JP5049454B2 - 基部に近い上腕骨の骨折箇所を固定するための骨板 - Google Patents

Description

本発明は、特許請求の範囲第１項の前段に規定する構成による基部に近い上腕骨の骨折箇所を固定するための骨板に関する。

そのような骨板は基部に近い上腕骨に関する全てのタイプの骨折を固定するために利用されるが、特に基部に近い上腕骨に対して三箇所および四箇所の骨折全てに対して、並びにずれている骨折箇所に利用される。
強力な外傷は若年期における基部に近い上腕骨の骨折にしばしば生じる一つの原因となっている。実際、この種の骨折は年齢と共に増加する。何故なら、基部に近い上腕骨の領域では骨の構造が非常に劣化するため、骨の縁領域だけにしか無傷の骨構造が存在しないからである。転倒時には高齢者の延ばした腕に関して骨は主にこの箇所で折れる。

米国特許第６，０９６，０４０号明細書のＥＳＳＥＲにより同類の骨板は既に周知になっている。
この配置の難点は、板のさじ状の部分に一つの穴位置があり、この穴位置により基部に近い上腕骨の縁領域に周知のような良好な骨構造を持つことを不可能にしている点にある。

更に、ＥＳＳＥＲに記載されている移植組織は板の穴において折れ曲がりに安定な自由選択性のない一枚の板である。この板を使用する場合には、骨ネジによりこの板を骨に押し付ける。この処置は圧縮骨合成と呼ばれている。その場合、発生する力は摩擦により移植組織と骨の間に伝達されるが、骨は負荷の大部分に耐えなければならない。この板を骨にかなり安定に止めるため、骨ネジが受ける軸方向の大きな圧力により、動的な条件の下では骨ネジを骨から引き抜くことになり、そのため板と骨の構造物の安定性に相当な損失となる。

従来の技術に関する上記の議論は、本発明の状況を説明するのみ行われていて、引用した従来の技術は本出願もしくはその優先権主張日の時点で実際に出版されているか、あるいは公知になっていたことを意味するものではない。
米国特許第６，０９６，０４０号明細書

ここに、本発明は救済策を提示しようとするものである。本発明の課題は、折れ曲がりに安定な骨合成を達成できる基部に近い上腕骨の骨折箇所を固定するための骨板を提供することにある。

本発明の主要な利点は、頭部ネジ山とネジの組合せによるネジ穴の折れ曲がり安定性、簡単な取扱、骨に解剖学的に最適に合わせることおよび基部に近い上腕骨の重要な解剖学的な構造に害を与えないことにある。ネジ山ヘッドを有するネジを使用して、動的な条件の下でも支えを維持することができる折れ曲がりに安定な板と骨の構造物が生じる。
本発明は、請求項１の特徴を有する骨板を用いて上記の課題を解決している。

この短いネジピッチにより非常に短い間隔、通常１〜２ｍｍの範囲でネジを板に確実に定着させることができる。従って、板の厚さを非常に薄く寸法決めすることができ、板とネジの構造物の安定性に対する影響が悪い結果となることはない。

好ましい改良は、内部ネジ山あるいは部分的に螺旋状になっているキー溝のピッチが０．７〜０．９ｍｍの範囲内にあり、このことが上に説明した効果を更に最適化する。
他の有利な態様では、移行領域が柄状の部分の幅ｘからさじ状の部分の幅ｙへ好ましくは指数関数的に広がっている。
従って、人の折れていない基部に近い上腕骨に最適に合わせることができる。これにより板は清潔な骨のところに載り、重要な解剖学的な構造の何れも妨げられていない。

板の厚さは、１．７〜２．３ｍｍ、好ましくは１．９〜２．１ｍｍの間の範囲内にあると実用的である。従来の骨板に比べて比較的薄い厚さの利点は、主に薄い板が重要な構造の何れも阻害することがなく、腕を上げた時、肩の肩さきに当ることがない点にある。

板の柄状の部分は、中心軸線の方向に見て、少なくとも一部の領域で湾曲して形成されていると有利である。

他の有利な態様では、板の柄状の部分が、中心軸線（３）の方向に見て、少なくとも一部の領域で楕円状の円弧（２１）の形に湾曲している。この楕円状の円弧（２１）に属する楕円の長軸線（２２）の長さは、好ましくは１５０と１７０ｍｍの間の範囲内に、典型的には１５７と１６３ｍｍの範囲内にある。この楕円状の円弧に属する楕円の短軸線の長さは、好ましくは６０と８０ｍｍの間の範囲内に、典型的には６７と７３ｍｍの範囲内にある。

柄状の部分およびさじ状の部分（２）の自由端は、好ましくは本質的には互いに平行な面内にある。
これ等有利な全ての処置には、人の折れていない基部に近い上腕骨へ改善された適合を可能にし、その場合、板が骨にピッタリと載り、重要な解剖学的な構造の何れをも阻害するものでないという利点がある。

他の有利な態様では、骨板の少なくとも一部の領域に中心軸線に対して交差して延びる湾曲部があり、好ましくは１８〜２２ｍｍの範囲内の曲率半径を持っているとよい。

他の態様では、骨板がその全長にわたり中心軸線に対して交差して延びる湾曲部を有する。これにより得られる利点は、既存の軟部に刺激状態が生じない点にある。腕を上げた時、骨板が肩の肩さきに当ることが防止される。

他の有利な態様では、さじ状の部分の無拘束な末端箇所に中心軸線に対して対称に配置されている穴軸線が平行な二つの穴がある。その場合、これ等の穴軸線はさじ状の部分で形成されている面に対して９２°９８°の角度、好ましくは９４°〜９６°の角度を成す。折れ曲がりに安定な整復を達成するため、従来の技術による移植では刃が必要であり、これ等の刃は折れ曲がりに安定な穴に挿入すべきネジで代用されるものである。しかし、これらの刃を用いた手術技術はより多くの時間を必要とし、本発明の場合のような折れ曲がりに安定なネジを用いるものよりも使用が複雑である。約９５°の接触角により丈夫な骨との接触面が広がる。何故なら、丈夫な骨物質は比較的空洞な上腕骨ヘッドの縁領域にのみ存在するからである。

他の有利な態様では、さじ状の部分の移行領域に隣接する箇所に中心軸線に対して非対称に配置された二つの穴があり、両方の穴の穴軸線が好ましくは中心軸線に直交している互いに平行な面内にある。他方の穴軸線を含む平行な面内への一方の穴軸線の投影は穴軸線に対して４０°〜６０°の角度、好ましくは４６°〜５４°の角度を成す。

この装置の利点は、交差したこれ等の穴に挿入すべきネジにより基部に近い上腕骨を骨折した時にしばしば折れる小さな結節を近くに引き寄せることを可能にする点にある。

他の有利な態様は、中心軸線に対して対称および／または非対称に配置されている穴の少なくとも一つに内部ネジ山もしくは一部螺旋状になっているキー溝がある点にある。その場合、中心軸線に対して対称および／または非対称に配置されている穴の穴軸線が何れも交差していないと有利である。これにより、これ等の穴の中に挿入すべきネジが互いに邪魔にならないという利点が得られる。

他の態様では、柄状の部分に付けた穴の軸線が該柄状の部分に対して垂直になっている。
内部ネジ山は好ましくは多段、好ましくは二段に形成されているとよい。
本発明による骨板は、左の上腕骨にも、また右の上腕骨にも使用することができ、丈夫な基部に近い上腕骨の形状に最適に合わせることができる。

以下、一実施例の部分的な模式図に基づき、本発明および本発明の他の構成をもっと詳しく説明する。
図１〜４に示す骨板は、基部に近い上腕骨の骨折箇所を固定するために使用されるが、この骨板は長さが幅ｘより大きい柄状の部分１と、幅ｙが柄状の部分１の幅ｘより大きいさじ状の部分２とで構成されている。この柄状の部分１とさじ状の部分２は、共通の長手方向の中心軸線３を有し、柄状の部分１の幅ｘからさじ状の部分２の幅ｙに向かって指数関数的に広がる移行領域２６によって互いに連結されている。

柄状の部分１と同様にさじ状の部分２にも、多数のネジ穴（９，１０，１６，１７；２４）が付けてある。この骨板の柄状の部分１に付けてあるどのネジ穴２４にも内部ネジ山２８がある（これ等は一部螺旋状になっているキー溝で置き換えることもできる）。

骨板のさじ状の部分２に付けてあるネジ穴の四つ（９，１０，１６，１７）にも内部ネジ山２７がある（ここでもこの内部ネジ山を一部螺旋状になっているキー溝で置き換えることもできる）。
これ等の内部ネジ山２７；２８（あるいは一部螺旋状になっているキー溝）のピッチは０．８ｍｍである。骨板の厚さは２ｍｍである。

図４から分かるように、柄状の部分１は、中心軸線３の方向に見て、一部の領域で曲げて、つまり楕円状の円弧２１の形に形成されている。楕円状の円弧２１に属する楕円の長軸線２２の長さは１６０ｍｍであり、楕円状の円弧２１に属する楕円の短軸線２３の長さは７０ｍｍである。柄状の部分１を曲げることにより、柄状の部分１の自由端５とさじ状の部分２の自由端がほぼ互いに平行な面内にある。

図２から分かるように、骨板はその全長にわたり中心軸線３に対して交差して延びる湾曲部６を有し、その曲率半径は２０ｍｍである。

図１と２から明らかなように、さじ状の部分２の無拘束な末端箇所８には中心軸線３に対して対称に配置されている穴軸線が平行な二つの穴９，１０がある。その場合、これ等の穴軸線１１，１２はさじ状の部分２で形成されている面１４と９５°の角度１３を成す。

更に、さじ状の部分２の移行領域２６に隣接する箇所１５には中心軸線３に対して非対称に配置された二つの穴１６，１７がある。両方の穴１６，１７の穴軸線１８，１９は中心軸線３に直交している互いに平行な面内にある。他方の穴軸線１９を含む平行な面に一方の穴軸線１８を投影したものは穴軸線１９に対して５０°の角度２０を成す。

中心軸線３に対して対称および非対称に配置された穴の対９，１０，１６，１７には一つの内部ネジ山２７を有し、この内部ネジ山は一部螺旋状になっているキー溝で置き換えることもできる。中心軸線３に対して対称および非対称に配置されている穴の対９，１０；１６，１７の穴軸線１１，１２；１８，１９は何れも交差していない。内部ネジ山２７；２８は２段に形成されている。
柄状の部分１に付けてある穴２４の軸は柄状の部分１に対して直角になっている。

本発明による骨板の平面図。 図１の線分ＩＩ−ＩＩに沿った断面図。 本発明による骨板の斜視図。 本発明による骨板の側面図。

Claims (17)

1. 長さが幅ｘより大きい柄状の部分（１）と、幅ｙが柄状の部分（１）の幅ｘより大きいさじ状の部分（２）とを備え、その際、柄状の部分（１）とさじ状の部分（２）が共通の長手方向の中心軸線（３）を有し、移行領域（２６）で互いに連結されていて、柄状の部分（１）及びさじ状の部分（２）にもそれぞれ少なくとも二つのネジ穴（９，１０，１６，１７；２４）が付けてあり、基部に近い上腕骨の骨折箇所を固定するための骨板において、
   Ａ）柄状の部分（１）のネジ穴（２４）の少なくとも一つに少なくとも部分的な内部ネジ山（２８）あるいは一部螺旋状になっているキー溝があり、
   Ｂ）さじ状の部分（２）のネジ穴（９，１０，１６，１７）の少なくとも一つに内部ネジ山（２７）あるいは一部螺旋状になっているキー溝があり、
   Ｃ）これ等の内部ネジ山（２７；２８）または一部螺旋状になっているキー溝のピッチが０．５ｍｍ〜１．１ｍｍの範囲内にあり、
   Ｄ）移行領域（２６）の幅は柄状の部分（１）の幅ｘからさじ状の部分（２）の幅ｙへ広がり、
   Ｅ）柄状の部分（１）は、中心軸線（３）の方向に見て、少なくとも一部の領域で曲げて形成され、
   Ｆ）さじ状の部分（２）の移行領域（２６）に隣接する箇所（１５）には中心軸線（３）に対して非対称に配置されているネジ穴（１６，１７）があり、
   Ｇ）さじ状の部分（２）の無拘束な末端箇所（８）には中心軸線（３）に対して対称に配置されている二つの穴（９，１０）があり、
   Ｈ）前記非対称に配置されているネジ穴（１６，１７）の穴軸線（１８，１９）は互いに平行な面内にあり、
   Ｉ）他方の穴軸線（１９）を含む平行な面への一方の穴軸線（１８）の投影は穴軸線（１９）と４０°〜６０°の角度（２０）を成す
   ことを特徴とする骨板。
2. 内部ネジ山（２７，２８）あるいは一部螺旋状になっているキー溝のピッチは０．７〜０．９ｍｍの範囲内にあることを特徴とする請求項１に記載の骨板。
3. 移行領域（２６）の幅は柄状の部分（１）の幅ｘからさじ状の部分（２）の幅ｙへ広がり、主に指数関数的に広がることを特徴とする請求項１または２に記載の骨板。
4. 骨板の厚さ（７）は１．９ｍｍ〜２．１ｍｍの範囲内にあることを特徴とする請求項１〜３の何れか１項に記載の骨板。
5. 柄状の部分（１）は、中心軸線（３）の方向に見て、少なくとも一部の領域で楕円状の円弧（２１）の形に曲げてあることを特徴とする請求項１〜４の何れか１項に記載の骨板。
6. 楕円状の円弧（２１）に属する楕円の長軸線（２２）の長さは１５０と１７０ｍｍの間、好ましくは１５７と１６３ｍｍの間の範囲内にあることを特徴とする請求項５に記載の骨板。
7. 楕円状の円弧（２１）に属する楕円の短軸線（２３）の長さは６０と８０ｍｍの間、好ましくは６７と７３ｍｍの間の範囲内にあることを特徴とする請求項５または６に記載の骨板。
8. 柄状の部分の自由端（５）およびさじ状の部分（２）の自由端はほぼ互いに平行な面内にあることを特徴とする請求項１〜７の何れか１項に記載の骨板。
9. 中心軸線（３）に対して交差して延びる、好ましくは１８〜２２ｍｍの範囲の曲率半径を有する湾曲部（６）が少なくとも一部の領域にあることを特徴とする請求項１〜８の何れか１項に記載の骨板。
10. 全長にわたり中心軸線（３）に対して交差して延びる湾曲部（６）があることを特徴とする請求項９に記載の骨板。
11. さじ状の部分（２）の無拘束な末端箇所（８）には中心軸線（３）に対して対称に配置されている平行な穴軸線を有する二つのネジ穴（９，１０）があり、これ等の穴軸線（１１，１２）はさじ状の部分（２）で形成される面（１４）と９２°〜９８°、好ましくは９４°〜９６°の角度（１３）を成すことを特徴とする請求項１〜１０の何れか１項に記載の骨板。
12. 前記非対称に配置されているネジ穴（１６，１７）の穴軸線（１８，１９）は、好ましくは中心軸線（３）に対して直交している互いに平行な面内にあることを特徴とする請求項１１に記載の骨板。
13. 他方の穴軸線（１９）を含む平行な面への一方の穴軸線（１８）の投影は穴軸線（１９）と４０°〜６０°、好ましくは４６°〜５４°の角度（２０）を成すことを特徴とする請求項１２に記載の骨板。
14. 中心軸線（３）に対して対称および／または非対称に配置されているネジ穴（９，１０，１６，１７）の少なくとも一つには内部ネジ山（２７）もしくは一部螺旋状になっているキー溝があることを特徴とする請求項１１〜１３の何れか１項に記載の骨板。
15. 中心軸線（３）に対して対称および／または非対称に配置されているネジ穴（９，１０；１６，１７）の穴軸線（１１，１２；１８，１９）は何れも交差していないことを特徴とする請求項１１〜１４の何れか１項に記載の骨板。
16. 柄状の部分（１）に付けてあるネジ穴（２４）の軸は柄状の部分に対して垂直であることを特徴とする請求項１１〜１５の何れか１項に記載の骨板。
17. 内部ネジ山（２７；２８）は多段、好ましくは２段に形成されていることを特徴とする請求項１１〜１６の何れか１項に記載の骨板。

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