JP5052217B2 - 分散液、及び電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

分散液、及び電子写真感光体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チタニルフタロシアニン結晶を有機溶媒に分散させた分散液、及びその分散液を用いて感光層を形成する電子写真感光体の製造方法に関する。
従来から、デジタル複写機やデジタルプリンターでは、電子写真感光体の材料として、光源から出射される600〜800nmの長波長光に対して、高感度特性を有するチタニルフタロシアニン結晶が知られている(例えば、特許文献1参照)。
電子写真感光体は、導電性支持体上に感光層を備え、この感光層は、チタニルフタロシアニン結晶を有機溶媒に分散させた分散液を、導電性支持体上に塗布、乾燥させることで形成される。
チタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体は、光源からの長波長光に対する感度が高く、残留電位が低く、帯電性が高く、受容電位、電位保持性、電位安定性が高い等、静電特性に優れている必要がある。また、繰り返し使用による帯電性の低下が大きいと、電子写真感光体の耐用期間が短くなるため、繰り返し使用による帯電性の低下が小さい必要がある。
そのチタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体の静電特性は、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形により異なるだけでなく、チタニルフタロシアニン結晶の製造方法によっても異なる。
特許文献1に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法では、第1の工程として、1,2−ジシアノベンゼンと、四塩化チタンとを不活性な高融点有機溶媒(α−クロロナフタレン)の存在下で加熱反応させる。第2の工程として、第1の工程で加熱反応させて得た粗チタニルフタロシアニンを熱水処理することで、不定形チタニルフタロシアニンを得る。第3の工程として、第2の工程で得た不定形チタニルフタロシアニンを、有機溶媒(例えば、N−メチルピロリドン)で加熱処理することで、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
この製造方法では、四塩化チタンを用いるため、生成されたチタニルフタロシアニン結晶は、不純物として塩素を含み、構造的な欠陥部位が導入されるため、その電子写真感光体は、繰り返し使用による帯電性の低下が比較的大きい。尚、チタニルフタロシアニン結晶中に取り込まれた塩素を取り除くことは困難である。
そこで、四塩化チタン等のハロゲン化金属を用いない、チタニルフタロシアニン結晶の製造方法も提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。
特許文献2に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法では、第1の工程として、1,3−ジイミノイソインドリンと、チタニウムテトラブトキシドとを脂肪族溶媒(例えば、α―クロルナフタレン)の存在下で加熱反応させる。第2の工程として、第1の工程で加熱反応させて得た、乾燥後の粗チタニルフタロシアニンを所謂アシッドペースト処理することで、不定形チタニルフタロシアニンを得る。第3の工程として、第2の工程で得た乾燥後の不定形チタニルフタロシアニンを、有機溶媒(例えば、o−ジクロルベンゼン)で処理することで、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
特許文献3に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法では、第1の工程として、フタロニトリルと、チタンテトラアルコキシド(例えば、チタンテトラブトキシド)とを尿素、及び有機溶媒(例えば、n−オクタノール)の存在下で加熱反応させることで、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
特許文献4に記載のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法では、1,3−ジイミノイソインドリンと、チタニウムテトラブトキシドとをスルホランの存在下で加熱反応させる。第2の工程として、第1の工程で加熱反応させて得た、乾燥後の粗チタニルフタロシアニンを所謂アシッドペースト処理することで、不定形チタニルフタロシアニンを得る。第3の工程として、第2の工程で得た不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)で処理することで、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
特公平5−31137号公報 特許第2821765号公報 特開平6−293769号公報 特開2001−19871号公報
しかしながら、上記従来のチタニルフタロシアニン結晶を用いた電子写真感光体では、繰り返し使用時の帯電性の安定性が十分でなく、現在もなお、繰り返し使用時の帯電性の安定性に優れた電子写真感光体が望まれており、結晶安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を分散させた分散液が望まれていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、結晶安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を分散させた分散液を提供することを目的とする。また、繰り返し使用時の帯電性の安定性に優れた電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
本発明の一態様によれば、チタニルフタロシアニン結晶を第1の有機溶媒に分散させた分散液において、
前記チタニルフタロシアニン結晶は、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも7.0〜7.5°に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、及び1,1,2−トリクロロエタン、のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒を含む有機溶媒により結晶変換させて得られた、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を用い更に2度目の結晶変換させた、
CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする。
本発明によれば、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を、結晶変換させた、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、結晶安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を分散させた分散液を提供することができる。また、その分散液を用いて感光層を形成することで、繰り返し使用時の帯電性の安定性に優れた電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
本実施例の分散液は、後述するチタニルフタロシアニン結晶を第1の有機溶媒に分散させたものである。
このチタニルフタロシアニン結晶は、ハロゲン化チタンを用いずに粗チタニルフタロシアニンを合成する第1工程と、第1工程で得た粗チタニルフタロシアニンを所謂アシッドペースト処理することで不定形チタニルフタロシアニンを生成する第2工程と、第2工程で得た不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で第3の有機溶媒により結晶変換させることで、前駆体であるチタニルフタロシアニン結晶を生成する第3工程と、第3工程で得た、乾燥後の前駆体を結晶変換させることで目的のチタニルフタロシアニン結晶を生成する第4工程とからなる製造工程を経て製造されたものである。
尚、第3工程で得られる前駆体は、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶である。
尚、第4工程で得られるチタニルフタロシアニン結晶は、第3工程で得た前駆体を結晶変換させたものであって、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶である。
尚、本実施例のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法は、第1〜第4工程からなるが、第4工程を経ている限り、その工程に制限はなく、例えば、第1工程で得られる粗チタニルフタロシアニン、第2工程で得られる不定形チタニルフタロシアニン、第3工程で得られる特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を別の製造方法で得ても良い。
以下、各工程について詳説する。
第1工程では、ハロゲン化チタンを用いずに粗チタニルフタロシアニンを合成する。この粗チタニルフタロシアニンの合成方法としては、例えば、特許文献3、或いは、特許文献4に記載された公知の方法が採用できる。すなわち、尿素、及び有機溶媒(例えば、n−オクタノール)の存在下で、フタロニトリル類と金属アルコキシド(例えば、チタンテトラアルコキシド)を加熱反応させることで、粗チタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。或いは、1,3−ジイミノイソインドリンと、チタニウムテトラブトキシドとをスルホランの存在下で加熱反応させることで、粗チタニルフタロシアニン結晶を得ることができる。
このようにハロゲン化チタンを用いずに粗チタニルフタロシアニンを合成することで、ハロゲン元素の含有量の少ない、後述のチタニルフタロシアニン結晶を得ることができ、静電特性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
第2工程では、第1工程で得られた粗チタニルフタロシアニンを所謂アシッドペースト処理することで不定形チタニルフタロシアニン(低結晶性チタニルフタロシアニン)を生成する。具体的には、まず、第1工程で得られた粗チタニルフタロシアニンを、10〜50倍量(質量比)の濃硫酸に溶解し、必要に応じて不溶物を濾過等により除去する。次に、濃硫酸に溶解させた粗チタニルフタロシアニンを、濃硫酸に対し10〜50倍量(質量比)の十分に冷却した水、又は氷水にゆっくりと投入し、不定形チタニルフタロシアニンを析出させる。次に、析出させた不定形チタニルフタロシアニンを濾過した後、イオン交換水による洗浄、濾過を、濾液が中性になるまで繰り返し、最後に、固形分濃度5〜15質量%程度の水ペーストを得る。
第2工程では、析出した不定形チタニルフタロシアニンをイオン交換水で十分に洗浄し、可能な限り硫酸イオンを残さないことが重要である。具体的には、洗浄後のイオン交換水が後述する物性値を示すことが好ましい。
洗浄後のイオン交換水の物性値をpHで表す場合、イオン交換水のpHが6〜8の範囲内であることが好ましい。このpH値は市販のpHメーターで測定することができる。
また、洗浄後のイオン交換水の物性値を比伝導度で表す場合、イオン交換水の比伝導度は、8μS/cm以下が好ましく、5μS/cm以下がより好ましく、3μS/cm以下が特に好ましい。この比伝導度は、市販の電気伝導率計で測定することができる。
洗浄後のイオン交換水の物性値が上記範囲内である場合、水ペースト中の硫酸イオンの残留量が少ないため、硫酸イオンの含有量の少ないチタニルフタロシアニン結晶を得ることができ、静電特性に優れた電子写真感光体を得ることができる。洗浄後のイオン交換水の物性値が上記範囲を逸脱する場合、後述の電子写真感光体では、帯電性の低下や、光感度の低下が生じる。
第2工程で得られる不定形チタニルフタロシアニンは、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも7.0〜7.5゜に最大回折ピークを有するものであることが好ましい。また、その最大回折ピークの半値巾が1゜以上であることがより好ましい。また、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下であることが好ましい。
第3工程では、第2工程で得た不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で第3の有機溶媒により結晶変換させることで前駆体を生成する。具体的には、不定形チタニルフタロシアニンの水ペーストを乾燥させず、そのまま第3の有機溶媒により結晶変換させることで前駆体を生成する。
第3の有機溶媒は、目的の前駆体を得ることができる限り、その種類に制限はないが、特にテトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、1,1,2−トリクロロエタンが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いても良く、これらの有機溶媒を2種類以上混合して用いても良く、或いは、他の溶媒と混合して用いても良い。
不定形チタニルフタロシアニンに対する第3の有機溶媒の割合(質量比)は、10倍以上が好ましく、30倍以上が特に好ましい。このように多量の有機溶媒を用いることで、短時間で結晶変換させることができると共に、不定形チタニルフタロシアニンに含まれる不純物を取り除くことができる。このため、結晶転移の少ない、結晶安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を得ることができ、静電特性に優れた電子写真感光体を得ることができる。
第4工程では、第3工程で得た、乾燥後の前駆体を結晶変換させることで、目的のチタニルフタロシアニン結晶を生成する。
この前駆体の結晶変換は、例えば、第2の有機溶媒により結晶変換させること、機械的剪断力等、機械的なエネルギーを印加することにより結晶変換させること、加熱処理等、熱的エネルギーを印加することにより結晶変換させること、又は蒸発させた後、析出させること等、化学的エネルギーを印加することにより結晶変換させることで実現される。これらの手段のうち、第2の有機溶媒により結晶変換させること、機械的剪断力を印加することにより結晶変換させること、のうち少なくともいずれか1つを含むことが好ましく、両方を含むことが更に好ましい。尚、前駆体を結晶変換させるための手段は、前駆体を目的のチタニルフタロシアニン結晶に結晶変換させることができる限り、その種類に制限はない。
第2の有機溶媒による結晶変換は、例えば、前駆体を第2の有機溶媒に浸漬して、1日以上の期間放置しておくことで実現される。前駆体を第2の有機溶媒に浸漬しながら、前駆体に機械的剪断力を印加させても良い。機械的剪断力を併用することで、前駆体の結晶変換を加速させることができる。
第2の有機溶媒には、例えば、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒から選ばれる1種を用いることができる。エーテル系溶媒としては、炭素数が1〜5の分岐もしくは直鎖状エーテル、及び環状エーテルが有効に用いられ、中でもテトラヒドロフランが特に好ましく用いられる。ケトン系溶媒としては、炭素数が1〜5の分岐もしくは直鎖状ケトンが用いられるが、中でも2−ブタノンが特に好ましく用いられる。尚、第2の有機溶媒は、前駆体を目的のチタニルフタロシアニン結晶に結晶変換させることができる限り、その種類に制限はない。
第4工程では、第2の有機溶媒に、水を極力含ませないことが重要である。水の存在下では前駆体が安定状態になるため、第2の有機溶媒中に水を多く含ませると、前駆体の結晶変換が遅くなり、好ましくない。また、第3工程で得られた前駆体は、第4工程の前に、乾燥させておくことが好ましい。
機械的剪断力を印加することによる結晶変換は、例えば、ミキサー、乾式ボールミル、乳鉢で前駆体へ剪断力を印加することで実現される。
加熱処理による結晶変換は、例えば、100℃以上の高温下、前駆体を加熱処理することで実現される。具体的には、200℃以上400℃以下の高温下、数時間、電気炉で前駆体を加熱処理することで、前駆体を目的のチタニルフタロシアニン結晶へ結晶変換させることができる。加熱温度が400℃以上になると、チタニルフタロシアニン結晶の分子構造の分解が始まるため、好ましくない。また、加熱処理は、高温下、光刺激によるチタニルフタロシアニン結晶の分子構造の分解を防止すべく、遮光状態で行われることが好ましい。尚、加熱処理は、大気圧下で行っても良いが、減圧下(例えば、10mmHg以下)で行っても良い。
蒸発させた後、析出させることによる結晶変換は、例えば、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)等により前駆体を加熱し、気化または昇華させた後、離れた位置にある基板上に目的のチタニルフタロシアニン結晶を付着させることで実現される。
本実施例の分散液は、上述した第1〜第4工程からなる製造方法で得られたチタニルフタロシアニン結晶を第1の有機溶媒に分散させたものである。
分散方法としては、一般的な方法を用いることができ、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、又は超音波で分散させる方法を用いることができる。
第1の有機溶媒は、チタニルフタロシアニン結晶との濡れ性、及び分散性、分散液の基板への塗布性を考慮して選定されるが、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持できる限り、特に制限はない。第1の有機溶媒は、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロインを用いることができる。特に、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒より選ばれる1種を用いることで良好な結果を得ることが出来る。特に、ケトン系溶媒は最も有効に使用される。これら有機溶媒は、単独で使用しても良く、混合して使用しても良い。
分散液には、結着樹脂を添加しても良い。結着樹脂を添加することで、チタニルフタロシアニン結晶の結晶転移速度を著しく低下させることができ、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持することができる。結着樹脂は、電子写真感光体の静電特性、分散液の基板への塗布性を考慮して選定される。結着樹脂は、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンを用いることができる。特に、ポリビニルブチラールは最も有効に使用できる。結着樹脂は予め分散溶媒に溶解された状態で分散に供される。結着樹脂の量は、チタニルフタロシアニン結晶100重量部に対し0〜500重量部が好ましく、10〜300重量部がより好ましい。
また、分散液には、水を添加しても良い。水を添加することで、結着樹脂と同様に、チタニルフタロシアニン結晶の結晶転移速度を著しく低下させることができ、チタニルフタロシアニン結晶の結晶形を安定に維持することができる。水を添加する場合には、不純物を十分に取り除いた蒸留水やイオン交換水が良好に用いられる。しかしながら、あまり大量に用いると、分散性が低下したり、有機溶媒と分離したり、結着樹脂を析出させたりする不具合が発生する。このため、使用する有機溶媒の種類にもよるが、疎水性の溶媒の場合には有機溶媒の水の溶解度の上限、親水性の溶媒の場合には有機溶媒の重量に対して2〜3質量%程度が上限である。
本実施例の電子写真感光体は、導電性支持体上に、上述した分散液を塗布し、乾燥することで形成された感光層を備える。分散液の塗布方法には、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
(合成例1)
特許文献4に準じて合成した前駆体を、結晶変換させて目的のチタニルフタロシアニン結晶を生成した。
[第1工程]
1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlとを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。尚、合成例1では、ハロゲン含有化合物を用いなかった。
[第2工程]
第1工程で得た粗チタニルフタロシアニンを、20倍量(質量比)の濃硫酸に溶解させた。次に、これを、100倍量(質量比)の氷水へ撹拌させながら滴下し、不定形チタニルフタロシアニンを析出させた。次に、析出させた不定形チタニルフタロシアニンを濾過した後、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、ウェットケーキ(水ペースト)を得た。ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。
図1は、合成例1で得られた不定形チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルの一例を示した図である。X線回折スペクトルの測定に用いた不定形チタニルフタロシアニンは、水ペーストを80℃、減圧下(5mmHg)、2日間乾燥させて得た。また、X線回折スペクトルの測定は、下記の条件下、X線回折装置(理学電機:RINT1100)を用いて行った。尚、以下のX線回折スペクトルの測定は、同一条件下、同一装置を用いて行ったので、以下のX線回折スペクトルの測定では、条件の説明を省略する。
X線回折スペクトル測定条件
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
合成例1では、図1から明らかなように、目的の不定形チタニルフタロシアニンである、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、7.0〜7.5°に最大回折ピークを有し、かつ、その最大回折ピークの半値巾が1°以上のものを得ることができた。
[第3工程]
第2工程で得たウェットケーキ(水ペースト)40gを第3の有機溶媒であるテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、前駆体を得た。ここで、不定形チタニルフタロシアニンに対する第3の有機溶媒の割合(質量比)は、33倍であった。
図2は、合成例1で得られた前駆体のX線回折スペクトルの一例を示した図である。合成例1では、図2から明らかなように、目的の前駆体である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた。
[第4工程]
第3工程で得た前駆体を、後述の第2の有機溶媒により結晶変換させて目的のチタニルフタロシアニン結晶を得た。
すなわち、第3工程で合成した前駆体40g、及び第2の有機溶媒である2−ブタノン400gを、直径2mmのジルコニアボール3.5kgと共に、内径150mmのボールミルポットに投入し、24時間ミリング処理を行った。第2の有機溶媒を処理後、濾過したものを、100°にて1日間真空乾燥を行い、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得た。
図3は、合成例1の前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルの一例を示した図である。合成例1では、図3から明らかなように、目的のチタニルフタロシアニン結晶である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた(これを結晶1とする)。
尚、チタニルフタロシアニン結晶の評価については、比較例のチタニルフタロシアニン結晶の評価と合わせて後述する。
(合成例2〜7)
合成例2〜7では、それぞれ、第3工程において、第3の有機溶媒として、テトラヒドロフランの代わりに、表1に記載の有機溶媒を用いた以外は、合成例1と同様に、チタニルフタロシアニン結晶を合成させた。
Figure 0005052217
表1に記載の第3の有機溶媒を用いることで得られた前駆体のX線回折スペクトルは、それぞれ、合成例1の前駆体のX線回折スペクトル(図2参照)と同様のものであった。つまり、合成例2〜7では、目的の前駆体である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた。
また、合成例2〜7の前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、それぞれ、合成例1で最終的に得られた結晶1のX線回折スペクトル(図3参照)と同様のものであった。つまり、合成例2〜7では、目的のチタニルフタロシアニン結晶である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた(これを結晶2〜7とする)。
(合成例8)
合成例8では、第4工程において、以下のように第2の有機溶媒による結晶変換を行い、チタニルフタロシアニン結晶を得た。
合成例1の第3工程で合成した前駆体40gを、第2の有機溶媒であるテトラヒドロフラン400g中に、暗所にて1週間浸漬・放置した。1週間後、チタニルフタロシアニン結晶を濾過分別したものを、100°にて1日間真空乾燥を行い、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得た。
合成例8で最終的に得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、合成例1で最終的に得られた結晶1のX線回折スペクトル(図3参照)と同様のものであった。つまり、合成例8では、目的のチタニルフタロシアニン結晶である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた(これを結晶8とする)。
(合成例9)
合成例9では、第4工程において、前駆体を結晶変換させるための手段として、有機溶媒により結晶変換させることの代わりに、機械的剪断力を印加することにより結晶変換させることを用いた以外は、合成例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶を合成させた。
すなわち、合成例9では、合成例1の前駆体40gを、直径2mmのジルコニアボール3.5kgと共に、直径150mmのボールミルポットに投入し、48時間ミリング処理を行った。ミリング処理後、ジルコニアボールから分別して、目的のチタニルフタロシアニン結晶を得た。
合成例9で最終的に得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルは、合成例1で最終的に得られた結晶1のX線回折スペクトル(図3参照)と同様のものであった。つまり、合成例9では、目的のチタニルフタロシアニン結晶である、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を得ることができた(これを結晶9とする)。
(比較合成例1)
比較合成例1では、第3工程において、第3の有機溶媒として、テトラヒドロフランの代わりに、2−ブタノンを用いた以外は、合成例1と同様にチタニルフタロシアニン結晶を合成させた。
図4は、比較合成例1で得られた前駆体のX線回折スペクトルの一例を示した図である。図4から明らかなように、比較合成例1で得られた前駆体は、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θ(±0.2°)の回折ピークとして、27.2°に最大回折ピークを有するが、最も低角側の回折ピークとして7.5°に回折ピークを有している。
合成例1で得られた前駆体と、比較合成例1で得られた前駆体に、それぞれ特開昭61−239248号公報に記載の顔料結晶と同様に作製したものを3質量%添加し、乳鉢で混合して、混合粉末を得た。それぞれを先と同じ条件によりX線回折スペクトルを測定した。
合成例1の前駆体を含む粉末のX線回折スペクトルを図5に、比較合成例1の前駆体を含む粉末のX線回折スペクトルを図6に示す。図5のスペクトルにおいては、低角側に7.3°と7.5°の2つにピークが存在し、少なくとも7.3°と7.5°のピークは異なるものであることが分かる。一方、図6のスペクトルにおいては、低角側のピークは7.5°のみに存在し、図5のスペクトルとは明らかに異なっている。
図7は、比較合成例1で最終的に得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルの一例を示した図である。図7から明らかなように、比較合成例1で最終的に得られたチタニルフタロシアニン結晶は、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θ(±0.2°)の回折ピークとして、26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有する(これを結晶10とする)。つまり、比較合成例1で最終的に得られた結晶10は、X線回折スペクトルとしては、合成例1〜9で最終的に得られた結晶1〜9と同一のものであった。
このように、比較合成例1のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法は、前駆体として、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θ(±0.2°)の最も低角側の回折ピークとして7.5°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いた点で、合成例1〜9のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法とは異なる。
(比較合成例2)
特許文献1の製造例1に準じて、チタニルフタロシアニン結晶を合成した。
具体的には、フタロジニトリル97.5gをα−クロロナフタレン750ml中に加え、次に窒素雰囲気下で四塩化チタン22mlを滴下した。滴下後昇温し、撹拌しながら200〜220℃で3時間反応させた後、放冷し、100〜130℃で熱時濾過し、100℃に加熱したα−クロロナフタレン200mlで洗浄した。得られた粗チタニルフタロシアニンのケーキを、α−クロロナフタレン300ml、次にメタノール300mlで室温にて懸洗し、更にメタノール800mlで1時間熱懸洗を3回行い、得られたケーキを水700mlに懸濁させ、2時間熱懸洗を行った。熱懸洗濾液のpHがおよそ7になるまで熱懸洗を繰り返した。この後、140〜145℃のN−メチルピロリドン700ml中で、2時間熱懸洗を行う操作を4回実施した。次いで、メタノール800mlで2回熱懸洗を行い、濾過し、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(これを結晶11とする)。
比較合成例2で最終的に得られた結晶11のX線回折スペクトルは、特許文献1の図1と同様のものであることを確認した。
このように、比較合成例2のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法は、特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を結晶変換させる工程を用いない点、及び原料としてハロゲン化チタンを用いる点で、合成例1〜9のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法とは異なる。
(比較合成例3)
特許文献1の製造例4に準じて、チタニルフタロシアニン結晶を合成した。
具体的には、フタロジニトリル46gをα−クロロナフタレン250ml中に仕込み、加熱溶解した後、四塩化チタンを10ml滴下し、150℃で30分間撹拌を行い、次いで徐々に昇温し、220℃で2時間加熱撹拌を行った。その後、撹拌しながら放冷し、反応系の温度が100℃に下がった時点で熱濾過し、次いでメタノール600mlで熱懸濁、熱水煮沸懸濁をそれぞれ1回ずつ行った後、600mlのN−メチルピロリドンにより、120℃で1時間熱懸濁を行い、熱濾過後、800mlのメタノールで熱懸濁し、濾過後、1日間80℃真空乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶を得た(これを結晶12とする)。
比較合成例3で最終的に得られた結晶12のX線回折スペクトルは、特許文献1の図7と同様のものであることを確認した。
このように、比較合成例3のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法は、特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を結晶変換させる工程を用いない点、及び原料としてハロゲン化チタンを用いる点で、合成例1〜9のチタニルフタロシアニン結晶の製造方法とは異なる。
(実施例1〜9、比較例1〜3)
以上のように製造したチタニルフタロシアニン結晶を用いて、次のように分散液を作製し、この分散液を用いて電子写真感光体を作製し、電子写真感光体の静電特性を評価すると共に、分散液を評価した。
[分散液の作製]
表2に記載のチタニルフタロシアニン結晶を、それぞれ、以下の割合で、結着樹脂及び溶媒と混合し、直径0.5mmのジルコニアボールで分散させることで、分散液1〜12を作製した。分散液の作製には、ビーズミル分散機(VMA−GETZMANN GMBH製:DISPERMAT SL)を用いた。ローター回転数3000rpmで300分間分散させた後、ビーズミル分散機から分散液を取り出すべく、2−ブタノン2060重量部をビーズミル分散機へ投入して、分散液1〜12を作製した。
チタニルフタロシアニン結晶(表2参照) 48重量部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 32重量部
2−ブタノン 720重量部
Figure 0005052217
このように作製した分散液1〜12をそれぞれ乾燥させ、その乾燥体のX線回折スペクトルを測定したところ、分散前のチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトル(図3、図7等参照)と同様のものであった。
また、このように作製した分散液1〜12を、沈降試験用の試験管に投入し、3日間の静置保管を行い、分散液の状態を観察した。その結果、いずれの分散液においても粒子の沈降は認められず、分散液の分散安定性が高いことを確認できた。
また、このように作製した分散液1〜12を、1ヶ月間スターラーを用いて室温で撹拌した後、分散液1〜12をそれぞれ乾燥させ、その乾燥体のX線回折スペクトルを測定したところ、分散前のチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトル(図3、図7等参照)と同様のものであった。
したがって、本実施例の分散液によれば、特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶を安定状態で分散できることを確認できた。
[電子写真感光体の作製]
このように作製した分散液1、8、9〜12を用いて、それぞれ、電子写真感光体1〜6を作製した。すなわち、厚さ1mmのアルミニウム板(JIS1050)に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層からなる感光層を備えた電子写真感光体1〜6を形成した。
(下引き層塗工液)
酸化チタン(石原産業社製:CR−EL) 70重量部
アルキッド樹脂(大日本インキ化学工業製:
ベッコライトM6401−50−S、(固形分50質量%)) 15重量部
メラミン樹脂(大日本インキ化学工業製:
スーパーベッカミンL−121−60、(固形分60質量%)) 10重量部
2−ブタノン 100重量部
(電荷発生層塗工液)
上述の分散液1、8、9〜12を、それぞれ用いた。
(電荷輸送層塗工液)
ポリカーボネート(三菱ガス化学社製:ユーピロンZ300) 10重量部
テトラヒドロフラン 80重量部
下記構造式の電荷輸送物質 7重量部
Figure 0005052217
[電子写真感光体の静電特性の評価]
このように作製した電子写真感光体1〜6を、静電複写紙試験装置(川口電機製、EPA−8100)を用いて、次のように評価した。
まず、−6.3kVの放電電圧にて20秒間のコロナ帯電を行い、次いで、20秒間、暗減衰させる。次いで、5μW/cmの光(780nmのバンドパスフィルターを通したタングステンランプ光)を20秒間露光し、光減衰させた。
帯電20秒後の表面電位(V20)、暗減衰20秒後の表面電位(V40)を測定し、その比(V40/V20)を求めた。また、露光により表面電位がV40からV40の1/10まで光減衰する時間を求め、露光量との積から、光感度を求めた。これらの結果を表3に示す。
また、上記の帯電と露光を30分間繰り返した後、同様の測定を行い、疲労後の特性とした。結果を表3に合わせて示す。
Figure 0005052217
表3から明らかなように、実施例1、8、9の分散液1、8、9を用いた電子写真感光体1〜3では、疲労後の帯電性が良好であることが確認できた。これに対し、比較例1〜3の分散液10〜12を用いた電子写真感光体4〜6では、疲労後の帯電性が良くなかった。
実施例の電子写真感光体1〜3と、比較例1の電子写真感光体4とを比較すると、チタニルフタロシアニン結晶の種類が異なる以外は、同様に製造したものである。そこで、これらのチタニルフタロシアニンの結晶を比較すると、実施例で用いた結晶1、8、9と、比較例1で用いた結晶10とは、X線回折スペクトルとしては同一のものであるが、前駆体のX線回折スペクトルが異なるものである。
したがって、X線回折スペクトルとしては同一のチタニルフタロシアニン結晶であっても、特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、繰り返し使用時の帯電性の安定性に優れた電子写真感光体を提供できることが判った。すなわち、X線回折スペクトルとしては同一のチタニルフタロシアニン結晶であっても、特定のX線回折スペクトルを有する前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶は、結晶安定性に優れていることを確認できた。
このように、本実施例の分散液によれば、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を、結晶変換させた、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶を用いることで、結晶安定性に優れたチタニルフタロシアニン結晶を分散させた分散液を提供することができる。また、この分散液を用いて感光層を形成することで、繰り返し使用時の帯電性の安定性に優れた電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
合成例1で得られた不定形チタニルフタロシアニンのX線回折スペクトルの一例を示した図である。 合成例1で得られた前駆体のX線回折スペクトルの一例を示した図である。 合成例1の前駆体を結晶変換させたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルの一例を示した図である。 比較合成例1で得られた前駆体のX線回折スペクトルの一例を示した図である。 合成例1の前駆体と特開昭61−239248号公報に記載の顔料結晶との混合粉末(質量比97:3)のX線回折スペクトルの一例を示した図である。 比較合成例1の前駆体と特開昭61−239248号公報に記載の顔料結晶との混合粉末(質量比97:3)のX線回折スペクトルの一例を示した図である。 比較合成例1で最終的に得られたチタニルフタロシアニン結晶のX線回折スペクトルの一例を示した図である。

Claims (7)

  1. チタニルフタロシアニン結晶を第1の有機溶媒に分散させた分散液において、
    前記チタニルフタロシアニン結晶は、
    CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも7.0〜7.5°に最大回折ピークを有する不定形チタニルフタロシアニンを、水の存在下で、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、トルエン、塩化メチレン、二硫化炭素、オルトジクロロベンゼン、及び1,1,2−トリクロロエタン、のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒を含む有機溶媒により結晶変換させて得られた、
    CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも27.2°に最大回折ピークを有し、更に9.4°、9.6°、24.0°に主要な回折ピークを有し、かつ最も低角側の回折ピークとして7.3°に回折ピークを有し、7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°に回折ピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶を用い更に2度目の結晶変換させた、
    CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2°)として、少なくとも26.2°に最大回折ピークを有し、更に9.3°、10.5°、13.2°、15.1°、15.6°、16.1°、20.7°、23.2°、27.1°、28.3°に回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする分散液。
  2. 前記第1の有機溶媒は、ケトン系溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の分散液。
  3. 前記2度目の結晶変換は、第2の有機溶媒による処理により行われるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散液。
  4. 前記第2の有機溶媒は、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒のうち少なくともいずれか1種の有機溶媒を含むことを特徴とする請求項3に記載の分散液。
  5. 前記不定形チタニルフタロシアニンの前記7.0°〜7.5°の最大回折ピークの半値巾が1°以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分散液。
  6. 前記不定形チタニルフタロシアニンは、ハロゲン化チタンを用いずに合成されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散液。
  7. 導電性支持体上に感光層を備えた電子写真感光体の製造方法において、
    前記感光層を、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分散液を用いて形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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