JP5051725B2 - ポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤 - Google Patents

ポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤 Download PDF

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Description

本発明はポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤に関し、更に詳しくは肝細胞増殖因子(以下、HGFと略記する。)又はそれをコードするDNAを含むDNAを有効成分とするポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤に関する。
ポリグルタミン病は常染色体優性進行性神経変性疾患である。ポリグルタミン病は、ポリグルタミン病の該当遺伝子に異常に伸長したポリグルタミンをコードするシトシン・アデニン・グアニン(CAG)の繰り返し配列を有し、その異常に伸長したCAGの繰り返し配列を有する原因遺伝子が翻訳されポリグルタミン病原因遺伝子産物を発現することにより発症する。ポリグルタミン病、例えばハンチントン舞踏病において、原因遺伝子としてハンチンチン遺伝子が第4染色体短腕上に同定されている(非特許文献1)。ハンチンチン遺伝子は3145アミノ酸残基のハンチンチン蛋白質をコードする。この蛋白質自体は様々な組織で発現し全長蛋白質は主に細胞質に存在し非病原性である。ハンチンチン遺伝子の第1エクソンにはCAGの繰り返し配列が存在する。このCAGの繰り返し配列は非病原性の場合では約30未満の反復であるが、CAGの繰り返しが約30以上にもなるとハンチントン舞踏病を惹起する病原性遺伝子となる。CAGの繰り返しが約30以上に増加したハンチンチン遺伝子からはハンチンチン蛋白質のN末端側グルタミンの連続(ポリグルタミン)が長くなった蛋白質(変異ハンチンチン)が作られる。このようなポリグルタミンが長くなった変異ハンチンチンは凝集を起こしやすくなっている。また長いポリグルタミンは他の蛋白質との相互作用に影響すること、ハンチンチン蛋白質自身の切断(プロセシング)を促進することなどが報告されている。切断されたハンチンチン蛋白質は核に多く存在し、このことが細胞に対する毒性を発揮し、ハンチントン舞踏病を惹起すると考えられている。ハンチントン舞踏病は、一般に中年で発病し、発病から15−20年で死に至る。その症状は特徴的な筋肉運動の変調、認識力の低下及び精神科の症状等によって特徴づけられる。筋肉運動の変調は、舞踏病や筋失調症を含む自発的随意運動と異常不随意運動の調整喪失によると考えられている。
一方、HGFは、最初に成熟肝細胞に対する強力なマイトゲンとして同定され、1989年にその遺伝子クローニングがなされた(非特許文献2、3参照)。HGFの投与は、抗アポトーシス活性によって劇症肝炎を伴うマウスにおけるエンドトキシン誘発致死的肝障害を予防し、HGF遺伝子治療は致命的な肝硬変を持つラットの生存率を改善し得ることが知られている(非特許文献4、5参照)。また、ノックアウト/ノックインマウスの手法を含む発現及び機能的解析における近年の多数の研究により、HGFは新規な神経栄養因子であることも明らかにされた(非特許文献6、7参照)。とりわけHGFは、in vitroでグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)に匹敵する運動ニューロンに対する最も強力な生存促進因子の一つとして知られている(非特許文献8参照)。前記GDNFの産生促進剤は、神経変性疾患の一つである筋委縮性側索硬化症(ALS)の治療剤として知られ(特許文献1参照)、HGF(遺伝子も含む)もALS形質転換モデルマウス(ヒトALSの原因遺伝子であるSOD1G93Aを発現させた形質転換マウス)の病気の進行を遅らせ、生存率を延長することが知られている(特許文献2、非特許文献9参照)。
一方、ハンチントン舞踏病遺伝子で形質転換したR6/2マウスにレンチウイルスベクターを用いてGDNF遺伝子が導入されたが、GDNF遺伝子の導入は該マウスに対して有用な効果を示さなかったことが知られている(非特許文献10参照)。
これらのことは、神経変性疾患であっても、ALSを含めアルツハイマー病やパーキンソン病等とハンチントン舞踏病等のポリグルタミン病とは、その病因や、病態、発病方法等が全く異なり、これら疾患を同列に扱うことは出来ないことを示している。
また、特許文献3には、パーキンソン病で変性する中脳黒質ドーパミンニューロンを薬剤投与により特異的に死滅させる中脳黒質ドーパミンニューロン細胞死誘導ラットを用いて、HGF遺伝子の中脳黒質ドーパミンニューロン細胞死誘導ラットへの作用効果を行動学的に及び組織学的に検討した実施例が示されており、HGF遺伝子の前投与により中脳黒質ドーパミンニューロンを神経毒6−OHDAから保護し、中脳黒質ドーパミンニューロン細胞死誘導ラットの症状を抑えたとの実験結果が示されている。そして、この特許文献3では、このような実験結果に基づいて、HGF遺伝子がパーキンソン病のみならず、アルツハイマー病、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、線条体黒質変性症、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン舞踏病、シャイ・ドレーガー症候群、シャルコー・マリー・トース病、フリードライヒ失調症、重症筋無力症、ウイリス動脈輸閉塞症、アミロイドーシス、ピック病、スモン病、皮膚筋炎・多発性筋炎、クロイツフェルド・ヤコブ病、ベーチェット病、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、結節性動脈周囲炎、後縦靭帯骨化症、広範性脊柱狭窄症、混合性結合組織病、糖尿病性末梢神経炎、虚血性脳血管障害(脳梗塞、脳出血等)などの神経疾患の治療にも適用できるとし、かかる神経疾患の1つとしてハンチントン舞踏病も挙げられている。
しかしながら、パーキンソン病は中脳黒質部のドーパミン作動性ニューロンという特定種のニューロンが選択的に脱落する神経変性疾患であるのに対して、ポリグルタミン病は上記したように長鎖のグルタミン鎖(ポリグルタミン)を含む原因遺伝子産物を発現することにより発症する神経変性疾患である。6−OHDAによる神経細胞変性又は細胞死惹起メカニズムとポリグルタミン病原因遺伝子産物による神経細胞変性又は細胞死メカニズムは全く異なるものであり、6−OHDAに対して神経保護作用を示したからといってHGFがポリグルタミン病における神経細胞変性又は細胞死を保護するとは到底予測できない。臨床的には、共に神経変性疾患であってもパーキンソン病とポリグルタミン病とは、全く異なる病態を示すだけでなく、両疾患に因果関係は認められない。また、障害神経細胞も完全に異なっている。このため、パーキンソン病モデルラットの上記実験結果のみから、HGF蛋白質又はそれをコードするDNAがポリグルタミン病の治療に有効であるとは到底いえず、また有効であったとする報告もない。
上記のように、ハンチントン舞踏病を含むポリグルタミン病に対する治療方法は確立されておらず、困難を極めているのが現状である。
特開2002−47206号公報 特開2002−87983号公報 国際公開第2003/045439号パンフレット ザ・ハンチントンズ・ディジーズ・コラボレイティブ・リサーチ・グループ(The Huntington's Disease Collaborative Research Group),セル(Cell),1993年,第72巻,p.971−983 中村(Nakamura)ら,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・アンド・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.),1984年,第122巻,p.1450−1459 中村(Nakamura)ら,ネイチャー(Nature),1989年,第342巻,p.440−443 コウサイ(Kosai)ら,ヘパトロジー(Hepatology),1999年,第30巻,p.151−159 ウエキ(Ueki)ら,ネイチャー・メディシン(Nat.Med.),1999年,第5巻,p.226−230. 松本(Matsumoto)ら,チバ・ファウンデイション・シンポジウム(Ciba Found.Symp.),1997年,第212巻,p.198−211;ディスカッション211−194 船越(Funakoshi)ら,クリニカ・チミカ・アクタ(Clin.Chim.Acta.),2003年,第327巻,p.1−23 ニューロン(Neuron),1996年,第17巻,p.1157−1172 サン(Sun)ら,ブレイン・リサーチ・モレキュラ・ブレインリサーチ(Brain.Res.Mol.Brain.Res.),2002年,第103巻,p.36−48 ポポビック・エヌ(Popovic N)ら, エクスペリメンタル・ニューロジー(Exp.Neurol.),2005年,第193巻,p.65−74
本発明の目的は、ポリグルタミン病を治療又は発病抑制するのに有効な薬剤を提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、HGF蛋白質もしくはHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド(以下において、HGF蛋白質等ということもある。)、あるいはそれらをコードするDNA又は前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAを含むDNA(以下において、HGF遺伝子ということもある。)がポリグルタミン病に対して優れた治療効果を奏することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
本発明者らは、まずハンチントン舞踏病を含むポリグルタミン病のモデルマウスである変異(CAGリピートの長い病因変異)ハンチンチンエキソン1(変異HDエキソン1)を導入した形質転換マウス(R6/2マウス)を用いて、HGF蛋白質等又はHGF遺伝子のポリグルタミン病への関与を検討した。
本発明者らは、神経向性を有し複製能を欠如したベクター(I型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)ベクター)を用いて上記形質転換マウス(R6/2)の線条体にラットHGF遺伝子を導入し、線条体においてラットHGF蛋白質を発現するR6/2形質転換マウスを作製し、当該マウスを用いて、実際にHGF遺伝子がポリグルタミン病に対して効果を示すか否かを検討した。その結果、ラットHGF遺伝子の導入されたマウスでは、驚くべきことにクラスピングという手足を広げられない現象の開始が遅延され、寿命が延び、また運動機能障害が改善されることが明らかとなった。これらの知見により、HGF蛋白質の発現はハンチントン舞踏病を含むポリグルタミン病に対して治療効果、発病抑制効果をもたらすことが、初めて明らかとされた。
次に本発明者らは、HGF蛋白質等又はHGF遺伝子によるポリグルタミン病の治療効果又は発病抑制効果のメカニズムを検討した結果、少なくとも線条体におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制作用と共に、神経細胞の新生作用という2つの新たなメカニズムにより、HGF蛋白質又はHGF遺伝子がポリグルタミン病に有用な効果をもたらすことを見出した。HGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、カスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化を抑制することにより線条体における神経細胞変性又は細胞死を抑制し、線条体の萎縮を抑制すると共に脳室拡大を抑制することができる。すなわちHGF蛋白質又はHGF遺伝子は、神経細胞変性又は細胞死を抑制すると共に神経細胞を新生するという2つの作用を通して、ポリグルタミン病における運動機能の改善効果と寿命の延長効果を奏する。
また、本発明者らは、変異ハンチンチンが有する長いポリグルタミンが断片化(プロセシング)により神経毒性を獲得することに注目し、前記プロセシングに及ぼすHGF蛋白質又はHGF遺伝子の効果を検討した。本発明者らは、変異HDエキソン1を導入した形質転換マウス(R6/2マウス)では、ハンチンチン蛋白質は断片化されるが、これにHGF遺伝子を導入したR6/2形質転換マウスでは、ハンチンチン蛋白質の断片化が抑制されることを知見した。
このような、HGF蛋白質又はHGF遺伝子の効果は本発明において初めて見出されたものであり、発明者らはこれら知見に基づきさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1](1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを有効成分として含有することを特徴とするポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤、
[2] 有効成分が、(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAであることを特徴とする前記[1]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[3] HGF蛋白質をコードするDNAが、(a)配列番号1、2又は5で表される塩基配列からなるDNA又は(b)前記(a)の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAを含むDNAであることを特徴とする前記[2]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[4] DNAが、I型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)ベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターに組み込まれていることを特徴とする前記[2]又は[3]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[5] 有効成分が、(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩であることを特徴とする前記[1]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[6] HGF蛋白質が、(a)配列番号3、4又は6で表されるアミノ酸配列と同一又は(b)前記アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質であることを特徴とする前記[5]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[7] ポリグルタミン病がハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症等よりなる群から選択される少なくとも1の疾患であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[8] ポリグルタミン病がハンチントン舞踏病であることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[9] 治療剤又は発病抑制剤が、ポリグルタミン病の病変部位への局所投与用であることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[10] 局所投与が、髄腔内投与であることを特徴とする前記[9]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[11] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを有効成分とすることを特徴とする脳室の拡大抑制剤、
[12] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを有効成分とすることを特徴とするポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制剤、
[13] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを有効成分とすることを特徴とする神経細胞におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制剤、
[14] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを有効成分とすることを特徴とするポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制剤、
[15] 治療又は発病抑制が、脳室の拡大抑制によるものであることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[16] 脳室の拡大が、ポリグルタミン病原因遺伝子産物による線条体神経細胞変性又は細胞死によるものであることを特徴とする前記[15]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[17] 線条体神経細胞変性又は細胞死がカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化によるものであることを特徴とする前記[16]記載の治療剤又は発病抑制剤、
[18] 治療又は発病抑制が、神経新生によるものであることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[19] 治療又は発病抑制が、ポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制によるものであることを特徴とする前記[1]〜[10]のいずれかに記載の治療剤又は発病抑制剤、
[20] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAのポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤の製造の為の使用、
[21] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを哺乳動物に投与するポリグルタミン病の治療又は発病抑制方法、及び、
[22] (1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAのポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤としての使用、
に関する。
また、本発明は(1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAを哺乳動物に投与することを特徴とする脳室の拡大抑制方法、ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死を抑制する方法、カスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化を抑制する方法、又はポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシングを抑制する方法に関する。
さらに、本発明は、脳室の拡大を抑制する医薬、ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死を抑制する医薬、カスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化を抑制する医薬、又はポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシングを抑制する医薬を製造するための(1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAの使用に関する。
さらに、本発明は、脳室の拡大を抑制する医薬、ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死を抑制する医薬、カスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化を抑制する医薬、又はポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシングを抑制する医薬としての(1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAの使用に関する。
本発明の治療剤又は発病抑制剤は、ポリグルタミン病、例えばハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型又は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症等に対して極めて優れた治療効果又は発病抑制効果を発揮するものである。
図1は、HSV−HGF形質導入後のR6/2マウス線条体におけるHGFの発現を示す図である。図中aは野生型同腹子マウス線条体を、bはR6/2マウス線条体を、cはR6/2(HSV−LacZ)マウス線条体を、dはR6/2(HSV−HGF)マウス線条体の組織像を示す。eはELISAにより測定した各マウス線条体のHGF量を示す。 図2は、R6/2マウスの線条体にHSV−HGF又はHSV−LacZ形質導入後の体重の経時変化を示す図である。 図3は、R6/2マウスの線条体にHSV−HGF又はHSV−LacZ形質導入後の生存曲線を示す図である。 図4は、クラスピングテストにおけるマウスの姿勢を示す図である。 図5は、クラスピングテストにおけるスコアの経時変化を示す図である。 図6は、ロタロッドテストにおける運動機能の経時変化を示す図である。 図7は、フットプリントテストにおける歩幅の平均間隔の経時変化を示す図である。 図8は、フットプリントテストにおける前肢/後肢の重なりの分離の経時変化を示す図である。 図9は、マウス脳の冠状断面を示す図である。図中、Ctxは大脳皮質を、CCは脳梁を、Strは線条体を、Lvは側脳室(Lateral ventricle)を示す。 図10は、9週令マウスの脳重量を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図11は、線条体におけるNeuN陽性細胞を示す図である。 図12は、線条体におけるNeuN陽性細胞数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図13は、線条体におけるリン酸化c−Metの発現を示す図である。 図14は、線条体における活性化カスパーゼ−3の免疫染色像を示す図である。 図15は、カスパーゼ−3のウエスタンブロット分析の結果を示す図である。図中、1,2は野生型同腹子を、3,4はR6/2マウスを、5,6はR6/2(HSV−LacZ)マウスを、7,8はR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図16は、ウエスタンブロット分析における活性化カスパーゼ−3のバンド強度を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図17は、野生型同腹子マウスにおけるカスパーゼ−3の活性化に対するR6/2マウスにおけるカスパーゼ−3の活性化率を示す図である。 図18は、カスパーゼ−1のウエスタンブロット分析の結果を示す図である。図中、1,2は野生型同腹子を、3,4はR6/2マウスを、5,6はR6/2(HSV−LacZ)マウスを、7,8はR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図19は、ウエスタンブロット分析における活性化カスパーゼ−1のバンド強度を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。 図20は、野生型同腹子マウスにおけるカスパーゼ−1の活性化に対するR6/2マウスにおけるカスパーゼ−の活性化率を示す図である。 図21は、R6/2(HSV−HGF)マウス及び野生型同腹子の線条体におけるKi−67陽性細胞の免疫染色像を示す図である。図中、Strは線条体を、LVは脳室を、SVZは脳室下帯を示す。 図22は、マウス脳室下帯及び線条体におけるBrdU陽性細胞数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。*は野生型同腹子に対する有意差(p<0.05)を、**はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図23は、マウス脳室下帯及び線条体におけるネスチンとBrdUの両者が陽性である細胞の数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。**はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図24は、マウス脳室下帯及び線条体におけるDCXとBrdUの両者が陽性である細胞の数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。**R6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図25は、マウス脳室下帯及び線条体におけるPSA−NCAMとBrdUの両者が陽性である細胞の数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。*は野生型同腹子に対する有意差(p<0.05)を、**はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図26は、マウス脳室下帯及び線条体におけるβIIIチューブリンとBrdUの両者が陽性である細胞の数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。**はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図27は、マウス脳室下帯及び線条体におけるNeuNとBrdUの両者が陽性である細胞の数を示す図である。図中、Aは野生型同腹子を、BはR6/2マウスを、CはR6/2(HSV−LacZ)マウスを、DはR6/2(HSV−HGF)マウスを示す。**はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。 図28は、マウス線条体におけるネスチンとリン酸化c−Metの両者が陽性である細胞の免疫染色像を示す図である。 図29は、マウス線条体におけるDCXとリン酸化c−Metの両者が陽性である細胞の免疫染色像を示す図である。 図30は、HGF蛋白質をコードするDNAを挿入したHSV−HGF、AAV2−HGF及びAAV4−HGFの3種のベクターをラット腰髄の脊髄実質に注射し、5日後の脊髄におけるHGFの発現量を示す図である。図中、Uは脊髄の吻側を、Mは中央部を、Lは尾側を示す。*はコントロールに対する有意差(p<0.05)を示す。 図31は、HGF蛋白質をコードするDNAを挿入したHSV−HGF、AAV2−HGF及びAAV4−HGFの3種のベクターをラット腰髄の脊髄腔に注射し、5日後の脊髄におけるHGFの発現量を示す図である。図中、Uは脊髄の吻側を、Mは中央部を、Lは尾側を示す。*はコントロールに対する有意差(p<0.05)を示す。 図32は、ハンチンチン蛋白質のウエスタンブロット分析の結果を示す図である。 図33は、ハンチンチン蛋白質のウエスタンブロット分析におけるC末端フラグメントを定量解析した結果を示す図である。図中*はR6/2(HSV−LacZ)マウスに対する有意差(p<0.05)を示す。
本発明において「HGF蛋白質をコードするDNA」とは、HGF蛋白質を発現し得るDNAをいう。HGF蛋白質をコードするDNAを含むDNAとしては、例えば、Nature,342,440(1989);特許第2777678号公報;Biochem.Biophys,Res.Commun.,1989年,第163巻,p.967-973;Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991年,第88巻(16号),p.7001-7005等に記載され、例えば、GeneBank/EMBL/DDBJにAccession No.M60718、M73240、AC004960、AY246560、M29145又はM73240等として登録されているヒト由来のHGF蛋白質をコードするDNA等が好ましく挙げられる。また、本発明のHGF蛋白質をコードするDNAには、前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性、例えばマイトゲン活性、モートゲン活性等を有する蛋白質をコードするDNA等が包含される。
HGF蛋白質をコードするDNAの具体例としては、例えば、配列番号1又は2で表わされる塩基配列を有するDNA、若しくは配列番号1又は2で表わされる塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性、例えばマイトゲン活性、モートゲン活性等を有する蛋白質をコードするDNA等が好ましく挙げられる。ここで、配列番号1で表される塩基配列は、Accession No.M60718の塩基配列第73乃至2259に相当し、該DNAは配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるHGF蛋白質をコードするDNAに相当する。配列番号2で表される塩基配列は、Accession No.M73240の塩基配列第66乃至2237に相当し、該DNAは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるHGF蛋白質をコードするDNAに相当する。
配列番号1又は2で表わされる塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば上記DNAの部分配列をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、約0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下、約65℃でハイブリダイゼーションを行った後、約0.1〜2倍の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムよりなる。)を用い、約65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。ストリンジェントな条件は、以下において同様である。
上記の配列番号1又は2で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとして具体的には、配列番号1又は2で表わされる塩基配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNA等が挙げられる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning,A laboratory Manual,Third Edition(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,2001:以下、モレキュラー・クローニング第3版と略す。)に記載の方法等に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
さらに、本発明のHGF蛋白質をコードするDNAは上記に限定されず、発現する蛋白質がHGF蛋白質と実質的に同じ作用を有する蛋白質をコードするDNAである限り、本発明のHGF蛋白質をコードするDNAとして使用できる。例えばHGF蛋白質の部分ペプチドをコードするDNAであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA等も好ましく使用できる。
HGF蛋白質の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記した部分ペプチドをコードする塩基配列を有しかつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAであればいかなるものであってもよい。具体的な本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(a)配列番号1又は2で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNAであって、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA、(b)配列番号1又は2で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNA等が挙げられる。このようなDNAとしては、より具体的には、例えば、配列番号1で表されるヒトHGFの塩基配列の第94番目から第630番目までの塩基配列(HGFのN末端ヘアピンループから第1クリングルドメインまでのペプチドをコードするDNA)を有するDNAや、配列番号1で表されるヒトHGFの塩基配列の第94番目から第864番目までの塩基配列(HGFのN末端ヘアピンループから第2クリングルドメインまでのペプチドをコードするDNA)を有するDNA等が好ましく挙げられる。
HGF蛋白質をコードするDNA又はHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAは、例えば通常のハイブリダイゼーション法やPCR法等により容易に得ることができ、該DNAの取得は具体的には例えば前記モレキュラー・クローニング第3版等の基本書等を参考にして行うことができる。
なお、本発明で用いられるHGF蛋白質をコードするDNA又はHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAを含むDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞もしくは組織由来のcDNA、細胞もしくは組織由来のcDNAライブラリー又は合成DNA等が好ましく挙げられる。前記ライブラリーにゲノムDNA断片がクローニングされるベクターとしては、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド又はファージミド等が挙げられる。
また、本発明で用いられるHGF蛋白質をコードするRNA又はHGF蛋白質の部分ペプチドをコードするRNAであって、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするRNAも、逆転写酵素によりHGF蛋白質又は部分ペプチドを発現することができるものであれば、本発明に用いることができる。該RNAとしては、例えば細胞又は組織よりmRNA画分を調製して、RT−PCR法によって増幅したRNA等が挙げられ、本発明の範囲内である。また該RNAも公知の手段により得ることができる。
本発明で使用されるHGF蛋白質は公知物質であり、医薬として使用できる程度に精製されたものであれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。
HGF蛋白質は、例えばHGF蛋白質を産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養上清等から分離、精製して該HGF蛋白質を得ることができる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGF蛋白質をコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適当な宿主細胞に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清液から目的とする組換えHGF蛋白質を分離すること等により得ることもできる。(例えば、特開平5−111382号公報、Biochem.Biophys.Res.Commun.1989年、第163巻,p.967等を参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、酵母又は動物細胞等を用いることができる。このようにして得られたHGF蛋白質は、天然型HGF蛋白質と実質的に同じ作用を有する限り、そのアミノ酸配列中の1若しくは複数個(複数個とは例えば、2〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個;以下同様である。)のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加されていてもよく、また同様に糖鎖が置換、欠失若しくは付加されていてもよい。そのようなHGF蛋白質として、下記する5アミノ酸欠損型HGF蛋白質を挙げることができる。ここで、アミノ酸配列について、「1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加」とは、遺伝子工学的手法、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的手段により、又は天然に生じうる程度の数(1〜複数個)が、欠失、置換若しくは付加等されていることを意味する。糖鎖が置換、欠失若しくは付加したHGF蛋白質とは、例えば天然のHGF蛋白質に付加している糖鎖を酵素等で処理し糖鎖を欠損させたHGF蛋白質、また糖鎖が付加しない様に糖鎖付加部位のアミノ酸配列に変異が施されたもの、あるいは天然の糖鎖付加部位とは異なる部位に糖鎖が付加するようアミノ酸配列に変異が施されたもの等をいう。具体的には、例えばNCBIのデータベースに登録されているAccession No.NP_001010932のヒトHGFに対し、糖鎖付加部位の289位AsnをGlnに、397位AsnをGlnに、471位ThrをGlyに、561位AsnをGlnに、648位AsnをGlnにそれぞれ置換することによって糖鎖が付加しないようにしたHGF[Fukuta K et al.,Biochemical Journal,388,555-562(2005)]等を挙げることができる。
さらに、HGF蛋白質のアミノ酸配列と少なくとも約80%以上の相同性を有する蛋白質、好ましくは約90%以上の相同性を有する蛋白質、より好ましくは約95%以上の相同性を有する蛋白質であって、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質も本発明に使用されるHGF蛋白質に含まれる。上記アミノ酸配列について「相同」とは、蛋白質の一次構造を比較し、配列間において各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味である。
上記HGF蛋白質としては、例えばNCBIのデータベース等に登録されている例えばAccession No.P14210(配列番号3)又はAccession No.NP_001010932(配列番号4)で表されるアミノ酸配列で示されるヒト由来の蛋白質等が好ましく挙げられる。配列番号4で表されるHGF蛋白質は、配列番号3で表されるアミノ酸配列の第161〜165番目の5個のアミノ酸残基が欠失している5アミノ酸欠損型HGF蛋白質である。配列番号3又は4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質は、両者ともヒト由来の天然HGF蛋白質であって、HGFとしてのマイトゲン活性、モートゲン活性等を有する。
配列番号3又は4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、配列番号3又は4で表されるアミノ酸配列と少なくとも約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む蛋白質であって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質、例えば配列番号3又は4で表されるアミノ酸配列から、1〜複数個のアミノ酸残基を挿入又は欠失させたアミノ酸配列、1〜複数個のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基と置換させたアミノ酸配列又は1〜複数個のアミノ酸残基が修飾されたアミノ酸配列等を含む蛋白質であって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質であることが好ましい。挿入されるアミノ酸又は置換されるアミノ酸は、遺伝子によりコードされる20種類のアミノ酸以外の非天然アミノ酸であってもよい。非天然アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基を有する限りどのような化合物でもよいが、例えばγ−アミノ酪酸等が挙げられる。
これらの蛋白質は、単独であっても、これらの混合蛋白質であってもよい。配列番号3又は4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を含む蛋白質としては、例えばNCBIのデータベースに登録されているAccession No.BAA14348又はAAC71655等のヒト由来HGFが挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本発明で用いられるHGF蛋白質又はそれをコードするDNAは、ヒトに適用する場合は前記したヒト由来のものが好適に用いられるが、ヒト以外の哺乳動物(例えばサル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、チンパンジー等)に由来するHGF蛋白質又はそれをコードするDNAであってもよい。このようなHGFとしては、例えばNCBIのデータベース等に登録されている例えば、マウス由来HGF(例えばAccession No.AAB31855,NP_034557,BAA01065,BAA01064等)、ラット由来HGF[例えばAccession No.NP_58713(配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質)等]、ウシ由来HGF(例えばAccession No.NP_001026921、XP874086,BAD02475等)、ネコ由来HGF(例えばAccession No.NP_001009830、BAC10545,BAB21499等)、イヌ由来HGF(例えばAccession No.NP_001002964、BAC57560等)又はチンパンジー由来HGF(例えばAccession No.XP519174等)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に用いられるHGF蛋白質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシラート[−COOM(Mは金属を示す)]、アミド(−CONH2)又はエステル(−COOR)のいずれであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチル等のC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等のC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチル等のC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチル等のフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチル等のα−ナフチル−C1−2アルキル基等のC7−14アラルキル基のほか、アセチルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル等のC2−6アルカノイルメチル基等が用いられる。本発明で用いられるHGF蛋白質が、C末端以外にカルボキシル基又はカルボキシラートを有している場合、カルボキシル基又はカルボキシラートがアミド化又はエステル化されているものも本発明におけるHGF蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステル等が用いられる。さらに、本発明に用いられるHGF蛋白質には、上記した蛋白質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル等のC2−6アルカノイル基等のC1−6アシル基等)で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の反応性基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾリル基、インドリル基、グアニジノ基等)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル等のC2−6アルカノイル基等のC1−6アシル基等)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質等の複合蛋白質等も含まれる。
本発明で用いるHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド(以下、HGF部分ペプチドと略記する場合がある。)としては、上記したHGF蛋白質の部分ペプチドであって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するものであればいずれのものであってもよい。本発明において、HGF部分ペプチドのアミノ酸の数は、上記したHGF蛋白質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも約20個以上、好ましくは約50個以上、より好ましくは約100個以上のアミノ酸配列を含有するペプチド等が好ましい。具体的には、例えば、配列番号3で表されるヒトHGFアミノ酸配列のN末端側から32番目のアミノ酸から210番目のアミノ酸までのアミノ酸配列(HGFのN末端ヘアピンループから第1クリングルドメインまでの配列)で示されるペプチドや、配列番号3で表されるヒトHGFアミノ酸配列のN末端側から32番目のアミノ酸から288番目のアミノ酸までのアミノ酸配列(HGFのN末端ヘアピンループから第2クリングルドメインまでの配列)で示されるペプチド等が好ましく挙げられる。
本発明のHGF部分ペプチドにおいては、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシラート[−COOM(Mは上記と同意義)]、アミド(−CONH2)又はエステル(−COOR;Rは上記と同意義)のいずれであってもよい。さらに、HGF部分ペプチドには、上記したHGF蛋白質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチド等の複合ペプチド等も含まれる。
本発明に用いられるHGF蛋白質又はその部分ペプチドの塩としては、酸又は塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)との塩等が挙げられる。
本発明に用いられるHGF蛋白質の部分ペプチド又はその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいはHGF蛋白質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれでも良い。すなわち、HGF蛋白質を構成し得る保護基を有していてもよい部分ペプチドもしくはアミノ酸と保護基を有していてもよい残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は、保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、M.Bodanszky及びM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York(1966年)、Schroeder及びLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)等に記載された方法等が挙げられる。反応後は通常の精製方法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、結晶化又は再結晶等を組み合わせてHGF蛋白質の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
本発明における、「ポリグルタミン病」としては、原因遺伝子の塩基配列に含まれるシトシン・アデニン・グアニン(CAG;グルタミンのコドン)配列の繰り返し配列を約30以上含む原因遺伝子が転写、翻訳されてできる異常に伸長したグルタミン鎖(ポリグルタミン)を含む原因遺伝子産物が神経細胞に異常蓄積又は凝集して神経細胞変性又は細胞死や機能異常、例えば筋肉運動の変調(例えば舞踏病や筋失調症等)、認識力の低下又は精神化症状等を引き起こす遺伝性神経変性疾患が典型例として挙げられる。
ポリグルタミン病としては、具体的には、例えばハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型又は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症等が挙げられる。
本発明において、「治療」とは、ポリグルタミン病の症状を緩解、又は完治させることをいい、より具体的には、例えば、ポリグルタミン病における神経細胞変性又は細胞死を抑制又は遅延させることによって、前記機能異常を抑制又は防止し、正常化させることを含む。また、該治療には、神経細胞変性又は細胞死が誘発される部位において、神経細胞を新生させること等も包含される。
本発明において、「発病抑制」とは、ポリグルタミン病のCAGの繰り返しを約30以上有する原因遺伝子が発現し、該原因遺伝子産物が生成されて誘発される神経変性又はその進行を抑えることをいい、ポリグルタミン病のCAGの繰り返しを約30以上有する原因遺伝子が発現し、該原因遺伝子産物が生成され蓄積されるのを抑制又は防止することを包含する。
原因遺伝子としては、例えばハンチンチン遺伝子等が挙げられる。該ハンチンチン遺伝子はその第1エクソンにCAGの繰り返し配列を有する。なお、ハンチンチン遺伝子は非病原性の場合では前記第1エクソンに存在するCAGの繰り返し配列が約30未満であるが、病原性遺伝子としては前記CAGの繰り返し配列が約30以上になるものが挙げられる。
ポリグルタミン病の発病抑制の方法としては、例えば(1)CAGの繰り返しを30以上有する原因遺伝子の発現抑制又は防止、(2)CAGの繰り返しを30以上有する原因遺伝子産物の生成抑制又は防止、(3)生成されたCAGの繰り返しを30以上有する原因遺伝子産物の蓄積抑制又は防止、(4)ポリグルタミン病原因遺伝子産物に起因しておこる神経変性の進行抑制、あるいは(5)CAGの繰り返しを30以上有する原因遺伝子産物のプロセシングの抑制等が挙げられる。前記(1)乃至(5)いずれかあるいは2つ以上を抑制又は防止することが好ましい。
本発明のポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤は、ヒトのほか、ヒト以外の哺乳動物(例えば、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット、チンパンジー等)にも適用できる。
本発明の治療剤又は発病抑制剤を患者に投与する場合、その投与形態、投与方法、投与量等は、有効成分がHGF蛋白質の場合と、HGF蛋白質をコードするDNAの場合と若干異なってもよい。
例えば、有効成分がHGF蛋白質である場合の本発明の製剤は、種々の製剤形態、例えば液剤、固形剤等をとりうるが、一般的にはHGF蛋白質のみを又はそれを慣用の担体と共に注射剤、噴射剤、徐放性製剤(例えば、デポ剤)等に製剤されるのが好ましい。上記注射剤は、水性注射剤又は油性注射剤のいずれでもよい。水性注射剤とする場合、公知の方法に従って、例えば、水性溶媒(注射用水、精製水等)に、医薬上許容される添加剤、例えば等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコール等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等)、増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)又はpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等)等を適宜添加した溶液に、HGF蛋白質を溶解した後、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製することができる。また適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)又は非イオン界面活性剤(ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50等)等をさらに配合してもよい。油性注射剤とする場合、油性溶媒としては、例えば、ゴマ油又は大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル又はベンジルアルコール等を配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプル又はバイアル等に充填される。注射剤中のHGF蛋白質含量は、通常約0.0002〜0.2w/v%、好ましくは約0.001〜0.1w/v%に調整され得る。なお、注射剤等の液状製剤は、凍結保存又は凍結乾燥等により水分を除去して保存するのが望ましい。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水等を加え、再溶解して使用される。
噴霧剤も製剤上の常套手段によって調製することができる。噴霧剤として製造する場合、その噴霧剤に配合される添加剤としては、一般に吸入用製剤に使用される添加剤であればいずれのものであってもよく、例えば、噴射剤の他、上記した溶剤、保存剤、安定化剤、等張化剤、pH調整剤等を配合し得る。噴射剤としては、液化ガス噴射剤又は圧縮ガス等が挙げられる。液化ガス噴射剤としては、例えば、フッ化炭化水素(HCFC22、HCFC−123、HCFC−134a、HCFC142等の代替フロン類等)、液化石油、ジメチルエーテル等が挙げられる。圧縮ガスとしては、例えば、可溶性ガス(炭酸ガス、亜酸化窒素ガス等)又は不溶性ガス(窒素ガス等)等が挙げられる。
また、本発明で用いられるHGF蛋白質は、生体分解性高分子と共に、徐放性製剤(例えばデポ剤)とすることもできる。HGF蛋白質は特にデポ剤とすることにより、投薬回数の低減、作用の持続性及び副作用の軽減等の効果が期待できる。該徐放性製剤は公知の方法に従って製造することができる。本徐放性製剤に使用される生体内分解性高分子は、公知の生体内分解性高分子のなかから適宜選択できるが、例えばデンプン、デキストラン又はキトサン等の多糖類;コラーゲン又はゼラチン等の蛋白質;ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリロイシン、ポリアラニン又はポリメチオニン等のポリアミノ酸;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体ポリカプロラクトン、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリ酸無水物又はフマル酸・ポリエチレングリコール・ビニルピロリドン共重合体等のポリエステル;ポリオルソエステル又はポリメチル−α−シアノアクリル酸等のポリアルキルシアノアクリル酸;ポリエチレンカーボネート又はポリプロピレンカーボネート等のポリカーボネート等が挙げられる。好ましくはポリエステル、更に好ましくはポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体である。乳酸−グリコール酸共重合体を使用する場合、その組成比(乳酸/グリコール酸)(モル%)は徐放期間によって異なるが、例えば徐放期間が約2週間ないし3カ月、好ましくは約2週間ないし1カ月の場合には、約100/0乃至50/50が好ましい。該ポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体の重量平均分子量は、一般的には約5,000乃至20,000が好ましい。ポリ乳酸又は乳酸−グリコール酸共重合体は、公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に記載の製造法に従って製造できる。生体分解性高分子とHGF蛋白質の配合比率は特に限定はないが、例えば生体分解性高分子に対して、HGF蛋白質が約0.01〜30w/w%が好ましい。
投与方法としては、注射剤もしくは噴霧剤を直接ポリグルタミン病の病変部位に直接注射(髄腔内投与又は脊髄実質投与、徐放性ポンプによる髄腔内持続投与等)もしくは噴霧するか、あるいは徐放性製剤(デポ剤)をポリグルタミン病の病変部位のある組織に近い部位に埋め込むのが好ましい。また、投与量は、剤形、疾患の程度又は年齢等に応じて適宜選択されるが、通常、1回当たり1μg〜500mg、好ましくは10μg〜50mg、さらに好ましくは1〜25mgである。また、投与回数も剤形、疾患の程度又は年齢等に応じて適宜選択され、1回投与とするか、ある間隔をおいて持続投与とすることもできる。持続投与の場合、投与間隔は1日1回から数ヶ月に1回でよく、例えば、徐放性製剤(デポ剤)による投与や徐放性ポンプによる髄腔内持続投与の場合は、数ヶ月に1回でもよい。
一方、HGF遺伝子を患者に投与するには、常法、例えば別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術,羊土社,1996、別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法,羊土社,1997、日本遺伝子治療学会編遺伝子治療開発研究ハンドブック、エヌ・ティー・エス,1999等に記載の方法に従って、行うことが好ましい。
具体的な投与方法としては、例えば、HGF遺伝子が組み込まれた組換え発現ベクター等をポリグルタミン病の病変部位の組織(例えば脊髄神経、脳等)へ局所注射する方法、又は、患者の病変部位の組織又は脊髄等から細胞を体外に取り出して、該細胞にHGF遺伝子が組み込まれた組換え発現ベクターを導入し形質転換させた後に、形質転換された前記細胞を、患者の病変部位又は脊髄に移植する方法等が挙げられる。
発現ベクターとしては、nakedプラスミド、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(I型単純ヘルペスウイルス等)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40又は免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルス又はRNAウイルス等が挙げられるが、これらに限定されない。前記発現ベクターに目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感染させることにより、細胞内にHGF蛋白質をコードするDNAを導入することが可能である。中でも、I型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)ベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター等が好ましい。
前記HSV−1ベクターは神経向性を有するベクターである。HSV−1ベクターとしては、多重遺伝子(30kbまで)が組み込まれている大きな(152kb)ゲノムを有し、かつ生涯にわたり潜在的に神経細胞に対して感染を樹立する能力を有するものが好ましい。具体的なHSV−1ベクターとしては、ウイルス複製のためのICR4,ICP34.5及びVP16(vmw65)をエンコードする3つの遺伝子の欠失により、重篤な障害状態にある複製能力のないHSV−1(HSV1764/4−/pR19)ベクター(Coffin RS,et al.,J.Gen.Virol.1998年,第79巻,p.3019-3026;Palmer JA,et al.,J.Virol.,2000年,第74巻,p.5604-5618;Lilley CE,et al.,J.Virol.,2001年,第75巻,p.4343-4356)等が挙げられる。また、AAVベクターは、非病原性ウイルスに属し、安全性が高く、また神経細胞等の非分裂細胞に効率よく遺伝子導入できるベクターである。AAVベクターとしては、AAV−2、AAV−4、AAV−5等が挙げられる。これらHSV−1ベクターやAAVベクターは目的遺伝子を神経細胞等において長期間発現させ得る。ポリグルタミン病は長期間を経て病態を完成するので、本発明に使用されるベクターとしては、長期発現を可能とするHSV−1ベクターやAAVベクターがとりわけ好ましい。
HGFのポリグルタミン病に対する効果の評価のためには、例えば、HSV−1ベクター、AAVベクターを使用してHGF遺伝子をポリグルタミン病の病変部位、例えば線条体や髄腔内等へ形質導入するのが好ましい。
製剤形態としては、上記の各投与形態に合った種々の公知の製剤形態[例えば、注射剤、噴霧剤、徐放性製剤(デポ剤)、マイクロカプセル剤等]をとり得ることができる。注射剤、噴霧剤、徐放性製剤(デポ剤)はHGF蛋白質の場合と同様にして調製できる。また、マイクロカプセル剤を製造する場合、例えばHGF遺伝子を含む発現プラスミドを導入した宿主細胞等を芯物質としてこれを公知の方法(例えばコアセルベーション法、界面重合法又は二重ノズル法等)に従って被膜物質で覆うことにより直径約1〜500、好ましくは約100〜400μmの微粒子として製造することができる。被膜物質としては、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、エチルセルロース、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール又はヒドロキシプロピルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、キトサン−アルギン酸塩、硫酸セルロース−ポリ(ジメチルジアリル)アンモニウムクロライド、ヒドロキシエチルメタクリレート−メチルメタクリレート、キトサン−カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩−ポリリジン−アルギン酸塩等の膜形成性高分子等が挙げられる。
製剤中のDNAの含量や投与量は、治療目的の疾患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができる。また投与量は、HGF遺伝子導入ベクターの種類により異なるが、HGF遺伝子導入ベクターに換算して、通常1×106pfu〜1×1012pfu、好ましくは1×107pfu〜2×1011pfu、さらに好ましくは1.5×107pfu〜1.5×1011pfuを数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。
本発明の剤は、ポリグルタミン病、例えばハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型又は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症等、好ましくはハンチントン舞踏病の治療又は発病の抑制に用いることができる。
ポリグルタミン病の治療又は発病の抑制効果は、公知の方法[例えば、クラスピングテスト(Nat.Med,第10巻,p.148-154,Epub.2004年,Jan.2018);ロタロッドテスト(J.Neurosci,2000年,第20巻,p.4389-4397);フットプリントテスト(J.Neurosci,1999年,第19巻,p.3248-3257)等]やそれに準じる方法、例えば、後述する試験例等に記載されている方法等を用いて測定することができる。
また、本発明によれば、HGF蛋白質もしくはHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド(HGF蛋白質等)、あるいはHGF蛋白質をコードするDNAもしくはHGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、HGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAを含むDNA(HGF遺伝子)を、脳室の拡大抑制、ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制、神経細胞におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制又は神経細胞新生に使用し得る。
脳室拡大は、脳の萎縮、特に線条体萎縮(例えば、線条体細胞死に基づく線条体萎縮)によるものが含まれる。本発明に係るHGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、脳室拡大により生じる症状、例えば歩行困難等の四肢障害等の運動機能障害、言語障害、記憶障害又は神経科症状等を抑制し得る。
ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死は、神経組織、例えば線条体等においてポリグルタミン病原因遺伝子産物が発現して蓄積するために生じるものが含まれる。本発明に係るHGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、ポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死、特に線条体におけるポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死を抑制し得る。なお、細胞死は、アポトーシス及びネクローシスを包含する。このため細胞死抑制というときは、細胞自体の死が抑制されればよく、アポトーシスを抑制してもよく、またネクローシスを抑制してもよく、あるいはその両方を抑制してもよい。
また、本発明に係るHGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、前記細胞死の誘導に関与する、プロテアーゼ、例えばカスパーゼ、とりわけカスパーゼ−1又はカスパーゼ−3の活性化を抑制し得る。ヒトには、カスパーゼは約10〜20種類存在し、ある種のカスパーゼが活性化されるとそのカスパーゼによって他のカスパーゼが活性化されるというカスケード反応を生じ、細胞死を誘導する。これらカスパーゼ中でカスパーゼ−3はカスパーゼ活性化の最後の段階で細胞死を実行する酵素として知られている。また、カスパーゼ−3は、ハンチントン舞踏病で活性化されることが知られている(Zhang Yら,J,Neurochem,2003年,第87巻,p.1184-1192)。カスパーゼ−3は種々の細胞内蛋白質を分解することによって細胞死を実行するプロテア―ゼであって、神経細胞において神経細胞変性又は細胞死が誘導される際に活性化され得る。カスパーゼ−3又はカスパーゼ−1の活性化抑制とは、前記カスパーゼ−3又はカスパーゼ−1の活性化を抑制することをいう。カスパーゼ−3又はカスパーゼ−1の活性化抑制作用は、公知の方法あるいはそれに準じる方法(例えば、Trends Biochem.Sci.,1997年,第22巻,p.388-393 ;Biochem.J.,1997年,第326巻,p.1-16;Anal.Biochem.,1997年,第251巻,p.98-102等に記載の方法)や例えば、後述する試験例等に記載されている方法等を用いて測定することができる。
また、本発明に係るHGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、神経細胞新生に関与する。神経細胞新生は、神経細胞に分化する神経芽細胞や神経幹細胞等の増殖を含む。新しい神経細胞が生まれるには、細胞分裂がなされなければいけない。細胞分裂時には、遺伝情報をコピーするためにDNAが合成さる。DNAが合成されたかどうかを知る手がかりとなる物質としては、例えばBrdU(ブロモデオキシウリジン)等が挙げられる。例えば、BrdUを体内に注入すると新しく生まれる細胞には、このBrdUが取り込まれるのでこのBrdUを指標に神経細胞の新生を判定できる。従って、神経細胞新生作用は、例えば脳神経細胞に取り込まれるBrdUを指標に測定する方法や後述する試験例等に記載されている方法等を用いて測定することができる。
また、本発明に係るHGF蛋白質等又はHGF遺伝子は、ポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシングに関与する。プロセシングは、ポリグルタミン病原因遺伝子発現過程において、該遺伝子の転写産物が細胞内の蛋白分解酵素等により部分分解等を受け固有の局在性や機能をもつ蛋白質に成熟していく過程をいうが、本発明においては該原因遺伝子産物が断片化されることをも含む。ポリグルタミン病では、いずれの原因遺伝子も原因遺伝子中に存在するポリグルタミンの伸張(30以上)を認めることを共通の特徴とする。ポリグルタミン病における神経毒性発現には、CAGの繰り返しを30以上有する原因遺伝子産物が断片化されることが含まれる。例えばハンチントン舞踏病においては、原因遺伝子(ハンチンチン遺伝子)に含まれるCAGの繰り返しが30以上に増加したハンチンチン遺伝子が発現される過程においてプロセシングにより、該原因遺伝子産物(変異ハンチンチン)が断片化される。断片化された変異ハンチンチンは、病原性を有し、神経毒性を発現すると考えられている。これらのことを背景にして、ハンチンチン蛋白質がプロセシングを受けて断片化されたハンチンチンになる効率がHGF遺伝子により抑制されるかどうかを評価することで、プロセシングを抑制するか否かを評価することができる。前記プロセシングの抑制作用は例えば後述する試験例に記載されている方法等を用いて測定することができる。
本発明の使用は(1)(イ)HGF蛋白質もしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチド又はこれらの塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNAもしくは(ロ)HGF蛋白質の部分ペプチドであってHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNA又は(ハ)それらDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを含むDNAのポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤としての使用である。また、上記の(1)あるいは(2)の成分のポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤の製造の為の使用である。
本発明のポリグルタミン病の治療又は発病抑制方法は哺乳動物に上記の(1)あるいは(2)の成分を投与する方法である。
さらに、本発明の使用は上記の(1)あるいは(2)の成分の脳室の拡大抑制剤としての使用である。また、上記の(1)あるいは(2)の成分の脳室の拡大抑制剤の製造の為の使用である。
本発明の脳室の拡大抑制方法は哺乳動物に上記の(1)あるいは(2)の成分を投与する方法である。
さらに、本発明の使用は上記の(1)あるいは(2)の成分のポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制剤としての使用である。また、上記の(1)あるいは(2)の成分のポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制剤の製造の為の使用である。
本発明のポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制方法は哺乳動物に上記の(1)あるいは(2)の成分を投与する方法である。
さらに、本発明の使用は上記の(1)あるいは(2)の成分の神経細胞におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制剤としての使用である。また、上記の(1)あるいは(2)の成分の神経細胞におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制剤の製造の為の使用である。
本発明の神経細胞におけるカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化抑制方法は哺乳動物に上記の(1)あるいは(2)の成分を投与する方法である。
さらに、本発明の使用は上記の(1)あるいは(2)の成分のポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制剤としての使用である。また、上記の(1)あるいは(2)の成分のポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制剤の製造の為の使用である。
本発明のポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制方法は哺乳動物に上記の(1)あるいは(2)の成分を投与する方法である。
本発明の医薬及び方法はポリグルタミン病、例えばハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型又は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症等、好ましくはハンチントン舞踏病の患者への使用が好適である。
以下に試験例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試験例1〕
ハンチントン舞踏病遺伝子導入形質転換マウスにおけるHGFの作用
1.実験動物
B6CBA−TgN(変異HDエキソン1)62Gpb/J雌性マウス(Mangiarini Lら,Cell,1996年,第87巻,p.493-506)から摘出した卵巣が移植されたB6CBAF1/J雌性マウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から入手し、B6CBAF1/J雄性マウスと共に飼育し、交配した。
交配した子は、その尾組織から抽出したゲノムDNAのPCR解析により遺伝子系を決定し、TgN62Gpb遺伝子を有するマウスをハンチントン舞踏病モデルマウスR6/2マウス(以下、R6/2マウスと略記する。)とした。また、前記R6/2マウスと同腹でTgN(変異HDエキソン1)62Gpb遺伝子を持たないマウスを野生型同腹子マウスとして使用した。
全ての実験は大阪大学動物倫理委員会のガイドラインに従って行なった。すべての取り組みはできるだけ動物の負担を少なくし、できるだけ少ない数の動物を使用した。
2.ベクターの構築、製造及び精製
pR19GFPWPRE(Lilley CEら,J.Virol,2001年,第75巻,p.4343-4356)のGFP(green fluorescent protein;緑色蛍光タンパク)遺伝子を、ラットHGFをコードするDNAの全長(ratHGF;配列番号5)にKT3タグ(3’−CCGCCCGAGCCAGAGACT−5’ ;配列番号7)を付加したcDNA(Sun Wら,J.Neurosci,2002年,第22巻,p.6537-6548)で置換し、pR19ratHGFKT3WPREを構築した。このベクター(pR19ratHGFKT3WPRE)のシークエンスは、ABI 310キャピラリーシークエンサーを使用する分析により確認した。次いで、M49細胞を用いて、プラスミドpR19ratHGFKT3WPREのDNAと、HSV1764/−4/pR19LacZウイルスDNAとのコトランスフェクションにより相同組換えを行なった。白色プラークを選択し、3回精製し、Palmer JAらの方法(J.Virol,2000年,第74巻,p.5604-5618)に従い、複製能力のないウイルスを増殖させた。ラットHGFの発現を、免疫染色によって確認した。該発現を更にウエスタンブロット法及びラットHGFの酵素抗体免疫測定法(ELISA)により確認した。本試験に使用するために、タイター(titer)が1〜2×109 pfu(プラーク・フォーミング・ユニット)/mLであるHSV1764/−4/pR19HGFウイルスベクター(HGF発現ベクター;以下、HSV−HGFと略記する)と、タイターが1〜1.5×109pfu/mLであるHSV1764/−4/pR19LacZウイルスベクター(HGF非発現ベクター;以下、HSV−LacZと略記する)を調製した。
3.脳内へのHSV挿入(In vivo)
4週令のR6/2マウスに、ペントバルビタールを50mg/kg静脈注射して深く麻酔した。線条体(−0.4mm前後,±1.8mm内外側方向、及び−3.5mm背腹方向)へ注射するために、該マウスをKopf脳定位固定装置に入れ固定した。5μLのHSV−LacZ(5×106pfu)又はHSV−HGF(3×105pfu)を該マウスに注射した。注射は、マウスの前記線条体に10μLのハミルトンシリンジを用いて速度0.3μL/minで実施された。以下、HSV−LacZを注射したマウスをR6/2(HSV−LacZ)マウス、HSV−HGFを注射したマウスをR6/2(HSV−HGF)マウスという。
4.組織学的及び免疫組織化学的分析
マウスに深く麻酔し、氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を心臓から流入してマウスの全身を灌流し、次いで4%パラホルムアルデヒド含有PBSで灌流固定した。脳を段階的に10%及び20%シュークロースで凍結保護した後、凍結し、その後凍結した脳を、20μmの連続切片とした。得られた凍結切片は、ニッスル物質を染色するためクレシル・バイオレットで染色した。
免疫組織化学的染色は、凍結切片を、PBSで洗浄し、10%ヤギ又はロバ血清を含むPBSに1時間浸漬し、次いで抗体と共に4℃で一晩インキュベートすることによって行なわれた。
抗体は、以下を使用した。
(1)NeuN抗体
マウスモノクロナール抗体(Chemicon International社製;カタログ番号MAB377)を500倍希釈して使用した。
(2)c−Met抗体
SP260、ウサギポリクロナール抗体(Santa Cruz Biotechnology社製;カタログ番号sc−162)を50倍希釈して使用した。
(3)リン酸化c−Met抗体
ウサギポリクロナール抗体,(Biosource社製;カタログ番号44−888G)を100倍希釈して使用した。
(4)活性化カスパーゼ−3抗体
ウサギポリクロナール抗体(プロメガ社製;カタログ番号G748)を125倍希釈して使用した。
5.酵素抗体免疫測定(ELISA)法
組織のHGFは、Sun Wら、Brain Res Mol Brain Res,2002年,第103巻,p.36-48に記載のように抗HGFポリクロナール抗体(Tokushu Meneki製)を用いて測定した.
6.ウエスタンブロッティング
マウスの脳線条体のホモゲナイズは、50mMトリス−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、1%(W/V)トリトンX−100、1mM PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオライド;和光純薬工業株式会社製)、2μg/mLアンチパイン(ペプチド研究所製)、2μg/mLロイペプチン(ペプチド研究所製)、2μg/mLペプスタチン(ペプチド研究所製)を用いて調製された。同量の蛋白質(120μg/レーン)を15%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付した。分離後、蛋白質をポリビニリデンジフルオリド(polyvinylidene difluoride;PVDF)膜(BIO−RAD社製)へ電気的に転写した。転写したPVDF膜は、室温で2時間、10質量%スキムミルクでブロッキング後、抗カスパーゼ−3抗体(ウサギポリクロナール抗体;カタログ番号C9598,Sigma社製)又は抗カスパーゼ−1(p20)抗体(ウサギポリクロナール抗体;カタログsc−1218−R,Santa Cruz Biotechnology社製)でブロットした。次いで、抗カスパーゼ−3抗体又は抗カスパーゼ−1抗体は、2次抗体(DakoCytomation社製)をコンジュゲートしたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)と共にインキュベーションし、製品説明書に従ってECL reagents(製品番号RPN2106,アマシャム・バイオサイエンス社製)で発色させた。
バンドの強度は、Wayre Rasband氏によって開発されたNIH(National Institutes of Health)イメージソフトウエアを使用して解析された。
7.統計的分析
データは平均値±標準偏差(SD)で示し、統計学的有意差の検定は、フィッシャーの最小有意差法(PLSD)を用いる分散分析で評価した。
各グループのデータは、解析ソフトStatview 5.0(SAS Institute,Inc.製)で分析した。p<0.05の確率値の違いを統計的有意差ありとした。
8.HSV導入に伴うHGF発現
HGFのin vivo発現を、免疫組織化学的に分析した。9週令(HSV−HGF又はHSV−LacZ注射5週後)において、HGFの免疫反応性が、R6/2マウス又はR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較して、R6/2(HSV−HGF)マウスの線条体で増加した(図1a−d)。
ELISAを用いた線条体におけるHGF蛋白質濃度は以下の通りであった。線条体におけるHGF蛋白質濃度は、HSV−HGFを投与した野生型同腹子マウスでは、HSV−HGF注射3日後に47.07±5.81ng/gとなり、R6/2マウスのHGFの約3倍に増加した。9週令において、R6/2(HSV−HGF)マウス線条体におけるHGF蛋白質濃度はR6/2マウス又はR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較して有意に増加した。また、13週令においても、R6/2(HSV−HGF)マウス線条体におけるHGF蛋白質濃度はR6/2マウス又はR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較して増加をみたが、9週令と比較するとその程度は低下していた(図1e)。
9.体重変化
ウイルス挿入後、経時的にマウス体重を測定した。
R6/2マウス又はR6/2(HSV−LacZ)マウスの体重は、9週令の野生型同腹子マウスと比較して有意に減少した。R6/2(HSV−HGF)マウスの体重は、R6/2マウスの体重と比較して差は認められなかった(図2)。
10.生存曲線
R6/2マウス、R6/2(HSV−HGF)マウスの生存曲線は、Kaplan−Meier法により分析し、Statview 5.0(SAS Institute,Inc.製)を用いてログランク検定(log−rank test)を行なった。
その結果を図3に示した。R6/2(HSV−HGF)マウスの寿命は平均100.4±2.6日であり、R6/2マウスへのHSV−HGFの注射は、R6/2マウスの平均寿命(91.3±3.8日)及びR6/2(HSV−LacZ)マウスの平均寿命(88.6±3.8日)を延長させた。(図3)。
11.クラスピングテストに対するHGFの作用
クラスピングテストのため、マウスは30秒間尻尾を持って釣り上げ、フット・クラスピング(手足を広げられない姿勢)度をスコア化した。
フット・クラスピング度はTanaka Mらの方法(Nat.Med,第10巻,p.148-154,Epub.2004年,Jan 2018)に従い、フット・クラスピング時間から表1のようにスコア化した。
図4のR6/2マウスの姿勢がフット・クラスピングの特徴的な表現型である。野生型同腹子マウスは、フット・クラスピングの表現型を示さなかった(図4;野生型同腹子)。クラスピングスコアの経時変化を図5に示す。R6/2マウス又はR6/2(HSV−LacZ)マウスは6週令からずっとクラスピングの表現型を示した。R6/2(HSV−HGF)マウスではフット・クラスピングの表現型を8週令まで示さず、その後も12週令まで、フット・クラスピング時間(スコア)の抑制が認められた。
12.ロタロッドテストに対するHGFの作用
前肢及び後肢運動機能とバランスの測定のためにロタロッド装置を使用した。ロタロッドテストは、Ferrante RJらの方法(J.Neurosci,2000年,第20巻,p.4389-4397)に従って行なった。すなわち、試験は、ロタロッド装置を用い、10rpmで回転する棒の上に180秒マウスをのせ、棒から落ちる時間を記録し、分析した。
図6にロタロッドテストの経時変化を示した。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスでは野生型同腹子マウスと比較してロタロッドテストにおいてその機能が経時的に低下した。R6/2(HSV−HGF)マウスでは、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較してロタロッドテストの成績が有意に改善された。
13.フットプリントテストに対するHGFの作用
フットプリントテストは、Carter RJらの方法(J.Neurosci,1999年,第19巻,p.3248-3257)に従って行なった。フットプリントパターンを分析するために、前肢と後肢の足の運びは、Carter RJらの方法に従い、歩行の間、赤(前肢)インクと黒(後肢)インクで記録した。動物を、長さ50cm、幅10cmの通路にそって歩かせた。歩幅の長さは、各歩幅間における前肢の動きの平均間隔として測定した。左又は右前肢フットプリント、又は後肢のフットプリントの重なりは、歩幅の変化の均一性を測定するために使用した。
図7、8にフットプリントテストの経時変化を示した。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスでは野生型同腹子マウスと比較してフットプリントテストにおいてその歩幅の間隔が経時的に小さくなり、前肢/後肢の重なりが経時的に低下し、前肢と後肢が分離した。R6/2(HSV−HGF)マウスでは、R6/2マウスと比較して歩幅の間隔が大きくなり(図7)、前肢/後肢の重なりの分離が減少した(図8)。
14.組織学的及び免疫組織化学的分析結果
組織学的及び免疫組織化学的分析結果を以下に示した。
(1)脳萎縮と脳重量
発明者らは、脳部分のニッスル染色法を使用してR6/2マウスにおける脳萎縮に対するHGFの作用を評価した(図9)。9週令において、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスでは、線条体の萎縮による脳室の拡大が認められた。一方、R6/2(HSV−HGF)マウスでは、この脳室の拡大が抑制された。9週令のマウスの脳重量を図10に示す。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスの脳重量は、野生型同腹子マウスの脳重量と比較して減少した。しかし、R6/2(HSV−HGF)マウスでは、この脳重量の減少が抑制された。
(2)NeuN陽性細胞数に対するHGFの作用
9週令におけるマウス線条体中の神経細胞の総数を、神経細胞のマーカー(NeuN)を指標に算出した。NeuNは、NeuN抗体を用いて免疫組織化学的染色を行い検出し(図11)、検出された細胞数(NeuN陽性細胞数)をカウントした(図12)。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスにおけるNeuN陽性細胞数は、野生型同腹子マウスと比較して有意に減少した。R6/2(HSV−HGF)マウスでは、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較してNeuN陽性細胞数の有意な増加が認められた。
(3)リン酸化c−Metに対するHGFの作用
R6/2マウスを用いて、c−Met/HGF受容体が該マウスに発現するかどうか解明した。免疫組織化学的分析は、c−Met/HGF受容体が、野生型同腹子マウスと同様にR6/2マウスにおいてもNeuN陽性細胞に局在することを示した(図13のリン酸化c−Met/NeuN)。HGFで誘発されるc−Metチロシンリン酸化反応を調べるために、発明者らは線条体におけるリン酸化c−Metの免疫染色を施行した(図13)。c−Metの活性化を反映しているリン酸化c−Met免疫反応性のレベルがR6/2(HSV−HGF)マウスにおいて、他のグループのマウスのそれと比較して増加した。
(4)カスパーゼに対するHGFの作用
カスパーゼ−3は、ハンチントン舞踏病で活性化されることが知られている(Zhang Yら,J,Neurochem,2003年,第87巻,p.1184-1192)。発明者らは、HGFの神経保護作用を分析するために、HGFが活性化カスパーゼ−3の誘導に変化をもたらすかどうかを調べた。発明者らは活性化カスパーゼ−3の免疫染色を用いて、線条体におけるカスパーゼの活性化に対するHSV−HGFの作用を評価した。
9週令マウスにおける免疫組織化学的分析の結果は、以下のとおりであった。すなわち活性化カスパーゼ−3は、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスの線条体(主としてNeuN陽性細胞;図14の活性化カスパーゼ−3/NeuN)に認められたが、野生型同腹子マウスの線条体には認められなかった。R6/2(HSV−HGF)マウスでは、該活性化カスパーゼ−3の免疫反応性が減少した(図14)。
活性化カスパーゼ−3の定量分析のために、カスパーゼ−3のウエスタンブロット解析を施行した(図15)。R6/2(HSV−LacZ)マウスにおいて、カスパーゼ−3の顕著な活性化を認めた。一方、R6/2(HSV−HGF)マウスでは、カスパーゼ−3の活性化がR6/2マウスやR6/2(HSV−LacZ)マウスに比べ抑制された。ウエスタンブロット分析における活性化カスパーゼ−3のバンド強度を定量的に測定すると、R6/2(HSV−HGF)マウスでは、カスパーゼ−3の活性化がR6/2(HSV−LacZ)マウスを100%とすると、その23%にまで抑制されていた(図16)。カスパーゼ−3の活性の測定結果も同様であった(図17)。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスでは、野生型同腹子マウスに比べカスパーゼ−3の活性は高値を示したが、R6/2(HSV−HGF)マウスでは野生型同腹子マウスと同レベルまでカスパーゼ−3の活性が抑制された。
また、カスパーゼ−1は、ハンチントン舞踏病患者及びR6/2マウスの脳で活性化されることが知られている(Zhang Yら、J Neurochem、2003年、第87巻、p.1184-1192)。そこで、R6/2マウス線条体におけるカスパーゼ−1のウエスタンブロットを検討した(図18)。カスパーゼ−1のウエスタンブロット分析は、プロフォームとアクティブフォームを認識する抗体を用いて行なった。ウエスタンブロット分析における活性化カスパーゼ−1のバンド強度(R6/2(HSV−LacZ)マウスに対する%)は、R6/2(HSV−HGF)マウス線条体で40%にまで抑制された(図19)。カスパーゼ−1の活性の測定結果も同様であった(図20)。R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスでは、野生型同腹子マウスに比べカスパーゼ−1の活性は高値を示したが、R6/2(HSV−HGF)マウスでは野生型同腹子マウスと同レベル近くまでカスパーゼ−1の活性が抑制された。
〔試験例2〕
ハンチントン舞踏病遺伝子導入形質転換マウスにおける脳神経細胞の新生に対するHGFの作用
試験例1と同様に作成したR6/2マウス、R6/2(HSV−LacZ)マウス、R6/2(HSV−HGF)マウス及び野生型同腹子マウスを用いた。
1.Ki−67細胞に対するHGFの作用
脳室下帯(subventricular zone;SVZ)及び線条体での神経細胞増殖を検討した。増殖細胞のマーカーとしてKi−67を選択し、Ki−67の免疫染色を行い、脳室下帯及び線条体でのKi−67陽性細胞数を測定した。線条体において、R6/2(HSV−HGF)マウスでのKi−67陽性細胞数は、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスにおけるそれと比較して有意に増加した。(図21).
2.BrdU取り込みに対するHGFの作用
5週令マウスにBrdU(4×75mg/kg 腹腔内投与,生理食塩液に溶解、2時間毎に合計4回)を投与し、BrdU注射28日後(9週令)に屠殺した。マウスに麻酔し、心臓からPBSを流入してマウスの全身を灌流し、次いで4%パラホルムアルデヒド含有PBSで灌流固定した。脳を段階的に10%及び20%シュークロースで凍結保護した後、凍結し、その後凍結した脳を、20μmの連続切片とした。
BrdU免疫組織化学的染色のために、凍結切片は、1N塩酸で60℃、30分インキュベートし、10%ヤギ血清を含むPBSに1時間浸漬した。その後、凍結切片は、抗BrdU(ラットモノクロナール抗体;Oxford Biotechnology社製;カタログ番号OBT0030)と共に4℃で36時間インキュベートした。二重染色は蛍光色素アレクサ488と蛍光色素アレクサ546をコンジュゲートした2次抗体(Molecular Probes社製)で視覚化し、かつ切片はTO PRO−3(Molecular Probes社製)で核を対比染色した。蛍光画像は、Zeiss LSM−510共焦点蛍光顕微鏡で検出した。
結果:
脳室下帯及び線条体におけるBrdU陽性細胞数を測定した結果、脳室下帯において、各群間にBrdU陽性細胞数の有意な差は認められなかった。しかし、線条体において、R6/2(HSV−HGF)マウスのBrdU陽性細胞数は、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスと比較して有意に増加した(図22)。これらのデータは、HSV−HGF処置により神経細胞増殖が増強されることを示す。
3.ネスチンとBrdUの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
ネスチン(Nestin)は、神経幹細胞のマーカーである。ネスチンは、試験例1における免疫組織化学的染色に従って染色した。抗体としては、ネスチン抗体[マウスポリクロナール抗体(BD Biosciences社製;カタログ番号556309)を100倍希釈して使用]を用いた。
ネスチンとBrdUの両者が陽性である細胞数を測定した。脳室下帯及び線条体において、R6/2(HSV−HGF)マウスにおけるネスチンとBrdUの両者が陽性である細胞は、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスのそれと比較して有意に増加した(図23)。
4.ダブルコルチンとBrdUの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
ダブルコルチン(doublecortin;DCX)は遊走神経芽細胞のマーカーである。DCXは、試験例1における免疫組織化学的染色に従って染色した。抗体としては、DCX抗体[ヤギポリクロナール抗体(Santa Cruz Biotechnology社製;カタログ番号sc−8066)を100倍希釈して使用]を用いた。
DCXとBrdUの両者が陽性である細胞数を測定した。R6/2(HSV−HGF)マウスにおけるDCXとBrdUにおける両者が陽性である細胞は、脳室下帯及び線条体において、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスのそれと比較して有意に増加した(図24)。
5.PSA−NCAMとBrdUの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
PSA−NCAMは、遊走神経芽細胞のマーカーである。PSA−NCAMは、試験例1における免疫組織化学的染色に従って染色した。抗体としては、PSA−NCAM抗体[マウスモノクロナール抗体(AbCys S.A.社製;カタログ番号AbC0019)を800倍希釈して使用]を用いた。
PSA−NCAMとBrdUの両者が陽性である細胞数を測定した。R6/2(HSV−HGF)マウスにおけるPSA−NCAMとBrdUの両者が陽性である細胞は、脳室下帯及び線条体においてR6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスのそれと比較して有意に増加した(図25)。
6.βIIIチューブリンとBrdUの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
βIIIチューブリンは、神経細胞の初期〜分化型マーカーである。βIIIチューブリンは、試験例1に記載の免疫組織化学的染色に従って染色した。抗体としては、βIIIチューブリン抗体[TuJ1、マウスモノクロナール抗体(R&Dシステムズ社製;カタログ番号MAB1195)を200倍希釈して使用]を用いた。
βIIIチューブリンとBrdUの両者が陽性である細胞数を測定した。R6/2(HSV−HGF)マウスにおけるβIIIチューブリンとBrdUの両者が陽性である細胞は、脳室下帯及び線条体において、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスのそれと比較して有意に増加した(図26)。
7.NeuNとBrdUの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
NeuNは分化した神経細胞のマーカーである。NeuNは、試験例1に記載の抗体を用い、試験例1と同様に免疫組織化学的染色を行なった。
NeuNとBrdUの両者が陽性である細胞数を測定した。R6/2(HSV−HGF)マウスにおけるNeuNnとBrdUの両者が陽性である細胞は、脳室下帯及び線条体において、R6/2マウス及びR6/2(HSV−LacZ)マウスのそれと比較して有意に増加した(図27)。
8.リン酸化c−Metとネスチンの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
神経細胞新生におけるHGFの役割を検討するために、ネスチン陽性細胞において、HGFがc−Metのチロシンリン酸化反応に変化を与えるかどうかを検討した。リン酸化c−Met及びネスチンは、試験例1に記載の抗体を用い、試験例1と同様に免疫組織化学的染色を行なった。
R6/2(HSV−HGF)マウスでは、ネスチンとリン酸化c−Metの両者が陽性である細胞が、他のグループと比較して有意に増加した(図28)。
9.リン酸化c−MetとDCXの両者が陽性である細胞に対するHGFの作用
神経細胞新生におけるHGFの役割を検討するために、DCX陽性細胞において、HGFがc−Metのチロシンリン酸化反応に変化を与えるかどうかを検討した。リン酸化c−Met及びDCXは、上記と同様に免疫組織化学的染色を行なった。
R6/2(HSV−HGF)マウスでは、リン酸化c−MetとDCXの両者が陽性である細胞が、他のグループと比較して有意に増加した(図29)。
2.脊髄実質への投与によるHGFの発現
成体雌性SDラットの腰髄部の脊髄実質に、ミニポンプを用いてベクター懸濁液(HSV−HGF:×107pfu;AAV2−HGF:3×1011pfu;又はAAV4−HGF:3×1011pfu)5μLを定位注射した。その5日後に、動物をペントバルビター深麻酔下に屠殺した。速やかに脊髄を取り出し、脊髄の上部(upper spinal;吻側;U)、中部(middle spinal;中央部;M)及び下部(lower spinal;尾側;L)の3つの領域に分け、それぞれの脊髄断片を、前記の方法でホモゲナイズした。ELISA法にてHGF蛋白質量を測定した。
その結果を図30に示す。ベクターを腰髄部の脊髄実質に注射すると、注射部位だけでなく脊髄の吻側、中央部においてもHGFの発現が認められた。発現の強度は、尾側(腰髄を含む)>=中央部>吻側であった。なお、HSV−HGFでは、濃度依存的にHGFの発現量が増加した。
2.脊髄実質への投与によるHGFの発現
成体雌性SDラットの腰髄部の脊髄実質に、ミニポンプを用いてベクター懸濁液(HSV−HGF:3×107pfu、3×107pfu;AAV2−HGF:3×1011pfu;又はAAV4−HGF:3×1011pfu)5μLを定位注射した。その5日後に、動物をペントバルビター深麻酔下に屠殺した。速やかに脊髄を取り出し、脊髄の上部(upper spinal;吻側;U)、中部(middle spinal;中央部;M)及び下部(lower spinal;尾側;L)の3つの領域に分け、それぞれの脊髄断片を、前記の方法でホモゲナイズした。ELISA法にてHGF蛋白質量を測定した。
その結果を図30に示す。ベクターを腰髄部の脊髄実質に注射すると、注射部位だけでなく脊髄の吻側、中央部においてもHGFの発現が認められた。発現の強度は、尾側(腰髄を含む)>=中央部>吻側であった。なお、HSV−HGFでは、濃度依存的にHGFの発現量が増加した。
3.脊髄腔への投与によるHGFの発現
成体雌性SDラットの腰髄部の脊髄腔に、ミニポンプを用いてベクター懸濁液(HSV−HGF:3×107pfu、3×107pfu;AAV2−HGF:3×1011pfu;又はAAV4−HGF:3×1011pfu)5μLを定位注射した。その5日後に、上記脊髄実質への投与における方法と同様に、脊髄を取り出し、脊髄の吻側、中部及び尾側のHGF蛋白質量を測定した。
その結果を図31に示す。ベクターを腰髄部の脊髄腔に注射すると、注射部位だけでなく脊髄の吻側、中央部においてもHGFの発現が認められた。発現の強度は、脊髄実質への注射よりHGFの発現量は低かったが、脊髄のいずれの部位[尾側(腰髄を含む)、中央部、吻側]において、ほぼ同じ程度であった。即ち、脊髄腔への投与では、広範囲な神経細胞へのHGFの供給が可能であった。これは、脊髄実質にベクターを投与した場合に比べ、脊髄液により、ベクターが脊髄全体に拡散されたためであると考えられた。なお、HSV−HGFでは、濃度依存的にHGFの発現量が増加した。
〔試験例4〕
変異HDエキソン1遺伝子産物のプロセシングに対するHGFの作用
試験例1と同様に作成したR6/2マウス、R6/2(HSV−LacZ)マウス、R6/2(HSV−HGF)マウス及び野生型同腹子マウスを用いた。各マウスを9週齢で屠殺し、試験例1のウエスタンブロッティングの項に記載の方法と同様に線条体ホモゲナイズを調製した後、SDS−PAGEで蛋白質を分離し、分離した蛋白質をPVDF膜に転写した。転写したPVDF膜は、室温で2時間、10質量%スキムミルクでブロッキング後、抗ハンチンチン抗体でブロットした。抗ハンチンチン抗体は、ハンチンチン蛋白質のC末端部位を認識するヤギポリクロナール抗体(Santa Cruz社製;カタログ番号sc−8678)を100倍希釈したものを使用した。次いで、2次抗体(DakoCytomation社製)をコンジュゲートしたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)と共にインキュベーションし、製品説明書に従ってECL reagents(製品番号RPN2106,アマシャム・バイオサイエンス社製)で発色させた。
バンドの強度は、Wayre Rasband氏によって開発されたNIH(National Institutes of Health)イメージソフトウエアを使用して解析された。
ウエスタンブロット分析の結果を図32に示す。野生型同腹子では、ハンチンチン蛋白質が発現されたが、ハンチンチン蛋白質が断片化されたC末端フラグメントは殆ど検出されなかった。R6/2では野生型同腹子に対して、ハンチンチン蛋白質に相当する部位にバンドは殆ど認められず、該蛋白質が断片化されたC末端フラグメントが強く検出された。このことは、R6/2では変異HDエキソン1遺伝子産物のプロセシングによりハンチンチン蛋白質が断片化されることを示している。HSV−LacZ投与群もR6/2と同様であった。一方、HSV−HGF投与群では、野生型同腹子におけるハンチンチン蛋白質と同位置にバンドが検出されたが、ハンチンチン蛋白質のC末端フラグメントの発現は強く抑制された。
ウエスタンブロット分析におけるC末端フラグメントのバンド強度を、Wayre Rasband氏によって開発されたNIH(National Institutes of Health)イメージソフトウエアを使用して定量解析した。その結果を図33に示す。定量解析の結果、HSV−HGFを投与したR6/2群では、HSV−LacZ(コントロールベクター)を投与したR6/2群を100%とした時の30%未満にC末端フラグメントへの断片化が抑制された。この結果は、HGFが変異HDエキソン1遺伝子産物のプロセシングを抑制させることを示すものである。本結果からも、HGFはハンチントン舞踏病の発病を抑制させることが明らかとなった。
本発明の治療剤又は発病抑制剤は、ポリグルタミン病の治療又は発病抑制のための薬剤として有用である。

Claims (22)

  1. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは、(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNA有効成分として含有することを特徴とするポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤。
  2. 有効成分が、(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNAであることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  3. HGF蛋白質をコードするDNAが、(a)配列番号1、2又は5で表される塩基配列からなるDNA又は(b)前記(a)の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質をコードするDNAであることを特徴とする請求項2記載の治療剤又は発病抑制剤。
  4. DNAが、I型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)ベクター、アデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターに組み込まれていることを特徴とする請求項2記載の治療剤又は発病抑制剤。
  5. 有効成分が、(イ)HGF蛋白質又はその塩であることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  6. HGF蛋白質が、(a)配列番号3、4又は6で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質であることを特徴とする請求項5記載の治療剤又は発病抑制剤。
  7. ポリグルタミン病がハンチントン舞踏病、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、脊髄小脳失調症12型及び歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症よりなる群から選択される少なくとも1の疾患であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の治療剤又は発病抑制剤。
  8. ポリグルタミン病がハンチントン舞踏病であることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  9. 治療剤又は発病抑制剤が、ポリグルタミン病の病変部位への局所投与用であることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  10. 局所投与が、髄腔内投与であることを特徴とする請求項9記載の治療剤又は発病抑制剤。
  11. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNA有効成分とすることを特徴とするポリグルタミン病による脳室の拡大抑制剤。
  12. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNA有効成分とすることを特徴とするポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制剤。
  13. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNA有効成分とすることを特徴とするポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制剤。
  14. 治療又は発病抑制が、脳室の拡大抑制によるものであることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  15. 脳室の拡大が、ポリグルタミン病原因遺伝子産物による線条体神経細胞変性又は細胞死によるものであることを特徴とする請求項14記載の治療剤又は発病抑制剤。
  16. 線条体神経細胞変性又は細胞死がカスパーゼ−3及び/又はカスパーゼ−1の活性化によるものであることを特徴とする請求項15記載の治療剤又は発病抑制剤。
  17. 治療又は発病抑制が、神経新生によるものであることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  18. 治療又は発病抑制が、ポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制によるものであることを特徴とする請求項1記載の治療剤又は発病抑制剤。
  19. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNAポリグルタミン病の治療剤又は発病抑制剤の製造の為の使用。
  20. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNAのポリグルタミン病による脳室の拡大抑制剤の製造の為の使用。
  21. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記(イ)のDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNAポリグルタミン病原因遺伝子産物依存神経細胞変性又は細胞死抑制剤の製造の為の使用。
  22. (1)(イ)HGF蛋白質又はその塩、あるいは(2)(イ)HGF蛋白質をコードするDNA又は(ロ)前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつHGF蛋白質と同質の活性を有する蛋白質コードするDNAポリグルタミン病原因遺伝子産物のプロセシング抑制剤の製造の為の使用。
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