JP5057093B2 - 組立カムシャフト、カムロブおよび組立カムシャフトの組立方法 - Google Patents

組立カムシャフト、カムロブおよび組立カムシャフトの組立方法 Download PDF

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Description

本発明は、組立カムシャフト、この組立カムシャフトに使用されるカムロブ、さらに、このカムロブをシャフトに焼嵌めにより組付ける組立カムシャフトの製造方法に関する。
従来、カムロブ(カム要素)を耐摩耗性に優れた材料で形成し、このカムロブをシャフトに焼嵌めにより組付けられる組立カムシャフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような組立カムシャフトでは、焼嵌め時にカムロブを熱処理温度(焼戻し温度)にまで加熱するとなましの発生により硬度が低下し、カムロブ外周部の硬度が規定値に満たなくなるので、焼嵌め時のカムロブの温度を熱処理温度(焼戻し温度)以下に抑える必要がある。焼嵌め時のカムロブの温度を熱処理温度(焼戻し温度)以下に抑えた場合、カムロブの軸穴を十分に拡径させることができないことから、十分な締め代を確保することができない。
焼嵌め時に十分な締め代を確保できない場合、カムロブの軸穴およびシャフトの軸の寸法公差を厳格に管理する必要が生じる。また、外形が非円形のカムロブを加熱した場合、径方向の伸びが周方向で異なるため、拡径されたカムロブの軸穴は真円にならない。したがって、カムロブの軸穴およびシャフトの軸の寸法公差に加え、カムロブの軸穴とシャフトの軸との組付け精度(位置決め精度)を高める必要が生じ、製造コストが増大してしまう。さらに、カムロブの軸穴にシャフトを挿入している時にカムロブがシャフトに接触してしまうと、カムロブからシャフトへ熱が急激に移動して軸穴の縮径が開始されてしまうことから、カムロブを肉厚にしてカムロブの熱容量を確保する必要がある。これは、カムロブの重量化を招く結果となる。
特開2004−19742号公報
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、要求される性能を確保しつつ、焼嵌め時の締め代を確保することが可能な組立カムシャフト、カムロブおよび組立カムシャフトの組立方法を提供することを課題としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明の組立カムシャフトは、焼嵌めによりカムロブがシャフトに結合される組立カムシャフトであって、前記カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、前記カムロブは、焼嵌め時内周面から加熱され、前記低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、前記低熱伝導層よりも外側部分が前記熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明のカムロブは、焼嵌めによりシャフトに結合される組立カムシャフトのカムロブであって、内周面と外周面との間に、基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、焼嵌め時に内周面から加熱され、前記低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、前記低熱伝導層よりも外側部分が前記熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明の組立カムシャフトの製造方法は、焼嵌めによりカムロブをシャフトに結合させることで得られる組立カムシャフトの製造方法であって、前記カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層を形成しておいて、焼嵌め時に前記カムロブ内周面から加熱し、前記カムロブの前記低熱伝導層よりも内側部分を熱処理温度よりも高い温度に昇温させるとともに前記カムロブの前記低熱伝導層よりも外側部分を前記熱処理温度よりも低い温度に昇温させて前記カムロブの軸穴を拡径させることを特徴とする。
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
なお、以下の各項において、(1)〜(7)項の各々が、請求項1〜(7)の各々に相当する。
(1)焼嵌めによりカムロブがシャフトに結合される組立カムシャフトであって、カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、カムロブは、焼嵌め時内周面から加熱され、低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、低熱伝導層よりも外側部分が熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とする組立カムシャフト。
本項に記載の組立カムシャフトによれば、焼嵌め時にカムロブの低熱伝導層よりも内側部分(以下、内周部という)を熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温させても、カムロブの低熱伝導層よりも外側部分(以下、外周部という)が熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温することを防ぐことができる。
これにより、カムロブの外周部の硬度を確保しつつ焼嵌め時に十分な締め代を確保することが可能になり、カムロブの軸穴とシャフトの軸との組付け精度(位置決め精度)が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。また、焼嵌め時に十分な締め代を確保することができることから、意図しないタイミングでカムロブがシャフトに接触してしまうことを防ぐことができる。したがって、従来のように、熱容量を確保するためにカムロブを大型化させる必要がなく、カムロブを軽量化することができる。さらに、焼嵌め時の締め代をより大きく設定することができることから、シャフトに対するカムロブのねじりトルクを増大させることが可能になり、組立カムシャフトをより排気量が大きいエンジンに対応させることができる。加えて、従来、非円形のカムロブを加熱して熱膨張させた場合、カムロブの軸穴が非円形に変形していたが、本項の態様では、低熱伝導層及び内周部を円環状に形成することで、焼嵌め時にカムロブの軸穴を真円に近い形で拡径させることが可能になり、カムロブの軸穴およびシャフトの軸の寸法公差が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。
(2)低熱伝導層は、カムロブの基材よりも熱伝導率が低い材料により構成される(1)の組立カムシャフト。
本項に記載の組立カムシャフトによれば、カムロブの基材よりも熱伝導率が低い材料により低熱伝導層が構成される。
本項の態様において、カムロブの基材を従来のスチール系焼結材により構成し、低熱伝導層を、例えばチタン合金により構成することができる。また、低熱伝導層は、軸穴と同心の円環状に形成することができる。さらに、低熱伝導層は、内側の輪郭を軸穴の同心円とし、外側の輪郭を、外周部の軸直角方向の厚さが外周の全周に亘って一定となるように非円形に形成してもよい。
(3)低熱伝導層は、複数の熱絞り部をカムロブの内周面を取り囲むように配設することにより構成される(1)の組立カムシャフト。
本項に記載の組立カムシャフトによれば、複数の熱絞り部をカムロブの内周面を取り囲むように配設することで低熱伝導層が構成される。
本項の態様において、軸方向へ貫通させた複数の貫通孔をカムロブの軸穴の回りに円環状に配設することで、隣り合う各貫通孔間にそれぞれ熱絞り部を形成することができる。
(4)焼嵌めによりシャフトに結合される組立カムシャフトのカムロブであって、内周面と外周面との間に、基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、焼嵌め時に内周面から加熱され、低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、低熱伝導層よりも外側部分が熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とするカムロブ。
本項に記載のカムロブによれば、焼嵌め時に内周を熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温させても、外周が熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温することを防ぐことができる。
これにより、外周部の硬度を確保しつつ焼嵌め時に十分な締め代を確保することが可能になり、軸穴とシャフトの軸との組付け精度(位置決め精度)が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。また、焼嵌め時に十分な締め代を確保することができることから、意図しないタイミングでカムロブがシャフトに接触してしまうことを防ぐことができる。したがって、従来のように、熱容量を確保するためにカムロブを大型化させる必要がなく、カムロブを軽量化することができる。さらに、焼嵌め時の締め代をより大きく設定することができることから、シャフトに対するねじりトルクを増大させることが可能になり、組立カムシャフトをより排気量が大きいエンジンに対応させることができる。加えて、従来、非円形のカムロブを加熱して熱膨張させた場合、カムロブの軸穴が非円形に変形していたが、本項の態様では、低熱伝導層及び内周部を円環状に形成することで、焼嵌め時に軸穴を真円に近い形で拡径させることが可能になり、軸穴およびシャフトの軸の寸法公差が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。
(5)低熱伝導層は、基材よりも熱伝導率が低い材料により構成される(4)のカムロブ。
本項に記載のカムロブによれば、基材よりも熱伝導率が低い材料により低熱伝導層が構成される。
本項の態様において、基材を従来のスチール系焼結材により構成し、低熱伝導層を、例えばチタン合金により構成することができる。また、低熱伝導層は、軸穴と同心の円環状に形成することができる。さらに、低熱伝導層は、内側の輪郭を軸穴の同心円とし、外側の輪郭を、外周部の軸直角方向の厚さが外周の全周に亘って一定となるように非円形に形成してもよい。
(6)低熱伝導層は、複数の熱絞り部を内周面を取り囲むように配設することにより構成される(4)のカムロブ。
本項に記載のカムロブによれば、内周面を取り囲むように複数の熱絞り部を配設することで低熱伝導層が構成される。
本項の態様において、軸方向へ貫通させた複数の貫通孔を軸穴の回りに円環状に配設することで、隣り合う各貫通孔間にそれぞれ熱絞り部を形成することができる。
(7)焼嵌めによりカムロブをシャフトに結合させることで得られる組立カムシャフトの製造方法であって、カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層を形成しておいて、焼嵌め時にカムロブ内周面から加熱し、カムロブの低熱伝導層よりも内側部分を熱処理温度よりも高い温度に昇温させるとともにカムロブの低熱伝導層よりも外側部分を熱処理温度よりも低い温度に昇温させてカムロブの軸穴を拡径させることを特徴とする組立カムシャフトの製造方法。
本項に記載の組立カムシャフトの製造方法によれば、カムロブの内周面が加熱されるので、カムロブの内周を熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温させても、カムロブの外周が熱処理温度(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温することを防ぐことができる。
これにより、カムロブの外周部の硬度を確保しつつ焼嵌め時に十分な締め代を確保することが可能になり、カムロブの軸穴とシャフトの軸との組付け精度(位置決め精度)が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。また、焼嵌め時に十分な締め代を確保することができることから、意図しないタイミングでカムロブがシャフトに接触してしまうことを防ぐことができる。したがって、従来のように、熱容量を確保するためにカムロブを大型化させる必要がなく、カムロブを軽量化することができる。さらに、焼嵌め時の締め代をより大きく設定することができることから、シャフトに対するカムロブのねじりトルクを増大させることが可能になり、組立カムシャフトをより排気量が大きいエンジンに対応させることができる。加えて、従来、非円形のカムロブを加熱して熱膨張させた場合、カムロブの軸穴が非円形に変形していたが、本項の態様では、低熱伝導層及び内周部を円環状に形成することで、焼嵌め時にカムロブの軸穴を真円に近い形で拡径させることが可能になり、カムロブの軸穴およびシャフトの軸の寸法公差が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。
本項の態様では、例えば、カムロブの軸穴にプラグヒータを挿入させることで、カムロブ内周面から加熱することができる。
(8)加熱されたカムロブの軸穴にシャフトを挿入した後、カムロブの内周部へ向けてノズルから噴射した冷媒によりカムロブを急冷却させて軸穴を縮径させる(7)の組立カムシャフトの製造方法。
本項に記載の組立カムシャフトの製造方法によれば、カムロブの外周部をカムロブの熱処理温度(焼戻し温度)にまで昇温することを防ぐことができ、カムロブの外周部の硬度を確保することで組立カムシャフトの性能を確保することができる
要求される性能を確保しつつ、焼嵌め時の締め代を確保することが可能な組立カムシャフト、カムロブおよび組立カムシャフトの組立方法を提供することができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図9に基いて説明する。
第1実施形態の組立カムシャフトは、カムロブ1がシャフト2に焼嵌めにより組付けられる。カムロブ1は、図1(a)に示される平面視において外周面1bの輪郭が非円形(略卵形)に形成され、軸方向(図1(b)における上下方向)に所定のカム厚を有する。また、カムロブ1は、焼嵌め時にシャフト2が挿入される軸穴3を有する。該軸穴3は、平面視において真円に形成され、内壁面が当該カムロブ1の内周面1aをなす。
図1に示されるように、カムロブ1は、内周面1aと外周面1bとの間に低熱伝導層4を有する。該低熱伝導層4は、円環状に形成されて軸穴3に対して同心に配設される。なお、第1実施形態では、カムロブ1の低熱伝導層4よりも内側部分を内周部5、外側部分を外周部6とする。また、内周部5および外周部6は、スチール系焼結材からなる基材により構成される。そして、低熱伝導層4は、基材よりも熱伝導率が低い例えばチタン合金等からなる焼結材により構成される。
次に、上記カムロブ1の製造方法を説明する。なお、カムロブ1は、ダイ7とパンチ8とからなる焼結型により成形される。なお、ダイ7は、ダイ本体7aと該ダイ本体7aに対して上下方向へ移動可能な第1スライド型9および第2スライド型10により構成され、また、パンチ8は、第1スライド型9に相対する第1パンチ型11および第2スライド型10に相対する第2パンチ型12により構成される。
まず、図2に示されるように、第1スライド型9および第2スライド型10をダイ本体7aに対して位置決めし、ダイ7に、カムロブ1の内周部5および外周部6を成形するための第1成形部13を形成する。この時、第1パンチ型11および第2パンチ型12は上昇端に位置している。次に、第1成形部13に基材(スチール系焼結材)を充填した後、図3に示されるように、第1成形部13に充填された基材を、第1スライド型9と第1パンチ型11とにより加圧して予備圧縮する。
次に、図4に示されるように、第1パンチ型11を上昇端に戻すと共に第2スライド型10を下降させ、ダイ本体7a内の予備圧縮されたカムロブ1の内周部5と外周部6との間に、カムロブ1の低熱伝導層4を成形するための第2成形部14を形成する。この第2成形部14に基材よりも熱伝導率が低い焼結材(第1実施形態では、チタン合金)を充填した後、図5に示されるように、第2成形部14に充填された焼結材を第2スライド型10と第2パンチ型12とにより加圧して圧縮し、これと同時に、予備圧縮された基材(内周部5および外周部6)を第1スライド型9と第1パンチ型11とにより加圧して本圧縮する。そして、第1パンチ型11および第2パンチ型を上昇させてダイ7からカムロブ1を型抜きすることにより、内周部5と外周部6との間に低熱伝導層4が形成されたカムロブ1を得ることができる。
次に、上記カムロブ1をシャフト2に焼嵌めにより組付ける方法を説明する。なお、図6〜図9においてカムロブ1の下方に示されるのは、当該カムロブ1の内周面1aから外周面1bにかけての温度分布であり、特に、軸心からノーズ先端(図6〜9における右側端部)に向けての温度分布を示す。
図6に示されるように、焼嵌めの加熱前の状態においては、カムロブ1の温度は均一(常温)である。次に、図7に示されるように、軸穴3にプラグヒータ15を挿入してカムロブ1を内周面1aから加熱する。この状態で所定時間が経過すると、図7に示されるように、内周部5の温度がカムロブ1の熱処理温度T(焼戻し温度)を超え、外周部6の温度が熱処理温度Tよりも低い状態になる。
この状態で、図8に示されるように、カムロブ1の軸穴3にシャフト2を挿入し、相対するカムロブ1とシャフト2とを位置決めした後、図9に示されるように、カムロブ1の内周部1a(あるいは内周面1a)へ向けてノズル16から噴射した冷媒(例えば、エア)によりカムロブ1を急冷却する。これにより、カムロブ1の外周部1bをカムロブ1の熱処理温度T(焼戻し温度)にまで昇温させることなく、カムロブ1の軸穴3を縮径させてカムロブ1をシャフト2に結合させることができる。
第1実施形態では以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、カムロブ1の内周面1aと外周面1bとの間に、カムロブ1の基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層4を形成し、焼嵌め時にカムロブ1の内周面1aを加熱したので、焼嵌め時にカムロブ1の内周部5を熱処理温度T(焼戻し温度)よりも高い温度に昇温させても、カムロブ1の外周部1bが熱処理温度Tよりも高い温度に昇温することを防ぐことができる。
これにより、カムロブ1の外周部6の硬度を確保しつつ、焼嵌め時には軸穴3を十分に拡径させて締め代を確保することが可能になり、カムロブ1の軸穴3とシャフト2の軸との組付け精度(位置決め精度)が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。
また、焼嵌め時に十分な締め代を確保することができることから、意図しないタイミングでカムロブ1がシャフト2に接触してしまうことを防ぐことができる。したがって、従来のように、熱容量を確保するためにカムロブ1を大型化させる必要がなく、カムロブ1を軽量化することができる。
さらに、焼嵌め時の締め代をより大きく設定することができることから、シャフト2に対するカムロブ1のねじりトルクを増大させることが可能になり、組立カムシャフトをより排気量が大きいエンジンに対応させることができる。
加えて、従来、外形が非円形であるカムロブ1を加熱して熱膨張させた場合、カムロブ1の軸穴3が非円形に変形していたが、第1実施形態によれば、低熱伝導層4内側の内周部5を円環状に形成することで、焼嵌め時にはカムロブ1の軸穴3を真円に近い形で拡径させることが可能になり、カムロブ1の軸穴3およびシャフト2の軸の寸法公差が緩和されて製造コストの増大を抑制することができる。
なお、第1実施形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
図10に示されるように、軸方向へ貫通させた複数の貫通孔22をカムロブ21の軸穴3の回りに円環状に配設し、隣り合う各貫通孔22間にそれぞれ熱絞り部23を形成することにより、内周面5と外周面6との間に低熱伝導層4を形成してもよい。この場合も、上述した実施形態と同等の作用効果を得ることができる。なお、貫通孔22は、図10に示される矩形であってもよいし、あるいは、円形とすることができる。
図11に示されるように、低熱伝導層4を非円形に形成してカムロブ25を構成してもよい。この場合、カムロブ25を加熱したときのL1の伸びとL2の伸びとが同一となるように、低熱伝導層4の材料および低熱伝導層4、内周部5、外周部6の径方向長さを設定することで、軸穴3を真円により近い形で拡径させることができる。
図12および図13に示されるように、低熱伝導層4を必要に応じてより内周面1a側へ配設してカムロブ26、27を形成してもよい。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図14に基づき説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同一あるいは相当する構成には同一の名称および符号を付与し、重複する説明を省略する。
カムロブ31は、内周部(軸穴3が形成されたカムロブ31の内側部分)に低熱伝導層4を有する。該低熱伝導層4は、スチール系焼結材からなる基材よりも熱伝導率が低い例えばチタン合金等からなる焼結材により構成される。
次に、上記カムロブ31をシャフトに焼嵌めにより組付ける方法を説明する。
まず、カムロブ31全体を加熱して、カムロブ31の温度が当該カムロブ31の熱処理温度T(焼戻し温度)以下になるように、言い換えると、カムロブ31の温度が当該カムロブの熱処理温度T(焼戻し温度)を超えないように、ヒータを制御しながらカムロブ31を昇温させる。この状態で、カムロブ31の軸穴3にシャフトを挿入し、カムロブ31とシャフトとを位置決めさせる。さらに、この状態で、カムロブ31を急冷却してカムロブ31の軸穴3を縮径させる。これにより、カムロブ31をシャフトに結合させることができる。
第2実施形態では以下の効果を奏する。
第2実施形態によれば、カムロブ31の内周部を該カムロブ31の基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層4により形成し、焼嵌め時にカムロブ31全体を焼戻し温度以下に加熱したので、カムロブ31の軸穴3にシャフトを挿入している時にカムロブ31の内周部(第2実施形態では低熱伝導層4)がシャフトに接触した場合であっても、カムロブ31からシャフトへ熱が急激に移動することで軸穴3の縮径が開始されるのを防ぐことができる。
これにより、カムロブ31の熱容量を低減することが可能になり、その結果、従来と比較してカムロブ31ひいては該カムロブ31が組付けられた組立カムシャフトを軽量化することができる。また、同一の熱容量でカムブロック31を比較した場合、低熱伝導層4を持たない従来のカムロブよりも焼嵌め時にカムロブ31の温度が低下し難いことから、従来の製造方法と比較してカムロブ31のシャフトへの組付け性を向上させることができる。さらに、焼嵌め時におけるカムロブ31の温度を当該カムロブ31の熱処理温度T(焼戻し温度)以下に止めたので、カムロブ31の外周部6(外周面31bを含む低熱伝導層4よりも外側部分)の硬度を確保することができる。
第1実施形態のカムロブを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。 第1実施形態のカムロブの製造工程の説明図で、ダイに基材が充填された状態を示す図である。 第1実施形態のカムロブの製造工程の説明図で、ダイに充填された基材が予備圧縮される状態を示す図である。 第1実施形態のカムロブの製造工程の説明図で、ダイに基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導材が充填された状態を示す図である。 第1実施形態のカムロブの製造工程の説明図で、ダイに充填された低熱伝導材と予備圧縮された基材とが本圧縮される状態を示す図である。 第1実施形態の組立カムシャフトの製造工程の説明図で、シャフトへ組付けられる前のカムロブを示す図である。 第1実施形態の組立カムシャフトの製造工程の説明図で、軸穴に挿入されたプラグヒータによりカムロブの内周面が加熱される状態を示す図である。 第1実施形態の組立カムシャフトの製造工程の説明図で、加熱されたカムロブの軸穴にシャフトが挿入された状態を示す図である。 第1実施形態の組立カムシャフトの製造工程の説明図で、ノズルから噴射される冷媒によりカムロブが冷却される状態を示す図である。 第1実施形態の他の形態の説明図で、軸穴の回りに熱絞り部を配設することで低熱伝導層が形成されたカムロブの平面図である。 第1実施形態の他の形態の説明図で、低熱伝導層が非円形に形成されたカムロブの平面図である。 第1実施形態の他の形態の説明図で、低熱伝導層がより内周面側に配設されたカムロブを示し、特に、低熱伝導層が低熱伝導材により構成される態様を示す平面図である。 第1実施形態の他の実施の説明図で、低熱伝導層がより内周面側に配設されたカムロブを示し、特に、熱絞り部を配設することで低熱伝導層が形成される態様を示す平面図である。 第2実施形態のカムロブを示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
1 カムロブ、1a 内周面、1b 外周面、2 シャフト、3 軸穴、4 低熱伝導層、5 内周部(低熱伝導層よりも内側部分)、6 外周部(低熱伝導層よりも外側部分)

Claims (7)

  1. 焼嵌めによりカムロブがシャフトに結合される組立カムシャフトであって、
    前記カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、
    前記カムロブは、焼嵌め時内周面から加熱され、前記低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、前記低熱伝導層よりも外側部分が前記熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とする組立カムシャフト。
  2. 前記低熱伝導層は、前記カムロブの基材よりも熱伝導率が低い材料により構成されることを特徴とする請求項1に記載の組立カムシャフト。
  3. 前記低熱伝導層は、複数の熱絞り部を前記カムロブの内周面を取り囲むように配設することにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の組立カムシャフト。
  4. 焼嵌めによりシャフトに結合される組立カムシャフトのカムロブであって、
    内周面と外周面との間に、基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層が形成され、焼嵌め時に内周面から加熱され、前記低熱伝導層よりも内側部分が熱処理温度よりも高い温度に昇温され、前記低熱伝導層よりも外側部分が前記熱処理温度よりも低い温度に昇温されることを特徴とするカムロブ。
  5. 前記低熱伝導層は、基材よりも熱伝導率が低い材料により構成されることを特徴とする請求項4に記載のカムロブ。
  6. 前記低熱伝導層は、複数の熱絞り部を内周面を取り囲むように配設することにより構成されることを特徴とする請求項4に記載のカムロブ。
  7. 焼嵌めによりカムロブをシャフトに結合させることで得られる組立カムシャフトの製造方法であって、
    前記カムロブの内周面と外周面との間に、該カムロブの基材よりも熱伝導率が低い低熱伝導層を形成しておいて、
    焼嵌め時に前記カムロブ内周面から加熱し、前記カムロブの前記低熱伝導層よりも内側部分を熱処理温度よりも高い温度に昇温させるとともに前記カムロブの前記低熱伝導層よりも外側部分を前記熱処理温度よりも低い温度に昇温させて前記カムロブの軸穴を拡径させることを特徴とする組立カムシャフトの製造方法。
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