光学系は光源とλ/4板と第1回折光学素子と第2回折光学素子とシリンドリカルレンズからなり、後段の光学系は2段ポリゴンミラーとfθレンズを含む結像光学系とからなる。
ここで、光走査装置を対応する前段の光学系と後段の光学系の2組で構成することで、光源からのビームを光走査4箇所に書き込むことができる。4個所の光走査を、4色(シアン、イエロー、マゼンダ、黒)に対応する感光体とすることで、後述する本発明にかかる画像形成装置を構築することができる。
次に、本発明にかかる画像形成装置について説明する。
図18は、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態を示す中央断面図であり、カラー画像の光束出力に有利なタンデム型のレーザプリンタである。
画像形成装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、イエロー(Y)に対応する走査光学系を備えた光走査装置20、各走査光学系に対応する感光体1X(X:Y,M,C,K、以下同じ。)、搬送ベルト80、定着装置30、図示しない転写紙を備えた給紙カセット(図示省略)、排紙トレイ(図示省略)を有してなる。
搬送ベルト80の上方には、光走査装置20によって露光され静電潜像が形成される像担持体として円筒状に形成された光導電性の感光体が、搬送ベルト80の移動方向の上流側からイエロー用(1Y)、マゼンタ用(1M)、シアン用(1C)、ブラック用(1K)の順に配設されている。感光体1Xの径は、全て同一である。
感光体1Xの周囲には、帯電手段2X、現像手段4X、転写ローラ6X、クリーニング装置5Xなどの電子写真法(電子写真プロセス)にしたがうプロセス部材が順に配設されている。なお、帯電手段としては、コロナチャージャを用いることもできる。
搬送ベルト80の周囲には、感光体1Xよりも転写紙搬送経路の上流側にレジストローラ(図示省略)、ベルト帯電チャージャ(図示省略)が配設され、また、感光体1Xよりも転写紙搬送経路の下流側にベルト分離チャージャ(図示省略)、除電チャージャ(図示省略)、クリーニング装置(図示省略)などが順に配設されている。
このように、画像形成装置は、感光体1Y、1M、1C、1Kを各色毎に設定された被走査面とし、それぞれに対して走査光学系が1対1の対応関係で設けられている。ただし、光偏光器は各色で共有する。
光走査装置20は、感光体1Xに光書込を行う光書込装置であって、電子写真プロセスの露光プロセスを実行するもので、帯電手段2Xで均一に帯電された感光体1Xの表面を走査して静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、いわゆるネガ潜像であって画像部が露光されている。この静電潜像は、現像手段4Xにより反転現像され、感光体1X上にトナー画像が形成される。
なお、光走査装置として、前述の本発明にかかる光走査装置が用いられている。
給紙カセットに収納された転写紙の最上位の1枚が図示しない給紙コロにより給紙され、給紙された転写紙は、その先端部がレジストローラに捕らえられる。レジストローラは、感光体1X上のトナー画像が転写位置へ移動するタイミングに合わせて、転写紙を転写部へ送り込む。送り込まれた転写紙は、転写部においてトナー像と重ね合わせられ転写ローラの作用により、トナー画像を静電転写される。
トナー画像を転写された転写紙は定着装置30へ送られ、定着装置30においてトナー画像を定着され、図示しない搬送路を通り、排紙ローラ(図示省略)により排紙トレイ上に排出される。トナー画像が転写された後の感光体1Xの表面は、クリーニング装置5Xによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
このように構成されたタンデム型画像形成装置において、例えば複数色モード(フルカラーモード)選択時であれば、各感光体に対して、対応する色の画像信号に応じて図示しない露光ユニットの露光により、各々の感光体上に静電潜像が形成される。これらの静電潜像は、各々の対応する色トナーで現像されてトナー像となり、搬送ベルト80上に静電的に吸着されて、搬送される転写紙上に順次転写されることにより、重ね合わせられる。そして、定着装置30によりカラー画像として定着され、転写紙は排紙トレイに排紙される。
また、単色モード選択時であれば、ある色S(Y,M,C,Kのいずれか)として、他の色の感光体及びプロセス部材は非動作状態となる。ここで、感光体1Sに対してのみ、露光ユニットの露光により静電潜像が形成され、ある色Sのトナーで現像されてトナー像となり、搬送ベルト80上に静電的に吸着されて、搬送される転写紙上に転写される。そして、定着装置30により単色画像として定着され、転写紙は排紙トレイに排紙される。
この画像形成装置に前述の本発明にかかる光走査装置を適用すれば、光源からの光束の分離手段として回折光学素子が用いられているため、分離手段にミラーを用いた場合に比べてビームスポット径の劣化を低減することができ、より高品質な出力画像を得ることができる。
従来の光走査装置の実施の形態を示す光学配置図である。 本発明にかかる光走査装置が備える光束分割用回折光学素子の要部を示す、光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 上記光束分割用回折光学素子の別の例を示す図である。 本発明にかかる光走査装置の光偏向器以前の光学系の別の例を示す図である。 図3の光束分割用回折光学素子の拡大図である。 回折光学素子の断面図である。 相分離による回折格子の形成過程を示す図であり、二光束干渉露光系を用いて組成物中に露光を行う様子の説明図である。 図7に示す露光により干渉縞の明部で始まる重合性モノマーあるいはプレポリマーの光重合反応の様子の説明図である。 図8の光重合反応の結果の説明図である。 プラスチックレンズの光学特性の温度依存性の説明図である。 回折レンズの光学特性の温度依存性の説明図である。 プラスチックレンズと回折レンズを組み合わせた光学系の光学特性の説明図である。 プラスチックレンズと回折レンズを組み合わせた光学系の例を示す光学配置図である。 本発明にかかる光走査装置の光偏向器以前の光学系の別の例を示す図である。 光走査装置の上下段のポリゴンミラーによる光走査の時間的ずれの説明図である。 光走査装置が黒画像とマゼンダ画像を書き込む場合の光源の強度変調の説明図である。 上記光源の強度変調を光源ごとに異ならせる例を示す図である。 本発明にかかる画像形成装置の実施の形態を示す中央断面図である。 回折光学素子の別の例を示す図である。 回折光学素子のさらに別の例を示す図である。 光束分割用回折光学素子の別の例を示す図である。 図21の光束分割用回折光学素子を用いた補正光学系の展開図である。 回折光学素子の作成方法を示す図である。 複数の光源からの複数のビームを光束分割する場合の例を示す図である。 光源からの出射光のコリメート調整の方法について示す図である。 光束分割用回折光学素子のさらに別の例を示す図である。 図26の光束分割用回折光学素子として用いる矩形凹凸型の回折格子の例を示す図である。 回折型レンズとしての軸対象回折型コリメートレンズの例を示す図である。 図28の軸対象回折型コリメートレンズを用いた走査光学系の例を示す図である。 図28の軸対象回折型コリメートレンズを用いた走査光学系の別の例を示す図である。 回折型レンズとしての楕円回折型コリメート/シリンドリカルレンズの例を示す図である。 図31の楕円回折型コリメート/シリンドリカルレンズを用いた走査光学系の例を示す図である。 図31の楕円回折型コリメート/シリンドリカルレンズを用いた走査光学系の別の例を示す図である。 回折型レンズとしての直線状回折型シリンドリカルレンズの例を示す図である。 図34の直線状回折型シリンドリカルレンズを用いた走査光学系の例を示す図である。 図34の直線状回折型シリンドリカルレンズを用いた走査光学系の別の例を示す図である。 干渉露光による回折格子の形成過程の出発点となる素子の断面図である。 図37の素子の形成過程を示す図である。 別の形成方法による回折格子の形成過程の出発点となる素子の断面図である。 図39の素子の形成過程を示す図である。 図39,40による形成方法により形成された素子を光束分割用回折光学素子に適用する場合の例を示す図である。 ブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折格子の例を示す図である。 段階状のブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折格子の例を示す図である。 透明媒体の深さが一定で、矩形凹凸型の格子形状をした回折格子の例を示す図である。 図37乃至44の回折格子を光束分割用回折素子として適用した場合の例を示す図である。 図37乃至44の回折格子を光束分割用回折素子として適用した場合の別の例を示す図である。 回折光学素子の別の例を示す図である。 本発明にかかる光走査装置の別の実施の形態を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の実施の形態を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 図49の光走査装置が備える光束分割用回折光学素子を構成する第1回折光学素子の光学特定を示す図である。 図49の光走査装置が備える光束分割用回折光学素子を構成する第2回折光学素子の光学特定を示す図である。 図51の第2回折光学素子の回折効率の波長依存性を示す図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 図53の光走査装置が備える光束分割用回折光学素子の拡大図である。 図54の第1回折光学素子の光学特定を示す図である。 図54の第2回折光学素子の光学特定を示す図である。 図54の第2回折光学素子の回折効率の波長依存性を示す図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の斜視図である。 図59に示す光走査装置を構成するλ/4板に入射した光源からの光束の偏向状態を示す図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 上記λ/4板を透過した光の偏向状態の軌跡を示す図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の斜視図である。 図64に示す光走査装置の光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光偏向器以前の光学系の副走査断面図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光学配置図である。 本発明にかかる光走査装置のさらに別の例を示す光学配置図である。 図68に示す光走査装置が備えるλ/4の要部を示す副走査断面図である。
符号の説明
1,1´ 光源としての半導体レーザ
2 ベース
3,3´ カップリングレンズ
4 ハーフミラープリズム
5a,5b シリンドリカルレンズ
6 防音ガラス
7 光偏向器
8a,8b 第1走査レンズ
9a,9b 光路折り曲げミラー
10a,10b 第2走査レンズ
11a,11b 感光体
12 アパーチャ
KB 光束分割用回折光学素子
KB1 第1分割用回折光学素子
KB2 第2分割用回折光学素子
KK 回折光学素子

Claims (44)

  1. 光源と、複数の偏向反射面を副走査方向に備えた光偏向器と、上記光源からの光束を上記複数の偏向反射面のそれぞれに入射する複数の光束に分割する光束分割用回折光学素子と、
    上記光偏向器により偏向される光束を被走査面上に集光する走査光学系とを備え、
    上記光偏向器に入射する複数の光束がそれぞれ異なる被走査面上を走査する光走査装置において、
    上記光束分割用回折光学素子は、上記光源からの光束を第1の分割光束および第2の分割光束に分割し、
    上記第1の分割光束が当該光束分割用回折光学素子で副走査方向の一の方向に偏向され、
    上記第2の分割光束が当該光束分割用回折光学素子で副走査方向の他の方向に偏向され、
    上記第1の分割光束を、副走査方向の上記他の方向に偏向する第1回折光学素子と、
    上記第2の分割光束を、副走査方向の上記一の方向に偏向する第2回折光学素子と、
    を備えることを特徴とする光走査装置。
  2. 光束分割用回折光学素子の格子ピッチと回折光学素子の格子ピッチは同一である請求項1記載の光走査装置。
  3. 光源から射出される光束は、直線偏光であり、かつ、副走査方向または主走査方向に振動する偏光面を持つ請求項1または2に記載の光走査装置。
  4. 光源からの光束は光束分割用回折光学素子により2つの光束に分離され、分離される2つの光束はそれぞれ副走査方向について互いに逆方向に偏向される請求項1記載の光走査装置。
  5. 光束分割用回折光学素子は第1分割用回折光学素子と第2分割用回折光学素子が入射光軸方向に積層配置されて構成され、上記第1分割用回折光学素子と第2分割用回折光学素子は互いに直交する偏光を回折し、この回折されたそれぞれの光束は副走査方向について逆方向に偏向される請求項4記載の光走査装置。
  6. 光束分割用回折光学素子は単一の回折光学素子から成り、±n次回折光(n:自然数)として回折される光束のうち等しい次数nの2つの光束が副走査方向において逆方向に偏向される請求項4記載の光走査装置。
  7. 回折次数n=1である±1次回折光として回折される光束が副走査方向において逆方向に偏向される請求項6記載の光走査装置。
  8. 光束分割用回折光学素子は矩形凹凸型の回折格子である請求項6または7記載の光走査装置。
  9. 光束分割用回折光学素子に入射する光束は直線偏光であり、その振動方向が偏向反射面の回転軸方向に略一致している請求項6乃至8のいずれかに記載の光走査装置。
  10. 光束分割用回折光学素子で分離された2つの光束のうち、一方の光束を偏向する第1回折光学素子と他方の光束を偏向する第2回折光学素子を備え、上記第1回折光学素子と第2回折光学素子のそれぞれは上記光束分割用回折光学素子からの光束を当該光束分割用回折光学素子で偏向される方向に対し副走査方向において逆方向に偏向する請求項4または5記載の光走査装置。
  11. 偏向された各々の光束は再度、レンズ作用のある回折光学素子により偏向されて、互いに主光線が平行な光束として異なる段の反射鏡に入射する請求項4,5,10のいずれかに記載の光走査装置。
  12. レンズ作用のある回折光学素子は、副走査方向にのみ集光作用のあるシリンドリカルレンズ機能を持った回折光学素子である請求項11記載の光走査装置。
  13. 第1回折光学素子と第2回折光学素子は、少なくとも主走査方向と副走査方向のいずれかの方向に光学的温度補正機能を有する請求項6記載の光走査装置。
  14. 光源からの光束を平行光束にする軸対称回折型コリメートレンズと、副走査方向に集光パワーを持ちシリンドリカルレンズ作用を持つ回折光学素子と、を備え、
    上記軸対称回折型コリメートレンズにより平行化されて光束分割用回折光学素子により分割される光束は、上記回折光学素子の作用を受けてから各々別の多面鏡に集束、入射する請求項13記載の光走査装置。
  15. 主走査方向の光学的温度補正を軸対称回折型コリメートレンズで行い、副走査方向の光学的温度補正を軸対称回折型コリメートレンズとシリンドリカルレンズ作用を持つ回折光学素子の協働で行う請求項14記載の光走査装置。
  16. 光束分割用回折光学素子により偏向された光束は、その後偏向されることなく光偏向器の偏向反射面に入射する請求項1,4,5のいずれかに記載の光走査装置。
  17. 光源から射出される光束は直線偏光であり、当該直線偏光を光軸方向を中心に回転させる波長板を上記光源と光束分割用回折光学素子との光路上に備えた請求項1乃至8のいずれかに記載の光走査装置。
  18. 光束分割用回折光学素子は体積位相型回折光学素子であり、光束分割を行うための回折光がブラッグ回折を利用している請求項1乃至9のいずれかに記載の光走査装置。
  19. 光束分割用回折光学素子には、少なくとも誘電異方性を有する非重合性液晶と重合性モノマーあるいはプレポリマーと光重合開始剤とからなる組成物を一対の透明基板間に保持し、上記組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したポリマー分散液晶型の回折格子を用いた請求項9記載の光走査装置。
  20. 光束分割用回折光学素子には、偏光依存性を有しないフォトポリマー材料を用いた請求項9記載の光走査装置。
  21. 光束分割用回折光学素子は、レンズ作用のある回折格子から構成される請求項1,2,3,4,5,10,13,16,17,18,19,20のいずれかに記載の光走査装置。
  22. 光束分割用回折光学素子のレンズ作用は、光源と光束分割用回折光学素子の間に配置されたカップリングレンズと組合わさって、光源からの出射光束をコリメートして平行光化するものである請求項21記載の光走査装置。
  23. 光束分割用回折光学素子は、少なくとも主走査方向または副走査方向のいずれかの方向に光学的温度補正機能を有する請求項1,2,3,4,5,10,13,16,17,18,19,20のいずれかに記載の光走査装置。
  24. 光束分割用回折光学素子のレンズ作用で主走査方向の光学的温度補正を行い、光束分割用回折光学素子のレンズ作用と再度光束を偏向する回折光学素子のレンズ作用とが協働して副走査方向の光学的温度補正を行う請求項11,12,13,21,22,23のいずれかに記載の光走査装置。
  25. 光源を複数備え、
    光束分割用回折光学素子へは複数の光源からの光束が同時に入射し、各被走査面上を複数の光束で同時に走査する請求項1乃至24のいずれかに記載の光走査装置。
  26. 光束分割用回折光学素子は、入射光束数と等しい数の領域に分割されていて、各領域は入射する光束に対してレンズ作用が個別に最適化されている請求項25記載の光走査装置。
  27. 光源とカップリングレンズと光束分割用回折光学素子は、光源からの光束がカップリングレンズと光束分割用回折光学素子を経て平行光束となるように、予め光走査装置の外部でコリメート調整して配設されている請求項22記載の光走査装置。
  28. 光束分割用回折光学素子は、少なくとも誘電異方性を有する光重合性液晶の配向方向が周期的に異なる周期構造を持つ光重合性液晶回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  29. 光重合性液晶回折光学素子は、光重合性液晶の配向方向が周期的に異なる周期構造の境界面が基板面に対し垂直であり、かつ格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子である請求項28記載の光走査装置。
  30. 光束分割用回折光学素子は、格子周期配列方向にブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  31. 光束分割用回折光学素子は、格子周期配列方向に階段状ブレーズ型の断面形状を持つ表面レリーフ型の回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  32. 光束分割用回折光学素子は、同じ形状を持つ格子単位が複数配列された周期的構造から成り、各格子単位内において更に微細な周期構造をもち、その微細周期配列方向の断面が矩形状の複数の凹凸が配列され、その矩形形状のDuty factorが格子単位内で漸増していく周期構造を持った回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  33. 光束分割用回折光学素子は、矩形凹凸状の第1媒質を屈折率が異なる第2媒質で充填した構造をもつ回折格子であって、矩形凹凸形状が斜傾した矩形形状であり、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  34. 光束分割用回折光学素子は、矩形凹凸状の第1媒質を屈折率が異なる第2媒質で充填した構造をもつ回折格子であって、格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  35. 第1媒質として配向フィルムを用いた請求項33または34記載の光走査装置。
  36. 光束分割用回折光学素子は、1周期の凹凸形状が偶関数となる表面凹凸型周期構造を持つ回折格子であって、凹凸の深さが格子ピッチより大きく、かつ格子面が入射光に対して傾いて配置され、入射光をブラッグ回折させる回折光学素子である請求項1乃至27のいずれかに記載の光走査装置。
  37. 2枚の回折光学素子が光源からの入射光に対し共に傾いて配置されている請求項29,34,35,36のいずれかに記載の光走査装置。
  38. 光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のないホログラムで構成されている請求項1,2,3,4,5,10,13,16,17,18,19,20,23のいずれかに記載の光走査装置。
  39. 偏光依存性のないホログラムには、体積位相型のホログラムが用いられている請求項38記載の光走査装置。
  40. 体積位相型ホログラムには、フォトポリマー材料が用いられている請求項39記載の光走査装置。
  41. 光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のない第1回折光学素子と第2回折光学素子とから構成され、
    光源からの光束の入射側には+1次回折光と0次透過光を略同一強度で生じさせる第1回折光学素子が配置され、光束の出射側には第1回折光学素子の+1次回折光を再び回折させて上記0次透過光と略平行に出射させる第2回折光学素子が配置されている請求項38乃至40のいずれかに記載の光走査装置。
  42. 光束分割用回折光学素子は、偏光依存性のない第1回折光学素子、第2回折光学素子、第3回折光学素子、第4回折光学素子から構成され、
    上記第1回折光学素子は、光源からの光束が入射して+1次回折光と0次透過光とを略同一強度で生じさせ、
    上記第2回折光学素子は、第1回折光学素子により生じた+1次回折光を直進透過させると共に、第1回折光学素子により生じた0次透過光を−1次回折光として回折し、
    上記第3回折光学素子は、第1回折光学素子からの+1次回折光を再回折し、
    上記第4回折光学素子は、第2回折光学素子からの−1次回折光を再回折し、
    上記第3回折光学素子から出射する再回折光と第4回折光学素子から出射する再回折光とは互いに略平行である請求項38乃至40のいずれかに記載の光走査装置。
  43. 光源を複数備え、
    光束分割用回折光学素子へは複数の光源からの光束が同時に入射し、各被走査面上を複数の光束で同時に走査する請求項38乃至42のいずれかに記載の光走査装置。
  44. 光書込装置から像担持体に光書込みを行い、電子写真法により、この像担持体上に静電潜像を形成する装置であって、
    光書込装置は、請求項1乃至43のいずれかに記載の光走査装置であることを特徴とする画像形成装置。
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