JP5053794B2 - ディーゼルエンジン用燃料油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジン用燃料油組成物に関する。更に詳しくは、溶解性に優れ、添加される種々の添加剤を容易に溶解せしめ得るディーゼルエンジン用燃料油組成物に関する。
軽油などの燃料油を冬季などの低温環境下で使用する場合、燃料油中に含有しているノルマルパラフィンに起因するワックス分が析出する場合がある。析出したワックスは、ディーゼル車の燃料ラインなどに設置されているフィルターを閉塞させるため、エンジンへの燃料供給を阻害し、正常な運転を妨げる可能性がある。そのため、冬季に使用される燃料油は、灯油留分の配合や、低温流動性向上剤の添加により、日本工業規格(JIS K 2204)に定められたガイドラインに従って、低温性能の確保を行っている。
しかしながら、近年、ディーゼルエンジンからの排出ガス改善を目的とし、軽油の硫黄分を10質量ppm以下まで低減させたいわゆるサルファーフリー化により、使用する基材を深度脱硫した軽油、もしくは灯油に限定されることとなった。このため、重質なノルマルパラフィンを希釈する効果が大きい、言い換えると芳香族分を多く含む分解軽油などを添加できなくなり、軽油の低温流動性能を確保することが難しくなってきている。
このような状況下、軽油の低温性能を確保するための効果的な方法として、灯油留分の配合量を更に増加させる方法が考えられる。しかし、冬季は灯油の需要が高いため、低温性能の確保を目的に灯油留分を使用することは好ましい方法ではなく、軽油の低温性能を確保するためには、軽油への低温流動性向上剤の添加が必須となっている状況にある。
このように軽油への添加が必須となってきている低温流動性向上剤は、その主成分は一般的に分子量が数千から1万程度の高分子ポリマーであるため、軽油の平均的な分子量で
ある300〜400程度と比較すると非常に大きく、添加量が極微量であっても、燃料油への溶解性が懸念される。そのため、製品規格によっては、IP387に代表されるような燃料油のフィルタビリティ試験により、添加剤の燃料油への溶解具合の確認を義務付ける場合も見られる。
従来、軽油では、上記フィルタビリティ試験によって低温流動性向上剤に代表されるような各種添加剤が問題なく燃料油に溶解していることを確認し、製品を提供してきたが、前述したように、軽油のサルファーフリー化により、軽油自身の溶解性が低下してきている事実、及び、ディーゼルエンジンの排出ガス削減に大きな寄与をもたらした、コモンレールシステムに代表される高圧噴射装置では、燃料油中の夾雑物へのセンシティビティが高まっていることから、燃料ライン中の各種フィルターの目開きを細かくして対応しており、各種添加剤を添加した軽油のフィルタビリティに対する懸念が再び高まっている。
また、今後はこれまで導入されている低温流動性向上剤や、潤滑性向上剤に加え、清浄剤などの新たな軽油用添加剤が導入される可能性も否定できないことから、ディーゼルエンジン用燃料油組成物の溶解性の維持、改善は重要な品質要素といえる。
ところで、ディーゼルエンジン用燃料油組成物の溶解性に関しては、溶解度パラメーターを規定したものが報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、非芳香族系溶剤の溶解性に関して、カウリブタノール価を規定したものが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1:特開2000−192058号公報
特許文献2:特開平7−228897号公報
しかし、特許文献1では、硫黄分、窒素分、密度、溶解度パラメーターを調整することにより、潤滑性向上剤が適切な効果を発揮することを謳っているが、通常、ディーゼルエンジン用燃料油組成物は非常に多くの物質から成り立っているものであり、単物質の溶解度パラメーターの使用でさえ経験則の上に成り立っていることを考えると、多成分混合系であるディーゼルエンジン用燃料油組成物の、物性のみより導かれる溶解度パラメーターの信頼性には疑問が残る。
また、特許文献2では、カウリブタノール価、ナフテン含有量、アニリン点を所定の値になるように直留灯軽油留分を水素化精製することで溶解性に優れた非芳香族系溶剤を得ることができると謳っている。こちらは、実際に樹脂(カウリブタノール樹脂)を溶解することにより、非芳香族系溶剤の溶解する力(溶解力)を評価しているので、非芳香族系溶剤の高分子ポリマーに対する溶解力の実勢を示していると考えられるが、対象が非芳香族系溶剤の溶解力であって、燃料油の溶解力については一切触れられていない。
本発明の目的は、上記のような技術的な背景から、溶解性に優れることにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物に添加される種々の添加剤を容易に溶解せしめ得て、良好な燃料油のフィルタビリティ性能を確保することができるディーゼルエンジン用燃料油組成物を提供することにある。
本発明者らは、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を様々な角度から分析し、鋭意検討を行った結果、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を一定の性状にすれば、フィルタビリティに寄与する良好な燃料油の溶解性を確保できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下に示す特徴を有するディーゼルエンジン用燃料油組成物を提供するものである。
(1)10容量%留出温度が180℃〜235℃、90容量%留出温度が326.5〜337.0℃の蒸留性状を有し、硫黄分が10質量ppm以下であり、飽和分が73.8〜80.6容量%で、芳香族分が19.4〜26.2容量%で、パラフィン類が37.3〜44.3容量%で、かつ、カウリブタノール価が26.7〜31.0であることを特徴とするディーゼルエンジン用燃料油組成物。
(2)アニリン点が45〜87℃である上記(1)に記載のディーゼルエンジン用燃料油組成物。
(3)原油を常圧蒸留することにより得られた軽油留分を水素化脱硫する事により得られる上記(2)に記載のディーゼルエンジン用燃料油組成物。
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物は、フィルタビリティに寄与する良好な燃料油の溶解性が確保されており、例えば低温流動性向上剤のような高分子量の添加剤を添加しても、それを確実に溶解せしめて当該燃料油組成物のフィルタビリティに支障を来たさず、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、清浄剤等の種々の添加剤を当該燃料油組成物のフィルタビリティへの支障を来たすことなく添加することができる。
以下、本発明の詳細を記載する。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物の蒸留性状は、10容量%留出温度が180〜235℃、好ましくは183〜235℃、90容量%留出温度が280〜350℃、好ましくは315〜350℃である。
10容量%留出温度が180℃以上であれば、軽油として適切な引火点、動粘度を保つことができ、235℃以下であれば、適度な揮発性を有することから、燃焼室内での空気との混合が促進され、不均一混合燃焼に由来する粒子状物質(PM)等を低減することができる。また、90容量%留出温度が315℃以上であれば、動粘度を適切に保つことができ、350℃以下であれば軽油中の重質成分、特に芳香族分を低いレベルに抑えることができ、燃焼性を良好に保つことができる。
また本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物に含まれる硫黄分は、10質量ppm以下、好ましくは8質量ppm以下である。硫黄分を10質量ppm以下とすることで、エンジンから排出される粒子状物質(PM)の成分であるサルフェートの排出量が少なくなり、排ガス後処理装置の性能に対する影響も小さくなる。
なお、本発明における、蒸留性状はJIS K 2254の常圧法蒸留試験、硫黄分はJIS K 2541の微量電量滴定式酸化法により、それぞれ測定できる。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物の飽和分は、70〜86容量%、好ましくは72〜85容量%、芳香族分は14〜30容量%、好ましくは15〜28容量%である。この芳香族分の内、2環芳香族類含有量は5.0容量%以下、好ましくは3.0容量%以下、3環以上の多環芳香族類の含有量は1.0容量%以下、好ましくは0.5容量%以下であることが好ましい。
芳香族分を14〜30容量%とすることにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物の溶解性を適切に保つことが可能となり、低温時に析出することで、フィルター閉塞の原因となるn−パラフィンの析出開始温度(曇り点)を低いレベルとすることができ、かつ、自動車の燃料系統に使用されるゴムパッキンの膨潤を適度に保つことを可能とし、燃料漏れなどのトラブルを回避できる。
また、飽和分を70〜86容量%、芳香族分を14〜30容量%、特に2環、3環以上の多環芳香族を低レベルに抑えることにより、燃焼時にPM及びNOxの排出量を低減できる。なお、ここでの組成割合は、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法(HPLC)」に基づいて求められる。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物のカウリブタノール価は、20〜50、好ましくは22〜45である。カウリブタノール価が20以上であれば軽油に添加される種々の高分子量の添加剤を確実に溶解せしめ、製油所よりの出荷から、ユーザーの自動車に給油されるまでの各種フィルター、ならびに自動車の燃料系統にある各種フィルターをストレスなく通油させることができ、かつ、添加剤がフィルターでトラップされることもないため、調製初期と同等の品質を使用期間中維持することができる。カウリブタノール価が50以下であれば、軽油の成分中で、特にカウリブタノール価上昇に寄与の大きいナフテン分、芳香族分を前述のような適切な範囲に保つことが可能となるため、燃焼時のPMおよびNOx排出量を低減できる。
前記カウリブタノール価は、炭化水素の相対的溶解力を示すもので、カウリブタノール価が高いほど、樹脂溶解性が高いことを示す。本発明におけるカウリブタノール価の測定法は、ASTM D 1133に準拠し、下記の方法により求めることができる。
すなわち、天然カウリ樹脂とブチルアルコールで調製した標準カウリブタノール溶液20±0.1gを200ミリリットル(以下、「mL」と記す)の三角フラスコにとり、この三角フラスコを25±1℃に保った水溶液に浸す。次に、先ずトルエンをビュレットに採り、上記の三角フラスコ内に滴定する。終点は、フラスコの下に印刷活字を置き、活字の字画が不鮮明になったときとする。同様に、トルエンとn−ヘプタンとの混合液(容量割合でトルエン25:n−ヘプタン75)についても滴定する。そして、カウリブタノール価測定対象油(以下、「試料」と言う)をビュレットにとり、同様の操作で滴定する。
カウリブタノール価は、下記数1の式によって算出する。
《数1》
カウリブタノール価=[〔65(C−B)〕/〔A−B〕] + 40
A:滴定に要したトルエンの量(mL)
B:滴定に要したn−ヘプタン・トルエン混合液の量(mL)
C:滴定に供した試料の量(mL)
なお、前記カウリブタノール価の測定法において、標準カウリブタノール溶液は、トルエンで滴定したときカウリブタノール価が100〜110で、容量割合でトルエン25:ヘプタン75の混合液で滴定したときカウリブタノール価が40になるように予め調整しておく。
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物においては、飽和分の内、パラフィン類が30〜65容量%、好ましくは35〜60容量%であることが好ましい。パラフィン類が30容量%以上であれば、セタン価を適切に保つことが可能となり、ディーゼル燃焼を良好に保つことが可能となるため好ましい。パラフィン類が65容量%以下であれば、燃料組成物中にそれだけ芳香族、ナフテン分などの溶解力に富んだ成分を多く含有することとなり、ディーゼルエンジン用燃料油組成物の溶解力を適切に保つことが可能となるため好ましい。
なお、前記パラフィン類は、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により求めた飽和分から、ナフテン類含有量を引くことにより求めることができる。
また、前記ナフテン類含有割合は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)によりディーゼルエンジン用燃料油組成物を芳香族分と飽和分に分画採取した後、飽和分をガスクロマトグラフ法−質量分析法(GC−MS)で分析し、ASTM D 2786に従って解析を行い、各環数別のナフテン類割合を算出し、ここで得られた割合を、JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により求めた飽和分割合に乗ずることで求められる。
また、本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物においては、アニリン点が45〜87℃、好ましくは50〜85℃であることが好ましい。アニリン点が87℃以下であれば、ディーゼルエンジン用燃料油組成物の溶解力を適切に保つことが可能となるため好ましい。また、各種ゴムを用いたシール材の観点からも、ゴム膨潤を適度にすることでシール性を確保することが可能となるため好ましい。アニリン点が45℃以上であれば、軽油の成分中で、特にアニリン点を低くする寄与の大きい芳香族分を前述のような適切な範囲に保つことが可能となるため、燃焼時のPMおよびNOx排出量を低減できることにより好ましい。なおここでのアニリン点は、JIS K 2256「石油製品アニリン点及び混合アニリン点試験方法」に準拠して求められる。
更にまた、本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物においては、次のような15℃における密度や、30℃動粘度や、引火点であることが好ましい。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物の15℃における密度は、0.70〜0.86g/cm、好ましくは0.75〜0.85g/cmであることが好ましい。15℃における密度が0.70〜0.86g/cm以上であれば、軽油の使用を前提に設計されたディーゼル車に対し、ディーゼル燃焼時の着火性を維持し、適切な燃焼状態を保つことができるため好ましい。なお、15℃における密度はJIS K 2249の密度試験方法及び密度・質量・容量換算表により測定することができる。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物の30℃動粘度は、1.700〜6.000mm/s、好ましくは2.000〜5.400mm/sであることが好ましい。30℃における動粘度が1.700〜6.000mm/sであれば、軽油の使用を前提に設計されたディーゼル車に対し、燃料供給ポンプの磨耗や、燃料自体の流動性の面で適切に使用することが可能であるため好ましい。なお、30℃における動粘度はJIS K 2283の動粘度試験方法及び粘度指数算出方法により測定することができる。
本発明におけるディーゼルエンジン用燃料油組成物の引火点は、45〜100℃、好ましくは45〜95℃であることが好ましい。この範囲内ならば、火気による引火の危険性が低く、一般車はもちろんのこと、特にディーゼルエンジンの使用率が高く、かつ使用現場での給油の機会が多い重機等を取り扱う際にも好ましい。なお、引火点は、JIS K 2265−3の引火点の求め方−第3部:ペンスキーマルテンス密閉法により測定することができる。
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物は、種々の石油留分から、蒸留によりその蒸留性状を調整し、水素化脱硫、芳香族抽出処理等の処理によりその組成を調整し、上記本発明に規定する性状を満たすようにして製造することができる。本発明の燃料油組成物は、JIS規格に定められている軽油の、特1号、1号、2号、3号、特3号のいずれにも適用可能である。本発明の燃料油組成物の製造方法は、上記本発明に規定する性状を満たす限りにおいて特に制限されない。例えば、原油の常圧蒸留で得られた軽油留分や、灯油留分と軽油留分の混合物や、重油を接触分解、水素化脱硫、水素化分解処理、脱アロマ処理及びコーカー等で重質油分をアップグレーディング等した後に分留される軽油留分など種々の基材を用いて製造することができる。
本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物には、低温流動性向上剤を10〜1000容量ppm、好ましくは50〜700容量ppm添加することが好ましい。低温流動性向上剤を10容量ppm以上添加することにより、目詰まり点(CFPP)や流動点(PP)を改善することができ好ましい。また低温流動性向上剤の添加量が1000容量ppm以下であることにより、添加剤自体の凝集等を防ぐことができ好ましい。
本発明において使用する低温流動性向上剤は、種々のものが使用でき、その例として、アルケニルコハク酸イミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体、ポリエチレングリコール誘導体等の共重合ポリマー、塩素化ポリエチレン、ポリアルキルアクリレート等のポリマーが挙げられる。これらの低温流動性向上剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組合せて用いても良い。
また、本発明のディーゼルエンジン用燃料油組成物には、必要に応じて、その他各種の添加剤を適宜配合することができる。このような添加剤としては、例えば、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、泡消剤、清浄剤、酸化防止剤および色相改善剤など公知の燃料添加剤が挙げられる。これらを一種又は数種組合せて添加することができる。
次に、本発明を実施例、比較例により更に具体的に説明する。なお本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例、比較例において、引火点、蒸留性状、硫黄分、30℃動粘度は、JIS K 2204に定められる方法に準拠して測定した。その他に、15℃密度は、JIS K 2249、曇り点は、JIS K 2269、アニリン点は、JIS K 2256により測定した。
飽和分、芳香族分の割合と、芳香族分の環数別割合は、JPI-5S-49-97に基づいて測定した。HPLCの装置構成及び分析条件を以下に示す。
装置:Agilent 1100 Series(ALS:G1329A,Bin Pump:G1312A,Degasser:G1379A,Rid:G1362A,Colcom:G1316A)
移動相:n−ヘキサン
流量:1.0ml/min
カラム:硝酸銀含浸シリカカラム(4.6mml.D.*70mmL.センシュー科学製AgNO−1071−Y)
アミン修飾カラム(4.0mml.D.*250mmL.2本 センシュー科学製 LICHROSORB−NH
カラム温度:35℃
試料濃度:10vol%
注入量:5μl
パラフィン類含有量ならびに、ナフテン類の含有量は下記方法により求めた。
まず試料をHPLCにより飽和分と芳香族分とに分画後、飽和分についてGC−MSによりタイプ分析を行った。ここで得られた分析結果を基に、ASTM D 2786に従って解析を行い、飽和分中のパラフィン類と、ナフテン類の含有割合を求めた。また、ここで得られた飽和分中の環数別ナフテン類の割合を、上記のように求めた飽和分割合に乗ずることで、ナフテン類の含有量を求めた。
分析条件を下記に示す。
装置:HP−6890 HP5973 四重極質量分析計
カラム:DB−1:30m×0.25mmI.D.×0.25μm
オーブン温度:40℃(1min)→10℃/min→280℃(5min)
注入口温度:43℃ Oven track mode ON
インターフェース温度:300℃
キャリアガス:He:55KPa Constant flow mode ON
Solvent Delay:4.5min
質量範囲:50〜500 Threshold=100 Sampling♯3
イオン化電圧:70eV
注入方法:オンカラム注入 1.0μl
n−パラフィン含有量は、ガスクロマトグラフィ(GC)により測定した。以下に測定条件を示す。
ディーゼルエンジン用燃料油組成物について
装置:5890 series2(Agilent Technologies)
カラム:Ultra 1(Agilent)Crosslinked Methyl Silicone Gum、50m×0.20mmI.D.
膜厚0.33μm
検出器:FID
オーブン温度:60℃(0min)−(6℃/min)→340℃(10min)Run 56.7min
注入口:On−column
注入口温度:オーブントラックモード(オーブン温度+3℃)
検出器温度:350℃
キャリアガス:He 280kPa(定圧)1.3mL/min 線速度29.7cm/sec(at 60℃)
メイクアップガス:He
FID燃焼ガス:H 30mL/min,Air 400mL/min
注入量:0.2μl
定量法:内標準法(内標準物質:フタル酸ジブチルエステル)
〔ディーゼルエンジン用燃料油組成物の調製〕
参考例1
原油を常圧蒸留することにより得られた沸点範囲170〜390℃で90%留出温度が345℃の軽油留分を硫黄分10質量ppm以下に水素化脱硫することによりディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
実施例2
原油を常圧蒸留することにより得られた沸点範囲150〜380℃で90%留出温度が340℃の軽油留分を硫黄分10質量ppm以下に水素化脱硫することによりディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
実施例3
芳香族分が多めである芳香族系原油を常圧蒸留することにより得られた沸点範囲170〜370℃で90%留出温度が330℃の軽油留分を硫黄分10質量ppm以下に水素化脱硫することによりディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
比較例1
飽和分が多めである飽和系原油を常圧蒸留することにより得られた沸点範囲190〜370℃で90%留出温度が345℃の軽油留分を硫黄分10質量ppm以下に水素化脱硫することによりディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
比較例2
沸点範囲が225〜360℃の間にある各種イソパラフィン溶剤、ナフテン溶剤を適宜用いて沸点範囲が225〜360℃になるように混合することにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
比較例3
市販のn−パラフィン溶剤(n−C7〜n−C21)、及び、市販のn−パラフィン試薬と沸点範囲が200〜350℃の間にある各種イソパラフィン溶剤、ナフテン溶剤を適宜用いて沸点範囲が200〜350℃になるように混合することにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン−酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し500容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表1に示した。
〔通油性試験〕
実施例、比較例で得られた燃料油組成物を用いて、通油性試験(フィルタビリティ試験)を実施した。なお、ここでの通油性試験は、IP387「Determination of the filter blocking tendency of gas oil and distillate diesel fuel」に準拠して行った。
上記試験により求められるFBTの値が1.00であればフィルター前後での差圧の上昇がなく、通油性が非常に好適であることを意味し、FBTの値が上昇するにつれ、フィルター前後での差圧が高くなることを意味する。FBTが1.41以上の場合は、試験に用いる燃料(300mL)が全量通過することなく、試験の上限差圧である1.05kPaに達したことを意味する。
上記試験により求められた各燃料油組成物のFBTの値を表1に示した。
Figure 0005053794
表1に示した結果から、参考例1、実施例〜3で得られた燃料油組成物は、FBT値が1.41以下であり、通油性が非常に良好な燃料であった。また、カウリブタノール価に代表される溶解度の上昇に伴い、通油性が改善されていることがわかった。
一方、比較例1〜3で得られた燃料油組成物は、FBT値が1.41以上であり、試験燃料が全量通過する前に上限差圧に達していることがわかった。こちらの結果は、カウリブタノール価に代表される溶解度の低下に伴い、通油性が悪化していることが見てとれ、実施例の結果とあわせて、通油性には燃料油の溶解度が非常に深く関わっていることが確認できた。

Claims (3)

  1. 10容量%留出温度が180℃〜235℃、90容量%留出温度が326.5〜337.0℃の蒸留性状を有し、硫黄分が10質量ppm以下であり、飽和分が73.8〜80.6容量%で、芳香族分が19.4〜26.2容量%で、パラフィン類が37.3〜44.3容量%で、かつ、カウリブタノール価が26.7〜31.0であることを特徴とするディーゼルエンジン用燃料油組成物。
  2. アニリン点が45〜87℃である請求項1に記載のディーゼルエンジン用燃料油組成物。
  3. 原油を常圧蒸留することにより得られた軽油留分を水素化脱硫する事により得られる請求項2に記載のディーゼルエンジン用燃料油組成物。
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